支払督促にかかる費用の考え方

前田 壮一
前田 壮一
支払督促にかかる費用の考え方

この記事のポイント

  • 2026年5月21日から郵便費用が申立手数料に一本化され
  • 切手を用意する必要がなくなりました
  • 訴訟に移ったときの追加分

まず、安心してください。支払督促は、裁判の手続きの中ではもっとも費用が軽いものの1つです。100万円を請求する場合、申立てのときに納めるのは7,500円から7,700円です。裁判所に出向く必要もありません。

ただし、2026年5月21日から、費用の仕組みが変わりました。これまで別に用意していた郵便切手が不要になり、申立手数料に一本化されています。オンラインで申し立てる道も広がりました。古い記事を読むと、切手を何円分そろえるという説明が出てきますが、いまはその準備は要りません。この記事では、裁判所の資料で今日時点の金額を確認しながら、申立てから回収までにかかる費用を段階ごとに整理します。

支払督促がどういう手続きかを、先に押さえる

費用の話に入る前に、手続きの形を押さえておきます。ここがわかっていないと、どの費用がどの段階のものかが見えません。

支払督促とは、お金や有価証券などの支払いを求める請求について、申し立てた側の主張だけを裁判所が書類で審査し、理由があると認められれば相手に支払いを命じる書面を出す手続きです。裁判所は「書類審査のみなので、訴訟の場合のように審理のために裁判所に来る必要はありません」と説明しています。

相手が支払督促を受け取ってから2週間以内に異議を申し立てなければ、申し立てた側の求めに応じて、裁判所は支払督促に仮執行宣言を付けます。これがあれば、強制執行の申立てに進めます。

逆に、相手が異議を申し立てると、請求額に応じて地方裁判所または簡易裁判所の民事訴訟へ移ります。ここが支払督促のいちばん大きな分岐点です。費用の話も、この分岐を境に変わります。

申立先は、相手の住所地を管轄する簡易裁判所の裁判所書記官です。ただし、督促手続オンラインシステムを使う場合は、他の簡易裁判所の管轄に属する事件であっても、東京簡易裁判所へ申し立てられます。

2026年5月21日から、郵便費用は手数料に一本化された

ここが、いま調べている人がいちばん知りたいところだと思います。裁判所の説明を引きます。

令和8年5月21日以降は、書面及び督促手続オンラインシステムによる申立てに加え、mintsを利用してオンライン提出することができるようになりました(電子申立て)。なお、弁護士等の訴訟代理人には、電子申立てが義務付けられています。 出典: courts.go.jp

そして費用については、従来必要であった郵便費用が申立手数料に一本化され、支払督促の申立手数料と郵便費用に相当する定額を合わせた金額を納める形になった、と案内されています。納付は原則としてペイジーによる電子納付で、インターネットバンキングや金融機関のATMから支払えます。

実務としては、これがかなり大きい変化です。以前は、収入印紙を買い、さらに裁判所ごとに指定された金額の郵便切手をそろえる必要がありました。切手の種類と枚数が裁判所によって違うため、そこでつまずく人が多かった。いまは金額を1回納めれば済みます。

請求額ごとに、いくらかかるか

具体的な金額を見ていきます。裁判所が公表している手数料額早見表の、支払督促の申立ての欄から抜き出します。左が書面での申立て、右が電子申立てです。

請求額 書面申立て 電子申立て
10万円まで 3,200円 3,000円
30万円まで 4,200円 4,000円
50万円まで 5,200円 5,000円
100万円まで 7,700円 7,500円
200万円まで 10,200円 10,000円
300万円まで 12,700円 12,500円
500万円まで 17,700円 17,500円

金額の作りも知っておくと応用が利きます。支払督促の手数料は、訴えを起こす場合の手数料の2分の1にあたる額に、定額を足したものです。この定額が、郵便費用に相当する部分にあたり、書面なら2,700円、電子申立てなら2,500円と決められています。

たとえば100万円の請求なら、訴え提起の基礎となる額が10,000円なので、その半分の5,000円に2,700円を足して7,700円。電子申立てなら2,500円を足して7,500円です。表の数字をそのまま覚えなくても、この計算で出せます。

債務者が複数いる場合、それぞれの相手の住所地を管轄する裁判所が共通でなければ、まとめて申し立てることはできません。1人ずつ別の申立てになるので、費用もその分かかります。

訴訟を起こす場合と比べると、どれだけ違うか

支払督促が選ばれる理由は、この差にあります。同じ100万円を請求する場合で並べます。

訴えを起こす場合の手数料は、書面申立てで12,500円、電子申立てで11,400円です。支払督促なら7,700円と7,500円なので、差はおよそ4,800円から3,900円になります。

50万円の請求なら、訴訟が7,500円と6,400円に対し、支払督促は5,200円と5,000円。30万円なら、訴訟が5,500円と4,400円に対し、支払督促は4,200円と4,000円です。

金額の差そのものは、正直に言えば、それほど劇的ではありません。支払督促の本当の利点は、裁判所に出向かなくてよいこと、書類審査だけで終わること、そして手続きが早いことにあります。相手が争ってこないことがある程度見込める場面では、時間の節約が費用の差を上回ります。

異議が出て訴訟に移ったときの追加費用

支払督促を使うかどうか迷う人が気にするのが、ここです。「異議を出されたら、払った分が無駄になるのでは」という心配です。

無駄にはなりません。督促異議の申立てによって訴訟へ移った場合、訴えを起こす場合の手数料から、支払督促の申立てについて納めた手数料の額を差し引いた金額を追加で納める、という仕組みになっています。

ただし、差し引ける金額には上限があります。差し引けるのは、支払督促の手数料のうち、訴え提起手数料の半分にあたる部分までです。郵便費用に相当する定額の部分は、差し引きの対象になりません。

100万円の請求で具体的に見ます。支払督促を書面で申し立てて7,700円を納め、相手から異議が出て訴訟へ移ったとします。訴え提起手数料は12,500円。ここから差し引けるのは5,000円なので、追加で納めるのは7,500円です。合計で15,200円になります。最初から訴訟を起こしていれば12,500円だったので、2,700円だけ多く払ったことになります。

つまり、異議が出た場合の損は、郵便費用に相当する定額の分だけです。この金額を「相手が争ってこない可能性に賭ける保険料」と考えると、判断しやすくなります。取引先が資金繰りに困っているだけで、請求内容そのものには異論がないようなケースでは、賭ける価値が十分にあります。

なお、申し立てたあとに取り下げる場合には、還付の仕組みもあります。支払督促を却下する処分が確定した場合や、支払督促が相手に送達される前に取り下げた場合には、納めた手数料の一部が戻ります。ただし全額ではなく、一定の額を差し引いた残りが返る形です。

回収まで進むと、そのあとにも費用がかかる

ここが、費用を見積もるときにいちばん抜けやすいところです。支払督促は、判決に相当する書面を手に入れるための手続きであって、お金を取り立てる手続きではありません。

相手が2週間以内に異議を出さなければ、次は仮執行宣言の申立てです。これは、支払督促が送達された日の翌日から起算して2週間目の翌日から30日以内に行います。期間を過ぎると支払督促の効力が失われるので、日付の管理が必要です。なお、手数料額の表には、仮執行宣言の申立てについての独立した項目はありません。

仮執行宣言が付いた支払督促を手にしてもまだ払ってこない場合、強制執行に進みます。相手の預金や売掛金を差し押さえる債権差押命令の申立てには、手数料として4,000円がかかります。相手の財産がどこにあるかわからないときに使う財産開示手続の申立ては2,000円です。

書類の交付にも費用がかかります。事件の記録の正本や謄本の交付は用紙1枚につき150円、事件に関する事項を証明した書面の交付は1件につき150円です。執行文の付与は、単純なもので1通300円。相手方が亡くなって相続人に対して執行する場合などに必要な承継執行文は、1通1,500円になります。

そして、忘れられがちなのが調査の手間です。差押えをするには、どの銀行のどの支店に口座があるか、どの取引先に売掛金があるかを、こちらが特定する必要があります。裁判所が探してくれるわけではありません。ここで詰まって回収に至らないケースが、実はかなりの割合を占めます。

弁護士に頼む場合との比べ方

自分で申し立てるか、弁護士に頼むかは、金額で決まります。

支払督促は、書類審査だけで進む手続きなので、自分で申し立てられる形になっています。申立書の書式は裁判所のサイトで配られていますし、オンラインシステムを使えばフォームに入力するだけで作れます。請求額が数十万円で、契約書と請求書と納品の記録がそろっているなら、自分でやったほうが手元に残る金額は大きくなります。

弁護士に頼む価値が出てくるのは、相手が争ってくる見込みがある場合、請求の根拠が書面で固まっていない場合、そして相手の財産の調査から回収までを一括で任せたい場合です。費用の内訳と目安については、未払い報酬を回収する!弁護士の着手金・成功報酬と支払督促の流れ【2026年最新】に、着手金と成功報酬の考え方がまとまっています。

費用を払う余裕がない場合の制度も用意されています。裁判所は、訴訟費用を支払う資力の乏しい当事者でも裁判を受ける権利を保障するため、支払督促の申立費用の支払を猶予する訴訟上の救助という制度があると案内しています。ただし、申立ての内容から勝訴の見込みがないことが明らかなときは認められないことがあります。加えて、日本司法支援センター(法テラス)が実施する民事法律扶助による立替制度もあります。

申立てに必要な書類と、そろえるのにかかる費用

申立手数料のほかに、書類をそろえる費用がかかります。金額は小さいのですが、見落とすと当日の準備が足りません。

必要なのは、申立書と、当事者が法人の場合の登記事項証明書1通です。裁判所は、申立書について、オンラインの新規申立てフォームに入力することで作成できるほか、PDFファイルで提出することも可能だと案内しています。書式は裁判所のサイトで配られているので、書面で出す場合もそこから入手できます。

登記事項証明書は法務局で取得します。手数料は取得の方法によって変わるので、法務局の案内で確認してください。相手が法人なら相手の分が、こちらが法人ならこちらの分が必要です。

これ以外に、請求の根拠を示す資料を手元にそろえておきます。申立ての段階で提出が求められるわけではありませんが、異議が出て訴訟に移ったときに必要になります。契約書、発注書、納品書、検収の記録、請求書、督促のメール。この6点がそろっていれば、たいていの場面で話が早く終わります。

そして、請求額の組み立てにも注意してください。元本だけでなく、遅延損害金を請求できる場合があります。契約で利率を決めていなければ、民法の法定利率が使われます。法務省の案内によると、法定利率は2026年4月1日から2029年3月31日までの期間も年3%のまま変動しないこととされました。第3期の基準割合は年0.4%と告示されましたが、第1期の基準割合0.7%からの変動が1%未満であるため、利率は据え置かれています。請求額が変われば手数料も変わるので、申立ての前に計算しておいてください。

申立てから回収までを、日付で追う

費用は段階ごとに発生するので、時間の流れと一緒に見ておくと全体像がつかめます。

申立てをすると、裁判所書記官による審査が行われます。審査を通れば支払督促が発付され、こちらには発付の通知が、相手には支払督促そのものが送達されます。

相手は、支払督促を受け取ってから2週間以内に督促異議の申立てができます。ここで異議が出れば通常訴訟へ移ります。異議が出なければ、支払督促が送達された日の翌日から起算して2週間目の翌日から30日以内に、こちらが仮執行宣言の申立てをします。

仮執行宣言の申立てについても審査があり、発付されると、仮執行宣言が付いた支払督促が双方に送達されます。送達後、強制執行の申立てができるようになります。

相手は、仮執行宣言が付いた支払督促を受け取ってから、さらに2週間以内に督促異議を申し立てられます。ここで異議が出れば、やはり通常訴訟へ移ります。異議がなければ、仮執行宣言が付いた支払督促が確定します。

つまり、相手には異議を出す機会が2回あるということです。1回目で出てこなくても、2回目で出てくることがあります。費用を見積もるときは、この2回目の可能性も頭に入れておいてください。

なお、mintsを利用した場合は、オンラインで送達を受ける旨を届け出ることで、書面の受け取りもオンラインで済ませられます。

相手が法人か個人かで、進め方が変わる

同じ金額の請求でも、相手が法人か個人かで、手間と回収の見込みが変わります。

相手が法人の場合、登記を見れば本店所在地と代表者がわかります。送達先の特定で困ることは少ない。ただし、登記上の住所に実態がなく、書類が届かないことがあります。送達できなければ手続きが止まるので、事前に相手の事業所が実在しているかを確認しておくと安全です。

相手が個人の場合、住所の特定が最初の壁になります。転居していると送達できません。取引の記録に住所が残っていない場合、そもそも申立てができないという事態もあり得ます。契約の段階で、氏名と住所を書面で確認しておくことの意味は、ここにあります。

回収の見込みも変わります。法人であれば、取引銀行や主要な取引先がある程度推測できることがあります。個人の場合、勤務先の給与を差し押さえる道はありますが、勤務先を把握していなければ使えません。どちらにせよ、差押えの対象を特定するのはこちら側の仕事です。

相手の財産がわからないときのために、財産開示手続という制度があります。申立手数料は2,000円です。相手を裁判所に呼び出して、財産の状況を説明させる手続きですが、確定判決や仮執行宣言が付いた支払督促などの債務名義がなければ使えません。順番としては、支払督促で債務名義を取ってから、こちらに進むことになります。

かかった費用は相手に負担させられるか

結論から書くと、制度としては相手の負担にできる建て付けになっていますが、実際に回収できるかは別の話です。

支払督促の申立手数料のような裁判所に納める費用は、訴訟費用として扱われます。相手に負担させる旨を申立ての内容に含めておくことで、支払督促の中に盛り込まれる形になります。

ただし、現実として、元本すら払ってこない相手から手数料分だけを別に回収するのは難しい。差押えが成功して、そこから全額を回収できる場合には一緒に戻ってきますが、分割での話合いに落ち着いた場合は、元本の回収が優先されるのが普通です。

弁護士に依頼した場合の報酬は、訴訟費用には含まれません。これは原則として自分の負担になります。契約書に「紛争が生じた場合の弁護士費用は相手方の負担とする」と書いておくという手もありますが、この条項がそのまま認められるかは事案によります。書いておいて損はない、という程度に考えてください。

費用の見積もりとしては、相手に転嫁できない前提で計算しておくのが安全です。そのうえで、回収できた場合に戻ってくるかもしれない、という順序で考えます。

そもそも支払督促を使うべき場面かどうか

費用の話をしてきましたが、最後に、使いどころの判断を書いておきます。

支払督促が向いているのは、請求の内容に争いがなく、相手が単に払っていないだけの場面です。納品も検収も終わっていて、相手も金額を認めているのに入金がない。こういうときは、相手が異議を出す理由がないので、手続きがそのまま進みます。

向いていないのは、仕事の出来をめぐって相手が不満を言っている場面です。異議を出される可能性が高く、結局は訴訟になります。この場合は、最初から訴訟を選ぶか、話合いによる解決を目指す民事調停を検討するほうが早いことがあります。紛争の対象となる金額が60万円以下であれば、少額訴訟という選択肢もあります。

どの手続を利用するかは、利用者自身が選ぶことができます。例えば、話合いによる円満な解決の見込みがあれば「民事調停」で、また、紛争の対象となっている金額が60万円以下であれば「少額訴訟」で、といった選び方が考えられるでしょう。 出典: gov-online.go.jp

そして、いちばん大事な判断材料は、相手に支払う資力があるかどうかです。資力がない相手から回収することは、どの手続きを使ってもできません。申立ての費用を払い、仮執行宣言まで取り、差押えまで進んで、口座に残高がなかったという結末はあり得ます。取引を続けてきた中で、相手の状況がどうなっているかを冷静に見てから動いてください。

オンラインで申し立てるか、書面で出すか

2026年5月21日以降は、申立ての方法が3つあります。書面、督促手続オンラインシステム、そしてmintsです。費用も手間も違うので、選び方を整理します。

金額だけで見れば、電子申立てのほうが安くなります。郵便費用に相当する定額の部分が、書面の2,700円に対して電子は2,500円です。請求額にかかわらず200円の差ですが、訴えの提起に移った場合の差はもっと大きく、100万円の請求で書面12,500円に対し電子11,400円と、1,100円の開きがあります。

手間の面では、オンラインのほうが有利な場面が多くなります。申立書をフォームに入力して作れること、送達の結果をオンラインで確認できること、そして督促手続オンラインシステムを使えば、相手の住所地にかかわらず東京簡易裁判所に申し立てられることが理由です。地方から遠方の相手に請求する場合、この管轄の扱いは大きい。

一方で、オンラインには準備が要ります。mintsを使う場合はアカウント登録が必要です。1件だけの請求のために登録するのが面倒だと感じるなら、書面で出す判断もあります。今後も未払いが起きる可能性があるなら、登録しておいたほうが次が早い。

なお、弁護士などの訴訟代理人には電子申立てが義務付けられています。依頼する場合は、自動的にオンラインになると考えておいてください。

少額の請求で、費用に見合うかを考える

最後に、割に合うかどうかの目安を書いておきます。

たとえば5万円の未払いがあるとします。支払督促の申立手数料は、10万円までの区分なので書面3,200円、電子3,000円です。金額だけ見れば、回収できれば十分に元は取れます。

ただし、ここに自分の時間が乗ります。書類をそろえ、申立書を作り、送達の結果を確認し、異議がなければ仮執行宣言を申し立て、それでも払わなければ差押えの準備をする。ここまでで、慣れていなければ10時間近くかかることもあります。時間あたりの単価が3,000円の人なら、3万円分の時間を使って5万円を取りに行く計算になります。

だから、少額の場合の判断軸は「回収できるか」ではなく「この1回で相手との取引を終わりにするか」になります。今後も取引を続ける相手なら、支払督促を出した時点で関係は終わると考えたほうがよい。逆に、もう取引しないと決めた相手であれば、金額にかかわらず手続きを進める意味はあります。

実務としてもう1つ効くのが、支払督促を申し立てる前に、内容証明郵便で請求することです。費用は郵便料金と手数料だけで済み、ここで払ってくる相手も一定数います。裁判所を使うのは、そこで動かなかった場合と決めておくと、無駄な手続きが減ります。

そして、根本的には、未払いを起こさない側の設計のほうが効きます。着手金を先にもらう、納品を分割して都度請求する、検収の期限を書面で決めておく。この3つを入れるだけで、回収の話になる確率はかなり下がります。書類の作り方を体系的に身につけたい人には、ビジネス文書検定のような、形式を一通り扱う資格が実務の下支えになります。

請求額をどう決めるかで、費用も変わる

手数料は請求額の区分で決まるので、何をいくら請求するかを決める段階から、費用の話は始まっています。

元本のほかに請求できる可能性があるものとして、遅延損害金があります。契約で利率を決めていればその利率、決めていなければ法定利率の年3%です。支払期日から申立ての日までの分を計算して、元本に足します。

ここで、金額の区分をまたぐかどうかを見てください。手数料の表は、10万円まで、20万円まで、30万円までというように刻まれています。元本が98万円で、遅延損害金を足すと100万円を少し超える、という場合、区分が1つ上がって手数料が上がります。遅延損害金を請求しない選択もあり得るわけですが、金額の差を確かめてから決めてください。

逆に、請求額を減らして区分を下げることに意味があるかというと、たいていはありません。手数料の刻みは請求額に対して小さく、10万円の区分の差で手数料が変わるのは500円程度です。取れるはずの金額を削ってまで手数料を下げる理由にはなりません。

もうひとつ、複数の案件の未払いがまとまっている場合です。同じ相手に対する複数の請求は、1つの申立てにまとめられます。金額を合算した区分の手数料になるので、別々に申し立てるより安くなります。ただし、そのうちの1件だけ争いがある場合、まとめたことで全体が訴訟に移ってしまいます。争いのない分だけ先に取りに行くという判断もあり得ます。

案件ごとの単価や契約の形を見直す段階なら、どういう仕事の受け方が未払いになりにくいかを知っておくと役に立ちます。アプリケーション開発のお仕事のような、成果物と検収の基準がはっきりしている領域の案件の組み立て方は、他の職種でも応用が利きます。

市場を見てきた立場からの観察

在宅ワークと業務委託の市場を20年運営してきた立場から言えば、未払いが起きた案件には、かなりはっきりした共通点があります。発注の段階で、何を、いくらで、いつまでに、どうなったら完了とするかが書面になっていないのです。

支払督促が強いのは、請求に理由があることが書類で示せる場合です。逆に言えば、書類がない状態では、この手続きの利点が活きません。メールのやりとりしか残っていない案件を何度も見てきましたが、そこから組み立て直すのは、書面が1枚あるのと比べて何倍も手間がかかります。契約書や発注書に何を書いておくべきかは、フリーランスを守る「下請法(取適法)」の知識|発注書・契約書の必須項目チェックリストに必須項目が整理されています。着手前にここを埋めておくだけで、回収の話に進む確率そのものが下がります。

運営者として見てきた限りでは、間に何社も入る取引ほど、未払いが起きたときの解決が難しくなります。誰に請求すればよいのかがはっきりしないからです。発注者と直接つながっている取引では、請求先も、話をする相手も、証拠の在りかも1つです。手数料0%の直接取引が効いてくるのは、手取りが厚くなることだけではありません。何かあったときに、誰と話せばよいかが明確だという点も大きい。

そして、単価が低い案件ほど、未払いが起きたときに泣き寝入りになりやすい。10万円の未払いに対して、手続きの費用が3,200円かかり、そこに自分の時間が乗ります。回収できても、割に合わないと感じる金額です。だからこそ、1件あたりの単価を上げる方向に寄せておくことが、結果として回収の実効性を上げます。職種ごとの相場は著述家,記者,編集者の年収・単価相場ソフトウェア作成者の年収・単価相場で確認できます。

費用の金額そのものは、調べればすぐ出てきます。判断が要るのは、その費用を払って進める価値がある相手かどうか、そして次の取引で同じことを起こさない仕組みを作れるかどうかです。

よくある質問

Q. 支払督促の申立てにいくらかかりますか?

請求額で変わります。裁判所の手数料額早見表では、100万円までの請求で書面申立て7,700円、電子申立て7,500円、50万円までで5,200円と5,000円、10万円までで3,200円と3,000円です。2026年5月21日から郵便費用が申立手数料に一本化されたため、別に郵便切手を用意する必要はありません。

Q. 郵便切手はもう要らないのですか?

はい。裁判所は、従来必要であった郵便費用が申立手数料に一本化され、支払督促の申立手数料と郵便費用に相当する定額を合わせた金額を納める形になったと案内しています。納付は原則としてペイジーによる電子納付で、インターネットバンキングや金融機関のATMから支払えます。

Q. 相手が異議を出したら、払った費用は無駄になりますか?

無駄にはなりません。訴訟へ移った場合、訴え提起の手数料から支払督促で納めた額を差し引いた金額を追加で納めます。ただし差し引けるのは訴え提起手数料の半分にあたる部分までなので、郵便費用に相当する定額の分だけ、最初から訴訟を起こした場合より多く払う計算になります。

Q. 支払督促で命令が出れば、お金は自動的に戻ってきますか?

戻りません。支払督促は支払いを命じる書面を得るための手続きで、取り立てまでは行いません。相手が払わなければ、仮執行宣言を付けたうえで強制執行に進みます。債権差押命令の申立てには4,000円の手数料がかかり、どの口座や売掛金を差し押さえるかは自分で特定する必要があります。

この記事について

@SOHO
編集部

監修:@SOHO編集部

2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを20年運営。編集部が事実確認のうえ公開しています。

公開:2026年8月18日最終更新:2026年9月23日
前田 壮一

この記事を書いた人

前田 壮一@SOHO編集部

元メーカー管理職・43歳でフリーランス転身

大手電機メーカーで品質管理を20年間担当した後、42歳でフリーランスに転身。中高年のキャリアチェンジや副業の始め方を、自身の経験をもとに発信しています。

@SOHOで仕事を探してみませんか?

手数料0%・登録無料のクラウドソーシング。フリーランスの方も企業の方も、今すぐ始められます。

関連記事

カテゴリから探す

クラウドソーシング入門

クラウドソーシング入門

クラウドソーシングの基礎知識・始め方・サイト比較

職種別ガイド

職種別ガイド

職種・スキル別の案件獲得方法と単価相場

副業・在宅ワーク

副業・在宅ワーク

副業・在宅ワークの始め方と対象者別ガイド

フリーランス

フリーランス

フリーランスの独立・営業・実務ノウハウ

お金・税金

お金・税金

確定申告・節税・経費・ローンなどお金の知識

スキルアップ

スキルアップ

プロフィール・提案文・単価交渉などのテクニック

比較・ランキング

比較・ランキング

サービス比較・おすすめランキング

AI活用

AI活用

職種別にChatGPT・生成AIを活用して業務効率化・収益化するノウハウ

最新トレンド

最新トレンド

市場動向・法改正・AIなど最新情報

発注者向けガイド

発注者向けガイド

クラウドソーシングで外注・人材探しをする企業・個人向け

転職・キャリア

転職・キャリア

転職エージェント・転職サイト比較・キャリアチェンジ

看護師の転職・求人

看護師の転職・求人

看護師の転職・派遣・単発バイト・副業など働き方のガイド。診療や医学の情報は扱いません

薬剤師の転職・求人

薬剤師の転職・求人

薬剤師・登録販売者の転職・派遣・パートなど働き方のガイド。診療や医学の情報は扱いません

介護職の転職・求人

介護職の転職・求人

介護職・介護福祉士・ケアマネジャー・訪問介護員の転職・派遣・夜勤など働き方のガイド

保育士の転職・求人

保育士の転職・求人

保育士・保育補助・幼稚園教諭の転職・派遣・パートなど働き方のガイド

医療職の転職・求人

医療職の転職・求人

医師・産業医・リハビリ職・歯科衛生士・管理栄養士・医療事務の転職や働き方のガイド。診療や医学の情報は扱いません

保険

保険

生命保険・医療保険・フリーランスの保険設計

採用・求人

採用・求人

無料求人掲載・採用コスト削減・人材募集の方法

オフィス・ワークスペース

オフィス・ワークスペース

バーチャルオフィス・コワーキング・レンタルオフィス

シニア・50代

シニア・50代

シニア世代のキャリアチェンジ・副業・年金

セキュリティ

セキュリティ

サイバーセキュリティ・脆弱性対策・情報保護

金融・フィンテック

金融・フィンテック

暗号資産・決済・ブロックチェーン・金融テクノロジー

経営・ビジネス

経営・ビジネス

経営戦略・ガバナンス・事業承継・知財

ガジェット・機材

ガジェット・機材

フリーランスに役立つPC・デバイス・周辺機器

子育て×働き方

子育て×働き方

子育てと在宅ワークの両立・保育園・時間管理

補助金・助成金

補助金・助成金

個人事業主・フリーランスが使える公的補助金・助成金・給付金の申請ガイド

アウトソーシング・外注ガイド

アウトソーシング・外注ガイド

SNS運用・経理・広告など、業務のアウトソーシング(外注)を検討する企業・個人向け。費用相場・依頼の流れ・失敗しない選び方