鍼灸師の履歴書と職務経歴書|書く順番と、埋めにくい欄の扱い

中西 直美
中西 直美
鍼灸師の履歴書と職務経歴書|書く順番と、埋めにくい欄の扱い

この記事のポイント

  • 鍼灸師の履歴書と職務経歴書の書き方を
  • 職歴のブランクや短期離職の扱い
  • 自己PRの作り方まで整理しました

履歴書を前にして、手が止まっている方。大丈夫ですよ。書けないのは文章力の問題ではなく、書く順番を知らないからです。鍼灸師の履歴書でつまずくのは、たいてい決まった場所です。免許と資格の欄、職歴のブランク、志望動機、そして本人希望欄。この4つさえ整理できれば、あとは事実を書くだけの作業になります。この記事では、履歴書と職務経歴書の役割の違いから始めて、埋めにくい欄をどう扱うか、どの順番で書けば手が止まらないかを、順を追ってお話しします。

履歴書と職務経歴書は、役割がまったく違う

まず、この2つを混同しないでください。ここを分けられていない方が本当に多いんです。

履歴書は、あなたが誰であるかを示す書類です。氏名、生年月日、学歴、職歴、免許と資格。事実を時系列で並べます。決まった様式があり、書く内容も決まっています。採用側は、この書類で応募条件を満たしているかを確認します。

職務経歴書は、あなたが何をしてきたかを示す書類です。どんな施設で、どんな患者層に、どんな施術をしてきたか。何人のチームで、どんな役割を担っていたか。様式は自由で、内容の組み立ても自分で決めます。採用側は、この書類で入職後の働き方を想像します。

つまり、履歴書は確認のための書類、職務経歴書は判断のための書類です。だから、力を入れるべきなのは職務経歴書のほうです。履歴書は正確さが命で、職務経歴書は伝わりやすさが命。この違いを頭に入れておくと、時間の配分を間違えません。

新卒の場合は、職務経歴書を求められないことが多いです。その場合、履歴書の志望動機欄と自己PR欄が、職務経歴書の役割を兼ねます。書く分量が限られるので、絞り込みが必要になります。

経験者の場合、履歴書だけを提出して職務経歴書を出さないのは、機会を捨てているのと同じです。求人票に指定がなくても、経験があるなら添えたほうがいい。少なくとも、出して不利になることはありません。

書類の全体像を先に押さえておきたい方は、他の医療職の例が参考になります。看護師の転職用履歴書の書き方|志望動機と自己PRの例文は、履歴書と自己PRの役割分担、職歴欄の埋め方、志望動機の組み立てを一通り扱っています。職種は違いますが、医療系の書類で採用側が何を見ているかという観点は共通しているので、構成の作り方を掴むのに使えます。

基本の欄は、正確さだけを守れば終わる

日付、氏名、住所、連絡先。ここでつまずく人はほとんどいませんが、ミスは出ます。落ち着いて確認していきましょう。

日付は、提出日を書きます。郵送なら投函日、持参なら持参日、メールなら送信日です。書いた日ではありません。ここがずれていると、使い回しを疑われることがあります。

氏名は、戸籍どおりの表記で書きます。ふりがなの欄が「ふりがな」ならひらがな、「フリガナ」ならカタカナ。細かいようですが、指示を読んでいるかを見られている部分です。

住所は都道府県から書き、建物名と部屋番号まで省略しません。連絡先の電話番号は、日中に出られる番号にします。留守番電話の設定をしておくと、折り返しの機会を逃しません。

メールアドレスは、内容が読み取れるものにしてください。学生時代に作った、意味のわからない文字列や、趣味が前面に出たアドレスは、それだけで印象が変わります。無料で作れるので、応募用に1つ用意するのが確実です。

写真は、3か月以内に撮影したものを使います。スピード写真でも構いませんが、背景が白か薄い青のものを選んでください。服装は、面接に行くときと同じ格好が基本です。裏面に氏名を書いてから貼ると、剥がれたときに困りません。

学歴は、高校卒業から書くのが一般的です。専門学校名は正式名称で書きます。学科名まで正確に。ここを略すと、確認の手間を相手にかけることになります。

この基本欄でお伝えしたいのは、ここは差がつく場所ではないということです。正確に埋めれば、それで満点。時間をかけるべきは別の欄です。

免許と資格の欄は、鍼灸師特有の書き方がある

ここは間違えやすい場所です。落ち着いて確認していきましょう。

はり師、きゅう師は、それぞれ別の免許です。両方持っているなら、2行に分けて書きます。「はり師免許 取得」「きゅう師免許 取得」という形です。ひとまとめに「鍼灸師免許」と書くのは正確ではありません。国家試験は同日に行われることが多く、免許の取得時期も同じになりますが、免許そのものは別々です。

あん摩マッサージ指圧師の免許を持っているなら、それも別行で書きます。柔道整復師も同様です。持っている免許を全部書くことで、任せられる業務の範囲が伝わります。

書く順番は、取得年月の古いものから並べるのが基本です。同じ年月なら、応募先の業務に関係が深いものを先に置きます。

免許の名称は、正式名称で書いてください。免許証に記載されている表記に合わせるのが確実です。手元にない場合は、無理に思い出して書かず、確認してから記入します。

自動車免許も書きます。訪問マッサージや訪問鍼灸の求人では、運転できるかどうかが応募条件になっていることがあるからです。「普通自動車第一種運転免許 取得」と正式名称で書き、オートマ限定の場合はその旨を添えます。

そのほかの資格については、応募先の業務に関係するものを選んで書きます。関係のない資格を並べると、焦点がぼやけます。ただし、パソコンや事務系の資格は、院内の事務や保険請求を任される可能性があるので、書いておく価値があります。文書作成の基礎を証明できるビジネス文書検定のような資格は、書類作成や患者さんへの案内文の作成を任される場面で意味を持ちます。院の予約システムやネットワークに関わる可能性があるなら、CCNA(シスコ技術者認定)のようなIT系の資格も、他の応募者との違いになります。

現在勉強中の資格がある場合は、「◯◯ 取得に向けて勉強中」と書けます。学ぶ姿勢が伝わるので、書いて損はありません。ただし、取得の見込みが立っていないものを並べると、逆に散漫に見えます。1つか2つに絞ってください。

職歴欄。埋めにくい事情がある人こそ、先に型を決める

ここが一番手が止まる場所だと思います。順番に整理していきましょう。

基本の書き方は、入社と退職を1行ずつ書く形です。「◯年◯月 医療法人◯◯ 入職」「◯年◯月 一身上の都合により退職」。施設名は正式名称で、法人名も含めて書きます。院の屋号だけを書くと、正式名称が伝わりません。

このとき、施設の種類を括弧で添えると親切です。「◯◯鍼灸整骨院(鍼灸師として施術および院内業務を担当)」のような形です。行数に余裕がなければ省いても構いませんが、書けるなら書いたほうが伝わります。

さて、埋めにくい事情の扱いです。

ブランクがある場合。育児、介護、体調、資格の取得。理由を書くかどうかは自由ですが、書いたほうが相手は安心します。職歴欄には期間だけを書き、理由は志望動機欄か備考欄に1文添える形が読みやすい。「◯年◯月から◯年◯月まで、育児に専念しておりました」で十分です。長く書く必要はありません。

短期間で離職した職歴がある場合。隠さないでください。職歴を書かないと経歴詐称になりかねません。書いたうえで、面接で説明できるように準備しておきます。理由が事業所の閉院や、契約期間の満了であれば、その旨を括弧で添えると誤解が減ります。

転職回数が多い場合。すべて書くのが原則です。ただし、行数が足りないときは、アルバイトや短期の勤務をまとめて記載する方法があります。書式に迷ったら、応募先に確認しても構いません。

アルバイトや業務委託の経験。応募先の業務に関係するものは書いてください。学生時代の接客業も、患者さんへの対応につながる経験として説明できます。関係のないものは省いて構いません。

そして、書き終えたら最後の行に「現在に至る」または「以上」を書きます。この1行が抜けている書類が意外と多いんです。

職歴に自信が持てないという相談を、私は本当によく受けます。でも、書き出してみると、思っていたより経験の幅があることに気づく方がほとんどです。まずは事実を全部書き出して、そこから応募先に関係するものを選ぶ。この順番でやってみてください。最初から絞ろうとすると、手が止まります。

志望動機欄は、応募先の固有名詞が入っているかで決まる

志望動機欄で悩む方は多いですが、判断の基準はひとつです。その文章が、他の院に出しても成立してしまうかどうか。成立するなら、書き直しが必要です。

書く順番は、応募先の特徴、自分が持ち込める価値、その根拠、入職後にやりたいこと。この4ブロックです。最初に応募先の話を置くのがコツで、自分の話から始めると自己紹介になってしまいます。

応募先の特徴は、調べれば必ず出ます。ホームページの施術方針、力を入れている領域、患者層、院長の考え方。この中から、自分の経験や関心とつながるものを1つ選びます。

そのうえで、自分の何がそこで使えるかを書きます。経験者なら前職での実務、未経験者なら学校や実習で身につけたこと。ここで抽象的な言葉を使うと、伝わりません。「丁寧な施術を心がけています」ではなく、「初診の方には施術の目的と通院の見通しを最初に説明するようにしています」のように、行動で書いてください。

書き方は、経験の有無で変わります。

履歴書を書く段階で志望動機を明確にしておけば、面接でもしっかりと自分をアピールできるはずです。ここでは、鍼灸師の志望動機例を「経験者」「未経験者」の2つのパターンに分けて紹介します。 出典: co-medical.mynavi.jp

経験者は、前職で何をしてきて、それを応募先でどう使うかを具体的に書きます。未経験者は、何を学び、何に関心を持ち、どんな施術者になりたいかを書きます。求められている内容が違うので、同じ型で書こうとすると無理が出ます。

分量は、欄の8割から9割を埋めるのが目安です。空白が多いと熱意が伝わりませんし、詰め込みすぎると読みにくくなります。書いてみて長すぎたら、根拠の部分を1文に圧縮してください。

そして、志望動機は面接で必ず質問されます。書いた内容を覚えていないと、その時点で信用を失います。提出前にコピーを取り、面接前に読み返す。これを習慣にしてください。

本人希望欄は、空欄にも「特になし」にもしない

意外と扱いに困るのが、この欄です。結論から言うと、書くべき内容があります。

基本は「貴社の規定に従います」と書きます。これで問題ありません。給与や勤務地について細かく希望を書くと、条件次第で動く人だと受け取られるので、避けたほうが無難です。

ただし、伝えておかないと入職後に困ることは、ここに書きます。たとえば、勤務できる曜日や時間に制約がある場合。「育児のため、平日の◯時までの勤務を希望いたします」といった内容です。これは条件の交渉ではなく、事実の共有です。書かずに入職して、あとから調整するほうが揉めます。

複数の職種で募集がある場合は、応募する職種を明記します。受付事務と施術者の両方を募集している院に応募するなら、どちらを希望するかを書かないと、相手が判断できません。

連絡がつきやすい時間帯を書くのも有効です。「平日◯時以降にご連絡いただけますと幸いです」と添えておくと、行き違いが減ります。

書かないほうがよいこともあります。転勤や異動についての細かい希望、休日の指定、残業の可否。これらは面接で確認する内容です。書類の段階で並べると、条件から入る人だと見られます。

空欄で提出するのは避けてください。書き忘れたのか、希望がないのかが伝わりません。何もなければ「貴社の規定に従います」の1行で十分です。

職務経歴書に入れる5つの項目

ここからが本番です。職務経歴書は様式が自由なので、何を書けばいいかわからなくなります。入れる項目を5つに決めてしまえば、迷いません。

1つめ、職務要約。冒頭に3行から5行で、これまでの経歴の全体像を書きます。何年間、どんな施設で、何を専門にしてきたか。採用側はここだけを読んで、続きを読むかどうかを決めます。だから、ここに一番時間をかけてください。

2つめ、職務経歴の詳細。施設ごとに、在籍期間、施設の概要、担当した業務、患者層、1日の施術人数の目安、使用していた機器を書きます。施設の概要は、ベッド数やスタッフ数を書くと規模が伝わります。

3つめ、活かせる経験とスキル。施術技術だけでなく、保険請求の実務、後輩の指導、新人教育、予約管理、SNSの運用など、担当した業務を並べます。施術以外の業務は書き忘れやすいので、意識して拾ってください。

4つめ、保有資格。履歴書と重複しますが、書きます。取得年月も揃えて記載します。

5つめ、自己PR。ここは次の節で詳しく扱います。

書き方の見本として、実際の解説記事に掲載されている自己PRの例文があります。

鍼灸師として6年間、美容鍼灸をメインとした鍼灸院にて勤務いたしました。カウンセリングを重視したオーダーメイドの施術が得意です。お客様の悩みに寄り添った接客を徹底し、指名リピート率80%を維持してきた経験を貴院でも活かしたいと考えております。 出典: work.beauty.hotpepper.jp

この例文の構造を見てください。経験年数と分野、得意なこと、その裏づけとなる実績、そして応募先での活かし方。この4つが短い文章に収まっています。数字を出せる実績があるなら、それを添えると説得力が上がります。ただし、実際の数字がわからないものを書いてはいけません。裏づけのない数字は、面接の質問で崩れます。

分量はA4で1枚から2枚が目安です。3枚を超えると読まれない可能性が高くなります。書きたいことが多い場合は、応募先の業務に関係するものを優先して残してください。

自己PRは、応募先のニーズと噛み合わせる

自己PRで書くべきは、自分の長所ではありません。応募先が必要としていることと、自分ができることの重なりです。

だから、自己PRを書く前に応募先を調べます。高齢者中心の院なのか、スポーツ領域なのか、美容なのか、訪問なのか。求めているものが違えば、押すべき自分の強みも変わります。

書き方の型は、結論、根拠、応募先での活かし方の3ブロックです。結論は1文で。「患者さんの生活背景まで踏まえて施術方針を組み立てることを大切にしてきました」のような形です。根拠は、その姿勢が表れた具体的な行動を書きます。応募先での活かし方は、調べた特徴と接続します。

ここで多い失敗が、強みを3つも4つも並べてしまうことです。読み手の印象に残るのは1つです。絞ってください。絞れないときは、応募先が一番必要としていそうなものを選びます。

もうひとつの失敗が、抽象語だけで終えることです。「責任感」「向上心」「協調性」。こういう言葉は、誰でも書けるので差になりません。行動で書くと、同じ内容でも伝わり方が変わります。

自己PRが書けないという方に、私がお伝えしている方法があります。過去に、患者さんや同僚から言われて嬉しかった言葉を思い出してください。「説明がわかりやすい」「話しやすい」「準備が早い」。他人からの評価は、自分では気づきにくい強みを教えてくれます。そこを起点にすると、書き出しが見つかります。

そして、自己PRと志望動機が同じ内容になっていないかを確認してください。志望動機は「なぜこの院か」、自己PRは「自分は何ができるか」。役割が違うので、内容も分けます。同じことを2回読まされると、読み手の印象は薄くなります。

書類作成にかかる時間と、使い回せる部分の切り分け

書類作成は時間がかかります。だから、どこに時間をかけて、どこを使い回すかを決めておくと楽になります。

最初の1通は、時間がかかります。経歴の書き出し、応募先の調査、自己PRの組み立て、志望動機の作成。ここは数時間かかると思っておいてください。ただし、この1通目が土台になります。

2通目からは、大幅に短くなります。使い回せるのは、履歴書の基本欄、学歴、職歴、免許と資格。それから職務経歴書の職務経歴の詳細部分。これらは事実なので、応募先が変わっても内容は変わりません。

作り直すのは3か所です。職務要約、自己PR、志望動機。応募先の業態に合わせて、前に出す経験を入れ替えます。ここだけなら30分から1時間で書けます。

つまり、1通目に時間をかけておくと、2通目以降の負担が大きく下がるということです。急いで薄い書類を何通も出すより、1通をしっかり作ってから展開するほうが、結果的に早い。

保存の仕方も工夫してください。パソコンで作る場合は、基本形のファイルを1つ作り、応募先ごとに複製して名前を変える。手書きの場合は、書き上げたものをコピーして手元に残し、次はそれを見ながら書く。どちらも、書き直す手間を減らせます。

応募先ごとの記録も残しておくと役に立ちます。いつ、どの院に、どの内容の書類を出したか。応募先が増えると、どこに何を書いたか分からなくなります。面接で書いていない内容を話してしまうと、書類との食い違いになります。表計算ソフトでも手帳でも構わないので、応募日と提出内容だけは控えておいてください。

そして、手元に残したコピーは、面接前に必ず読み返してください。書いた内容を覚えていないまま面接に行くのが、一番もったいない失敗です。

更新の作業そのものは、新しく増えた業務を1行足すだけで済みます。見直すきっかけがないと後回しになるので、誕生日や年度の変わり目など、日付を決めてしまうのがおすすめです。5分で終わります。

書類の内容は、時間が経つと古くなります。半年に一度は職歴と資格を見直して、更新しておくといいでしょう。急に応募したくなったときに、ゼロから作らずに済みます。

新卒や未経験の方は、材料をどこから拾うか

職歴がない状態で書類を作るのは、経験者とは別の難しさがあります。書くことがないと感じてしまう。でも、材料はあります。拾う場所を知らないだけです。

まず、学校で学んだ内容。授業で扱った領域、特に関心を持った分野、卒業研究や発表のテーマ。これは全部書ける材料です。「東洋医学の基礎から臨床応用まで学び、特に運動器疾患への施術に関心を持ちました」という形で、方向性が伝わります。

次に、実習。担当した患者さんの傾向、指導者から受けた指摘、自分が難しいと感じた場面。ここは一番の材料です。実習で失敗した経験も書けます。むしろ、失敗とそこから何を変えたかを書けるほうが、自己認識のある人だと読まれます。

それから、学校生活のなかでの役割。委員や係、後輩への指導、グループでの活動。こういう経験は、チームで動けるかどうかの材料になります。

アルバイトの経験も使えます。接客業なら、初対面の人と話す訓練を積んできたことになります。飲食なら、複数の作業を並行して回す段取り力。事務なら、正確に処理する力。鍼灸に直接関係がなくても、業務につながる形に言い換えられます。

そして、部活動や競技の経験。スポーツ領域に力を入れている院では、これが大きな接点になります。自分が怪我をした経験、復帰までの過程、そのときに受けた施術。ここは志望動機にもつながる材料です。

拾い方のコツをひとつ。全部を思い出そうとせず、時期で区切って書き出してください。高校時代、専門学校の1年目、2年目、3年目、実習期間。区切ると出てきます。何もない期間はないはずです。

書き出したら、応募先に関係するものを選びます。関係のないものは使いません。この選別の作業をやると、書類に一貫性が生まれます。

応募先の業態が変われば、強調する経歴も変わる

同じ経歴を持っていても、応募先によって前に出す部分は変えます。1通の書類を使い回すと、どこにも刺さらないものになります。

高齢者中心の施設やデイサービスに応募するなら、前に出すのは高齢の患者さんへの対応経験、他職種との連携、生活動作を含めて見る視点です。介護職や看護職と一緒に動いた経験があるなら、必ず書いてください。

スポーツ領域の院なら、競技経験、運動器疾患の施術経験、テーピングなどの技術。自分が競技をしていた経験は、患者さんとの共通言語になるので強い材料です。

美容鍼灸の施設なら、カウンセリングの経験、接客の質、リピートにつながる関わり方。自費が中心の業態なので、説明力と継続的な関係づくりが重視されます。

訪問マッサージや訪問鍼灸なら、単独での判断、移動を含めた自己管理、ご家族やケアマネジャーとのやりとり。運転経験も具体的に書いてください。

整形外科などの医療機関なら、医師や理学療法士との連携、記録の正確さ、医療機関特有の流れへの理解。

そして、保険を扱う施設なら、療養費の請求実務の経験が大きな武器になります。同意書の管理、申請書の作成、返戻への対応。この経験がある人は、書かないともったいない。院の収入に直結する業務なので、評価されます。

言い方を変えると、書類は応募先ごとに作り直すものです。全部を書き直す必要はありません。職務要約と自己PR、そして志望動機。この3つを差し替えるだけで、印象は変わります。詳細の部分は共通で使えます。

送り方と、通らないときに見直す場所

書類ができたら、送り方でも差がつきます。ここは減点を避けるための項目です。

郵送の場合。封筒はA4が折らずに入る角形2号を使います。宛名は正式名称で、担当者名がわかっていれば個人名に「様」、わからなければ部署名か「採用ご担当者様」。封筒の表に赤字で「応募書類在中」と書きます。中身はクリアファイルに入れてから封筒へ。書類が折れたり濡れたりするのを防げます。添え状を1枚つけると丁寧ですが、なくても不採用にはなりません。

メールの場合。件名は用件がわかる形にします。「鍼灸師求人への応募書類の送付(氏名)」のような形です。本文には、応募する職種、氏名、連絡先、添付ファイルの内容を簡潔に書きます。ファイルは形式を揃え、開いたときに崩れないものにしてください。ファイル名も「履歴書_氏名」のように、相手が管理しやすい名前にします。

持参の場合。封をせずに持っていき、受付で手渡します。折らずに持てる大きさのファイルに入れて、鞄のなかで折れないようにしてください。

そして、書類が通らないときの見直しです。3つの場所を順に確認します。

1つめ、応募先と経歴が噛み合っているか。高齢者中心の院に、美容鍼灸の経験だけを前面に出した書類を出していないか。ここがずれていると、内容の質に関係なく通りません。

2つめ、職務要約が具体的か。冒頭の数行が抽象的だと、続きが読まれません。何年間、どこで、何を専門に、という要素が入っているか確認してください。

3つめ、志望動機に固有名詞があるか。応募先の名前だけでなく、その院の特徴を指す言葉が入っているか。入っていなければ、調べ直しです。

それでも通らない場合は、書類ではなく応募先の選び方に原因があるかもしれません。求めている経験年数や業態が、自分の経歴と離れている可能性があります。ここは自分では気づきにくいので、求人サービスの担当者や、経験のある知人に見てもらうのが早い。一人で抱え込まないでください。落ちるのは能力の否定ではなく、条件の不一致であることのほうが多いんです。

書く順番を決めれば、手は止まらない

最後に、作業の順番です。ここを間違えると、何度も書き直すことになります。

まず、職務経歴の事実を全部書き出します。施設名、期間、業務内容、患者層、担当していた役割。この段階では整理しなくて構いません。思い出せるものを全部出します。

次に、応募先を調べます。ホームページ、SNS、求人票。施術方針、患者層、力を入れている領域、スタッフ構成。

そして、書き出した経歴のなかから、応募先と関係の深いものを選びます。ここで初めて絞り込みが起きます。

そのあとに、自己PRを書きます。選んだ経歴が根拠になるので、書きやすくなっているはずです。

最後に志望動機を書きます。自己PRで示した強みが、応募先の特徴と噛み合う形で書けば、書類全体の整合が取れます。

この順番でやると、志望動機が最後になります。多くの方は志望動機から書き始めて、そこで固まってしまう。順番を変えるだけで、手が動くようになります。

なお、手書きとパソコンのどちらで作るかについては、応募先の指定に従うのが第一です。指定がなければ、どちらでも構いません。手書きは丁寧さが伝わりますが、書き損じのやり直しに時間がかかります。パソコンは修正が楽で、複数の応募先に出すときの効率が良い。職務経歴書はパソコンで作るのが一般的です。無料のテンプレートが公開されているので、様式に迷ったら利用してください。

提出前の確認は、必ず時間を空けてからやります。書いた直後は誤字が見えません。一晩置いてから、声に出して読んでください。誤字、脱字、応募先の名称、日付、写真の貼り忘れ。この5つを順に確認します。特に応募先の名称の間違いは、内容がどれだけ良くても致命的です。

書類の先にある、働き方の選択肢について

在宅ワークと業務委託のマッチングを20年運営してきた立場から見ると、書類を丁寧に作れる人は、仕事を継続的に受けられる人と重なります。理由ははっきりしていて、どちらも「相手が何を必要としているかを調べて、自分の何が使えるかを言葉にする」という同じ作業だからです。調べずに書いた書類は通りませんし、要件を読まずに送った提案も通りません。

運営者として見てきた限りでは、長く続いている人ほど、単発の仕事をこなすことより「この人に任せると楽だ」と思われる関係づくりに時間を使っています。書類で言えば、読み手の手間を減らす配慮にそれが表れます。施設の正式名称を書く、業務内容を具体的に書く、確認しやすい順序で並べる。小さなことの積み重ねですが、読む側には伝わります。

もうひとつ、収入の構造の話をしておきます。額面の金額に目が行きがちですが、生活に効くのは手取りです。間に中間マージンが乗るほど、依頼する側は同じ予算で頼める量が減り、受ける側の手元に残る額は薄くなります。手数料0%の直接取引が意味を持つのは、金額が急に跳ね上がるからではなく、同じ仕事から残るお金の質が変わるからです。院に雇われる働き方と、業務委託で施術を請け負う働き方を比べるときにも、この視点は判断の助けになります。

条件が妥当かどうかを判断するには、相場を知っておく必要があります。職種別の収入データは公開されていて、ソフトウェア作成者の年収・単価相場著述家,記者,編集者の年収・単価相場のように、賃金の分布や単価の目安を職種ごとに確認できます。鍼灸師とは職種が違いますが、経験年数で分布がどう動くか、雇用と業務委託で収入の構造がどう変わるかという読み方を身につけるには十分役に立ちます。

そして、鍼灸師の働く場は院への就職だけではなくなってきています。健康分野の情報発信、オンラインでの相談業務、事業者向けの支援など、身体の知識を持つ人が関われる領域は広がっています。デジタル寄りの業務に関心があるならAI・マーケティング・セキュリティのお仕事AIコンサル・業務活用支援のお仕事に、いまどんな業務が発注されているかがまとまっています。予約システムや院内のシステムに関わる可能性があるならアプリケーション開発のお仕事も、選択肢を知る材料になります。

書類を作る作業は、応募のためだけのものではありません。自分が何を持っていて、これから何をしたいのかを言葉にする作業です。一度きちんとやっておくと、次の転職でも、働き方を変えるときでも、同じ材料が使えます。手が止まっているいまは、そのための時間だと考えてみてください。あなたは一人ではありませんし、書けないのは能力の問題ではありません。順番の問題です。

よくある質問

Q. 履歴書の免許・資格欄には、はり師ときゅう師をまとめて書いてよいですか?

それぞれ別の免許なので、2行に分けて書いてください。「はり師免許 取得」「きゅう師免許 取得」という形です。あん摩マッサージ指圧師や柔道整復師の免許を持っている場合も別行にします。名称は免許証の記載に合わせ、取得年月の古い順に並べるのが基本です。訪問系の求人に応募するなら自動車免許も記載してください。

Q. 職歴にブランクがある場合、どう書けばよいですか?

職歴欄には期間だけを書き、理由は志望動機欄か備考欄に1文添える形が読みやすくなります。「◯年◯月から◯年◯月まで、育児に専念しておりました」で十分です。長く書くと言い訳に見えるので簡潔にしてください。短期間で離職した職歴も、隠さずに書きます。書かないと経歴の食い違いになります。

Q. 職務経歴書には何を書けばよいですか?

職務要約、職務経歴の詳細、活かせる経験とスキル、保有資格、自己PRの5項目です。冒頭の職務要約は3行から5行で全体像を示す部分で、ここだけを読んで続きを読むかが決まるため一番時間をかけてください。分量はA4で1枚から2枚が目安です。3枚を超えると読まれにくくなります。

Q. 履歴書は手書きとパソコンのどちらで作るべきですか?

応募先の指定があればそれに従い、なければどちらでも構いません。手書きは丁寧さが伝わる一方、書き損じのやり直しに時間がかかります。パソコンは修正が楽で、複数の応募先に出すときに効率的です。職務経歴書はパソコンで作るのが一般的で、無料のテンプレートも公開されているので様式に迷ったら利用してください。

この記事について

@SOHO
編集部

監修:@SOHO編集部

2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを20年運営。編集部が事実確認のうえ公開しています。

公開:2026年3月9日最終更新:2026年9月10日
中西 直美

この記事を書いた人

中西 直美@SOHO編集部

産業カウンセラー・キャリアコンサルタント

大手人材会社でキャリアカウンセラーとして15年間従事した後、フリーランスの産業カウンセラーとして独立。在宅ワーカーのメンタルヘルスケアを専門に活動しています。

@SOHOで仕事を探してみませんか?

手数料0%・登録無料のクラウドソーシング。フリーランスの方も企業の方も、今すぐ始められます。

関連記事

カテゴリから探す

クラウドソーシング入門

クラウドソーシング入門

クラウドソーシングの基礎知識・始め方・サイト比較

職種別ガイド

職種別ガイド

職種・スキル別の案件獲得方法と単価相場

副業・在宅ワーク

副業・在宅ワーク

副業・在宅ワークの始め方と対象者別ガイド

フリーランス

フリーランス

フリーランスの独立・営業・実務ノウハウ

お金・税金

お金・税金

確定申告・節税・経費・ローンなどお金の知識

スキルアップ

スキルアップ

プロフィール・提案文・単価交渉などのテクニック

比較・ランキング

比較・ランキング

サービス比較・おすすめランキング

AI活用

AI活用

職種別にChatGPT・生成AIを活用して業務効率化・収益化するノウハウ

最新トレンド

最新トレンド

市場動向・法改正・AIなど最新情報

発注者向けガイド

発注者向けガイド

クラウドソーシングで外注・人材探しをする企業・個人向け

転職・キャリア

転職・キャリア

転職エージェント・転職サイト比較・キャリアチェンジ

看護師の転職・求人

看護師の転職・求人

看護師の転職・派遣・単発バイト・副業など働き方のガイド。診療や医学の情報は扱いません

薬剤師の転職・求人

薬剤師の転職・求人

薬剤師・登録販売者の転職・派遣・パートなど働き方のガイド。診療や医学の情報は扱いません

介護職の転職・求人

介護職の転職・求人

介護職・介護福祉士・ケアマネジャー・訪問介護員の転職・派遣・夜勤など働き方のガイド

保育士の転職・求人

保育士の転職・求人

保育士・保育補助・幼稚園教諭の転職・派遣・パートなど働き方のガイド

保険

保険

生命保険・医療保険・フリーランスの保険設計

採用・求人

採用・求人

無料求人掲載・採用コスト削減・人材募集の方法

オフィス・ワークスペース

オフィス・ワークスペース

バーチャルオフィス・コワーキング・レンタルオフィス

法律・士業

法律・士業

契約トラブル・士業独立開業・フリーランス新法

シニア・50代

シニア・50代

シニア世代のキャリアチェンジ・副業・年金

セキュリティ

セキュリティ

サイバーセキュリティ・脆弱性対策・情報保護

金融・フィンテック

金融・フィンテック

暗号資産・決済・ブロックチェーン・金融テクノロジー

経営・ビジネス

経営・ビジネス

経営戦略・ガバナンス・事業承継・知財

ガジェット・機材

ガジェット・機材

フリーランスに役立つPC・デバイス・周辺機器

子育て×働き方

子育て×働き方

子育てと在宅ワークの両立・保育園・時間管理

補助金・助成金

補助金・助成金

個人事業主・フリーランスが使える公的補助金・助成金・給付金の申請ガイド

アウトソーシング・外注ガイド

アウトソーシング・外注ガイド

SNS運用・経理・広告など、業務のアウトソーシング(外注)を検討する企業・個人向け。費用相場・依頼の流れ・失敗しない選び方