ダブルワークのときの厚生年金|二社で加入することになる条件 2026


この記事のポイント
- ✓ダブルワークで厚生年金に二社とも加入することになる条件を
- ✓社会保険の加入要件と二以上事業所勤務届の手続きから整理しました
- ✓公的機関の公表内容をもとに解説します
ダブルワークをすると厚生年金はどうなるのか。結論から言うと、「二社それぞれで加入の要件を満たしたときだけ、両方で被保険者になる」です。片方でしか要件を満たしていなければ、そちらの一社だけで加入します。
この点を押さえずに「掛け持ちすると二重に保険料を取られる」と心配している人が多いのですが、正確ではありません。両方で加入することになった場合でも、保険料は二社の報酬を合算して決めた標準報酬月額をもとに計算され、それを各社の報酬額で按分します。二重に取られるわけではないという特徴があります。
ただし、両方で加入することになった場合は、会社ではなく働いている本人が届出をする必要があります。ここが見落とされやすい。この記事では、加入する条件、届出の手順、手取りへの影響、扶養や確定申告との関係までを順番に整理します。
まず、二社で加入することになる条件
厚生年金保険と健康保険は、事業所ごとに加入の判定をします。つまり、A社で要件を満たすか、B社で要件を満たすかを別々に見るということです。
正社員やそれに近いフルタイムの働き方であれば、通常はその会社で被保険者になります。問題になるのは、どちらかまたは両方が短時間勤務の場合です。
短時間労働者の加入要件は、厚生労働省の社会保険適用拡大特設サイトで示されています。2026年10月時点で並んでいるのは次の内容です。
| 要件 | 内容 |
|---|---|
| 企業規模 | 2027年9月までは従業員数51人以上、2027年10月以降は36人以上 |
| 労働時間 | 週の所定労働時間が20時間以上 |
| 学生であるか | 学生ではないこと |
| 賃金 | 2026年10月に撤廃(以前は所定内賃金が月額8.8万円以上) |
| 雇用期間 | フルタイムの従業員と同じく2か月を超えて雇用される見込みであること |
このうち賃金の要件については、2026年10月に撤廃されました。撤廃後は、週20時間以上働いていれば賃金の水準にかかわらず加入対象になります。
企業規模の条件は段階的に広がります。従業員数36人から50人の企業は2027年10月から、21人から35人の企業は2029年10月から、11人から20人の企業は2032年10月から、10人以下の企業は2035年10月から、適用拡大の対象になります。
つまり、いま加入対象にならない規模の会社で働いていても、数年後には対象になる可能性がある。ダブルワークの組み方を考えるときは、この予定も頭に入れておくべきでしょう。
「週20時間」は合算しない
ここは誤解が多いところです。A社で週15時間、B社で週15時間働いていて合計30時間だから加入対象になる、とはなりません。労働時間は事業所ごとに判定するため、どちらも週20時間に届かなければ、どちらでも被保険者になりません。
例外は65歳以上の方が対象のマルチジョブホルダー制度ですが、これは雇用保険の話であって厚生年金の話ではありません。混同されやすいので、分けて理解してください。
正直なところ、この「合算しない」という点が、ダブルワークで社会保険に入れない人が出る最大の理由になっています。合計では長時間働いているのに、どちらでも要件を満たさないという状態が生まれます。
二社で加入したら何が起きるか
両方の会社で被保険者になった場合の扱いは、日本年金機構が明確に示しています。
被保険者が同時に2か所以上の適用事業所に使用されることになった場合、本人の届出によって、主たる事業所を選択して管轄する年金事務所または保険者等を決定します。そして、それぞれの事業所で受ける報酬月額を合算した月額により標準報酬月額を決定します。
保険料は、決定した標準報酬月額による保険料額を、それぞれの事業所で受ける報酬月額に基づいて按分して決めます。決定した標準報酬月額および保険料額は、選択した事業所の所在地を管轄する事務センターから、それぞれの事業所へ通知されます。
言い換えると、こういうことです。A社の報酬が20万円、B社の報酬が10万円なら、合計30万円をもとに標準報酬月額が決まります。その標準報酬月額に対応する保険料を、2対1の比率でA社分とB社分に割り振ります。合計の保険料は、30万円の報酬を1社から受けている人と同じ水準になります。
ダブルワークや掛け持ちで2か所の社会保険に加入する際は、それぞれの手続きになるためそれが面倒に感じるかもしれません。収入によっては確定申告をする必要もあります。 出典: romsearch.officestation.jp
手続きが2か所分になるという指摘は、そのとおりです。ただ、保険料の総額が二重になるわけではないという点は、先に理解しておいたほうが不安が減ります。
届出は「本人が」「10日以内に」
ここが最も重要な実務の話です。
日本年金機構は、事実発生から10日以内に、被保険者が「健康保険・厚生年金保険 被保険者所属選択・二以上事業所勤務届」を日本年金機構へ提出する必要があると示しています。会社が出す届出ではなく、本人が出す届出です。
提出先は、選択した事業所の所在地を管轄する事務センターまたは年金事務所です。提出方法は、電子申請、郵送、窓口持参のいずれかから選べます。届書様式はエクセルで公開されています。
この届出には前提があります。それぞれの適用事業所で被保険者となるための「健康保険・厚生年金保険 被保険者資格取得届」が提出されていることです。新たに被保険者となる場合は、事業所から資格取得届が提出されていることを確認してから進めてください。
添付書類としては、資格確認書、高齢受給者証、特定疾病療養受療証、限度額適用認定証、限度額適用・標準負担額減額認定証が、交付されている場合のみ必要になります。
なお、健康保険組合に加入している事業所を選択した場合は、加入先の健康保険組合にも手続きが必要です。選択した先によって、やることがひとつ増えます。
マイナンバーを記載するときの本人確認
留意事項として、個人番号(マイナンバー)を記載して提出する場合は、マイナンバーが確認できる書類および身元確認書類が必要とされています。
窓口で提出する場合はマイナンバーカードを提示します。持っていない場合は、マイナンバーの表示がある住民票の写しなどと、運転免許証やパスポートなどの2種類を提示します。郵送の場合や、事業所の担当者や社会保険労務士が提出する場合は、それらのコピーを添付します。
細かい話に見えますが、これを知らずに窓口へ行くと二度手間になります。先に確認しておくべきところです。
二社で加入する利点と、そうでない点
判断材料として、両面をフェアに並べます。
利点の1つ目は、将来受け取る年金額が増えることです。厚生年金は報酬に応じて年金額が決まる仕組みなので、合算した報酬をもとに標準報酬月額が決まれば、その分が将来の年金に反映されます。片方の会社だけで加入していた場合より、記録が厚くなります。
利点の2つ目は、健康保険の給付の計算にも合算が効くことです。傷病手当金、つまり病気やけがで働けない間に健康保険から出るお金や、出産手当金の額は標準報酬月額をもとに計算されます。合算された標準報酬月額が土台になれば、受け取れる額も変わります。
一方、そうでない点もはっきりしています。
まず、目先の手取りが減ります。保険料の負担が増えるためです。将来の年金額と引き換えに、いまの現金が減る。この交換をどう評価するかは人によって違います。
次に、手続きの負担が本人にかかります。前に書いたとおり、二以上事業所勤務届は本人が出すものです。10日以内という期限もあります。会社任せにできません。
そして、二社とも報酬が変動する働き方だと、標準報酬月額の見直しのたびに両方の会社の数字が影響します。月ごとの収入が読みにくくなるという面があります。
標準報酬月額はいつ決まり、いつ変わるのか
合算して決めるという話が出てきたので、その標準報酬月額がいつ決まるのかも押さえておきます。ここを知らないと、収入が変わったのに保険料がすぐ動かない理由が分かりません。
決まる機会は主に3つです。
ひとつ目が資格取得時の決定です。被保険者になった時点の報酬をもとに決まります。
ふたつ目が定時決定、いわゆる算定基礎届です。日本年金機構の説明では、事業主が7月1日現在で使用している全被保険者の4月、5月、6月の3か月間の報酬月額を届け出て、これをもとに毎年1回標準報酬月額を決定し直します。決定し直された標準報酬月額は、9月から翌年8月までの各月に適用されます。提出時期は毎年7月10日までです。
ここで、ダブルワークの人にだけ関わる注記があります。二以上の事業所に勤務する方に関する届出用紙は、6月中旬以降、選択事業所を管轄する事務センターから別途送られると書かれています。通常とは別の流れになるということです。
3つ目が随時改定、月額変更届です。昇給や降給などで報酬が大幅に変わったときに、定時決定を待たずに改定されます。要件は3つすべてに該当することとされています。固定的賃金に変動があったこと、変動月以後3か月の報酬の平均額から算出した標準報酬月額と従前の標準報酬月額との間に2等級以上の差が生じたこと、変動月以後3か月の報酬の支払基礎日数が17日(特定適用事業所に勤務する短時間労働者は11日)以上であること、です。
改定されるのは、変更後の報酬を初めて受けた月から起算して4か月目の標準報酬月額からです。4月に支払われる給与に変動があった場合は7月から、という形になります。
つまり、副業の収入が増えてもすぐには保険料に反映されず、数か月遅れて動くということです。ここを知らないと、あとから保険料が上がったときに理由が分からなくなります。
雇用保険のほうは扱いが違う
社会保険の話をするとき、厚生年金と雇用保険を一緒にしてしまう人が多いのですが、扱いは別です。
従来の雇用保険制度は、主たる事業所での労働条件が1週間の所定労働時間20時間以上かつ31日以上の雇用見込みといった要件を満たす場合に適用されます。つまり、原則として1か所でのみ被保険者になります。二社で加入する厚生年金とは考え方が違います。
例外が、65歳以上を対象とした雇用保険マルチジョブホルダー制度です。厚生労働省の説明によると、適用要件は次のとおりです。複数の事業所に雇用される65歳以上の労働者であること。2つの事業所(1つの事業所における1週間の所定労働時間が5時間以上20時間未満)の労働時間を合計して1週間の所定労働時間が20時間以上であること。2つの事業所のそれぞれの雇用見込みが31日以上であること。
この制度は、本人からハローワークに申出を行うことで、申出を行った日から特例的に被保険者となる仕組みです。会社が勝手に手続きするものではなく、本人の申出が起点になります。厚生年金の二以上事業所勤務届と同じく、動くのは本人です。
64歳以下の方はこの制度の対象外なので、労働時間を合計しても雇用保険には入れません。ダブルワークの落とし穴のひとつです。
加入しない場合はどうなるか
二社のどちらでも要件を満たさない場合、または片方だけで満たす場合の扱いも整理しておきます。
片方だけで要件を満たすなら、その会社でのみ被保険者になります。もう一方の会社の報酬は、厚生年金の計算には入りません。二以上事業所勤務届も不要です。
どちらでも要件を満たさない場合は、国民年金の第1号被保険者として自分で保険料を納めるか、配偶者に扶養されている場合は第3号被保険者になります。
扶養の範囲で働く場合の数字
配偶者の扶養に入りながらダブルワークをする場合、収入の合計で判定されます。ここは事業所ごとではありません。
日本年金機構が示している被扶養者の収入要件は、年間収入が130万円未満であること(60歳以上または障害者の場合は年間収入180万円未満)、かつ同居の場合は収入が被保険者の収入の半分未満、別居の場合は被保険者からの仕送り額未満であることです。
ここでいう年間収入は、過去の収入ではなく、認定される時点および認定された日以降の見込み収入額を指します。給与所得等の収入がある場合は月額108,333円以下、雇用保険等の受給者の場合は日額3,611円以下であれば要件を満たす、と説明されています。
なお、扶養認定日が令和7年10月1日以降で、認定を受ける方が19歳以上23歳未満の場合は、年間収入150万円未満に変わっています。学生の子どもがアルバイトを掛け持ちしているケースでは、この数字を使います。
収入には雇用保険の失業等給付、公的年金、健康保険の傷病手当金や出産手当金も含まれます。給与だけを数えて安心していると外れることがあるので、注意が必要です。
扶養から外れる条件も示されています。年間収入が130万円以上(60歳以上または障害者の場合は180万円以上)見込まれるとき、同居で収入が被保険者の収入の半分以上になったとき、別居で仕送り額を超えたときなどです。該当したら削除の届出が必要になります。
個別の判定は働き方の実態で変わるため、微妙なところは加入している健康保険の窓口か年金事務所で確認してください。
確定申告と住民税の扱い
社会保険とは別に、税の手続きも発生します。ここも線引きがはっきり決まっています。
国税庁は、給与所得者で確定申告が必要な人として、給与を2か所以上から受けていて給与の全部が源泉徴収の対象となる場合において、年末調整されなかった給与の収入金額と、給与所得および退職所得を除く各種の所得金額との合計額が20万円を超える人を挙げています。
つまり、ダブルワークで2か所から給与を受けている場合、年末調整されなかった側の給与が20万円を超えれば申告が必要になります。ここは社会保険に加入しているかどうかとは無関係です。
ただし注記があります。給与の収入金額の合計額から、所得控除の合計額(雑損控除、医療費控除、寄附金控除、基礎控除を除く)を差し引いた金額が150万円以下で、さらに給与所得と退職所得を除く各種の所得金額の合計額が20万円以下の人は、申告は不要とされています。
年末調整は1か所でしか受けられません。主たる勤務先に扶養控除等申告書を提出し、そちらで年末調整を受け、もう一方は年末調整されないまま源泉徴収される。この形になるため、確定申告で精算する流れになります。
なお、20万円の線は所得税の話です。住民税には別の取り扱いがあるので、自分の市区町村の案内を確認してください。金額や事情で結論が変わるところなので、迷ったら税務署か市区町村の窓口に聞くのが確実です。
手取りで比べるときの計算の順番
制度の説明だけでは判断できないので、比べ方を書いておきます。
最初に、それぞれの会社での週の所定労働時間と所定内賃金を書き出します。これで、どちらで加入要件を満たすかが決まります。
次に、両方で加入することになる場合は、二社の報酬を合算した金額をもとに標準報酬月額を見ます。保険料額表は加入している健康保険の団体が公開しています。合算後の等級に対応する保険料が、二社で按分される総額です。
その保険料と、いま払っている保険料(片方だけの加入、あるいは国民年金の保険料)を比べます。差額が、追加で負担する金額です。
最後に、その負担に見合うものを並べます。将来の年金額の増加、傷病手当金や出産手当金の計算の土台、失業したときの扱い。これらをどう評価するかで結論が変わります。
正直なところ、短期の手取りだけを見れば、加入しないほうが多く残ります。長期で見れば、加入したほうが受け取れる額は増えます。どちらが正解ということはなく、いま現金が必要かどうかで判断が分かれるところです。
加入を避けるために時間を削るのは、たいてい割に合わない
計算していて気づくのは、加入を避けるために労働時間を削ると、削った分の収入のほうが保険料より大きくなることが多いという点です。
週20時間の手前で止めるということは、その先の労働時間で得られたはずの報酬を丸ごと手放すということです。一方で、加入して増える負担は報酬の一定割合にとどまります。しかも事業主が半分を負担します。
そう考えると、「社会保険に入りたくないから時間を抑える」という判断は、数字の上では成り立ちにくい。扶養の範囲に収めたい事情があるなど、別の理由があるときだけ意味を持ちます。
ただし、これは手取りだけを見た話です。体力や家庭の都合で働ける時間に上限があるなら、その範囲で最も手取りが厚くなる形を選ぶことになります。どちらにしても、感覚ではなく数字を並べてから決めるべきところです。
雇われる形以外の組み方もある
ダブルワークというと、2か所でアルバイトや正社員として働く形を思い浮かべがちですが、片方を業務委託にする組み方もあります。
業務委託であれば厚生年金の被保険者にはなりません。したがって、本業の会社だけで加入し、副業分は事業所得または雑所得として申告する形になります。労働時間の管理を受けないので、本業の勤務時間との調整もしやすくなります。
ただし、雇用保険の保護がない、労災の対象にならない、収入が不安定になるといった点は正直に見ておくべきです。契約書の中身を自分で確認する必要もあります。発注書や契約書で何を確かめるべきかは、フリーランスを守る「下請法(取適法)」の知識|発注書・契約書の必須項目チェックリストに整理されています。
どういう業務委託の仕事があるかを具体的に見たい方には、経験がそのまま値段になる領域を扱ったAIコンサル・業務活用支援のお仕事が分かりやすい例になります。資格を持っている方であれば、本業を続けながら受けられる仕事の範囲を整理した会計士の副業ガイド|監査法人勤務でもできる高収入の稼ぎ方【2026年版】も参考になります。
始める前に就業規則を確認する
制度の話の前に、実は確認しておくべきことがあります。勤務先が副業を認めているかどうかです。
厚生労働省のモデル就業規則では、副業・兼業についての条文が令和7年12月版で第70条に置かれています。労働者は勤務時間外において他の会社等の業務に従事することができるとしたうえで、会社が禁止または制限できる事由を4つ挙げています。
労務提供上の支障がある場合。企業秘密が漏洩する場合。会社の名誉や信用を損なう行為や、信頼関係を破壊する行為がある場合。競業により会社の利益を害する場合。
つまり、副業は原則として認められる方向で整理されており、制限できるのはこの4つに当たるときだと示されています。モデル就業規則はあくまで例なので、実際の扱いは勤務先の就業規則に書かれた内容によります。まずそこを読んでください。
もうひとつ確認しておきたいのが、労働時間の通算です。二社とも雇用されて働く場合、労働基準法上の労働時間は通算されます。割増賃金の扱いも関わってくるため、両方の会社に働き方を伝えておくのが安全です。詳しい扱いは厚生労働省の副業・兼業の促進に関するガイドラインに整理されています。
業務委託であれば労働時間の通算は問題になりません。ここも、雇われる形と業務委託で扱いが分かれるところです。
副業が勤務先に伝わる経路
隠したいという相談も一定数あるので、事実だけ書いておきます。
二社とも雇用されて社会保険に加入した場合、二以上事業所勤務届を出すと、選択した事業所を管轄する事務センターから、それぞれの事業所へ標準報酬月額と保険料額が通知されます。つまり、両社が把握する形になります。これは制度の仕組みなので、避けようがありません。
副業が業務委託であれば、社会保険の届出は発生しません。ただし住民税の経路があります。副業分の所得に対する住民税が本業の給与から一緒に天引きされると、金額から気づかれることがあります。給与所得以外の所得については、住民税を自分で納める方法を選べる場合があります。ただし副業がアルバイトなど給与の場合は選べません。ここはよく間違われるところです。
具体的な取り扱いは市区町村によって案内が異なるため、住んでいる自治体の案内を確認してください。判断が分かれる部分なので、窓口に聞くのが確実です。
そして、就業規則で許可制になっている場合は、隠すこと自体がリスクになります。手続きの問題ではなく、信頼の問題として扱われるからです。正直なところ、先に相談するほうが結果的に楽だという例のほうが多い印象です。
よくある勘違いを3つ
相談でよく出てくる誤解をまとめて解いておきます。
ひとつ目は「掛け持ちすると保険料が二重にかかる」という誤解です。両方で加入した場合、保険料は合算した標準報酬月額をもとに決まり、各社の報酬額で按分されます。合計は、同じ報酬を1社から受けている人と同じ水準になります。
ふたつ目は「労働時間を合計すれば加入できる」という誤解です。加入の判定は事業所ごとです。どちらも週20時間に届かなければ、どちらでも被保険者になりません。
3つ目は「届出は会社がやってくれる」という誤解です。二以上事業所勤務届は本人が提出します。10日以内という期限もあります。ここを放置すると、標準報酬月額の決定が遅れ、後から保険料の精算が発生します。
これ、正直なところ、制度の説明が分かりにくいことが原因だと思います。事業所ごとに判定するのに、標準報酬月額は合算する。この2つが同居しているので、直感に反するのです。
もうひとつ付け加えるなら、「社会保険」という言葉でひとまとめにされていることも混乱のもとです。厚生年金保険と健康保険は同じ判定で動きますが、雇用保険は別の仕組みで、労災保険はさらに別です。労災保険は、雇われて働いている限り事業所ごとに適用され、本人の手続きも保険料の負担もありません。
制度ごとに「誰が届け出るのか」「事業所ごとか合算か」が違います。表にして自分の状況を当てはめてみると、やるべきことがはっきりします。
| 制度 | 判定の単位 | 届出をする人 |
|---|---|---|
| 厚生年金保険・健康保険 | 事業所ごとに判定し、加入後は報酬を合算 | 二社加入時は本人 |
| 雇用保険 | 原則として主たる事業所の1か所 | 会社(65歳以上の特例は本人の申出) |
| 労災保険 | 事業所ごとに適用 | 手続き不要 |
市場を長く見てきた立場からの観察
在宅と業務委託の市場を20年見てきた立場から言えば、ダブルワークで長く続いている人には共通した特徴があります。
2つの仕事の性質をずらしていることです。時間に縛られる仕事と、時間を自分で決められる仕事。頭を使う仕事と、手を動かす仕事。同じ性質の仕事を2つ重ねると、繁忙期が重なって続かなくなります。
運営者として見てきた限りでは、もうひとつ、副業側を業務委託にしている人ほど、収入の伸び方が違います。雇われる形だと時間が上限になりますが、業務委託は成果で価格が決まるため、同じ時間でも単価を上げる余地があります。
手取りの構造も無視できません。同じ仕事を同じ金額で受けても、間に入る事業者の数によって受け手に残る額が変わります。中間のマージンが乗らない直接取引なら、依頼する側は同じ予算でより多く頼めて、受ける側の手取りは厚くなります。手数料0%という条件が効くのは、限られた時間で働く人ほど、1件あたりの手取りが結果を左右するからです。
数字から読み取れる傾向
職種ごとの単価を並べてみると、副業に向く仕事と向かない仕事の差がはっきり出ます。
向くのは、作業の単位が小さく、納期を自分で調整でき、実績が次の依頼につながる仕事です。文章を書く仕事はその代表で、著述家,記者,編集者の年収・単価相場を見ると、経験の積み上げが単価に反映されやすい構造が読み取れます。
向かないのは、常時の対応が求められる仕事や、まとまった時間の拘束が前提になる仕事です。本業と重なった瞬間に、どちらかを落とすことになります。
もうひとつ、実務で効いてくる観察があります。副業を始めた人が最初の数か月でつまずく理由は、仕事の難しさではなく、受ける量の読み違いです。本業が忙しくなる時期を計算に入れずに引き受けて、納期が重なる。これが最も多い失敗の形です。
対策は単純で、最初の3か月は「これなら余裕で終わる」と思う量の半分から始めることです。受けられる量は、実際に何回か回してみないと分かりません。多く受けて遅れるより、少なく受けて確実に返すほうが、次の依頼につながります。
技術系の仕事は、その中間にあります。ソフトウェア作成者の年収・単価相場のように単価は高い一方で、障害対応のような時間を選べない業務が含まれる場合があります。契約の段階で対応の範囲を決められるかどうかが分かれ目です。
進め方としては、まず自分が各社で加入要件を満たすかを確かめること。次に、両方で満たす場合は二以上事業所勤務届の準備をすること。この2つを済ませてから、収入の組み立てを考えるのが順番として正しいです。副業としてどんな仕事が成り立つのかを広く見ておきたい方は、ビジネス文書検定のように実務でそのまま使える基準を押さえておくと、最初の案件を受けるときの不安が減ります。
よくある質問
Q. ダブルワークをすると厚生年金の保険料は二重にかかりますか?
かかりません。二社とも被保険者になった場合は、それぞれの事業所で受ける報酬月額を合算した額で標準報酬月額を決定し、その保険料を各社の報酬月額に基づいて按分します。合計の保険料は、同じ報酬を1社から受けている人と同じ水準になります。ただし、加入する会社が増える分、手取りは減ります。
Q. 2社の労働時間を合計すれば社会保険に加入できますか?
できません。加入の判定は事業所ごとに行います。週の所定労働時間が20時間以上という要件も、それぞれの会社で見ます。A社15時間、B社15時間で合計30時間でも、どちらも20時間に届かないため被保険者になりません。65歳以上を対象としたマルチジョブホルダー制度は雇用保険の仕組みで、厚生年金とは別です。
Q. 二社で加入したとき、届出は誰が出しますか?
本人が出します。日本年金機構は、事実発生から10日以内に被保険者が「健康保険・厚生年金保険 被保険者所属選択・二以上事業所勤務届」を提出する必要があると示しています。提出先は選択した事業所の所在地を管轄する事務センターまたは年金事務所で、電子申請、郵送、窓口持参から選べます。
Q. 配偶者の扶養に入ったままダブルワークはできますか?
収入の要件を満たす範囲であればできます。日本年金機構が示す被扶養者の収入要件は年間収入130万円未満(60歳以上または障害者は180万円未満)で、給与収入の場合は月額108,333円以下が目安です。収入は2か所の合計で見ます。扶養認定日が令和7年10月1日以降で19歳以上23歳未満の場合は150万円未満に変わっています。
この記事について
編集部
監修:@SOHO編集部
2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを20年運営。編集部が事実確認のうえ公開しています。

この記事を書いた人
朝比奈 蒼@SOHO編集部
ITメディア編集者
IT系メディアで編集・ライティングを担当。クラウドソーシング業界の動向やサービス比較など、客観的な視点での記事を執筆しています。
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