言語聴覚士の講師・講座の仕事

朝比奈 蒼
朝比奈 蒼
言語聴覚士の講師・講座の仕事

この記事のポイント

  • 言語聴覚士 講師 副業を考える人向けに
  • 地域講座・職員研修・国家試験対策・オンライン講座という4つの仕事の形
  • 講師料の値付けの考え方を

言語聴覚士 講師 副業と検索する人が知りたいのは、たいてい2つです。「自分程度の経験で教える側に回っていいのか」と「実際いくらもらえるのか」。結論を先に書くと、教える相手を選べば経験年数はさほど問題になりません。介護職員に嚥下の基礎を伝える講座で求められているのは学会発表級の知識ではなく、現場で明日から使える手順だからです。この記事では、言語聴覚士が講師として関われる仕事を4つの形に分けて整理し、依頼が来るまでの順番と、講師料をどう決めるかを扱います。

資格の取り方や国家試験の勉強法の話ではありません。すでに資格を持ち、臨床で数年を過ごした人が、その蓄積を教える仕事に換えるための内容です。

「教わりたい人」は臨床の外側に大勢いる

講師の需要はどこから生まれているか

言語聴覚士が扱う領域は、他職種から見ると「知りたいが体系的に学ぶ機会がない」分野です。介護施設の職員は毎日食事介助をしていますが、嚥下のメカニズムを教わったことがある人は多くありません。デイサービスの管理者は誤嚥性肺炎による入院を減らしたいと考えていますが、何を職員に教えればよいかを知りません。保育士は気になる子の発音について保護者から相談を受けますが、いつ専門機関につなぐべきか判断がつきません。

こうした需要は、医療機関の外側に広く分布しています。しかも研修を頼む先が見つからない。理学療法士や作業療法士に比べて、言語聴覚士は絶対数が少ないため、地域によっては「話を聞ける人が近くにいない」という状況が普通に起きています。

セミナー講師という選択肢は前から存在する

医療職向けの副業紹介でも、セミナー講師は定番として挙げられています。

「話す・聞く・食べる」の専門家として、セミナー講師を副業にする方法もあります。例えば、「自治体施設が主催する肺炎予防の講座」や「地域住民向けの誤嚥を防ぐための嚥下体操教室」などでの活躍が挙げられます。セミナー講師は、臨床現場では体験できない業務であり、改めて言語聴覚士としてのやりがいを感じられることでしょう。ただし、不定期で開催されることが多く、継続的に副収入を得たい方には向いていないかもしれません。安定した副収入を得たい場合には、先に紹介した「訪問リハビリや他施設でのアルバイト」の方が良いでしょう。 出典: co-medical.mynavi.jp

指摘されている弱点は的確です。単発の講座に頼ると、収入が読めません。ただしこれは「講師業が向いていない」という話ではなく、単発の依頼待ちだけで組み立てると不安定になるという話です。後述するように、職員研修の年間契約やオンライン講座の形にすると、この弱点はかなり埋まります。

資格試験の講座を作る側の求人もある

もう一つ、見落とされがちな入口があります。資格試験対策の通信講座を運営する事業者が、講師や教材制作者を募集しているケースです。

株式会社アガルートは「アガルートアカデミー」のブランド名で、各種資格試験、検定試験等のオンライン講座(通信講座)を展開しております。 あなたには言語聴覚士国家試験対策講座の講師として、商品企画、テキスト作成、講義の収録、受講相談等の業務をご担当いただきます。 担当スタッフがフォローしながら作業を進めるため、未経験者でも安心して働くことができます。 出典: agaroot.jp

注目したいのは業務範囲です。講義を話すだけでなく、商品企画、テキスト作成、収録、受講相談まで含まれています。つまり事業者側は「話せる人」ではなく「講座を作れる人」を求めている。この構造を理解しているかどうかで、提案の内容が変わります。

教える相手で分かれる、4つの仕事の形

地域住民・家族向けの講座

自治体の健康講座、地域包括支援センターの家族教室、公民館の高齢者向け教室などが該当します。テーマは誤嚥予防、口腔体操、聞こえの変化、認知症の人とのコミュニケーションといったところです。

1回あたりの講師料は1万円から3万円程度が多く、自治体の謝金規程で上限が決まっている場合もあります。金額としては大きくありませんが、実績として最初に置くには適した入口です。参加者の反応が直接返ってくるので、話し方の改善が速く進みます。

介護事業所・医療機関向けの職員研修

特別養護老人ホーム、デイサービス、訪問看護ステーション、有料老人ホームなどが、職員のスキルアップや事故防止のために外部講師を呼ぶケースです。ここが講師業としては本命になります。

1回90分の研修で3万円から8万円が相場帯です。さらに重要なのは、単発で終わりにくいこと。「今年度は年4回お願いしたい」という形になれば、年間の収入が読めるようになります。前述した講師業の弱点は、この年間契約でほぼ解消します。

事業所が研修を必要とする背景には、介護保険制度上の要件もあります。介護施設には定期的な研修の実施が求められる項目があり、担当者は毎年テーマと講師を探しています。つまり需要は制度に支えられていて、景気で消える種類のものではありません。

養成校・国家試験対策の非常勤講師

言語聴覚士の養成校で非常勤講師として科目を担当する、あるいは国家試験対策の講座で教える形です。時給換算では5,000円から1万5,000円程度が目安ですが、準備の時間が長いので、単価だけで判断すると割高には見えません。

それでもこの仕事に価値があるのは、教材を作る経験がそのまま資産になるからです。一度組み立てた講義の構成は、後で職員研修やオンライン講座に組み替えられます。前述の通信講座事業者のように、テキスト作成と収録を含めて依頼するケースもあり、その場合は制作物として報酬が積み上がります。

自分で開くオンライン講座と個人指導

事業者からの依頼を待たず、自分で講座を開く形です。同業の若手向けに「摂食嚥下の評価の組み立て方」を教える、保育士向けに「気になる子の発音」を教える、家族向けに「失語症の人との会話の工夫」を教える。オンライン会議ツールを使えば、場所の制約がなくなります。

値付けは自由ですが、いきなり高額にはできません。90分の講座を3,000円から5,000円で開き、10人集まって3万円から5万円という規模から始めるのが現実的です。集客が読めるようになったら、録画を教材として販売する、複数回の連続講座にする、といった展開が可能になります。

個人指導は、講座よりさらに単価を上げやすい形です。ただし対象者の状態に踏み込む内容になりやすいので、後述する線引きに最も注意が必要な領域でもあります。

依頼が来るまでの順番

教えるテーマを一つに絞る

最初にやることは、テーマの絞り込みです。「言語聴覚士としてできること全般」では、誰にも刺さりません。「介護職員向けに、食事場面で見るべき5つのサイン」まで絞ると、依頼する側が用途を想像できます。

絞り方の基準は、自分の臨床で最も回数をこなした場面です。急性期で嚥下評価を数多く担当してきたなら、その領域。小児の構音訓練が中心だったなら、保育や教育の現場向け。守備範囲の外に手を伸ばすより、深いところを一つ持つほうが早く依頼につながります。

聞き手が困っていることを先に集める

資料を作る前に、聞き手の困りごとを集めます。介護職員が本当に知りたいのは「嚥下の解剖」ではなく「むせない人が実は危ないと聞いたが、どう見分けるのか」です。同僚の介護職や看護師に、5人ほど聞いてみてください。質問の言葉づかいをそのまま拾っておくと、講座のタイトルに使えます。

この工程を飛ばして作った資料は、たいてい専門的すぎて伝わりません。教える側に回るときの最初の壁は、知識量ではなく翻訳の精度です。

90分の構成をどう組むか

研修でよく求められるのは60分から90分です。組み立ての型としては、最初の10分で「今日持ち帰るもの」を明示し、次の20分で背景と仕組み、40分で具体的な手順と演習、最後の10分で質疑、という配分が扱いやすい。演習を1つ入れるかどうかで、受講者の満足度は大きく変わります。

スライドの枚数は、90分で30枚前後が目安です。文字を詰め込むより、図を1枚で見せて口頭で補うほうが伝わります。資料作成の基礎に不安があるなら、Adobe認定プロフェッショナル Adobe Expressのような資料作成系の資格ガイドで、視覚表現の基本を押さえておくと講座の見栄えが変わります。

練習と録画

本番前に、必ず一度通しで話して録画してください。自分の話し方の癖は、録画でしか分かりません。臨床で患者に説明するときの速度は、集団に話すときには速すぎることが多いです。

録画したものは、営業資料としても使えます。「こういう内容を、こういう話し方でやります」と5分の抜粋を送れるだけで、依頼側の不安が減ります。

最初の1本をどこでやるか

実績ゼロの状態で外部研修に応募しても、通りにくいのが実情です。最初の1本は、勤務先の院内・施設内勉強会で作るのが最短です。次に、地域の介護事業所の連絡会や職能団体の研修、地域包括支援センターの家族教室。この順で外側に広げていくと、実績の説明が積み上がります。

依頼を受けるための窓口は、複数持っておくと安定します。研修やコンサルティングとして仕事を受ける形の全体像はITコンサルティング・講師のお仕事に整理されていて、講師業がどのような契約形態で発注されるかを把握できます。キャリア相談や学び直しの領域で仕事を組み立てたい場合はキャリア・副業・人生相談のお仕事も参考になります。

企業の従業員向けという第5の入口

医療福祉の外側にも需要があります。コールセンターや接客業では声のトラブルが業務に直結しますし、教員や保育士も声を使い続ける職業です。高齢化を背景に、従業員向けの健康研修で「聞こえ」を扱う企業も出てきました。

この領域は競合が少ない代わりに、講座の設計を医療の言葉から離す必要があります。「音声障害の病態」ではなく「声がかすれる前にできること」。企業研修の相場は医療福祉より高めで、90分で5万円から15万円のレンジも存在します。ただし入口を見つけるのが難しく、研修会社経由か、人事担当者との接点から始まるのが一般的です。

依頼を取りに行く方法と、集客の実務

待っているだけでは依頼は来ない

講師業を始めた人が最初に直面するのは、実力ではなく認知の問題です。あなたが教えられることを、依頼する側が知らない。この状態を放置していると、いつまでも声はかかりません。

やることは単純で、教えられる内容を一枚の紙にまとめて配ることです。テーマ、対象者、所要時間、内容の骨子、講師の経歴、料金の目安。この一枚があると、事業所の管理者は稟議に回せます。逆に、口頭で「研修できます」と伝えるだけでは、話は前に進みません。

配る先の優先順位は、面識のある事業所、地域の連絡会や研修会、職能団体、地域包括支援センターの順です。全く面識のない相手への一斉送信は反応が薄く、紹介の連鎖のほうが確度が高い。1件やるごとに「同じ内容を必要としている事業所をご存じないですか」と聞くだけで、次につながります。

情報発信は続けられる量にする

オンライン講座を自主開催する場合は、集客の手段が必要になります。ただし毎日の発信は本業と両立しません。週1回、臨床で受けた質問に答える形の短い投稿を積むほうが、続けやすく信頼も残ります。

発信の設計や集客の考え方は、専門職の副業に共通する課題です。マーケティングの領域で在宅の仕事がどのように発注されているかはAI・マーケティング・セキュリティのお仕事に整理されていて、集客を外部に頼むときの相場感の参考になります。

打ち合わせで確認しておく項目

依頼が来たら、実施前に確認しておきたい項目があります。受講者の職種と人数、経験年数の分布、この研修を企画した背景、過去に同じテーマをやったことがあるか、会場の設備、資料の印刷は誰がするか、録画の有無と使い道。この7つを聞いておくと、当日の事故がほぼ防げます。

特に「企画した背景」は必ず聞いてください。制度上の要件を満たすために年間計画で決まっている研修なのか、現場で何か問題が起きたのか。前者と後者では、話すべき内容がまるで違います。

講師料の決め方

準備時間を含めた時給で考える

講師業の値付けで最も多い失敗は、講義時間だけで金額を決めることです。90分の研修には、資料作成に8時間、事前打ち合わせに1時間、移動に2時間がかかることがあります。合計で12時間近い作業に対して2万円なら、時給は1,700円を切ります。

初回は資料作成の時間が長くかかりますが、2回目以降は同じ資料を改訂して使えます。そこで、初回は準備込みの金額を提示し、2回目以降は継続割を出すという設計にすると、双方にとって納得しやすくなります。

見積もりに含める項目を先に決める

提示の際は、講義料、資料作成費、交通費、録画の二次利用料を分けて書いてください。特に録画の扱いは後で揉めやすい部分です。研修を録画して社内研修用に繰り返し使うのであれば、それは1回分の講義とは別の価値です。

「録画を社内で共有してよいか」は、当日その場で聞かれます。事前に決めておかないと、断りにくい空気の中で無償の許諾をしてしまいます。

相場の目安を持っておく

自分の提示額が高いのか安いのかを判断するには、周辺職種の水準を知っておくのが早道です。教える・書くといった知的作業の対価がどのくらいの水準にあるかは、著述家,記者,編集者の年収・単価相場にまとまった公的統計から掴めます。専門知識を提供する仕事全般の相場感として、ソフトウェア作成者の年収・単価相場も比較材料になります。

直接契約と間接契約で手取りが変わる

研修会社を経由すると、事業所が払う金額の一部が中間で差し引かれます。事業所と直接契約すれば、同じ予算でも受け取る額が増え、依頼側も回数を増やしやすくなります。仲介の手数料0%で直接つながる仕組みを使う人が増えているのは、この差が積み上がると年間で無視できない額になるからです。

源泉徴収と請求書のこと

個人が講演料や講師料を受け取る場合、支払う側は所得税を源泉徴収するのが原則です。税率は支払金額に応じて決まり、1回の支払が100万円以下の部分については10.21%が差し引かれます。3万円の講師料なら、手取りは26,937円になる計算です。

差し引かれた分は、確定申告で精算されます。年末に支払調書が届く場合もありますが、届かないこともあるため、いつ誰からいくら受け取り、いくら源泉徴収されたかを自分で記録しておいてください。請求書には、講師料、源泉徴収額、交通費、差引支払額を分けて書くと処理がスムーズです。制度の詳細は国税庁の解説で確認できます。

なお、交通費を実費精算にするか、講師料に含めるかで、源泉徴収の対象が変わることがあります。取り扱いに迷う場合は、支払う側の経理担当者に事前に確認しておくと二度手間になりません。

オンラインで教えるときの実務

機材と環境は最小構成でよい

必要なのは、有線または安定した回線、外付けのマイク、明るい照明、背景の整理です。カメラはノートパソコンの内蔵で足りますが、マイクだけは投資する価値があります。音が聞き取りにくい講座は、内容が良くても評価が下がります。声を扱う専門職が音質で損をするのは避けたいところです。

資料に載せる図表の権利

教科書やガイドラインの図をそのままスライドに貼る行為は、著作権法上の問題になり得ます。引用として認められる要件は、必要性、主従関係、明瞭な区分、出典の明示などがあり、単に「出典を書いたから大丈夫」とは言えません。自分で作図するか、利用条件が明示された素材を使うのが安全です。

公的機関が公表している資料には、出典を示せば利用できるものもあります。ただし条件は資料ごとに違うため、利用規約を確認してから使ってください。

録画配信は別商品として設計する

同じ内容でも、ライブ配信と録画販売では価値が違います。ライブは質疑ができ、録画は繰り返し見られる。両方を同じ値段にすると、参加者はライブに来なくなります。ライブ参加者には録画も付ける、録画のみは価格を下げる、といった設計で差をつけるのが一般的です。

画面越しでは反応が見えないという前提で作る

対面の研修なら、受講者の表情で理解度を測れます。オンラインでは、カメラをオフにしている人が多く、手応えがつかめません。そこで、10分から15分に一度、必ず反応を求める仕掛けを入れます。投票機能で二択を出す、チャットに一言書いてもらう、指定した人に指名して答えてもらう。

嚥下や構音のテーマは、受講者自身の体で試せる利点があります。「自分の喉に手を当てて、唾を飲み込んでみてください」と促すと、画面の向こうでも参加が生まれます。座学に体験を混ぜられるのは、この職種の強みです。

資料は使い回せる形で作る

初回に作った資料をそのまま毎回使うと、事業所ごとの事情に合わなくなります。かといって毎回作り直すのは続きません。解決策は、資料を「共通部分」と「差し替え部分」に分けて作ることです。

仕組みの説明、手順、根拠となる考え方は共通部分として固定する。事例、演習、現場でよくある場面は差し替え部分にする。この構造にしておけば、次の依頼が来たとき、差し替え部分だけを1時間で作れば済みます。準備時間が回を追うごとに減っていくかどうかは、初回の作り方で決まります。

教えるときに越えてはいけない線

名称と業務範囲の扱い

言語聴覚士は名称独占の資格で、言語聴覚士法(平成9年法律第132号)により、資格を持たない者がその名称を使うことは制限されています。逆に言えば、あなたが「言語聴覚士」として登壇することには、それ自体に信頼の裏づけがあります。

一方で、同法には診療の補助として行う行為について医師または歯科医師の指示を要する旨の規定があり、講座で扱う内容がその範囲に踏み込むかどうかは、内容と実施の形によって判断が変わります。「この資格があるからここまでやってよい」と自分で断定せず、迷う内容については主催者側と確認し、必要に応じて所属先や職能団体、行政の担当部署に照会してください。特に、個別の対象者に対する評価や訓練の実施を含む形の講座は、判断が難しくなります。

医学的な効果を断定しない

講座で「この体操をすれば誤嚥性肺炎が防げます」と言い切るのは危険です。予防の可能性を示す表現にとどめ、個別の状態については主治医や担当の専門職への相談を促す。これは自分を守るためでもあり、受講者を守るためでもあります。

物品を紹介する場合はさらに注意が必要です。特定の商品について治療的な効果を示す表現は、薬機法(医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律)や景品表示法の規制に触れる可能性があります。企業からスポンサードを受けて話す場合は、関係性の明示も必要になります。

勤務先との関係

副業として講師を受ける場合、勤務先の就業規則の確認が先です。届出の要否、競合となる相手先の制限、勤務時間中の活動の扱いなど、確認すべき項目があります。手続きの詳細は制度ごとに異なるため、規程を読み、人事に確認してください。

運営者として見てきた、依頼が続く講師の共通点

在宅ワークとフリーランスの市場を20年ほど見てきた立場から言えば、講師の仕事が続く人には共通した特徴があります。話がうまい人ではなく、依頼した側の目的を先に聞く人です。

事業所が研修を発注する背景には、たいてい具体的な事情があります。誤嚥事故が起きた、新人が一斉に入った、家族からの苦情があった。ここを聞かずに標準的な内容を話すと、「勉強にはなったが現場は変わらない」で終わります。逆に、事前に管理者へ15分の聞き取りをして、その事業所の実情に合わせて事例を差し替える講師は、翌年も呼ばれます。

もう一つ気づくのは、長く続く人ほど、教材を作り直すのではなく育てていることです。同じ90分の講座を毎回ゼロから作る人は疲弊して辞めていきます。一度作った骨組みを残し、事業所ごとに事例と演習だけ入れ替える。この作り方に切り替えた人は、準備時間が回を追うごとに減り、時給が上がっていきます。

三つ目に、続く講師は受講後の連絡を切らしていません。研修が終わって1週間ほど経った頃に、当日出た質問への補足を一枚のメモにして送る。それだけで、次年度の研修担当者の頭に名前が残ります。事業所側は毎年テーマと講師を探す手間を抱えているので、こちらから声をかけると「ちょうど探していた」となることが少なくありません。営業という言葉で身構える必要はなく、やっているのは臨床でのフォローアップと同じことです。

逆に、一度きりで終わる人には、当日の完成度に力を注ぎすぎて、その後の接点を作らないという共通点があります。研修の価値は当日の90分だけでは決まりません。持ち帰った内容が現場で使われて初めて、依頼した側の目的が果たされます。使われたかどうかを確かめる連絡が、次の依頼の入口になります。

教える仕事は、臨床の知識をそのまま売る仕事ではありません。知識を、相手が明日使える形に組み替えて渡す仕事です。臨床で家族に説明してきた経験は、その組み替えの訓練そのものでした。専門職として独立や副業を組み立てていく道筋は、隣接する職種の事例が参考になります。キャリアコンサルタント資格の活かし方|副業・独立ガイド【2026年版】には、資格を軸に相談業と講座業を組み合わせる進め方が整理されています。

よくある質問

Q. 臨床経験が浅くても講師の仕事はできますか?

教える相手によります。介護職員や家族、保育士など専門外の人に基礎を伝える講座であれば、経験年数より説明のわかりやすさが重視されます。まずは勤務先の内部勉強会で1本作り、その実績を持って外部の依頼に応募するのが現実的な順番です。同業の専門家向け講座は、経験を積んでからで構いません。

Q. 講師料の相場はどのくらいですか?

自治体や地域住民向けの講座は1回1万円から3万円、介護事業所などの職員研修は90分で3万円から8万円が目安です。養成校の非常勤は時給5,000円から1万5,000円程度になります。金額を決めるときは講義時間だけでなく、資料作成や移動を含めた総時間で割り戻して判断してください。

Q. オンライン講座を自分で開くとき、何から準備すればよいですか?

テーマを一つに絞り、想定する受講者に困りごとを5人ほど聞くところから始めます。次に90分の構成を組み、通しで話して録画し、話す速度を確認します。機材は安定した回線と外付けマイクがあれば十分で、カメラは内蔵で足ります。集客の見通しが立つまでは少人数で開催してください。

Q. 講座で扱ってよい内容の線引きはどう判断しますか?

言語聴覚士法には名称の使用制限があり、診療の補助として行う行為には医師または歯科医師の指示を要する旨の規定があります。個別の対象者への評価や訓練を含む形になる場合は判断が難しいため、自分で範囲を断定せず、主催者と内容を確認したうえで、所属先や職能団体、行政の担当窓口に照会してください。

この記事について

@SOHO
編集部

監修:@SOHO編集部

2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを20年運営。編集部が事実確認のうえ公開しています。

公開:2026年4月19日最終更新:2026年8月29日
朝比奈 蒼

この記事を書いた人

朝比奈 蒼@SOHO編集部

ITメディア編集者

IT系メディアで編集・ライティングを担当。クラウドソーシング業界の動向やサービス比較など、客観的な視点での記事を執筆しています。

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