副業禁止の会社にいても在宅テンプレート販売は受けられるのか


この記事のポイント
- ✓テンプレート販売を副業禁止の会社に勤めながら在宅で続けられるのか
- ✓就業規則が実際に効く範囲
- ✓住民税と確定申告で足がつく仕組み
テンプレート販売を在宅で始めてみたものの、勤務先の就業規則に「副業禁止」と書かれていることに後から気づいて、手が止まっている。この記事にたどり着く人の多くは、そういう状態です。すでに数点アップロードしていて、少額ながら売上が立ちはじめた。だからこそ引き返すべきか、続けてよいのか判断がつかない。
先に結論を書きます。就業規則の副業禁止規定は、それ自体が法律ではありません。ただし「効かない」わけでもない。実務で問題になるのは、規定の文言そのものよりも、勤務先に伝わる経路と、伝わったときに会社が何を根拠に処分を検討するかです。テンプレート販売という業態は、この2つの観点で見ると、他の在宅ワークとは少し違う性質を持っています。売り切りではなく在庫を持たないストック型で、稼働時間が読めず、収益が立ち上がるまで長い。この特性が、副業禁止の会社に勤めながら続ける際の判断を難しくしています。
この記事では、規定の効く範囲、勤務先に伝わる具体的な経路、確定申告と住民税の実務、そして「続かない人が何でつまずくのか」「どこがやめどきなのか」を、きれいごとを抜いて整理します。
副業禁止規定が置かれている2026年の状況
まず前提を揃えます。日本の法律に「会社員は副業をしてはいけない」と定めた条文はありません。勤務時間外は本来、労働者が自由に使える時間です。厚生労働省が示しているモデル就業規則も、2018年の改定以降は副業や兼業を原則認める方向に書き換えられており、その考え方は現在も維持されています。
一方で、モデル就業規則はあくまでモデルです。各社が自社の就業規則をどう書いているかは別問題で、2026年時点でも旧来の「許可なく他に雇われ、または事業を営んではならない」という文言をそのまま残している会社は珍しくありません。特に、金融、医療、公務に準じる法人、製造業の一部では、情報管理や労働時間管理の都合から制限を維持しているケースが多く見られます。
つまり、社会全体の流れは容認方向に動いているのに、自分の勤務先の規則だけが古いまま、という状況が普通に起きます。この記事を読んでいる人が直面しているのは、たいていこのズレです。世の中は副業OKと言っているのに、自分の会社の規則には禁止と書いてある。どちらを信じればいいのかわからない。
答えは「どちらも正しい」です。法律上は禁止できないが、就業規則は労働契約の内容として効力を持ちます。ただしその効力は無制限ではなく、裁判で争われた場合には「本業に具体的な支障が出たか」「競業にあたるか」「会社の信用を毀損したか」といった実質的な観点で判断されます。単に副業をしていたという事実だけで懲戒解雇が有効になった例は、実務上ほとんどありません。
2018年のモデル就業規則改定から8年が経ち、大企業を中心に副業申請制度を整えた会社が増えました。ここが重要な分岐点です。禁止のまま放置している会社と、申請すれば通る会社では、取るべき行動がまるで違います。
本記事では未経験・初心者でも始められる副業や、在宅ワークの求人募集を行っているサイトをご紹介します。 出典: biz.moneyforward.com
在宅でできる仕事の選択肢が増えたこと自体は事実です。ただ、選択肢が増えたことと、自分の勤務先で許されるかは別の話として切り分ける必要があります。
テンプレート販売という業態が持つ、判断を難しくする特性
テンプレート販売は、デザインテンプレート、資料フォーマット、スプレッドシートの計算シート、動画編集用のプリセットなどを作って、マーケットプレイスに置いて売る形式の仕事です。副業禁止の会社に勤めながら検討する場合、この業態には他の在宅ワークにない厄介な性質が3つあります。
稼働時間が就業規則の想定から外れる
多くの就業規則が禁止の根拠として挙げるのは「労務提供に支障をきたすおそれ」です。夜間にコンビニで働く、休日にイベントスタッフをする。こうした時間拘束のある副業は、この条項に真正面から当たります。
テンプレート販売は、制作は自分の好きな時間にできて、販売後は基本的に無稼働です。この構造だけを見れば、労務提供への支障は小さい。ただし実際には、初期の制作期間に週10時間から20時間を投じる人が多く、その時期は明らかに睡眠時間を削ることになります。「時間拘束がないから大丈夫」と言い切れるのは、あくまで軌道に乗った後の話です。
収益が立ち上がるまでが長い
ここが、副業禁止の会社に勤めている人にとって一番のリスクです。テンプレート販売は、1点作って置けば売れるものではありません。マーケットプレイス内での露出は掲載点数と評価に強く依存するため、点数が一定を超えるまではほぼ売れない期間が続きます。
在庫を持たないぶん金銭的な損失は出にくいのですが、その代わり「まだ何も得ていないのに、就業規則違反のリスクだけ抱えている」期間が長く発生します。半年やって月3,000円という結果は普通に起こります。この状態でバレて始末書を書くことになったら、割に合いません。判断を先送りにせず、始める前にどこまでのリスクを取るかを決めておくべき理由がここにあります。
事業性が高く、雑所得で処理しにくい場合がある
一時的な単発の仕事と違い、テンプレート販売は継続的に販売収入が発生します。規模が大きくなれば事業所得として扱う余地が出てきますし、開業届を出す判断も現実に出てきます。就業規則が「事業を営んではならない」と書いている場合、雇われるタイプの副業より、むしろこちらのほうが文言に触れやすい構造です。
私が実際に見てきた範囲でも、アパレルのEC支援をしている知人が、勤務先の規則を「アルバイト禁止」と読んでいて、自分は雇われていないから対象外だと考えていたことがありました。規則を読み直したら「営利を目的とする業務に従事すること」と書いてあった。文言をきちんと読むという当たり前の作業を飛ばすと、こういうズレが起きます。
就業規則の「副業禁止」が実際に効く範囲
規定があるからといって、すべての副業が一律に処分対象になるわけではありません。実務で処分の根拠になりうるのは、おおむね次の4つの類型に絞られます。
本業の労務提供に具体的な支障が出た場合
遅刻や欠勤が増えた、勤務中の居眠りが常態化した、明らかにパフォーマンスが落ちた。こうした事実が積み上がると、副業が原因だと会社が主張する材料になります。逆に言えば、成果に何の変化もない状態で「副業をしていた」だけを理由に重い処分を科すのは、会社側にとってもハードルが高い。
テンプレート販売でこれに触れるのは、締切に追われる時期です。マーケットプレイスのセール期間に合わせて新作を10点出そうとして、深夜作業が2週間続く。ここで本業に穴が空くと、一気に危険域に入ります。
競業にあたる場合
勤務先と同じ市場で、同じ顧客に対して商品やサービスを提供している場合です。これは処分の理由として最も重く扱われます。
テンプレート販売でこれに該当するのは、勤務先がまさにテンプレートやデザイン素材を販売している場合、あるいは勤務先の業務で得た知見やフォーマットをそのまま商品化した場合です。特に後者は、次の類型とも重なって深刻になります。
会社の営業秘密や資産を使った場合
勤務先で作成した資料のレイアウトをほぼそのまま販売用テンプレートに転用する。社内で使っている業務フローの管理表を、体裁だけ変えて売る。これは副業禁止規定の問題を超えて、著作権や営業秘密の問題になります。
副業禁止の会社にいる人がテンプレート販売に流れる動機として「仕事で作った資料が使えそうだから」というものは、非常によくあります。ここは絶対に踏んではいけない一線です。業務で作った成果物の著作権は、原則として勤務先に帰属します。
会社の信用を毀損した場合
販売者名やプロフィールに勤務先が特定できる情報を出している、あるいは商品の品質トラブルでSNSが荒れた、といったケースです。テンプレート販売は購入者レビューが公開されるため、トラブルの痕跡が残りやすい業態でもあります。
この4つに触れていなければ、就業規則違反として問われる余地は現実的にかなり狭くなります。逆に、どれか1つでも当てはまっていると、規定の有無にかかわらず問題化します。
勤務先に伝わる経路は、実際には3つしかない
「バレない方法」を検索している人が想定しているより、伝わる経路は限られています。整理すると次の3つです。
住民税の特別徴収額の変化
最も知られている経路です。会社員の住民税は、通常、給与から天引きされる特別徴収です。副業で所得が増えると住民税額が上がり、市区町村から勤務先に送られる決定通知書の金額が、給与額から想定される水準とずれます。経理担当がこのズレに気づく、というのが典型的なパターンです。
回避策として広く知られているのが、確定申告書の住民税の徴収方法欄で「自分で納付」を選ぶ方法です。これにより副業分の住民税は自宅に納付書が届き、給与天引き分と分離されます。ただし、自治体の運用によっては給与所得以外の所得でも特別徴収に一本化されることがあり、確実な方法とは言い切れません。申告後、住民税決定通知書が届く6月頃に、実際に分離されているかを自分で確認する作業が必要です。
なお、この分離が使えるのは事業所得や雑所得の場合です。給与所得として受け取る副業、つまりアルバイトなどでは分離できません。テンプレート販売は給与ではないため、この点では有利です。
販売ページや発信からの特定
プロフィール写真、実名、SNSアカウントの相互リンク、ポートフォリオサイトの記載内容。テンプレート販売は集客のために発信が必要になる業態なので、ここから足がつくケースが実際に一番多い。
同僚がたまたまマーケットプレイスを見ていて気づく、というのは十分ありうる話です。特にデザイン系の職場だと、社内の誰かが同じマーケットプレイスを日常的に使っている確率は低くありません。
本人が話す
社内の親しい同僚に打ち明ける。飲み会で口が滑る。これが3つ目で、しかも軽視されがちですが、実務上かなりの割合を占めます。
伝わる経路がこの3つに限られるということは、逆に言えば、対策すべき箇所も3つに絞れるということです。漠然と不安を抱えるより、この3点をそれぞれどうするかを決めたほうが、心理的にも楽になります。
確定申告と住民税の実務、どこから必要になるか
金額のラインを整理します。給与を1か所から受けている会社員が、給与以外の所得の合計が年間20万円を超える場合、所得税の確定申告が必要です。ここで言う所得は売上ではなく、売上から必要経費を引いた後の金額です。
テンプレート販売の場合、経費として計上できるものにはデザインソフトのサブスクリプション費用、素材購入費、フォントのライセンス費用、制作に使う機材の減価償却費、通信費の按分などがあります。売上が年間30万円でも、経費が12万円あれば所得は18万円となり、所得税の確定申告は不要になる計算です。
ただし、ここに落とし穴があります。所得税の申告が不要でも、住民税の申告は金額にかかわらず必要です。20万円以下だから何もしなくていい、というのは誤りで、正確には「所得税の確定申告は不要だが、住民税の申告は必要」です。この住民税の申告を市区町村に出す際に、徴収方法を自分で納付にしておけば、勤務先を経由しない形になります。
制度の詳細や申告書の様式は年度によって変わるため、実際の手続きの前には国税庁の案内を確認してください。
国税庁のサイトには申告手続きの説明が掲載されており、e-Taxを使えば自宅から申告を完結できます。
経費の記録は、始めた月から付けておくべきです。年が明けてから1年分をさかのぼって集計するのは現実的に無理があります。私が最初にこれを甘く見て、確定申告の直前にクレジットカードの明細を1年分たどる羽目になったことがあります。素材サイトの少額決済が大量にあって、どれが仕事用でどれが私用か判別できなくなりました。仕事用のカードを1枚分けるだけで、この作業は数時間から数十分になります。
副業禁止の会社にいる人が取れる3つの道
規定がある前提で、現実的な選択肢は3つです。それぞれのメリットとデメリットを整理します。
申請して許可を取る
最も安全で、多くの人が最初に選択肢から外してしまう道です。「どうせ通らない」と決めつけて申請しないまま黙って始める人が大半ですが、実際に人事に確認すると通るケースは相当あります。特に、時間拘束がなく、競業にもあたらず、会社の資産も使わない業態は、許可が下りやすい。
デメリットは、申請した時点で会社に把握されるため、後で気が変わって規模を拡大したくなったときに再度の説明が必要になることです。また、断られた場合には「知らなかった」という言い訳が使えなくなります。
申請する場合は、業務内容、想定する稼働時間帯、収入規模の見込み、競業にあたらないことの説明を書面で用意します。口頭だけで済ませると、後で言った言わないになります。
規定に触れない範囲に留めて続ける
競業でなく、会社の資産を使わず、本業に支障を出さず、発信で特定されないようにする。この4点を守った上で、住民税を分離して続ける道です。
実務上は多くの人がこれを選びます。デメリットは、いつまでも「見つかったらどうしよう」という不安が消えないこと、そして規模を拡大しにくいことです。テンプレート販売は点数が増えるほど売上が伸びる構造なので、遠慮しながら続けると、いつまでも立ち上がりません。
始めない、またはやめる
これも正当な選択肢です。特に、勤務先が金融機関や医療機関で情報管理が厳格な場合、あるいは競業に該当する可能性がある場合は、無理に続ける合理性がありません。
判断基準としては、想定される最悪の結果と、副業から得られる見込みを並べてみることです。半年で月5,000円の見込みに対して、始末書や賞与カットのリスクを取るのは割に合いません。逆に、既にスキルがあって短期間で立ち上がる見込みがあり、いずれ独立を考えているのであれば、取るリスクの意味は変わってきます。
テンプレート販売が続かない人の共通点
ここからは、副業禁止という論点を離れて、業態そのものの現実を書きます。始めた人の多くは、バレる前に自然消滅します。
最初の3か月で売れないことに耐えられない
新規出品者は、マーケットプレイス内で露出を得るまでに時間がかかります。レビューがゼロの商品は検索結果で埋もれるため、最初の数点はほぼ売れないと考えたほうがいい。ここで「需要がないんだ」と結論づけてやめる人が最も多い。
実際には需要がないのではなく、見つかっていないだけです。この違いを切り分けるには、販売数ではなく閲覧数を見る必要があります。閲覧数が伸びているのに買われないなら商品側の問題、閲覧数自体が伸びないなら露出の問題です。この2つは打ち手がまったく違います。
作りたいものを作ってしまう
自分が作りたいデザインと、買われるテンプレートは一致しません。売れているのは、地味で汎用性が高く、購入者が自分の内容に差し替えやすいものです。凝ったレイアウトほど汎用性が下がり、購入者は「これ、自分の資料に合わないな」と感じて離脱します。
私も最初、ファッション系の世界観に寄せた提案書テンプレートを作って、まったく売れませんでした。売れるようになったのは、装飾を削って、色を2色に絞って、テキストを入れ替えるだけで完成する形にしてからです。作品としての満足度と売上は、はっきり反比例します。
1点あたりの制作時間を計っていない
テンプレート販売は単価が低いぶん、制作効率がそのまま採算を決めます。1点に8時間かけて、価格が1,500円、月に3本売れるなら、時給換算は成立しません。
続く人は、テンプレートのテンプレートを持っています。共通のグリッド、共通のカラーパレット、共通の書き出し設定を用意して、1点を2時間以内で仕上げる。作業を仕組みにできるかどうかが、半年後に残っているかを分けます。
更新をやめてしまう
マーケットプレイスは新着を優遇するため、出品が止まると既存商品の露出も落ちます。ストック型と言われますが、完全な不労所得ではありません。月に数点は出し続ける前提で設計しないと、収益は緩やかに減衰します。
副業禁止の会社に勤めていると、この「継続的に手を動かす」部分が精神的にきつい。バレるリスクを抱えたまま、収益がほぼゼロの期間に手を動かし続けるのは、想像以上に消耗します。
やめどきをどこに置くか
続けるか撤退するかの判断基準を、先に決めておくことを強く勧めます。走りながら考えると、サンクコストに引きずられて延々と続けることになります。
撤退を検討すべき明確なシグナル
第一に、勤務先で副業に関する調査や通達が出たとき。これは明確な警告です。ここで続ける判断は、リスクの取り方として合理的ではありません。
第二に、本業の評価が下がったとき。上司から作業品質や勤怠について指摘を受けたなら、原因が副業かどうかにかかわらず、一旦手を止めるべきです。副業が原因だと会社に認定される材料を、自分から積み上げる必要はありません。
第三に、6か月続けて閲覧数が横ばい以下のとき。売上ではなく閲覧数で見るのがポイントです。閲覧数が伸びていないということは、市場に届いていないということで、商品を足しても解決しません。この場合、テンプレート販売という手段自体が自分に向いていない可能性を検討したほうがいい。
撤退ではなく、形を変える選択
テンプレート販売で得たスキルは、他の在宅ワークに転用できます。資料デザインができるなら提案書作成の代行、EC向けのバナーが作れるなら商品ページの制作支援、といった形です。
受注型の仕事は、テンプレート販売と違って稼働時間が読めるぶん、就業規則との折り合いは付けやすい面があります。ただし発注者とのやり取りが平日日中に発生するため、そこは逆に難しくなる。どちらが自分の状況に合うかは、勤務先の働き方によります。
在宅で受けられる仕事の全体像を把握したい場合、職種ごとの実務内容を整理したガイドが参考になります。AIツールの導入支援や業務改善の相談に乗る仕事の内容をまとめたAIコンサル・業務活用支援のお仕事や、マーケティングとセキュリティ領域の案件傾向を扱ったAI・マーケティング・セキュリティのお仕事は、テンプレート制作以外の選択肢を検討する際の材料になります。開発寄りの領域に興味があるならアプリケーション開発のお仕事も併せて見ておくと、必要なスキルの差がわかります。
契約と権利まわりで見落とされやすい点
副業禁止の論点に気を取られて、こちらが手薄になる人が多い領域です。
素材ライセンスの範囲
テンプレートに組み込むフォント、写真、イラストには、それぞれライセンス条件があります。個人利用は無料でも、再配布や商用利用が禁止されているものは少なくありません。テンプレート販売は、購入者が素材を含んだファイルを受け取る形になるため、多くの場合「再配布」に該当します。
無料フォントを使ったテンプレートを販売して、後からライセンス違反を指摘されるトラブルは実際に起きています。使用する素材は、埋め込みと再配布が明示的に許可されているものに限定し、ライセンス条項のスクリーンショットを保存しておくことを勧めます。
販売プラットフォームの規約
マーケットプレイスごとに、独占販売を求めるもの、他所での併売を認めるもの、価格設定に制約を課すものがあります。複数のプラットフォームに同じ商品を置く場合は、規約の確認が必須です。
また、アカウント停止のリスクも考慮に入れる必要があります。プラットフォームの判断ひとつで販売経路が消えるため、1つに依存しきる設計は避けたほうがいい。
発注を受ける形に移行する場合の契約書
テンプレート販売から派生して、個別のカスタマイズ依頼を受けるようになると、そこからは受注取引です。報酬額、納期、修正回数、著作権の帰属を書面で決めていないと、後で揉めます。
取引条件の書面化については、下請取引に関する法律の考え方が参考になります。発注者と受注者の間で明確にしておくべき項目を整理したフリーランスを守る「下請法(取適法)」の知識|発注書・契約書の必須項目チェックリストは、初めて業務委託の契約を結ぶ前に一読しておく価値があります。
税務まわりで規模が変わったとき
売上が伸びて事業として本格化してきた場合、開業届や青色申告の検討が出てきます。ただし、副業禁止の会社に勤めている状態で開業届を出すことについては、慎重な判断が要ります。届出自体が勤務先に通知されることはありませんが、「事業を営んではならない」という文言がある就業規則との整合は、自分の中で整理しておくべきです。
税務処理を専門家に任せる選択肢もあります。確定申告の代行や記帳代行がどういう業務なのかを知っておくと、自分でやるべき範囲と外注すべき範囲の判断がしやすくなります。この領域の仕事内容をまとめた税理士の副業ガイド|確定申告代行・記帳代行で稼ぐ方法【2026年版】は、依頼する側の視点でも参考になります。
法人化まで進む段階になると、登記関連の手続きも発生します。手続きの費用感を把握しておきたい場合は本店移転・役員変更登記の報酬相場|オンライン申請とプロへの依頼比較【2026年最新】が目安になります。
スキルの市場価値を把握してから判断する
テンプレート販売を続けるかどうかを考えるとき、その時間を別のスキル獲得に使った場合の見返りを比較する視点が要ります。
制作系のスキルがどの程度の単価で評価されているかは、職種別の相場データで確認できます。文章やコンテンツ制作の領域なら著述家,記者,編集者の年収・単価相場、開発寄りの領域ならソフトウェア作成者の年収・単価相場が参考になります。テンプレート販売で月に数千円を積み上げるのと、同じ時間を単価の高い受注案件のスキル習得に使うのとで、1年後にどちらが有利かは、この相場感を見てから判断したほうが精度が上がります。
資格が直接収入に結びつくわけではありませんが、依頼者に対する説明材料としては機能します。事務系のスキルを証明するビジネス文書検定や、インフラ領域のCCNA(シスコ技術者認定)のような資格は、在宅で受注する際の判断材料として見られることがあります。
副業に取り組む人の実態については、外部の解説記事にも実感のこもった記述があります。
在宅で事務や経理などの仕事を受注して行うこともできます。パソコンや経理の知識が必要なものが多く、経験者向けの副業ですが、その分報酬も高い傾向にあります。 出典: webukatu.com
経験が求められる領域ほど報酬が高いという構造は、テンプレート販売にも当てはまります。誰でも作れるテンプレートは価格競争になり、専門領域に踏み込んだものほど競合が減る。副業禁止の会社に勤めながら限られた時間で成果を出したいなら、自分の本業で培った専門性が活きる領域を選ぶのが合理的です。ただし、前述の通り、勤務先の成果物をそのまま転用してはいけません。専門知識を使うことと、会社の資産を使うことは別です。
在宅ワーク市場を長く見てきた立場からの観察
20年この市場を運営者として見てきた立場から言えば、副業禁止規定に悩んで足踏みしている人の多くは、規定そのものよりも「誰にも相談できない」ことで消耗しています。会社には言えない、家族には心配される、同じ状況の人が周りにいない。この孤立が、判断を先送りさせます。
そして、長く続けている人に共通しているのは、単発の作業を積み上げるのではなく、依頼者から「この人に任せると楽だ」と思われる関係を作ることに時間を使っている点です。テンプレート販売は一見この対極にある業態ですが、実際に安定して売れている出品者は、購入者からの質問に丁寧に答え、要望を次の商品に反映させています。関係づくりの形が違うだけで、やっていることは同じです。
もう1点、運営者として見てきた限りでは、手取りの厚さが継続率を大きく左右します。仲介手数料が20%引かれる場と、手数料0%で直接やり取りできる場では、同じ報酬額でも受け手に残る金額がまるで違う。依頼する側から見れば、同じ予算でより多く頼めるということでもあります。この差は1件では小さく見えますが、年単位で積み上がると、続けられるかどうかの分かれ目になります。副業に使える時間が限られている会社員にとって、1時間あたりに残る金額は、モチベーションを直接左右する数字です。
副業禁止の会社に勤めている人ほど、限られた時間で確実に手取りを積む必要があります。露出のために時間を使う業態と、稼働がそのまま報酬になる業態のどちらを選ぶかは、この観点で考えると整理しやすくなります。
市場データから見える、在宅副業の現実的な位置づけ
在宅ワークの求人動向を継続的に見ていると、いくつかの傾向がはっきり出ています。
第一に、時間拘束のない仕事への需要は、依頼側と受注側の双方で増えています。依頼側は必要なときだけ外部の手を借りたい、受注側は本業の合間に働きたい。この需給が噛み合った結果、成果物単位で契約する形式の案件が広がりました。テンプレート販売は、この流れの一番端にある形態です。
第二に、専門性のない汎用作業は単価が下がり続けています。文字起こし、簡単な画像加工、データ入力といった作業は、生成AIツールの普及で置き換えが進み、報酬水準が低下しました。テンプレート販売も、汎用的なデザインテンプレートは同じ圧力を受けています。生成AIで似たものが数分で作れる時代に、装飾だけのテンプレートに価値を認める購入者は減っていきます。
第三に、生き残っているのは「専門知識が前提になる成果物」です。特定業界の実務フォーマット、法令や規格に沿った書式、業務プロセスに紐づいた管理シート。こうしたものは、作るために業界の実務経験が要るため、簡単には模倣されません。
この3点を副業禁止の会社に勤めている人の状況に当てはめると、方向性は明確です。汎用テンプレートを量産する道は、リスクに見合いません。自分の本業で得た専門領域の知識を活かした、狭くて深い商品を少数作るほうが、限られた時間での期待値が高い。ただし繰り返しになりますが、勤務先の成果物や営業秘密を持ち出さない範囲で、という条件が付きます。
職種ごとの相場データを見ると、同じ在宅ワークでもスキル要件によって単価が数倍違うことがわかります。テンプレート販売に時間を投じるかどうかは、その時間で獲得できるスキルが、どの単価帯につながるかで判断するのが現実的です。副業禁止という制約がある状況では、使える時間が限られているぶん、選択の精度が結果を大きく左右します。
よくある質問
Q. 就業規則に副業禁止と書いてあれば、テンプレート販売は違法になりますか?
違法ではありません。副業を禁じる法律はなく、勤務時間外は原則として自由です。ただし就業規則は労働契約の一部として効力を持つため、本業への支障、競業、会社資産の使用、信用毀損のいずれかに該当すると処分の根拠になりえます。この4点に触れない範囲かどうかを、まず規則の文言で確認してください。
Q. 住民税を自分で納付にすれば、確実に勤務先に知られませんか?
確実とは言い切れません。確定申告書で自分で納付を選べば副業分の住民税は分離されるのが原則ですが、自治体の運用によっては特別徴収に一本化される場合があります。申告後、住民税決定通知書が届く6月頃に、実際に分離されているか自分で確認する作業が必要です。
Q. テンプレート販売で確定申告が必要になるのは、いくらからですか?
給与を1か所から受けている会社員の場合、給与以外の所得の合計が年間20万円を超えると所得税の確定申告が必要です。所得は売上から必要経費を引いた金額なので、売上30万円でも経費12万円なら所得は18万円となり不要です。ただし住民税の申告は金額にかかわらず必要な点に注意してください。
Q. 半年やっても売上がほとんどありません。やめるべきでしょうか?
売上ではなく閲覧数で判断してください。閲覧数が伸びているのに買われないなら商品側の問題で、改善の余地があります。6か月続けて閲覧数が横ばい以下なら、市場に届いていない状態なので、商品を足しても解決しません。その場合は受注型の仕事など、別の形に切り替える検討をおすすめします。
この記事について
編集部
監修:@SOHO編集部
2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを20年運営。編集部が事実確認のうえ公開しています。

この記事を書いた人
丸山 桃子@SOHO編集部
アパレルEC運営支援・SNSコンサル
アパレル企業でMD・ECバイヤーとして勤務後、フリーランスに独立。アパレルブランドのEC運営支援・SNS運用を手がけ、ファッション・EC系の記事を執筆しています。
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