後任が仕事をできないと感じたときに見直す、引き継ぎの資料と手順

@SOHO編集部
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後任が仕事をできないと感じたときに見直す、引き継ぎの資料と手順

この記事のポイント

  • ✓引き継ぎ中に後任が仕事をできないと感じたら
  • ✓引き継ぎの資料と手順を見直すと改善の糸口が見つかります
  • ✓後任が止まっている場所の見つけ方

引き継ぎの期間に入ったのに、後任が何度説明しても同じところでつまずく。資料を渡したのに、聞いてくる内容が毎回同じ。そんな状況が続くと、「この人は仕事ができないのでは」と感じてしまうのは無理もありません。退職日や異動日は決まっているので、焦りといらだちが募ります。

けれども、引き継ぎがうまくいかない原因は、後任の能力だけにあるとは限りません。前任者にとっては当たり前の判断や、頭の中にしかない例外の対応が、資料から抜けていることがよくあります。この記事では、後任が仕事をできないと感じたときに、本人を責める前に見直したい引き継ぎの資料と手順を、具体的な点検の方法とあわせて整理します。作業を一覧にして渡す方法として、Pinatecaのようなボードで仕事を管理する道具を使うやり方にも触れます。

「後任が仕事をできない」と感じる場面を分けて考える

「仕事ができない」という言葉は、実際にはいくつもの違う状況をまとめて指しています。対処を考える前に、いま起きていることがどれに当たるのかを分けてみると、打つ手が変わります。

起きていること 考えられる原因 まず確かめること
同じ質問を何度もする 資料に書かれていない、書かれているが見つけられない 資料のどこに答えがあるか、後任が知っているか
手順は覚えたのに判断で止まる 判断の基準が伝わっていない 前任者がどんな基準で決めていたかを言葉にしたか
作業が遅い 慣れていない、道具の使い方を知らない 前任者が使っていた近道やひな型を渡したか
勝手に進めてしまう 確認が必要な場面を知らない 「ここは必ず確認する」を明示したか
説明を聞いてくれない 説明の量が多すぎる、すでに知っていると思っている 説明の順番と量、相手の経験を確かめたか

この表のうち、多くは「後任が知らないこと」か「前任者が伝えていないこと」に原因があります。後任の経験や向き不向きの問題がまったくないわけではありませんが、引き継ぎの期間中にできることは、伝え方と資料を直すことです。

とくに見落としやすいのは、「勝手に進めてしまう」と「説明を聞いてくれない」の2つです。経験の長い人が後任になると、これまでの職場のやり方で進めようとすることがあります。本人は良かれと思って進めているので、「この職場では、ここは必ず確認する」という線引きを明示しないと、同じことが繰り返されます。

引き継ぎがうまくいかない原因は資料と手順にあることが多い

後任が仕事をできないように見えるとき、引き継ぎの側でよく見られる原因を5つ挙げます。自分の引き継ぎに当てはまるものがないかを確かめてみてください。

原因1:資料が前任者のメモのままになっている

前任者が自分のために書いたメモは、前任者が読めば分かるように書かれています。略語や社内の呼び名、「いつもの」「例の件」といった言葉は、後任には意味が通じません。資料を書いた本人は全部書いたつもりでも、後任には読み解けない資料になっていることがよくあります。

原因2:手順だけで、判断の基準が書かれていない

「請求書を作る」という手順は書かれていても、「どの取引先には月末締めで、どの取引先には20日締めで出すのか」「金額が合わないときは誰に聞くのか」といった判断の基準が書かれていないことがあります。手順は画面の操作を追えば覚えられますが、判断は理由を知らないとできません。後任が止まるのは、多くの場合この判断の場面です。

原因3:月に1回や年に1回の作業が抜けている

引き継ぎの期間が1か月なら、その間に一度も出てこない作業があります。四半期ごとの報告、年に1回の契約の更新、決算の時期だけの資料作りなどです。こうした作業は、前任者も普段は意識していないので、資料から抜けやすくなります。

原因4:一度に説明する量が多すぎる

期限が迫っていると、前任者は短い期間に多くのことを伝えようとします。けれども、人が一度に覚えられる量には限りがあります。1日に何時間も説明を続けると、後任は説明を聞いた事実だけが残り、中身は残りません。「何度言っても初めて聞いたような反応をする」のは、説明の量と順番に原因があることも少なくありません。

原因5:任せる段階を飛ばしている

説明を聞いただけで、仕事ができるようになる人はいません。説明を受け、前任者がやるのを見て、自分でやってみて、直してもらう、という段階を経て、ようやく一人でできるようになります。期限が迫ると、この段階を飛ばして「説明したからできるはず」と考えてしまいがちです。

後任がどこで止まっているかを確かめる方法

原因を確かめるには、後任が実際にどこで止まっているかを知る必要があります。ここで大切なのは、後任を責めずに、止まっている場所を一緒に探すことです。

作業を声に出しながらやってもらう

後任に作業をやってもらうときに、「いま何をしているか」「次に何をしようとしているか」を声に出してもらうと、どこで迷っているかが分かります。手が止まった場所が、資料や説明で抜けていた場所です。

質問をメモに残してもらう

後任に、作業中に出てきた疑問をメモに書きためてもらい、1日の終わりなどにまとめて答える方法も効果的です。その場で何度も声をかけられるより、前任者も自分の作業を進めやすくなります。書きためた質問は、そのまま資料に足すべき内容の一覧になります。

同じ質問が出たら、資料の側を直す

同じ質問が2回出たら、それは後任の覚えが悪いのではなく、資料に答えがないか、答えが見つけにくい場所にあるかのどちらかです。質問に答えたら、その答えを資料に書き足し、「次からは資料のここを見てください」と伝えます。こうすると、前任者がいなくなったあとも、後任は資料で自分で答えを探せるようになります。

後任の経験を聞いておく

後任がこれまでどんな仕事をしてきたかを聞いておくと、説明の仕方を変えられます。同じ事務の仕事でも、前の職場で使っていた道具や手順が違えば、言葉の意味が食い違うことがあります。経験のある人には、「前の職場との違い」を中心に説明すると、話が早く伝わります。

引き継ぎ資料を見直すための点検表

資料を見直すときは、次の点検表を使うと、抜けている項目を見つけやすくなります。

点検する項目 確かめること
業務の一覧 毎日、毎週、毎月、毎年の作業がすべて並んでいるか
業務の目的 何のための作業か、誰が結果を使うかが書かれているか
手順 画面の名前やボタンの名前まで書かれているか
終わりの確認 作業が終わったと判断する基準が書かれているか
判断の基準 迷う場面で、どう決めていたかが書かれているか
例外の対応 いつもと違うことが起きたときの対応が書かれているか
関係者 社内外の相手の名前、連絡先、連絡の手段が書かれているか
進行中の案件 いまどこまで進んでいて、次に何をするかが書かれているか
保存場所 ファイルや資料がどこにあるかが書かれているか
確認が必要な場面 必ず上司や前任者に確認する場面が明示されているか

この中で、とくに抜けやすいのが「終わりの確認」と「判断の基準」と「確認が必要な場面」の3つです。

「終わりの確認」は、たとえば「請求書を送ったら、取引先から受け取りの返事が来たことを確かめて、管理表の状態を『送付済み』に変える」というように、作業が完了したと判断できる状態のことです。これが書かれていないと、後任は途中で作業を止めてしまったり、確かめずに次に進んでしまったりします。

「確認が必要な場面」は、後任が勝手に進めてしまう問題を防ぐために欠かせません。「金額が○○円を超える場合」「新しい取引先との初めての取引」など、具体的な条件で書いておくと、後任は迷わずに確認できます。

資料を見直すときは、前任者が自分で読み返すより、後任に読んでもらい、分からない言葉に印を付けてもらうほうが効果的です。前任者にとっては分かりきった言葉ほど、自分では気づけないからです。

1つの業務の書き方の例

点検表の項目を、実際の業務に当てはめるとどうなるかを、取引先への請求書の発行を例に示します。資料を直すときの見本にしてください。

項目 書き方の例
業務名 取引先への請求書の発行(毎月)
目的 当月に納品した分の代金を取引先に請求する。経理担当が入金の確認に使う
時期 毎月25日までに発行し、月末までに送る
手順 販売管理の画面で「請求書作成」を開き、当月の納品分を選んで作成する。PDFで保存し、取引先ごとのフォルダに入れる
終わりの確認 取引先から受け取りの連絡が来たら、管理表の状態を「送付済み」に変える
判断の基準 取引先ごとに締め日が違う。A社は20日締め、それ以外は月末締め
例外の対応 納品が月をまたいだ場合は、営業担当に請求月を確認する
確認が必要な場面 金額が前月と大きく違う場合と、初めての取引先の場合は、発行前に上司に確認する
関係者 営業担当、経理担当、各取引先の経理の窓口
保存場所 共有フォルダの「請求書」の下に年月ごとのフォルダ

この例のように、「手順」の行だけでなく、「判断の基準」「例外の対応」「確認が必要な場面」を書くことで、後任は迷ったときに資料を見て自分で判断できるようになります。

最初からすべての業務をこの形で書くのは大変なので、まずは後任が止まっている業務から書き直すのがおすすめです。止まっている業務は、資料に足りないものがはっきりしているので、短い時間で効果が出ます。

業務の種類ごとに後任がつまずきやすい場面

後任がつまずきやすい場面は、業務の種類によって違います。自分の業務に近いものを参考に、資料に足すべき内容を考えてみてください。

経理や請求の業務

経理や請求の業務では、取引先ごとの決まりごとが多く、後任がつまずきやすくなります。締め日や支払いの条件、請求書の宛名の書き方、紙で送るか電子で送るかなど、取引先ごとの違いを一覧にしておくと、後任は1件ずつ確かめながら進められます。金額の誤りは取引先との関係に直接響くので、確認が必要な場面をとくに丁寧に書いておきます。

営業事務や受発注の業務

営業事務では、社内の複数の担当者とやりとりしながら進める作業が多く、「誰に何を頼めばよいか」で後任が止まりがちです。作業ごとに、社内の誰とやりとりするのか、その人の役割は何かを書いておくと、後任は迷わずに声をかけられます。社内の呼び名や略語は、一覧にして意味を書いておきます。

総務や庶務の業務

総務や庶務の業務は、年に1回や不定期の作業が多いのが特徴です。社内の行事の準備、備品の棚卸し、契約の更新など、引き継ぎの期間中に出てこない作業が多くあります。年間の予定表を作り、どの月に何があるかを示しておくと、後任は時期が来る前に準備を始められます。

問い合わせの対応の業務

社外からの問い合わせに答える業務では、よく来る質問と答え方の例、答えられない質問を誰に回すかが分からないと、後任は返事を出せずに止まってしまいます。よく来る質問を一覧にし、答え方の例を添えておくと、後任はそれを見ながら返事を書けます。過去の問い合わせとやりとりの記録を、後任が読める場所に残しておくことも大切です。

「やって見せる、やってもらう、任せる」の3段階に戻す

資料を直したら、次は進め方を見直します。説明だけで終わらせず、段階を踏んで任せていくことが大切です。

段階1:前任者がやって見せる

まずは、前任者が実際に作業をするところを後任に見てもらいます。このときは、手を動かしながら「なぜこうするのか」を言葉にして説明します。手順だけでなく、判断の理由を伝えることが、後任が一人で判断できるようになるための土台になります。

段階2:後任にやってもらい、前任者が横で見る

次に、後任に作業をやってもらい、前任者は横で見守ります。迷ったときや、間違えそうになったときに声をかけます。このとき、すぐに答えを言うのではなく、「資料のどこに書いてあるか」を一緒に探すようにすると、後任は資料の使い方を覚えます。

段階3:後任に任せ、終わってから確かめる

最後に、後任に一人で作業をしてもらい、終わってから前任者が結果を確かめます。間違いがあれば、どこで間違えたかを一緒に振り返り、必要なら資料を直します。この段階で問題なくできるようになれば、その作業の引き継ぎは完了です。

作業ごとに段階を記録する

この3段階は、作業ごとに進み具合が違います。毎日の作業はすぐに段階3まで進みますが、月に1回の作業は段階1で終わってしまうこともあります。作業ごとに、いまどの段階にいるかを一覧にして記録しておくと、引き継ぎの残りがどれくらいあるかが一目で分かります。上司に進み具合を報告するときにも、この一覧がそのまま使えます。

作業をボードで一覧にして渡す方法

引き継ぎの資料は、文書のファイルで渡すのが一般的です。けれども、作業の数が多い場合や、進行中の案件が多い場合は、文書だけだと「いま何が残っているか」が見えにくくなります。そこで役に立つのが、作業を1枚ずつのカードに分けて、ボードの上で管理する方法です。

カードとボードで管理するとは

カードとボードの管理とは、1つの作業を1枚のカードにして、「未着手」「前任者が対応中」「後任が対応中」「完了」のような列に並べる方法です。カードを列から列へ動かすことで、作業の進み具合が一目で分かります。前の節で紹介した3段階も、「見せた」「やってもらった」「任せた」の列にして管理できます。

カードには、手順や判断の基準、関係者の連絡先を書き込めるので、引き継ぎ資料の内容を作業ごとに分けて持たせられます。後任は、いま取りかかっている作業のカードを開けば、必要な情報にすぐたどり着けます。

月に1回や年に1回の作業を見落とさない

カードに期限を付けてカレンダーの形で表示できる道具なら、月に1回や年に1回の作業も、時期が来たときに後任の目に入ります。引き継ぎの期間中に一度も出てこない作業ほど、期限つきのカードにして残しておく価値があります。

質問とやりとりをカードに残す

カードごとにコメントを残せる道具なら、後任の質問と前任者の答えを、その作業のカードの中に残せます。前任者がいなくなったあとも、後任は過去のやりとりを読み返して、同じ疑問の答えを探せます。

使える道具の例

こうした使い方ができる道具の1つが、Pinatecaです。公式サイトによると、カンバン、ガント、カレンダー、リストなど8種類のボードとチャットが最初から使え、5人まで無料で始められます。カードごとにコメントを残せるので、引き継ぎの質問と答えを作業のカードの中に残せます。月に1回の作業は期限を付けてカレンダーのボードで見られるようにし、引き継ぎの進み具合はカンバンのボードの列で示す、という使い分けもできます。Trelloを使っている職場なら、エクスポートしたファイルを読み込んで、ボードやカードを移せると案内されています。Pinatecaは、@SOHOを運営する株式会社ライフスケープが開発・提供しています。

引き継ぐ業務に、社外からの問い合わせや申し込みを受ける窓口が含まれる場合は、受け口そのものを共有の形にしておくと切り替えが楽になります。たとえばHalictは、フォームで受け付けた回答を1件ごとに担当と状況つきで管理し、同じ画面から返信まで送れる道具で、無料から始められます。担当を前任者から後任に付け替えれば、過去のやりとりも含めて窓口を渡せます。Halictも、@SOHOを運営する株式会社ライフスケープが開発・提供しています。

道具を新しく使う場合は、引き継ぎの直前に導入すると、後任は業務と道具の使い方を同時に覚えることになり、かえって負担が増えます。導入するなら、引き継ぎの期間の最初に前任者がカードを作り、後任と一緒に使い始めるのが無理のない進め方です。

在宅勤務の後任に引き継ぐときの工夫

前任者か後任のどちらかが在宅で働いている場合、隣の席で作業を見せることができません。対面の引き継ぎと同じつもりで進めると、後任がどこで止まっているかが見えにくくなります。在宅での引き継ぎでは、次のような工夫が役に立ちます。

画面を共有しながら作業を見せる

オンラインの会議の道具で画面を共有すれば、前任者の作業を後任に見せられます。後任に作業をしてもらうときは、後任の画面を共有してもらい、前任者が見守る形にすると、対面と同じように段階を踏めます。

作業の様子を録画して残す

画面の操作を録画しておくと、後任はあとから何度でも見返せます。月に1回しか出てこない作業や、手順が長い作業ほど、録画が役に立ちます。録画には、どの作業の、どの時点の手順かが分かる名前を付け、資料から見られるようにしておきます。ただし、録画に取引先の情報や個人情報が映り込む場合は、保存する場所と見られる人の範囲に注意が必要です。

質問する時間を決めておく

在宅では、後任が「いま聞いてよいのか」と遠慮して、質問をためこんでしまうことがあります。毎日決まった時間に短い打ち合わせを入れ、その日の質問をまとめて解消する時間にすると、後任は質問しやすくなります。急ぎの質問だけはチャットで受けるなど、連絡の手段を使い分けておくと、前任者の作業も止まりにくくなります。

いらだちを言葉にする前に気をつけたいこと

引き継ぎがうまく進まないと、前任者はいらだちを感じやすくなります。期限が迫っている中で同じ説明を繰り返すのは、誰にとっても負担です。ただ、そのいらだちを言葉や態度に出してしまうと、後任は質問しにくくなり、引き継ぎはさらに進まなくなります。

厚生労働省は、職場のパワーハラスメントに当たりうる典型的な行為を6つの類型に整理しています。その中には、次のようなものが含まれています。

3)人間関係からの切り離し 隔離・仲間外し・無視 4)過大な要求 業務上明らかに不要なことや遂行不可能なことの強制、仕事の妨害 出典: mhlw.go.jp

引き継ぎの場面で、「もう教えない」と質問を無視したり、短い期間で到底覚えきれない量を一度に押しつけたりすることは、受け取る側にとって大きな負担になります。パワーハラスメントに当たるかどうかは、職場での関係や言動の内容など、さまざまな事情を踏まえて判断されるものなので、ここで一概には言えません。けれども、こうした言動が引き継ぎを進めるうえで逆効果になることは確かです。

言い方を変えるだけで、後任の受け止め方は変わります。

避けたい言い方 言い換えの例
何回言えば分かるんですか 資料のどこに書いてあるか、一緒に確認しましょう
前にも説明しましたよね ここは資料に足しておきます。ほかにも分かりにくいところはありますか
もう自分でやってください 次は一人でやってみて、終わったら見せてください
なんで勝手に進めたんですか この作業は、次からは進める前に一度確認をお願いします

職場のハラスメントの考え方や、悩んだときの相談先は、厚生労働省が運営するあかるい職場応援団でも紹介されています。前任者として気をつけたい言動を確かめるときにも、後任として困ったときにも参考になります。

それでも引き継ぎが進まないときは、一人で抱え込まずに上司に相談することが大切です。後任の配置や引き継ぎの期間を決めるのは、多くの場合、前任者ではなく職場の側です。前任者が責任を負いきれない部分は、上司に判断してもらいましょう。

引き継ぎの期間が足りないときの対処

退職日や異動日が決まっているのに、引き継ぎが終わりそうにない。そんなときは、すべてを完璧に引き継ごうとするのをやめ、優先順位を付けて進めることが大切です。

業務を3つに分ける

業務の一覧を、次の3つに分けます。

・後任が一人でできるようになるまで引き継ぐ業務(毎日の作業、止まると取引先に影響が出る作業)
・やり方を資料に残し、時期が来たら資料を見て対応してもらう業務(月に1回や年に1回の作業)
・引き継がず、上司やほかの担当者に移すか、やめる業務

3つ目は見落とされがちですが、前任者が慣習で続けていただけで、実は誰も使っていない資料作りなどが含まれていることがあります。引き継ぎは、業務を見直す機会にもなります。

上司に優先順位を決めてもらう

どの業務をどこまで引き継ぐかは、前任者だけで決めずに、上司と相談して決めます。前任者が自分の判断で業務を絞ると、あとで「あの業務はどうなったのか」と問題になることがあります。業務の一覧に優先順位を付けた案を作り、上司に確認してもらうと、判断が早く進みます。

退職後の連絡の範囲を決めておく

退職する場合は、退職後に後任から問い合わせが来たときにどこまで対応するかを、職場と相談して決めておくと安心です。退職後の対応は、本来の業務の範囲を超えることがあります。いつまで、どの手段で、どんな内容なら答えられるかを、あらかじめ上司と後任に伝えておくと、あとの行き違いを防げます。

後任の側から:引き継ぎが不十分だったときに取る行動

この記事を読んでいる人の中には、後任の立場で「前任者から十分に引き継いでもらえなかった」と悩んでいる人もいるはずです。後任の側から取れる行動も整理しておきます。

分からないことを一覧にして上司に共有する

前任者がいなくなったあとに分からないことが出てきたら、一人で抱え込まずに、分からないことを一覧にして上司に共有します。「何が分からないのか」がはっきりしていれば、上司もほかの担当者に聞いたり、前任者に連絡を取ったりしやすくなります。

自分で調べた内容を資料に書き足す

自分で調べて分かったことは、引き継ぎ資料に書き足していきます。次に同じ業務を誰かに引き継ぐときに、その資料がそのまま使えます。前任者の資料が不十分だったとしても、自分の代で資料を整えておけば、同じ苦労を次の人にさせずに済みます。

過去の記録をたどる

メールのやりとりや、共有のフォルダに残っているファイル、チャットの履歴には、前任者がどう判断していたかの手がかりが残っていることがあります。同じ時期の前年の記録を探すと、年に1回の作業の進め方が分かることもあります。

自分を責めすぎない

引き継ぎが不十分なまま仕事を任された場合、すぐにうまくできないのは当然のことです。分からないことを分からないと伝え、一つずつ確かめていけば、仕事は少しずつ回るようになります。引き継ぎがうまくいかなかったことを、自分の能力の問題だけと考える必要はありません。

引き継ぎを仕組みにしておく考え方

ここまでは、いま引き継ぎがうまくいっていない場合の対処を中心に見てきました。最後に、次の引き継ぎで同じ苦労をしないための考え方を紹介します。

引き継ぎがうまくいかない職場の多くは、業務の手順や判断の基準が、担当者の頭の中にしかありません。担当者が変わるたびに、ゼロから引き継ぎの資料を作ることになり、毎回同じところで抜けが出ます。

これを防ぐには、普段から業務の手順を記録し、誰が見ても分かる形で共有しておくことです。業務の一覧、手順、判断の基準を、日々の仕事の中で少しずつ書きためておけば、引き継ぎの時期が来ても慌てずに済みます。作業をボードで管理している職場なら、カードそのものが手順の記録になり、担当者を付け替えるだけで引き継ぎの多くが済みます。

もう1つ効果があるのは、1つの業務を2人以上が担当できる状態にしておくことです。主な担当とは別に、手順を知っている補助の担当を決めておけば、担当者が急に休んだときにも業務が止まりません。補助の担当が月に1回でも実際に作業をしておくと、資料の抜けにも早く気づけます。引き継ぎの資料は、作って終わりではなく、使いながら直していくものだと考えると、いつ担当が変わっても慌てずに済む職場になります。

業務の見える化を支援する仕事という視点

ここからは、在宅ワークの仲介サイトを長く運営してきた立場から、引き継ぎと業務の見える化について考えます。

20年この市場を見てきた立場から言えば、中小企業や小さなチームほど、業務が特定の人の頭の中にしかない状態が続きやすく、担当者の退職や異動のたびに業務が止まりかけます。最近は、こうした職場の業務を整理し、手順書や管理の仕組みを作る仕事を、外部の専門家に頼む例が増えています。業務の流れを見える化し、道具の導入を手伝う仕事は、在宅でも受けやすい仕事の1つです。どのような仕事があるかは、AIコンサル・業務活用支援のお仕事で確かめられます。

運営者として見てきた限りでは、長く続く人ほど、単発の作業ではなく「この人に任せると安心」と思ってもらえる関係づくりに時間を使っています。引き継ぎの資料を丁寧に残す人は、職場を離れたあとも「あの人の資料は分かりやすかった」と評価され、次の仕事につながることがあります。発注者と受注者が直接やり取りし、中間の手数料が乗らない取引では、同じ予算でも発注者はより多くを頼め、受け手の手取りは厚くなります。手数料0%で直接取引できる関係は、双方にとって続けやすい形です。

業務の改善を仕事として体系的に学びたい人は、企業の経営の課題を見つけて改善を助ける国家資格である中小企業診断士も視野に入ります。業務の流れを整理し、改善の案をまとめる力は、引き継ぎの場面でもそのまま役に立ちます。

職場の側では、人の入れ替わりに備えて、在宅で働ける環境を整えたり、新しい人を試行的に雇ったりする動きもあります。テレワークの導入を支える制度についてはテレワーク 助成金 2026、新しい人を試行的に雇う制度についてはトライアル雇用助成金 2026で紹介しています。

後任が仕事をできないと感じたときは、まず引き継ぎの資料と手順を見直すことから始めてください。止まっている場所を一緒に探し、資料を直し、段階を踏んで任せていけば、多くの場合、引き継ぎは前に進みます。

よくある質問

Q. 後任が何度説明しても同じ質問をするのはなぜですか?

多くの場合、資料に答えが書かれていないか、書かれていても見つけにくい場所にあることが原因です。一度に説明する量が多すぎて、中身が残っていないこともあります。同じ質問が2回出たら、答えを資料に書き足し、次からは資料のどこを見ればよいかを伝えると、後任が自分で答えを探せるようになります。

Q. 引き継ぎの期間が足りないときはどうすればよいですか?

業務を、一人でできるまで引き継ぐもの、資料に残して時期が来たら見てもらうもの、引き継がずにほかの担当に移すかやめるものの3つに分けます。どこまで引き継ぐかは前任者だけで決めず、優先順位を付けた案を作って上司に判断してもらうと、あとの行き違いを防げます。

Q. 引き継ぎ資料には何を書けばよいですか?

業務の一覧、それぞれの目的、画面の名前まで入れた手順、作業が終わったと判断する基準、迷ったときの判断の基準、例外の対応、関係者の連絡先、進行中の案件の状態、ファイルの保存場所、必ず確認が必要な場面を書きます。とくに判断の基準と確認が必要な場面は抜けやすいので注意します。

Q. 後任にいらだってしまうときはどうすればよいですか?

責める言い方を、資料を一緒に確かめる言い方に変えるだけで、後任は質問しやすくなります。質問を無視したり、覚えきれない量を一度に押しつけたりすると、引き継ぎはかえって進みません。それでも進まないときは一人で抱え込まず、上司に相談して引き継ぎの範囲や期間を判断してもらいます。

この記事について

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監修:@SOHO編集部

2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを運営。生成AIで作成した下書きを、一次情報と照らし合わせて確認したうえで公開しています。

公開:2026年8月13日最終更新:2026年10月14日
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