ハンドメイドの販売で開業届は必要か|提出の目安と書き方


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この記事のポイント
- ✓ハンドメイドの販売で開業届が必要になる目安を
- ✓国税庁の記載をもとに整理します
- ✓扶養や社会保険の境目まで
ハンドメイドの作品が売れはじめると、次に気になるのが開業届である。出すべきなのか、出さないと何か起きるのか、出したら扶養から外れるのか。不安のかたまりのまま検索している人が多い。
先に安心できる事実から書く。開業届は、税務署に「事業を始めた」と伝えるだけの1枚の書類である。提出しても手数料はかからないし、それだけで税金が増えるわけでもない。そして提出の期限は、始めてから1か月以内ではない。所得税法の改正で、事業を始めた年分の確定申告期限までに出せばよい形になった。
この記事では、開業届が必要になる目安、期限、書き方、同時に出しておくとよい書類、そして扶養や社会保険との関係を順に整理する。数字は令和8年分の制度にそろえている。読み終えたときに、自分が今すぐ出すべきなのか、もう少し様子を見てよいのかを自分で判断できる状態を目指す。
開業届が必要になるのは「事業」として続けているとき
ハンドメイドの販売で得た収入は、税の上では2つの区分に分かれる。1つが事業所得、もう1つが雑所得である。この区分によって、開業届が必要かどうかも、使える特典も変わる。
事業所得は、事業として営んでいる活動から生じる所得である。国税庁は事業所得の計算方法を、総収入金額から必要経費を引くという形で示している。製造業や小売業がここに含まれるため、材料を仕入れて作品を作り、継続的に販売している活動は事業の性質を持つ。
一方、雑所得はほかのどの区分にも当たらない所得で、副業に係る所得が例として挙げられている。国税庁の記載では、副業に係る収入のうち営利を目的とした継続的なものを「業務に係る雑所得」として扱い、総収入金額から必要経費を引いて計算する形になっている。
では線はどこか。判断のものさしになるのは、継続しているか、反復しているか、独立して自分の責任で行っているか、収入を得ることを目的にしているか、といった実態である。年に数回、余った材料でつくったものを友人へ譲る程度なら事業とは言いにくい。毎月イベントやネットショップで販売し、材料を計画的に仕入れているなら事業の性質が強い。
金額だけで線が引かれるわけではないが、実務上の目安として覚えておきたい数字がある。国税庁は業務に係る雑所得について、前々年分の収入金額が300万円を超える人には現金預金取引等関係書類の保存を求めている。収入がこの水準に近づいているなら、記録の義務が発生する規模に入っているという合図になる。
判断に迷ったときは、税務署の個人課税部門に電話で聞いてよい。「ハンドメイドをネットで販売していて、年間の売上がこのくらいで、材料をこのくらい仕入れている」と伝えれば、区分の考え方を教えてもらえる。最終的な判断は個々の事情で変わるため、断定した答えを求めるより、考え方を確認する使い方が向いている。
提出期限は「その年の確定申告期限まで」に変わっている
開業届の期限について、1か月以内と書いてある情報が世の中に多く残っている。これは現在の条文と合わない。国税庁の手続案内を見る。
[提出期限]事業の開始等の事実があった日の属する年分の確定申告期限までに提出してください。 なお、提出期限が土・日曜日・祝日等に当たる場合は、その翌日が期限となります。 出典: nta.go.jp
つまり、今年の春に販売を始めた人であれば、来年3月の確定申告の期限までに出せばよい。確定申告のときにまとめて提出する形でも間に合う。この変更によって、「もう1か月過ぎてしまった」という焦りは不要になった。
ただし、期限に余裕があることと、遅らせたほうが得であることは別である。青色申告を選びたい場合は、別の書類に別の期限があるためだ。この点は後の節で詳しく書く。
提出先は、納税地を所轄する税務署である。納税地は原則として住所地になる。自宅で制作して自宅から発送しているなら、住んでいる場所の税務署でよい。税務署の場所は国税庁のサイトで郵便番号から調べられる。
受付時間は平日の8時30分から17時までである。窓口が閉まっている土日や祝日でも、税務署の時間外収受箱に投函すれば提出として扱われる。遠方の人は郵送でも提出できる。
開業届を出すと何が変わるのか
出すか迷っている段階では、提出後に何が変わるのかが見えないと判断できない。変わることは4つある。
1つ目、青色申告を選べるようになる。青色申告は、一定水準の記帳をして正しく申告する人に有利な扱いを認める制度である。国税庁の説明では、青色申告ができるのは不動産所得、事業所得、山林所得のある人とされている。雑所得のままでは選べない。
2つ目、屋号での銀行口座を開けるようになる。金融機関によって条件は違うが、開業届の控えを本人確認の資料として求められることが多い。作品名やブランド名で入金を受けたい人には実務上の利点がある。
3つ目、経費の考え方が整理される。自宅の一部を作業場として使っている場合、家賃や電気代のうち事業に使っている割合を経費に計上できる。国税庁は、家事上の経費に関連する費用のうち、業務の遂行上必要である部分を明らかに区分できる場合はその部分が必要経費になると示している。割合の根拠を自分で説明できる形にしておくことが前提になる。
4つ目、事業として続ける意思が自分の中で固まる。これは制度の話ではないが、相談を受けていて実感としてよく聞く変化である。趣味の延長という位置づけのままだと、値付けを低く抑えてしまったり、材料費を計算せずに赤字で売り続けてしまったりする。書類を1枚出すことで、収支を見る習慣が生まれる人が多い。
一方で、開業届を出しただけで税金が発生することはない。所得が出たときに申告して納めるという流れは、届出の有無にかかわらず同じである。ここを誤解して提出をためらう人が多いので、押さえておいてほしい。
在宅で作業する環境そのものを整えたい場合は、在宅ワークに最適なネット回線|光回線vsホームルーターの選び方も参考になる。写真の一括アップロードやライブ販売を行うなら、上り方向の速度が作業時間を左右する。
出さないほうがよい場合、慎重に判断すべき場合
どんな場合でも出すべき、とは言い切れない。慎重な判断が必要な場面が2つある。
1つ目、失業給付を受けている、または受ける予定がある場合。雇用保険の基本手当は、就職できる状態にあって求職活動をしている人に支給される。事業を始めた事実があると、支給の扱いが変わる可能性がある。ハローワークは、離職日の翌日以後に事業を開始した人について、一定の要件を満たせば受給期間に算入しない特例を申請できる仕組みも案内している。要件の1つとして、登記事項証明書や開業届の写しなどの客観的な資料で事業の開始が確認できることが挙げられている。つまり開業届は、不利にも有利にも働きうる資料である。受給中であれば、提出の前にハローワークの窓口へ相談してほしい。
2つ目、健康保険の扶養に入っている場合。扶養の認定基準は収入の額で決まるのが基本だが、保険者によっては自営業者としての扱いを別に定めていることがある。加入している健康保険組合や協会の基準を確認してから動くのが安全である。
なお、配偶者の税の扶養については、開業届の有無ではなく所得の額で決まる。令和8年分から、配偶者控除と扶養控除の所得要件は合計所得62万円以下になった。給与だけの人なら収入136万円以下が目安になる。ハンドメイドの収入が事業所得や雑所得であれば、収入から必要経費を引いた後の金額で判定する。
健康保険の被扶養者の基準にも変更がある。19歳以上23歳未満(配偶者を除く)の人については、令和7年10月1日以降の認定から年間収入150万円未満という基準が使われる。学生のうちから作品を販売している人は、この数字で確認してほしい。
どちらも、金額が境目に近いときは自己判断で決めないほうがよい。税は税務署、健康保険は保険者、年金は年金事務所と、窓口が分かれている。それぞれに確認する手間はかかるが、後から遡って修正するほうがずっと大変である。
書き方を項目ごとに見ていく
用紙は「個人事業の開業・廃業等届出書」という1枚である。国税庁のサイトからPDFを入手できる。記入する項目は多く見えるが、迷うのは数か所だけである。
納税地には、自宅の住所を書く。住所地、居所地、事業所等のいずれかを選ぶ欄があるので、住所地に印を付ける。自宅で制作して自宅から発送しているなら、これで問題ない。
氏名、生年月日、個人番号(マイナンバー)を記入する。マイナンバーを記載した書類を窓口で提出するときは、本人確認書類の提示か写しの添付を求められる。e-Taxで提出する場合は不要になる。
職業の欄は、実態が伝わる書き方でよい。「ハンドメイド作家」「アクセサリー製作」「雑貨製造販売」などが使われている。記載内容によって税率が変わるものではないが、都道府県が課す個人事業税の判定に関係することがあるため、実際にやっていることを書く。
屋号の欄は空欄でもよい。ブランド名を決めているならそれを書く。屋号名義の口座を開きたい人は、ここに書いた名称が根拠になるため記入しておきたい。
届出の区分は「開業」を選ぶ。開業した日は、実際に販売を始めた日を書く。ネットショップを公開した日、初めてイベントに出た日、最初の受注を受けた日など、自分の中で説明できる日付を選べばよい。
事業の概要には、何をどこで売っているかを書く。「布製の小物を製作し、インターネット上の販売サイトおよびイベントで販売」といった1文で足りる。
給与等の支払の状況の欄は、人を雇っていなければ空欄のままでよい。家族に手伝ってもらって給与を払う予定があるなら、専従者の人数と給与の定め方を記入する。
同時に出しておくと後が楽になる書類
開業届と一緒に出せる書類がいくつかある。別々の日に税務署へ行くのは手間なので、まとめて考えておきたい。
最も重要なのが「所得税の青色申告承認申請書」である。青色申告の特典は大きい。国税庁の説明を見る。
イ 不動産所得または事業所得を生ずべき事業を営んでいる青色申告者で、これらの所得に係る取引を正規の簿記の原則、(一般的には複式簿記)により記帳し、その記帳に基づいて作成した貸借対照表および損益計算書を確定申告書に添付して 、確定申告書をその提出期限(確定申告期限)までに提出している場合には、原則としてこれらの所得を通じて最高55万円を控除することとされています。 出典: nta.go.jp
この55万円の控除を受けられる人が、電子帳簿保存またはe-Taxによる電子申告を行っている場合は、控除額が65万円になる。売上から経費を引いた金額がこの範囲に収まるなら、所得税が生じない形になりうる。
注意したいのが期限である。青色申告承認申請書には、開業届とは別の期限がある。事業を始めた日から2か月以内、またはその年の3月15日までに提出しないと、その年分から青色申告を使えない。開業届の期限が延びた一方で、この申請の期限は変わっていない。だから、青色申告を考えているなら早めに動く必要がある。
そのほかに検討するとよい書類が2つある。家族に給与を払う場合の「青色事業専従者給与に関する届出書」と、人を雇って源泉徴収をする場合の「源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書」である。後者を出しておくと、毎月の納付が年2回にまとめられる。どちらも該当しなければ不要である。
帳簿づけは、青色申告なら現金出納帳、売掛帳、買掛帳、経費帳、固定資産台帳といった帳簿を備え付ける形になる。帳簿と書類は原則7年間保存する。請求書や見積書、納品書、送り状などは5年間でよいものもある。会計ソフトを使えば、日々の入力が帳簿の形に整う。freeeやマネーフォワードのような個人事業者向けのサービスが広く使われている。
提出のしかたは3つある
提出方法は、電子申告、郵送、窓口の3つである。それぞれに向く場面がある。
電子申告はe-Taxソフトを使って作成し、そのまま送信する形になる。初めて使う人は利用者識別番号を取得する必要がある。マイナンバーカードとスマートフォンがあれば、自宅で完結する。本人確認書類の写しを添える必要がないのも利点である。
郵送は、書面で作成して所轄の税務署へ送る。控えを1部多く作り、返信用封筒に切手を貼って同封すると、受付印を押した控えが返ってくる。この控えが銀行口座の開設などで必要になるため、必ず用意しておきたい。
窓口は、その場で控えに受付印をもらえる。書き方に不安がある人は窓口が確実である。混雑する時期は確定申告の期間なので、それ以外の時期を選ぶと待ち時間が短い。
どの方法でも、提出した内容の控えは自分で保存する。税務署から改めて通知が来るわけではないので、控えが唯一の記録になる。画像にして保存しておくと、紙をなくしたときに困らない。
売上が伸びてきたときに関係する消費税の話
開業したばかりの段階では消費税を気にする必要はないが、規模が変わる前に仕組みを知っておくと慌てない。
国税庁は、基準期間(個人事業者の場合はその年の前々年)の課税売上高が1,000万円以下である場合には、原則として消費税の納税義務が免除されると示している。ハンドメイドの販売で始めた人が、初年度から1,000万円を超えることは稀である。つまり、しばらくは免税事業者として扱われる。
ただし例外がある。適格請求書発行事業者(インボイスを出せる事業者)の登録を受けている場合は、課税売上高が1,000万円以下でも納税義務は免除されない。また、特定期間(個人事業者ではその年の前年1月1日から6月30日まで)の課税売上高が1,000万円を超える場合も免除されない。
インボイスの登録をするかどうかは、誰に売っているかで判断が変わる。一般の消費者へ直接販売しているだけなら、相手はインボイスを必要としない。企業からの受注や卸売りが増えてきたときに、相手から登録の有無を確認されるようになる。登録すると消費税の申告と納付が必要になるため、取引先の状況を見て決めるのが順番である。
なお、令和9年4月1日から令和11年3月31日までの2年間、飲食料品の譲渡について消費税率が引き下げられる予定がある。食品を扱う作品を販売している人は、時期が近づいたら国税庁の案内を確認してほしい。
ネットで売るときに関わるもう1つの法律
税とは別に、販売そのものに関わる法律がある。インターネットでの販売は、特定商取引法の通信販売にあたる。消費者庁は、訪問販売や通信販売など消費者トラブルを生じやすい取引形態を対象に、行為規制とクーリングオフ等の民事ルールを定めていると説明している。
通信販売では、広告に一定の事項を表示する義務がある。販売価格、送料、支払いの時期と方法、引き渡しの時期、返品に関する取り決め、そして販売する者の氏名、住所、電話番号である。個人であっても、反復継続して販売していれば対象になる。
自宅の住所を公開したくないという相談は本当に多い。この点は、販売するプラットフォームが用意している仕組みを確認するのが先になる。プラットフォームが販売の主体となる形や、事業者情報の開示方法に選択肢がある場合がある。規約と運営会社の案内を読んで、自分の表示義務がどこまで及ぶのかを確かめてほしい。
返品の取り決めを書いていないと、購入者は商品を受け取った日から8日間は送料を自分で負担して返品できる扱いになる。オーダーメイドの作品を扱うなら、返品の条件をあらかじめ明記しておくことが自分を守る。消費者庁は通信販売における返品特約の表示についてのガイドラインを公開しており、特定商取引法のページから確認できる。
作品に他者のキャラクターやデザインが含まれる場合は、著作権の問題が別に生じる。文化庁の著作権のページに制度の説明がある。二次創作を販売する形は、権利者のガイドラインの範囲を確認しないまま進めないほうがよい。
経費として認められる範囲と、記録のつくり方
開業届を出すかどうかにかかわらず、経費の記録は今日から始められる。むしろ記録があることで、事業として扱えるかどうかの説明がしやすくなる。
ハンドメイドで経費になりうるものを並べる。材料の仕入れ、道具や工具、梱包材、送料、販売サイトの手数料、写真撮影の備品、展示会の出展料と交通費、名刺や値札の印刷費、作業場として使っている部分の家賃と光熱費の一部。それから、制作に必要な講座の受講料も対象になりうる。
区別が必要なのは、家庭でも使うものである。ミシンや作業机を家族と共用しているなら、事業に使っている割合を自分で見積もり、その割合で計算する。割合の決め方は、使用時間や面積など説明できる基準で行う。
もう1つ知っておきたい特例がある。特定の相手に継続して役務を提供している人を対象とした、家内労働者等の必要経費の特例である。
家内労働者等については、必要経費の額が69万円に満たない場合には、最高69万円(令和2年分から令和6年分は55万円、令和7年分は65万円)まで必要経費とすることができる特例があります。 出典: nta.go.jp
金額が令和8年分から引き上げられている点に注意してほしい。ただし、この特例は特定の人に継続的に役務を提供する働き方が前提になる。不特定の消費者へ作品を販売している形では当てはまらないことが多い。該当するかどうかは実態で決まるため、税務署で確認するのが確実である。
記録の形は簡単でよい。日付、内容、相手、金額、支払方法の5項目を1行にまとめ、領収書の画像を同じ月のフォルダに保存する。月末に合計を出すだけで、確定申告の準備の8割が終わる。
売る場所ごとに、手続きと記録の勘所が変わる
同じハンドメイドでも、どこで売るかによって関わる手続きが変わる。代表的な4つの形を並べて整理する。
| 販売の形 | 売上の入り方 | 経費として出やすいもの | 気をつける点 |
|---|---|---|---|
| ネットショップ | 運営会社からまとめて入金 | 販売手数料、送料、梱包材 | 表示義務、返品の取り決め |
| フリマアプリ | 売れた都度入金 | 販売手数料、送料 | 事業と生活用品の売却の区別 |
| イベント出展 | 現金またはキャッシュレス | 出展料、交通費、装飾品 | 現金の記録が抜けやすい |
| 委託販売 | 店舗から月ごとに精算 | 委託手数料、納品の送料 | 精算書の保存、売上の計上時期 |
ネットショップとフリマアプリは、運営会社からの入金額が手数料を引いた後の金額になることが多い。このとき、入金額だけを売上として記録すると、売上と経費の両方が実態より小さく見える。正しくは、購入者が支払った総額を売上として計上し、差し引かれた手数料を経費として計上する。管理画面から明細を取得できるので、月に1度まとめて取り込む形にしておくと手間が少ない。
フリマアプリで気をつけたいのは、生活で使っていた品物を売った場合との区別である。自分が使っていた衣類や家具を手放した分は、原則として課税されない譲渡所得の扱いになる。同じアプリの中で、制作した作品の販売と生活用品の売却が混ざるため、記録の段階で分けておかないと後で仕分けができなくなる。
イベント出展は、現金でのやりとりが残りやすい。その日の売上合計をその場でメモに書き、写真を撮って保存するだけでよい。1日の終わりに記録する習慣がないと、後からレジの記録を再現できなくなる。交通費と出展料の領収書も同じ日のフォルダに入れてしまうのが早い。
委託販売は、売上の計上時期が分かりにくい形である。店舗が購入者へ販売した時点で売上が立つのが原則で、自分の口座へ精算されるのはその後になる。年をまたぐときに、12月に売れて1月に精算された分をどちらの年に入れるかで迷う。精算書に販売日が記載されているかを確認し、記載がなければ店舗に確認しておきたい。
初年度につまずきやすい5つの点
相談の中で繰り返し出てくるつまずきを、起きる順に並べる。先に知っておけば避けられるものばかりである。
1つ目、青色申告承認申請書の期限を逃す。開業届の期限が延びたことで、書類全体をゆっくり出せると思い込むと起きる。この申請だけは、事業を始めた日から2か月以内、またはその年の3月15日までである。逃すとその年分は白色申告になり、控除が使えない。
2つ目、材料の在庫を経費にしてしまう。年内に仕入れた材料でも、年末に使い切っていない分は棚卸資産として残る。売れた作品に使った分だけがその年の経費になる。年末に材料の残量を数えて記録しておくと、翌年の計算が楽になる。
3つ目、送料と手数料を経費に入れ忘れる。1件あたりの金額が小さいため、記録から漏れやすい。年間で合計すると無視できない額になる。販売サイトの明細をそのまま経費の記録に使うのが確実である。
4つ目、家事との按分の根拠を残していない。家賃や電気代の一部を経費にしたのに、どうやってその割合を決めたのかを説明できない状態になっている。作業に使っている面積、または作業時間の割合を、一度だけ書き出して保存しておけばよい。毎年計算しなおす必要はない。
5つ目、屋号名義の口座を後から作ろうとして手間取る。開業届の控えが必要になるため、提出時に控えを確保していないと、税務署へ再度足を運ぶことになる。郵送で提出する場合は、控えと返信用封筒を必ず同封してほしい。
この5つは、どれも金額の大小に関わらず起きる。逆に言えば、初年度に一度整えてしまえば、翌年からは同じ形を繰り返すだけになる。最初の1年をていねいに進めることが、その後の何年かの手間を決める。
もう1つ付け足すと、確定申告そのものを難しく考えすぎている人が多い。実際の作業は、1年分の売上の合計と経費の合計を出し、差額を申告書に入力するだけである。国税庁の確定申告書等作成コーナーは、画面の案内に沿って金額を入力すれば申告書が組み立てられる仕組みになっている。必要な付表や明細書も入力から自動で作られる。手書きで計算する作業は残っていない。
初めての年は、1月のうちに1年分の記録を見直す時間を1日確保しておくとよい。領収書の抜けを探し、販売サイトの明細を落として合計を出す。ここで抜けが見つかっても、2月中旬の受付開始までに間があるため落ち着いて対応できる。申告の期間に入ってから記録を集め始めると、相手の会社が繁忙期に入っていて明細の再発行が間に合わないことがある。
続けている人が何をしているか、市場の側から見る
ここからは、在宅で仕事をしている人たちを長く見てきた立場からの観察を書く。
20年この市場を見てきた限りでは、ハンドメイドから収入を安定させた人の多くが、途中で「作って売る」以外の収入源を1つ加えている。作り方を教える、写真を撮る、商品説明の文章を書く、少量生産の相談に応じる。作品の売上は季節と流行に振られるが、こうした関連の仕事は波が違うため、合わせると全体が落ち着く。
もう1つ気づくのは、記録をつけている人のほうが値上げに踏み切れるという点である。材料費と作業時間を記録していると、1点あたりの原価が数字で見える。数字があると、値上げの説明が自分の中で成り立つ。記録がない人は、周りの相場だけを見て値付けするため、赤字に近い価格で長く続けてしまう。開業届の話は手続きの話に見えるが、実際にはこの記録の習慣の入口になっている。
そして、直接取引の構造についても触れておきたい。仲介の手数料が乗らない形で依頼者と受け手がつながると、同じ予算で依頼者はより多くを頼めるようになり、受け手の手元に残る額は厚くなる。手数料0%という形が意味を持つのは、金額の多寡ではなく、続けられるかどうかを左右するという点にある。制作にかける時間を確保できるかどうかは、手取りの厚さで決まる。
作品づくりと並行して受けられる在宅の仕事を探すなら、文章の仕事は入口になりやすい。相場の全体像は著述家,記者,編集者の年収・単価相場で確認できる。商品説明や取扱説明の文章は、ものづくりをしている人のほうが具体的に書けるため、経験が生きる領域である。
技術寄りの仕事に広げたい場合の水準はソフトウェア作成者の年収・単価相場にまとめてある。販売サイトの構築や運用を自分で手がけられるようになると、ショップの改善をそのまま仕事にできる。学ぶ順番を考えるうえでは、在宅で評価されやすい資格を整理した在宅ワークに強い資格10選|自宅で稼げるスキルを身につけるが参考になる。書類のやりとりに自信をつけたいならビジネス文書検定の出題範囲が実務の型をなぞる。
制作の時間を確保する工夫については在宅ワークの集中力アップ|ポモドーロ以外に効く7つのテクニックにまとめてある。自宅で作業する人にとって、時間の区切り方は収入に直結する要素になる。
最後に、判断の順番を整理しておく。今年から販売を始めて、続けるつもりがあるなら、青色申告承認申請書の期限を基準に動く。事業を始めた日から2か月以内、またはその年の3月15日までである。開業届はこれと一緒に出せば手間が1回で済む。まだ数点しか売れていなくて様子を見たい段階なら、記録だけ始めて、来年の確定申告のときに判断してもよい。どちらを選んでも遅すぎることはない。
よくある質問
Q. ハンドメイドの販売で開業届はいつまでに出せばよいですか?
国税庁の手続案内では、事業の開始等の事実があった日の属する年分の確定申告期限までに提出することとされています。以前よく見かけた「1か月以内」という記載は現在の条文と合いません。ただし青色申告を選びたい場合は、事業開始から2か月以内またはその年の3月15日までに別の申請書が必要です。
Q. 売上がいくらから開業届が必要になりますか?
金額だけで線が引かれる制度ではなく、継続性や反復性、独立して自分の責任で行っているかといった実態で判断します。目安としては、業務に係る雑所得の収入金額が前々年分で300万円を超えると帳簿書類の保存義務が生じます。迷う場合は税務署の個人課税部門で考え方を確認してください。
Q. 開業届を出すと扶養から外れますか?
税の扶養は届出の有無ではなく所得の額で決まります。令和8年分から配偶者控除と扶養控除の所得要件は合計所得62万円以下です。健康保険の被扶養者については保険者が基準を定めており、自営業者の扱いを別に設けている場合があります。加入先の健康保険に確認してください。
Q. 開業届を出したら消費税を納めることになりますか?
前々年の課税売上高が1,000万円以下であれば、原則として消費税の納税義務は免除されます。ただし適格請求書発行事業者の登録を受けている場合は、売上が1,000万円以下でも免除されません。一般の消費者へ販売しているだけなら登録は必須ではないため、取引先の状況を見て判断してください。
この記事について
編集部
監修:@SOHO編集部
2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを20年運営。編集部が事実確認のうえ公開しています。

この記事を書いた人
中西 直美@SOHO編集部
産業カウンセラー・キャリアコンサルタント
大手人材会社でキャリアカウンセラーとして15年間従事した後、フリーランスの産業カウンセラーとして独立。在宅ワーカーのメンタルヘルスケアを専門に活動しています。
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