未経験でもフルリモートの正社員になれるか

前田 壮一
前田 壮一
未経験でもフルリモートの正社員になれるか

この記事のポイント

  • 未経験からフルリモートの正社員になれるかを求人の実態から検証します
  • 偽装フルリモート求人の見分け方まで具体的に整理しました

まず、安心してください。未経験からフルリモートの正社員になる道は、確かに存在します。求人も実際に出ています。ただし、誰でも簡単に通るわけではありません。求人の数は限られていて、応募が集中します。この記事では、どの職種に募集が出ているのか、年収はいくらなのか、何を用意すれば選考に残れるのかを、求人の実態から順番に書きます。私は43歳で会社を辞めてフリーランスになった立場なので、在宅で働くことの良い面と、しんどい面の両方を正直に書きます。

未経験のフルリモート正社員は実在するのか

最初に事実確認から入ります。求人検索サイトに掲載されている募集を見ると、未経験とフルリモートを両立させた正社員の募集は確かに存在します。

【求人の特徴】未経験・初心者歓迎 経験者優遇 髪型・髪色自由...未経験スタートOK!OJT研修で1から丁寧にサポートします...9:00~18:00 (実働8時間/休憩1時間) フルリモート勤務... 出典: 求人ボックス

この募集には、押さえておくべき要素が全部入っています。未経験可であること、研修があること、勤務時間が固定であること、そしてフルリモートであること。この4つが揃っている求人が、皆さんが探しているものです。

ただし、数が少ないことも事実です。求人全体のなかでフルリモートが占める割合は数パーセントにとどまり、そのうち未経験可のものはさらに絞られます。つまり応募が集中します。1つの枠に何十人も応募する状況になるので、他の応募者と何が違うのかを示せないと通りません。

もう1つ、正直に書くべきことがあります。未経験可のフルリモート求人には、当たりと外れがあるということです。研修が整っていて定着率の高い会社もありますが、成果報酬の色が濃くて短期で人が入れ替わる会社も混ざっています。求人票の見分け方は後の節で詳しく書きます。ここで覚えておいていただきたいのは、「未経験可でフルリモート」という条件だけで飛びつかないことです。

そして、最初に期待値を下げる話を1つします。未経験でフルリモートの正社員に入る場合、最初の数か月は出社を求められる会社が少なくありません。研修期間だけ通勤し、その後に在宅へ移行する形です。これを隠して「フルリモート」と書いている求人があるので、応募前に確認が必要です。

募集が出る職種は限られている

未経験でフルリモートの募集が出る職種は、実はかなり偏っています。理由は単純で、在宅でできる仕事かつ教育を仕組み化できる仕事に限られるからです。

1つ目はカスタマーサポートとインサイドセールスです。電話やチャットで顧客に対応する仕事で、この領域は在宅化がもっとも進んでいます。システムにログインすれば場所を問わず業務が回るからです。未経験可の募集が多く、研修も整っています。ここが最大の入口です。

2つ目は事務とバックオフィスです。データ入力、受発注処理、経費精算のチェック、書類の確認。クラウドのシステムで完結する業務が増えたため、在宅での募集が出ています。ただし未経験可の枠は競争が激しい。

3つ目はWebマーケティングの支援業務です。広告の運用補助、レポートの作成、SNSの運用、コンテンツの入稿。手を動かす部分から入って、徐々に企画に関わる形です。未経験可の募集がありますが、応募時点で自分で何かを運用した経験を求められることが多い。

4つ目はエンジニアリングです。未経験可の正社員募集は存在しますが、「未経験」の定義が実質的に「実務未経験」であって、学習経験ゼロは含まれません。独学やスクールで作ったものがあることが前提になります。

5つ目は採用と人事の広報です。冒頭で引いた求人にも似た例がありました。

【仕事内容】採用広報/フルリモート可/フレックス制/服装自由<0300><給与>月給25万円~35万円 【経験・資格】未経験歓迎 学歴不問 既卒歓迎 第二新卒歓迎 出典: 求人ボックス

6つ目はライティングと編集です。求人数はそれほど多くありませんが、在宅との相性は最高に良い。文章を書く仕事は成果物で評価されるので、未経験でも書いたものを見せられれば通ります。

逆に、フルリモートの募集がほぼ出ない職種も書いておきます。製造、物流、小売、飲食、医療と介護の現場、建設。現物と人が動く仕事は在宅化できません。いまこれらの業界にいる皆さんは、職種そのものを変える前提で考える必要があります。

年収の相場はどのくらいか

お金の話を具体的にします。未経験でフルリモートの正社員に入った場合、年収は280万円から400万円の帯が中心です。月給に直すと20万円から30万円前後になります。

職種別に傾向があります。カスタマーサポートとインサイドセールスは月給22万円から28万円が多く、成果に応じたインセンティブが乗る会社もあります。事務とバックオフィスは月給20万円から25万円で、フルリモート求人のなかではもっとも低い帯です。Webマーケティングの支援は月給23万円から30万円。エンジニアリングは月給25万円から35万円で、実務未経験でも学習経験があれば上のほうに入ります。採用広報のような職種は、先の求人例のように月給25万円から35万円という提示が見られます。

ここで注意していただきたいのは、フルリモートであること自体が年収を下げる方向に働く場合があるという点です。理由は2つあります。1つは、応募者が多いので会社が給与を上げなくても採用できること。もう1つは、通勤手当や都市手当が付かないことです。地方在住でフルリモートに入ると、額面が下がる代わりに家賃と生活費が下がるので、手取りの実感は悪くなりません。逆に都市部に住みながらフルリモートに入ると、額面の低さがそのまま響きます。

年収を上げる順番も書きます。未経験で入った1年目は年収を交渉できません。交渉できるようになるのは、2年目以降に「自分がやった結果」を数字で言えるようになってからです。ここが勝負です。同じ2年を過ごしても、対応件数と改善提案を記録している人と、言われた仕事だけをこなした人では、3年目の年収が100万円近く離れます。

参考として、専門職の年収水準も見ておいてください。国の統計をもとにしたソフトウェア作成者の年収・単価相場を見ると、技術職が到達する帯がわかります。未経験で入った職種から、この帯に向かうにはどのくらいの距離があるのかを測る材料になります。

採用される人と落ちる人の違い

選考で何が見られているのかを書きます。ここがこの記事でもっとも重要な部分です。

未経験のフルリモート採用で会社が心配しているのは、スキルではありません。「この人は見ていないところでちゃんと働くか」と「文字だけのやりとりで意思疎通できるか」の2点です。この2つを払拭できた人が通ります。

落ちる人の典型を3つ挙げます。1つ目は、志望動機が「在宅で働きたいから」だけの人です。会社から見ると、働き方の希望しか語らない応募者は、仕事そのものへの関心が低く見えます。2つ目は、返信が遅い人です。応募後のメールに1日以上返さない人は、リモートでの業務に不安があると判断されます。選考の段階から見られています。3つ目は、自己管理の根拠を示せない人です。「自宅でも集中できます」と言うだけでは弱い。

通る人がやっていることは具体的です。1つは、文章が読みやすいこと。応募書類とメールの文章が整っていると、それだけで大きな加点になります。リモートワークの実務は文字でのやりとりが9割なので、文章力がそのまま業務能力として評価されます。2つは、自分で何かを続けた記録を持っていること。ブログを1年書いた、資格を独学で取った、家計の管理表を自分で作った。内容は問いません。継続できることの証拠が欲しいのです。3つは、業務環境を用意していること。回線速度、静かに話せる場所、カメラとマイク。用意してあると伝えるだけで、準備の良い人だと見られます。

私が43歳で会社を辞めた後、業務委託で受けた仕事のなかで、継続して発注が来たのは技術が高い案件ではありませんでした。返信が速くて、確認事項を先にまとめて送っていた案件です。在宅の仕事は、相手が自分の様子を見られません。だから「いま何をしているか」を伝える人が信頼されます。採用の段階でこれができていれば、それが最大のアピールになります。

書類の作り方は結果を大きく変えます。自己PRの組み立て方、経験の並べ方、未経験の職種に応募するときの書き方をまとめた職務経歴書の書き方完全ガイド|転職成功率を上げるコツ【2026年版】を、応募前に一度読んでおいてください。

未経験の実績を半年で作る方法

何もない状態から応募しても通りません。逆に言えば、半年あれば持ち物を作れます。手順で書きます。

最初の1か月は、職種を1つに絞ります。カスタマーサポートか、Webマーケティングか、開発か、ライティングか。絞らないと次の段階に進めません。迷ったら、いまの仕事に一番近いものを選んでください。接客経験があるならカスタマーサポート、事務経験があるならバックオフィス、文章を書くのが苦でないならライティングです。まったく違う職種に飛ぶより、隣に移るほうが速い。

2か月目から4か月目は、実際に手を動かします。ここが要です。座って勉強するだけでは実績になりません。ライティングなら記事を10本書いて公開する。マーケティングなら自分のブログやSNSを運用して数字を記録する。開発なら動くものを1つ作って公開する。カスタマーサポートなら、副業で問い合わせ対応の仕事を受ける。

重要なのは「他人が評価した実績」を1つでも作ることです。自分で作ったものだけでは弱い。誰かから依頼を受けて、納品して、お金を受け取った記録があると、選考の評価が変わります。金額は小さくても構いません。私が見てきた範囲では、報酬5,000円の仕事を1件納品した経験がある人は、面接での話が具体的になります。

副業で仕事を受けるなら、どんな職種にどんな依頼があるのかを先に把握しておくと選びやすくなります。開発の分野で何が求められているかはアプリケーション開発のお仕事を見ると具体的につかめますし、マーケティングやセキュリティ方面の需要はAI・マーケティング・セキュリティのお仕事で確認できます。自分が半年後にどの入口を叩くのかを決める材料になります。

5か月目と6か月目は応募です。ここで焦らないでください。未経験のフルリモート求人は競争率が高いので、10社出して全部落ちることがあります。落ちた理由を推測して、書類を直して、また出す。これを繰り返します。3か月で20社から30社に応募する覚悟で始めてください。

資格は効くのか

資格の話をします。結論を先に書くと、フルリモートの採用で資格が決定打になることはほとんどありません。ただし、意味がないわけでもありません。

効き方は2つに分かれます。1つは「応募条件を満たすため」の効き方です。技術職の一部では、資格を保有していることが応募の前提になっている求人があります。この場合は持っていないと選考に進めません。もう1つは「学習を続けられる証拠」としての効き方です。未経験者の選考では、この2つ目のほうが実際には大きい。

効きやすい資格を挙げます。IT系の職種を狙うなら、ネットワークの基礎知識を証明する資格が使われます。ネットワークとインフラの基礎を体系的に扱うCCNA(シスコ技術者認定)は、技術系の未経験採用で名前を見る機会が多い資格です。事務やバックオフィスを狙うなら、簿記とビジネス文書系の資格が評価されます。文書の型と敬語を体系的に学べるビジネス文書検定は、在宅の仕事で文字のやりとりが中心になることを考えると、実務でそのまま使えます。

効きにくい資格も正直に書きます。名称に「認定」や「マスター」が付いた民間の短期講座で取れる資格は、選考では見られません。取得に数時間しかかからないものは、継続の証拠にならないからです。無料のオンライン講座の修了証も同じで、履歴書に並べても加点になりません。

私の考えでは、資格に半年かけるより、作ったものを1つ持つほうが効きます。ただし、何から手を付けていいかわからない段階では、資格の学習が入口として機能します。学習の計画が立てやすく、達成が目に見えるからです。順番としては、資格を1つ取って基礎を作り、その知識で何かを作って公開する。この2段構えが現実的です。

求人票の見分け方

ここは損をしないために必ず読んでいただきたい節です。未経験可のフルリモート求人には、注意すべきパターンがあります。

1つ目は「フルリモート可」と「フルリモート」の違いです。「可」が付いている求人は、条件付きという意味です。試用期間後に可、成果を出せば可、部署によって可。応募の段階で「入社直後からフルリモートですか」と確認してください。

2つ目は、業務委託と正社員の混同です。求人票の雇用形態を必ず見てください。「完全在宅」「高収入」を並べている募集のなかに、実態が業務委託のものが混ざっています。業務委託は悪いものではありませんが、社会保険も有給もありません。正社員を探しているなら、雇用形態の欄を見落とさないでください。

3つ目は、給与の幅が異常に広い求人です。「月給20万円から80万円」のような提示は、下限が固定給で上限が成果報酬という構造です。未経験で入った人が受け取るのは下限です。

4つ目は、研修費用を請求する会社です。入社時に研修費や教材費を求める募集は避けてください。

5つ目は、募集が常に出ている会社です。同じ会社の同じ職種が1年を通して掲載され続けている場合、人が辞め続けている可能性があります。

見るべき良い兆候も挙げます。募集要項に業務の1日の流れが書いてあること。使用するツールが具体的に書いてあること。研修の期間と内容が明記されていること。そして給与の幅が狭いこと。これらは採用側が実態を隠していない印です。

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副業の単価相場とリモート市場の動き

正社員を目指す途中で副業を使う人が増えています。単価の相場を知らないまま受けると、時間を安く売ることになるので、市場の水準を書いておきます。

ライティングは文字単価で示されるのが一般的です。未経験で受けられる案件は1文字0.5円から1円、実績が付くと1文字1.5円から3円、専門分野を持つと1文字3円以上になります。3,000字の記事を1文字1円で書けば3,000円です。慣れないうちは1本に5時間かかるので、時給換算では600円になります。ここで「割に合わない」と判断して辞める人が多い。ただし3か月続けると1本2時間で書けるようになり、同時に単価も上がります。最初の数か月は学習期間だと割り切る必要があります。文章の仕事の収入水準を俯瞰するなら、統計をもとにした著述家,記者,編集者の年収・単価相場が参考になります。専門性を持った書き手がどの帯に入るのかが見えます。

データ入力や画像の加工といった作業系は、1件数十円から数百円の単価です。ここは時間を売る仕事なので、収入の伸びに限界があります。実績作りの入口としては使えますが、長く続ける対象ではありません。

SNSの運用代行は月額1万円から5万円、広告運用の補助は月額3万円から10万円。継続案件になりやすく、数字を扱うので成果を語れる実績になります。正社員の選考で見せる材料としては、この領域がもっとも強い。

開発系は、小さな修正案件で1件5,000円から3万円、機能の実装で5万円から30万円。学習した内容を実際の案件で試せるので、技術の定着が速くなります。

市場の動きも押さえておいてください。在宅勤務は一度広がった後、出社に戻す会社と、完全に在宅へ寄せる会社に分かれました。この二極化が起きた結果、フルリモートを掲げる会社は「在宅で成果を出す仕組みを作った会社」に絞られています。求人の数は減りましたが、残っている求人の質は上がっている。以前より探しにくくなった代わりに、当たりを引いたときの環境は良くなっています。

もう1つの変化は、業務委託の市場が広がったことです。会社が正社員を増やさず、専門性のある人に外から頼む形が増えました。つまり、正社員の入口が狭くなったぶん、業務委託の入口が広がっている。未経験の皆さんにとっては、業務委託で実績を作ってから正社員に応募する経路が、以前より現実的になったということです。

面接で見られていること

選考の実務を書きます。フルリモートの採用では、面接もオンラインで行われます。ここで見られている点が、対面とは違います。

まず環境を見られます。背景、音、照明、接続の安定性。これらは「入社後にこの環境で働くのか」という確認です。生活音が入る、画面が固まる、声が聞き取りにくい。こうした状態が続くと、業務に支障が出ると判断されます。面接の前に一度、家族や友人と通話して確認してください。

次に、受け答えの構造を見られます。オンラインでは相手の反応が読みにくいので、結論を先に言って理由を後に足す話し方が求められます。長い前置きから入る人は、リモートでの報告が下手だと見なされます。

3つ目は、質問の中身です。面接の終わりに聞くことで評価が分かれます。「残業はありますか」「在宅はいつからですか」だけで終わると、条件にしか関心がないと見られます。「入社後の3か月で期待される成果は何ですか」「チーム内の情報共有はどのツールで行っていますか」といった質問は、働く姿を具体的に想像している証拠になります。

4つ目は、自己管理の説明です。「在宅で集中できますか」と必ず聞かれます。ここで抽象的に答えないでください。作業場所を決めている、時間を区切っている、記録を付けている、といった具体的な方法を1つ挙げるだけで説得力が出ます。

私が伝えたいのは、面接は能力の試験ではなく、一緒に働けるかどうかの確認だということです。未経験の応募者に高い能力は期待されていません。期待されているのは、言ったことを守る人であることの証明です。

働き始めてからつまずくところ

入社後の話も書きます。ここを知らずに入ると、せっかく通った職場を短期で辞めることになります。

最初につまずくのは、聞けないことです。出社していれば隣の人に声をかけられますが、在宅では相手が忙しいかどうかがわかりません。結果、自分で抱え込んで時間を溶かします。対策は決まっています。わからないことは30分考えて、それでも進まなければ聞く。この基準を自分で決めてください。そして聞くときは「何がわからないか」と「自分はここまで調べた」を添える。これだけで、聞きにくさが消えます。

2つ目は、評価されている実感が持てないことです。在宅では、頑張っている様子が誰にも見えません。そこで自分から見せる必要があります。日報を書く、進捗を簡単に共有する、終わった仕事を一言報告する。面倒に思えますが、これをやっている人だけが正当に評価されます。

3つ目は、生活と仕事の境界が消えることです。通勤という区切りがないので、気付くと夜まで働いています。私は独立した最初の年、これで体調を崩しました。始業時に着替える、終業したらパソコンを閉じて別の部屋に行く、といった物理的な区切りを1つ作ってください。気持ちで区切ろうとすると失敗します。

4つ目は、孤独です。1人で1日誰とも話さない日が続くと、精神的にきつくなります。週に1回は外に出る、オンラインで雑談する時間を作る。会社にそうした仕組みがない場合は、自分で作る必要があります。

5つ目は、スキルが伸びにくいことです。出社していれば先輩の仕事のしかたが目に入りますが、在宅ではそれがない。意識して学ぶ機会を作らないと、2年経っても同じことをしている状態になります。

40代からのフルリモート転職

私と同じ年代の皆さんに向けて書きます。40代や50代で未経験からフルリモートを目指すのは、20代より確かに難しい。ただし不可能ではありません。効く戦略が違うだけです。

40代以降が持っている最大の武器は、前職の業界知識です。未経験の職種に飛ぶのではなく、前職の知識をリモートでできる仕事に繋げる。これが現実的な経路です。製造業にいた人が製造業向けのカスタマーサポートに入る。建設業にいた人が建設業のバックオフィスに入る。医療機関にいた人が医療系の事務やサポートに入る。業界を変えず職種だけを変えるほうが、通る確率が上がります。

もう1つの経路は、業務委託から始めることです。正社員の採用で年齢を理由に落とされても、業務委託なら成果で判断されます。数か月から1年、業務委託で実績を作ってから正社員の枠に応募すると、「未経験」ではなくなります。私自身が退職前に副業から始めたのは、まさにこの順番でした。ゼロからの転換ではなかったから、判断ができました。

年収については現実的な見通しを持ってください。40代で未経験の職種に移ると、一度は年収が下がります。前職が年収600万円だった人が、未経験のフルリモート職で350万円から始まる。この落差を受け入れられるかどうかが、決断の分かれ目です。焦って決めないでください。ただし、通勤時間が往復2時間なくなることの価値も計算に入れてください。年間で500時間近くが手元に戻ってきます。その時間を学習や副業に使えば、下がった年収を取り戻す速度が変わります。

家族への説明も要ります。私は妻に何度も「大丈夫なの」と聞かれました。答えられるようにしておくべきなのは、いくら下がるのか、どのくらいの期間で戻す計画なのか、失敗したときにどうするのかの3点です。この3つを紙に書けるなら、話は通ります。

市場を長く見てきた立場からの観察

フリーランスと在宅ワークの市場を20年運営してきた立場から、最後に2つ書きます。

1つ目。運営者として見てきた限りでは、在宅で長く続く人は、技術の高さで選ばれていません。選ばれているのは「この人に任せると自分が楽になる」と思われている人です。進捗を先に伝える、期限の前に出す、困ったときに早く相談する。どれも技術とは関係のない行動ですが、これができる人には次の仕事が来ます。未経験から入る皆さんにとって、これは救いになる事実だと思います。スキルで勝てない期間を、この振る舞いで埋められるからです。

2つ目。額面より手取りを見てほしいという話です。同じ予算の仕事でも、仲介が入って手数料が引かれる経路と、依頼者から直接受ける経路では、手元に残る額が違います。依頼する側から見ても構造は同じで、中間マージンが乗らなければ同じ予算でより多くを頼めます。20年この市場を見てきて確信しているのは、この差が関係の続く年数に出るということです。手数料0%の意味は、安く買えることではなく双方の手元に厚く残ることにあります。正社員を目指す過程で副業を使うなら、手取りがどう決まるのかを見てから経路を選んでください。

最後に。未経験からフルリモートの正社員になるのは、簡単ではありませんが道はあります。職種を1つ絞って、半年で他人に評価された実績を1つ作って、30社応募する。これだけです。準備さえすれば、40代からでも遅くありません。私は43歳で会社を辞めましたが、判断できたのは辞めた後に何ができるかを具体的に数えられたからです。皆さんも、まず数えることから始めてください。

よくある質問

Q. 未経験でフルリモートの正社員求人は本当にありますか?

あります。カスタマーサポート、インサイドセールス、事務とバックオフィス、Webマーケティングの支援、採用広報、ライティングの分野で未経験可の募集が出ています。ただし求人全体に占める割合は数パーセントで応募が集中するため、他の応募者と何が違うかを示せないと通りません。

Q. 年収はどのくらいになりますか?

未経験でフルリモートに入った場合、年収280万円から400万円の帯が中心で、月給20万円から30万円前後です。事務とバックオフィスがもっとも低く、エンジニアリングが高い傾向にあります。フルリモートは応募者が多く通勤手当も付かないため、額面が抑えられやすい点に注意してください。

Q. 応募前に何を用意すればよいですか?

職種を1つに絞り、他人から依頼を受けて納品した実績を1つ作ってください。報酬が5,000円でも構いません。加えて、読みやすい文章、回線と音声が安定した作業環境、継続の証拠になる記録(学習や運用の履歴)の3つを揃えると、選考の評価が変わります。

Q. 偽装のフルリモート求人はどう見分けますか?

「フルリモート可」は条件付きの意味なので、入社直後から在宅かを必ず確認してください。雇用形態が業務委託になっていないか、給与の幅が極端に広くないか、研修費を請求されないか、同じ募集が1年中出ていないかも確認します。業務の1日の流れと使用ツールが明記された求人は実態を隠していません。

この記事について

@SOHO
編集部

監修:@SOHO編集部

2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを20年運営。編集部が事実確認のうえ公開しています。

公開:2026年2月3日最終更新:2026年9月24日
前田 壮一

この記事を書いた人

前田 壮一@SOHO編集部

元メーカー管理職・43歳でフリーランス転身

大手電機メーカーで品質管理を20年間担当した後、42歳でフリーランスに転身。中高年のキャリアチェンジや副業の始め方を、自身の経験をもとに発信しています。

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