退職後も社会保険を続ける方法

丸山 桃子
丸山 桃子
退職後も社会保険を続ける方法

この記事のポイント

  • 退職後に社会保険を継続する方法を
  • 健康保険の任意継続と国民健康保険
  • 家族の扶養の3つに分けて整理しました

退職日が決まったあと、いちばん後回しにされやすいのが社会保険の手続きです。ところが健康保険の任意継続には「退職日の翌日から20日以内」という短い期限があり、ここを逃すと選択肢がひとつ消えます。社会保険を継続する方法は大きく3つあり、どれが安く済むかは前年の所得と家族の人数で入れ替わります。この記事では、任意継続の条件と保険料の決まり方、国民健康保険や家族の扶養との比べ方、そして年金の側で必要になる手続きまでを順番に整理します。

退職した日に切れるもの、続けられるもの

会社員が入っている社会保険は、ひとまとまりに見えて中身は別々の制度です。健康保険、厚生年金保険、雇用保険、労災保険の4つが同じ給与明細に並んでいるだけで、退職後の扱いはそれぞれ違います。ここを分けて考えないと、何を手続きすればよいのかが見えません。

健康保険の資格は、退職日の翌日に失われます。手元の保険証やマイナ保険証の資格情報は、退職日を境に使えなくなります。この状態で病院にかかると、いったん全額を自分で払うことになります。あとから加入先が決まれば精算できますが、窓口では十割を求められるので、空白期間を作らないことが第一です。

厚生年金保険も同じ日に資格を失い、そのままでは国民年金の第1号被保険者に切り替える手続きが必要になります。放っておくと未納期間が積み上がり、将来の老齢基礎年金が減るだけでなく、万一のときの障害基礎年金が受け取れなくなる可能性があります。年金は健康保険ほど急かされないぶん、忘れられやすいところです。

雇用保険は、退職によって「被保険者ではなくなる」のと同時に、条件を満たせば失業等給付を受け取る側に回ります。労災保険は在職中の業務上のケガや病気に対する制度なので、退職後に新しく続ける手続きはありません。つまり退職後に自分で動く必要があるのは、健康保険と年金の2つです。

そして健康保険には、続けるという選択肢が用意されています。これが任意継続です。全国健康保険協会(協会けんぽ)は、退職後の健康保険を「健康保険任意継続」「国民健康保険」「家族の健康保険(被扶養者)」の3つの選択として示しています。どれかひとつを選ぶことになるので、金額を比べてから決めるのが基本です。

健康保険を続ける「任意継続」の中身

任意継続とは、退職前に入っていた会社の健康保険に、退職後も個人の資格で残る仕組みのことです。加入していた健康保険がそのまま続くので、保険証の発行元も、受けられる給付の種類も在職中とほぼ変わりません。家族を扶養に入れていた人は、その扶養もそのまま引き継げます。

加入できる条件は2つです。1つ目は、退職日までに被保険者期間が継続して2か月以上あること。短期間で辞めた場合は使えません。2つ目は、退職日の翌日から20日以内に手続きをすることです。協会けんぽの場合、住んでいる都道府県の支部に「健康保険任意継続被保険者資格取得申出書」を出します。20日目が土日や祝日にあたるときは翌営業日までになりますが、郵送で送る場合は20日以内に到着している必要があります。

加入できる期間は2年間です。ただし、その前に資格を失う事由がいくつか決まっています。就職して別の健康保険の被保険者になったとき、保険料を納付期限までに納めなかったとき、後期高齢者医療制度の被保険者になったとき、本人が亡くなったとき、そして任意継続被保険者でなくなることを希望すると申し出たときです。

この最後の「申し出れば抜けられる」という点は、独立を考えている人にとって重要です。かつては自分の意思では途中でやめられませんでしたが、今は資格喪失申出書を出せば抜けられます。つまり1年目は任意継続で様子を見て、前年の所得が下がった2年目から国民健康保険に移る、という組み立てが可能になりました。国民健康保険料は前年の所得で決まるため、独立2年目は保険料が大きく下がる人が多く、この乗り換えが効きます。

注意したいのが、納付期限を1日でも過ぎると資格を失うという点です。うっかり納め忘れただけでも原則として戻れません。フリーランスとして仕事を始めると、入金や請求の締め切りに気を取られて納付書を放置しやすくなります。口座振替にしておくか、後述する前納を使って払い切ってしまうのが安全です。

任意継続の保険料はどう決まるか

任意継続でいちばん誤解されているのが保険料です。在職中に給与から引かれていた額と同じだと思っていると、初回の納付書で驚くことになります。会社が半分を負担していた分がなくなるため、保険料は在職中に控除されていた額のおよそ2倍になります。

具体的な計算は、退職時の標準報酬月額に、住んでいる都道府県ごとの健康保険料率(子ども・子育て支援金率を含む)を掛けた額です。40歳から64歳までの人は、ここに介護保険料が加わります。標準報酬月額とは、給与の額を等級で区切った金額のことで、給与明細や健康保険の資格情報に記載されています。

ここに上限があるのが任意継続の大きな特徴です。協会けんぽでは、退職時の標準報酬月額が32万円を超えていた場合でも、32万円として計算されます。給与が高かった人ほど、この頭打ちの効果で負担が抑えられます。逆に言えば、標準報酬月額がもともと32万円を下回っていた人には頭打ちが効かず、素直に2倍になります。自分がどちら側かで、任意継続の有利不利が変わります。

保険料は原則として2年間変わりません。前年の所得が下がっても下がらない代わりに、上がっても上がりません。ただし例外があり、加入中に40歳になって介護保険の第2号被保険者になったとき、逆に65歳になって外れたとき、都道府県別の保険料率が改定されたとき、標準報酬月額の上限が変わったとき、保険料率の違う都道府県へ引っ越したときは変わります。

納付は毎月10日までの納付書払いか口座振替です。そして見落とされがちなのが前納制度です。

保険料の前納制度を利用して、保険料を事前に一括して納付すると、毎月納付の手間が省けるほか、納め忘れの防止になります。また、保険料が割引[年4%(複利現価法による)]になります。 出典: kyoukaikenpo.or.jp

前納できるのは、4月分から9月分、10月分から翌年3月分の6か月単位か、4月分から翌年3月分の12か月単位です。年度の途中で加入した人は、資格を取得した月の翌月分から9月分または3月分までをまとめて納められます。納め忘れで資格を失う事故を防げるうえ、割引も付くので、手元資金に余裕があるなら使う価値があります。なお、納付したときの領収証書は確定申告で社会保険料控除に使うため、再発行ができません。まとめて保管してください。

任意継続と国民健康保険、家族の扶養の比べ方

3つの選択肢は、手続き先も条件も別々です。協会けんぽが示している整理をもとにすると、次のように並びます。

比べる点 任意継続 国民健康保険 家族の健康保険
手続き先 住んでいる都道府県の協会けんぽ支部 住んでいる市区町村の国民健康保険担当課 家族の勤務先
期限 退職日の翌日から20日以内 退職日の翌日から14日以内が目安 家族の勤務先に確認
保険料の決まり方 退職時の標準報酬月額と都道府県別料率 世帯の人数と前年の所得 負担なし
家族の扱い 扶養のまま継続できる 家族も加入者として人数分かかる 条件を満たせば扶養に入れる
期間 最長2年 制限なし 条件を満たす間

判断の軸はそれほど多くありません。1つ目は前年の所得です。国民健康保険料は前年の所得で決まるので、退職前の給与が高かった人は1年目の国民健康保険料が高く出ます。2つ目は家族の人数です。国民健康保険には扶養という考え方がなく、配偶者や子どもも加入者として数えられ、1人あたりの均等割が積み上がります。扶養家族が多い人ほど任意継続が有利になりやすい理由はここにあります。3つ目は標準報酬月額です。32万円の頭打ちに届いていた人は、任意継続の保険料が実際の給与水準より軽くなります。

いちばん確実なのは、両方の金額を実際に出して並べることです。任意継続の見込み額は協会けんぽの支部に聞けば教えてもらえます。国民健康保険料は市区町村の窓口か、公式サイトの試算ページで概算が出ます。退職日が決まった時点で両方を問い合わせておけば、20日という期限に追われずに済みます。

家族の扶養に入る道も、収入の見込みが立たない時期には現実的な選択です。被扶養者には保険料の負担がありません。ただし扶養に入れるかどうかの条件は、家族が加入している健康保険ごとに定められており、収入の基準や必要書類が違います。独立直後で売上が読めないなら、まず家族の勤務先に条件を確認してから、任意継続と国民健康保険の比較に進むのが早いです。

任意継続のメリットとデメリット

メリットは3つに整理できます。1つ目は、扶養家族をそのまま維持できること。配偶者と子どもを扶養に入れている人にとって、これが金額面で最大の差になります。2つ目は、保険料に上限があること。給与水準が高かった人ほど恩恵が大きくなります。3つ目は、在職中と同じ給付を受けられることです。医療機関での窓口負担の割合は在職中と同じで、高額療養費や健診の扱いも基本的に変わりません。

デメリットも3つあります。1つ目は、会社負担がなくなるぶん金額が跳ね上がること。手取りから引かれていたときの感覚で予算を組んでいると、初月で資金繰りが苦しくなります。2つ目は、所得が下がっても保険料が下がらないこと。国民健康保険にある軽減や減免のような、所得減少を理由にした値引きの仕組みが任意継続にはありません。3つ目は、納付期限を過ぎると資格を失うことです。

給付の面でも押さえておきたい線引きがあります。傷病手当金と出産手当金は、在職中から継続して受けている場合に限り、任意継続に移ったあとも引き続き申請できます。いっぽう、任意継続被保険者になってから発生した病気やケガについては、傷病手当金は支給されません。つまり任意継続は「医療費の給付は在職中と同じ、休業中の所得補償は基本的に付かない」と理解しておくのが正確です。この点は、独立後の働けないリスクをどう埋めるかという話に直結します。

2年という期限にも触れておきます。任意継続は最長2年で必ず終わります。その先は国民健康保険に入るか、就職して別の健康保険に入るか、家族の扶養に入るかのいずれかです。2年後に何もしなければ自動で国民健康保険に切り替わるわけではなく、市区町村への届出が必要になります。カレンダーに終了月を書き込んでおくと、切れ目を作らずに済みます。

20日という期限を落とさないための段取り

任意継続の相談でいちばん多いのが「20日を過ぎてしまった」という話です。この期限は原則として動きません。退職日が月末に寄っていると、引き継ぎや引っ越しと重なって手続きが後回しになりやすいので、先に段取りを決めておきます。

退職日が決まった時点で、まず在職中に標準報酬月額を確認します。給与明細の控除欄や、会社の担当者に聞けば分かります。この数字がないと任意継続の保険料が試算できません。次に、住んでいる市区町村の国民健康保険の試算ページで、前年の所得をもとにした概算を出します。この2つが並んだ時点で、どちらを選ぶかはほぼ決まります。

退職日を過ぎたら、申出書を協会けんぽの支部へ送ります。郵送なら20日以内の必着なので、退職の翌週には投函する心づもりでいてください。並行して、年金の切り替えと、雇用保険の手続きのために離職票が届くのを待ちます。離職票は会社が交付するもので、退職から2週間程度かかることが多く、これを待っているうちに20日が過ぎるという流れが典型的な失敗です。任意継続の手続きは離職票を待つ必要がないので、先に進めて構いません。

国民健康保険を選ぶ場合も期限があります。多くの市区町村が、退職日の翌日から14日以内の届出としています。こちらも遅れると、その間の医療費をいったん全額負担することになります。どちらを選ぶにせよ、退職後の2週間が勝負どころです。

万一、20日を過ぎてしまった場合は、国民健康保険に切り替えるか、家族の扶養に入れるかを確認することになります。国民健康保険には、所得が基準を下回る世帯の軽減や、会社都合で辞めた人の軽減、所得が大きく減った人の減免といった仕組みがあるため、任意継続を逃したから終わりではありません。市区町村の窓口で、自分が当てはまる制度がないかを確かめてください。

国民健康保険を選んだときに使える軽減と減免

任意継続ではなく国民健康保険を選んだ場合、任意継続にはない値引きの仕組みが使えます。ここを知っているかどうかで、比較の結論が変わることがあります。

まず、申請しなくても自動で適用される法定軽減があります。世帯主と加入者全員の前年の所得が一定額を下回ると、加入者1人あたりにかかる均等割額が7割、5割、2割のいずれかで軽くなります。東京都中央区が公表している令和8年度の基準では、7割は43万円に(給与所得者等の数から1を引いた数)×10万円を足した額以下、5割はそこに31万円×被保険者数を、2割は57万円×被保険者数を足した額以下です。前年に給与があった人はこの基準を超えやすいものの、加入する家族が多い世帯は基準額も上がります。

次に、倒産や解雇、雇い止めで職を失った人向けの軽減があります。離職時に65歳未満で、雇用保険の特定受給資格者または特定理由離職者にあたる人が対象です。前年の給与所得を100分の30とみなして保険料を計算し直すため、退職前の給与が高かった人ほど効き方が大きくなります。効く期間は離職日の翌日から翌年度の末日までで、最大でおよそ2年分です。届出をしないと適用されないので、雇用保険受給資格者証か雇用保険受給資格通知の全件版を持って市区町村の窓口へ行きます。

さらに、自治体が条例で定める減免があります。災害で財産に被害を受けた場合、その年の所得が前年から大きく落ち込む見込みの場合などに、申請して認められれば所得割額の一部が減ります。北九州市の例では、失業や事業の休廃止で所得が前年比30パーセント以上減り、かつ300万円以下になる見込みの世帯について、所得割額の40から80パーセントを減免しています。基準も割合も自治体ごとに違うため、住んでいる市区町村のページを確認してください。

ここで効いてくるのが、任意継続にはこうした所得連動の値引きがないという点です。自己都合で辞めたのか会社都合で辞めたのかによって、国民健康保険側の金額が大きく動きます。会社都合の退職であれば、単純な保険料の比較ではなく、軽減を当てたあとの金額で比べないと判断を誤ります。20日の期限の中で、この確認まで済ませておきたいところです。

退職前にやっておくと差が出る準備

手続きの段取りとは別に、退職の前に済ませておくと後が楽になることがあります。ひとつ目は健康診断です。会社の健康保険で受けられる健診は、資格を失うと同じ条件では受けられません。任意継続に移れば協会けんぽの健診を受けられますが、国民健康保険に移ると市区町村の制度に変わり、対象年齢や内容が違ってきます。在職中に受けられるものは受けておくのが無駄がありません。

ふたつ目は、継続して治療している病気やケガがある場合の確認です。退職日の時点で働けない状態にあり、被保険者期間が継続して1年以上ある人は、傷病手当金の継続給付の対象になり得ます。逆に、退職日に一時的に出社できる状態だと対象から外れることがあります。主治医と会社の担当者に、退職日の扱いを先に相談しておく価値があります。

みっつ目は、標準報酬月額と保険料率の確認です。任意継続の保険料はこの2つで決まります。給与明細の控除欄を1年分ためておくと、どの等級にいたのかがすぐ分かります。独立後に確定申告をするとき、退職までに給与から引かれた社会保険料の合計も必要になるので、源泉徴収票とあわせて保管してください。

年金のほうは自動では続かない

健康保険の手続きに気を取られていると抜けるのが年金です。厚生年金保険には任意継続にあたる制度がありません。会社員だった人は、退職によって国民年金の第1号被保険者になり、自分で保険料を納める立場に変わります。市区町村の国民年金担当窓口で種別の変更を届け出ます。配偶者を扶養に入れていた場合、その配偶者も第3号被保険者から第1号被保険者に変わるので、2人分の手続きが必要です。

保険料が負担になる場合は、免除と納付猶予の制度があります。本人と配偶者、世帯主の前年所得が一定額以下なら、申請して承認されることで保険料の納付が免除されます。免除は全額、4分の3、半額、4分の1の4段階です。20歳以上50歳未満で本人と配偶者の前年所得が基準内なら、納付猶予という形もあります。承認の基準は次のとおりです。

区分 前年所得の基準
全額免除 (扶養親族等の数+1)×35万円+32万円
4分の3免除 88万円+扶養親族等控除額+社会保険料控除額等
半額免除 128万円+扶養親族等控除額+社会保険料控除額等
4分の1免除 168万円+扶養親族等控除額+社会保険料控除額等
納付猶予 (扶養親族等の数+1)×35万円+32万円

退職した人にとってありがたいのが、失業等による特例免除です。失業や倒産、事業の廃止といった事実が確認できれば、本人の前年所得に関係なく免除や納付猶予を受けられます。必要になるのは、勤務先から交付される雇用保険被保険者離職票の写しや、ハローワークから交付される雇用保険受給資格者証、雇用保険受給資格通知の写しです。廃業した人は、税務署への個人事業の開廃業等届出書の写しなどが使えます。前年に会社員として普通に給与を受け取っていた人ほど所得の基準では弾かれるので、この特例が実質的な入口になります。

免除を受ける意味は、未納との差にあります。全額免除の期間は、老齢基礎年金を計算するとき、全額を納付した場合の2分の1として反映されます。未納のままだとこの2分の1も付きません。さらに免除の期間は、障害基礎年金や遺族基礎年金の受給資格期間にも算入されます。未納は算入されません。日本年金機構は、免除と納付猶予の扱いの違いや、国民年金保険料の免除制度・納付猶予制度の申請方法を公開しています。申請できるのは納付期限から2年を経過していない期間なので、過去にさかのぼれる余地もあります。

承認を受けた期間の保険料は、10年以内であれば後から納める追納ができます。独立して収入が安定してから、余裕のある年にまとめて追納して年金額を戻す、という使い方ができます。納付猶予は受給資格期間には入るものの年金額には反映されないため、追納の優先度が高い区分です。

退職後も受け取れる給付がある

健康保険の資格を失っても、条件を満たせば受け取り続けられる給付があります。代表が傷病手当金の資格喪失後の継続給付です。病気やケガで働けない状態のまま退職した人が対象になります。

条件は2つです。1つ目は、資格を失う日の前日、つまり退職日までに被保険者期間が継続して1年以上あること。この1年に、任意継続被保険者だった期間や国民健康保険に入っていた期間は含みません。2つ目は、退職日の時点で実際に傷病手当金を受けているか、受けられる状態にあることです。受けられる状態とは、業務外の病気やケガの療養で仕事に就くことができず、連続する3日間の待期を満たしているという意味です。

注意が必要なのは、一度でも仕事に就ける状態になると、その後また働けなくなっても支給が再開されない点です。退職後に少しよくなったので短時間だけ働いた、という行動が給付を止めてしまうことがあります。傷病手当金の支給期間は、支給を開始した日から通算して1年6か月です。支給額は、支給開始日以前の12か月間の標準報酬月額を平均した額を30で割り、その3分の2にあたる金額が1日あたりの目安になります。制度の詳細は傷病手当金のページで確認できます。

出産手当金にも同じ考え方の継続給付があります。こちらも在職中から継続して受けている場合が対象です。任意継続に移ったあとに発生した出産については、出産手当金は支給されません。いっぽう出産育児一時金は、任意継続の被保険者でも受け取れます。似た名前で扱いが違うので、産前産後の時期に退職を考えている人は、どちらに当たるのかを先に確認しておくと計画が立てやすくなります。

確定申告と、その先の収入設計

退職後に払った社会保険料は、確定申告で全額が社会保険料控除の対象になります。任意継続の保険料も、国民健康保険料も、国民年金保険料も同じ扱いです。事業の経費ではなく所得控除なので、帳簿では区別して扱います。この線引きは迷いやすいところなので、個人事業主の保険料は経費にできる?仕訳と確定申告の方法で仕訳の考え方を確認しておくと、初年度の申告でつまずきません。

生計を同じくする家族の分を自分が払った場合も、払った人の控除に入れられます。配偶者の国民年金保険料を自分の口座から納めているなら、自分の申告で控除できます。世帯でどちらの申告に入れるかは、所得の多いほうに寄せるのが基本です。ただし個別の適用の可否は事情によって変わるので、判断に迷う部分は税務署か税理士に確認してください。

保障の穴をどう埋めるかも考えどころです。任意継続に移ると、新たに発生した病気やケガの休業に対する所得補償はありません。会社員時代の団体保険も退職で切れます。独立後にどこまで保障を持つかは年代と家族構成で変わるので、生命保険おすすめ比較【2026年版】|年代別の選び方のような整理を出発点にして、必要な範囲だけ足すのが無駄がありません。

市場を長く見てきた立場からの観察

フリーランスと在宅ワークの市場を20年運営してきた立場から言えば、独立初年度でつまずく人の多くは、仕事が取れないからではなく、固定費の到来時期を読み違えているからです。国民健康保険料の決定通知は6月ごろ、住民税も同じ時期、任意継続の保険料は毎月10日。この山が売上の谷と重なると、単価の低い仕事を慌てて受ける流れに入りやすくなります。先に金額と時期を紙に書き出している人は、同じ売上でも判断が落ち着いています。

もうひとつ、運営者として見てきた限りでは、長く続く人ほど単発の受注を数えるのではなく、任せると楽だと思われる関係づくりに時間を使っています。たとえばECサイトの運営代行の領域では、商品撮影のディレクション、商品説明文の作成、SNSの運用、在庫の管理といった作業を、ばらばらの単発ではなく月額でまとめて引き受ける形が定着しました。依頼する側は窓口が1つで済み、受ける側は毎月の収入が読めます。この「読める」という状態が、保険料の支払いを迷わず回せるかどうかを分けます。

仲介手数料が差し引かれない直接取引の価値も、ここに効いてきます。同じ予算を持つ依頼者は、中間マージンが乗らなければその分だけ多く頼めます。受ける側は同じ仕事量でも手数料0%のぶん手取りが厚くなります。1件あたりの差はささやかでも、1年を通すと社会保険料を払ったあとに残る金額として表れます。額面の単価を追うより、手取りの厚みを積むほうが、固定費に強い働き方になります。

職種の選び方についても触れておきます。市場全体では、マーケティングとセキュリティをまたぐ支援の需要が伸びており、AI・マーケティング・セキュリティのお仕事のように複数の領域を横断する仕事が増えています。継続契約になりやすいのはアプリケーション開発のお仕事のように納品後も運用が続く分野です。自分の職種の相場を知りたいなら、ソフトウェア作成者の年収・単価相場著述家,記者,編集者の年収・単価相場が目安になります。ネットワーク周りの案件に広げたい人にとってはCCNA(シスコ技術者認定)のような資格が提案の裏づけになります。

独立後の働き方についても、ひとつだけ現場の実感を添えておきます。案件の入口で「何ができますか」と聞かれたとき、作業の名前を並べるより、依頼する側が抱えている困りごとの言葉で返すほうが話が早く進みます。撮影ができます、より、写真がそろわなくて商品ページが公開できない状態を解けます、のほうが伝わります。これは文章の技術ではなく、相手の業務を知っているかどうかの差です。そして相手の業務を知っている人には、次の相談が来ます。月ごとの収入が読める状態は、こうした積み重ねの結果として現れます。

社会保険を続けるかどうかは、節約の話であると同時に、独立してからの2年をどう設計するかという話でもあります。1年目は任意継続で家族の扶養を守り、前年の所得が下がる2年目に国民健康保険へ移る。この形が取れるようになったのは制度が変わったからで、知っていれば選べます。退職日が決まったら、まず標準報酬月額を確認するところから始めてください。

よくある質問

Q. 任意継続の手続きは退職後いつまでにすればよいですか?

退職日の翌日から20日以内です。協会けんぽの場合は住んでいる都道府県の支部に、健康保険任意継続被保険者資格取得申出書を提出します。20日目が土日や祝日なら翌営業日までですが、郵送の場合は20日以内に必着です。離職票を待つ必要はないので、退職後すぐに進めてください。加入には退職日までに被保険者期間が継続して2か月以上あることも必要です。

Q. 任意継続と国民健康保険はどちらが安いですか?

前年の所得が高く、扶養家族が多い人は任意継続が有利になりやすく、単身で前年の所得が低い人は国民健康保険が有利になりやすい傾向です。協会けんぽの任意継続は退職時の標準報酬月額が32万円を超えていても32万円で計算されるため、給与が高かった人ほど頭打ちが効きます。両方の金額を試算して比べてください。

Q. 任意継続は途中でやめられますか?

やめられます。任意継続被保険者でなくなることを希望する旨を申し出れば資格を喪失します。資格喪失申出書の提出が必要です。前年の所得が下がる2年目から国民健康保険に移る、という使い方ができます。なお保険料を納付期限までに納めなかった場合も資格を失うため、納め忘れには注意してください。

Q. 退職後に国民年金の手続きを忘れるとどうなりますか?

未納期間となり、将来の老齢基礎年金が減るほか、障害基礎年金や遺族基礎年金を受け取れない場合があります。保険料の納付が難しいときは免除や納付猶予を申請してください。失業や倒産、廃業の事実が確認できれば、本人の前年所得に関係なく利用できる特例があります。離職票や雇用保険受給資格者証の写しを用意して窓口へ相談してください。

この記事について

@SOHO
編集部

監修:@SOHO編集部

2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを20年運営。編集部が事実確認のうえ公開しています。

公開:2026年8月13日最終更新:2026年9月23日
丸山 桃子

この記事を書いた人

丸山 桃子@SOHO編集部

アパレルEC運営支援・SNSコンサル

アパレル企業でMD・ECバイヤーとして勤務後、フリーランスに独立。アパレルブランドのEC運営支援・SNS運用を手がけ、ファッション・EC系の記事を執筆しています。

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