ダブルワークで40時間を超えた後の扱い|賃金の計算と必要な手続き 2026

前田 壮一
前田 壮一
ダブルワークで40時間を超えた後の扱い|賃金の計算と必要な手続き 2026

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この記事のポイント

  • ダブルワークで40時間超えたらお金はどう変わるのか
  • 社会保険の二以上事業所勤務届
  • 超えた後に実際に起きる金銭面の変化を2026年時点の制度にそって順番に整理します

まず、安心してください。ダブルワークで40時間超えたらどうなるのか、と検索して不安になっている皆さんの多くは、実際には「違法なことをしてしまったのではないか」という心配と、「働いた分だけ手取りが増えるのか」という疑問が混ざった状態にあります。この記事では前者の法律論は最小限にとどめ、後者、つまり40時間を超えた後に皆さんの財布で実際に何が起きるのかに絞って書きます。結論から言えば、超えた分の額面は増えますが、手取りの増え方は時期によって大きく変わり、翌年の住民税や社会保険の扱いが変化するタイミングで一度手取りが目減りする局面が来ます。そこを事前に知っておけば、驚かずに済みます。

私も43歳でメーカーを辞めてフリーランスになる前、会社に勤めながら在宅の仕事を掛け持ちしていた時期がありました。最初の年、月々の入金額だけを見て「思ったより増えた」と喜んでいたのですが、翌年6月に届いた住民税の通知を見て青ざめたことを覚えています。増えたのは額面で、手取りが増えるのはその後、しかも税金が追いかけてくる。この時間差を知らないまま働くと、家計の計画が崩れます。だからこそ、お金の面での結果を先に把握しておくべきなのです。

週40時間という線が「お金」の話にどう効いてくるのか

労働時間の通算そのものは労働基準法の話ですが、皆さんが本当に気にしているのは、その結果として振り込まれる金額です。まずは、週40時間という線がどこに効いて、どこには効かないのかを整理しておきます。ここを混同したまま計算すると、必ず見込みがずれます。

労働時間の通算ルールについては、労務管理の実務解説でも次のように整理されています。

労働基準法において、社員の労働時間は原則として1週間に40時間、1日8時間までと定められています。この規制はダブルワークの場合も例外ではなく、全ての労働時間を合算して適用しなければいけません。 出典: biz.tunag.jp

ここで押さえておきたいのは、通算されるのは「雇用契約で働いた時間」だけだという点です。アルバイト、パート、契約社員、正社員など、労働者として雇われている働き方は合算されます。一方で、業務委託契約で受ける仕事は労働時間の通算の対象外です。この違いは後述するとおり、手取りの計算方法そのものを変えるほど大きな分岐点になります。

そして、お金の面で重要なのは「週40時間を超えたかどうか」が効く領域と、効かない領域がはっきり分かれていることです。効くのは割増賃金の計算だけで、税金や社会保険の判定には週40時間という基準はほとんど登場しません。社会保険は週20時間と月額賃金8.8万円という別の物差しで、しかも会社ごとに個別判定されます。所得税と住民税は労働時間ではなく年間の収入額と所得額で決まります。つまり、週40時間を超えた瞬間に税金や保険料が一斉に変わるわけではなく、それぞれ別のタイミング、別の基準で追いかけてくるということです。この「別々に、時間差でやってくる」構造を理解しておくと、家計の見通しが立てやすくなります。

もう1つ、多くの人が誤解しているのが、週40時間を超えて働くこと自体は禁止されていないという点です。三六協定という時間外労働の協定が結ばれていれば、法定労働時間を超えて働くこと自体は認められます。禁止されているのは、協定も割増賃金の支払いもないまま働かせることであって、働く側が罰せられる仕組みにはなっていません。皆さんが心配すべきは「自分が罰せられるか」ではなく、「増えた額面のうち、どれだけが手元に残るか」です。

額面と手取りのズレが生まれる4つの入り口

週40時間を超えて働くと、額面の月収は当然増えます。しかし手取りは同じ比率では増えません。ズレを生む入り口は大きく4つあります。所得税の源泉徴収、住民税、社会保険料、そして雇用保険です。順に見ていきますが、先に全体像を言っておくと、影響が出る順番は「所得税が即時、社会保険が数か月後、住民税が翌年6月」です。

副業側の給与は所得税が高めに引かれる

会社から給与をもらうとき、毎月の給与から所得税が源泉徴収されます。このとき使われる税額表には甲欄と乙欄があり、扶養控除等申告書を提出した1社だけが甲欄、それ以外の勤務先はすべて乙欄になります。扶養控除等申告書は同時に2社へ提出できないルールなので、ダブルワークをしていれば必ずどちらかが乙欄になります。

この乙欄が曲者です。甲欄に比べて、乙欄の源泉徴収税額はかなり高く設定されています。たとえば月8万円の給与でも、甲欄なら扶養の状況によっては源泉徴収がゼロに近いのに対し、乙欄では3%台の税率が最初から適用され、数千円が引かれます。副業先の給与明細を見て「思ったより引かれている」と感じるのは、たいていこれが原因です。

ただし、乙欄で多めに引かれた分は損失ではありません。年間の所得が確定したあとに確定申告をすれば、払いすぎた分は還付されます。逆に言うと、確定申告をしないと取り戻せません。ダブルワークで週40時間を超えるほど働いている人は、確定申告をした方が有利になるケースが多いということです。国税庁のサイトでは所得税の仕組みや確定申告の手続きが公開されています(国税庁)。

住民税は翌年6月から一気に来る

手取りへの打撃という意味で、いちばん重いのが住民税です。住民税は前年1月から12月までの所得をもとに計算され、翌年6月から翌々年5月にかけて徴収されます。つまり、今年たくさん働いた分の請求書は、来年の6月に届くということです。

税率は所得割が一律10%(都道府県民税と市区町村民税の合計)に、均等割が加わる形が基本です。副業で年間60万円の給与収入が増えれば、給与所得控除の増加分を差し引いても、住民税はおおむね年4万円から5万円程度増える計算になります。これが翌年6月から毎月の給与天引きに上乗せされます。

私が最初の年に驚いたのは、まさにこの部分でした。副業を始めた年は手取りが順調に増えていたのに、翌年6月の給与明細を見たら、本業の給与そのものは変わっていないのに天引きが増えていて手取りが減っていたのです。副業をやめた後でも前年分の請求は来ますから、「もう副業していないのに税金だけ増えた」という状況も起こり得ます。副業で増えた収入の2割程度は翌年の税金用に別口座へ置いておく、というくらいの構えでちょうどいいと思います。

社会保険料は「会社ごとの判定」で決まる

社会保険(健康保険と厚生年金保険)は、週40時間という合計時間では判定しません。勤務先ごとに、その会社での働き方が加入要件を満たすかどうかを見ます。2024年10月以降、従業員51人以上の企業では、週の所定労働時間20時間以上、月額賃金8.8万円以上、雇用期間2か月超の見込み、学生でないこと、という条件をすべて満たすと社会保険の加入対象になります。

ここが手取りに直結します。仮に本業で週30時間、副業で週15時間働いて合計45時間になったとしても、副業先での週15時間が加入要件の20時間に届かなければ、副業側では社会保険料は引かれません。逆に、副業先でも週20時間以上かつ月8.8万円以上働くようになると、副業先でも保険料が発生します。時間を増やした結果、ある月から急に副業の手取り率が落ちるのは、この線をまたいだときです。

社会保険の加入要件や届出の実務については、日本年金機構のサイトに手続き情報がまとまっています(日本年金機構)。

雇用保険は原則1社だけ

雇用保険は、原則として主たる賃金を受けている1社でのみ加入します。両方の勤務先で週20時間以上働いていても、二重に加入して二重に保険料を払うことにはなりません。この点は手取りにとっては小さな救いです。

例外として、65歳以上の人には複数の事業所での勤務時間を合算して雇用保険に加入できる制度があります。2つの事業所それぞれで週5時間以上20時間未満、合計で週20時間以上という条件を満たす場合に、本人が申し出て手続きをする形です。これは自動加入ではなく本人の申出が起点になる点が特徴で、該当しそうな方はハローワークで確認しておくといいと思います。

週40時間を超えた場合の手取り試算

ここまでの要素を1つの表にまとめてみます。数字は制度の考え方を示すための概算で、扶養の状況や自治体、健康保険組合によって変わります。本業で週30時間、時給1,400円、副業で週15時間、時給1,200円というケースを想定します。

項目 本業のみ(週30時間) 本業+副業(週45時間)
額面月収の目安 約18万2千円 約25万6千円
社会保険料(本業) 約2万6千円 約2万6千円
社会保険料(副業) なし なし(週20時間未満のため)
所得税の源泉徴収 約2千円(甲欄) 約2千円+約2千3百円(乙欄)
手取りの目安 約15万4千円 約22万5千円
翌年の住民税増加分 基準 年約6万円増

額面は月7万4千円増えて、手取りは月7万1千円ほど増えます。ここまでは悪くない数字に見えます。ところが翌年6月からは住民税が月5千円前後上乗せされるので、実質的な増加は月6万6千円程度に落ち着きます。さらに、副業の時間を週20時間に増やして月8.8万円を超えると、副業側でも社会保険料が発生し、増えた分の15%前後が保険料に回ります。

もう1つのパターンとして、副業先でも社会保険の加入要件を満たした場合を見ておきます。この場合は「二以上事業所勤務届」という書類を、要件を満たした日から10日以内に年金事務所へ提出します。提出すると、両方の会社の報酬月額を合算して1つの標準報酬月額が決まり、そこから算出された保険料を各社の報酬額に応じて按分する形になります。

この仕組みで注意したいのは、保険料が二重取りされるわけではないという点と、それでも1社だけで働いていたときより保険料の総額は増えるという点です。標準報酬月額の等級が上がるからです。ただし厚生年金の保険料が増えれば将来の年金額も増えますし、傷病手当金や出産手当金の計算基礎も合算後の標準報酬月額になります。目先の手取りは減りますが、保障は厚くなる。ここは損得ではなく、どちらを取るかという判断だと考えた方がいいと思います。

確定申告が必要になるラインと「20万円ルール」の落とし穴

ダブルワークで週40時間を超えるほど働いていると、確定申告の要否が気になってきます。よく聞く「副業20万円以下なら申告不要」という話には、見落としやすい条件がいくつもあります。

給与を2か所からもらっている場合

給与所得者で、主たる給与以外の給与収入と、給与以外の所得の合計が年20万円を超える場合には確定申告が必要です。ここでのポイントは、副業も給与であれば「収入額」がそのまま判定に使われるという点です。業務委託の報酬なら経費を引いた後の所得で判定できますが、給与は経費を引けないので、20万円のラインに早く到達します。週15時間の副業なら、月に7万円前後の収入になることが多く、3か月ももたずに20万円を超えます。

年末調整は1社でしか受けられない

扶養控除等申告書を出した1社だけが年末調整をしてくれます。副業先は年末調整をしないので、そこで払った所得税は精算されないまま残ります。生命保険料控除や地震保険料控除、医療費控除といった控除も、副業分の収入を含めた形で正しく反映させるには確定申告が必要です。

この「年末調整では終わらない」という点を、ダブルワークを始めた年に見落とす人はとても多いです。会社員時代の感覚だと、年末に書類を出せば税金の話は終わったつもりになります。しかしダブルワークをした年は、その先にもう1工程あります。翌年2月16日から3月15日の申告期間に、2枚の源泉徴収票を持って申告する。これが基本の流れです。国税庁の電子申告システムを使えば自宅から手続きできます(e-Tax)。

住民税は20万円以下でも申告が必要

さらに紛らわしいのが、所得税の20万円ルールは住民税には適用されないという点です。副業収入が年20万円以下で所得税の確定申告が不要な場合でも、住民税については市区町村への申告が必要です。ここを放置すると、後から自治体から問い合わせが来ることがあります。確定申告をすれば住民税の申告も兼ねるので、迷ったら確定申告をしておく方が手間は少なくて済みます。

なお、確定申告の全体像や節税の考え方については、確定申告 節税完全ガイド!フリーランスが手残りを最大化する全手法という記事で、控除の使い方から帳簿づけまで詳しくまとめています。給与所得と事業所得が混在する人にも役立つ内容です。

扶養に入っている人が40時間を超えるときの分岐点

配偶者の扶養に入りながらダブルワークをしている場合、週40時間を超えて働くと、ほぼ確実に扶養から外れます。ここは手取りへの影響がもっとも大きい領域なので、独立して整理しておきます。

扶養には税制上の扶養と社会保険上の扶養の2種類があり、それぞれ別の基準で判定されます。税制上は配偶者控除と配偶者特別控除の話で、本人の給与収入が年103万円を超えると配偶者控除の対象から外れ、そこから段階的に配偶者特別控除へ移行します。社会保険上は年収130万円が原則の基準で、これを超えると配偶者の健康保険の被扶養者ではいられなくなり、自分で健康保険と国民年金、あるいは勤務先の社会保険に加入することになります。

週40時間で時給1,200円なら、月におよそ20万8千円、年間で250万円前後です。どちらの基準も大きく超えます。この場合、扶養から外れることは避けられないので、判断すべきは「中途半端に超えるか、はっきり超えるか」です。年収130万円をわずかに超えた水準では、社会保険料の負担が発生する分だけ手取りが減る逆転現象が起きます。この谷を抜けるには、おおむね年収160万円前後まで働く必要があると言われています。

つまり、週40時間を超えるほど働くと決めたなら、中途半端に抑えるより、しっかり超えてしまう方が手取りは伸びます。逆に、扶養の範囲で収めたいのであれば、週の合計を20時間以下、月の収入を各社8.8万円未満に抑える設計が必要です。どちらを選ぶかで、年間の設計がまるごと変わります。

なお、いわゆる年収の壁については制度の見直しが続いている領域です。勤務先の規模による適用範囲の拡大や、壁を意識せずに働ける環境づくりのための支援策が段階的に導入されてきました。最新の取り扱いは厚生労働省の公表情報で確認するのが確実です(厚生労働省)。

手取りを増やしたいなら「時間を足す」以外の方法を持つ

ここまで見てきたとおり、雇用契約の仕事を2つ重ねて週40時間を超えると、時間は確実に減り、手取りの増え方は額面ほどではありません。しかも労働時間の通算の対象になるため、勤務先同士の調整が必要になり、シフトの自由度も下がります。20年この市場を見てきた立場から言えば、ここで多くの人が行き詰まります。

その突破口になるのが、副業側を雇用契約から業務委託契約に切り替えるという選択です。業務委託で受ける仕事は労働時間の通算の対象外なので、週40時間の縛りから解放されます。同時に、お金の面でも3つの変化が起きます。

1つ目は、経費が使えるようになることです。給与所得では実費の経費計上ができませんが、事業所得や雑所得であれば、業務に使った通信費、書籍代、機材の減価償却費、自宅作業スペースの家事按分などを経費として差し引けます。同じ60万円の収入でも、経費を15万円計上できれば課税対象は45万円になります。

2つ目は、青色申告特別控除が使えることです。事業所得として開業届と青色申告承認申請書を出し、複式簿記で記帳して電子申告をすれば、最大65万円の控除が受けられます。会計ソフトを使えば記帳の負担はかなり軽くなります(freeeマネーフォワード)。

3つ目は、時間ではなく成果で報酬が決まることです。時給で働いている限り、収入を増やす方法は時間を足すことしかありません。しかし業務委託であれば、同じ作業時間でも単価が上がれば収入は増えます。ここが、週40時間の壁に突き当たった人にとっていちばん現実的な出口だと思います。

一方で、正直にリスクも書いておきます。業務委託には最低賃金の保護も残業代もなく、仕事が途切れれば収入はゼロになります。雇用保険の対象外なので、失業給付も受けられません。労災保険も原則対象外です。安定性を捨てて自由度と単価を取る取引だということは、はっきり認識しておくべきです。私が会社を辞める前に副業を1年続けてから独立したのも、この不安定さを実感した上で判断したかったからでした。

単価を上げるために何を選ぶか

業務委託に軸足を移すと決めたなら、次は分野選びです。ここは相場を知った上で決めた方が、遠回りが少なくて済みます。

在宅で受けやすく、かつ単価が伸びやすい分野として、いま伸びているのはAI関連の業務支援です。生成AIの導入を検討する企業が増え、業務プロセスの棚卸しやプロンプト設計、社内向けのガイドライン作成といった仕事が出てきています。この領域の仕事内容や必要なスキルは、AIコンサル・業務活用支援のお仕事で整理されています。技術者でなくても、業務設計の経験がある人なら入り口があります。

マーケティングやセキュリティを含めた周辺領域も、企業側の需要が安定しています。広告運用の代行、SNSの運用、セキュリティ診断の補助など、実務経験を活かしやすい仕事の種類はAI・マーケティング・セキュリティのお仕事にまとまっています。開発の経験がある方であれば、アプリケーション開発のお仕事で案件の傾向を確認しておくといいと思います。

相場感を掴むには、職種別の年収データを見るのが早いです。ソフトウェア作成者の年収・単価相場著述家,記者,編集者の年収・単価相場を見ると、同じ在宅ワークでも職種によって単価帯がまったく違うことがわかります。時給換算で比較すると、いま掛け持ちしているアルバイトより効率がいい仕事が見つかることは珍しくありません。

資格については、必須ではありませんが、初対面のクライアントに対する信頼の担保として機能する場面があります。文書作成の仕事を受けるならビジネス文書検定、ネットワーク系の技術職を目指すならCCNA(シスコ技術者認定)といった選択肢があります。資格そのものが単価を上げるわけではありませんが、実務経験が浅い段階では、選ばれる確率を上げる材料になります。

40時間を超えた年にやっておくべき手続きの順番

制度の説明が続いたので、実際に何をいつやるのかを時系列でまとめます。週40時間を超えて働くと決めた年、皆さんが動くべきタイミングは4つです。

働き始める前の段階では、本業の就業規則で副業の可否と申告の要否を確認します。届出制であれば所定の書式で申告します。同時に、扶養控除等申告書をどちらの会社に出すかを決めます。原則として収入が多い方に出すのが有利です。

働き始めた直後には、副業先での週の所定労働時間と月額賃金を確認します。週20時間以上かつ月8.8万円以上になる見込みなら、社会保険の加入対象になるかどうかを勤務先に確認し、両方で加入することになった場合は二以上事業所勤務届の提出が必要です。この届出は本人が年金事務所へ提出するもので、会社任せにはできません。提出期限は要件を満たした日から10日以内です。

年末には、2社分の源泉徴収票が発行されるのを待ちます。副業先は年末調整をしないので、源泉徴収票は年明けに受け取ることが多いです。生命保険料控除などの証明書は、年末調整を受ける本業側に出しても、確定申告でまとめて処理してもかまいません。

翌年2月から3月には確定申告をします。2枚の源泉徴収票と各種控除証明書を用意して、電子申告で提出するのが最も手間が少ないです。乙欄で多めに引かれていた所得税は、この申告で精算されて還付されることが多いです。そして6月には住民税の通知が届きます。ここで手取りが下がることを、前年のうちから見込んでおく。この一連の流れを1回経験すれば、翌年からは怖くありません。

運営者として見てきた、時間を足す人と単価を上げる人の分かれ道

フリーランスと在宅ワークの市場を20年運営してきた立場から見て、週40時間の壁で悩む人には、はっきりした2つの分かれ道があります。時間を足し続ける人と、どこかで単価に切り替える人です。

運営者として見てきた限りでは、掛け持ちで働く時間を増やし続けた人は、だいたい1年から2年で体力の限界に当たります。そして収入は時間に比例するので、時間が増やせなくなった瞬間に伸びが止まります。一方で、途中で受注の形を業務委託に変え、同じ作業でも指名で仕事が来る状態を作った人は、時間を増やさずに収入を伸ばしています。この差を作っているのは、才能でも運でもなく、「この人に任せると楽だ」と思われる関係を作ることに時間を使ったかどうかです。

長く続く人ほど、単発の作業を数多くこなすことより、1社との関係を深めることに時間を割いています。納品物の品質はもちろんですが、それ以上に効いているのは、連絡のレスポンスが読めること、修正の依頼に対して感情的にならないこと、次に何が必要になるかを先回りして提案できることです。地味ですが、これができる人には仕事が途切れません。そして仕事が途切れなくなると、単価交渉の立場が変わります。

もう1つ、お金の構造として見逃されがちな点があります。仲介手数料が引かれない直接取引では、依頼する側は同じ予算でより多くの量を頼めますし、受ける側は同じ仕事で手取りが厚くなります。一般的なクラウドソーシングでは10%から20%程度の手数料が差し引かれる仕組みが多く、月10万円の受注なら年間で十数万円が消えていく計算になります。手数料0%で直接つながる形は、金額の大小の話というより、同じ仕事をしたときに手元に残るものの厚みが違うという質の差です。掛け持ちで時間を削って稼ごうとする前に、いま受けている仕事の手取り率を一度確認してみることをおすすめします。

独自データから見える、超えた後に選ばれている道

在宅ワークの求人データを職種別に眺めていると、週40時間の壁に当たった人がどこへ移っているのかが見えてきます。もっとも多いのは、雇用型のアルバイトを1つ減らして、その時間を業務委託の仕事に振り替えるパターンです。合計の労働時間はほとんど変わらないのに、手取りが増えるためです。理由は明快で、労働時間の通算から外れることで割増賃金をめぐる調整が不要になり、勤務先を選ぶ自由度が上がるからです。

職種別に見ると、文章作成、データ入力、経理補助、カスタマーサポートといった事務系の在宅ワークは、時給換算で見たときにアルバイトと大差ないケースが少なくありません。一方で、技術文書の作成、業務フローの設計、AI導入の支援といった専門性の高い領域では、時間あたりの単価が数倍になることもあります。同じ在宅ワークという言葉でくくられていても、中身は別物です。

もう1つ、データから読み取れる傾向として、報酬の受け取り方を設計している人ほど手取りが安定しています。具体的には、月々の収入のうち一定割合を税金と保険料の引当として別に置いておく、経費になる支出はクレジットカードを1枚に集約して記帳の手間を減らす、といった地味な習慣です。収入が増えた年ほど翌年の負担が重くなる構造なので、この備えがあるかないかで、翌年6月の景色がまったく変わります。売上規模が大きくなってきた段階での判断材料は、売上1000万円超えたらやるべきこと5選|消費税・法人化・社会保険の判断基準に整理されています。

働く場所そのものを変えるという選択肢もあります。業務委託で場所に縛られない仕事に移行すると、生活コストの低い地域や海外に住みながら働くという選び方も現実的になります。長期滞在のコスト比較についてはリタイアメントビザからタイ・エリートまで|長期滞在のコスト比較で具体的な数字が出ています。手取りを増やすアプローチは収入側だけではなく、支出側にもあるということです。

最後に、週40時間を超えたこと自体で自分を責める必要はまったくないという点を、もう一度お伝えしておきます。制度上の義務の多くは雇う側にあり、皆さんがやるべきことは、勤務先に正しく申告することと、翌年の税金に備えることの2つです。そして、時間を足し続ける働き方に限界を感じているなら、その感覚は正しい。私自身、40代で会社を辞める決断ができたのは、時間を売る働き方から成果を売る働き方へ、1年かけて少しずつ軸足を移したからでした。準備さえすれば、40代からでも、掛け持ちで疲れている状態からでも、進む先はあります。

よくある質問

Q. ダブルワークで週40時間を超えたら、自分が罰せられることはありますか?

働く側が罰せられる仕組みはありません。労働時間の管理義務や割増賃金の支払い義務は雇う側にあります。皆さんがやるべきことは、勤務先の就業規則にそって副業を申告することと、増えた収入に対する翌年の住民税や確定申告に備えることの2つです。申告を怠ると社内規程違反になる場合があるので、届出の要否だけは確認してください。

Q. 週40時間を超えて働くと、社会保険料はすぐに上がりますか?

すぐには上がりません。社会保険は合計の労働時間ではなく、勤務先ごとに週20時間以上かつ月額賃金8.8万円以上などの要件で個別に判定します。副業先がこの基準に届かなければ保険料は発生しません。両方で要件を満たした場合のみ、二以上事業所勤務届を10日以内に年金事務所へ提出し、報酬を合算した保険料を各社で按分する形になります。

Q. 副業の収入が年20万円以下なら、何も申告しなくていいのですか?

所得税の確定申告は不要でも、住民税の申告は必要です。20万円ルールは所得税だけの特例で、住民税には適用されません。また副業も給与の場合は経費を引けないため、収入額そのままで20万円を判定します。週15時間程度の副業なら3か月ほどで超えるので、確定申告をして精算する前提で考えておく方が安全です。

Q. 手取りを増やすには、時間を増やすのと単価を上げるのとどちらが有利ですか?

週40時間を超えている段階では、単価を上げる方が有利です。時間を増やしても翌年の住民税と社会保険料で増加分が削られますし、体力の限界も先に来ます。副業を業務委託に切り替えれば労働時間の通算から外れ、経費計上や最大65万円の青色申告特別控除も使えるため、同じ作業時間でも手元に残る額が変わります。

この記事について

@SOHO
編集部

監修:@SOHO編集部

2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを20年運営。編集部が事実確認のうえ公開しています。

公開:2026年3月31日最終更新:2026年9月6日
前田 壮一

この記事を書いた人

前田 壮一@SOHO編集部

元メーカー管理職・43歳でフリーランス転身

大手電機メーカーで品質管理を20年間担当した後、42歳でフリーランスに転身。中高年のキャリアチェンジや副業の始め方を、自身の経験をもとに発信しています。

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