給与実務者検定は在宅の給与計算の仕事に役立つか|試験の範囲と勉強の進め方


この記事のポイント
- ✓給与実務者検定として知られる給与計算実務能力検定試験の1級・2級・3級について
- ✓合格率の推移を公式の記載で整理しました
- ✓在宅の給与計算の仕事で受けられる範囲と社労士の業務との線引きまで説明します
給与実務者検定を調べている人の多くは、「給与計算の仕事を在宅で受けたいが、資格があったほうが有利なのか」「未経験でも取れるのか」を知りたいはずです。給与計算は、どの会社にも毎月必ずある仕事です。経験者が少ない中小企業では外部に頼みたいという需要もあり、在宅で受けられる仕事の1つとして注目されています。
この記事では、給与実務者検定として知られる「給与計算実務能力検定試験」について、級ごとの受験料、試験の形式、合格基準、合格率を公式の記載で整理します。そのうえで、試験で学ぶ範囲が実際の給与計算のどの作業にあたるのか、級ごとの勉強の進め方、そして在宅で給与計算の仕事を受けるときに知っておくべき、社労士の業務との線引きまでを順番に説明します。
給与実務者検定とは:正式名は給与計算実務能力検定試験
給与実務者検定と呼ばれることが多いこの試験の正式な名前は、「給与計算実務能力検定試験」です。一般財団法人職業技能振興会と一般社団法人実務能力開発支援協会が実施している民間の検定試験で、国家資格ではありません。
試験の目的について、実施団体は次のように説明しています。
給与計算の仕方は、「法令や制度で決まっている部分」と「企業や団体ごとにやり方を決められる部分」があります。その会社独自のやり方で長く給与計算に携わっていても、その知識や実務能力は偏ったものになってしまう可能性もあります。法令や制度などの根拠を学習し、汎用性のあるスキルの証明になります。 出典: jitsumu-up.jp
この説明は、在宅で給与計算の仕事を受けたい人にとって大事な点を突いています。1つの会社で長く給与計算をしてきた人でも、その会社のやり方しか知らなければ、別の会社の給与計算をするときに戸惑います。在宅で複数の会社の仕事を受けるなら、どの会社にも共通する「法令や制度で決まっている部分」を正確に理解していることが前提になります。この検定は、その部分の知識を証明するためのものです。
これまでの受験者は延べ55,000人を超えると公表されています。人事、総務、経理の担当者が、自分の知識を確かめるために受けることの多い検定です。
給与計算に必要な知識は3つの分野にまたがる
給与計算というと、勤務時間に時給を掛けるだけの単純な作業に見えるかもしれません。実際には、3つの分野の知識が必要です。
1つ目は労働法の知識です。残業代の計算に使う割増賃金の率、遅刻や欠勤をしたときの控除のルール、有給休暇の扱いなどは、労働基準法で決められています。
2つ目は社会保険の知識です。健康保険、厚生年金、雇用保険の保険料を給与から差し引くには、保険料の計算のもとになる標準報酬月額の仕組みや、保険料率を知っている必要があります。保険料率は年度ごとに変わることがあります。たとえば雇用保険の保険料率は、2026年度(令和8年度)から変更されています。
失業等給付等の保険料率は、労働者負担・事業主負担ともに5/1,000に変更になります 出典: 厚生労働省「令和8年度 雇用保険料率のご案内」
一般の事業の場合、労働者が負担する雇用保険料率は前の年度の5.5/1,000から5/1,000に下がりました。こうした変更を見落とすと、すべての社員の手取りが少しずつずれてしまいます。
3つ目は税金の知識です。毎月の給与から差し引く所得税の源泉徴収、住民税の特別徴収、そして年末に1年分の所得税を精算する年末調整があります。税制の改正も毎年のようにあり、たとえば令和8年分からは、給与所得控除の最低保障額や基礎控除の金額が変わっています。
この3つの分野を横断して正しく計算できることが、給与計算の仕事で求められる力です。どれか1つの分野に詳しいだけでは、毎月の給与を正しく仕上げることはできません。給与計算実務能力検定は、まさにこの3分野をまとめて問う試験です。
1級・2級・3級の違い
給与計算実務能力検定には、1級、2級、3級の3つの級があります。受験資格はなく、どの級からでも受けられます。下の級に合格していなくても上の級を受けられ、併願もできます。
級ごとの試験の形式と受験料
| 項目 | 1級 | 2級 | 3級 |
|---|---|---|---|
| 試験の時期 | 年1回(11月) | 年2回(11月・3月) | 常時(オンライン) |
| 受験料(税込) | 11,000円 | 8,800円 | 10,000円(WEB講座・教材代を含む) |
| 問題数・時間 | 40問・120分 | 40問・120分 | 30問・45分 |
| 出題形式 | 知識問題30問(4択)、計算問題10問(記述) | 知識問題35問(4択)、計算問題5問(4択) | 知識問題25問(3択)、計算問題5問(3択) |
| 合格基準 | 7割以上の得点、かつ計算問題の6割以上の正解 | 7割以上の得点 | 7割以上(70点以上) |
1級と2級は会場で受ける試験で、東京、大阪などの主要都市で行われます。11月の試験では2級が午前、1級が午後に行われるため、同じ日に両方を受けることもできます。持ち物は受験票、筆記用具、電卓です。試験では計算問題用の資料集が配られます。
3級は、インターネットでWEB講座を受講し、すべて修了したあとにWEB試験を受ける形式です。申し込みから60日の間に講座の受講と試験を終えます。受験料には講座と教材の費用が含まれ、2回目以降の受験は5,000円です。
級ごとに求められるレベル
| 級 | 求められるレベル |
|---|---|
| 1級 | 労働法令や税務を正しく理解し、複雑な制度や例外的な給与体系にも対応できる。年末調整を含め、年間を通じた給与計算の業務に精通し、リーダーとして業務を管理できる |
| 2級 | 基本的な給与計算を行い、給与明細を作成できる。一般の担当者として、年末調整以外の通常の給与計算と賞与の計算ができる |
| 3級 | 労働時間、割増賃金、社会保険、税金などの基本事項を理解し、アシスタントとして実務の補助ができる |
2級と1級の大きな違いは、年末調整が範囲に入るかどうかです。在宅で給与計算を年間を通じて請け負うなら、年末調整まで対応できる1級の知識が必要になります。
合格率と勉強時間の目安
実施団体は、想定される合格率として、1級は全受験者の40%から50%程度、2級は60%から70%程度、3級は90%程度と示しています。実際の結果も公表されており、2025年11月23日の試験では、1級が受験者3,151人中1,491人の合格で47.32%、2級が受験者2,428人中1,654人の合格で68.12%でした。2026年3月15日の2級試験は、受験者2,332人中1,781人の合格で76.37%です。
1級の合格率は年によって動きが大きく、過去には30%台の回もあります。計算問題の6割以上という条件があるため、知識問題で点を取れても計算で崩れると不合格になります。
勉強時間の目安は、実施団体によると次のとおりです。
| 級 | 勉強時間の目安 | 期間の目安 |
|---|---|---|
| 1級 | 50時間から60時間程度(2級の範囲を理解している前提) | 1か月半から2か月程度 |
| 2級 | 40時間から50時間程度 | 1か月から1か月半程度 |
| 3級 | 10時間から20時間程度 | 半月から1か月程度 |
2級と1級の公式テキストは、それぞれA5判で約240ページとされています。社労士や税理士のような長期戦の資格と比べると、仕事と両立しながら短期間で取り組みやすい検定です。
出題範囲を実際の給与計算の作業に当てはめる
試験の範囲が実際の仕事のどの作業にあたるかを知っておくと、勉強の意味がつかみやすくなります。2級の範囲を、毎月の給与計算の流れに沿って並べると次のようになります。
ステップ1:勤怠を確かめる
給与計算は、社員の勤務の記録を確かめるところから始まります。出勤した日数、残業した時間、休日に働いた時間、遅刻や早退、欠勤、有給休暇を取った日を集計します。試験では「勤怠項目関連」として、勤怠の項目の基礎、勤怠に関する法律の決まり、年次有給休暇の決まり、法律で義務づけられている休業や休暇の制度が出題されます。
ステップ2:支給額を計算する
次に、基本給に各種の手当や残業代を加えて、支給額を計算します。残業代は、法律で決められた割増率で計算する必要があります。通勤手当には、所得税がかからない部分とかかる部分があり、区別して扱います。試験では「支給項目関連」として、割増賃金、遅刻早退控除や欠勤控除、減給の制裁、非課税の通勤費と課税の通勤費が出題されます。
ステップ3:控除額を計算する
支給額から、社会保険料、所得税、住民税を差し引きます。社会保険料は標準報酬月額に保険料率を掛けて計算し、所得税は源泉徴収税額表を使って求め、住民税は市区町村から通知された額を差し引きます。試験では「控除項目関連」として、それぞれの控除の仕組みが出題されます。
ステップ4:社会保険の見直しを反映する
社会保険料のもとになる標準報酬月額は、入社したときに決め、年に1回の定時決定で見直し、給与が大きく変わったときには随時改定で見直します。こうした見直しを給与計算に正しく反映することも仕事の一部です。試験では「社会保険の事務手続」として、標準報酬月額、資格取得時決定、定時決定、随時改定、労働保険の年度更新が出題されます。
ステップ5:賞与と年末調整
賞与を払うときは、毎月の給与とは違う方法で社会保険料と所得税を計算します。2級では賞与の基本的な計算、1級では前月の給与がない場合や、前月の給与の10倍を超える賞与を払う場合といった例外的な計算まで扱います。年末調整は1級の範囲で、扶養控除や基礎控除、保険料控除、住宅ローン控除の申告書の扱いから、年税額の計算、年末調整後の処理までが出題されます。
給与計算で起きやすい間違いと、試験で身につく防ぎ方
給与計算の間違いは、社員の生活に直接響きます。検定の勉強で学ぶ内容は、実務で起きやすい間違いを防ぐことに直結しています。ここでは代表的な間違いを4つ挙げます。
間違い1:割増賃金の率の取り違え
労働基準法では、時間外労働や休日労働、深夜労働に対して割増賃金を払うよう定めています。時間外労働は通常の賃金の2割5分以上、1か月の時間外労働が60時間を超えた部分は5割以上、午後10時から午前5時までの深夜労働は2割5分以上です。休日労働には、政令で3割5分以上の率が定められています。時間外労働と深夜労働が重なった場合は率を合わせて計算します。どの時間にどの率を当てるかを取り違えると、未払いの残業代が発生します。
間違い2:割増賃金の基礎に入れてはいけない手当を入れる
割増賃金を計算するときの基礎となる賃金には、家族手当や通勤手当など、法律で除外してよいと決められた手当があります。逆に、除外できない手当を除いてしまうと、残業代が少なく計算されます。手当の名前ではなく中身で判断する必要があり、試験でも繰り返し問われる論点です。
間違い3:保険料率の変更の反映漏れ
社会保険料率や雇用保険料率は、年度の途中や年度の始めに変わることがあります。変更があった月から新しい率で計算しなければなりませんが、給与ソフトの設定を変え忘れると、何か月も古い率のまま計算してしまいます。料率の変更の時期を年間の予定に書き込んでおくことが防ぎ方です。
間違い4:住民税の切り替えの時期
給与から差し引く住民税は、6月から翌年5月までの12回に分けて毎月差し引くのが原則です。毎年6月に新しい年度の額に切り替わるため、5月までの額のまま差し引き続けると、ずれが生じます。市区町村から届く通知の内容を、6月の給与に確実に反映させます。
どの間違いも、法令の仕組みを理解していれば防げるものです。検定の勉強は、こうした仕組みを体系的に学ぶ機会になります。
級ごとの勉強の進め方
未経験なら3級か2級から
給与計算の仕事が未経験の人は、2級から受けるのが一般的とされています。2級の範囲に不安がある人や、少しずつ段階を踏みたい人は、3級から始めるのがよいでしょう。3級はWEB講座で学んでからオンラインで受験でき、試験の時期を待たずにいつでも取り組めます。給与計算の専門用語や全体の流れをつかむ入口として使えます。
2級は公式テキストと計算問題の往復
2級と1級の試験は、原則としてその年度の公式テキストに沿って出題されます。勉強の中心は公式テキストです。最初に全体を読み、毎月の給与計算の流れをつかみます。次に、章ごとに問題を解き、間違えたところをテキストに戻って確かめます。
計算問題は、電卓を使って手を動かして解く練習が欠かせません。残業代の計算、社会保険料の計算、所得税の計算は、手順を覚えれば確実に点が取れる問題です。試験では資料集が配られるので、本番と同じように資料集から料率や税額表を引いて計算する練習をしておくと、当日に慌てずに済みます。
1級は年末調整と例外的なケースが中心
1級は、2級の範囲を理解している前提で、年末調整、退職金、例外的な賞与の計算、60歳以上の社会保険の手続きなど、扱いの難しいケースが加わります。計算問題は記述式で、途中の計算を正確に積み上げる力が問われます。計算問題で6割以上を取ることが合格の条件なので、知識問題より計算問題の練習に多くの時間を割きます。
法令の基準日を確かめる
給与計算は法改正の影響を大きく受けます。この検定では、試験が行われる月の前々月の1日に施行されている法令を前提に出題されます。1級は9月1日、2級の11月試験は9月1日、3月試験は1月1日が基準です。古い年度のテキストを使うと、保険料率や税額が違っていることがあるので、必ずその年度の公式テキストで勉強します。
独学か公式の講座か
2級までは、公式テキストと問題集で独学する人も多い検定です。実施団体は公式の試験対策講座も用意しており、ライブ講座、DVD講座、WEB講座の形式があります。給与計算の実務に触れたことがなく、テキストだけでは計算の手順がイメージしにくい人は、講座で実際の計算の流れを見ながら学ぶと理解が早くなります。
独学で進める場合は、テキストを読むだけで終わらせず、実際に給与明細を1枚作ってみるのが効果的です。架空の社員を1人決めて、基本給、残業時間、通勤手当を設定し、社会保険料、雇用保険料、所得税、住民税を差し引いて手取りを計算します。テキストの各章の知識が1枚の明細の中でどうつながるかが分かり、試験の計算問題にもそのまま役立ちます。
1年の給与計算の流れも押さえる
給与計算の仕事には、毎月の作業のほかに、決まった時期に行う作業があります。年度が変わる4月前後には保険料率の見直し、6月には住民税の切り替え、年に1回の定時決定のあとには標準報酬月額の反映、年末には年末調整があります。1級を目指す人は、この1年の流れを頭に入れておくと、どの知識がいつ必要になるかが整理できます。
ほかの資格との比べ方
給与計算に関わる資格は、この検定だけではありません。目的に合わせて組み合わせを考えると、勉強の時間を無駄にしにくくなります。
社労士との違い
社会保険労務士は、労働と社会保険の手続きや相談を仕事にできる国家資格です。給与計算に付随する社会保険の手続きを代わりに行うには、社労士の資格が必要です。ただし、社労士試験は合格率が低い難関の試験で、2026年8月に行われた第58回試験の合格率は9.3%でした。科目も10科目と幅広く、合格までに長い期間がかかります。
給与計算実務能力検定は、社労士試験の範囲のうち、給与計算に直接関わる部分を実務に寄せて学ぶ試験と考えると分かりやすいでしょう。まず検定で給与計算の全体像をつかみ、仕事を通じて手続きの重要性を感じたら社労士を目指す、という順番もあります。
会計や税務の資格との違い
経理の仕事で広く知られている簿記の検定は、会社のお金の流れを帳簿に記録し、決算書を作る力を問うものです。給与の支払いも帳簿に記録しますが、給与の額そのものを計算する手順は、簿記の範囲では深く扱いません。給与計算の仕事を中心にしたいなら給与計算実務能力検定、経理全般を担いたいなら簿記、という分け方が目安になります。両方を持っていると、給与の計算から会計への記録までを一貫して任せられる人として評価されやすくなります。
組み合わせの考え方
在宅で給与計算を受けたい人の場合、最初の1つとしては給与計算実務能力検定が取り組みやすい選択です。勉強時間が比較的短く、学んだ内容がそのまま毎月の作業に使えるからです。そのうえで、経理まで広げるなら簿記、手続きまで担いたいなら社労士と、仕事の広がりに合わせて次の資格を選びます。
合格後の認定登録と2年ごとの更新
この検定には、合格したあとの認定登録と更新の制度があります。1級と2級の合格者には認定登録の案内が届き、認定登録料3,000円(税込)を払うと認定証カードが交付されます。認定登録をすると、2年間は名刺や履歴書に肩書きとして検定名を書けます。
2年ごとに更新の制度があるのは、給与計算に関わる労働法令、社会保険制度、税制が毎年のように改正されるためです。更新料は6,600円(税込、送料を含む)で、更新すると最新年度の公式テキストと、前回の認定から2年間の法改正の情報が提供されます。
在宅で給与計算の仕事を受けるなら、この更新の仕組みは知識を新しく保つきっかけとして役立ちます。依頼主にとっても、更新を続けていることは、最新の制度に対応している証拠の1つになります。
更新の案内は、有効期限のおよそ6か月前から届くとされています。在宅で複数の会社の仕事を受けていると、自分の資格の期限は後回しになりがちです。認定証カードを受け取ったら、有効期限を手帳やカレンダーに書き込み、更新の手続きを忘れないようにしておきます。法改正の情報を2年ごとにまとめて受け取れることは、1人で仕事をする人にとって、知識の抜けを点検する良い機会になります。
在宅の給与計算の仕事で受けられる範囲
ここからは、在宅で給与計算の仕事を受けるときに必ず知っておくべき点です。給与計算の周辺には、社労士でなければできない業務があります。
社労士の業務として法律で定められているもの
社会保険労務士法では、労働や社会保険の法令にもとづいて行政機関に出す申請書や届出書の作成、その提出の代行、法令にもとづく帳簿書類の作成などを、社労士の業務として定めています。そして、社労士または社労士法人でない人が、他人から頼まれて報酬を得て、こうした業務を仕事として行うことを禁じています。
給与計算の仕事に当てはめると、入社や退社のときの健康保険・厚生年金・雇用保険の手続き、定時決定のための算定基礎届の作成と提出、労働保険の年度更新の申告書の作成などは、報酬を得て代わりに行うと社労士の業務にあたる可能性が高いものです。また、法令で作成が義務づけられた帳簿の作成も社労士の業務に含まれるため、依頼の中身によっては線引きが難しくなります。
在宅で受けやすい仕事の形
一方で、給与計算に関わる仕事の中には、在宅で受けやすい形もあります。
| 仕事の形 | 内容の例 |
|---|---|
| 社内の担当者の補助 | 勤怠データの集計、給与ソフトへの入力、計算結果の確認 |
| 社労士事務所の補助 | 事務所の指示のもとで、給与計算や書類の下準備を行う |
| 会社に雇われて在宅勤務 | 会社の従業員として、自社の給与計算を在宅で担当する |
社労士事務所の補助として働く場合や、会社の従業員として自社の給与計算を担当する場合は、社労士の業務を他人から請け負う形にはあたりません。業務委託で給与計算の仕事を受ける場合は、依頼の中身に手続き書類の作成や提出が含まれていないかを確かめ、判断に迷うときは社労士に相談することをすすめます。
社労士の資格を目指して勉強する道もあります。給与計算の知識は社労士試験の範囲と重なる部分が多く、検定の勉強は社労士試験の準備にもつながります。
求人や業務委託の募集で検定がどう見られるか
在宅の給与計算の仕事では、依頼する側は「計算を間違えない人か」「個人情報を適切に扱える人か」を最も気にします。給与の情報は、社員の住所、家族構成、マイナンバー、口座番号など、扱いに注意が必要な情報の集まりだからです。
検定は、このうち前者の「計算を間違えない人か」を示す材料になります。特に、給与計算の実務経験が浅い人にとっては、法令の根拠にもとづいて計算できることを客観的に示せる数少ない手段です。経験が豊富な人にとっても、1つの会社のやり方だけでなく、どの会社にも通じる知識を持っていることを伝えられます。
後者の個人情報の扱いについては、検定だけでは示せません。在宅で仕事を受けるときは、作業する環境(ほかの人に画面を見られない場所か、パソコンのセキュリティは十分か)や、データの受け渡しの方法、作業後のデータの削除の方法を、提案の段階で具体的に伝えると信頼につながります。
在宅で給与計算の仕事を始めるまでの手順
検定に合格したあと、在宅で給与計算の仕事を始めるまでの流れを整理します。
最初に決めるのは、どの形で働くかです。会社に雇われて在宅勤務をするのか、社労士事務所の補助として働くのか、業務委託で複数の会社から受けるのか。「在宅の給与計算の仕事で受けられる範囲」の節で見たとおり、形によって受けられる業務の範囲が違います。給与計算の実務経験が浅い人は、まず社労士事務所や会社の在宅勤務で経験を積み、仕事の流れと期限の厳しさを体で覚えてから業務委託に広げるほうが安全です。
次に、作業の環境を整えます。給与のデータは個人情報の集まりなので、家族と共有しないパソコン、画面をほかの人に見られない作業場所、データを安全にやりとりする方法が必要です。依頼主が指定するクラウドの給与ソフトを使う場合は、その操作に慣れておきます。
そのうえで、提案の準備をします。検定の合格や認定登録の事実、使える給与ソフトの名前、毎月の締め日から支給日までの間に何日あれば対応できるか、個人情報の扱い方を具体的に書きます。給与計算は期限が絶対の仕事なので、「いつまでに何を受け取れば、いつまでに仕上げられるか」を最初に示すと、依頼する側は安心します。
最後に、受ける範囲を契約書で確かめます。勤怠の集計と給与の計算までなのか、明細の発行まで含むのか、手続き書類の作成が含まれていないか。ここを曖昧にしたまま始めると、あとで社労士の業務に踏み込む依頼をされたときに断りにくくなります。
給与ソフトがあっても知識が必要な理由
最近はクラウドの給与ソフトが広く使われ、勤怠のデータを取り込めば、保険料や税額まで自動で計算されるようになりました。そのため、「ソフトが計算してくれるなら、知識はいらないのではないか」と考える人もいます。
実際には、ソフトを使うほど知識の重要さは増します。ソフトは、最初に設定した内容のとおりに計算します。手当を割増賃金の基礎に含めるかどうか、どの社員をどの保険に加入させるか、扶養の人数や住民税の額をどう登録するか。こうした設定を誤れば、ソフトは誤った結果を毎月正確に出し続けます。間違いに気づけるのは、計算の仕組みを知っている人だけです。
また、ソフトが自動で対応しない例外的なケースもあります。月の途中で入社や退社をした社員の日割り計算、休職から復帰した社員の保険料の扱い、前月の給与がない月の賞与の計算などは、担当者が仕組みを理解して確かめる必要があります。1級の範囲で扱う例外的なケースは、まさにこうした場面です。
在宅で給与計算を受ける人に依頼主が期待しているのは、ソフトの入力作業だけではなく、計算結果が正しいかを確かめ、おかしいところに気づいて指摘できることです。検定で学ぶ知識は、その確認の力の土台になります。
経理・人事の在宅ワークへの広げ方
給与計算の知識は、経理や人事の他の仕事にも広げられます。給与のデータは会計の仕訳につながり、社会保険の知識は入退社の事務や人事の制度づくりにつながります。給与計算から入って、月次の経理や人事の事務まで請け負う形に広げていく人もいます。
業務の効率化やクラウドの給与ソフトの導入を支援する仕事も増えています。給与計算の知識と、ITツールを使いこなす力を組み合わせると、依頼主の業務そのものを改善する提案ができるようになります。業務へのAIやITの活用を支援する仕事についてはAIコンサル・業務活用支援のお仕事で、その中身と求められる力をまとめています。
給与計算の手順書やマニュアルを作る仕事では、誰が読んでも同じように作業できる文書を書く力が問われます。文書の書き方を基礎から確かめたい人は、ビジネス文書検定の出題範囲も参考になります。給与や社会保険の制度を解説する記事の執筆も、知識を生かせる在宅の仕事です。文章の仕事の相場は著述家,記者,編集者の年収・単価相場で確認できます。
20年この市場を見てきた立場からの考察
フリーランスと在宅ワークの市場を長く見てきた立場から言えば、給与計算のような毎月必ず発生する仕事は、一度信頼を得ると長く続きやすい分野です。依頼する側は、給与の計算を間違えられると社員の信頼を失うため、担当者をころころ変えたくありません。正確に、期限どおりに、毎月同じ品質で仕上げる人は、単発で終わらず何年も続けて頼まれています。
中間に業者が入らない直接取引では、同じ予算で依頼する側はより多くの業務を頼め、受ける側は手取りが厚くなります。ただし、給与計算は社労士の業務と隣り合わせの仕事です。直接取引で受けるときほど、受ける範囲を契約の段階で依頼主と確かめ、手続きが必要な部分は社労士と連携する体制を整えておくことが、長く信頼される条件になります。まずは3級か2級で給与計算の全体像をつかみ、自分が受けられる仕事の範囲を確かめるところから始めてください。
よくある質問
Q. 給与実務者検定は国家資格ですか?
国家資格ではありません。給与実務者検定と呼ばれることの多い給与計算実務能力検定試験は、一般財団法人職業技能振興会と一般社団法人実務能力開発支援協会が実施する民間の検定試験です。受験資格はなく、1級から3級までどの級からでも受けられます。
Q. 未経験でも合格できますか?
未経験の人は2級から受けるのが一般的とされ、不安がある人には3級からの受験がすすめられています。勉強時間の目安は、3級が10時間から20時間程度、2級が40時間から50時間程度と公表されています。2級の合格率は直近の回で60%台後半から70%台です。
Q. 検定に合格すれば社会保険の手続きも代行できますか?
できません。社会保険の申請書や届出書の作成、その提出の代行などを、他人から頼まれて報酬を得て仕事として行うことは、社会保険労務士法で社労士または社労士法人でなければできないとされています。業務委託で給与計算を受けるときは、依頼の中身を確かめてください。
Q. 合格したあとに費用はかかりますか?
1級と2級の合格者は、認定登録料3,000円(税込)を払うと認定証カードが交付され、2年間は名刺や履歴書に検定名を書けます。2年ごとに更新の制度があり、更新料は6,600円(税込、送料を含む)です。更新すると最新年度の公式テキストと法改正の情報が提供されます。
この記事について
編集部
監修:@SOHO編集部
2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを20年運営。編集部が事実確認のうえ公開しています。

この記事を書いた人
三浦 健太@SOHO編集部
フリーランスCADオペレーター・建築系コンサル
一級建築士事務所で設計を担当した後、フリーランスのCADオペレーターに。建築・不動産・施工管理系の実務経験を活かした記事を執筆しています。
関連記事
カテゴリから探す

クラウドソーシング入門
クラウドソーシングの基礎知識・始め方・サイト比較

職種別ガイド
職種・スキル別の案件獲得方法と単価相場

副業・在宅ワーク
副業・在宅ワークの始め方と対象者別ガイド

フリーランス
フリーランスの独立・営業・実務ノウハウ

お金・税金
確定申告・節税・経費・ローンなどお金の知識

比較・ランキング
サービス比較・おすすめランキング

AI活用
職種別にChatGPT・生成AIを活用して業務効率化・収益化するノウハウ

最新トレンド
市場動向・法改正・AIなど最新情報

発注者向けガイド
クラウドソーシングで外注・人材探しをする企業・個人向け

転職・キャリア
転職エージェント・転職サイト比較・キャリアチェンジ

看護師の転職・求人
看護師の転職・派遣・単発バイト・副業など働き方のガイド。診療や医学の情報は扱いません

薬剤師の転職・求人
薬剤師・登録販売者の転職・派遣・パートなど働き方のガイド。診療や医学の情報は扱いません

介護職の転職・求人
介護職・介護福祉士・ケアマネジャー・訪問介護員の転職・派遣・夜勤など働き方のガイド

保育士の転職・求人
保育士・保育補助・幼稚園教諭の転職・派遣・パートなど働き方のガイド

医療職の転職・求人
医師・産業医・リハビリ職・歯科衛生士・管理栄養士・医療事務の転職や働き方のガイド。診療や医学の情報は扱いません

保険
生命保険・医療保険・フリーランスの保険設計

採用・求人
無料求人掲載・採用コスト削減・人材募集の方法

オフィス・ワークスペース
バーチャルオフィス・コワーキング・レンタルオフィス

法律・士業
契約トラブル・士業独立開業・フリーランス新法

シニア・50代
シニア世代のキャリアチェンジ・副業・年金

セキュリティ
サイバーセキュリティ・脆弱性対策・情報保護

金融・フィンテック
暗号資産・決済・ブロックチェーン・金融テクノロジー

経営・ビジネス
経営戦略・ガバナンス・事業承継・知財

ガジェット・機材
フリーランスに役立つPC・デバイス・周辺機器

子育て×働き方
子育てと在宅ワークの両立・保育園・時間管理

補助金・助成金
個人事業主・フリーランスが使える公的補助金・助成金・給付金の申請ガイド

アウトソーシング・外注ガイド
SNS運用・経理・広告など、業務のアウトソーシング(外注)を検討する企業・個人向け。費用相場・依頼の流れ・失敗しない選び方







