蜂蜜を販売するのに要る許可と表示|自宅で採った分を世に出す前に


この記事のポイント
- ✓食品衛生法の営業届出と許可の境目
- ✓養蜂振興法の飼育届の期限
- ✓食品表示法のラベル項目を一次資料で整理します
自宅の庭やベランダで採れた蜂蜜を売りたい。そう考えて「蜂蜜販売許可」と調べると、許可が必要と書いている記事と、届出だけでよいと書いている記事の両方が出てきます。結論から言うと、どちらも部分的に正しいです。はちみつをそのまま瓶に詰めて売る場合、食品衛生法の営業許可は不要で営業届出で足ります。ただし、他の食品を混ぜたり加工したりすると許可が必要な業種に入ることがあります。そして食品衛生法とは別に、蜜蜂を飼っている人には毎年の飼育届の義務があり、売るときにはラベルの表示義務もかかります。関わる法律が3つに分かれているので、話がこじれるのです。この記事では、3つの法律を順番に分けて、自分の場合はどこに当たるのかが判断できる形に整理します。
蜂蜜を売るまでに関わる3つの法律を分けて考える
最初にやるべきことは、自分がどの段階にいるかを確定させることです。関わる法律は3つあります。
ひとつめは養蜂振興法です。蜜蜂を飼う行為そのものに届出の義務を課している法律で、窓口は都道府県です。ふたつめは食品衛生法です。採った蜂蜜を瓶に詰めて売るという行為に対して、営業許可か営業届出のどちらかを求めます。窓口は保健所です。みっつめは食品表示法です。売る商品のラベルに何を書くかを定めています。窓口は消費者庁と都道府県です。
これ、知らない人が本当に多いのですが、3つはそれぞれ別の手続きで、どれかを済ませれば他が免除されるという関係にはありません。蜜蜂の飼育届を出したから保健所の届出が要らない、ということはないのです。逆に、蜂蜜を仕入れて売るだけの人なら、養蜂振興法の飼育届は関係ありません。自分がどこに当たるかで必要な手続きが変わります。
判断の分かれ目を整理すると次のようになります。自分で蜜蜂を飼っているかどうか。採った蜂蜜を自分で瓶に詰めるかどうか。他の食品を混ぜるかどうか。そして、誰に売るかです。家族や近所に無償で分けるだけなら業としての販売にはなりませんが、対価を受け取って継続的に売るなら事業です。ここの線引きは自治体の判断が入るので、迷ったら保健所に電話で確認するのが最も早い方法です。
蜂蜜という商品は、加工らしい加工をしないので「何もしていないのに手続きが要るのか」と感じやすい分野です。しかし、食品を容器に詰めて他人に売るという点では、他の食品と同じ枠組みの中にあります。ここを軽く見て無届けで始めてしまうと、後で指導を受けることになります。最初の電話を1本入れておくだけで避けられる話です。
蜜蜂を飼うなら、毎年1月31日までの飼育届が要る
自分で蜜蜂を飼っている人は、養蜂振興法の届出から始まります。この法律の第3条は、蜜蜂の飼育を行う者は農林水産省令の定めるところにより、毎年、その住所地を管轄する都道府県知事に届け出なければならないと定めています。
届け出る内容は4つです。氏名または名称と住所、蜂群数、飼育の場所とその期間、そして農林水産省令で定めるその他の事項です。提出の期限は、養蜂振興法施行規則により毎年1月31日までとされています。年に1回の届出なので、飼い始めた年だけでなく毎年出す必要があります。届け出た内容に変更があったときは、変更があった日から1か月以内に変更の届出をします。
例外もあります。業として蜜蜂の飼育を行う人以外が飼育する場合で、蜂群の配置の適正確保と防疫の迅速な実施に支障を及ぼすおそれがないと認められる場合は、届出が不要になります。施行規則では具体的に、農作物等の花粉受精に使うために飼育する場合、密閉構造の飼育管理設備で飼育する場合、そして反復利用が可能な蜂房を利用しないで飼育する場合で都道府県知事が支障がないと認める場合が挙げられています。
つまり、趣味の範囲で飼っていて、しかも上の例外に当たるなら届出が要らない可能性があります。ただし、採った蜂蜜を売るなら「業として」の判断が変わってくる余地があるので、例外に当てはまると自分で決めないほうが安全です。都道府県の畜産担当課に自分の飼育状況を伝えて、届出が必要かどうかを確認してください。判断は都道府県ごとの実情を踏まえて定められる仕組みになっているため、隣の県と結論が違うこともあります。
飼育届には、もうひとつ実務上の意味があります。届出をしておくと、周辺で家畜の伝染病が発生したときに行政から連絡が来ます。蜜蜂の病気は群れごと失う結果につながるので、情報が届く状態にしておくことは自分を守る行為です。義務だから出すというより、備えとして出しておくものだと考えたほうが納得しやすいはずです。
採って瓶に詰めるときは、営業許可ではなく営業届出
ここが「蜂蜜販売許可」という検索語の中心です。食品衛生法は2021年6月1日から仕組みが変わり、営業許可が必要な業種を絞り込んだうえで、許可の対象にならない事業者には営業届出を求める形になりました。
瓶詰めの食品を作る営業は「密封包装食品製造業」という許可業種に当たります。密封包装食品とは、レトルトパウチ食品、缶詰、瓶詰その他の容器包装に密封された食品で、保存に冷凍や冷蔵を必要としないもののことです。ここまで読むと蜂蜜の瓶詰めも許可が必要に見えます。ところが、厚生労働省が公開している営業許可業種の解説には、はっきりと除外が書かれています。
除外(許可不要な)食品として、食酢、はちみつを省令で規定。なお、食酢にはすし酢が含まれる。 出典: mhlw.go.jp
つまり、はちみつは省令で許可の対象から外されています。したがって、蜂蜜をそのまま瓶に詰めて売るだけなら、密封包装食品製造業の許可を取る必要はありません。代わりに必要なのが営業届出です。
営業届出の中身は、営業許可と比べるとかなり軽いものです。届け出る内容は、届出者の氏名、施設の所在地、営業の形態、主として取り扱う食品等に関する情報、そして食品衛生責任者の氏名です。許可と違って施設基準の要件はなく、更新の必要もありません。廃業したときに届け出ればよい仕組みです。手続きは保健所の窓口でも、食品衛生申請等システムを使ったオンラインでも行えます。
一方で、営業届出が不要な場合も定められています。公衆衛生に与える影響が少ない営業として、食品の輸入業、貯蔵または運搬のみをする営業、常温で長期間保存しても品質の劣化による危害のおそれがない包装食品の販売業などが挙げられています。また、農家や漁家が行う採取の一部と見なせる行為についても、営業届出と衛生管理計画の作成が不要とされています。蜂蜜の採蜜がこの範囲に入るかどうかは、瓶詰めして売る形かどうかで判断が変わります。自分の作業がどこに当たるかは、作業の流れを説明したうえで保健所に判断してもらってください。
許可が必要になる境目は「混ぜたとき」にある
除外されているのは、あくまで「はちみつ」です。他の食品を混ぜた時点で、商品はもう「はちみつ」ではなくなります。ここが許可と届出を分ける境目です。
たとえば、蜂蜜にレモンの果汁や果肉を入れて瓶詰めにすると、商品は蜂蜜漬けの加工品になります。この場合、密封包装食品製造業の許可が必要になる可能性があります。ナッツを漬け込んだもの、ハーブを加えたもの、生姜を入れたものも同じです。混ぜる相手が何かによって、該当する許可業種が変わることもあります。菓子の材料として使う形に加工するなら菓子製造業、飲料にするなら清涼飲料水製造業という具合です。
もうひとつ注意が要るのが、加熱や濃縮の工程です。蜂蜜を温めて結晶を溶かす程度なら製造工程の一部として扱われますが、成分を変える加工に踏み込むと話が変わります。どこまでが同じ商品の範囲なのかは、工程を具体的に説明しないと判断できません。だから、混ぜる予定があるなら必ず事前に保健所へ相談してください。商品を作ってから「これは許可が必要です」と言われると、在庫が売れなくなります。
蜂蜜を小分けにする作業についても、解説に説明があります。密封包装食品については、密封された段階で喫食の最小単位になり、開封して密封性を失うと密封包装食品ではなくなるため、小分けという概念が存在し得ないと整理されています。つまり、大きな容器から小さな瓶に移す作業は、小分け業ではなく製造として扱われる考え方です。
実際に相談を受けた例で言うと、蜂蜜そのものは届出で始めたのに、人気が出たので蜂蜜レモンを追加した段階で許可が必要になり、販売を一時止めることになったケースがあります。商品を増やすタイミングは、手続きを見直すタイミングでもあります。ラインアップを広げる前に、その商品が何の業種に当たるかを確認する習慣をつけてください。この判断は個別の工程で変わるので、断定的な結論を自分で出さず窓口に確認するのが確実です。
自分で採らずに仕入れて売る場合はどうなるか
蜂蜜を売りたい人のなかには、自分で養蜂をせずに生産者から仕入れて売りたいという人もいます。この場合の手続きは、自分で採る場合とは変わります。
まず、養蜂振興法の飼育届は関係ありません。蜜蜂を飼っていないからです。次に食品衛生法ですが、ここは「何をするか」で分かれます。すでに瓶詰めされてラベルが貼られた商品を仕入れて、そのまま売るだけなら、営業届出が不要になる可能性があります。営業届出制度の説明には、公衆衛生に与える影響が少ない営業として、常温で長期間保存しても腐敗や品質の劣化による食品衛生上の危害の発生のおそれがない包装食品の販売業が挙げられています。蜂蜜は常温で長く保存できる食品なので、この範囲に入るかどうかが判断の分かれ目になります。
ただし、仕入れた蜂蜜を自分で瓶に詰め替えたり、自分のラベルを貼って売ったりすると話が変わります。容器に詰める作業をするなら製造の側に入りますし、自分のラベルで売るなら表示の責任者が自分になります。表示の責任者になるということは、原材料名や産地、賞味期限の内容について自分が説明できなければならないということです。生産者から仕入れるときに、産地と採蜜の時期、賞味期限の設定根拠を書面でもらっておいてください。
輸入した蜂蜜を売る場合は、さらに別の手続きが加わります。食品を輸入する営業そのものは営業届出が不要とされていますが、輸入の際には検疫所への食品等輸入届出が必要です。輸入された食品は、日本の食品衛生法の基準に適合していなければ流通できません。残留農薬や添加物の基準が国によって違うため、輸入元の国で普通に売られている商品が日本の基準に合わないこともあります。ここは専門的な判断が必要な領域なので、輸入代行の業者や検疫所に確認したうえで進めてください。
もうひとつ、仕入れて売る形で気をつけたいのが表示の引き継ぎです。生産者のラベルをそのまま使う場合、販売者として自分の名前を追加で表示する必要があるかどうかは、取引の形で変わります。委託を受けて売るのか、買い取って自分の商品として売るのかで責任の所在が違うためです。この区分は契約書に書いておかないと、後から指摘を受けたときにどちらが対応するのかで揉めます。
仕入れて売る形の利点は、養蜂の技術がなくても始められることと、在庫の回転を自分で調整できることです。難点は、利益率が下がることと、同じ商品を他の店も売っている可能性があることです。仕入れで始めるなら、商品そのものの差ではなく、説明の仕方と届け方で差をつける設計が要ります。
衛生管理の計画づくりと、はちみつ向けの手引書
営業届出をした事業者には、HACCPの考え方を取り入れた衛生管理が求められます。HACCPというのは、食品を作る工程のどこに危険があるかを洗い出して、そこを重点的に管理する方法のことです。大企業向けの難しい制度に見えますが、小規模な事業者には簡略化された運用が用意されています。
具体的には、衛生管理計画を作り、決めたことを記録に残すという流れです。何をどう書けばよいかは、業種ごとの手引書が厚生労働省のサイトに掲載されています。手引書は業界団体が作成し、国が内容を確認したうえで公開されているもので、そのまま使える様式が付いています。はちみつについても「はちみつの瓶詰め等の製造におけるHACCP導入の手引書」が用意されています。自分の工程に合う手引書を1つ選んで、その通りに記録を始めるのが最短の進め方です。
記録の内容は、難しいものではありません。器具を洗ったか、手を洗ったか、温度を確認したか、異物が入っていないかを確認したか。こうした項目を日付ごとに残していきます。毎日紙に書くのが続かないなら、表計算ソフトやスマートフォンのメモでもかまいません。大事なのは、後から見返せる形で残っていることです。
食品衛生責任者についても触れておきます。営業届出の届出内容に食品衛生責任者の氏名が含まれているため、誰かを決める必要があります。個人で営むなら自分がなります。資格は各都道府県の食品衛生協会などが実施する講習会を受講することで得られます。栄養士や調理師などの資格を持っている人は、講習会が免除される場合があります。受講できる日程は地域によって限られるので、開業の予定が決まったら早めに申し込んでおいたほうが安心です。
衛生管理の話は、義務だから守るという受け取り方をされがちです。ただ、蜂蜜は異物混入の指摘が起きやすい商品です。蜜蓋の破片、蜜蜂の体の一部、濾過の網から出た繊維。こうしたものが入っていると、返品だけでなく評判にも響きます。記録を残す習慣は、何かあったときに「いつの分かを特定できる」という点で自分を守ります。
ラベルに書く項目と、書いてはいけないこと
売る段階で必ず出てくるのがラベルです。食品表示法にもとづく食品表示基準により、容器包装に入れられた加工食品には表示すべき項目が定められています。消費者庁が食品表示の制度をまとめて公開しているので、様式と項目はそちらで確認してください。
一般的に必要になるのは、名称、原材料名、内容量、賞味期限、保存方法、食品関連事業者の氏名または名称と所在地、製造所または加工所の所在地と製造者または加工者の氏名です。加えて栄養成分表示があります。原材料が蜂蜜だけであっても、これらの項目は省略できません。手書きのラベルで始める人もいますが、項目が欠けていると指導の対象になります。
表示で特に間違いやすいのが名称です。純粋な蜂蜜なのか、精製したものなのか、他のものを加えたものなのかで名称が変わります。「国産」や「天然」といった言葉の使い方にも決まりがあるため、思いつきで書かないでください。産地を書くなら、その産地の蜂蜜であることを説明できる記録が要ります。
そして、書いてはいけないことがあります。病気が治る、体調が良くなる、痩せるといった効果を示す表現です。食品にこうした効能を書くと、医薬品のような表示をしたと判断されるおそれがあります。健康や医療に関わる効果を断定する文言は、商品のラベルだけでなく、販売ページやSNSの投稿でも避けてください。実際に、通販の説明文に書いた一文が指摘の対象になった相談を受けたことがあります。
もうひとつ、1歳未満の乳児に関する注意です。蜂蜜は、1歳未満の乳児に与えないよう行政から広く呼びかけられており、市販品の多くがこの注意書きを記載しています。表示が義務なのかどうかは商品の区分で扱いが変わるため、保健所に確認したうえで、少なくとも注意書きは入れる方向で検討してください。読む人の安全に関わる部分なので、ここは省かないほうがよいと考えます。個別の商品でどの表示が必要かは、ラベルの案を作った段階で窓口に見てもらうのが確実です。
売る場所を選ぶ。ネット販売の3つの方法
手続きが整ったら、売る場所を決めます。蜂蜜は日持ちがよく、常温で送れて、単価もそれなりに取れる商品なので、ネット販売との相性は悪くありません。
では実際、はちみつをネットで販売しようと思ったら、どのような方法があるのでしょうか。主な3つの方法をご紹介します。 出典: shop-pro.jp
選択肢は大きく3つに分かれます。ひとつは大手の通販モールに出店する方法。集客力は最も大きいものの、出店料と販売手数料がかかり、同じような商品と価格で比べられます。ふたつめは自分でネットショップを開く方法。デザインと価格を自由に決められて手数料も低めですが、集客を自分でやる必要があります。みっつめはフリマアプリや個人向けの販売プラットフォームを使う方法で、始めるのが最も簡単な代わりに手数料が高めです。
一方で、大手ECモールと比較して利用者数が少ないため露出機会が限られ、手数料も20%程度と高めに設定されている場合が多いというデメリットもあります。 出典: shop-pro.jp
手数料の差は、扱う量が増えるほど効いてきます。売上の2割が差し引かれる場でしか売っていないと、原価と送料を引いた後にほとんど残りません。だから、最初はフリマアプリで反応を見て、注文が安定してきたら自分のショップに移すという順番が現実的です。
ネット以外の販路も押さえておきます。道の駅や直売所への委託販売、地域のマーケットへの出店、飲食店や菓子店への卸です。委託販売は自分で接客しなくても売れる利点があり、卸は1回の取引量が大きくなります。ただし、卸す相手が自分のラベルのまま売るのか、相手のラベルで売るのかで表示の責任者が変わります。ここは契約で決めておく必要があるところです。
ネットで売るなら、通信環境が仕事の速度を決めます。受注の確認、写真の投稿、問い合わせの返信をまとめて処理する時間帯に回線が詰まると、作業が止まります。自宅で作業する人向けの回線の選び方は在宅ワークに最適なネット回線|光回線vsホームルーターの選び方に整理されているので、写真を多く扱う人は上り速度の項目を確認してみてください。
採算を組み立てる。値付けと原価の考え方
許可の話が済むと、次に出てくるのは「これで採算が合うのか」です。蜂蜜の販売は、原価の構造がはっきりしているので計算しやすい商品です。
原価に入るのは、瓶とキャップ、ラベルの印刷、段ボールと緩衝材、送料、そして販売手数料です。蜂蜜そのものの原価は、自分で採るなら巣箱と道具の償却と管理の手間になります。仕入れて売るなら仕入価格がそのまま乗ります。見落としやすいのは送料です。蜂蜜は重いので、容量を大きくすると送料が跳ね上がります。容量の設計は味の話ではなく、送料の階段のどこに収まるかで決めたほうが利益が残ります。
値付けでは、同じ容量の商品がいくらで売られているかを調べるところから始めます。ただし、最安値に合わせる必要はありません。蜂蜜は産地と蜜源で味が変わる商品なので、何の花から採れたものかを説明できれば価格の理由が立ちます。逆に、説明できないまま安くすると、値段だけで比べられて消耗します。
採算を確かめる計算は単純です。1本あたりの売価から、原価と送料と手数料を引いた額が1本あたりの利益です。これに月に売れる本数を掛けると月の利益になります。ここで大事なのは、自分の作業時間を原価に入れて考えることです。瓶詰め、ラベル貼り、梱包、発送、問い合わせ対応。1本あたり15分かかるなら、100本売れば25時間が消えます。時間あたりの実収入が最低賃金を下回っていないかは、必ず確かめてください。
作業を減らす工夫も採算に効きます。ラベルを印刷会社に頼む、梱包材をあらかじめ組み立てておく、発送を週2回にまとめる。こうした段取りで1本あたりの時間が5分縮めば、100本で8時間が浮きます。副業として続けるなら、この積み上げが続けられるかどうかを決めます。在宅の仕事と組み合わせる場合、集中して作業する時間の作り方も効いてきます。時間の使い方の工夫は在宅ワークの集中力アップ|ポモドーロ以外に効く7つのテクニックで紹介されている方法が、梱包のような単純作業の段取りにもそのまま使えます。
売る前に備えておくべきトラブルと、その対処
蜂蜜の販売で起きやすいトラブルを4つ挙げます。どれも事前に備えておけば大きくなりません。
第一は異物混入の指摘です。蜜蓋の破片や濾過の繊維が入っていたという連絡は、実際に起こります。備えは記録です。どの日に、どの巣箱から採った蜂蜜を、どの手順で濾過して瓶に詰めたかが分かれば、影響する範囲を特定して他の在庫を止められます。記録がないと、全部を回収する判断しかできなくなります。
第二は結晶化の問い合わせです。蜂蜜は温度が下がると白く固まります。これは品質の劣化ではありませんが、知らない人は不良品だと感じます。商品の説明とラベル、そして同梱の紙に、結晶化は自然に起こることと、温めれば戻ることを書いておいてください。書いてあるだけで問い合わせは大きく減ります。
第三は表示の指摘です。産地や名称の書き方、栄養成分の値、賞味期限の設定根拠。この3つは指摘を受けやすい部分です。賞味期限は自分で決めることになりますが、根拠を説明できる形にしておく必要があります。同業の商品を真似て年数だけ書くのは避けてください。
第四は代金や納品をめぐる行き違いです。卸や委託販売では、いつ納品して、いつ検品して、いつ支払うのかが曖昧なままだともめます。取引の条件は、金額、数量、納期、支払期日、返品の扱いの5点を文字で残してください。相手が書面をくれないなら、自分からメールで確認して記録を残すだけでも効果があります。※金額が大きい取引や相手が支払いに応じない場合は、弁護士に相談してください。
書面のやり取りが苦手だという人は多いのですが、これは慣れの問題です。取引の文書の型を知っておくと、見積書から納品書、請求書までが流れで作れるようになります。文書の型を体系的に学ぶ入口としてはビジネス文書検定で扱われる範囲が、そのまま卸の取引で必要になる書類と重なります。法律はあなたの味方ですが、味方になってもらうには記録が要ります。
在宅の副業として見たときの蜂蜜販売の位置づけ
20年この市場を見てきた運営者の立場から言えば、物を作って売る副業と、技能を提供する副業では、伸び方の形が違います。蜂蜜のような物販は、1本あたりの利益が決まっているので、収入を増やすには本数を増やすしかありません。本数が増えると作業時間も比例して増えます。つまり、どこかで自分の時間が上限になります。
運営者として見てきた限りでは、物販を続けている人は早い段階でこの上限に気づき、2つの方向のどちらかに進んでいます。ひとつは単価を上げる方向で、蜜源を絞った商品、贈答用の包装、定期便といった形で1本あたりの利益を厚くします。もうひとつは、物販で得た経験を情報や技能として売る方向です。養蜂の記録、商品の写真の撮り方、販売ページの書き方。こうした経験は、同じことを始めたい人や地域の生産者にとって価値があります。
後者の方向に進むなら、在宅で受けられる仕事との接点が生まれます。商品の説明文を書く、販売ページを整える、SNSの運用を代行する。これらは物販の経験がある人ほど説得力を持って提案できます。文章を扱う職種の単価水準は著述家,記者,編集者の年収・単価相場にまとめられており、物販で培った説明の技術がそのまま収入につながる形が見えてきます。販売や集客の領域に広げるなら、AI・マーケティング・セキュリティのお仕事で扱われている職域が接続先になります。
もうひとつ、運営者として言えることがあります。物販でも受託でも、手元に残る額は額面の単価だけでは決まりません。仲介の手数料が何段か乗る形だと、同じ売価でも残る金額が薄くなります。売価を上げるより、差し引かれる割合を下げるほうが早い場面は少なくありません。手数料0%の取引が効いてくるのはこの点で、額面が同じでも手取りが厚くなるという質の話です。
在宅で収入の柱を増やしていくなら、資格を軸に選ぶ道もあります。自宅で完結する仕事に結びつきやすい資格を整理した在宅ワークに強い資格10選|自宅で稼げるスキルを身につけるを見ると、物販とは別の入口がいくつも並んでいます。蜂蜜の販売を入口にして、そこから広げていく考え方は十分に成り立ちます。
最後に、始める順番をもう一度まとめます。第一に、蜜蜂を飼っているなら都道府県に飼育届の要否を確認する。第二に、保健所に自分の工程を説明して営業届出で足りるかを確認する。第三に、混ぜる商品を出す予定があるなら、その時点で許可の要否を聞く。第四に、手引書を選んで衛生管理の記録を始める。第五に、ラベルの案を作って窓口に見てもらう。第六に、販路と値付けを決める。この順番で進めれば、作ってから売れないという事態は避けられます。
よくある質問
Q. 蜂蜜を売るのに営業許可は必要ですか?
そのまま瓶に詰めて売る場合、密封包装食品製造業の許可は不要です。厚生労働省の解説に、許可不要な食品として食酢とはちみつが省令で規定されていると明記されています。代わりに保健所への営業届出が必要で、届出には食品衛生責任者を決める必要があります。自分の工程が届出で足りるかは保健所に確認してください。
Q. 蜂蜜にレモンやナッツを混ぜた商品も届出だけでよいですか?
他の食品を混ぜると商品はもう「はちみつ」ではなくなるため、密封包装食品製造業などの許可が必要になる可能性があります。混ぜる相手や工程によって該当する業種が変わります。商品を作る前に、工程を具体的に説明して保健所に確認してください。作ってから確認すると販売できなくなる場合があります。
Q. 蜜蜂の飼育届はいつまでに出しますか?
養蜂振興法施行規則により、毎年1月31日までに住所地を管轄する都道府県知事へ届け出ます。届け出る内容は氏名と住所、蜂群数、飼育の場所と期間などです。変更があったときは変更の日から1か月以内に届け出ます。花粉受精のための飼育など例外もありますが、自分で判断せず都道府県に確認してください。
Q. ラベルには何を書けばよいですか?
容器包装に入れた加工食品として、名称、原材料名、内容量、賞味期限、保存方法、食品関連事業者の氏名と所在地、製造所の所在地と製造者名、栄養成分表示が必要になります。原材料が蜂蜜だけでも省略できません。病気が治るといった効果を示す表現は使えません。ラベルの案は保健所に見てもらうのが確実です。
この記事について
編集部
監修:@SOHO編集部
2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを20年運営。編集部が事実確認のうえ公開しています。

この記事を書いた人
長谷川 奈津@SOHO編集部
行政書士・元企業法務
企業法務で数多くのフリーランス契約を扱った経験を活かし、フリーランス向けの法律・契約・権利に関する記事を執筆。「法律はあなたの味方です」がモットー。
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