支払督促の進め方|報酬が振り込まれないときに使える裁判所の手続き


この記事のポイント
- ✓裁判所に出向かず書類だけで相手に支払いを命じてもらえる制度です
- ✓報酬の未払いに使うときの申立先
- ✓令和8年5月からの手数料と電子申立て
納品したのに報酬が振り込まれない、催促しても「来月払う」と言われたまま何か月も過ぎた。そんなときに調べると出てくるのが、支払督促手続きです。裁判所を使う手続きと聞くと身構えてしまいますが、支払督促は書類のやり取りだけで進み、法廷に立つ必要がありません。費用も訴訟より安く済みます。この記事では、フリーランスや副業で仕事を受ける人が報酬の未払いに支払督促を使うときの進め方を、裁判所の公開情報にもとづいて順に説明します。令和8年5月21日から申立ての方法と費用の納め方が変わっているので、古い情報との違いにも触れます。
支払督促は「書類だけで支払いを命じてもらう」手続き
最初に、支払督促がどんな手続きなのかを押さえます。裁判所のウェブサイトでは、支払督促の概要が次のように説明されています。
金銭、有価証券、その他の代替物の給付に係る請求について、債権者の申立てにより、その主張から請求に理由があると認められる場合に、支払督促を発する手続であり、債務者が支払督促を受け取ってから2週間以内に異議の申立てをしなければ、裁判所は、債権者の申立てにより、支払督促に仮執行宣言を付さなければならず、債権者はこれに基づいて強制執行の申立てをすることができます。 出典: courts.go.jp
言葉が硬いので言い換えます。債権者とは、お金を払ってもらう権利を持つ側、つまり報酬を受け取るはずのあなたです。債務者とは、お金を払う義務がある側、つまり発注した取引先です。支払督促は、あなたが裁判所に申し立てると、裁判所の職員(裁判所書記官)があなたの書類を審査し、取引先に「払いなさい」という書面を送ってくれる仕組みです。
取引先がその書面を受け取ってから2週間、何も反論しなければ、あなたは「仮執行宣言」を付けてもらう申立てができます。仮執行宣言とは、判決を待たずに強制執行をしてよいという裁判所のお墨付きのことです。これが付くと、相手の預金口座や売掛金を差し押さえる手続きに進めます。
この手続きの最大の特徴は、裁判所が相手の言い分を聞かずに、あなたの書類だけを見て判断することです。裁判所のページでも「書類審査のみなので、訴訟の場合のように審理のために裁判所に来る必要はありません」と特徴が説明されています。本業や納期を抱えたまま、平日に何度も裁判所へ通う必要がないことは、個人で働く人にとって大きな利点です。
報酬の未払いで支払督促が向いている場面
支払督促はどんな未払いにも使えるわけではありません。向いている場面と向いていない場面を分けておきます。
向いているのは「払う義務は認めているが払わない」相手
支払督促が最も効果を発揮するのは、取引先が報酬を払う義務自体は認めているのに、資金繰りや後回しを理由に払わない場合です。この場合、取引先は異議を出す理由がありません。異議が出なければ、書類のやり取りだけで仮執行宣言まで進み、強制執行が可能な状態を作れます。
フリーランスの未払いは、実はこの形が多いものです。「検収は終わっている」「請求書も受け取っている」「でも支払いが遅れている」という状況なら、支払督促の出番です。裁判所から書面が届いた時点で、取引先が慌てて支払ってくるケースも珍しくありません。
向いていないのは「中身に争いがある」相手
反対に、取引先が「納品物に不具合があったから払わない」「そもそもその金額で合意していない」と、支払う理由そのものを争っている場合は、支払督促は向いていません。相手が異議を出すことがほぼ確実で、異議が出ると通常の訴訟に切り替わるからです。訴訟に移ると、相手の住所地の裁判所で争うことになり、遠方の取引先なら出向く負担も生じます。
中身に争いがある場合は、最初から少額訴訟や民事調停を選んだほうが、結果的に早く片づくことがあります。この選び方は後の節で詳しく説明します。
請求する金額がはっきりしていること
支払督促は、お金などの支払いを求める手続きです。「作業のやり直しをさせたい」「データを返してほしい」といった、お金以外の請求には使えません。また、請求する金額が確定している必要があります。時間単価で働いた仕事なら作業時間の記録、成果物単価の仕事なら納品数と単価の記録をもとに、いくら請求するのかを1円単位で示せるようにしておきます。途中で契約を打ち切られた仕事は、どこまでの作業に報酬が発生するのかで争いになりやすいので、金額の根拠を特に丁寧にそろえてください。
相手の住所が分からない場合は使えない
支払督促は、相手に書面が届くことが前提です。相手の所在が分からず、裁判所の掲示板に掲示して届いたものとみなす方法(公示送達)を使わなければならない場合、支払督促は使えません。SNSのアカウントだけで取引していた相手、所在地を偽っていた相手には、別の方法を考える必要があります。仕事を受ける段階で、相手の正式な名前と住所、法人なら登記上の本店所在地を確認しておくことが、いざというときの手続きの選択肢を広げます。
申し立てる前に準備しておくこと
支払督促の申立ては難しくありませんが、準備が足りないと審査で補正(書類の直し)を求められ、時間がかかります。事前にそろえておくものを整理します。
請求の根拠になる書類
まず、報酬を請求できる根拠を示す資料を集めます。契約書、発注書、発注のメールやチャット、見積書と承諾の記録、納品の記録、請求書、催促のやり取りなどです。支払督促は書類審査なので、申立書には「いつ、どんな仕事を、いくらで受け、いつ納め、支払期日がいつだったか」を具体的に書く必要があります。これらの記録が手元にあれば、申立書の「請求の原因」欄を正確に埋められます。
2024年11月に施行されたフリーランス法(特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律)は、フリーランスに仕事を出す会社に、報酬の額や支払期日などの取引条件を書面やメールで示すことを義務づけています。取引の初めにこの明示を受けていれば、それがそのまま請求の根拠になります。契約の段階でどんな項目を確認すべきかは、フリーランスを守る「下請法(取適法)」の知識|発注書・契約書の必須項目チェックリストで項目ごとに整理しています。
相手の正式な名前と住所
申立書には、相手の正式な名前と住所を書きます。相手が会社なら、登記事項証明書を法務局で取得し、商号と本店所在地、代表者の名前を確認します。相手が法人の場合、申立てには登記事項証明書の添付が必要だと裁判所のページに書かれています。担当者の名刺の住所が支店や営業所になっていることもあるので、登記で本店を確かめてください。
内容証明郵便での催促
申立ての前に、内容証明郵便で支払いを求めておくと、いつ、どんな内容で請求したかが郵便局の証明として残ります。法律上、支払督促の前に内容証明を送る義務はありませんが、相手が支払う最後のきっかけになることが多く、後の手続きでも「支払いを求めたのに応じなかった」ことを示せます。内容証明を送っても1週間から2週間反応がなければ、支払督促に進む判断をしてよいでしょう。
申立書の書き方の要点
申立書は、裁判所の書式に沿って埋めていけば作れます。報酬の未払いで書く項目と、書き方の要点を説明します。
当事者の欄
「債権者」の欄にあなたの住所と名前、連絡先を書きます。屋号で仕事をしていても、申立ては個人の名前で行います。「債務者」の欄には、相手の正式な名前と住所を書きます。会社なら、登記事項証明書のとおりの商号、本店所在地、代表者の名前を書きます。略称や英語表記の通称で書くと、補正を求められる原因になります。
請求の趣旨の欄
「請求の趣旨」とは、相手に何をいくら払えと求めるかを書く欄です。報酬の元本の額、遅延損害金を請求するならその計算の起点と利率、申立ての手続費用を書きます。たとえば「金30万円及びこれに対する令和8年7月1日から支払済みまで年〇パーセントの割合による金員」のように、元本と遅延損害金を分けて書くのが一般的な形です。利率は契約で決めていればその利率、決めていなければ申立て時点の法定利率を使います。
請求の原因の欄
「請求の原因」とは、なぜその金額を払ってもらう権利があるのかを書く欄です。時系列で、契約を結んだ日、仕事の内容、報酬の額、納品した日、支払期日、支払われていない事実を書きます。次のような順に書くと、審査する側に伝わりやすくなります。
- 令和8年4月10日、債務者から記事作成の業務を報酬30万円で受託した
- 支払期日は納品月の翌月末日と合意した
- 令和8年5月20日に全10本の記事を納品し、債務者は同日検収した
- 支払期日の令和8年6月30日を過ぎても、債務者は報酬を支払わない
契約書や発注メールの内容と食い違わないように書くことが大切です。支払督促の審査では証拠の提出は求められませんが、相手が異議を出して訴訟になったとき、申立書の記載と証拠が食い違っていると不利になります。
書き上げたら見直す点
提出の前に、相手の名前と住所が登記どおりか、金額の計算が合っているか、日付に矛盾がないかを確かめます。書面で申し立てる場合は、相手の数に応じた写しが必要になることがあるので、提出先の簡易裁判所の案内を確認してください。
申立先と申立ての方法
申立先は相手の住所地の簡易裁判所
支払督促は、原則として相手の住所地を管轄する簡易裁判所の裁判所書記官に申し立てます。相手が会社なら本店所在地です。裁判所のQ&Aでは、例として相手の住所が東京23区内にある場合は東京簡易裁判所の裁判所書記官に申し立てると説明されています。どの簡易裁判所が担当かは、裁判所のウェブサイトにある「申立書提出先一覧(簡易裁判所)」で調べられます。
訴訟と違い、支払督促では金額の大小にかかわらず簡易裁判所に申し立てます。140万円を超える報酬の未払いでも、申立先は簡易裁判所です。
令和8年5月21日から電子申立てができる
申立ての方法は、令和8年5月21日から選択肢が増えました。裁判所のページでは、それまでの書面での申立てと督促手続オンラインシステムによる申立てに加えて、民事裁判書類電子提出システム(mints、ミンツ)を使ったオンライン提出ができるようになったと案内されています。mintsは、裁判所にインターネットで書類を出したり受け取ったりするためのシステムで、使う前にアカウント登録が必要です。
申立書はmintsの新規申立てフォームに入力して作れ、内容をPDFファイルで出すこともできます。なお、弁護士などの代理人には電子申立てが義務づけられていますが、本人が自分で申し立てる場合は書面でも構いません。
督促手続オンラインシステムを使う場合は、相手の住所が東京簡易裁判所以外の管轄であっても、東京簡易裁判所の裁判所書記官に申し立てられるという例外があります。
書面で申し立てる場合
パソコンでの手続きに不安がある人は、これまでどおり紙の申立書を管轄の簡易裁判所に出せます。申立書の書式は裁判所のウェブサイトで公開されていて、窓口でも受け取れます。簡易裁判所の窓口では、書類の書き方について手続きの説明を受けられます。
費用は訴訟の約半額、郵便費用は手数料に一本化
支払督促の費用は、裁判所に納める申立手数料が中心です。
申立手数料の目安
申立手数料は、請求する金額で決まります。裁判所が公開している手数料額早見表から、支払督促の欄を抜き出すと次のとおりです。
| 請求額 | 書面申立て | 電子申立て | 参考:訴訟(書面) |
|---|---|---|---|
| 10万円まで | 3,200円 | 3,000円 | 3,500円 |
| 30万円まで | 4,200円 | 4,000円 | 5,500円 |
| 50万円まで | 5,200円 | 5,000円 | 7,500円 |
| 100万円まで | 7,700円 | 7,500円 | 12,500円 |
| 200万円まで | 10,200円 | 10,000円 | 17,500円 |
たとえば30万円の報酬の未払いなら、電子申立てで4,000円、書面申立てで4,200円です。電子申立てのほうが少し安く設定されています。
郵便切手の準備が不要になった
以前は、申立手数料の収入印紙とは別に、裁判所が書類を送るための郵便切手を納める必要がありました。裁判所のページでは、従来必要だった郵便費用は申立手数料に一本化され、支払督促の申立手数料と郵便費用に相当する額(定額)を合わせた金額を納めると説明されています。上の表の金額は、この一本化後の額です。古い解説記事には「切手を数千円分用意する」と書かれていることがありますが、令和8年5月21日以降の申立てには当てはまりません。
納め方は、原則としてペイジーによる電子納付です。ペイジーは、インターネットバンキングや金融機関のATMから税金や公共料金を払える仕組みで、裁判所の手数料もここから納められます。
費用を払う余裕がないとき
手数料を払うのが難しい場合は、申立ての費用の支払いを猶予してもらう「訴訟上の救助」という制度があります。勝つ見込みがないことが明らかな場合は認められないことがあります。また、日本司法支援センター(法テラス)には、収入が一定以下の人を対象に弁護士費用などを立て替える制度があります。
その他にかかる費用
相手が法人なら登記事項証明書の取得費用、内容証明郵便を送るならその料金がかかります。弁護士に依頼する場合は着手金や成功報酬が別に必要です。弁護士費用の目安と、自分で進める場合との比較は、未払い報酬を回収する!弁護士の着手金・成功報酬と支払督促の流れ【2026年最新】で詳しく取り上げています。
申し立ててから強制執行までの流れ
申立て後の流れは、裁判所のQ&Aで次のように説明されています。
相手方が支払督促を受け取ってから異議を申し立てずに2週間を経過した場合には、申立人は、それから30日以内に仮執行宣言の申立てをすることができます。仮執行宣言の申立てをすると、裁判所書記官がその内容を審査し、支払督促に仮執行宣言を付します。仮執行宣言が付されると、申立人は、直ちに強制執行手続をとることができます。申立人が30日以内に仮執行宣言の申立てをしなかった場合には、支払督促は効力を失います。 出典: courts.go.jp
段階ごとに分けると、次の6つのステップになります。
ステップ1:申立てと審査
申立書を出すと、裁判所書記官が内容を審査します。書類に不備があれば補正を求められます。問題がなければ支払督促が発付され、あなたには発付の通知が、相手には支払督促の書面が送られます。
ステップ2:相手の受け取りから2週間待つ
相手は、支払督促を受け取ってから2週間以内に異議を申し立てられます。この間に相手が支払ってくれれば、手続きはそこで終わります。支払いがあったら、裁判所に取下げの手続きをします。
ステップ3:仮執行宣言の申立て
2週間が過ぎても異議がなければ、あなたは仮執行宣言の申立てができます。期限は、そこから30日以内です。この期限を逃すと支払督促そのものが効力を失い、最初からやり直しになります。支払督促の手続きで最も多い失敗がここなので、相手が受け取った日を裁判所からの通知で確認し、カレンダーに期限を書き込んでおいてください。
ステップ4:仮執行宣言付支払督促の送達
仮執行宣言が付くと、その書面があなたと相手の両方に送られます。この時点で、あなたは強制執行を申し立てられます。
ステップ5:2回目の異議の期間
相手は、仮執行宣言付支払督促を受け取ってから2週間以内なら、もう一度異議を出せます。ただし、異議を出しても、相手が別に執行停止の手続きをとらない限り、強制執行は止まりません。2週間以内に異議がなければ、仮執行宣言付支払督促は確定し、判決と同じように扱われます。
ステップ6:強制執行
確定したら、あるいは仮執行宣言が付いた段階から、相手の財産を差し押さえる手続き(強制執行)を地方裁判所に申し立てられます。差し押さえる対象は、相手の預金口座、取引先に対する売掛金、不動産などです。強制執行は別の手続きで、別に手数料がかかります。どの銀行のどの支店に口座があるかなど、財産の情報をある程度つかんでいることが成功の条件になります。
相手から連絡が来たときの対応
支払督促が届くと、相手から連絡が来ることがよくあります。ここでの対応で、回収の早さが変わります。
全額を払うと言われたら
「すぐに払う」と言われたら、振込の期日を具体的に決め、実際に入金を確認してから裁判所に取下げの手続きをします。入金を確認する前に取り下げると、約束が守られなかったときにまた一から手続きをやり直すことになります。
分割払いを申し出られたら
「一度には払えないが分割なら払える」という申し出もよくあります。分割払いに応じる場合は、回数、各回の金額と期日、1回でも遅れたら残りを一括で払うという約束(期限の利益の喪失)を、書面で取り交わします。支払督促の手続きを続けたまま仮執行宣言まで取っておき、そのうえで分割払いを受け入れる方法もあります。この場合、約束が守られなかったときにすぐに強制執行へ進めるので、相手にとっても約束を守る動機になります。
減額を求められたら
「納品物に問題があったので減額してほしい」と言われたら、相手の言い分に根拠があるかを冷静に確かめます。指摘が具体的で、こちらにも落ち度があるなら、一部を減額して早く回収するほうが、訴訟に時間をかけるより得になることもあります。根拠のない減額の求めには応じる必要はなく、その場合は相手が異議を出すかどうかを見て、訴訟で決着をつけることになります。
時効に気をつける
報酬の請求権には時効があります。民法では、権利を行使できることを知った時から5年、権利を行使できる時から10年のどちらか早いほうで、請求する権利が消えるとされています。報酬の場合は、支払期日を過ぎた時点で請求できることを知っているのが普通なので、支払期日から5年が目安になります。
支払督促を申し立てると、その手続きが終わるまで時効の完成が猶予されます。古い未払いを抱えている人は、時効が迫っていないかを確かめ、迫っているなら早めに申し立ててください。ただし、支払督促が効力を失うなどして、権利が確定しないまま手続きが終わった場合は、終わった時から6か月が過ぎると時効が完成してしまいます。手続きを途中で止めるときは、この期間を意識してください。時効が近い請求は、法テラスや弁護士に一度相談しておくと安心です。
異議を出されたら通常の訴訟に移る
相手が異議を出すと、支払督促の手続きは終わり、通常の訴訟に切り替わります。どの裁判所で争うかは、請求額で決まります。請求額が140万円以下なら簡易裁判所、140万円を超えると地方裁判所です。
訴訟に移ると、申立手数料の差額を追加で納めます。手数料額早見表の注記では、督促異議により訴訟に移ったときは、訴えを起こすときの手数料額から、支払督促で納めた手数料の額を差し引いた額を追納すると説明されています。つまり、二重に払うことにはなりません。
訴訟になると、裁判所に出向いて主張を述べる期日が開かれます。相手の住所地の裁判所が担当になるので、遠方の取引先なら移動の負担が生じます。また、相手の言い分に対して、こちらも証拠を出して反論する必要があります。最初の準備で集めた契約や納品の記録が、ここで効いてきます。
相手が異議を出すのは、本当に争う理由がある場合もあれば、時間稼ぎのこともあります。訴訟に移ってから、裁判所の勧めで話し合いによる解決(和解)に至ることも多いので、異議が出たからといって回収をあきらめる必要はありません。
少額訴訟・民事調停との選び方
報酬の未払いに使える裁判所の手続きは、支払督促だけではありません。代表的な3つを比べます。
| 手続き | 向いている場面 | 裁判所に出向く回数 | 注意点 |
|---|---|---|---|
| 支払督促 | 相手が支払う義務を認めている | 原則なし | 異議が出ると訴訟に移る |
| 少額訴訟 | 60万円以下で中身に争いがある | 原則1回 | 相手の申出で通常訴訟に移ることがある |
| 民事調停 | 話し合いで解決できる見込みがある | 数回 | 合意できなければ不成立で終わる |
少額訴訟は、60万円以下の金銭の支払いを求める場合に使える手続きで、原則として1回の審理でその日のうちに判決が出ます。詳しい要件は裁判所の少額訴訟のページで確認できます。報酬額が小さく、相手が納品物の出来に不満を言っているような場合は、少額訴訟のほうが早く決着しやすいことがあります。
民事調停は、裁判官と調停委員が間に入って話し合いで解決を目指す手続きです。今後も取引を続けたい相手や、分割払いなら払えるという相手には、調停のほうが関係を壊さずに回収できる可能性があります。
選ぶ基準をまとめると、相手が支払う義務を争っていないなら支払督促、争っていて金額が60万円以下なら少額訴訟、関係を続けたい相手なら民事調停です。
自分で進めるときに失敗しやすい点
支払督促を自分で進めるときにつまずきやすい点を挙げておきます。
仮執行宣言の申立てを忘れる
すでに触れたとおり、仮執行宣言の申立ては期限内に行わないと支払督促が効力を失います。相手から反応がないと安心してしまい、期限を過ぎる例があります。
請求額に遅延損害金を正しく入れていない
支払期日を過ぎた分の遅延損害金も請求できます。契約で利率を決めていなければ、法律で決まった利率(法定利率)で計算します。法定利率は3年ごとに見直される仕組みなので、申立ての時点の利率を裁判所や法務省の案内で確かめてください。請求額の計算に自信がない場合は、元本だけを請求する形にしても手続きは進められます。
強制執行の段階で財産が分からない
仮執行宣言を取っても、相手の財産が見つからなければ回収できません。取引の段階で、振込元の銀行名や相手の取引先の情報を記録しておくと、差し押さえの対象を探す手がかりになります。
相手が倒産・廃業している
相手が倒産手続きに入っている場合、支払督促で個別に回収することはできません。破産の手続きが始まっていれば、債権者として届け出ることになります。相手の状況が怪しいと感じたら、まず登記や官報で倒産の情報がないか確かめてから申し立ててください。
専門家に頼むかどうかの判断
支払督促は本人だけで進められる手続きですが、専門家に頼んだほうがよい場面もあります。
自分で進めてよい場面
相手が会社で、所在がはっきりしていて、請求額が数十万円程度、しかも相手が支払う義務を争っていない。この条件がそろっていれば、自分で進めて十分に対応できます。申立書の書き方は簡易裁判所の窓口で説明を受けられますし、手数料も数千円で済みます。弁護士費用をかけると、回収した額の多くが費用に消えてしまうこともあります。
専門家に相談したほうがよい場面
相手が異議を出してきそうな場合、請求額が大きい場合、相手の財産を調べて強制執行まで進める必要がある場合は、専門家に相談する価値があります。請求額が140万円以下で簡易裁判所が担当する事件なら、法務大臣の認定を受けた司法書士(認定司法書士)も代理人になれます。弁護士より費用を抑えられることがあるので、金額に応じて相談先を選んでください。
収入が一定以下なら、法テラスで無料の法律相談を受けられることがあります。どこに相談すればよいか分からないときは、まず法テラスに問い合わせると、内容に合った窓口を案内してもらえます。
未払いを起こさない取引の作り方
支払督促は強力な手段ですが、使わずに済むのが一番です。運営者として多くの取引を見てきた立場から言えば、未払いのトラブルに巻き込まれにくい人は、取引の最初の段階で3つのことを習慣にしています。
1つ目は、報酬の額、納期、検収の方法、支払期日を、メールでもチャットでもよいので文字で残すことです。2つ目は、初めての相手や金額が大きい仕事では、着手金や中間払いを入れることです。3つ目は、納品と同時に請求書を出し、支払期日の数日前に確認の連絡を入れることです。支払期日を過ぎたら、その日のうちに丁寧な確認の連絡を入れ、1週間たっても入金がなければ、次は期日を区切って書面で求めます。対応の段階をあらかじめ決めておくと、感情的にならずに淡々と回収を進められ、取引先との関係もこじれにくくなります。
フリーランス法では、発注した会社は、成果物を受け取った日から60日以内のできる限り早い日に報酬の支払期日を決め、その日までに支払わなければならないとされています。この義務を知っておくだけでも、交渉の場で根拠を持って支払いを求められます。
また、仲介の手数料がかからない直接の取引では、受け取る額が厚くなる一方で、未払いへの備えは自分で持つ必要があります。契約書のひな型を整える、請求書を正確に作るといった文書の力は、こうした自衛の土台です。ビジネス文書の書き方を体系的に学びたい人には、ビジネス文書検定が目標の1つになります。
独自データから見る、未払いが起きやすい仕事の特徴
在宅で受ける仕事の中でも、未払いの相談が出やすいのは、納品物の評価に主観が入りやすい仕事と、仕様が途中で変わりやすい仕事です。文章やデザインは「イメージと違う」という理由で支払いが止まりやすく、システム開発は仕様の追加で金額の合意があいまいになりやすい傾向があります。
ライターや編集の仕事を受ける人は、著述家,記者,編集者の年収・単価相場で相場を確かめ、相場から大きく外れた条件を提示する相手には慎重になると、トラブルの芽を早く摘めます。開発の仕事では、ソフトウェア作成者の年収・単価相場で単価の目安を見たうえで、仕様と金額の変更を必ず文字で合意する習慣をつけると、支払督促まで進む事態をかなり減らせます。報酬が止まったら、まず内容証明で催促し、反応がなければ相手の住所地の簡易裁判所へ支払督促を申し立てる。この順番を覚えておけば、慌てずに動けます。
よくある質問
Q. 支払督促の費用はいくらかかりますか?
申立手数料は請求額で決まり、30万円の請求なら電子申立てで4,000円、書面申立てで4,200円です。令和8年5月21日以降は郵便費用が申立手数料に一本化され、切手を別に用意する必要はありません。相手が法人なら登記事項証明書の取得費用、強制執行に進むならその手数料が別にかかります。
Q. 相手が異議を出したらどうなりますか?
支払督促の手続きは終わり、通常の訴訟に移ります。請求額が140万円以下なら簡易裁判所、超えると地方裁判所です。訴訟の手数料は、支払督促で納めた分を差し引いた差額を追加で納めます。訴訟では裁判所に出向く期日があり、契約や納品の記録を証拠として出すことになります。
Q. 仮執行宣言の申立てはいつまでにすればよいですか?
相手が支払督促を受け取ってから異議が出ないまま2週間が過ぎた後、30日以内に申し立てます。この期限を過ぎると支払督促は効力を失い、最初からやり直しになります。裁判所からの通知で相手の受け取り日を確認し、期限をカレンダーに書き込んでおくと確実です。
Q. 相手が遠方の会社でも自分の近くの裁判所に申し立てられますか?
支払督促は原則として相手の住所地を管轄する簡易裁判所に申し立てます。ただし督促手続オンラインシステムを使う場合は、管轄が東京簡易裁判所以外でも東京簡易裁判所の裁判所書記官に申し立てられる例外があります。異議が出て訴訟に移った場合は、相手の住所地の裁判所が担当になります。
この記事について
編集部
監修:@SOHO編集部
2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを運営。生成AIで作成した下書きを、一次情報と照らし合わせて確認したうえで公開しています。

この記事を書いた人
@SOHO編集部
フリーランス・在宅ワークの専門メディア
@SOHOは2004年から続く、日本のフリーランス・在宅ワーク向け案件サイトです。記事は生成AIで下書きを作り、数値・固有名・出典を一次情報と照らし合わせる確認の手順を経て公開しています。
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