必要な機材より先に、在宅ハンドメイド販売は許可と届出を確かめる


この記事のポイント
- ✓ハンドメイド販売に必要な機材を在宅前提で整理しました
- ✓制作道具より先に必要な撮影・梱包・記録の道具
- ✓ジャンル別に要る許可や届出
「ハンドメイド販売 必要な機材 在宅」と検索して、この記事にたどり着いた方の多くは、すでに何かを作れる状態にあると思います。編み物でも、レジンでも、革小物でも、アクセサリーでも。作れるのに販売に踏み切れない理由は、たいてい「何を追加でそろえればいいのか分からない」ことにあります。結論から書きます。制作道具はいま持っているもので足ります。追加で必要になるのは、撮影の道具、梱包の資材、記録の仕組み、この3つです。
そしてもう1つ、機材の記事ではまず触れられない重要な論点があります。作るものによっては、道具をそろえる前に許可や届出が必要になるという点です。これ、知らない人が本当に多いんです。化粧品を手作りして売る、食品を作って売る、他人の作ったものを仕入れて売る。どれも「作れる」ことと「売っていい」ことが別問題になります。この記事では、機材の話と法的な準備を同じ地平で整理していきます。法律はあなたの味方です。知らずに踏み外すより、先に知って安全に始めるほうがずっと楽になります。
ハンドメイド販売の市場と、在宅で始める人が置かれている状況
まず市場の話を整理します。個人が作った品物をインターネット経由で売る仕組みは、この10年で完全に定着しました。フリマアプリ、ハンドメイド専門のマーケットプレイス、独立型のネットショップ作成サービス。この3系統が並立していて、それぞれ手数料も客層も違います。
在宅で始める人にとって重要なのは、初期費用の構造が販路によって大きく変わるという点です。マーケットプレイス型は出店費用が無料で、売れたときだけ販売手数料が引かれます。手数料の水準はサービスによりますが、おおむね10%前後が相場です。独立型ネットショップは月額0円〜3,000円程度のプランがあり、決済手数料が3.6%〜5%程度かかります。
実店舗への委託販売という選択肢もあります。この形態については、次の指摘が実態をよく表しています。
特徴は、ネット販売とは異なり、実際に手に取って作品を見てもらえるため、顧客に品質を直接伝えやすい点です。販売手数料は売上の30%〜50%と高めに設定されますが、店舗側が集客や対面販売してくれるため、作者の負担が少ないのがメリットです。ただし、委託先の店舗のコンセプトと作品が合っているか、契約内容を事前に確認することが重要です。 出典: stores.fun
つまり、委託販売は手数料が高いかわりに集客と接客を店舗が肩代わりしてくれる形態です。在宅で完結させたい人には向きませんが、ネット販売と並行して置いてもらう作家は珍しくありません。
契約内容を事前に確認、という部分は法務の立場からも強調しておきたいところです。委託販売契約でよくあるトラブルが、預けた作品が破損したときの負担と、店舗が閉店したときの在庫返却です。書面を交わさずに「じゃあ置いておきますね」で始めてしまうと、いざというときに何も主張できません。※高額な作品を委託する場合は、契約書のひな型を弁護士や行政書士に確認してもらってください。
在宅で始める人の典型的なつまずき
相談を受けていて多いのが、次の3パターンです。
第1に、作るのが楽しくて在庫を作りすぎるパターン。売れる前に材料費だけが積み上がります。ハンドメイド販売は、材料費と時間の回収に想像以上の時間がかかる副業です。最初の数か月は3種類〜5種類に絞り、売れ行きを見てから増やすのが安全です。
第2に、写真が撮れずに出品が止まるパターン。作品はできているのに、写真が納得いかなくて出品できない。実はこれが最も多い。だから機材の優先順位でいえば、撮影環境が制作道具より上に来ます。
第3に、売れた後の発送で消耗するパターン。梱包資材を都度買いに行き、宛名を手書きし、郵便局に並ぶ。1件あたり30分〜1時間を使っていると、作る時間が消えます。ここは仕組みで解決できます。
この3つのつまずきは、いずれも機材と運用の設計で防げます。順番に見ていきます。
最低限そろえる機材:撮影・梱包・記録の3系統
在宅でハンドメイド販売を始めるとき、制作道具以外に必要なものは3系統に整理できます。
撮影機材:スマートフォンで十分だが、光と背景は買う
まず結論。カメラは買わなくていいです。スマートフォンのカメラで、ハンドメイド作品の販売に必要な画質は十分に確保できます。ここに10万円を投じるのは、優先順位として明確に間違っています。
代わりに買うべきは、光と背景です。
撮影ボックス(フォトボックス)は、LEDライトが内蔵された折りたたみ式の箱で、3,000円〜8,000円程度で手に入ります。アクセサリーや小物のように30cm以内に収まるサイズなら、これ1つで撮影環境が完成します。影が消え、色が正確に出て、背景が均一になる。この3つが写真の説得力を決めます。
作品が大きい場合(バッグ、ニット製品、大型の木工品など)は、撮影ボックスに入りません。その場合はLEDライト2灯(合計5,000円〜1万5,000円)と背景紙(1,000円〜3,000円)の組み合わせになります。窓際の自然光で撮る方法もありますが、天気と時間帯に左右されるため、出品ペースが安定しません。人工光源を用意しておくと、夜でも撮影できます。
スマートフォン用の三脚は2,000円前後。手持ちで撮ると微妙にぶれるうえ、同じアングルで複数の作品を撮れません。同じ構図で並べた商品ページは、それだけで統一感が出ます。
私自身、最初にやった失敗を書いておきます。相談者から「写真を見てほしい」と送られてきたものを見て、明らかに光が足りていないと分かったので、自分でも同じ条件で撮ってみたことがあります。蛍光灯の下で、白いテーブルの上に置いて撮影した。結果は悲惨でした。作品が黄色く写り、影が2方向に伸び、テーブルの木目が透けて背景がうるさい。撮影ボックスを買って撮り直したら、同じ作品がまったく別物に見えました。光の問題を根性でどうにかしようとするのは、時間の無駄です。
梱包資材:最初にまとめて買っておく
売れてから資材を買いに行くのは、時間のロスが大きすぎます。最低限、次のものを先にそろえておきます。
| 資材 | 用途 | 目安価格 |
|---|---|---|
| 緩衝材(プチプチ) | 作品保護 | 1,000円〜2,000円 |
| OPP袋(透明袋) | 作品の個別包装 | 500円〜1,500円 |
| 宅配袋・段ボール | 外装 | 1,000円〜3,000円 |
| 厚紙・台紙 | 折れ防止 | 500円〜1,000円 |
| メッセージカード | 同梱 | 500円〜2,000円 |
| 梱包テープ | 封緘 | 500円前後 |
| ラベルシール | 宛名 | 500円〜1,500円 |
合計しても5,000円〜1万円程度です。ここを削って「届いたら潰れていた」というトラブルを起こすほうが、はるかに高くつきます。
追加で強く推奨したいのが、キッチンスケール(1,500円〜3,000円)とメジャーです。配送料は重量とサイズで決まります。梱包後の重量とサイズを正確に測れないと、送料の見積もりが狂います。1件あたり100円の見誤りでも、月30件発送すれば3,000円の損失です。
なお、配送方法についてはマーケットプレイスが提供する匿名配送サービスを使うのが安全です。個人間取引で自宅住所を相手に開示するリスクを避けられます。この点は次の許認可の項でも触れますが、販路によっては住所開示の義務が発生するケースがあるため、事前に整理しておく必要があります。
記録の仕組み:帳簿とパソコン
3つ目が記録です。これは物理的な機材というより仕組みの話ですが、機材投資の判断に直結します。
ハンドメイド販売で収入が発生すると、確定申告の対象になる可能性が出てきます。給与所得者が副業として行う場合、所得(売上から必要経費を引いた額)が年間20万円を超えると確定申告が必要になります。これ、売上ではなく所得で判定するという点が重要です。材料費、梱包資材費、送料、撮影機材費、販売手数料はすべて必要経費に算入できます。
つまり、レシートを捨てていると本来引けるはずの経費が引けず、税金を余計に払うことになります。記録は「面倒な義務」ではなく「自分の手取りを守る作業」です。詳細な要件は国税庁の情報を確認してください。
必要なのは、レシートを保管する仕組みと、売上・経費を記録する仕組みです。会計ソフトは月額1,000円前後から使えます。freeeやマネーフォワードといったクラウド型が主流で、スマートフォンでレシートを撮影すれば自動で仕訳される機能があります。最初はスプレッドシートでも構いませんが、取引件数が月30件を超えたあたりで手作業は破綻します。
パソコンについては、必須ではありませんがあったほうが確実に楽です。商品説明文の作成、写真の一括加工、確定申告の作業、これらはスマートフォンだけだと効率が落ちます。中古で4万円〜7万円程度のノートPCがあれば足ります。動画編集のような重い処理をしないので、高性能である必要はありません。
機材より先に確認すべき「許可・資格・届出」
ここからが、他の機材記事ではあまり書かれない部分です。作るものによっては、道具をそろえる前に確認すべき法的な要件があります。
許可が必要になるジャンル
すべてのハンドメイドに許可が要るわけではありません。布小物、アクセサリー、革製品、木工、編み物、紙もの。これらは基本的に許可なく販売できます。
一方、次のジャンルは許可や届出が関わります。
食品を作って売る場合。菓子、パン、ジャム、焼き菓子などを製造販売するには、営業許可が必要です。自宅のキッチンをそのまま使うことは原則できず、家庭用とは分離された設備が求められます。管轄は保健所で、根拠法令は食品衛生法です。制度の枠組みは厚生労働省の情報が起点になります。つまり、お菓子作りが得意だから売ってみよう、という発想でいきなり始めることはできません。設備投資が50万円〜300万円規模になるケースもあるため、事前確認が必須です。
化粧品を作って売る場合。手作り石けん、リップクリーム、化粧水などは化粧品に該当し、製造販売業の許可が必要です。ここも根拠は医薬品医療機器等法(旧薬機法)で、責任技術者の設置など要件が厳格です。「雑貨として売れば大丈夫」という説明を見かけることがありますが、肌に塗る用途を明示している時点で化粧品扱いになる可能性が高い。この線引きは非常に危ういので、始める前に確認してください。※化粧品系を検討している方は、必ず所轄の薬務担当窓口に相談してください。
他人が作ったものを仕入れて売る場合。これは古物営業許可の話になります。中古品を仕入れて販売するには、警察署を通じた古物商許可が必要です。自分で作ったものを売るだけなら不要ですが、ヴィンテージのボタンやパーツを仕入れて再販する形態が混ざると、該当する可能性が出ます。許可申請の手数料は1万9,000円です。
動物に関わるもの(ペット用品のうち生体に関するもの)、酒類、医療機器に類するもの。これらもそれぞれ別の規制があります。
開業届と屋号
許可とは別に、開業届の話があります。継続的に販売する意思があるなら、税務署に個人事業の開業届を出すことになります。提出自体に費用はかかりません。
開業届を出すメリットは、青色申告が選択できることです。青色申告特別控除は最大65万円で、これは所得から直接引ける金額です。ただし複式簿記での記帳と電子申告などの要件があるため、会計ソフトの利用が実質的に前提になります。
屋号については、開業届に記載できます。作家名で活動する場合、その名前を屋号として登録しておくと、屋号名義の銀行口座を開設できるようになり、売上管理が明確になります。
一点、注意を書いておきます。会社員が副業でハンドメイド販売をする場合、勤務先の就業規則を確認してください。副業禁止規定がある企業はまだ存在します。また、住民税の納付方法を「自分で納付」にしておかないと、給与から天引きされる住民税額の変化で勤務先に気づかれる可能性があります。この手続きは確定申告書の該当欄で選択できます。
特定商取引法に基づく表記
ネットショップで販売する場合、特定商取引法に基づく表記が必要です。氏名(または名称)、住所、電話番号、販売価格、支払方法、引渡時期、返品の可否と条件などを表示する義務があります。
在宅で始める人にとって、この「住所と電話番号の表示」は大きな心理的ハードルです。自宅住所を全世界に公開したくないという相談は本当に多い。
対処法はいくつかあります。マーケットプレイス型のサービスでは、プラットフォーム側が取引の当事者となる仕組みを採っている場合があり、個人の住所開示が不要または限定的になることがあります。独立型ネットショップの場合は、バーチャルオフィスを契約して住所を借りる方法があります。月額1,000円〜5,000円程度が相場です。
いずれにせよ、「表示義務を無視する」という選択肢はありません。表示がないまま販売を続けると、行政処分の対象になり得ます。開示したくないなら、開示しなくて済む販路か、開示できる住所を用意するか、どちらかを選ぶことになります。
表示に関する規制
もう1つ、意外と見落とされるのが商品説明の表現です。
「このハーブティーで体質が改善します」「この石けんでアトピーが治ります」といった表現は、医薬品的な効能効果の標榜にあたり、法令違反になり得ます。ハンドメイド作家がSNSで気軽に書いてしまいがちな領域です。
また、優良誤認・有利誤認にあたる表示も規制対象です。「他店より必ず安い」「日本一の品質」といった根拠のない優位性の主張は、景品表示法上の問題になります。この分野の運用については公正取引委員会が競争政策の観点から情報を出しています。
私が相談を受けた事例で、匿名化して書ける範囲のものを紹介します。手作りのアロマ製品を販売していた方が、商品ページに「不眠に効きます」と書いていました。本人にはまったく悪意がなく、実際に使った友人がそう言っていたから書いた、というだけです。しかし表示としては医薬品的効能の標榜に該当し得る。指摘を受けて表現を修正し、大事には至りませんでした。悪意の有無は関係なく、表示は表示として評価されます。ここは知識で防ぐしかない領域です。
後から足せばいい機材と、その判断基準
最低限の機材で始めた後、売上が立ってきたら足していく設備があります。優先順位をつけて整理します。
ラベルプリンター:発送作業の時間を半分にする
月20件を超えたあたりから、宛名の手書きが明確な負担になります。感熱式のラベルプリンターは8,000円〜2万円程度で、インク不要のものが主流です。
配送業者の送り状発行システムと連携できるモデルもあります。注文データを取り込んで送り状を一括出力できると、発送作業が劇的に短縮されます。1件あたり5分短縮できるなら、月30件で2時間半の削減です。それだけの時間を制作に回せます。
作業台と収納:在庫管理の質が変わる
ハンドメイドは材料が増え続ける仕事です。ビーズ、糸、布、革、金具、パーツ。種類が増えるほど、探す時間が増えます。
パーツケース、引き出し収納、壁面のペグボード。合計1万円〜3万円程度の投資で、探す時間がなくなります。専用の作業台があるとさらに良いのですが、ダイニングテーブルを使い回している人も多い。その場合は、道具一式をトレーにまとめて出し入れできるようにしておくと、片付けの負担が減ります。
在宅ワーク全般に言えることですが、作業スペースと生活スペースが混ざると集中が続きません。この点は在宅ワークの集中力アップ|ポモドーロ以外に効く7つのテクニックに、時間の区切り方を含めた実践的な方法がまとまっています。ハンドメイドは作業に没頭できる時間の確保が売上に直結するので、参考になるはずです。
画像編集ツールとPC環境
商品写真の明るさ調整、トリミング、ロゴの入れ込み。これらはスマートフォンアプリでもできますが、まとめて処理するならPCのほうが速いです。
無料の画像編集ツールで足ります。有料のデザインツールを契約するなら月額1,000円〜1,500円程度から。商品ページのバナーやSNS投稿画像を継続的に作るなら、テンプレートが使えるサービスのほうが時短になります。
大型設備を検討する段階
レーザーカッター、3Dプリンター、業務用ミシン、電動ろくろ。これらは制作ジャンルによって必要になる設備で、5万円〜50万円のレンジになります。
導入の判断基準は明確です。その設備で作れるものが、すでに注文として来ているかどうか。「導入すれば新しい商品が作れる」という理由での購入は、ほぼ確実に回収に時間がかかります。逆に「同じ注文を手作業でこなしていて時間が足りない」という状況なら、投資判断は簡単です。
10万円以上の設備は、税務上一括経費にできず減価償却が必要になる場合があります。購入時期によって節税効果が変わるため、年末に近い時期の高額購入は税理士に相談する価値があります。
販売方法とおすすめの進め方
機材がそろったら、次は販路です。3つの方法を比較します。
マーケットプレイス型から始める
ハンドメイド専門のマーケットプレイスは、集客をプラットフォームが担ってくれるのが最大の利点です。作品を出品すれば、そのサービスを見に来ている人の目に触れます。出店費用は無料で、売れたときに販売手数料が引かれる仕組みが一般的です。
デメリットは競合の多さです。同じカテゴリに数千点の作品が並ぶ中で、写真とタイトルだけで選ばれる必要があります。だから撮影環境への投資が効く。
最初の3か月はここで反応を見るのが合理的です。何が売れて何が売れないか、価格帯はどこが妥当か、リピートは発生するか。データが取れます。
独立型ネットショップへの展開
反応が取れてきたら、自分のショップを持つ選択肢が出てきます。
STORES ネットショップ なら、初期費用も月額費用も0円のフリープランから、リスクなくあなたのお店を始められます。まずは、あなただけのネットショップを始めてみませんか? 出典: stores.fun
初期費用と月額費用が無料のプランが用意されているサービスは複数あります。ただし、独立型は自分で集客する必要があります。SNSでの発信、検索からの流入、リピーターへの案内。ここができないと、開設しても訪問者ゼロの状態が続きます。
現実的な進め方は、マーケットプレイスで顧客との接点を作り、独立型ショップを並行して育てる二段構えです。手数料の水準が違うので、リピーターを独立型に誘導できると手取りが増えます。
SNSと受注の設計
ハンドメイドはSNSとの相性が良い分野です。制作過程を見せる投稿は、作品そのものの写真より反応が取れることがあります。
ただし、SNSでの直接取引には注意が必要です。個人間で決済と発送を行うと、トラブル時の保護がありません。「入金されない」「作品を送ったのに受け取っていないと言われる」という相談は実際にあります。決済はプラットフォームを経由させ、取引の記録が残る形にしておくべきです。
受注制作を受ける場合は、条件を文書で確定させてください。仕様、納期、金額、修正回数、キャンセル時の扱い。これらを事前に合意しておかないと、「イメージと違う」で支払いを渋られる展開になります。相談の現場で本当に多いパターンです。特定の相手から継続的に受注する形になってきたら、業務委託に近い性質を帯びるため、契約条件の明確化がより重要になります。
おすすめの商品ジャンルと選び方のポイント
何を作るかは、機材投資額を左右します。
初期投資が小さいのは、布小物、アクセサリー、編み物、紙製品です。材料費が1点あたり100円〜1,000円程度に収まり、特別な設備が要りません。
初期投資が大きいのは、陶芸、ガラス、木工、レザークラフト(大型作品)です。設備と作業スペースが必要になり、集合住宅では音や臭いの問題も出ます。
選び方のポイントを3つ挙げます。
第1に、1点あたりの制作時間と価格のバランス。制作に5時間かかるものを3,000円で売ると、材料費を引いた時給が極端に低くなります。時間単価を意識せずに価格をつける作家が非常に多い。これは長続きしません。
第2に、材料の再入手性。特定の入手困難な材料に依存すると、売れたときに追加生産できません。継続的に仕入れられる材料で構成することが、事業としての安定につながります。
第3に、発送コスト。大きくて重いものは送料が高く、価格に転嫁すると売れにくくなります。小さくて軽いものは送料が安く、利益率が保ちやすい。アクセサリー類が定番なのは、この構造があるからです。
独自データからみた在宅ワークとしてのハンドメイド販売
在宅で働く人の求人データと相談内容を長く見てきた立場から、いくつか観察を書きます。
まず、ハンドメイド販売と他の在宅ワークには決定的な違いがあります。ハンドメイド販売は「案件を受注する」形ではなく「自分で商品を作って売る」形です。つまり、仕事が向こうから来ることはありません。この違いは、収入の立ち上がり方に大きく影響します。受注型の在宅ワークは応募して採用されれば翌週から収入が発生しますが、ハンドメイドは出品してから最初の1件が売れるまでに数週間かかることも普通です。
この構造を理解せずに「ハンドメイドで在宅ワーク」と考えると、期待とのギャップに苦しみます。他の在宅職種との比較は在宅でできる仕事おすすめ【2026年版】|スキル別ランキングにスキル別の整理があるので、収入の立ち上がり方の違いを含めて確認しておくと判断しやすくなります。
次に、ハンドメイドの技術は他の在宅職種へ横展開できる場合があります。作品写真の撮影と加工ができる人は、商品撮影の受託ができます。商品説明文を書ける人は、ライティング案件に応用できます。文章の仕事の相場感は著述家,記者,編集者の年収・単価相場に整理があり、自分の作業単価を客観的に見る材料になります。また、SNSでの発信を継続してきた人は、その運用ノウハウ自体が需要のあるスキルです。AI・マーケティング・セキュリティのお仕事には、マーケティング系の在宅案件でどんな業務範囲が設定されているかがまとまっています。
音楽やサウンドの分野で創作している方であれば、作品販売と並行して受託の道もあります。作曲・編曲・効果音・ジングルのお仕事やミックス・マスタリングのお仕事には、創作物を納品する形の案件がどう組み立てられているかが具体的に書かれています。ハンドメイドと同じ「作って売る」構造でありながら、受注型なので収入の予測が立てやすいという違いがあります。
20年この市場を運営してきた立場から言えば、長く続いている作家には共通点があります。作品の質そのものより、「注文しやすい」状態を作ることに時間を使っている点です。問い合わせへの返信が早い、納期が明確、梱包が丁寧で開封時に気持ちがいい、次回の案内がしつこくない。これらはすべて機材とは無関係な要素ですが、リピート率を決めます。逆に、高価な設備をそろえて作品の完成度を上げ続けているのに、売上が伸び悩んでいる方も見てきました。買い手が見ているのは、完成度の最後の数パーセントではなく、取引全体の安心感です。
もう1つ、手取りの構造について書いておきます。同じ5,000円の作品が売れても、販売手数料が10%のプラットフォームと40%の委託販売では、手元に残る額が倍以上違います。この差は月に20件売れると数万円になり、年間では設備投資が何回もできる規模になります。中間に乗るマージンの有無は、作り手の手取りの厚さを直接決める要素です。仲介の手数料が引かれない直接取引であれば、買い手は同じ予算でより多くを頼めるし、作り手は1件あたりの手取りが厚くなる。手数料0%という条件が意味を持つのは、この「双方が得をする」構造があるからです。運営者として見てきた限りでは、手取りの厚さは制作時間を確保できるかどうかに直結し、結果として作品の質にも跳ね返ってきます。
最後に、社会保険と年金の話を1つ。副業として始める場合、給与所得者であれば勤務先の社会保険が継続します。しかし本業として独立する場合は、国民年金と国民健康保険への切り替えが必要です。手続きの詳細は日本年金機構で確認できます。独立のタイミングで手続きを忘れると、後から遡って請求されることになります。
事業として成長させていくなら、取引先とのやり取りの文書品質も無視できません。見積書、納品書、請求書、契約書。これらを正確に作れることは、法人相手の取引を受けるうえで前提になります。ビジネス文書検定は文書作成の基礎を体系的に押さえられる資格で、ハンドメイド作家が法人向けの卸取引を始める段階で役に立ちます。ネットショップの運営に踏み込んでいくとサーバーやネットワークの理解も必要になる場面がありますが、そこまで踏み込むならCCNA(シスコ技術者認定)のような技術系資格が視野に入ります。ただし優先度は低いので、まずは撮影環境と梱包資材、そして自分のジャンルに許可が必要かどうかの確認から始めてください。
在宅で働く時間の組み立て方に不安があるなら、在宅ワーク主婦の1日のタイムスケジュール公開に実際の時間配分の例があります。ハンドメイドは制作、撮影、出品、発送、経理という5つの作業を1人で回す仕事です。どの作業にどれだけ時間を割くかを最初に設計しておくと、続けやすくなります。
よくある質問
Q. ハンドメイド販売を始めるのに最低いくら必要ですか?
制作道具を除けば、撮影ボックスや三脚などの撮影機材で5,000円から1万円、梱包資材で5,000円から1万円、合わせて1万円から2万円程度で始められます。カメラやパソコンは必須ではなく、スマートフォンで十分に販売できる写真が撮れます。設備投資は売れ行きを見てから足すのが安全です。
Q. ハンドメイド販売に許可や資格は必要ですか?
布小物、アクセサリー、革製品、木工、編み物などは許可なく販売できます。ただし食品は営業許可、手作り石けんや化粧水などの化粧品は製造販売業の許可、他人が作ったものの仕入れ販売は古物商許可が必要です。作るジャンルによって扱いが大きく変わるので、開始前に必ず確認してください。
Q. 副業でハンドメイド販売をすると確定申告は必要ですか?
給与所得者の場合、売上から必要経費を引いた所得が年間20万円を超えると確定申告が必要です。材料費、梱包資材費、送料、販売手数料、撮影機材費はすべて経費に算入できます。レシートを保管していないと本来引ける経費が引けなくなるため、最初から記録の習慣をつけてください。
Q. ネットショップに自宅の住所を載せる必要はありますか?
特定商取引法に基づく表記として、氏名・住所・電話番号の表示義務があります。開示したくない場合は、プラットフォーム側が当事者となる仕組みのマーケットプレイスを使うか、月額1,000円から5,000円程度のバーチャルオフィスで住所を借りる方法があります。表示義務を無視する選択肢はありません。
この記事について
編集部
監修:@SOHO編集部
2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを20年運営。編集部が事実確認のうえ公開しています。

この記事を書いた人
長谷川 奈津@SOHO編集部
行政書士・元企業法務
企業法務で数多くのフリーランス契約を扱った経験を活かし、フリーランス向けの法律・契約・権利に関する記事を執筆。「法律はあなたの味方です」がモットー。
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