フリーランス新法と下請法の違い|適用対象と義務範囲を発注者向けに整理 2026


この記事のポイント
- ✓フリーランス新法と下請法の違いを発注者向けに整理
- ✓適用対象・資本金要件・義務項目・違反時の罰則を比較し
- ✓外注時に何を守ればよいかを具体的に解説します
「フリーランスに業務を外注したいが、下請法とフリーランス新法、どちらを守ればいいのか分からない」。この記事にたどり着いた方の多くは、そう感じているはずです。結論から言うと、資本金1,000万円以下の個人事業主や小さな会社であっても、フリーランスへ業務委託する場合はフリーランス新法の対象になります。下請法は資本金要件で対象外になるケースが多い一方、フリーランス新法は資本金の額を問いません。この違いを理解していないまま外注を続けると、意図せず法令違反になるリスクがあります。
フリーランス新法と下請法、まず何が違うのか
フリーランス新法(正式名称:特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律)は2024年11月に施行された比較的新しい法律です。下請法(下請代金支払遅延等防止法)は1956年施行の歴史ある法律で、長らく企業間取引の適正化を担ってきました。
両者は「委託者に一定の義務を課し、受託者を保護する」という目的は共通していますが、適用対象の決め方が根本的に異なります。
フリーランス新法と下請法の違いを理解することは、企業にとって重要です。2024年11月に施行予定のフリーランス新法は、下請法と類似点がありながらも、適用範囲や義務内容に違いがあります。 出典: biz.moneyforward.com
正直なところ、名前が似ているせいで「新しい下請法」だと誤解している発注者は少なくありません。実務上は別物として扱う必要があります。下請法は「委託者の資本金」で適用有無が決まるのに対し、フリーランス新法は「受託者がフリーランス(特定受託事業者)かどうか」で適用有無が決まります。この起点の違いが、外注を行う個人事業主・中小企業にとって最も重要なポイントです。
適用対象の決め方の違い
下請法は、委託者(発注する側)の資本金区分によって適用が決まります。たとえば製造委託・修理委託の場合、委託者の資本金が3億円超で受託者の資本金が3億円以下(または個人)であれば適用対象です。情報成果物作成委託・役務提供委託の場合は、委託者の資本金が5,000万円超で受託者の資本金が5,000万円以下(または個人)というラインが引かれます。
つまり、資本金1,000万円未満の個人事業主や小さな法人が業務委託する場合、下請法の対象外になるケースが大半でした。ここが実務上の大きな抜け穴として指摘されてきた部分です。
一方、フリーランス新法にはこの資本金要件がありません。委託者が個人事業主であっても、法人であっても、受託者が「特定受託事業者」に該当すればフリーランス新法が適用されます。
ただし、下請法は資本金1,000万円超の法人からの委託が対象となる一方、フリーランス新法では資本金の制限はありません。そのため、フリーランス新法は、より多くのフリーランスにとって、より身近な法律といえるでしょう。 出典: biz.moneyforward.com
この一文が示す通り、フリーランス新法は下請法よりもはるかに広い範囲の取引をカバーします。個人事業主が別のフリーランスへライティングやデザインを外注するケースでも、フリーランス新法の対象になり得るということです。「うちは資本金が小さいから関係ない」という認識は、フリーランス新法に関しては通用しません。
「特定受託事業者」とは誰を指すのか
フリーランス新法でいう「特定受託事業者」とは、業務委託の相手方であって、次のいずれかに該当する者を指します。
・従業員を使用しない個人事業主(いわゆる一人親方・フリーランス) ・従業員を使用しない、かつ代表者以外に役員がいない法人(一人社長の会社)
逆に言えば、従業員を雇っているフリーランスや、複数の役員がいる小さな会社に業務委託する場合は、フリーランス新法の対象外になります。この線引きは細かいので、外注先の実態(従業員を雇っているか、役員が複数いるか)を契約前に確認しておく必要があります。
委託者側の義務項目の違い
下請法とフリーランス新法では、委託者に課される義務の中身にも違いがあります。ここは発注者として実務に直結する部分なので、丁寧に整理します。
下請法の主な義務
下請法では、委託者(親事業者)に対して主に以下の義務を課しています。
・書面の交付義務(発注内容を記載した書面を交付する) ・支払期日を定める義務(給付を受領した日から60日以内) ・書類の作成・保存義務(取引記録を2年間保存) ・遅延利息の支払義務(支払遅延時に年14.6%の遅延利息)
加えて、受領拒否・返品・買いたたき・不当な給付内容の変更など、11項目の禁止行為が定められています。
フリーランス新法の主な義務
フリーランス新法では、委託者(業務委託事業者)に対して以下の義務を課しています。
・書面等による取引条件の明示(3条通知。給付内容・報酬額・支払期日などを明示) ・報酬支払期日の設定・支払義務(給付を受領した日から60日以内。再委託の場合は30日以内) ・募集情報の的確表示義務(業務委託の相手方を募集する際、虚偽・誤解を招く表示をしない) ・育児介護等と業務の両立に対する配慮義務 ・ハラスメント対策に係る体制整備義務 ・中途解除等の事前予告義務(契約期間が6か月以上の場合、解除の30日前までに予告)
フリーランス新法は、下請法にはない「ハラスメント対策」「育児介護配慮」「募集情報の適正表示」といった、働く個人の生活・人権に配慮した義務を新設している点が特徴です。単なる取引の適正化だけでなく、フリーランスという働き方そのものを保護する視点が盛り込まれています。
さらに、フリーランス新法では継続的業務委託(1か月以上の期間にわたる業務委託)かどうかで義務の範囲が変わります。1か月以上6か月未満の継続的業務委託では、募集情報の的確表示義務・育児介護等への配慮義務・ハラスメント対策体制整備義務が追加され、6か月以上の場合はさらに中途解除等の事前予告義務が加わります。単発の業務委託であっても3条通知と期日内支払いの義務は発生するため、「短期契約だから関係ない」とは考えないほうが安全です。
禁止事項の違い
下請法とフリーランス新法は、どちらも「委託者がやってはいけないこと」を定めていますが、項目数と内容に差があります。
下請法は11の禁止行為(受領拒否、支払遅延、下請代金の減額、返品、買いたたき、購入・利用強制、報復措置、有償支給原材料等の対価の早期決済、割引困難な手形の交付、不当な経済上の利益の提供要請、不当な給付内容の変更・やり直し)を定めています。
フリーランス新法は、継続的業務委託(1か月以上)に限り、下請法とほぼ同様の7つの禁止行為(受領拒否、報酬の減額、返品、買いたたき、購入・利用強制、不当な経済上の利益の提供要請、不当な給付内容の変更・やり直し)を定めています。ただし報復措置の禁止は継続的業務委託かどうかを問わず全ての取引に適用されます。
実務上のポイントは、フリーランス新法の禁止行為は「継続的業務委託」でなければ適用されないという点です。1回きりのスポット発注では、書面明示義務と期日内支払義務は発生しますが、買いたたきなどの禁止行為の規制対象からは外れます(報復措置の禁止を除く)。ここも下請法とは適用条件が異なる部分なので、契約形態を継続か単発かで整理しておくと判断がしやすくなります。
違反した場合にどうなるのか
下請法に違反した場合、公正取引委員会または中小企業庁による指導・勧告の対象となり、勧告が行われると事業者名・違反内容が公表されます。さらに、書面交付義務違反や検査拒否などには50万円以下の罰金が科される場合があります。
委託事業者について、下請法は資本金が1,000万円以下の法人を規制の対象から除外しますが、フリーランス新法にはそれがありません。フリーランス新法においては、資本金の額に関わらず「2人以上の役員がいる法人」や「従業員を使用する法人および個人事業主」が規制の対象です。 出典: biz.moneyforward.com
フリーランス新法も同様に、違反した場合は公正取引委員会・中小企業庁・厚生労働省による助言・指導・報告徴収・勧告・命令の対象となり、命令に従わない場合や虚偽報告をした場合には50万円以下の罰金が科されます。行政指導の段階で是正されるケースが大半ですが、勧告・命令にまで至ると社名公表のリスクもあるため、発注担当者としては初期段階での是正が望ましいところです。
公正取引委員会の見解では、下請法とフリーランス新法の両方が適用される取引の場合、フリーランス新法が優先して適用される整理になっています。両方の要件を満たす場合に二重で義務を負うわけではありませんが、「自社がどちらの法律の適用対象なのか」を最初に切り分けておく必要があります。
発注者として実務上どちらを見ればいいのか
ここまでの内容を踏まえると、発注者が実務でチェックすべき順番は次の通りです。
まず、委託先がフリーランス新法でいう「特定受託事業者」(従業員を使わない個人または一人社長の法人)に該当するかを確認します。該当する場合、自社の資本金額に関わらずフリーランス新法の対象になります。
次に、自社の資本金と委託内容(製造・修理・情報成果物作成・役務提供のいずれか)を照らし合わせ、下請法の資本金要件に該当するかを確認します。該当すれば下請法も適用対象となりますが、前述の通りフリーランス新法が優先して適用されます。
最後に、契約が単発か継続的業務委託(1か月以上)かを確認します。継続的業務委託であれば、書面明示・期日内支払いに加えて、禁止行為の規制やハラスメント対策・育児介護配慮の義務まで発生します。
実務上、多くの中小企業・個人事業主の発注担当者にとって重要なのは「資本金が小さいから下請法は関係ない」という従来の認識が、フリーランス新法には通用しないという点です。フリーランスへ業務委託する以上、自社の規模を問わず3条通知(書面等による取引条件の明示)と60日以内の支払いは基本動作として押さえておく必要があります。
3条通知に何を書けばよいか迷う場合は、業務の内容・報酬額・支払期日・給付を受領する期日を最低限明記し、口頭やメールのやり取りだけで済ませないようにするのが安全です。書式は決まった様式があるわけではなく、フリーランスと委託者の双方が合意した内容が明確に分かる形であれば問題ありません。
外注の実務では、この法令対応と並行して「誰に・いくらで・どんな範囲を依頼するか」という発注設計そのものも重要になります。たとえばAIコンサル・業務活用支援のお仕事やAI・マーケティング・セキュリティのお仕事のように、専門領域ごとに求められるスキルと相場感が異なる分野では、法令順守の前提として「誰に依頼すべきか」の見極めが先に来ます。特にシステム開発を外注する場合はアプリケーション開発のお仕事のように開発工程・要件定義の粒度が価格に直結するため、契約前の擦り合わせがより重要になります。
発注者が陥りやすい失敗と対策
私自身、初めて編集業務を外注したときに見積もりの比較だけで発注先を決め、後から契約条件の明示が曖昧だったために支払いのタイミングで揉めた経験があります。当時は「安ければいい」という判断基準しか持っておらず、書面での条件明示の重要性を軽視していました。フリーランス新法の3条通知の考え方を先に知っていれば、最初の段階で報酬額・支払期日・業務範囲を明文化し、後々のトラブルを避けられたはずです。
もう一つよくある失敗は、継続的な業務委託であるにもかかわらず、単発発注のつもりで契約書を用意していないケースです。1か月以上にわたって同じ相手に継続的に発注する場合、途中で契約を打ち切ろうとすると中途解除の事前予告義務(30日前予告)に抵触する可能性があります。「必要な時だけ都度発注しているつもりだった」が、実態として継続的業務委託とみなされる例は珍しくありません。契約形態を都度確認する習慣をつけておくことが重要です。
独自データから見る外注実務への影響
20年この在宅ワーク・フリーランス市場を見てきた運営者の立場から言えば、フリーランス新法の施行は「発注者と受注者の関係性を明文化する」という意味で歓迎すべき変化だと感じています。長く続く発注関係ほど、単発の作業依頼ではなく、報酬・支払期日・業務範囲を最初にきちんと合意している傾向があります。逆に、口頭やチャットでのやり取りだけで済ませてしまう発注は、後になって「言った・言わない」のトラブルに発展しやすいというのが現場の実感です。
もう一つ運営者として見てきた実感があります。仲介会社や代理店を経由した発注では、契約書のひな形が整っている一方で、その分の手数料が報酬から差し引かれる構造になっています。手数料0%で直接フリーランスに依頼する形態は、中間マージンが発生しない分、同じ予算でより多くの業務を依頼できる、あるいは受け手側の手取りが厚くなるという構造上のメリットがあります。ただし直接取引の場合こそ、フリーランス新法が求める書面明示や期日内支払いを発注者側が自主的に徹底する必要があります。仲介事業者が用意する契約フローに頼れない分、発注者自身が法令の要件を理解しておくことが、双方にとって健全な取引を続けるための土台になります。
外注先を探す際の参考として、専門職の年収・単価相場を事前に把握しておくと、報酬額の妥当性を判断しやすくなります。たとえばソフトウェア作成者の年収・単価相場や著述家,記者,編集者の年収・単価相場のようなデータは、フリーランスへの発注額が市場相場から大きく外れていないかを確認する目安になります。買いたたきの禁止行為に抵触しないためにも、相場観を持ったうえで報酬額を設定することが重要です。
また、業務委託にあたって発注先の専門性を見極める材料として、資格の有無を確認する発注担当者も増えています。ビジネス文書検定のような実務系資格や、CCNA(シスコ技術者認定)のような技術系資格を保有しているかどうかは、業務内容によっては品質担保の一つの指標になります。
フリーランス新法の詳細な制度設計や施行スケジュールについては2026年フリーランス新法の最新情報|下請法との違いと保護される範囲で最新情報を整理しています。また、実務対応の具体的な手順を確認したい場合はフリーランス新法(2024年施行)の実務対応ガイド|2026年最新の注意点も参考になります。なお、補助金の受給と支払いのタイミングに関する誤解は業務委託の資金繰りにも影響するため、補助金 概算払い 精算払い 違いの記事もあわせて確認しておくと、外注に伴う資金計画の精度が上がります。
法律の名前が似ていることもあり、下請法とフリーランス新法を同じものだと捉えている発注担当者は今でも一定数存在します。しかし適用対象の決め方(委託者の資本金か、受託者の属性か)、義務項目の範囲(取引の適正化のみか、働き方の保護まで含むか)、禁止行為の適用条件(継続的業務委託かどうか)のいずれも異なる制度設計です。発注者としては「自社の資本金が小さいから対象外」という古い認識を捨て、フリーランスへ業務委託する時点で3条通知と60日以内の支払いを基本動作にすることが、法令順守と良好な取引関係の両方を実現する近道になります。
よくある質問
Q. フリーランス新法と下請法、両方の要件を満たす場合はどうなりますか?
両方の適用要件を満たす取引では、フリーランス新法が優先して適用されます。義務を二重に負うわけではありませんが、フリーランス新法の基準(3条通知・60日以内支払い等)を満たしていれば下請法上も問題にならない設計です。
Q. 個人事業主同士の業務委託でもフリーランス新法は適用されますか?
はい。委託者が個人事業主でも法人でも、受託者が特定受託事業者(従業員を使わない個人や一人社長の法人)に該当すれば、資本金の額に関係なくフリーランス新法の対象になります。
Q. 3条通知は口頭やメールでも問題ないですか?
書面またはメール等の電磁的方法での明示が求められます。業務内容・報酬額・支払期日を明確に残す必要があり、口頭のみのやり取りは義務を満たしたことになりません。
Q. 単発の発注でもフリーランス新法の義務は発生しますか?
単発の業務委託でも、書面等による取引条件の明示(3条通知)と60日以内の報酬支払いの義務は発生します。買いたたきなどの禁止行為の規制は、原則として継続的業務委託(1か月以上)が対象です。
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入力は3分ほど。掲載料も取引手数料も0円です。@SOHOに登録しているフリーランス・副業ワーカーから、早ければ当日中に最初の応募が届きます。
この記事について
編集部
監修:@SOHO編集部
2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを20年運営。編集部が事実確認のうえ公開しています。

この記事を書いた人
朝比奈 蒼@SOHO編集部
ITメディア編集者
IT系メディアで編集・ライティングを担当。クラウドソーシング業界の動向やサービス比較など、客観的な視点での記事を執筆しています。
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