一人親方が損害賠償を求められたとき|備える保険と契約で確かめる点


この記事のポイント
- ✓一人親方が損害賠償を求められたときに
- ✓法律上の責任がどこから生じるのか
- ✓元請との責任の分かれ方
一人親方として現場に出ていると、ある日突然、元請や施主から損害賠償を求められることがあります。「仕上がりに不具合があるので直した費用を払ってほしい」「作業中に隣の家の車に傷をつけた」「工期に遅れたので違約金を差し引く」。言われた金額が大きいと、払わなければならないのか、どこまでが自分の責任なのか、頭が真っ白になってしまいます。
先に押さえておきたいのは、損害賠償の請求を受けたからといって、言われた金額をそのまま払う義務があるとは限らない、という点です。賠償の責任があるかどうか、あるとしてどこまでかは、法律と契約の内容、そして事実関係で決まります。一方で、本当に自分に責任がある場合に備えて、保険と契約で前もって手を打っておくことも大切です。
この記事では、一人親方が損害賠償を求められる主な場面、法律上の責任の根拠、元請との責任の分かれ方、請求を受けたときの対応、契約で確かめる点、備えておく保険、相談先を順に整理します。個別の事案で責任があるかどうかの判断は事情で大きく変わるので、金額が大きい場合や争いになりそうな場合は、弁護士に相談してください。
一人親方が損害賠償を求められる3つの場面
一人親方が損害賠償を求められる場面は、大きく3つに分けられます。
| 場面 | 主な例 | 請求してくる相手 |
|---|---|---|
| 仕事の仕上がりの不具合 | 施工不良、契約で決めた品質に足りない仕上がり、雨漏りや床鳴り | 元請、施主 |
| 第三者への損害 | 作業中に隣家の外壁や車を傷つけた、通行人にけがをさせた、資材を落として物を壊した | 被害を受けた人、元請 |
| 工期の遅れ | 工期に間に合わず、元請や施主に損害が出た | 元請 |
1つ目は、仕事の仕上がりに関する請求です。契約で決めた内容と仕上がりが合っていない場合、元請や施主から、やり直し、報酬の減額、損害賠償を求められることがあります。
2つ目は、作業中に第三者に与えた損害です。現場の外にいる人や物に損害を与えた場合、被害を受けた人から直接請求されることもあれば、元請が先に被害者に賠償し、その分を一人親方に請求してくることもあります。
3つ目は、工期の遅れです。契約に違約金や遅延損害金の定めがあると、遅れた日数に応じた金額を報酬から差し引かれることがあります。
場面によって、責任の根拠になる法律の決まりも、請求してくる相手も違います。次の節から、それぞれの考え方を見ていきます。
損害賠償の責任はどこから生じるか
損害賠償の責任が生じる根拠は、民法では大きく2つあります。「債務不履行」と「不法行為」です。
債務不履行。契約を守らなかった責任
債務不履行とは、契約で約束したことを約束どおりに行わなかったことをいいます。民法は次のように定めています。
債務者がその債務の本旨に従った履行をしないとき又は債務の履行が不能であるときは、債権者は、これによって生じた損害の賠償を請求することができる。 ただし、その債務の不履行が契約その他の債務の発生原因及び取引上の社会通念に照らして債務者の責めに帰することができない事由によるものであるときは、この限りでない。 出典: e-Gov法令検索 民法 第415条
つまり、契約どおりに仕事をしなかったことで相手に損害が出た場合は賠償の責任が生じますが、その原因が一人親方の責任とは言えない事情(たとえば元請の指示や、どうしようもない災害)による場合は、責任を負わないということです。工期の遅れや施工不良の多くは、この債務不履行の問題として扱われます。
賠償の範囲について、民法は、債務不履行によって「通常生ずべき損害」の賠償をさせることが目的だとし、特別な事情による損害は、当事者がその事情を予見すべきであったときに限って請求できると定めています(民法416条)。請求された金額の中に、通常は生じないような損害が含まれていないかは、確かめる価値があります。
不法行為。他人の権利を傷つけた責任
不法行為とは、故意または過失によって他人の権利や利益を傷つけたことをいいます。民法709条は、故意または過失によって他人の権利または法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う、と定めています。作業中に隣家の車を傷つけた、通行人にけがをさせた、といった第三者への損害は、主にこの不法行為の問題になります。契約の相手でない人に対しても責任が生じるのが特徴です。
請負の仕事の不具合。注文者の指図による不具合は責任を負わない
一人親方の多くは、元請から「請負」の形で仕事を受けています。請負とは、仕事を完成させることを約束し、その結果に対して報酬を受け取る契約です。民法は、請負の仕事に不具合があった場合の決まりを定めています。
仕上がりが、種類や品質の面で契約の内容に合っていない場合(契約不適合)、注文者は、やり直し(履行の追完)、報酬の減額、損害賠償、契約の解除を求められます。ただし、民法636条は、その不具合が「注文者の供した材料の性質又は注文者の与えた指図によって生じた」ものであるときは、注文者はこれらを求められないと定めています(請負人がその材料や指図が適当でないことを知りながら告げなかったときは別です)。
たとえば、元請が指定した材料に問題があって不具合が出た場合や、元請の指示どおりに施工した結果として不具合が出た場合は、一人親方は原則として責任を負いません。逆に、指示や材料に問題があると気づいていたのに黙って施工した場合は、責任を問われることがあります。現場で「この材料では不具合が出るかもしれない」と気づいたら、その場で元請に伝え、伝えた記録をメッセージなどで残しておくことが、自分を守ることにつながります。
不具合を知ってから1年以内の通知
民法637条は、注文者が不具合を知った時から1年以内に請負人に通知しないときは、その不具合を理由とするやり直しや減額、損害賠償、解除を求められないと定めています。ただし、引き渡しの時に、請負人が不具合を知っていたか、重大な過失で知らなかったときは、この期間の制限は働きません。
この1年は、引き渡しから1年ではなく、注文者が不具合を「知った時」から1年である点に注意が必要です。また、契約で責任を負う期間を別に定めていることもあるので、自分の契約書の定めを確かめます。
元請と一人親方の責任の分かれ方
第三者に損害を与えた場合、被害者から見ると、一人親方と元請のどちらに責任を問うかが問題になります。
民法715条は、ある事業のために他人を使用する者は、使用される者がその事業の執行について第三者に加えた損害を賠償する責任を負う、と定めています(使用者責任)。一人親方は元請に雇われているわけではありませんが、元請が一人親方の作業を実際に指揮監督していた場合などは、元請もこの使用者責任を問われることがあります。そして同じ条文の3項は、使用者が責任を果たした後に、実際に損害を与えた人に求償(立て替えた分の請求)をすることを妨げないとしています。
実際の現場では、元請が被害者に先に賠償し、その全部または一部を一人親方に求償してくる、という流れがよく見られます。このとき、求償に全額応じなければならないかは、作業の指揮監督の実態、元請の安全管理の状況、契約の定めなどによって変わります。言われた金額をそのまま受け入れる前に、事実関係を整理し、契約書の定めを確かめることが大切です。
建設業法は、建設工事の請負契約の当事者が、契約の締結の際に書面に記載しなければならない事項を定めています。その中には、第三者への損害の負担に関する定めが含まれています。
| 建設業法19条で書面に記載する事項(抜粋) | 一人親方にとっての意味 |
|---|---|
| 工事内容、請負代金の額、着手と完成の時期 | 何を、いくらで、いつまでに行うかの基本 |
| 天災その他不可抗力による工期の変更、損害の負担 | 自分の責任でない事情で遅れたときの扱い |
| 工事の施工により第三者が損害を受けた場合における賠償金の負担に関する定め | 第三者への損害をどちらがどれだけ負担するか |
| 契約の内容に適合しない場合の担保責任や保証保険の措置に関する定めをするときは、その内容 | 不具合の責任を負う期間や範囲 |
| 履行の遅滞その他債務不履行の場合における遅延利息、違約金その他の損害金 | 工期の遅れなどで差し引かれる金額 |
| 契約に関する紛争の解決方法 | 争いになったときの手続き |
契約書がない、または口約束だけで仕事を受けていると、これらの点が決まっていないため、トラブルになったときに不利になりがちです。建設業法の条文は、e-Govの建設業法で確かめられます。
損害賠償を求められたときの対応の手順
実際に損害賠償を求められたときは、慌てて謝罪の言葉とともに支払いを約束してしまわないことが大切です。次の順番で対応します。
1. 事実を確かめて記録する
まず、何が起きたのかを確かめます。不具合や損害の場所、状態、いつ気づいたのか、自分の作業との関係を、写真とメモで記録します。現場に行けるなら、自分の目で確かめます。元請や施主の説明だけで判断しないことが大切です。
2. 請求の内容を書面で受け取る
請求の金額と根拠を、書面かメールで出してもらいます。口頭の請求だけでは、何に対していくら請求されているのかが曖昧になりがちです。修理の見積書や被害の状況の写真など、金額の根拠を示してもらうよう求めます。
3. 契約書と保険を確かめる
契約書や注文書、メッセージのやり取りを読み返し、作業の範囲、指示の内容、責任の期間、第三者への損害の負担の定めを確かめます。加入している賠償責任保険があれば、保険会社にすぐに連絡します。保険会社に相談する前に自分で示談してしまうと、保険金が支払われないことがあるので注意が必要です。
4. 自分の考えを書面で伝える
事実と契約の内容を確かめたうえで、責任を認める部分、認めない部分、その理由を、書面かメールで伝えます。感情的なやり取りにならないよう、事実と根拠を中心に書きます。
5. 合意したら書面に残す
話し合いで解決したら、支払う金額、支払いの方法と期日、これで解決とすること(ほかに請求しないこと)を書面に残します。合意の書面がないと、後から追加で請求されることがあります。
請求を受けたときにやってはいけないこと
損害賠償を求められた直後は、気持ちが動揺していて、後から悔やむ対応をしてしまいがちです。次のことは避けます。
その場で支払いを約束する
現場で強い口調で責められると、早く収めたい一心で「全部払います」と言ってしまうことがあります。口頭の約束でも、後から合意があったと主張される材料になります。謝罪の気持ちを伝えることと、賠償の責任を認めることは別です。「ご迷惑をおかけしたことは申し訳ありません。原因と費用を確かめたうえで、改めてお返事します」と伝え、その場では金額の約束をしないようにします。
自分で勝手に直してしまう
不具合を指摘されたとき、すぐに手直しをしたくなりますが、元の状態を記録する前に直してしまうと、原因が何だったのかを後から確かめられなくなります。手直しをする前に、写真と動画で状態を残し、元請や施主と手直しの範囲と費用の負担を確かめてから作業します。
保険会社に連絡せずに示談する
賠償責任保険に入っている場合、保険会社の了解を得ずに示談すると、保険金が支払われないことがあります。事故が起きたら、まず保険会社に連絡し、対応の進め方を相談します。
連絡を絶つ
請求の額が大きいと、相手からの連絡を避けたくなりますが、連絡を絶つと相手の不信感が強まり、話し合いでの解決が難しくなります。すぐに答えられないときも、「確認中なので○日までに返事をします」と期限を示して連絡を続けることが、解決への近道です。
人にけがをさせてしまったとき
作業中の事故で通行人や施主の家族、他の職人にけがをさせてしまった場合は、物の損害よりも対応を急ぐ必要があります。
最初にすべきことは、けが人の救護です。必要なら救急車を呼び、元請の現場責任者に連絡します。事故の状況によっては、警察や労働基準監督署への連絡が必要になることもあります。現場の状況は、片付ける前に写真で記録しておきます。
人身事故の賠償は、治療費、休業による収入の減少、慰謝料など、金額が大きくなりやすいのが特徴です。賠償責任保険に入っていれば、保険会社が被害者との交渉を支援してくれることがあります。保険に入っていない場合や、金額の見込みが大きい場合は、早い段階で弁護士に相談します。
けがをしたのが元請の現場で働く他の職人の場合、その職人が元請や下請の労働者であれば、その人のけがは勤め先の労災保険で補償されます。そのうえで、事故の原因を作った一人親方に、労災保険で補われない部分の賠償や、国からの求償が及ぶことがあります。扱いは事故の状況によって変わるので、専門家に確かめます。
施主から直接請求されたとき
元請を通して仕事を受けている一人親方が、施主から直接、損害賠償を求められることもあります。施主と一人親方の間には直接の契約がないことが多いので、仕上がりの不具合については、施主はまず契約の相手である元請に請求するのが一般的です。一方で、作業中に施主の家の物を壊した場合などは、施主から不法行為を理由に直接請求されることがあります。
施主から直接連絡を受けたときは、自分だけで対応せず、すぐに元請に報告します。元請と施主の間の契約で、補修の手順や負担が決められていることがあるからです。元請との間でも、施主からの請求をどちらがどのように扱うかを確かめ、施主への回答の内容をそろえておくと、話がこじれずに済みます。
過失相殺と賠償額の予定。請求額が減ることもある
損害が出たことに相手にも落ち度がある場合は、賠償の額が減ることがあります。民法418条は、債務の不履行や損害の発生、拡大について債権者に過失があったときは、裁判所がこれを考慮して、損害賠償の責任とその額を定めると規定しています(過失相殺)。たとえば、元請の段取りの不備が工期の遅れの一因になった場合や、施主が不具合に気づいていたのに放置して被害が広がった場合などは、この考え方が関わってきます。
また、民法420条は、当事者が債務不履行について損害賠償の額を前もって予定できると定め、違約金は賠償額の予定と推定するとしています。契約書に「工期に遅れた場合は1日あたり○円の違約金を支払う」といった定めがあると、原則としてその定めに従って金額が決まります。違約金の定めがある契約を結ぶときは、金額が自分の受け取る報酬に比べて重すぎないか、自分の責任でない遅れの場合はどう扱うかを、契約の前に確かめておくことが大切です。
工期の遅れで請求されたとき
工期の遅れをめぐる請求では、遅れの原因がどこにあったかが大きな分かれ目になります。前の工程の職人の作業が遅れた、元請からの材料の手配が遅れた、設計の変更があった、天候が悪く作業ができなかった。こうした事情による遅れまで、一人親方が責任を負うとは限りません。
建設業法は、契約の書面に、当事者の一方から設計の変更や工事の中止の申し出があった場合の工期の変更や損害の負担、天災その他不可抗力による工期の変更や損害の負担について記載することを求めています。契約にこれらの定めがあれば、それに従って判断します。定めがない場合でも、遅れの原因が自分の責任でないことを示せれば、民法415条のただし書きのとおり、賠償の責任を負わない可能性があります。
そのためにも、工期に影響する出来事があったときは、その日のうちに元請に連絡し、連絡した記録を残しておくことが大切です。「材料の到着が2日遅れたので、完成も2日遅れる見込み」といった連絡を文章で残しておけば、後から遅れの責任を問われたときの根拠になります。
時効。いつまで請求される可能性があるか
損害賠償の請求には、時効や期間の制限があります。不法行為による損害賠償の請求権について、民法724条は、被害者が損害と加害者を知った時から3年間行使しないとき、または不法行為の時から20年間行使しないときに、時効によって消滅すると定めています。人の生命や身体を害した場合は、期間が延びる特則があります。
請負の仕事の不具合については、前の節で見たとおり、注文者が不具合を知った時から1年以内の通知が必要という制限があります。これとは別に、債権一般の消滅時効の決まりもあり、どの期間が当てはまるかは事案によって変わります。古い仕事について請求を受けたときは、期間の制限にかからないかを専門家に確かめる価値があります。
契約を結ぶ前に確かめる点
損害賠償のトラブルの多くは、契約の段階で防げます。仕事を受ける前に、次の点を書面で確かめておきます。
| 確かめる点 | 確かめる内容 |
|---|---|
| 作業の範囲 | どこからどこまでが自分の担当か。他の職人の作業との境目 |
| 材料と指示 | 材料は誰が用意するか。指示に疑問があるときの伝え方 |
| 検査と引き渡し | いつ、誰が仕上がりを確認するか。確認後の不具合の扱い |
| 不具合の責任の期間 | 契約で期間を定めるか。定めない場合は民法の決まりになる |
| 第三者への損害 | 第三者に損害を与えたときの負担の分け方。保険の加入の要件 |
| 違約金 | 工期の遅れの違約金の有無と額。自分の責任でない遅れの扱い |
| 賠償の上限 | 賠償の額に上限を設けるか(報酬の額を上限とするなど) |
| 紛争の解決方法 | 争いになったときの手続き |
賠償の上限は、交渉の余地がある項目です。一人親方が受け取る報酬に比べて、賠償の額が際限なく大きくなるおそれがある契約は、受ける前に相手と話し合う価値があります。相手が応じない場合でも、保険で備えられる範囲を確かめたうえで受けるかどうかを判断します。
契約書の作り方と、発注書に書いてもらうべき項目は、フリーランスを守る「下請法(取適法)」の知識|発注書・契約書の必須項目チェックリストでも整理しています。
報酬から一方的に差し引かれたとき
損害賠償の名目で、報酬から一方的に金額を差し引かれることもあります。企業から業務委託を受ける一人親方は、フリーランス・事業者間取引適正化等法(フリーランス法)の対象になることがあります。
この法律の5条は、一定の期間以上継続する業務委託について、発注する事業者が、受注者の責めに帰すべき事由がないのに報酬の額を減らすことや、受注者の責めに帰すべき事由がないのに給付の内容を変更させたり、受け取った後にやり直させたりして、受注者の利益を不当に害することを禁じています。つまり、一人親方に落ち度がないのに、元請の都合で報酬を減らしたり、無償でやり直しをさせたりすることは、この法律の対象になりうるということです。
どの取引がこの法律の対象になるかは、発注者の規模や業務委託の期間などで変わります。報酬の不当な減額ややり直しの要求を受けたときは、厚生労働省の委託で運営されているフリーランス・トラブル110番で相談できます。法律の概要は厚生労働省のフリーランスの就業環境の整備のページで確かめられます。
備えておく保険。労災では他人への賠償は出ない
損害賠償への備えとして、まず押さえておきたいのは、労災保険の特別加入は自分のけがへの備えであって、他人への賠償は対象外だという点です。一人親方が特別加入していても、作業中に他人の物を壊したり、他人にけがをさせたりした賠償は、労災保険からは出ません。
他人への賠償に備えるのは、民間の賠償責任保険です。一人親方が検討することの多い補償は次のとおりです。
| 補償 | 備える場面の例 |
|---|---|
| 作業中の事故による賠償 | 作業中に資材を落として隣家の車を傷つけた、通行人にけがをさせた |
| 仕事の完成後の事故による賠償 | 引き渡した後に、施工の不備が原因で物が壊れたり人がけがをしたりした |
| 預かった物の損害の賠償 | 作業のために預かった物や、作業の対象の物を壊した |
保険によって、どの補償が含まれるか、どんな場合に保険金が出ないかが大きく違います。特に、仕事の仕上がりそのものの不具合を直す費用(やり直しの費用)は、賠償責任保険の対象外とされていることが多い点に注意が必要です。加入前に、補償の対象と対象外、保険金額、自己負担額を、保険会社や代理店に具体的な場面を挙げて確かめます。
特別加入団体の中には、組合員向けのオプションとして賠償責任保険を用意しているところもあります。元請から賠償責任保険の加入を取引の条件として求められることもあるので、特別加入と合わせて検討するとよいでしょう。
保険を選ぶときに確かめたいこと
賠償責任保険は、商品によって補償の範囲が大きく違います。加入するときに、次の点を保険会社や代理店に確かめておくと、いざというときに「この場面は対象外だった」という事態を防げます。
- 自分の業種と作業が補償の対象に含まれているか(高所作業、解体、塗装など、作業によって対象外になる場合がある)
- 作業中の事故だけでなく、引き渡し後の事故も補償されるか
- 預かった物や作業の対象の物を壊したときの補償があるか
- 1回の事故あたりの保険金額の上限と、自己負担額はいくらか
- 元請が求める補償の水準を満たしているか
- 事故が起きたとき、示談の交渉を支援してもらえるか
保険料の安さだけで選ぶと、必要な場面で保険金が出ないことがあります。自分がよく行う作業で起こりそうな事故を具体的に挙げ、それぞれが補償されるかを確かめてから加入します。
日頃からの記録の残し方
損害賠償のトラブルで、一人親方が不利になりやすい理由の1つは、記録が残っていないことです。元請や施主の言い分に反論しようとしても、根拠となる記録がなければ、話は相手の主張に沿って進みがちです。日頃から次の記録を残しておきます。
| 残す記録 | 残し方の例 |
|---|---|
| 契約の内容 | 注文書、契約書、見積書。口頭で受けた仕事は内容をメッセージで送り返して確認する |
| 指示の内容 | 元請からの指示や変更は、メッセージやメールで受け取るか、受けた指示を文章で送り返す |
| 作業前の状態 | 現場に入った時点の状態を写真で撮る。周りの建物や車も写しておく |
| 作業後の状態 | 仕上がりを写真で撮り、引き渡しの日時と確認した人を記録する |
| 疑問を伝えた記録 | 材料や指示に疑問を感じて伝えたときは、伝えた日時と内容を残す |
特に大切なのが、作業前の状態の写真です。もともとあった傷や汚れが、自分の作業で付いたものと誤解されることは少なくありません。現場に入ったときに数枚撮っておくだけで、こうした誤解を防げます。
起こりがちな場面。元請からの求償を受けた場合
よくある場面として、次のような例を考えてみます。外壁の塗装を請け負った一人親方が、作業中に塗料を飛ばし、隣家の車を汚してしまったとします。元請が隣家に謝罪して車の清掃と修理の費用を支払い、その全額を一人親方の報酬から差し引くと通知してきました。
この場合、まず確かめたいのは、事故の原因です。養生(周りを汚さないための覆い)を誰が担当していたのか、元請から作業の方法について指示があったのか、風の強い日に作業を続けるよう求められていなかったか。元請が養生や作業の段取りを指示していたなら、元請の側にも落ち度があったと言える可能性があります。次に、契約書に第三者への損害の負担の定めがあるか、賠償責任保険に入っているかを確かめます。
保険に入っていれば、保険会社が損害の額を確かめ、支払いを行います。保険に入っていなければ、元請と話し合って負担の割合を決めることになります。いずれの場合も、全額の差し引きにすぐに応じる前に、事実と契約を確かめることが大切です。結論は個別の事情で変わるので、金額が大きいときは弁護士に相談します。
困ったときの相談先
損害賠償をめぐって話し合いがまとまらないときは、ひとりで抱え込まずに相談先を使います。
建設工事の請負契約に関する争いは、国土交通省と都道府県に置かれている建設工事紛争審査会で、あっせん、調停、仲裁の手続きを使って解決を図れます。裁判よりも手続きが簡単で、建設工事に詳しい委員が関わるのが特徴です。手続きや費用は、国土交通省の建設工事紛争審査会のページで確かめられます。
企業から業務委託を受けているフリーランスとしての取引のトラブルは、フリーランス・トラブル110番で相談できます。弁護士による相談を無料で受けられ、和解のあっせんの手続きもあります。
報酬の未払いが重なっている場合は、支払督促などの手続きで回収する方法もあります。手続きの流れと弁護士の費用の目安は、未払い報酬を回収する!弁護士の着手金・成功報酬と支払督促の流れ【2026年最新】で解説しています。
一人で働く人が日頃から整えておきたいこと
在宅ワークや業務委託の市場を長く見てきた立場から言えば、トラブルに強い人ほど、仕事を受ける前の準備に時間をかけています。契約の書面を交わす、指示を記録に残す、作業前と作業後の写真を撮る、保険の補償の範囲を把握しておく。どれも小さな手間ですが、いざ損害賠償を求められたときに、自分の立場を説明する根拠になります。
中間に入る業者を減らして元請や施主と直接取引をすると、同じ発注額でも受け手の手取りは厚くなります。その一方で、契約の条件を自分で確かめ、自分で備える責任も大きくなります。直接取引の良さを生かすためにも、契約と保険の準備は欠かせません。
契約書や報告書、損害の状況を説明する書面を自分で整える力は、トラブルのときに大きな支えになります。文書の書き方を基本から学びたい人は、ビジネス文書検定のような資格も参考になります。業務委託で受けられる仕事の内容は、AIコンサル・業務活用支援のお仕事などで紹介しています。
一人親方が損害賠償を求められたとき、言われた金額をそのまま払う前に、事実、契約、保険の3つを確かめることが大切です。そして、請求を受ける前から契約の書面と保険を整えておけば、万一のときにも落ち着いて対応できます。
よくある質問
Q. 一人親方は元請から求められた損害賠償を全額払わなければなりませんか?
必ずしも全額を払う義務があるとは限りません。賠償の責任があるか、あるとしてどこまでかは、事故の原因、元請の指示や段取り、契約書の定めによって変わります。相手にも落ち度がある場合は額が減ることもあります。請求の根拠を書面でもらい、契約書と保険を確かめたうえで対応し、金額が大きい場合は弁護士に相談してください。
Q. 労災保険の特別加入をしていれば他人への賠償も補償されますか?
補償されません。労災保険の特別加入は、一人親方自身の仕事中や通勤中のけがに備える制度で、作業中に他人の物を壊したり他人にけがをさせたりした賠償は対象外です。他人への賠償には、民間の賠償責任保険で備えます。補償の範囲は保険によって違うので、加入前に具体的な場面を挙げて確かめてください。
Q. 施工の不具合はいつまで責任を問われますか?
民法では、注文者が不具合を知った時から1年以内に請負人に通知しないと、その不具合を理由とするやり直しや損害賠償などを求められないと定めています。ただし、引き渡しの時に請負人が不具合を知っていた場合などは、この制限は働きません。契約で責任の期間を別に定めていることもあるので、契約書を確かめてください。
Q. 元請と損害賠償で話し合いがまとまらないときはどこに相談できますか?
建設工事の請負契約に関する争いは、国土交通省と都道府県の建設工事紛争審査会で、あっせん、調停、仲裁の手続きを使えます。企業から業務委託を受けているフリーランスとしての取引のトラブルは、フリーランス・トラブル110番で弁護士に無料で相談できます。金額が大きい場合や裁判になりそうな場合は、弁護士に直接相談してください。
この記事について
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監修:@SOHO編集部
2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを運営。生成AIで作成した下書きを、一次情報と照らし合わせて確認したうえで公開しています。

この記事を書いた人
@SOHO編集部
フリーランス・在宅ワークの専門メディア
@SOHOは2004年から続く、日本のフリーランス・在宅ワーク向け案件サイトです。記事は生成AIで下書きを作り、数値・固有名・出典を一次情報と照らし合わせる確認の手順を経て公開しています。
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