車なしの地方でも写真の加工・レタッチは撮影なし案件で在宅完結

朝比奈 蒼
朝比奈 蒼
車なしの地方でも写真の加工・レタッチは撮影なし案件で在宅完結

この記事のポイント

  • 地方・車なしでも写真の加工・レタッチは在宅で完結します
  • 撮影同行が含まれる案件の外し方
  • 大容量データの受け渡しで必要な上り速度

結論から書きます。地方在住で車を持っていなくても、写真の加工・レタッチは在宅で成立します。ただし条件が1つあり、「撮影を含まない案件」に絞ることが前提です。

求人サイトで「写真 レタッチ 在宅」と検索すると、それなりの件数がヒットします。ところが中身を読むと、撮影スタジオでのアシスタント業務、出張撮影の同行、フォトグラファー募集といった、明らかに現地に行く必要がある募集が相当数混ざっています。正直なところ、この検索結果の混在ぶりはどうかと思います。求職者が見分けるコストを負っている状態です。

この記事では、その見分け方を最初に示したうえで、車がないと実務のどこで詰まるのか、必要な機材とソフトはどこまで揃えるべきか、最初の1件をどう取るか、単価と年収はどの水準か、という順に整理します。感覚論ではなく、募集要項に実際に書かれている条件と市場の相場をベースに書きます。

市場の現状: 必要な画像点数が増え、レタッチの位置づけが変わった

まず市場を押さえます。ここを理解しておくと、案件が「たまたま見つかるもの」ではなく「構造的に増えている場所を狙って取るもの」に変わります。

EC・SNSの普及で、1商品あたりの画像枚数が跳ね上がった

かつて商品写真といえば、カタログ用に数点あれば足りました。今は違います。1つの商品に対して、モール用のメイン画像、サブ画像を複数、スマートフォン表示用の縦長バナー、SNS投稿用の正方形、広告用のバリエーション。同じ素材から用途別に何点も作る必要があります。

さらに、出店するモールごとに規定が違います。背景は白でなければならない、テキストの占有面積は20%以下、といったルールがモール別に定められている。同じ写真を規定に合わせて作り分ける作業が、そのままレタッチャーの仕事になっています。

この構造変化には特徴があります。1点あたりの単価は下がる傾向にある一方、点数が爆発的に増えているということです。だから、単価の高い作品性の高いレタッチだけでなく、「白背景に切り抜いて規定サイズに整える」といった定型作業の需要が安定して存在します。未経験の入口としては、この定型領域が現実的です。

生成AIが奪った領域と、残った領域

避けて通れない論点なので、はっきり書きます。ワンクリックの背景除去、自動補正、生成塗りつぶしといった機能の進化で、初歩的な作業の一部は確実に機械に置き換わりました。「背景を白く飛ばすだけ」という仕事の単価は、明確に下がっています。

一方で、残った領域もはっきりしています。人物の肌を自然に整える作業、素材の質感を保ったまま色を合わせる作業、複数カットの色調を1つのシリーズとして統一する作業。この種の「判断が要る」作業は、まだ機械任せにできません。自動処理をかけたあとに違和感が出た部分を人が直す、という工程がむしろ増えているという見方もできます。

つまり、これから参入するなら、AIの出力を直せる側に立つ必要があります。ツールの使い方だけを覚えて終わる人は、数年で厳しくなる。逆に、なぜこの色が不自然に見えるのかを言語化できる人は、AIが普及するほど価値が上がります。AIをどう業務に組み込むかという視点はAIコンサル・業務活用支援のお仕事に整理されているので、周辺職種の広がりを知っておくと自分の立ち位置が見えます。

募集の実態を、求人票から読む

実際に出ている募集を見てみます。

プロのレタッチャーとして、撮影済み画像データの修正・加工業務に携わっていただきます。Photoshop、Illustrator等の画像編集ソフトの使用経験が必須で、レタッチャーとしての実務経験3年以上の方を募集しております。テレワーク・在宅勤務が可能です。完全成果報酬制で、依頼する業務量に応じて5,000円からとなります。勤務時間については指定がありません。待遇・福利厚生、加入保険、受動喫煙防止措置事項、試用期間、契約期間については、求人票に記載がない場合... 出典: 求人ボックス

この募集には、在宅レタッチ案件の典型的な特徴が3つ揃っています。第一に「撮影済み画像データの修正・加工」と書かれていること。撮影は含まれません。第二に勤務時間の指定がないこと。成果物で評価される契約です。第三に実務経験3年以上という条件。単価の高い案件ほど経験年数を求める傾向が見られます。

未経験からの入口は、この経験年数の条件がない案件になります。具体的には、EC事業者の商品画像加工、不動産写真の明るさ補正、SNS投稿用の画像作成といった定型作業です。ここで実績を作ってから、人物レタッチや広告案件へ移るのが現実的なルートです。

車がないと実際に詰まる4つのポイント

「在宅なら移動は関係ない」で済ませると不正確なので、詰まる場面を具体的に挙げます。

撮影同行やスタジオ勤務が含まれる案件

最も基本的な話です。募集タイトルが「レタッチ」でも、業務内容に撮影補助が入っているケースがあります。「撮影・カメラマン・フォトグラファー」「結婚式場の写真撮影スタッフ」「撮影スタジオスタッフ」といった語が併記されている募集は、その時点で現地作業が前提です。

見分け方は明快です。業務内容の記述が「撮影済みの画像データを」で始まっているかどうか。この一文があれば、素材は完成した状態で渡されます。逆に「撮影から編集まで一貫して」という表現があれば、現地に行く必要があります。

判断がつかない場合、応募時に確認してください。「業務はデータの受け渡しのみで完結する内容でしょうか」。この一文で解決します。

大容量データの受け渡しと、上り速度という現実的な壁

ここが技術的には最大の関門です。レタッチの素材は重い。

具体的な数字を出します。一眼カメラのRAWデータは1枚あたり25MBから60MB程度。商品撮影で200枚受け取れば、それだけで10GB近くになります。ブライダルの1件分なら30GBを超えることも珍しくありません。

問題は納品時です。レイヤーを保持したPSDファイルは元データよりさらに膨らみます。ここで効くのが上り速度です。上り10Mbpsの回線で10GBを送ると、理論値でも2時間以上かかります。実効速度はさらに落ちるので、半日仕事になることもある。

目安として、上り30Mbps以上を確保できると実務が回ります。光回線が引ければそれが最善ですが、引けない地域では5G対応のホームルーターが選択肢です。契約前に確認すべきは2点。設置予定場所での実効速度と、月間データ容量の上限です。レタッチ業務は月間の通信量が200GBを超えることも普通にあるので、容量無制限を謳っていても混雑時に制限がかかる条件がないかを見てください。

回避策もあります。納品形式をJPEG指定にできないか交渉する、クライアント側のクラウドストレージに直接書き込む運用にする、深夜の時間帯にアップロードを走らせる。この3つで、ほとんどの状況は吸収できます。

物理メディアの郵送が、まだ残っている領域

意外に思われるかもしれませんが、ブライダルや写真館の案件では、SDカードや外付けSSDを郵送するやりとりが今も残っています。理由は単純で、データ量が大きすぎて回線での受け渡しが非現実的な場合があるからです。

車がない場合、ここで詰まります。往路は受け取るだけなので問題ありませんが、復路の発送が発生する。最寄りのコンビニまで徒歩15分、郵便局まで3kmという環境で、案件ごとに発送に出向くのは現実的ではありません。

対策は2つです。1つは、宅配便のウェブ集荷依頼を標準の段取りに組み込むこと。主要な運送会社は自宅までの集荷に対応しています。もう1つは、契約時に「返送の送料と方法」を決めておくこと。着払い伝票を同封してもらう運用にすれば、料金の精算で揉めることもありません。

物理メディアを扱う案件では、紛失時の責任範囲も先に確認してください。※預かったメディアに保存された写真は、当事者にとって代替のきかないデータです。取り扱いの条件は契約書に明記しておくべきです。

機材の調達と、故障したときのリカバリ

地方在住で見落とされがちなのがここです。パソコンやモニターが壊れたとき、都市部なら家電量販店に持ち込めば即日で代替機が手に入ります。近くに店舗がなければ、通販で取り寄せることになり、到着まで数日かかる。

この間、仕事は止まります。締め切りのある案件を抱えているなら、これは致命的です。対策は身も蓋もありませんが、予備を持つこと。メインのデスクトップとは別に、最低限の作業ができるノートパソコンを1台。中古でも構いません。クラウドストレージに作業データを同期しておけば、機材が落ちても作業を継続できます。

外付けストレージのバックアップも同様です。ストレージは必ず壊れます。作業中のデータは、ローカルとクラウドの2箇所に置く。この習慣は、地方在住かどうかに関係なく必須ですが、代替機の入手に時間がかかる環境ではより重要度が上がります。

必要なものを、現実的なラインで揃える

「プロ用の機材を全部揃えてから始める」という進め方は、投資額が大きすぎて挫折します。どこまで必要かを、用途別に切り分けます。

パソコンは、メモリを最優先で見る

レタッチで効くのは、CPUの世代よりメモリ容量です。高解像度の画像を複数レイヤーで扱うと、メモリを一気に消費します。

最低ラインはメモリ16GB。商品画像の切り抜きやSNS用の画像作成であれば、この構成で十分に実務が回ります。人物レタッチやブライダルのように、大量のレイヤーを重ねる作業を想定するなら32GBを目安にしてください。

ストレージはSSDが必須です。作業用に内蔵1TB、素材の保管用に外付けを別途。ここを容量の小さい構成で妥協すると、案件を受けるたびに空き容量の管理に時間を取られます。

新品にこだわる必要はありません。中古の法人向けワークステーションは、同等の性能を半額程度で調達できることが多い。通販で買う場合は、保証期間と初期不良対応の条件を必ず確認してください。地方在住だと、返品のやりとりも郵送になります。

ソフトウェアは、実質的に業界標準が決まっている

募集要項を並べると答えが出ます。ほぼすべてがPhotoshopの使用を前提にしています。Illustratorが併記されることも多い。

Webデザイナー・フォトレタッチャー募集。Webページ制作、広告デザイン、フォトレタッチ、コンサルタント、カメラマン業務など、あなたのスキルを活かせる仕事です。Illustrator・Photoshop経験者歓迎。未経験者からWeb関連業界経験者まで幅広く歓迎します。週休2日制、夏季・年末年始休暇あり。交通費支給、独身寮あり、テレワーク・在宅OK、服装自由など、充実した待遇をご用意しています。 出典: 求人ボックス

無料の代替ソフトで練習を始めるのは合理的です。ただし、案件を受ける段階では業界標準に合わせる必要があります。理由は互換性で、クライアントからPSDファイルが渡され、レイヤー構造を保ったまま返すよう求められる場面が多いからです。ここで「別のソフトを使っているのでレイヤーが崩れます」と言うと、次から声がかかりません。

サブスクリプションの費用は月額3,000円前後が目安。案件を1件受ければ回収できる水準なので、収入が発生する見込みが立った段階で契約するのが合理的です。

モニターとカラーマネジメント

ここは、案件のレベルによって必要度が変わります。

商品画像の切り抜きやサイズ調整が中心なら、一般的なモニターで問題ありません。一方、色の再現性が問われる案件(アパレル、化粧品、食品など)では、色域の広いモニターとキャリブレーション機器が必要になります。自分の画面で正しく見えている色が、クライアントの画面や印刷物で別の色になっていたら、それは修正指示の対象になります。

キャリブレーション機器は2万円台から入手できます。ただし、これは最初に買うものではありません。色の案件を受けるようになってから投資する順序で構いません。

スキルと資格を、費用対効果で並べる

実務で問われるのは、この3つ

第一に、選択範囲を正確に作る技術。髪の毛や透明な素材の切り抜きが自然にできるかどうかで、仕上がりの水準がはっきり分かれます。ここは練習量がそのまま実力になる領域です。

第二に、色を言語化する力。「なんとなく暗い」ではなく「シャドウが持ち上がっていないので立体感が出ていない」と説明できるかどうか。この差は、修正指示を受けたときの対応速度に直結します。

第三に、非破壊編集の習慣。調整レイヤーとマスクで作業を組み立てておけば、後から「やっぱり少し明るく」という指示が来ても数分で対応できます。元画像を直接加工していると、一からやり直しになる。この違いは、案件を重ねるほど効いてきます。

私自身、学習を始めた頃はこの非破壊編集の意味が理解できず、ピクセルを直接いじって作業していました。修正指示が来るたびに最初からやり直していたので、1件にかかる時間が今の倍以上でした。作業手順を組み替えただけで所要時間が半分になったときは、技術より段取りのほうが効くのだと痛感しました。

資格は、必須ではないが用途がある

レタッチ業務に必須の資格はありません。募集要項を見ても、資格を条件に挙げているものはほとんどなく、代わりにポートフォリオの提出を求めるのが標準です。

ただし、資格に意味がないわけではありません。学習の到達度を客観的に測る指標としては機能します。特に未経験からの転職を考えている場合、履歴書に書ける項目があることで書類選考を通りやすくなる場面があります。画像編集ソフトの操作認定試験や、色の知識を扱う検定がそれにあたります。

一方で、クライアントとのやりとりで実際に効くのは、文章力のほうです。修正指示を正しく理解し、対応内容を過不足なく報告する。この往復がスムーズな人は、技術が同程度でも継続率が明確に高い。ビジネス文書の型を体系的に押さえるならビジネス文書検定の範囲が実務と重なります。

なお、まったく別方向のキャリアとして技術職を検討する場合、CCNA(シスコ技術者認定)のような技術資格は取得後の実務経験とセットでなければ効きません。資格そのものが仕事を連れてくる領域ではない、という点はレタッチも技術職も同じです。

最初の1件を取るまでの、具体的な手順

ここが最も詰まりやすいところなので、順番に書きます。

ポートフォリオは、Before/Afterの3点セットで作る

未経験者のポートフォリオでよくある失敗は、完成品だけを並べることです。レタッチは「元がどうで、どう変えたか」が価値なので、完成品だけ見せられても発注側は判断できません。

作るべきは、Before/Afterのセットです。それも、次の3系統を揃えてください。1つめ、商品の切り抜きと白背景処理。2つめ、人物の肌と明るさの調整。3つめ、複数カットの色調統一。この3つで、依頼側が知りたい能力はおおむねカバーできます。

素材は、フリー素材サイトの写真で構いません。「自分で撮影した写真がないと作れない」と考えて止まってしまう方がいますが、車がなくて撮影に出られない状況では、その前提自体が足かせになります。加工技術を見せるのが目的なので、素材の出所は問題になりません。ただし、素材の利用規約は必ず確認してください。

各作品に、何を意図してどう処理したかを2行で添える。これがあるだけで、他の応募者と差がつきます。発注側は、技術より説明できるかどうかを見ています。

応募文には、稼働条件を先に書く

地方・車なしという条件は、隠さず先に書いてください。「完全在宅での稼働を希望します」「データの受け渡しはオンラインで対応します」と明記する。

条件を書くと不利になると思われがちですが、実際は逆の傾向が見られます。発注側が最も避けたいのは、話が進んでから条件が合わずに白紙になることです。条件が明確な応募者のほうが、発注の計画を立てやすい。

あわせて、回線速度を数値で書くのは有効です。「上り100Mbpsの光回線を使用しており、大容量データの受け渡しに対応できます」。この一文で、大容量案件の懸念が消えます。

テスト課題の扱いには、線引きが要る

選考でテスト課題が出ることがあります。これ自体は正当な選考方法です。ただし、明らかに実案件そのものを無償でやらせようとするケースが混ざっています。

線引きの基準はシンプルです。3点程度までのサンプル加工なら選考の範囲、それを超える点数や、納品して即座に使える形での提出を求められたら、報酬の有無を確認すべきです。「作業量が多いので、有償でお受けする形は可能でしょうか」と聞いて態度が硬化する相手とは、契約後も揉めます。

在宅ワークを未経験から立ち上げる全体の手順は在宅ワークを未経験から始める方法|必要なスキルと準備【2026年版】にまとまっているので、レタッチに限らず何から着手するか迷っている段階なら先にこちらを読むほうが早いです。

単価と年収の目安

数字を整理します。

案件タイプ 単価の目安 特徴
商品画像の切り抜き・白背景 1点 50円〜300円 点数が多く継続しやすい。単価は下落傾向
人物レタッチ(一般) 1点 500円〜2,000円 判断が要る。経験で単価が伸びる
広告・作品性の高いレタッチ 1点 3,000円〜15,000円 実務経験を求められることが多い
時給制の在宅スタッフ 時給 1,300円〜2,000円 稼働が読める。派遣・準委任契約が中心

未経験からの入口は、商品画像の定型作業です。1点100円の案件でも、慣れて1点3分で処理できるようになれば時給換算で2,000円相当になります。逆に、慣れないうちは1点15分かかって時給400円相当ということも起こります。単価表を見るときは、処理速度とセットで考えてください。

年収の水準としては、副業で週10時間の稼働なら年50万円前後、専業でフルタイム相当なら250万円から400万円というレンジが現実的です。作品性の高い案件を継続的に受けられる層は、これを上回ります。

参考までに、在宅で完結する他職種の水準も見ておくと自分の位置が掴めます。技術職はソフトウェア作成者の年収・単価相場、文章系は著述家,記者,編集者の年収・単価相場にデータがまとまっています。

手取りの話も避けずに書きます。同じ月10万円の案件でも、仲介手数料が20%差し引かれる経路なら手取りは8万円。年間24万円の差です。手数料0%で直接契約できる経路を持っているかどうかは、単価交渉より効く場合があります。

保険と税金についても触れておきます。業務委託で働く場合、会社の社会保険には入らず、国民健康保険と国民年金に自分で加入します。制度の詳細は日本年金機構で確認できます。確定申告の要否や経費として認められる範囲は国税庁の公表資料が一次情報です。機材やソフトのサブスクリプション費用は経費として扱える性質のものなので、購入時の記録は残しておいてください。

受注から納品までの工程を、標準化する

案件の取り方より、受けたあとの進め方で差がつきます。ここが雑だと、単価の高い案件を取っても時間あたりの収益が落ちる傾向が見られます。

着手前に確定させる5項目

第一に、納品形式です。JPEGかPSDか、色空間はsRGBか別の設定か、解像度と長辺のピクセル数はいくつか。ここを確認せずに進めて、納品後に全点やり直しになる事故が起こります。

第二に、点数と締切です。「200点」と言われた案件が、実際には撮影のバリエーション込みで350点だった、というずれは普通に起きます。着手前に実データの点数を数えてください。

第三に、参考となる仕上がりの基準です。過去の納品物や、掲載中の既存画像を1点もらうだけで、方向性の食い違いがほぼ消えます。

第四に、修正の範囲です。何を修正と呼ぶのか。色味の微調整は修正で、被写体の差し替えは追加作業。この線引きを先に共有しておきます。

第五に、素材の受け渡し方法です。前述のとおり、上り速度が実務のボトルネックになります。クラウドストレージの共有フォルダに直接書き込む運用にできるなら、そのほうが往復が減ります。

修正回数の上限を、先に決める

修正が無制限だと前提すると、赤字案件が生まれます。実務では「初稿後の修正は2回まで、それ以降は別途お見積り」といった条件を見積書に書いておくのが標準的な対応です。

強い言い方に感じるかもしれませんが、実際は逆の効果があります。回数が決まっていると、発注側は修正指示をまとめて出すようになる。結果として、細かい指示が何往復も続く状態が減ります。正直なところ、上限を書いていない見積書のほうが、双方にとって不幸な結果になりやすいという印象があります。

ファイル名と版の管理

地味ですが、継続受注に最も効く部分です。ファイル名の付け方をクライアントの指定に合わせること。指定がない場合でも、自分の中でルールを固定すること。

作業中の版は日付と連番で管理し、納品したものは別フォルダに隔離する。これをやっていないと、「先週納品したものをもう一度送ってください」という依頼に即答できません。逆に、即答できる相手は、それだけで次も指名されます。

契約と権利まわりで、確認しておくこと

著作権と、ポートフォリオへの掲載可否

レタッチした画像の権利関係は、案件によって扱いが違います。多くの商用案件では、納品と同時に成果物の利用権が発注側に移る形で契約されます。問題になりやすいのは、ポートフォリオへの掲載可否のほうです。

守秘義務のある案件では、加工前後の画像を自分の実績として公開できません。未公開の新商品や、人物が写っている素材は特にそうです。契約書に掲載の可否が書かれていない場合は、着手前に確認してください。掲載してよいかどうかで、その案件が実績として使えるかが変わります。

人物写真を扱う場合は、肖像権の観点も加わります。加工後の画像を自分の判断で公開することは、原則としてできないと考えておくのが安全です。

支払条件と、報酬未払いへの備え

金額と支払日は、必ず着手前に文字で残してください。チャットのやり取りでも構いません。口頭だけの合意は、揉めたときに何も証明しません。

継続的な業務委託にあたる取引では、発注する側に条件を明示する義務があり、報酬の支払期日についても定めがあります。取引条件の考え方は公正取引委員会が公表しているので、交渉の根拠として使えます。

フリーランスとして働く方と発注事業者との取引に関する法令の考え方は、公正取引委員会のサイトで公表されています。 出典: 公正取引委員会

実務上の備えとしては、初回取引の金額を小さくすることが有効です。いきなり大量の点数を受けるのではなく、少数で一度回してみる。支払いが約束どおり行われるかを確かめてから、量を増やす。この順番を守るだけで、大きな未払いを踏む確率は下がる傾向が見られます。

データから見える、この職種の立ち位置

在宅で完結する職種を横並びに置くと、レタッチには独特の位置づけがあります。

参入の敷居は中程度です。ソフトの基本操作は数週間で覚えられる一方、仕上がりの質で差がつくため、実力の幅が広い。この構造は、アプリケーション開発のお仕事のような技術職と似ています。ただし、技術職が体系的な学習に年単位を要するのに対し、レタッチは実務をこなしながら技術を上げていける点が違います。

もう1つの特徴は、成果物が視覚的に評価されることです。実績を証明するのに職歴書は要らず、作品を見せれば済む。これは未経験者にとって強い利点です。前職が何であれ、作れるものが良ければ受注できます。

一方で警戒すべき点もあります。定型作業の単価は今後も下がり続ける可能性が高い。自動化の余地が大きい領域だからです。長く続けるつもりなら、単純な加工から「何をどう見せるか」を判断する領域へ、早めに軸足を移す必要があります。マーケティング視点を含む職域の広がりはAI・マーケティング・セキュリティのお仕事に整理されているので、隣接領域を把握しておくと次の一手が見えます。

20年この市場を運営してきた立場から見ていて、長く仕事が続いている人には共通点があります。技術の高さを前面に出していないのです。前に出しているのは、「この人に頼むと、修正のやりとりが減る」という状態をつくること。初回に確認事項をまとめて送ってくる、指示の解釈がずれたときに早い段階で聞いてくる、納品時に処理内容を1行添えてくる。この積み重ねが、翌年も指名される理由になっています。

もう1点、運営者として見てきた限りで確かなことがあります。中間マージンが乗らない直接の取引では、依頼する側は同じ予算で点数を増やせて、受ける側は同じ作業で手元に残る額が厚くなります。これは金額の多寡の話ではなく、関係の質の話です。手数料が抜かれない分、依頼者は「この分もお願いできますか」と言いやすくなり、受け手は「その範囲ならこう進めます」と応えやすくなる。長く続いている組み合わせを観察すると、この往復が例外なく成立しています。

そのやりとりの中で、住んでいる地域や移動手段が話題になることは、まずありません。話題になるのは、データが期日どおりに揃うかどうか。地方で在宅の仕事を組み立てる生活面の実際は田舎で在宅ワーク|地方移住×リモートワークのリアルと始め方に、作業環境の整え方は在宅ワークの集中力アップ|ポモドーロ以外に効く7つのテクニックにそれぞれ具体策がまとまっています。条件を整えたうえで、最初の3点のポートフォリオを作るところから始めれば、入口は開きます。

よくある質問

Q. 未経験でも写真のレタッチ案件は受けられますか?

受けられます。ただし実務経験3年以上を条件とする案件は避け、商品画像の切り抜きや白背景処理といった定型作業から入るのが現実的です。応募にはBefore/Afterのポートフォリオが必須で、商品の切り抜き、人物の肌と明るさ調整、複数カットの色調統一の3系統を揃えると判断されやすくなります。素材はフリー素材で構いません。

Q. どのくらいの通信環境が必要ですか?

上り30Mbps以上が目安です。RAWデータは1枚25〜60MB、200枚受け取れば10GB近くになり、納品時のPSDはさらに膨らみます。上り10Mbpsだと10GBの送信に理論値でも2時間以上かかります。光回線が引けない場合は5Gホームルーターを検討し、設置場所の実効速度と月間データ容量の上限を契約前に確認してください。

Q. Photoshopは必ず契約しないといけませんか?

練習段階は無料ソフトで構いませんが、案件を受ける段階では業界標準に合わせる必要があります。クライアントからPSDが渡され、レイヤー構造を保って返すよう求められる場面が多いためです。費用は月額3,000円前後で、案件を1件受ければ回収できる水準なので、収入の見込みが立った時点で契約するのが合理的です。

Q. レタッチの単価相場はどのくらいですか?

商品画像の切り抜きは1点50〜300円、一般的な人物レタッチは1点500〜2,000円、広告など作品性の高い案件は1点3,000〜15,000円、時給制の在宅スタッフなら1,300〜2,000円が目安です。単価表は処理速度とセットで見てください。1点100円でも3分で処理できれば時給換算2,000円相当になります。

この記事について

@SOHO
編集部

監修:@SOHO編集部

2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを20年運営。編集部が事実確認のうえ公開しています。

公開:2026年7月12日最終更新:2026年8月7日
朝比奈 蒼

この記事を書いた人

朝比奈 蒼@SOHO編集部

ITメディア編集者

IT系メディアで編集・ライティングを担当。クラウドソーシング業界の動向やサービス比較など、客観的な視点での記事を執筆しています。

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