クリティカルパスとは|工程表で遅れが全体に響く作業を見つける方法

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クリティカルパスとは|工程表で遅れが全体に響く作業を見つける方法

この記事のポイント

  • ✓作業の順番と所要日数から求めた
  • ✓プロジェクトの中で最も長くかかる作業の経路です
  • ✓求め方の手順を7つの作業の小さな例で計算し

プロジェクトの工程表を作ったのに、どの作業が遅れると納期に響くのかが分からない。そんなときに役立つのが「クリティカルパス」という考え方です。クリティカルパスとは、作業の順番と所要日数をもとに求めた、プロジェクトの始まりから終わりまでで最も長くかかる作業のつながり(経路)のことです。この経路の上にある作業が1日遅れると、プロジェクト全体の完了も1日遅れます。この記事では、クリティカルパスの意味と、7つの作業からなる小さな例を使った求め方の手順、余裕日数の出し方、納期を縮める方法、注意点、そして紙やExcelからチームで使う道具までの管理のしかたを順に説明します。遅れが響く作業と担当を、チームの全員で同じ画面で追いたい場合に使えるPinatecaのような道具の使いどころも、後半で紹介します。

クリティカルパスとは何か

プロジェクトには、たくさんの作業があります。その中には、前の作業が終わらないと始められない作業もあれば、ほかの作業と並行して進められる作業もあります。並行して進められる作業がある以上、プロジェクト全体の長さは、すべての作業の日数を足した合計にはなりません。全体の長さを決めるのは、始まりから終わりまで、順番につながった作業の経路のうち、最も長い経路です。

この最も長い経路を、クリティカルパスと呼びます。「クリティカル(critical)」は「決定的な」「重大な」という意味、「パス(path)」は「経路」という意味です。日本語では「最長経路」と訳されることもあります。

クリティカルパスの上にある作業には、日程の余裕がありません。ここが1日遅れれば、全体の完了も1日遅れます。反対に、クリティカルパスに乗っていない作業には、いくらかの余裕があります。多少遅れても、全体の完了には響かないことがあるのです。

この違いを知っていると、プロジェクトの管理のしかたが大きく変わります。すべての作業を同じ熱心さで見張るのではなく、遅れが全体に響く作業に注意を集中できるからです。限られた人手や時間をどこに使うかを決めるうえで、クリティカルパスは強力な判断の材料になります。

クリティカルパスの考え方は、1950年代のアメリカで、工場の建設や保守の計画を立てる手法として生まれたとされています。同じころに、軍の大きな開発の計画のために「PERT(パート)」という手法も作られました。PERTは、作業の順番を矢印でつないだ図で計画を表す手法で、クリティカルパスの考え方と組み合わせて使われることが多くあります。いまでは、建設、製造、ソフトウェアの開発、イベントの準備など、さまざまな分野で使われています。

クリティカルパスを知ると何が分かるか

クリティカルパスを求めると、プロジェクトについて次の3つのことが分かります。

1つ目は、プロジェクトの最短の完了日です。どんなに頑張っても、作業の順番と日数が変わらない限り、クリティカルパスの長さより早くは終わりません。お客様や上司から「いつ終わるか」と聞かれたとき、根拠のある日付を答えられるようになります。

2つ目は、遅れてはいけない作業です。クリティカルパスに乗っている作業は、1日の遅れがそのまま全体の遅れになります。こうした作業には、経験のある担当者を割り当てる、こまめに進み具合を確かめる、といった手を打てます。

3つ目は、余裕のある作業と、その余裕の大きさです。クリティカルパスに乗っていない作業には、何日遅れても全体に響かないかという「余裕日数」があります。余裕日数が分かれば、急ぎの依頼が入ったときに、どの作業の担当者なら一時的に手伝いに回せるかを判断できます。

分かること 使いみち
最短の完了日 納期の約束に根拠を持たせる
遅れてはいけない作業 担当の割り当てと見張り方を決める
余裕のある作業と余裕日数 人手の融通や、作業の順番の組み替えを考える

似た言葉に「ボトルネック」があります。ボトルネックとは、流れの中で処理の能力が最も低く、全体の速さを決めてしまっている部分のことです。工場の生産ラインのように、同じ作業を繰り返す流れで使われることが多い言葉です。クリティカルパスが「日程の上で最も長い経路」を指すのに対し、ボトルネックは「処理の能力が最も低い場所」を指します。どちらも全体を左右する部分を見つける考え方ですが、見ている対象が違います。

求める前に用意する3つの情報

クリティカルパスを求めるには、次の3つの情報が必要です。

  1. 作業の一覧:プロジェクトに含まれる作業を、漏れなく洗い出します。作業が大きすぎると日数を見積もりにくいので、数日から2週間程度で終わる大きさに分けておきます
  2. 各作業の所要日数:それぞれの作業に何日かかるかを見積もります
  3. 作業の前後の関係:それぞれの作業について、「どの作業が終わったら始められるか」を決めます。この前に終わっている必要がある作業を「先行作業」と呼びます

この3つの中で、最も難しく、最も大事なのが所要日数の見積もりです。会計ソフトの会社の解説でも、見積もりの精度がクリティカルパスの信頼性を左右すると指摘されています。

各タスクの所要時間が正しく見積もられていなければ、クリティカルパスの算出結果も信頼性を失ってしまいます。 見積もりが甘いと、納期予測やリソース計画そのものが不正確になり、結果として計画全体が形骸化してしまう恐れがあります。精度の高い見積もりを行うためには、過去の実績や専門家の経験値を活用することが重要です。 出典: freee.co.jp

見積もりは、過去の似たプロジェクトでかかった日数を参考にするのが基本です。記録がない場合は、その作業を実際に担当する人に聞くのが近道です。管理する人が頭の中で決めた日数は、現場の実感とずれやすくなります。

また、日数の単位をそろえておくことも大切です。「営業日」で数えるのか「暦の日」で数えるのかを最初に決めておかないと、計算の途中で混乱します。この記事の例では、すべて営業日で数えます。

小さな例でクリティカルパスを求める

ここからは、7つの作業からなる小さなWebサイトの制作を例に、クリティカルパスを実際に求めてみます。紙とペンがあれば計算できるので、手を動かしながら読み進めてください。

例の作業一覧

作業 内容 所要日数 先行作業
A 要件の整理 3日 なし
B デザインの作成 5日 A
C 原稿の作成 4日 A
D コーディング 6日 B
E 原稿の流し込み 2日 C、D
F 画像の準備 3日 B
G 最終確認 2日 E、F

まず要件を整理し(A)、それが終わったらデザイン(B)と原稿(C)を並行して進めます。デザインが終わったら、コーディング(D)と画像の準備(F)を並行して進めます。原稿の流し込み(E)は、原稿とコーディングの両方が終わってから始められます。最後の確認(G)は、流し込みと画像の準備の両方が終わってから行います。

手順1:経路をすべて書き出す

作業の前後の関係をたどって、始まりから終わりまでの経路をすべて書き出します。この例では、経路は次の3本です。

経路 日数の合計
A → B → D → E → G 3+5+6+2+2=18日
A → B → F → G 3+5+3+2=13日
A → C → E → G 3+4+2+2=11日

最も長いのは、A → B → D → E → G の18日です。これがクリティカルパスです。このプロジェクトは、最短でも18営業日かかることが分かります。

作業が少ないうちは、このように経路をすべて書き出すだけで求められます。ただし、作業が増えると経路の数が急に増えて、書き出すのが大変になります。そこで使われるのが、次の手順2と手順3の計算です。

手順2:前から順に「最も早く始められる日」を計算する

1つ目の計算は、始まりから順に、各作業を最も早く始められる日(最早開始日)と、最も早く終えられる日(最早終了日)を求めるものです。日付は「プロジェクトの開始から何日目か」で数え、開始の時点を0とします。

  • A:先行作業がないので、0日目に始めて、3日目に終わる
  • B:Aが終わる3日目に始めて、3+5=8日目に終わる
  • C:Aが終わる3日目に始めて、3+4=7日目に終わる
  • D:Bが終わる8日目に始めて、8+6=14日目に終わる
  • F:Bが終わる8日目に始めて、8+3=11日目に終わる
  • E:CとDの両方が終わっている必要がある。Cは7日目、Dは14日目に終わるので、遅いほうの14日目に始めて、16日目に終わる
  • G:EとFの両方が終わっている必要がある。Eは16日目、Fは11日目に終わるので、遅いほうの16日目に始めて、18日目に終わる

ここで大切なのは、先行作業が複数あるときは、その中で「最も遅く終わる日」に合わせることです。両方が終わらないと始められないからです。最後の作業Gが終わる18日目が、プロジェクトの最短の完了日になります。

手順3:後ろから順に「最も遅く始めてよい日」を計算する

2つ目の計算は、反対に終わりから順にさかのぼって、全体の完了を18日目に保つために、各作業を最も遅く始めてよい日(最遅開始日)と、最も遅く終えてよい日(最遅終了日)を求めるものです。

  • G:18日目に終わればよいので、18-2=16日目までに始めればよい
  • E:Gが16日目に始まるので、16日目までに終えればよい。始めるのは16-2=14日目まで
  • F:Gが16日目に始まるので、16日目までに終えればよい。始めるのは16-3=13日目まで
  • D:Eが14日目に始まるので、14日目までに終えればよい。始めるのは14-6=8日目まで
  • C:Eが14日目に始まるので、14日目までに終えればよい。始めるのは14-4=10日目まで
  • B:後に続くDは8日目、Fは13日目に始まる。早いほうの8日目までに終えればよい。始めるのは8-5=3日目まで
  • A:後に続くBは3日目、Cは10日目に始まる。早いほうの3日目までに終えればよい。始めるのは3-3=0日目まで

後ろからさかのぼるときは、後に続く作業が複数あるなら、その中で「最も早く始まる日」に合わせます。どれか1つでも遅らせると全体に響くからです。

手順4:余裕日数を求めて、クリティカルパスを確かめる

各作業について、「最も遅く始めてよい日」から「最も早く始められる日」を引くと、その作業の余裕日数が分かります。

作業 最早開始日 最遅開始日 余裕日数
A 0日目 0日目 0日
B 3日目 3日目 0日
C 3日目 10日目 7日
D 8日目 8日目 0日
E 14日目 14日目 0日
F 8日目 13日目 5日
G 16日目 16日目 0日

余裕日数が0日の作業をつなげると、A → B → D → E → G となり、手順1で求めたクリティカルパスと一致します。原稿の作成(C)には7日、画像の準備(F)には5日の余裕があることも分かりました。たとえば、原稿の担当者が急な用事で数日休んでも、7日以内の遅れなら全体の完了日は変わりません。

この余裕日数は、専門的には「トータルフロート」と呼ばれます。手順2から手順4までの計算は、作業の数が数十、数百に増えても同じやり方で進められるので、表計算のソフトや管理の道具でも同じ考え方で計算されています。

PERT図でクリティカルパスを描く

計算の結果を図にすると、関係者に説明しやすくなります。よく使われるのが、作業の順番を矢印でつないだPERT図です。

PERT図の描き方にはいくつかの流儀がありますが、分かりやすいのは、作業を四角い箱で描き、先行作業から後の作業へ矢印を引く方法です。箱の中には、作業の名前、所要日数、最早開始日、最遅開始日を書き込みます。先ほどの例なら、Aの箱から BとCの箱へ矢印が伸び、Bの箱からDとFの箱へ、CとDの箱からEの箱へ、EとFの箱からGの箱へ矢印が伸びる形になります。

描き終えたら、余裕日数が0日の作業をつなぐ矢印を、太い線や赤い線でなぞります。これがクリティカルパスです。図を見た人は、どの作業が遅れてはいけないのかを、計算の中身を知らなくても理解できます。

工程表としてよく使われるガントチャートにも、クリティカルパスを描き込めます。ガントチャートとは、縦に作業を並べ、横に日付を並べて、作業の期間を横棒で描いた表のことです。クリティカルパスに乗っている作業の横棒だけを赤く塗れば、どの期間に注意を集中すべきかがひと目で分かります。余裕のある作業の横棒の後ろに、余裕日数の長さを薄い色で描き加えておく方法もあります。

PERT図は作業の前後の関係を見るのに向き、ガントチャートは日付の上での並びを見るのに向いています。計画を立てる段階ではPERT図、進み具合を追う段階ではガントチャート、と使い分けると、それぞれの良さを生かせます。

納期を縮めたいときの2つの方法

クリティカルパスを求めた結果、お客様の希望する納期より長くかかることが分かる場合があります。そんなときに使える代表的な方法が2つあります。

方法1:クリティカルパス上の作業に人を加えて早める

1つ目は、クリティカルパスに乗っている作業に、人手や費用をかけて日数を縮める方法です。「クラッシング」と呼ばれます。先ほどの例なら、コーディング(D)に担当者をもう1人加えて、6日を4日に縮められれば、全体も2日短くなります。

注意したいのは、クリティカルパスに乗っていない作業をいくら早めても、全体は縮まらないことです。原稿の作成(C)を4日から2日に縮めても、完了日は18日目のままです。人や費用をかけるなら、クリティカルパス上の作業に絞ります。

方法2:順番に進める作業を重ねて進める

2つ目は、本来は前の作業が終わってから始める作業を、一部重ねて並行して進める方法です。「ファストトラッキング」と呼ばれます。たとえば、デザイン(B)が全部終わる前に、決まったページからコーディング(D)を始める、といった進め方です。

この方法は、費用をかけずに日数を縮められる一方で、手戻りのリスクが増えます。デザインが後から変わると、先に進めたコーディングを作り直すことになるからです。重ねて進めるのは、変更が少ないと見込める部分に限るのが安全です。

方法 縮め方 注意点
クラッシング クリティカルパス上の作業に人や費用をかける 人を加えても比例して早くなるとは限らない
ファストトラッキング 順番に進める作業を一部重ねる 前の作業が変わると手戻りが出る

どちらの方法でも、日数を縮めると、別の経路が新しいクリティカルパスになることがあります。先ほどの例で、コーディングを大きく縮めると、A → B → F → G の経路(13日)との差が小さくなります。縮めたあとは、もう一度計算し直して、どの経路が最も長いかを確かめます。

クリティカルパスを使うときの注意点

クリティカルパスは便利な考え方ですが、使い方を誤ると、かえって計画が当てにならなくなります。次の点に注意します。

1つ目は、見積もりが外れると結果も変わることです。物流の分野の解説でも、この点が指摘されています。

クリティカルパスは計画段階での仮定や予測に基づいて算出されるため、実際の進行状況とズレが生じるリスクがあります。予測が外れると、クリティカルパス自体が変更となり、再度の分析が必要となります。このため、柔軟な対応が求められ、リスク管理が欠かせません。 出典: hacobu.jp

プロジェクトが進むと、実際にかかった日数が見積もりと違ってきます。余裕のある作業が大きく遅れると、その作業が新しいクリティカルパスに入ることもあります。計画を立てたときに一度求めて終わりにせず、週に1回など定期的に計算し直すことが大切です。

2つ目は、余裕日数に近い作業を見落とさないことです。クリティカルパスに乗っていなくても、余裕日数が1日や2日しかない作業は、少し遅れただけで全体に響きます。こうした「クリティカルに近い経路」も、あわせて見張っておきます。

3つ目は、人手の制約が計算に入っていないことです。クリティカルパスの計算は、作業の順番と日数だけで行います。同じ人が2つの作業を担当していて、実際には並行して進められない場合、計算どおりには進みません。担当者の重なりも確かめておく必要があります。人手の制約まで考えて計画を立てる「クリティカルチェーン」という考え方もあります。

4つ目は、余裕日数を使い切ってしまう傾向です。余裕があると分かっている作業は、ぎりぎりまで手を付けずに後回しにされがちです。そうすると、予想外の問題が起きたときに吸収する余裕がなくなります。余裕日数は「遅れてもよい日数」ではなく、「問題が起きたときに使える予備」と考えておきます。

身近な場面でクリティカルパスを考える

クリティカルパスは、仕事のプロジェクトだけでなく、身の回りの段取りにも当てはめられます。考え方に慣れるために、2つの身近な場面で考えてみます。

朝食の支度

ご飯を炊く、味噌汁を作る、魚を焼く、という3つの作業で朝食を用意する場面を考えます。ご飯は炊飯器で40分、味噌汁は15分、魚は焼き網で12分かかるとします。3つの作業はどれも並行して進められるので、全体の時間は一番長いご飯の40分で決まります。このとき、クリティカルパスは「ご飯を炊く」です。

ここで、味噌汁と魚を急いで作っても、朝食ができあがる時刻は早まりません。早めたいなら、ご飯の炊き方を変える(早炊きを使う、前の晩に予約しておく)しかありません。反対に、味噌汁と魚には余裕があるので、ご飯を炊き始めてから20分ほどたってから取りかかっても間に合います。これがクリティカルパスの考え方そのものです。

引っ越しの準備

引っ越しのように、作業の前後の関係が複雑な場面では、クリティカルパスの効果がよりはっきりします。新しい部屋の契約、引っ越しの業者の予約、荷造り、役所での住所の変更、電気やガスやインターネットの手続きなど、多くの作業があります。

この中で日数がかかり、しかも自分の努力では早められないのが、部屋の契約の審査や、インターネットの回線の工事です。回線の工事は、申し込みから工事の日まで数週間かかることもあり、引っ越しの日までに使えるようにしたいなら、真っ先に申し込む必要があります。荷造りは自分の頑張りで早められますが、工事の日程は変えられません。日数がかかり、しかも動かせない作業がクリティカルパスに入りやすいことが、この例から分かります。

身近な例で考えると、クリティカルパスとは「全体の終わりを決めている作業を見つけて、そこから先に手を打つ」という段取りの考え方だと理解できます。仕事のプロジェクトでも、まず日数がかかって動かせない作業を見つけ、そこから計画を組み立てると、無理のない計画になります。

進み具合をクリティカルパスで確かめる

クリティカルパスを求めたら、プロジェクトが進むあいだ、定期的に進み具合を確かめます。確かめ方の流れは次のとおりです。

  1. クリティカルパスに乗っている作業の進み具合を、担当者に確かめる
  2. 遅れている作業があれば、何日遅れているかを確かめる。クリティカルパス上の作業なら、その日数がそのまま全体の遅れになる
  3. 余裕のある作業の遅れが、余裕日数を超えていないかを確かめる。超えていれば、その作業が新しくクリティカルパスに入る
  4. 全体の完了日に影響がある場合は、前の節で紹介した2つの方法で縮められないかを検討する
  5. 縮められない場合は、お客様や上司に早めに相談する

この確かめ方を週に1回続けると、遅れが小さいうちに気づけます。特に大切なのは3つ目です。余裕のある作業は見張りが手薄になりがちで、気づいたときには余裕を使い切って全体の遅れになっていた、ということが起きやすいからです。

確かめた結果は、工程表に書き残しておきます。いつ、どの作業が、何日遅れたかの記録は、次に似たプロジェクトを計画するときの見積もりの材料になります。前の節で見たとおり、クリティカルパスの信頼性は見積もりの精度で決まるので、記録を積み重ねるほど、次の計画が確かなものになります。

紙・Excel・ツールでの管理のしかた

クリティカルパスの管理は、プロジェクトの規模によって道具を選びます。

作業が10個程度までの小さなプロジェクトなら、この記事の例のように、紙に経路を書き出して計算するだけで十分です。チームで同じ部屋にいるなら、ホワイトボードにPERT図を描いて、クリティカルパスを赤い線でなぞっておくと、全員が同じ認識で進められます。

作業が数十個になったら、ExcelやGoogleスプレッドシートで管理表を作る方法があります。列に「作業」「所要日数」「先行作業」「最早開始日」「最遅開始日」「余裕日数」を並べ、最早開始日には先行作業の最早終了日のうち最も大きい値を、最遅開始日には後に続く作業の最遅開始日のうち最も小さい値から自分の日数を引いた値を、計算式で入れていきます。日付を横に並べたセルを条件に合わせて塗れば、簡易的なガントチャートにもなります。

関わる人が増え、作業の担当や進み具合を全員で追いたくなったら、チームで使う管理の道具を使う段階です。その選択肢の1つが、Pinatecaです。公式サイトによると、Pinatecaはカンバン、ガントチャート、カレンダー、リスト、ディスカッション、グリッド、時間割、リソースの8種類のボードを使い分けられるプロジェクト管理の道具です。ガントチャートのボードでは、カードの期間が横棒で並び、バーをドラッグすれば開始日も締め切りもその場で変えられます。今日の日付の線より左で終わっていないバーが遅れとして見え、担当者別やラベル別の絞り込みもできると案内されています。

公式サイトには、作業の前後の関係から最長の経路を自動で計算する機能の記載はないため、クリティカルパスそのものは紙や表計算で求めておき、該当する作業のカードに「クリティカル」のようなラベルを付けて使う方法が考えられます。ラベルで絞り込めば、遅れてはいけない作業だけをガントチャートに並べて確かめられます。リソースのボードでは、人やグループを縦に、日付を横に並べて割り当てを見られるので、同じ人に作業が重なっていないかという、前の節で触れた人手の制約の確認にも使えます。

料金は、5人までのチームならボード10個まで無料で、ガントチャートを含むすべての種類のボードを使えます。6人目、または11個目のボードからはスタンダードプラン(1人あたり月額500円・税抜、年払いなら1人あたり月額400円)になると案内されています。

Pinatecaは、@SOHOを運営する株式会社ライフスケープが開発・提供しています。

仕事の場で生きるクリティカルパスの考え方

クリティカルパスの考え方は、大きなプロジェクトの管理者だけのものではありません。フリーランスや在宅で仕事を請ける人にとっても、納期を守り、無理のない受け方をするための道具になります。

たとえば、Webサイトの制作やアプリの開発を請けるとき、お客様から「来月末までにできますか」と聞かれたら、作業を洗い出してクリティカルパスを求めれば、根拠のある返事ができます。最短でも何営業日かかるのか、お客様の確認にかかる日数をどこに見込むのか、どの作業を並行して進められるのかを示せば、お客様も計画を立てやすくなります。開発の仕事の種類や進め方はアプリケーション開発のお仕事で紹介しています。

デザインの仕事でも、お客様の確認待ちがクリティカルパスに入ることがよくあります。確認の返事が1日遅れると納品も1日遅れる、という関係をあらかじめ伝えておくと、確認を急いでもらいやすくなります。デザインの仕事の相場はデザイナーの年収・単価相場で確かめられます。

企業の業務の改善を手伝う仕事では、工程の洗い出しと最長の経路の見極めそのものが、提供する価値の一部になります。業務の流れを整理し、どこで待ちが生まれているかを示す作業は、AIや新しい道具の導入を支援する仕事の出発点にもなります。こうした仕事の内容はAIコンサル・業務活用支援のお仕事で紹介しています。経営の側から計画を立てる力を体系的に学びたい人には、中小企業診断士の資格も1つの道です。

2004年から在宅ワークとフリーランスの仲介を続けてきた運営者として見てきた限りでは、納期をめぐるトラブルの多くは、作業そのものの遅れより、確認待ちや資料待ちといった「自分の手の外にある作業」が計画に入っていないことから起きています。こうした待ちの時間をはじめから経路に含め、お客様と共有している人ほど、納期の相談がこじれにくく、次の依頼にもつながっています。

依頼する側と受ける側が直接やり取りできる場では、工程や納期の相談も仲介を挟まずに進められます。中間の手数料が引かれない分、受ける側の手取りが厚くなり、頼む側も同じ予算で頼める範囲が広がります。計画の根拠を示しながら直接話し合える関係は、双方にとって納期を守りやすい関係でもあります。

よくある質問

Q. クリティカルパスは手計算でも求められますか?

求められます。作業が10個程度までなら、始まりから終わりまでの経路をすべて書き出し、日数を合計して最も長い経路を探すだけで済みます。作業が多い場合は、前から順に最も早く始められる日を、後ろから順に最も遅く始めてよい日を計算し、その差が0日の作業をつなげます。表計算のソフトを使えば、同じ計算を計算式で自動にできます。

Q. クリティカルパスは途中で変わることがありますか?

変わります。実際にかかった日数が見積もりと違ってくると、余裕のあった作業が遅れて新しく最長の経路に入ったり、短縮の工夫で別の経路が最長になったりします。計画を立てたときに一度求めて終わりにせず、週に1回など定期的に計算し直すことが大切です。余裕日数が1日や2日しかない作業も、あわせて見張っておきます。

Q. クリティカルパスとボトルネックの違いは何ですか?

クリティカルパスは、作業の順番と日数から求めた、日程の上で最も長い作業の経路です。ボトルネックは、流れの中で処理の能力が最も低く、全体の速さを決めてしまっている場所を指し、生産ラインのように同じ作業を繰り返す流れで使われることが多い言葉です。どちらも全体を左右する部分を見つける考え方ですが、見ている対象が違います。

Q. 納期を早めたいとき、どの作業を急がせればよいですか?

最長の経路に乗っている作業を急がせます。経路に乗っていない作業をいくら早めても、全体の完了日は変わりません。方法は、該当する作業に人や費用をかけて日数を縮めるか、順番に進める作業を一部重ねて進めるかの2つが代表的です。後者は手戻りのリスクが増えるため、変更が少ないと見込める部分に限るのが安全です。縮めたあとは計算し直します。

この記事について

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監修:@SOHO編集部

2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを運営。生成AIで作成した下書きを、一次情報と照らし合わせて確認したうえで公開しています。

公開:2026年8月4日最終更新:2026年10月18日
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