年金の在職定時改定で受給額はいつ見直されるか 2026


この記事のポイント
- ✓65歳以上70歳未満で働きながら老齢厚生年金を受け取る人の年金額を
- ✓毎年9月1日を基準に10月分から見直す仕組みです
- ✓12月の支払いで分かる確かめ方
65歳を過ぎても会社で働き、厚生年金の保険料を払い続けている方の多くが気にしているのが、「払った保険料は、いつ年金に反映されるのか」という点です。その答えになるのが在職定時改定で、毎年9月1日の時点で厚生年金に加入していれば、その年の10月分から年金額が見直されます。実際に振り込まれる口座の金額が変わるのは、10月分と11月分がまとめて支払われる12月です。
この記事では、在職定時改定の対象になる人とならない人、年金額がどのくらい増えるかの目安、見直しを自分で確かめる方法、そして2026年4月に変わった在職老齢年金や退職改定との関係を、日本年金機構の公表内容に沿って整理します。
在職定時改定は毎年9月1日を基準に10月分から年金額を見直す仕組み
在職定時改定とは、働きながら老齢厚生年金を受け取っている65歳以上70歳未満の人について、在職中に払った厚生年金の保険料を、毎年1回、年金額に反映させる仕組みです。2022年(令和4年)4月に始まりました。
それ以前は、65歳を過ぎてから払った保険料が年金額に反映されるのは、会社を辞めたとき(退職時)か、70歳になったときだけでした。たとえば65歳から69歳まで働き続けた人は、5年近く保険料を払っても、その分の年金を受け取れるのは辞めてからだったのです。在職定時改定は、この「働いている間は増えない」状態を改め、働き続けた効果を退職を待たずに早く年金額に反映させるために導入されました。
日本年金機構は、仕組みを次のように説明しています。
厚生年金に加入しながら老齢厚生年金を受けている65歳以上70歳未満の方が、基準日の9月1日において被保険者であるときは、翌月の10月分の年金額から見直されます。これを「在職定時改定」といいます。 出典: nenkin.go.jp
ここで出てくる「被保険者」とは、厚生年金に加入して保険料を納めている人のことです。また、見直しの対象になるのは「前年9月から当年8月まで」の1年間に厚生年金に加入していた期間です。毎年この1年分が追加されて、年金額が計算し直されます。
時系列で並べると、次のようになります。
| 時期 | 起きること |
|---|---|
| 前年9月から当年8月 | この1年間に厚生年金に加入していた期間が、見直しの材料になる |
| 9月1日(基準日) | この日に厚生年金に加入しているかどうかで、対象かどうかが決まる |
| 10月分の年金 | 見直し後の年金額が、この月分から適用される |
| 12月15日の支払い | 10月分と11月分がまとめて振り込まれ、増えた額が初めて口座に反映される |
在職定時改定の対象になる人とならない人
対象になるのは、次の条件をすべて満たす人です。
・65歳以上70歳未満であること
・老齢厚生年金を受け取っていること
・9月1日(基準日)の時点で、厚生年金に加入していること
反対に、次のような人は在職定時改定の対象になりません。
| 対象にならない人 | 理由 |
|---|---|
| 65歳未満の人 | 対象は65歳以上70歳未満に限られる。日本年金機構の資料は、繰上げ受給をしている65歳未満の人も対象外と明記している |
| 70歳以上の人 | 70歳以上は厚生年金の被保険者ではないため、保険料の負担がなく、再計算の材料になる加入期間もない |
| 9月1日の時点で厚生年金に加入していない人 | 基準日に被保険者でなければ、その年の在職定時改定は行われない |
| 個人事業主や業務委託で働いている人 | 会社員として厚生年金に加入していないため、そもそも見直しの材料になる期間がない |
最後の行は、定年後にフリーランスとして独立した人や、業務委託で仕事を受けている人が見落としやすい点です。同じように働いていても、会社に雇われて厚生年金に加入していなければ、在職定時改定で年金が増えることはありません。働き方を選ぶときは、手取りの報酬額だけでなく、年金に反映されるかどうかも比べる材料になります。
パートやアルバイトでも、一定の条件を満たせば厚生年金に加入します。厚生労働省の社会保険適用拡大の案内では、週の所定労働時間が20時間以上、学生ではないことなどの要件が示されていて、以前あった所定内賃金が月額8.8万円以上という賃金の要件は、令和7年年金制度改正により2026年10月に撤廃されたと案内されています。加入するかどうかは勤め先の規模や働き方で変わるので、自分が加入しているかは給与明細の厚生年金保険料の欄で確かめるのが確実です。
基準日の9月1日をまたいで転職した場合の扱い
9月1日に厚生年金に加入していることが条件と聞くと、「8月末で辞めて9月の途中から次の会社に入ったら、その年は増えないのか」と心配になる方もいるはずです。
この点について、日本年金機構は例外を設けています。9月1日より前に厚生年金の資格を失い、9月1日をまたいで、1か月が経たないうちに再び資格を得たときは、9月1日に被保険者でなくても、在職定時改定として年金額の再計算が行われます。日本年金機構の例では、8月25日に資格を失い、9月3日に資格を取得したケースが挙がっています。
資格を失う日は、一般に退職日の翌日です。ですから、8月24日に退職して9月3日に次の会社で働き始めたような転職なら、空白は1か月未満で、在職定時改定の対象として扱われます。一方で、8月に退職して10月から次の会社に入る場合のように、空白が1か月以上になると、その年の在職定時改定の対象にはなりません。その場合は、後で説明する退職改定のほうで年金額が見直されます。
転職の時期を自分で選べるなら、9月1日をまたぐ空白を1か月未満に収めるか、9月1日を過ぎてから退職するかで、見直しのタイミングが変わることは知っておいて損はありません。ただし、退職日や入社日によって社会保険料のかかり方も変わるので、具体的な日付は勤め先の担当者に確認してから決めるのが安全です。
在職定時改定で年金がいくら増えるかの目安
在職定時改定で増えるのは、老齢厚生年金のうち「報酬比例部分」と呼ばれる部分です。報酬比例部分とは、厚生年金に加入していた期間の給与や賞与の額に応じて決まる年金のことです。
日本年金機構の計算式では、2003年(平成15年)4月以降の加入期間の報酬比例部分は、次のように計算されます。
平均標準報酬額 × 5.481 ÷ 1,000 × 加入期間の月数
「平均標準報酬額」は、毎月の給与を区切りのよい金額に当てはめた標準報酬月額と、賞与の額(標準賞与額)を合わせて、加入期間で平均したものです。この式に1年分(12か月)を当てはめると、在職定時改定で1年あたりどのくらい増えるかの目安が出せます。
| 1年間の平均標準報酬額 | 計算 | 年金額の増加の目安(年額) |
|---|---|---|
| 15万円 | 15万円 × 5.481 ÷ 1,000 × 12 | 約9,900円 |
| 20万円 | 20万円 × 5.481 ÷ 1,000 × 12 | 約13,200円 |
| 30万円 | 30万円 × 5.481 ÷ 1,000 × 12 | 約19,700円 |
たとえば月給20万円で賞与がない人が1年間働くと、年金額は年あたり約13,200円増える計算です。2か月ごとの支払いでいえば、1回あたり2,000円強の増加になります。
この表は、あくまで仕組みをつかむための目安です。実際の計算では、過去の給与を今の賃金水準に置き換える「再評価率」がかかるほか、厚生年金の加入期間に共済組合の期間がある人や、昭和21年4月1日以前に生まれた人は計算方法が異なります。正確な額は、後で紹介する通知書や「ねんきんネット」で確かめてください。
金額だけを見ると小さく感じるかもしれませんが、この増額は一度反映されると、その後もずっと続きます。65歳から69歳まで同じ条件で働けば、毎年の見直しで少しずつ積み上がり、70歳になる時点ではそれだけ年金額の土台が厚くなっています。
65歳から69歳まで働き続けた場合の年金額の積み上がり方
在職定時改定の効果は、1年分だけを見るより、数年続けたときの積み上がりで見たほうが実感しやすくなります。ここでは、仕組みをつかむための単純なモデルとして、65歳の誕生月の翌月から厚生年金に加入して働き、平均標準報酬額がずっと20万円だった人を考えます。再評価率や生年月日による違いは考えず、1年(12か月)ごとに約13,200円ずつ増えると置いて計算します。
| 時点 | 反映される加入期間の累計 | 年金額の増加の累計(年額の目安) |
|---|---|---|
| 1回目の在職定時改定 | 約1年 | 約13,200円 |
| 2回目の在職定時改定 | 約2年 | 約26,300円 |
| 3回目の在職定時改定 | 約3年 | 約39,500円 |
| 4回目の在職定時改定 | 約4年 | 約52,600円 |
| 70歳到達時の見直し | 約5年 | 約65,800円 |
実際には、65歳の誕生日がいつかによって、1回目の在職定時改定で反映される期間は1年に満たないことがあります。たとえば65歳になったのが5月なら、最初の9月1日の時点で反映されるのは数か月分です。また、70歳になったときの見直しでは、直前の9月から70歳になるまでの期間が加わります。表の数字は「1年ごとにこのくらいずつ土台が厚くなる」という感覚をつかむためのもので、実際の年金額とは一致しません。
それでも、5年続けると年額で6万円台の増加になるという目安は、働き方を考えるうえで参考になります。この増加は70歳以降もずっと続くので、たとえば70歳から85歳まで15年間受け取ると、合計では100万円近い差になる計算です。会社に払っている保険料と比べると元が取れるかどうかは人によって違いますが、厚生年金の保険料は会社も同じ額を負担しているという点も含めて考えると、見方が変わってきます。
自分の最初と最後の在職定時改定がいつかを確かめる
自分の場合に在職定時改定が何回あるのかは、65歳になった時期と70歳になる時期から数えられます。考え方は単純で、65歳以上70歳未満の間に迎える9月1日の回数が、在職定時改定の回数になります。
たとえば2026年3月に65歳になった人で、ずっと同じ会社で厚生年金に加入して働き続ける場合を考えます。
・最初の在職定時改定は2026年9月1日が基準日で、2026年10月分から反映され、12月の支払いで初めて増えた額が振り込まれる
・その後、2027年、2028年、2029年、2030年の9月1日にも見直しがある
・2031年3月に70歳になると、厚生年金の被保険者ではなくなり、70歳到達の翌月分から、直前の9月以降の期間を加えて年金額が見直される
この例では、在職定時改定が5回、70歳到達時の見直しが1回で、合わせて6回、年金額が見直されることになります。一方で、65歳になったのが10月の人は、最初の9月1日までに11か月ほどあり、70歳になる直前の9月1日も迎えるので、回数の数え方が変わります。
自分の65歳と70歳の時期を手帳やカレンダーに書き込み、毎年9月1日の前後で働き方を変える予定がないかを確かめておくと、見直しの機会を取りこぼさずに済みます。
在職定時改定で起きやすい3つの勘違い
在職定時改定は始まってからまだ数年の制度で、周りの人の話や古い記事をもとに誤解しているケースも少なくありません。編集部に寄せられる相談でも、次の3つがよく見られます。
勘違い1:65歳になる前から毎年増えている
在職定時改定の対象は、65歳以上70歳未満の人です。60代前半で特別支給の老齢厚生年金を受け取りながら働いている人や、65歳前に年金を繰上げ受給している人は対象になりません。65歳未満の間に払った保険料は、退職したときか65歳になったときなどに年金額へ反映されます。
勘違い2:保険料を払った月から、すぐに年金額へ反映される
反映されるのは、年に1回、9月1日を基準日とした見直しのときだけです。4月に昇給して保険料が上がっても、その分がすぐに年金額に反映されるわけではありません。前年9月から当年8月までの1年分がまとめて、10月分から反映されます。
勘違い3:年金額が増えれば、手取りも同じだけ増える
年金額が増えても、年金から差し引かれる介護保険料や住民税などの額が変わる場合があります。また、年金も所得税や住民税の計算に含まれるため、年金額が増えた分だけ税金の額が変わることもあります。増えた年金額と手取りの変化は分けて考え、気になる場合はお住まいの市区町村や税務署で確認してください。
12月の振込額と通知書で見直しを確かめる方法
在職定時改定の見直しは、受給者が申請しなくても、9月1日の加入状況に基づいて行われる仕組みです。日本年金機構のページでも、基準日に被保険者であるときに見直されると説明されていて、受給者が請求する手続きは示されていません。
年金は原則として偶数月の15日に、前月までの2か月分が支払われます。日本年金機構によると、支払月と対象月の組み合わせは次のとおりです。
| 支払月 | 支払われる月分 |
|---|---|
| 10月 | 8月分、9月分 |
| 12月 | 10月分、11月分 |
| 2月 | 12月分、1月分 |
在職定時改定は10月分から反映されるので、10月15日に振り込まれる年金は、まだ見直し前の金額です。増えた額が初めて口座に入るのは、12月15日(土日や祝日のときは直前の平日)の支払いです。10月の振込額が変わっていなくても、それは制度上の正しい動きです。
見直しの結果は、日本年金機構から届く通知で確かめられます。通知に書かれた年金額と、見直し前の通知や振込通知書の金額を並べて見比べると、どのくらい増えたかが分かります。インターネットで確かめたい人は、日本年金機構の「ねんきんネット」に登録しておくと、年金の見込額や記録をいつでも確認できます。
比べ方の例を挙げます。見直し前の通知で老齢厚生年金が年額120万円だった人が、見直し後の通知で年額121万3千円になっていれば、在職定時改定で年額1万3千円ほど増えたことになります。2か月ごとの支払いに直すと、1回あたり2,000円強の増加です。12月の振込額が10月と比べてこのくらい増えていれば、見直しが反映されていると考えてよいでしょう。通知書は、翌年以降の比較にも使うので、捨てずに年ごとに保管しておくと便利です。
確認のときに気をつけたいのが、増えた年金額と実際の振込額は一致しないことがある点です。年金からは、介護保険料や国民健康保険料、住民税などが差し引かれる場合があり、これらの額も年度の途中で変わります。年金額が増えたのに振込額があまり変わらない、という場合は、差し引かれる額の変化も合わせて確かめてください。
在職老齢年金の支給停止との関係
働きながら年金を受け取る人がもう1つ気にしているのが、在職老齢年金です。在職老齢年金とは、給与と老齢厚生年金の合計が一定の額を超えると、老齢厚生年金の一部または全部の支給が止まる仕組みのことです。
この基準額は、2026年4月から大きく変わりました。
令和7年年金制度改正法(令和7年法律第74号)に基づき、令和8年4月から、年金が減額になる基準額(賃金と老齢厚生年金の合計)が月51万円から65万円に引き上げられました。 出典: nenkin.go.jp
計算に使う2つの言葉を言い換えておきます。「基本月額」は、加給年金額を除いた老齢厚生年金(報酬比例部分)の月額です。「総報酬月額相当額」は、その月の標準報酬月額に、直近1年間の賞与の合計を12で割った額を加えたものです。この2つの合計が65万円以下なら、年金は全額支給されます。超えた場合は、超えた額の半分が老齢厚生年金から差し引かれます。なお、65万円は令和8年度の基準額で、毎年度、賃金の変動に応じて改定されます。
在職定時改定との関係で押さえておきたいのは、在職定時改定で年金額が増えると基本月額も上がるため、もともと基準額の近くで働いている人は、支給停止の額が変わる場合があることです。日本年金機構も、再計算の結果として支給停止額が変わる場合があると案内しています。
とはいえ、基準額が65万円に上がったことで、多くの人は在職老齢年金による減額を気にせずに済むようになりました。厚生労働省のリーフレットでは、賃金が1か月あたり46万円、老齢厚生年金が1か月あたり10万円の人を例に、2026年3月までは1か月あたり2万5千円が支給停止されていたのに対し、4月からは全額を受け取れるようになると説明しています。また、在職老齢年金で調整されるのは老齢厚生年金だけで、老齢基礎年金は減額されません。
退職改定と70歳到達時の見直しとの違い
在職定時改定と混同しやすいのが「退職改定」です。2つの違いを整理しておきます。
| 項目 | 在職定時改定 | 退職改定 |
|---|---|---|
| きっかけ | 毎年9月1日に厚生年金に加入している | 退職して1か月が経過した、または70歳になった |
| 反映される期間 | 前年9月から当年8月までの加入期間 | まだ反映されていない、退職までの加入期間 |
| 見直される月 | 10月分から | 退職した翌月分から(70歳は到達した翌月分から) |
| 対象の年齢 | 65歳以上70歳未満 | 70歳未満 |
退職改定では、働いている間に反映されていなかった期間がすべて追加されます。たとえば9月1日の在職定時改定のあと、翌年の3月末で退職した場合、9月から3月までの期間が退職改定で反映されます。
注意したいのは、退職して1か月以内に再就職して厚生年金に加入したとき(転職など)は、退職改定の再計算は行われないことです。この場合、反映されていない期間は、次の9月1日の在職定時改定で反映されることになります。
70歳になると、厚生年金の被保険者ではなくなるため、70歳到達の翌月分から年金額が見直され、それ以降の期間は年金額の再計算に反映されません。70歳以上で会社に勤めている人も在職老齢年金の調整は続きますが、保険料の負担はありません。
もう1つ見落としやすいのが、加給年金です。加給年金とは、厚生年金の加入期間が20年以上ある人に、一定の条件を満たす配偶者や子がいる場合に上乗せされる年金のことです。日本年金機構は、再計算で厚生年金の加入期間が20年を超えたときは、加給年金や配偶者の振替加算が支給される場合があり、その際は別途手続きが必要になると案内しています。60代になってから会社に勤め始めた人や、若い頃に自営業の期間が長かった人は、在職定時改定で20年に届く年がないかを確かめておくと、請求のし忘れを防げます。
見直しの前に手元で確かめておきたい4つのこと
在職定時改定は受給者が何もしなくても行われる仕組みですが、毎年の見直しを正しく受け取るために、手元で確かめておきたいことがあります。年に1回、8月から9月にかけて次の4点を見直す習慣をつけておくと、思い違いや請求のし忘れを防げます。
確認1:給与明細に厚生年金保険料が載っているか
在職定時改定の前提は、9月1日の時点で厚生年金に加入していることです。勤務時間を減らしたり、働く日数を変えたりした結果、加入の要件から外れていることもあります。8月と9月の給与明細で、厚生年金保険料が引かれているかを確かめてください。
確認2:標準報酬月額と賞与の額
年金額の増え方は、給与と賞与の額で決まります。給与明細や、勤め先から届く標準報酬月額の決定通知で、自分の標準報酬月額がいくらに区分されているかを把握しておくと、先ほどの計算式でおおよその増加額を見積もれます。賞与が出た年は、その分も平均標準報酬額に含まれます。
確認3:厚生年金の加入期間が20年に近づいていないか
前の節で説明したとおり、加入期間が20年を超えると、加給年金や配偶者の振替加算の対象になる場合があり、その際は別途手続きが必要です。毎年届く「ねんきん定期便」や「ねんきんネット」で加入期間の合計を確かめ、20年に届きそうな年は年金事務所に相談しておくと安心です。
確認4:給与と年金の合計が基準額に近くないか
在職定時改定で年金額が増えると、在職老齢年金の計算に使う基本月額も増えます。給与と年金の合計が65万円の基準額に近い人は、見直し後に支給停止の額が変わる可能性があります。昇給や賞与の予定とあわせて、合計額の見通しを立てておくと、12月の振込額を見て慌てずに済みます。
短時間勤務で厚生年金に加入している場合の増え方
65歳以降は、フルタイムではなく週3日や1日5時間といった短時間で働く人も多くなります。短時間勤務でも厚生年金に加入していれば、在職定時改定の対象です。
増え方の目安は、先ほどと同じ計算式で出せます。たとえば平均標準報酬額が9万円の人が1年間加入した場合、9万円×5.481÷1,000×12で、年額約5,900円の増加になります。フルタイムの人と比べると増え方は小さくなりますが、在職老齢年金の基準額にはまず届かないため、増えた分はそのまま年金額に上乗せされます。
短時間勤務で厚生年金に加入するかどうかは、勤め先の規模や、週の所定労働時間などで決まります。加入の要件は段階的に広がっている途中で、厚生労働省は社会保険の適用拡大の特設ページで最新の要件を案内しています。勤め先が要件に当てはまるかどうかは、人事や総務の担当者に聞くのが早道です。
加入すれば、給与から厚生年金保険料と健康保険料が差し引かれるため、目先の手取りは減ります。その一方で、在職定時改定によって年金額が毎年見直され、健康保険の給付も勤め先の健康保険から受けられるようになります。どちらを重視するかは、何歳まで働くつもりか、ほかに収入があるかで変わるので、加入するかどうかで迷ったときは、年金事務所で自分の記録をもとに試算してもらうと判断しやすくなります。
見直しの結果に疑問があるときの相談先
12月の振込額や通知書を見て、思っていたより増えていない、あるいは減っていると感じたときは、まず原因を切り分けます。よくある原因は、次のとおりです。
・9月1日の時点で厚生年金に加入していなかった(転職の空白が1か月以上あった)
・在職老齢年金による支給停止の額が変わった
・介護保険料や住民税など、年金から差し引かれる額が変わった
・65歳になったばかりで、1回目の見直しで反映された期間が短かった
それでも分からない場合は、全国の年金事務所や街角の年金相談センターの窓口、日本年金機構のコールセンターで相談できます。相談の内容によっては基礎年金番号が必要になるので、年金証書や通知書を手元に用意しておくと話が早く進みます。窓口は混み合うことがあるため、インターネットか電話で予約してから行くのが確実です。
説明を聞いても年金額の決定に納得できない場合は、不服を申し立てる手続きもあります。日本年金機構によると、年金の決定に不服があるときは、決定があったことを知った日の翌日から3か月以内に、地方厚生局に置かれた社会保険審査官に審査請求ができます。ただし、審査請求の対象になるのは個々の年金の決定に関することで、制度そのものの内容は対象になりません。多くの場合は窓口での説明で疑問が解けるので、まずは相談から始めるのが現実的です。
働き方を選ぶときに在職定時改定をどう考えるか
在職定時改定は、65歳以降も会社に勤めて厚生年金に加入し続ける人にとって、保険料が毎年目に見える形で年金に戻ってくる仕組みです。一方で、65歳以降の働き方には、会社員として勤める以外にも、業務委託で仕事を受ける、個人事業主として独立する、といった選択肢があります。
働き方ごとに、年金との関係を比べると次のようになります。
| 働き方 | 厚生年金の保険料 | 在職定時改定 | 在職老齢年金の調整 |
|---|---|---|---|
| 会社員(厚生年金に加入) | 給与から天引き。会社も同額を負担 | 70歳未満なら毎年10月分から反映 | 給与と年金の合計が基準額を超えると調整 |
| パート・アルバイト(加入要件を満たさない) | 負担なし | 対象外 | 対象外 |
| 業務委託・個人事業主 | 負担なし | 対象外 | 対象外(報酬がいくらでも年金は減らない) |
業務委託や個人事業主として働く場合、厚生年金の保険料はかからず、報酬がいくら増えても在職老齢年金で年金が減ることはありません。その代わり、働いた分が年金額に上乗せされることもありません。どちらが有利かは、報酬の額、健康保険をどうするか、何歳まで働くつもりかで変わるので、一概には決められません。年金事務所や社会保険労務士に、自分の加入記録を見てもらいながら相談するのが確実です。
定年後に業務委託で仕事を受ける人には、取引条件の面でも知っておきたいことがあります。発注書に書くべき項目や、取引先から一方的に条件を変えられたときの考え方は、フリーランスを守る「下請法(取適法)」の知識|発注書・契約書の必須項目チェックリストで整理しています。
運営者の視点から見たシニアの働き方と年金
在宅ワークや業務委託の市場を長く見てきた立場から言えば、60代後半の働き方は、ここ数年で「会社に残るか、完全に引退するか」の二択ではなくなっています。週の半分は再雇用で勤めて厚生年金に加入し、残りの時間で前職の知識を生かした仕事を業務委託で受ける、という組み合わせも珍しくありません。
こうした組み合わせの場合、在職定時改定で年金が毎年少しずつ増える部分と、業務委託の報酬で手取りを伸ばす部分の両方を持つことになります。業務委託の部分は、仲介の手数料が少ないほど手取りが厚くなり、発注する側も同じ予算で頼める仕事の幅が広がります。長く続けている人ほど、年金の見直し時期と自分の収入の波を1年の暦で把握していて、「12月に年金が増えたら、翌年の働き方を見直す」といった節目にしています。
経験を生かした業務委託の仕事には、たとえばAIツールの業務への取り入れ方を企業に助言する仕事があり、その内容はAIコンサル・業務活用支援のお仕事で紹介しています。開発の経験がある人なら、ソフトウェア作成者の年収・単価相場で、職種ごとの単価の目安を確かめてから条件を交渉できます。報告書や見積書を自分で整える場面が増えるので、文書の書き方を体系的に学べるビジネス文書検定も、会社を離れてから役に立つ資格の1つです。
よくある質問
Q. 在職定時改定を受けるには、自分で手続きが必要ですか?
日本年金機構の案内では、9月1日の基準日に厚生年金に加入していれば、10月分から年金額が見直される仕組みとして説明されていて、受給者が請求する手続きは示されていません。ただし、見直しで厚生年金の加入期間が20年を超え、加給年金や振替加算の対象になる場合は、別途手続きが必要になることがあります。
Q. 10月の年金振込額が増えていません。見直しはされていないのでしょうか?
年金は偶数月の15日に前月までの2か月分が支払われるため、10月に振り込まれるのは8月分と9月分です。在職定時改定は10月分から反映されるので、増えた額が初めて口座に入るのは10月分と11月分が支払われる12月です。10月の振込額が変わらないのは制度上の正しい動きです。
Q. 在職定時改定で年金はどのくらい増えますか?
2003年4月以降の加入期間の報酬比例部分は、平均標準報酬額×5.481÷1,000×月数で計算されます。月給20万円で賞与がない人が1年働くと、年額で約13,200円増える計算です。実際の額は再評価率や生年月日などで変わるので、通知書やねんきんネットで確かめてください。
Q. 業務委託やフリーランスで働いている場合も在職定時改定の対象になりますか?
対象になりません。在職定時改定は、9月1日の時点で厚生年金に加入している65歳以上70歳未満の老齢厚生年金の受給者が対象です。業務委託や個人事業主として働いている場合は厚生年金に加入していないため、働いた分が年金額に反映されることはありませんが、報酬額によって年金が減ることもありません。
この記事について
編集部
監修:@SOHO編集部
2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを運営。生成AIで作成した下書きを、一次情報と照らし合わせて確認したうえで公開しています。

この記事を書いた人
@SOHO編集部
フリーランス・在宅ワークの専門メディア
@SOHOは2004年から続く、日本のフリーランス・在宅ワーク向け案件サイトです。記事は生成AIで下書きを作り、数値・固有名・出典を一次情報と照らし合わせる確認の手順を経て公開しています。
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