子育てしながら製薬会社で働く|シフトの融通と、頼れる制度

朝比奈 蒼
朝比奈 蒼
子育てしながら製薬会社で働く|シフトの融通と、頼れる制度

この記事のポイント

  • 子育てしながら製薬会社で働けるかは
  • 会社の制度より配属先の職場で決まります
  • 研究所の実験時間の違い

結論から書きます。製薬会社は、育児と仕事の両立を支える制度が比較的整っている業界です。ただし、実際にどれだけ融通が利くかは、会社の制度の一覧ではなく、配属される職場で決まります。

同じ会社の中でも、交代勤務のある工場、担当地域を車で回るMRの営業所、在宅勤務が定着した本社の部門、実験の時間に縛られる研究所では、子育てとの相性がまったく違います。制度があっても使いにくい職場もあれば、制度に書かれていない柔軟さを持つ職場もあります。この記事では、製薬会社の中の職場ごとに子育てとの相性を整理し、法律で使える制度、会社独自の制度、求人票や公開資料で確かめるべき点を順番に見ていきます。

製薬会社は制度が厚い、けれど融通は職場で決まる

最初に、製薬会社が子育て中の人にとってどんな業界なのかを、全体として押さえておきます。

製薬会社、とくに大手の新薬メーカーや外資系の日本法人は、育児休業や短時間勤務、在宅勤務などの制度が早くから整えられてきた業界の1つです。専門性の高い人材が多く、1人を育てるのに時間がかかるため、出産や育児を理由に辞められることは会社にとって大きな損失になります。そのため、長く働き続けてもらうための制度に投資する動機が強いという特徴があります。

また、上場している大手の会社は、統合報告書やサステナビリティのページで、育児休業の取得率や女性管理職の比率を公開していることが多く、制度の運用が外から見えやすい業界でもあります。数字を公開している以上、取得率の低さは会社の評判に響きます。この仕組みが、制度を実際に使える状態に保つ圧力になっている面があります。

一方で、制度が厚いことと、自分の職場で融通が利くことは別の話です。製薬会社の仕事は、職種によって働く場所と時間の縛りが大きく違います。工場の製造ラインは決まった時刻に動き、治験の現場は医療機関の予定に合わせて動き、副作用の報告には法律で決められた期限があります。制度で勤務時間を短くしても、仕事の側の時間の縛りが変わらなければ、どこかで無理が生じます。

正直なところ、「製薬会社は子育てしやすい」という評判だけで応募先を決めるのは危うい判断です。会社全体の評判よりも、配属される部署の人数、仕事の時間の縛り方、同じ部署に子育て中の人がいるかどうかのほうが、毎日の働きやすさに直結します。

会社の種類による違いもあります。大手の新薬メーカーや外資系は制度が手厚く、公開している数字も多い傾向があります。中堅やジェネリック医薬品のメーカーでは、法律で決められた範囲の制度が中心で、会社独自の上乗せは少なめな場合があります。その代わり、社員数が少ない分だけ個別の事情に合わせて柔軟に対応してくれる職場もあります。制度の厚さと運用の柔軟さは、必ずしも比例しないということです。

以下では、製薬会社の中の代表的な職場を取り上げて、子育てとの相性を具体的に見ていきます。

工場の職場:シフトの組まれ方で両立のしやすさが変わる

工場は、子育てとの相性がシフトの組まれ方で大きく変わる職場です。

医薬品の工場では、製造の設備を効率よく動かすために、早番と遅番の2交代や、夜勤を含む3交代で操業しているところがあります。一方で、日勤だけで操業している工場や、部署によって日勤のみの勤務になっているところもあります。どちらの形なのかで、子育て中の働きやすさはまるで違います。

交代勤務のある工場でも、子育て中の社員を日勤に固定する運用をしているところがあります。育児・介護休業法では、小学校に入る前の子どもを育てる社員が申し出た場合、深夜の時間帯に働かせてはいけないという決まりもあります。ただし、日勤に移ると夜勤や交代勤務の手当がなくなり、手取りが減ることがあります。この点は事前に確かめておきたい部分です。

製造の現場では、1人が抜けると設備が止まることもあるため、急な休みへの対応が課題になります。子どもの急な発熱で休むときに、誰が代わりに入るのかが仕組みとして決まっている職場は、休みを取る心理的な負担が小さくなります。班のメンバーが複数の工程を担当できるように教育している工場では、代わりの人を立てやすく、子育て中の人も休みやすい傾向があります。

品質管理や品質保証の部門は、同じ工場の中でも日勤が中心で、製造部門に比べて時間の融通が利きやすい職場です。ただし、製品の出荷の判断に関わるため、出荷の予定が詰まっている時期は残業が増えることがあります。試験の結果が出る時刻に合わせて作業が延びることもあり、保育園の迎えの時刻との調整が必要になる場面があります。

工場は地方にあることが多く、社員が車で通勤していることもよくあります。通勤時間が短く、保育園と自宅と職場が近い範囲に収まりやすいという点は、都市部の本社で働くより両立しやすい面です。工場の近くに社員向けの保育施設を設けている会社もあります。

工場で働く場合は、自分が配属される部署の勤務の形と、子育て中の社員の働き方の前例を、面接で具体的に聞いておくことをおすすめします。

MRの職場:転勤、担当地域、手当の変化

MRは、子育てとの両立で悩む人が多い職種です。その理由は主に3つあります。

1つ目は転勤です。MRは全国の営業所に配置され、数年ごとに担当地域が変わるのが一般的です。子どもが保育園や学校に通っている時期の転勤は、家族の生活を大きく揺さぶります。最近は、転勤のない地域限定の採用枠を設けたり、育児中の社員の転勤に配慮したりする会社も増えていますが、その分、昇進の機会や年収に差が出る制度になっている場合もあります。

2つ目は、医療機関の時間に合わせる働き方です。医師と話ができるのは、診療が終わった夕方以降や、昼休みの短い時間であることが多く、MRの仕事の時間は医療機関の都合に左右されます。医療関係者向けの説明会や勉強会が夕方から夜にかけて開かれることもあります。保育園の迎えの時刻とこうした予定がぶつかりやすいのが、MRの両立の難しさです。

ただし、ここ数年でMRの働き方は大きく変わりました。オンラインでの面談や情報提供が広がり、直行直帰が基本になった会社も多くあります。訪問の件数を追う働き方から、少数の医療機関と深く付き合う働き方に移っている会社では、自分で予定を組み立てやすくなり、子育てとの両立がしやすくなったという声も聞かれます。

3つ目は、手当の変化です。MRの年収には、営業手当や外勤の日当が含まれていることが多く、その比率は小さくありません。短時間勤務や内勤への異動を選ぶと、こうした手当がなくなり、年収が想像以上に下がることがあります。制度を使う前に、どの手当がどう変わるのかを人事に確かめておくことが大切です。

MRを続けながら子育てをしている人の中には、担当地域を自宅に近い範囲にしてもらったり、担当する医療機関の数を調整してもらったりしている人もいます。一方で、子育ての期間だけ学術や本社の部門に異動し、落ち着いてからMRに戻る人もいます。MRの経験は社内の他の部門でも評価されやすいので、異動の選択肢があるかどうかを会社に確かめておくとよいでしょう。

本社部門と研究所:在宅勤務と、時間に縛られる仕事

本社にある薬事、安全性情報、学術、臨床開発などの部門は、製薬会社の中で最も在宅勤務が定着している職場です。

文書を読んで書くことが仕事の中心なので、社内のシステムに自宅から接続できれば、多くの仕事を在宅で進められます。週の半分以上を在宅で働いている部門もあり、通勤の時間がなくなることで、保育園の送り迎えと仕事を両立しやすくなります。子育て中の人にとって、本社部門は製薬会社の中で最も働きやすい職場の1つと言えます。

ただし、本社部門にも時間の縛りはあります。安全性情報の部門では、副作用の報告に法律で決められた期限があり、重い副作用の情報が入れば、決められた日数の中で報告をまとめなければなりません。薬事の部門では、承認申請の締め切りが近づくと仕事が集中します。こうした時期に子どもが体調を崩すと、代わりの人がいない少人数の部署では対応が難しくなります。

外資系の日本法人では、海外の本社との会議が日本の夜の時間帯に入ることがあります。ヨーロッパやアメリカとの会議は、日本時間の夕方から夜にかけてになりやすく、子どもの夕食や寝かしつけの時間と重なります。会議の時間を持ち回りで調整してくれるチームもあれば、日本側が合わせるのが当然になっているチームもあり、この違いは面接で確かめる価値があります。

研究所は、在宅勤務との相性が職種によって分かれる職場です。実験を行う研究者は、研究所に出勤しなければ仕事が進みません。細胞を育てる実験や動物を使う実験では、決まった時刻に作業をする必要があり、週末に研究所に行かなければならないこともあります。一方で、データの解析や論文の調査、計画の立案などは在宅でも進められるため、実験の日と在宅の日を組み合わせて働いている研究者もいます。

研究所で子育てと両立している人は、実験の計画を立てるときに、自分が休んでも同僚が引き継げるように手順を細かく記録しています。製薬会社の研究所はもともと記録を重視する文化があるため、この工夫はチームの仕事の質を上げることにもつながります。

受託会社や派遣という形で、製薬の仕事を続ける

製薬会社の正社員として働くことだけが、子育て中に製薬の仕事を続ける方法ではありません。受託会社や派遣という形で、製薬会社の職場に関わり続ける人も多くいます。

派遣で製薬会社の職場に入る場合、勤務時間や勤務日数を契約の段階で決めるため、最初から子育てに合わせた条件で働けるという利点があります。安全性情報のデータ入力、薬事の文書管理、臨床開発の事務、品質の記録の確認など、製薬会社の本社部門には派遣社員が担っている仕事が多くあり、時短や週4日の勤務といった条件の求人も見つかります。残業のない条件で契約できれば、保育園の迎えの時刻に合わせて確実に退勤できます。

一方で、派遣には弱点もあります。時給で働くため、祝日の多い月や子どもの体調不良で休んだ月は収入が減ります。育児休業は、条件を満たせば派遣社員でも取得できますが、契約の更新との関係で不安を感じる人もいます。同じ部署で働ける期間には原則として上限があり、長く同じ職場で経験を積みたい人には向かない面があります。

CROやSMOといった受託会社の正社員として働く場合は、製薬会社と同じように育児の制度を使えます。受託会社は女性の社員が多い会社も多く、子育てをしながら働く社員の前例が豊富な職場もあります。CRCのように医療機関に出向く仕事は、医療機関の診療時間に合わせた勤務になるため、夕方には仕事を終えやすいという声もあります。ただし、担当する治験の患者さんの来院の予定に合わせて動くため、急な予定の変更には対応が必要です。

正社員か派遣か、製薬会社か受託会社かは、どれが正しいという話ではありません。子どもの年齢、家族の分担、家計の状況によって、最適な形は変わります。子どもが小さい数年間は派遣で時間を優先し、落ち着いたら正社員に戻る、という順番で考える人もいます。製薬業界は職種ごとの専門性が評価される業界なので、形を変えても経験が途切れなければ、戻る道は残っています。

法律で使える制度:育児・介護休業法の改正を押さえる

ここからは、どの職場で働いていても使える、法律に基づく制度を整理します。製薬会社に限らず、雇われて働く人なら誰でも関係する内容ですが、2025年に大きな改正があったので、あらためて確かめておきましょう。

厚生労働省は、改正の概要について次のように示しています。

令和6年5月に育児・介護休業法及び次世代育成支援対策推進法が改正されました。 1 子の年齢に応じた柔軟な働き方を実現するための措置の拡充 2 育児休業の取得状況の公表義務の拡大や次世代育成支援対策の推進・強化 3 介護離職防止のための仕事と介護の両立支援制度の強化等 出典: 厚生労働省

改正は2025年4月と10月に分けて施行されました。子育てに関わる主な内容をまとめると、次のようになります。

子どもが1歳になるまで、条件によっては最長で2歳になるまで、育児休業を取ることができます。父親は、子どもが生まれてから8週間の間に、最大で4週間の産後パパ育休を取ることもできます。

3歳になるまでの子どもを育てる社員は、1日の所定労働時間を原則として6時間にする短時間勤務を使えます。2025年4月からは、3歳になるまでの子どもを育てる社員が在宅勤務などを選べるように措置を講じることが、会社の努力義務になりました。

残業の免除を申し出られる期間は、2025年4月から、子どもが小学校に入る前までに広がりました。子どもの病気やけがのときに取れる休暇は、名前が子の看護等休暇に変わり、対象が小学校3年生の修了までに広がっています。休暇の日数は、子ども1人なら年5日、2人以上なら年10日です。入園式や卒園式などの行事への参加にも使えるようになりました。

2025年10月からは、3歳から小学校に入る前までの子どもを育てる社員について、会社は始業時刻の変更、在宅勤務、保育施設の設置や運営、新しい休暇、短時間勤務の中から2つ以上を選んで制度を用意し、社員はその中から1つを選んで使えるようになりました。あわせて、妊娠や出産を申し出たときと、子どもが3歳になる前に、会社は制度を個別に知らせて、働き方の希望を聞くことが義務になっています。

また、育児休業の取得状況を公表しなければならない会社は、従業員が1,000人を超える会社から、300人を超える会社に広がりました。中堅規模の製薬会社でも、取得率を公開する会社が増えています。

これらはあくまで法律で決められた最低限の内容です。製薬会社の多くは、ここに会社独自の制度を上乗せしています。

会社独自の制度:どこまで上乗せされているか

製薬会社の中には、法律で決められた内容を超えて、子育て中の社員を支える制度を用意しているところがあります。代表的なものを挙げます。

1つ目は、短時間勤務の対象期間の延長です。法律では3歳までが原則ですが、小学校3年生や小学校卒業まで短時間勤務を使えるようにしている会社があります。子どもが小学校に入ると、保育園のように遅い時間まで預けられる場所が減り、かえって両立が難しくなることがあります。いわゆる小1の壁です。この時期を越えられる制度があるかどうかは、長く働くうえで大きな違いになります。

2つ目は、在宅勤務やフレックスタイムです。始業と終業の時刻を自分で決められる制度があると、保育園の送り迎えや通院に合わせて働く時間をずらせます。在宅勤務の日数に上限を設けていない会社もあります。

3つ目は、費用の補助です。ベビーシッターの利用料の補助、病児保育の費用の補助、社内や近隣の保育施設との提携など、子どもを預ける費用を会社が支える制度です。

4つ目は、休暇の上乗せです。子の看護等休暇を有給にしている会社や、日数を法律より多くしている会社があります。失効した年次有給休暇を積み立てて、子どもの看護などに使えるようにしている会社もあります。

5つ目は、復職の支援です。育児休業中に社内の情報を受け取れる仕組みや、復職前の面談、復職後に上司と働き方を相談する場を設けている会社があります。

6つ目は、配偶者の転勤に合わせた制度です。配偶者の転勤で引っ越すときに、勤務地の変更を認めたり、一定期間の休職を認めたりする会社があります。全国に拠点を持つ製薬会社ならではの制度で、共働きの家庭にとっては心強い仕組みです。

国の認定制度も、会社の取り組みを見分ける目安になります。次世代育成支援対策推進法に基づくくるみん認定や、より高い水準を満たした会社に与えられるプラチナくるみん認定を受けている製薬会社は少なくありません。認定を受けているかどうかは、会社のウェブサイトや厚生労働省の公開情報で確かめられます。

ただし、繰り返しになりますが、制度があることと使えることは別です。制度の数を比べるより、実際に使っている人がどれくらいいるのかを確かめるほうが、ずっと役に立ちます。

求人票と公開資料で、両立のしやすさを確かめる

では、応募の段階でどこを見れば、子育てと両立しやすい職場かどうかが分かるのでしょうか。

まず見るのは、会社が公開している数字です。統合報告書やサステナビリティのページ、厚生労働省の女性の活躍に関する情報を集めたデータベースなどで、次のような数字を確かめます。女性と男性それぞれの育児休業の取得率、育児休業からの復職率、女性管理職の比率、平均勤続年数の男女差、残業時間の平均です。とくに男性の育児休業の取得率は、職場全体が育児を当たり前のこととして受け止めているかを映す数字として参考になります。

次に見るのは、求人票の書き方です。「在宅勤務可」と「週3日まで在宅勤務可」では具体性が違います。「フレックスタイム制あり」と書かれていても、コアタイムが長いと融通は限られます。勤務地が「全国」とだけ書かれている場合は、転勤の可能性を面接で確かめる必要があります。

面接では、次のような質問が役に立ちます。 「配属予定の部署に、子育てをしながら働いている方はいらっしゃいますか」 「短時間勤務を使っている方の仕事の範囲は、どのように調整されていますか」 「子どもの急な体調不良で休むとき、仕事の引き継ぎはどのように行っていますか」 「在宅勤務は部署の中で実際に週何日くらい使われていますか」

子育ての話を面接で持ち出すと不利になるのではないか、と心配する人もいます。確かに、その不安は理解できます。ただ、法律で制度の個別の周知と意向の確認が会社の義務になった今、制度の使われ方を尋ねることは、応募者として自然な確認です。答えが具体的に返ってくる会社は、実際に制度を使っている人がいる会社です。

口コミサイトの情報も参考にはなりますが、子育てに関する書き込みは部署や時期によって状況が大きく違うため、1つの書き込みで判断しないように気をつけてください。同じ部署について、数年にわたって似た内容が書かれているかどうかを見ると、職場に根付いた傾向なのかが分かりやすくなります。

もう1つ、同じ職種で働く人の話を聞けるなら、それが最も確かな情報源になります。社員との面談の場を設けている会社もあるので、選考の途中で頼めるか相談してみてください。

両立でつまずきやすい場面と、その乗り越え方

制度を確かめて入社しても、実際に働き始めると、つまずきやすい場面があります。製薬会社で子育てと両立している人がよく直面する場面と、その乗り越え方を整理します。

1つ目は、子どもの急な発熱です。保育園に入ったばかりの時期は、子どもが体調を崩す回数が多く、月に何度も休むことになりがちです。この時期を乗り越えた人に共通しているのは、休む可能性を前提に仕事の進め方を組み立てていることです。自分の仕事の進み具合を毎日共有しておく、手順や判断の根拠を記録に残しておく、といった工夫をしておくと、急に休んでも同僚が引き継げます。製薬会社の仕事はもともと記録を重んじるので、この工夫は職場の文化とも相性が良いと言えます。

2つ目は、評価と昇進です。短時間勤務を使っている間は、担当できる仕事の量が減り、評価や昇進が遅れるのではないかという不安があります。実際に、時間の短さがそのまま評価に響いてしまう職場もあります。成果を時間ではなく仕事の中身で評価する仕組みがあるか、短時間勤務から管理職になった人がいるかは、確かめておきたい点です。

3つ目は、年収の変化です。短時間勤務では、働く時間に応じて基本給が減るのが一般的です。MRの手当や工場の交代勤務の手当がなくなると、減り幅はさらに大きくなります。子育ての期間にどれくらい年収が変わるのかを、事前に試算しておくと、家計の見通しが立てやすくなります。薬剤師として働く場合の年収の水準は、薬剤師の年収・単価相場に公的な統計をもとにまとめられているので、短時間勤務を選んだときの年収を他の職場と比べる材料になります。

4つ目は、小学校に上がるときの変化です。先ほど触れた小1の壁は、制度の対象期間が切れる時期と重なることが多く、多くの人がこの時期に働き方を見直します。子どもが小学校に入る数年前から、どの制度がいつまで使えるのかを確かめておくと、慌てずに済みます。

私が話を聞いてきた中でも、両立がうまくいっている人は、制度を1人で使いこなしているというより、上司や同僚と「どこまでなら任せてもらえるか」を早い段階で話し合っていました。制度は土台であって、その上にある職場との合意が、毎日の働きやすさを決めているという傾向が見られます。

育児休業から復職する前後に、しておきたいこと

子育てと仕事の両立で、最も負担が大きくなりやすいのが、育児休業から復職する前後の数か月です。製薬会社で働く人が、この時期にしておきたいことを整理します。

復職の前にしておきたいことの1つ目は、上司との面談です。法律で、会社は子どもが3歳になる前などに働き方の希望を聞くことが義務になりましたが、面談の場を待つだけでなく、自分から希望を伝える準備をしておくと話が進みやすくなります。短時間勤務を使うのか、在宅勤務を何日使いたいのか、担当する仕事の範囲をどうしたいのかを、具体的に書き出しておきましょう。

2つ目は、休んでいた間の変化の確認です。製薬業界では、規制の通知や社内の手順が頻繁に更新されます。安全性情報や薬事の部門なら、休業中に変わった決まりや手順を、復職前に確かめておくと、戻ってからの戸惑いが減ります。社内の情報を休業中も受け取れる仕組みがある会社なら、無理のない範囲で目を通しておくとよいでしょう。

3つ目は、家庭の中での分担と、急な休みのときの手順を決めておくことです。子どもが発熱したときに、誰が迎えに行くのか、誰が休むのか、病児保育をどう使うのかを、パートナーや家族とあらかじめ決めておきます。毎回その場で話し合うと、それだけで疲れてしまいます。

復職したあとにしておきたいことは、仕事の見える化です。自分がどの仕事をどこまで進めているのかを、チームの共有の場に残しておきます。急に休むことになっても、同僚が状況をすぐに把握できるので、休む側も引き継ぐ側も負担が小さくなります。

もう1つは、最初の数か月で完璧を目指さないことです。復職直後は、子どもの体調も生活のリズムも安定しません。休業前と同じ仕事量をこなせないのは当然のことで、それを前提に上司と目標を話し合っておくほうが、結果として長く働き続けられます。

会社の外にある働き方も、並べて考えておく

最後に、製薬会社で働き続けること以外の選択肢も、並べて考えておきます。

子育ての時期は、会社の制度をどれだけ使っても、時間の制約が大きくなります。そのため、この時期に働き方そのものを見直す人もいます。製薬会社で身につけた医薬品の知識、文書を正確に扱う力、規制を読み解く力は、会社の外でも活かせます。医療系の文書作成、医薬品に関する記事の監修、翻訳などは、自宅で自分の時間に合わせて進めやすい仕事です。

薬剤師の資格を持っている人なら、在宅で働ける仕事の幅はさらに広がります。どんな仕事があり、どんなスキルが求められるのかは、在宅薬剤師への転職ガイドに仕事内容と年収の実態がまとめられているので、会社員として働き続ける場合と比べるときの参考にしてください。

働き方を変えるかどうか迷っているときは、1人で考え込まず、キャリアの相談を受ける専門家に話を聞いてもらうのも1つの方法です。職場・転職・キャリア相談のお仕事では、キャリア相談の仕事がどのような形で行われているかが紹介されており、どんな相談ができるのかを知る手がかりになります。

在宅ワークや業務委託の市場を長く見てきた立場から言えば、子育てをしながら専門性を活かして仕事を受けている人は、仕事の量を増やすことより、自分の時間の中で無理なく続けられる相手を選ぶことに力を入れている傾向があります。そうした働き方では、仲介の手数料の有無が手元に残る金額に直結します。手数料0%の直接取引なら、依頼する側は同じ予算で頼みやすく、受ける側は限られた時間でも手取りが厚くなります。時間の制約がある時期ほど、この差は大きく感じられるはずです。

子育てしながら製薬会社で働けるかどうかは、会社の名前や制度の一覧だけでは決まりません。配属される職場の時間の縛り方、実際に制度を使っている人の有無、上司や同僚との合意の作りやすさ。この3つを応募の段階で確かめることが、長く働き続けるための一番の近道です。

よくある質問

Q. 製薬会社は子育てしながら働きやすい業界ですか?

育児休業や短時間勤務、在宅勤務などの制度は比較的整っている業界です。ただし、実際の働きやすさは配属先で大きく変わります。在宅勤務が定着した本社部門は両立しやすい一方、交代勤務のある工場や、転勤と夕方の予定が多いMRは調整が必要です。制度の一覧より、配属先で使っている人がいるかを確かめてください。

Q. 子育て中にMRを続けることはできますか?

続けている人はいます。オンラインでの面談や直行直帰が広がり、自分で予定を組み立てやすくなった会社もあります。担当地域を自宅の近くにしてもらう、担当件数を調整するなどの工夫もあります。ただし、短時間勤務や内勤への異動で営業手当がなくなり年収が下がることがあるため、事前に人事へ確かめておくと安心です。

Q. 2025年の育児・介護休業法の改正で何が変わりましたか?

子の看護等休暇の対象が小学校3年生修了までに広がり、行事への参加にも使えるようになりました。残業免除の対象は小学校入学前までに広がっています。10月からは、3歳から小学校入学前の子を育てる社員について、会社が在宅勤務や始業時刻の変更など5つの中から2つ以上の制度を用意することが義務になりました。

Q. 製薬会社の子育て支援の実態はどこで確かめられますか?

統合報告書やサステナビリティのページ、厚生労働省の女性の活躍に関するデータベースで、男女別の育児休業取得率、復職率、女性管理職比率などを確かめられます。くるみん認定の有無も目安になります。面接では、配属予定の部署に子育て中の社員がいるか、急な休みの引き継ぎをどうしているかを聞くと実態が分かります。

この記事について

@SOHO
編集部

監修:@SOHO編集部

2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを20年運営。編集部が事実確認のうえ公開しています。

公開:2026年6月11日最終更新:2026年9月18日
朝比奈 蒼

この記事を書いた人

朝比奈 蒼@SOHO編集部

ITメディア編集者

IT系メディアで編集・ライティングを担当。クラウドソーシング業界の動向やサービス比較など、客観的な視点での記事を執筆しています。

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