医療機器メーカーで派遣として働く|直接雇われる場合との差と、合う場面


この記事のポイント
- ✓医療機器メーカーで派遣として働くとき
- ✓職場の中で任される範囲
- ✓3年の期間制限や紹介予定派遣など法律で決まっていること
医療機器メーカーの派遣求人を見ていると、「大手医療機器メーカーで営業事務」「未経験OKの組立作業」「薬事申請のサポート」と、職種も時給もばらばらです。気になるのは、派遣という形でメーカーに入ったとき、中で何を任されて、正社員や契約社員として直接雇われる場合と何が違うのか、という点ではないでしょうか。
結論から言うと、医療機器メーカーの派遣は「規制の中で決まった手順を回す仕事」を担う場面では相性がよく、「判断や責任を持つ立場に上がりたい」場面では遠回りになりやすい働き方です。そしてその差の多くは、会社の方針ではなく、労働者派遣法という法律の仕組みから生まれています。これ、知らない人が本当に多いんです。
この記事では、医療機器メーカーの中で派遣社員がどこに置かれ、どう1日が動くのかを整理したうえで、法律で決まっていること、直接雇用との実務上の差、派遣が合う場面、求人票と顔合わせで確かめるべき点を順にお話しします。
医療機器メーカーの派遣求人には、どんな仕事が並んでいるか
まず、実際に求人サイトに並んでいる仕事を見ておきましょう。医療機器メーカーの派遣求人は、大きく分けると次の5つの系統に分かれます。
1つ目は、製造の現場です。カテーテルや注射針、歯科用の器具、補聴器の部品などを組み立てたり、検査したり、梱包したりする仕事です。求人の見出しには「座り作業メイン」「未経験OK」「夜勤専属」といった言葉が並びます。
新着派遣社員製造スタッフ/「東大阪市」/20~40代活躍中/「時給1250円」日払いあり/吉田駅から徒歩14分の医療機器メーカーで組立業務/髪色自由×土日祝休み×未経験OK株式会社ホットスタッフ東大阪 出典: jp.stanby.com
このように、製造系の派遣は時給1,250円から1,500円前後の募集が目立ちます。首都圏の夜勤専属や、4か月目から昇給するといった条件が付くと、もう少し上がります。
2つ目は、営業部門を支える事務です。受注の入力、病院や代理店からの問い合わせ対応、デモ機や貸出機の管理、見積書の作成などを担います。外資系メーカーの日本法人では、英語のメールを読む場面があるため「英語を少し使う事務」として募集されることもあります。時給は地域によって差がありますが、都市部で1,650円から1,900円程度の募集がよく見られます。
3つ目は、規制対応の部門です。安全管理(市販後に集まる不具合情報の入力や整理)、薬事申請の書類づくりのサポート、品質保証部門の文書管理などです。医療機器メーカーならではの仕事で、他業界の事務経験に加えて、手順書に沿って正確に記録を残せる人が求められます。
4つ目は、コールセンターやカスタマーサポートです。家庭用の医療機器を扱うメーカーでは、利用者からの使い方の問い合わせを受ける窓口があり、そのリーダー(SV)を派遣で募集していることがあります。
5つ目は、技術者派遣です。透析装置の機械設計(3D CAD)、透析の通信システムのソフトウェア開発、医療用画像管理システムのネットワーク構築などで、時給2,500円から3,000円前後の募集が並びます。この系統は「ほぼ在宅」「週2日在宅」といった条件が付くことが多いのも特徴です。
在宅勤務について補足しておくと、在宅が可能なのは事務、設計、ソフトウェア開発など、パソコンで完結する仕事に限られます。製造や検査は、決められた設備と清浄度の管理された部屋で行うため、在宅という選択肢はありません。「医療機器メーカーの派遣で在宅」を探すなら、最初から事務系か技術系に絞って検索したほうが早いです。
ソフトウェア開発の経験がある人は、医療機器の分野でも同じ技術が使われる場面が増えています。一般的なソフトウェア開発者の報酬の水準を知っておくと、技術者派遣の時給が妥当かどうか判断しやすくなります。職種全体の相場はソフトウェア作成者の年収・単価相場にまとまっているので、提示された時給と見比べてみてください。
メーカーの中で派遣社員が置かれる場所と、1日の動き
同じ「医療機器メーカーの派遣」でも、どの部門に置かれるかで1日の動きはまったく違います。ここでは、派遣の募集が多い3つの部門について、中で何が起きているかを見ていきます。
製造所:手順書と記録で1日が回る
医療機器の製造所は、国の基準(製造管理と品質管理の基準を定めた省令、いわゆるQMS省令)に沿って運営されています。つまり、作業のやり方は手順書で細かく決まっていて、誰がいつ何を作業したかを記録に残すことが求められる職場です。
朝は、作業着に着替えて、手洗いやエアシャワーを通ってから作業場に入ります。始業時に、その日作るロット(同じ条件で作る製品のまとまり)と数量が伝えられ、手順書を確認してから作業に入ります。途中で部品の不良を見つけたら、自分の判断で直さず、記録して班長や社員に報告します。終業前には、作業記録に数量や不良の数を書き込み、確認のサインをもらって終わります。
人員体制は、社員の班長や工程責任者が1人か2人いて、その下に派遣社員やパートが数人から十数人並ぶ形がよくあります。製造所ごとに、法律で決められた「責任技術者」が置かれていて、品質に関わる判断はその人や品質保証部門が行います。派遣社員が任されるのは、決まった手順で作業をして、正確に記録を残すところまでです。
営業事務:病院と営業担当の間で情報をさばく
営業事務は、営業所や本社の営業部門に置かれます。医療機器の営業担当は、日中の多くを病院で過ごします。手術に使う機器を扱うメーカーでは、担当者が朝から手術室の近くに待機していることもあります。そのため、営業所に残っている事務の人が、病院からの電話や代理店からの注文を受け、営業担当に連絡し、伝票を起こすという役割を担います。
1日の流れとしては、朝に前日分の受注を入力し、午前中は代理店や病院からの在庫確認や納期の問い合わせに対応します。午後は、貸し出している機器の返却予定を確認したり、営業担当が使う見積書や資料を準備したりします。
営業所の規模は、数人から十数人程度のことが多く、事務は1人か2人です。狭い職場なので、誰に何を聞けばよいかはすぐ分かる反面、休みを取るときは代わりの人と調整が必要になります。
安全管理・薬事・品質保証:期限と記録の仕事
安全管理部門では、病院や代理店から寄せられた不具合や副作用の疑いの情報を、社内のシステムに入力し、社員の担当者が評価できる形に整えます。医療機器の不具合の中には、決められた期限内に国へ報告しなければならないものがあるため、入力の遅れがそのまま会社の問題になります。
薬事申請のサポートでは、申請書に添付する試験報告書や英文資料を整理し、社員の担当者がチェックできる状態にします。品質保証部門では、手順書の改訂版を配布し、古い版を回収し、誰がどの版を読んだかを管理する、といった文書管理が中心です。
技術者派遣:設計の記録に合わせて動く
機械設計やソフトウェア開発で派遣される技術者は、開発部門のプロジェクトに入ります。医療機器の開発では、何を作るかを決めた要求の文書、それをどう実現するかの設計の文書、設計どおりにできているかを確かめる検証の記録が、順番につながっていなければなりません。
そのため、1日の中で図面を描いたりコードを書いたりする時間と同じくらい、変更の理由を記録したり、レビューの指摘に回答したりする時間があります。他の業界から来た技術者が最初に戸惑うのは、この記録の量です。「直したらすぐ反映」ではなく、「直す理由を書き、承認をもらってから反映」という順番になります。
チームは、社員のプロジェクトリーダーの下に、社員と派遣の技術者が数人ずつ混ざる形がよくあります。設計の最終的な承認は社員が行い、派遣の技術者は担当部分の設計と、その記録の作成までを担うのが一般的です。
コールセンター・サポート窓口:答えてよい範囲が決まっている
家庭用の血圧計や補聴器、在宅医療で使う機器を扱うメーカーには、利用者や家族からの問い合わせ窓口があります。ここで派遣社員が受けるのは、電池の交換方法や表示の意味といった使い方の質問が中心です。
医療機器ならではの点は、答えてよい範囲が決まっていることです。「この数値は病気ですか」といった診断に関わる質問には答えず、医師への相談を案内します。また、機器の故障やけがにつながった可能性のある問い合わせは、決められた様式で記録して、安全管理部門に回します。SVは、その振り分けが正しくできているかを確認し、応対の記録をチェックする役割です。
どの部門でも、評価や判断をするのは社員で、派遣社員はその前段階の入力や整理を担う、という線引きが基本です。この線引きは、次の章で見る法律の仕組みとも関係しています。
直接雇われる場合との差:法律で決まっていること
ここからは、派遣と直接雇用の差のうち、法律で決まっている部分を整理します。医療機器メーカーに限らない話ですが、メーカーの中での扱われ方を理解するには欠かせません。
雇い主は派遣会社、指示を出すのはメーカー
派遣で働くとき、あなたと労働契約を結ぶのは派遣会社(派遣元)です。一方、毎日の仕事の指示を出すのはメーカー(派遣先)です。つまり、給料を払う会社と、仕事を指示する会社が別々になっています。
この仕組みは、厚生労働省も「臨時的・一時的なもの」を原則とする働き方だと説明しています。
派遣労働という働き方、およびその利用は、臨時的・一時的なものであることを原則とするという考え方のもと、常用代替を防止するとともに、派遣労働者のより一層の雇用の安定、キャリアアップを図るため、労働者派遣法が改正されました 出典: 厚生労働省「平成27年労働者派遣法の改正について」
「常用代替を防止する」とは、つまり、本来は正社員が担う仕事を派遣に置き換え続けることを防ぐ、という意味です。この考え方が、次の期間制限につながります。
同じ部署で働けるのは原則3年まで
労働者派遣法では、同じ派遣社員が、派遣先の同じ組織単位(課やグループ)で働ける期間は、原則として3年までと決められています(第40条の3)。また、派遣先の事業所として派遣を受け入れられる期間も原則3年で、延長するには事業所の過半数労働組合などの意見を聴く手続きが必要です(第40条の2)。
ただし、例外があります。派遣会社に期間の定めなく雇われている「無期雇用派遣」の人、60歳以上の人、終わりが決まっているプロジェクトの業務、産前産後休業や育児休業、介護休業を取る社員の代わりに入る場合などは、この期間制限の対象外です。
医療機器メーカーでは、新製品の立ち上げに合わせた期間限定の事務や、社員の育児休業の代替として派遣を募集することがあります。求人票に「来年3月末までの期間限定」とあるのは、こうした事情があるからです。
「顔合わせ」は面接ではない
派遣の仕事では、就業前にメーカーの担当者と会う「顔合わせ」や「職場見学」が行われることがあります。ここで知っておいてほしいのは、派遣先が派遣社員を選ぶ目的で事前に面接したり、履歴書を送らせたりすることは、紹介予定派遣を除き、してはならないとされている点です(派遣先が講ずべき措置に関する指針)。
つまり、顔合わせは本来、あなたが職場を見て、仕事の内容を確かめるための場です。あなたの側から職場見学を希望することは問題ありません。遠慮せずに、仕事の中身を確かめる場として使ってください。
紹介予定派遣は、最長6か月の「お試し期間」
医療機器メーカーの派遣求人には「紹介予定派遣」と書かれたものがあります。これは、派遣期間が終わったあとにメーカーに直接雇われることを前提にした派遣です。派遣先指針では、紹介予定派遣で同じ人を受け入れる期間は6か月を超えてはならないとされています。
紹介予定派遣では、通常の派遣と違って事前の面接や履歴書の提出が認められています。また、メーカーが直接雇用しなかった場合は、派遣会社を通じて理由を明示するよう求められています。つまり、「なぜ採用されなかったのか」を知る手段が用意されているということです。
待遇は「同一労働同一賃金」のルールで決まる
派遣社員の賃金は、2020年4月から、派遣先の正社員との不合理な待遇差を設けてはならないというルールで決められています(第30条の3)。方法は2つあり、派遣先の社員の待遇と比べて決める「派遣先均等・均衡方式」と、派遣会社が労使協定を結び、同じ地域・同じ職種の一般的な賃金水準以上にする「労使協定方式」です。実際には、多くの派遣会社が労使協定方式を採っています。
また、派遣会社には、派遣料金と賃金の差額の割合(いわゆるマージン率)や教育訓練の内容などを、事業所ごとに情報提供する義務があります(第23条第5項)。派遣会社のウェブサイトに掲載されていることが多いので、登録前に一度見ておくとよいでしょう。
※具体的な待遇差やトラブルで悩んでいる場合は、都道府県労働局の相談窓口や、弁護士に相談してください。
直接雇用との差:実務で効いてくること
法律の仕組みを踏まえたうえで、医療機器メーカーの中で実際に差を感じやすい点を整理します。
任される範囲には、はっきりした天井がある
医療機器メーカーでは、品質や安全に関わる判断をする人が、法律や社内規程で決まっています。製造所の責任技術者、製造販売業者に置かれる総括製造販売責任者、国内の品質業務や安全管理の責任者などです。こうした役割は、会社が責任を持って任命するもので、派遣社員に任せる前提にはなっていません。
その結果、派遣社員が担うのは、入力、整理、決められた手順での作業までになりやすいです。社員であれば、入社数年で「この不具合を報告対象にするかどうか」の一次評価を任されることがありますが、派遣社員がその段階に進むことは多くありません。
病院に出向く仕事は、社員が担うことが多い
営業担当やクリニカルスペシャリスト(手術や検査の場で機器の使い方を支える専門職)は、病院の医師や看護師、臨床工学技士と直接やり取りします。医療機器業界には、医療機器業公正取引協議会が定める公正競争規約があり、病院での立会いや便益の提供には細かなルールがあります。こうした場面での判断が会社の責任に直結するため、病院に出向く仕事は社員の募集が中心です。
一方で、医療機器の保守点検を担うフィールドエンジニアは、派遣で募集されることもあります。点検の手順が決まっていて、報告書で完結する仕事だからです。
教育、評価、昇給の仕組みが別々
社員には、メーカーの社内研修(製品知識、法規制、QMSの教育など)が用意され、人事評価に基づいて昇給や賞与、退職金が決まります。派遣社員の場合、メーカーの業務に必要な教育は受けますが、キャリア全体の教育訓練は派遣会社の役割です(第30条の2)。評価と昇給も、派遣会社との間で決まります。
時給で比べると、事務系の派遣の時給1,800円で月160時間働けば、月の収入は28万8,000円になります。これだけ見ると、同じ仕事の契約社員より高く見えることもあります。ただし、賞与や退職金、住宅手当の有無、交通費の扱い、祝日の多い月に収入が下がることまで含めて、年間で比べることが大切です。
異動と転勤がない、というのは大きな利点
逆に、派遣には直接雇用にない利点もあります。医療機器メーカーの営業職やサービスエンジニアの正社員は、全国の営業所への転勤がある募集が少なくありません。派遣では、就業場所は契約で決まっており、本人の同意なく別の都市へ移ることはありません。業務内容も契約で決まっているため、「来月から営業担当に」といった配置換えもありません。
家庭の事情で転勤ができない、介護や子育てで勤務時間を固定したい、という人にとって、この点は直接雇用より有利に働きます。
私が相談を受けたケースで、こんなことがありました。営業事務の派遣で入った方が、人手が足りないという理由で、営業担当と一緒に病院へ行って機器の説明をしてほしいと頼まれたそうです。本人は断りにくくて悩んでいました。派遣社員が従事する業務の内容は派遣契約で決まっていて(第26条)、それを超える指示は本来受けなくてよいものです。まずは派遣会社の担当者に伝えてもらい、契約の範囲を確かめてもらいました。一人で抱え込まないでください。
派遣が合う場面、合わない場面
ここまでの内容を踏まえて、医療機器メーカーで派遣を選ぶのが合う場面と、合わない場面を整理します。
合う場面1:業界の中を一度見てから決めたい
医療機器メーカーは、外からは中の様子が見えにくい業界です。規制の強さ、記録の細かさ、病院との距離感など、入ってみないと分からないことが多くあります。派遣で数か月から1年ほど働いてみると、自分がこの業界の空気に合うかどうかがはっきりします。特に紹介予定派遣は、6か月以内に双方が見極める仕組みなので、この目的に合っています。
合う場面2:勤務地と時間を固定したい
前の章で触れたとおり、派遣は就業場所と業務内容が契約で決まっています。転勤ができない、残業を月に数時間までに抑えたい、在宅勤務を週2日は入れたい、といった条件がある人は、派遣のほうが条件を守りやすいです。
合う場面3:専門スキルを持った技術者として関わりたい
機械設計やソフトウェア開発のスキルがある人は、技術者派遣で医療機器の開発に関わる道があります。医療機器の設計は、設計の記録や検証の手順が厳密なため、他の業界の設計経験がある人にとっては「医療機器の開発はこう進むのか」という経験になります。こうした経験を積んだあとで、業務委託として開発案件を受ける人もいます。どんな開発の仕事があるかはアプリケーション開発のお仕事で全体像がつかめます。
合わない場面1:医療現場の経験を武器に、営業や専門職に移りたい
看護師や臨床工学技士として病院で働いてきた人が、その経験を活かしてメーカーのクリニカルスペシャリストや営業職に移りたいなら、派遣は遠回りです。病院に出向く仕事は社員の募集が中心だからです。看護師としての報酬の水準と、メーカーの専門職の条件を比べたい場合は、看護師の年収・単価相場で現在地を確認してから、直接雇用の求人と比べてみてください。
合わない場面2:品質や安全管理の責任者を目指したい
医療機器の製造所の責任技術者や、総括製造販売責任者には、学歴と実務経験の年数に関する要件があります。たとえば、高校で工学などの専門課程を修了した人は、品質管理や製造販売後安全管理の業務に3年以上従事すると、総括製造販売責任者の要件の1つを満たします。
派遣で品質保証部門にいた期間が「業務に従事した」経験としてどう扱われるかは、業務の中身と、それを証明できるかどうかにかかっています。責任者を目指すなら、業務内容を具体的に記録しておくこと、そして早い段階で直接雇用に切り替える道を考えておくことをおすすめします。
合わない場面3:同じ部署に長く腰を据えたい
同じ組織単位で働けるのは原則3年です。3年が近づくと、派遣会社から、直接雇用の依頼や別の派遣先の紹介などの雇用安定措置が講じられますが、同じ部署に同じ立場で残り続けることは原則としてできません。長く同じチームで働きたい人は、最初から直接雇用を探すか、無期雇用派遣の形を選ぶかを検討してください。
求人票と顔合わせで確かめること
最後に、医療機器メーカーの派遣求人に応募するとき、求人票と顔合わせで確かめておきたい点をまとめます。
求人票で見るところ
まず、業務内容の書き方です。「一般事務」とだけ書かれている求人より、「受注入力、貸出機の管理、代理店からの納期問い合わせ対応」のように、何をするかが具体的に書かれている求人のほうが、入ってからのずれが少なくなります。
次に、就業場所です。本社なのか、営業所なのか、製造所なのかで、職場の人数も雰囲気も違います。製造所の場合は、クリーンルームでの作業か、立ち作業か座り作業か、夜勤の有無を確認してください。
3つ目は、在宅の条件です。「在宅あり」と書かれていても、最初の3か月は出社、慣れたら週1日から、というように段階的なことがよくあります。
4つ目は、英語の使用頻度です。外資系メーカーでは、社内の報告書や海外本社とのやり取りに英語が出てきます。「英語を少し使う」がメールを読む程度なのか、会議に出るのかで、求められる力がまったく違います。
5つ目は、紹介予定派遣の場合の、直接雇用後の条件です。正社員なのか契約社員なのか、年収の目安、転勤の有無が明示されているかを見てください。
顔合わせで聞くこと
顔合わせでは、あなたから次のような質問をしてみてください。
・この仕事で、判断に迷ったときは誰に相談しますか ・部署の人数と、派遣社員は何人いますか ・前任の方はいますか。いる場合、引き継ぎの期間はありますか ・1日のうち、電話対応やシステム入力はどのくらいの割合ですか ・繁忙期はいつですか。そのときの残業はどのくらいですか
最初の質問は、派遣先で指揮命令をする人が誰かを確かめる意味があります。派遣契約には指揮命令者を定めることになっていますが、実際には複数の社員から指示が来ることがあるからです。
就業後に困ったら
働き始めてから、契約と違う仕事を頼まれる、休憩が取れない、ハラスメントを受けた、といった問題があったら、まず派遣会社の担当者に伝えてください。派遣会社には派遣元責任者が、派遣先のメーカーには派遣先責任者が置かれていて、苦情の処理にあたることになっています。それでも解決しない場合は、都道府県労働局に相談できます。
※未払いの賃金や契約の解除など、金銭や雇用そのものに関わる争いになりそうな場合は、弁護士に相談してください。
運営者の視点から見た、医療機器業界と働き方の選択肢
在宅ワークやフリーランスの市場を20年近く見てきた立場から言えば、医療機器の周辺には、派遣と直接雇用のほかにも関わり方があります。医療機器の添付文書や取扱説明書の翻訳、学会発表用の資料の作成、製品紹介の動画づくり、医療用ソフトウェアの開発の一部などは、業務委託として個人に発注されることがあります。
長く続いている人を見ていると、最初は派遣や契約社員として業界の中を経験し、「この会社のこの部署はどういう資料を必要としているか」を理解したうえで、独立後にその知識を活かしている人が多い印象です。医療機器の規制や記録の文化を知っている人は、外部の人に依頼するときの説明の手間が少ないため、発注する側から見ても頼みやすい相手になります。
また、仲介を通さずに発注者と直接契約できる場では、同じ予算でも発注する側はより多く頼め、受ける側の手取りは厚くなります。手数料0%の直接取引は、金額の大小ではなく、双方に余裕が生まれるという点で意味があります。
派遣か直接雇用かを選ぶときは、「今の自分が医療機器メーカーの中で何を経験したいのか」「その経験を3年後にどう使いたいのか」を先に決めておくと、迷いが減ります。働き方を一人で決めきれないときは、専門家と一緒に整理する方法もあります。キャリア相談の仕事がどんなものかは職場・転職・キャリア相談のお仕事にまとまっているので、相談先を選ぶときの参考にしてください。
派遣という働き方には、あなたを守るためのルールが数多く用意されています。仕組みを知って選べば、派遣は医療機器業界に入るための確かな入口になります。法律はあなたの味方です。
よくある質問
Q. 医療機器メーカーの派遣は未経験でも応募できますか?
製造の組立や検査、営業事務、コールセンターなどは未経験可の募集が多くあります。製造所では手順書と記録に沿って作業するため、細かい作業を正確に続けられることが重視されます。一方、薬事申請のサポートや安全管理の事務は、他業界での事務経験や英語の読解力を求められることがあるので、求人票の応募条件を確認してください。
Q. 医療機器メーカーの派遣で在宅勤務はできますか?
在宅勤務ができるのは、事務、機械設計、ソフトウェア開発など、パソコンで完結する仕事に限られます。製造や検査は、清浄度が管理された設備で作業するため在宅はできません。事務系でも、最初の数か月は出社して業務に慣れ、その後に週1日から2日の在宅を認める形が多いので、条件を顔合わせで確かめてください。
Q. 派遣から医療機器メーカーの正社員になることはできますか?
紹介予定派遣を選べば、最長6か月の派遣期間のあとに直接雇用されることを前提に働けます。通常の派遣でも、同じ部署で3年が近づくと派遣会社が雇用安定措置として直接雇用を依頼することがあります。ただし採用するかどうかはメーカーが決めるため、確実に正社員を目指すなら紹介予定派遣か直接雇用の求人を並行して探すのが現実的です。
Q. 派遣で契約外の仕事を頼まれたらどうすればいいですか?
派遣社員が従事する業務の内容は派遣契約で決まっており、それを超える指示は本来受ける必要がありません。その場で断りにくい場合は、派遣会社の担当者に状況を伝え、派遣先との間で契約の範囲を確認してもらってください。解決しないときは都道府県労働局の相談窓口を利用でき、金銭の争いになりそうな場合は弁護士への相談も検討してください。
この記事について
編集部
監修:@SOHO編集部
2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを20年運営。編集部が事実確認のうえ公開しています。

この記事を書いた人
長谷川 奈津@SOHO編集部
行政書士・元企業法務
企業法務で数多くのフリーランス契約を扱った経験を活かし、フリーランス向けの法律・契約・権利に関する記事を執筆。「法律はあなたの味方です」がモットー。
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