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危機管理マニュアルの作り方|起きたときの連絡と対応の決め方

@SOHO編集部
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危機管理マニュアルの作り方|起きたときの連絡と対応の決め方

この記事のポイント

  • ✓危機管理マニュアルの作り方を
  • ✓想定する危機の洗い出し
  • ✓訓練と見直しの順に説明します

危機管理マニュアルを作るように言われたものの、何から書けばよいのか分からず、ほかの会社や学校の見本を眺めて止まっている人は少なくありません。危機管理マニュアルの中心は、立派な文章ではなく「起きたときに誰が、誰に、何を、どの順番で伝え、何をするか」を決めておくことで、ここさえ決まれば、小さな事業所でも数日で最初の版を作れます。この記事では、想定する危機の洗い出し、連絡体制の決め方、起きた直後の初動、危機の種類ごとの対応、記録の残し方、訓練と見直しまでを順に説明します。マニュアルの見直し作業や、起きたあとの対応の分担を複数人で進めるときは、プロジェクト管理ツールのPinatecaのような道具で担当と期限を共有する方法もあり、後半で紹介します。

危機管理マニュアルとは何か

危機管理マニュアルとは、事故や災害、トラブルなど、組織にとって望ましくない出来事が起きたときに、職員や従業員がとるべき行動と手順を、あらかじめ文書にしておいたものです。起きてから考えるのでは間に合わない判断を、落ち着いているうちに決めておくのが目的です。

危機が起きた直後は、誰でも冷静さを失います。責任者が不在だったり、連絡がつかなかったりすることもあります。そのとき、マニュアルに「まず何をするか」「誰に連絡するか」「誰が判断するか」が書いてあれば、その場にいる人が迷わずに動けます。逆に、マニュアルがあっても、どこに保管されているか誰も知らない、内容を読んだことがない、という状態では役に立ちません。作ることと同じくらい、全員が中身を知っていることが大切です。

学校については、文部科学省が「学校の危機管理マニュアル作成の手引」を公表しており、マニュアルの目的を次のように説明しています。

危機管理マニュアルは、学校管理下で事故等が発生した際、教職員が的確に判断し円滑に対応できるよう、教職員の役割等を明確にし、児童生徒等の安全を確保する体制を確立するために必要な事項を全教職員が共通に理解するために作成するものです。このため、作成した後も、訓練等の結果を踏まえた検証・見直しをすることが必要です。 出典: mext.go.jp

この考え方は、学校に限らず、会社や店舗、介護や保育の事業所、在宅で働く人のチームにもそのまま当てはまります。役割を決めておくこと、全員が中身を知っていること、訓練の結果で見直すこと。この3つが、どの組織の危機管理マニュアルにも共通する土台です。

事業継続計画との違い

危機管理マニュアルとよく似た言葉に、事業継続計画があります。英語の頭文字を取ってBCPとも呼ばれます。内閣府の事業継続ガイドライン(令和5年3月)は、事業継続計画を次のように定義しています。

大地震等の自然災害、感染症のまん延、テロ等の事件、大事故、サプライチェーン(供給網)の途絶、突発的な経営環境の変化など不測の事態が発生しても、重要な事業を中断させない、または中断しても可能な限り短い期間で復旧させるための方針、体制、手順等を示した計画のことを事業継続計画(Business Continuity Plan、BCP)と呼ぶ。 出典: bousai.go.jp

両者の違いを大まかに分けると、危機管理マニュアルは「起きた直後に、人の安全を守り、被害を広げないための行動」を中心に書くもので、事業継続計画は「その後、仕事をどう続け、どう元に戻すか」を中心に書くものです。

項目 危機管理マニュアル 事業継続計画
主な目的 人の安全を守り、被害の拡大を防ぐ 重要な仕事を止めない、早く戻す
主な時間 起きる前の備えと、起きた直後 起きたあとの数日から数か月
主な中身 連絡体制、初動、避難、記録 優先する仕事、代わりの手段、復旧の目標

実際には、両者ははっきり分かれているわけではなく、危機管理マニュアルの中に事業継続の考え方を一部含める組織も多くあります。小さな事業所であれば、まず危機管理マニュアルを作り、その中に「止めてはいけない仕事」と「代わりの手段」を1ページ加える形から始めると、無理なく両方の備えができます。

止めてはいけない仕事を決めるときは、「その仕事が1日止まると誰が困るか」「1週間止まるとどうなるか」を考えます。たとえば、顧客からの注文の受付、給与の支払い、取引先への納品、利用者の安全に関わるサービスなどは、止まると影響が大きい仕事です。それぞれについて、担当者が不在のときに代わる人、事業所が使えないときに作業する場所、システムが止まったときに紙や電話で代わりに行う方法を1行ずつ書いておくだけでも、いざというときの動きが変わります。反対に、数日止まっても大きな影響のない仕事は、危機のときには後回しにしてよいと決めておくと、限られた人手を大事な仕事に集中できます。

危機管理の3つの段階

危機管理は、起きる前、起きたとき、起きたあとの3つの段階に分けて考えると整理しやすくなります。文部科学省の手引も、対応を「事前の危機管理」「個別の危機管理」「事後の危機管理」の3つに分けています。

起きる前の備え

危機を起こさないための点検と、起きたときに備える準備の段階です。設備や建物の点検、連絡先の一覧の整備、備蓄品の用意、避難経路の確認、訓練などがここに入ります。危機管理マニュアルの大半は、実はこの段階で決めておくことです。

起きたときの対応

危機が起きた直後に、被害を最小限に抑える段階です。安全の確保、通報、連絡、状況の把握、判断、外部への説明などがここに入ります。時間との勝負になるので、手順は短く、具体的に書きます。

起きたあとの対応

緊急の対応が一段落したあと、元の状態に戻していく段階です。関係者への説明、心のケア、原因の調査、再発防止策、マニュアルの見直しなどがここに入ります。この段階を省くと、同じ危機が繰り返されます。

マニュアルを作るときは、この3つの段階ごとに章を分けておくと、読む人がいま必要な部分をすぐに探せます。

作る前に決めること

危機管理マニュアルを書き始める前に、次の3つを決めておきます。ここが曖昧なまま書き始めると、途中で範囲が広がりすぎて完成しなくなります。

対象の範囲

マニュアルが対象とする場所と人を決めます。本社だけなのか、店舗や支店も含むのか。正社員だけなのか、アルバイトや業務委託の人、来客も含むのか。在宅で働く人がいる場合は、自宅で危機に遭ったときの連絡の方法も対象に入れるかどうかを決めます。

作る人と決める人

マニュアルの原案を作る担当者と、内容を最終的に決める責任者を決めます。原案は総務や安全の担当者が中心になって作り、現場の意見を聞いて修正し、責任者が決める、という流れが一般的です。現場で働く人が関わらないと、実際には動けない手順が書かれてしまいます。

完成の期限と最初の版の範囲

最初から完璧なマニュアルを目指すと、いつまでも完成しません。まず連絡体制と、起こりやすい2つか3つの危機についての初動だけを書いた最初の版を作り、1か月以内に全員に配る、といった期限を決めます。残りの危機については、見直しのたびに加えていきます。

想定する危機を洗い出す

次に、自分の組織で起こりうる危機を書き出します。業種や場所によって、起こりやすい危機は違います。まずは種類ごとに思いつくものを並べてみます。

種類 例
自然災害 地震、台風、大雨、洪水、土砂災害、大雪
火災・事故 火災、ガス漏れ、停電、断水、けが、交通事故
健康 感染症の流行、急病人、食中毒
情報 個人情報の漏えい、不正アクセス、システムの停止、誤送信
人と信用 不審者、顧客からの重大な苦情、SNSでの批判の拡散、不祥事
取引 取引先の倒産、仕入れの停止、主要な担当者の急な不在

書き出したら、それぞれについて「起こりやすさ」と「起きたときの影響の大きさ」を3段階で見積もり、両方が高いものから順にマニュアルに書いていきます。洗い出しは担当者が1人で行うより、現場で働く人に「ここ数年で困ったこと」「ひやりとしたこと」を聞いて集めるほうが、実際に起こりやすい危機が見えてきます。過去に起きた小さなトラブルは、次に大きな危機として起きる前の兆しであることが多いからです。たとえば、海や川の近くにある事業所なら大雨や洪水、顧客の個人情報を多く扱う事業所なら情報の漏えい、来客が多い店舗なら急病人やけが、といった具合に、優先する危機が決まってきます。

自然災害の起こりやすさは、市区町村が公表しているハザードマップ(災害の危険がある区域を示した地図)で確かめられます。事業所の所在地が浸水しやすい区域や土砂災害の警戒区域に入っているかどうかは、マニュアルの避難の手順を決めるうえで欠かせない情報です。

マニュアルの目次の例

洗い出した危機をもとに、マニュアルの目次を作ります。小さな事業所であれば、次のような構成で十分です。

  1. このマニュアルの目的と対象
  2. 平時の備え(点検、備蓄、連絡先の一覧、訓練の予定)
  3. 連絡体制と判断する人の順番
  4. 危機が起きたときの共通の初動
  5. 危機の種類ごとの対応(地震、火災、感染症、情報の漏えい、重大な苦情など)
  6. 外部への連絡と説明
  7. 記録の残し方
  8. 起きたあとの対応(原因の調査、再発防止、心のケア)
  9. 見直しの時期と履歴

最初のページには、緊急の連絡先と、起きた直後にやることを3つから5つだけ書いた「1枚目の紙」を入れておくと、慌てているときにも使えます。分厚いマニュアルを最初から読む余裕は、危機の最中にはありません。

連絡体制の決め方

危機管理マニュアルの中で、最も大切なのが連絡体制です。誰が誰に連絡するかが決まっていないと、同じ人に何人もが電話をかけたり、逆に誰も責任者に知らせなかったりします。

判断する人と代わりの順番

危機が起きたときに判断する人を決め、その人に連絡がつかない場合の代わりの順番を、少なくとも2人目、3人目まで決めておきます。「社長、社長が不在なら副社長、副社長も不在なら総務部長」のように、役職で決めておくと、人の入れ替わりがあってもマニュアルを書き直さずに済みます。

連絡の流れ

最初に気づいた人から判断する人までの連絡の流れを、図か表にしておきます。「気づいた人は、まず現場の責任者に知らせる。現場の責任者は、判断する人に知らせる。判断する人は、必要に応じて全員に知らせる」というように、1人が連絡する相手を少なくしておくと、連絡の漏れや重なりが減ります。

連絡の手段を複数用意する

大きな災害のときは、電話がつながりにくくなります。電話だけでなく、メール、チャット、携帯電話のメッセージなど、複数の連絡手段を決めておき、どれを優先するかも書いておきます。災害用伝言ダイヤル(171)の使い方を確認しておくのも有効です。

連絡先の一覧

連絡先の一覧には、次の項目を入れておきます。

  • 社内の連絡先(氏名、役割、携帯電話、メール、自宅の最寄り駅や地域)
  • 外部の連絡先(消防、警察、最寄りの病院、建物の管理会社、電気・ガス・水道の連絡先)
  • 取引先や顧客のうち、すぐに連絡が必要な相手
  • 保険会社、システムの保守会社、顧問の専門家

一覧は、紙に印刷したものと、社外からでも見られる場所に保存したものの両方を用意します。停電やシステムの停止で、パソコンの中の一覧が見られなくなることがあるからです。連絡先は人の異動や退職のたびに変わるので、少なくとも半年に1回は確認する日を決めておきます。

起きた直後の共通の初動

危機の種類にかかわらず、起きた直後にやることには共通の流れがあります。マニュアルには、この流れを短い言葉で書いておきます。

  1. 自分と周りの人の安全を確保する
  2. 必要なら119番(火災・救急)や110番(事件・事故)に通報する
  3. 現場の責任者に知らせる
  4. 何が、いつ、どこで、どの程度起きているかを確かめる
  5. 判断する人が、対応の方針を決める
  6. 起きたことと対応を、時刻とともに記録し始める

最初の30分で大事なのは、完璧な情報を集めることではなく、分かっていることと分かっていないことを分けて、判断する人に早く伝えることです。「まだ詳しく分からないが、こういうことが起きている」という第一報を早く出し、詳しいことは分かり次第続けて伝える、という考え方をマニュアルに明記しておくと、報告をためらう人が減ります。

危機の種類ごとの対応の例

共通の初動に加えて、起こりやすい危機については、種類ごとの対応を書いておきます。ここでは、多くの職場に当てはまる例を紹介します。実際の手順は、建物の造りや業種、地域の状況に合わせて決め、消防署や自治体の案内も確かめてください。

地震

揺れている間は、机の下に入る、落ちてくる物や倒れてくる物から離れるなど、身を守ることを優先します。揺れが収まったら、火の元を確かめ、けが人がいないかを確認し、建物に危険があれば決めておいた避難場所へ移ります。従業員や来客の安否を確かめる方法と、帰宅が難しい場合に事業所にとどまる判断の基準も決めておきます。

火災

火災に気づいたら、大きな声で周りに知らせ、119番に通報し、初期消火ができる程度であれば消火器を使います。天井まで火が広がったら消火をやめて避難します。避難経路と、集まる場所、人数を確かめる担当者を決めておきます。

感染症

感染症が流行したときは、体調の悪い人が出勤しない決まり、在宅での勤務への切り替え、出勤する人数を減らす方法、消毒や換気の方法などを決めておきます。業務を減らす場合に、どの仕事を優先して続けるかもあわせて決めておくと、事業継続の備えにもなります。

個人情報の漏えい

メールの誤送信、書類の紛失、不正アクセスなどで個人情報が漏れた、または漏れたおそれがあるときは、まず被害が広がらないように止める作業をします。誤送信なら相手に削除を依頼し、不正アクセスならシステムの保守会社に連絡して接続を止めます。個人情報保護委員会の案内によると、要配慮個人情報(病歴など、取り扱いに特に配慮が必要な情報)が含まれる場合、財産的な被害が生じるおそれがある場合、不正な目的で行われたおそれがある場合、本人の数が1,000人を超える場合などは、委員会への報告と本人への通知が義務になっています。報告が必要かどうかは事案ごとに判断が分かれるので、個人情報保護委員会の案内を確かめ、必要に応じて専門家に相談します。

発覚したら、まずは速やかに報告してください。 出典: ppc.go.jp

重大な苦情やSNSでの批判の拡散

顧客からの重大な苦情や、SNSでの批判の拡散が起きたときは、まず事実を確かめ、対応する窓口を1つにします。複数の人がそれぞれの判断で返事をすると、内容が食い違い、問題が大きくなります。外部への説明は判断する人が内容を決め、決まった担当者が行う、と決めておきます。事実が確かめられる前に、推測で謝罪や反論をしないことも大切です。

外部への連絡と説明

危機が起きたときには、社内だけでなく、顧客、取引先、地域の人、行政などへの連絡が必要になることがあります。誰に、どの順番で、誰が連絡するかを決めておきます。

外部への説明では、次の4点を押さえると、相手に伝わりやすくなります。

  • 何が起きたか(確かめられた事実)
  • いまどうなっているか(被害の範囲と対応の状況)
  • これから何をするか(今後の対応と、次に連絡する時期)
  • 問い合わせの窓口

連絡の順番は、影響を直接受けている人を最優先にします。たとえば顧客の情報が漏れたおそれがあるなら、まず該当する顧客本人、次に取引先、そのあとで必要に応じて広く公表する、という順番です。事実が確かめられていないことは、「確認中です」とはっきり伝えます。推測で話すと、あとで訂正が必要になり、信用を失います。説明の文面は、判断する人が確認してから出すようにします。

顧客や取引先から多くの問い合わせが寄せられることも想定しておきます。問い合わせを受ける窓口と、受けた内容を記録する方法を決めておくと、同じ質問に違う答えを返すことを防げます。

記録の残し方

危機が起きたときの記録は、あとで原因を調べるとき、外部に説明するとき、保険の手続きをするとき、マニュアルを見直すときに欠かせません。起きた直後から、時刻とともに記録を残す担当者を決めておきます。

記録には、次の項目を時系列で書いていきます。

時刻 起きたこと・分かったこと 誰が何をしたか 次にやること
10時05分 3階で停電、エレベーターが停止 総務の担当者が管理会社に連絡 閉じ込めの有無を確認
10時12分 閉じ込めなしと確認 現場の責任者が全員に知らせ 復旧の見込みを確認

記録は、上手な文章である必要はありません。時刻、事実、行動を短く書くことを優先します。手書きのメモでも、表計算ソフトでも構いません。写真や画面の記録も、あとで役に立つので残しておきます。

起きたあとの振り返りの進め方

緊急の対応が一段落したら、できるだけ早く、関わった人を集めて振り返りを行います。時間がたつと、何が起きたか、誰がどう動いたかの記憶が薄れていくからです。目安として、対応が終わってから1週間以内に行います。

振り返りでは、次の4つの問いに順に答えていきます。

  1. 何が起きたか(記録をもとに、時系列で事実を確かめる)
  2. うまくいったことは何か
  3. うまくいかなかったこと、困ったことは何か
  4. 次に同じことが起きたら、何を変えるか

大事なのは、誰が悪かったかを探す場にしないことです。個人の責任を問う雰囲気になると、参加者は失敗や迷ったことを話さなくなり、本当の原因が見えなくなります。「連絡先が古かった」「判断する人の代わりが決まっていなかった」のように、仕組みの問題として話すようにします。

振り返りで出た「次に変えること」は、担当者と期限を決めて、マニュアルの修正や設備の改善につなげます。決めただけで実行されないまま次の危機を迎える、ということがないように、次の見直しの会議で実行されたかどうかを確かめます。

危機の内容によっては、関わった人の心の負担が大きくなることがあります。事故やけが、厳しい苦情への対応のあとは、体調や気持ちの変化に気を配り、必要に応じて休みを取りやすくしたり、相談できる窓口を案内したりします。学校については、文部科学省の手引でも、起きたあとの対応として心のケアが挙げられています。

平時の備えを点検する

危機管理マニュアルの「平時の備え」の章には、ふだんから点検しておくことを一覧にしておきます。点検の担当者と時期を決めて、決まった日に確かめるようにすると、備えが古くなることを防げます。

点検すること 時期の目安
連絡先の一覧が最新か 半年に1回、人の異動のたび
消火器や非常用の照明の場所と期限 年に1回
避難経路に物が積まれていないか 月に1回
飲料水や非常食、懐中電灯などの備蓄 年に1回(期限の確認)
重要なデータの控えが取れているか 月に1回
マニュアルの保管場所を全員が知っているか 新しい人が入るたび

重要なデータの控えは、事業所の中だけでなく、別の場所にも保存しておきます。火災や浸水で事業所の機器が使えなくなっても、顧客の一覧や契約の書類、会計のデータが別の場所に残っていれば、仕事を早く再開できます。

マニュアルを全員に知ってもらう工夫

どれほど丁寧に作ったマニュアルでも、読まれていなければ、危機のときには使われません。全員に中身を知ってもらうための工夫を、作る段階から考えておきます。

まず、新しく入った人には、最初の週のうちにマニュアルの1枚目の紙を説明し、保管場所を見せます。アルバイトや業務委託の人も、事業所で働く以上は対象に含めます。次に、朝礼や定例の会議で、月に1回、マニュアルの一部を取り上げて確認します。「今月は火災のときの避難経路」「来月は情報の漏えいのときの連絡先」のように、少しずつ取り上げれば、負担なく全体を確かめられます。

1枚目の紙は、事務所の出入り口や電話の近くなど、慌てているときにも目に入る場所に掲示しておきます。携帯電話で見られるように、写真や画像にして全員で共有しておく方法もあります。

訓練と見直し

危機管理マニュアルは、作っただけでは役に立ちません。訓練で実際に使ってみて、うまくいかなかった部分を直していくことで、使えるマニュアルになっていきます。

訓練のやり方

訓練には、実際に体を動かす避難訓練のほか、机の上で状況を想定して話し合う方法もあります。「金曜日の午後5時に震度6弱の地震が起きた。責任者は出張中。どうするか」といった状況を示し、参加者がマニュアルを見ながら、誰が何をするかを順に話していきます。1時間ほどでできるので、小さな事業所でも取り組みやすい方法です。

連絡体制の訓練も効果的です。実際に連絡網を回して、全員に連絡が届くまでに何分かかるか、連絡のつかない人がいないかを確かめます。連絡先の誤りや、連絡の手段の問題が見つかることがよくあります。

見直しの時期

マニュアルは、少なくとも年に1回、決まった時期に見直します。それに加えて、次のようなときにも見直します。

  • 訓練で問題が見つかったとき
  • 実際に危機が起きて、対応を振り返ったとき
  • 人の異動や組織の変更があったとき
  • 事業所の移転や、扱う仕事の変化があったとき
  • 法律や行政の案内が変わったとき

見直したときは、マニュアルの最後に、見直した日と変えた内容を履歴として残しておきます。どの版が最新かが分かるように、表紙にも版の日付を書いておきます。

小さな事業所や在宅のチームでの作り方

従業員が数人の事業所や、在宅で働く人が集まるチームでは、大きな会社と同じ分量のマニュアルは必要ありません。むしろ、短く、全員が覚えられる分量にすることが大切です。

まず、A4の紙1枚に、緊急の連絡先、判断する人と代わりの順番、起きた直後にやること、連絡の手段を書きます。これだけでも、何もない状態に比べれば、危機が起きたときの動きは大きく変わります。そのうえで、起こりやすい危機を2つか3つ選び、それぞれの対応を1枚ずつ書き足していきます。

在宅で働く人がいる場合は、自宅で災害に遭ったときに無事を知らせる方法と、仕事を続けられないときの連絡の方法を決めておきます。パソコンや通信が使えなくなったときに、取引先への連絡を誰が代わりに行うかも決めておくと、仕事の遅れによる信用の低下を防げます。業務委託で仕事を受けている人にとっては、自分自身が「主要な担当者の急な不在」という危機の当事者になりうることも意識しておきたい点です。

見直しと対応の作業を複数人で進めるときの道具

マニュアルの最初の版ができたあとも、連絡先の更新、訓練の準備、訓練で見つかった問題の修正、実際に危機が起きたあとの再発防止策など、複数の人が関わる作業が続きます。担当者が3人、4人と増えると、誰がどの作業をいつまでに終えるのかを、メールや口頭のやり取りだけで追うのは難しくなります。

作業の量が少ないうちは、表計算ソフトの一覧で「作業」「担当者」「期限」「状況」「メモ」の列を作って管理すれば十分です。作業が増え、作業ごとの相談や確認のやり取りが多くなってきたら、作業を1枚ずつのカードにして、担当者と期限と話し合いを1か所で扱えるプロジェクト管理ツールを使う方法があります。

候補の1つがPinatecaです。公式サイトによると、カンバン、ガント、カレンダー、リストなど8種類のボードとチャットが無料プランから使え、カードには担当者、期限、チェックリスト、コメント、添付を付けられます。たとえば「未着手」「対応中」「確認待ち」「完了」の4つの列を作り、訓練で見つかった問題を1枚ずつカードにして担当者と期限を付ければ、見直しの進み具合を1画面で見渡せます。料金ページによると、5人までのチームなら期限なしで無料で、ボードは10個まで作れます。6人目、または11個目のボードからはスタンダードプランで、料金は1人あたり月額500円(年払いなら1人あたり月額400円、税抜)です。危機の最中の連絡や通報は、マニュアルで決めた電話やメッセージで行い、Pinatecaはマニュアルの見直しや再発防止の作業を分担して進めるために使う、という役割の分け方が合っています。Pinatecaは、@SOHOを運営する株式会社ライフスケープが開発・提供しています。

危機管理の知識が活きる仕事

危機管理マニュアルを作る考え方は、組織の総務や安全の担当者だけでなく、さまざまな仕事で役に立ちます。

業務の流れを見直し、AIや仕組みで改善する提案をする仕事では、トラブルが起きたときの連絡の流れや記録の残し方を整える支援を求められることがあります。AIコンサル・業務活用支援のお仕事では、こうした支援の仕事の内容が紹介されています。情報の漏えいや不正アクセスへの備えは、セキュリティの仕事の中心でもあります。AI・マーケティング・セキュリティのお仕事が参考になります。

規程や届出の書類の作成に関わる仕事として、行政書士の資格ガイドでは、資格の内容と仕事の範囲が紹介されています。医療機関の受付や事務で、急病人や災害への対応を担う人には、医療事務技能審査試験(メディカルクラーク)の資格ガイドも参考になります。

在宅ワークの仲介を20年以上続けてきた運営者として見てきた限りでは、業務委託で長く信頼される人ほど、自分が急に作業できなくなったときの連絡の方法や、作業の途中の状態を取引先に共有する方法を、仕事を受ける段階で決めています。危機管理は大きな組織だけの話ではなく、1人で仕事をする人にとっても、取引先からの信用を守るための備えです。仲介の手数料がかからない直接の取引では、こうした備えを取引先と直接話し合って決められるので、互いに安心して仕事を続けやすくなります。

よくある質問

Q. 危機管理マニュアルには何を書けばよいですか?

最低限、緊急の連絡先、判断する人と代わりの順番、起きた直後にやること、連絡の手段を書きます。そのうえで、起こりやすい危機について種類ごとの対応、外部への説明の仕方、記録の残し方、見直しの時期を加えていきます。最初から全部を書こうとせず、最初の版を早く作って全員に配ることが大切です。

Q. 危機管理マニュアルと事業継続計画は何が違いますか?

危機管理マニュアルは、危機が起きた直後に人の安全を守り、被害の拡大を防ぐための行動を中心に書きます。事業継続計画は、その後に重要な仕事をどう続け、どう元に戻すかを中心に書きます。小さな事業所では、危機管理マニュアルの中に止めてはいけない仕事と代わりの手段を加える形から始める方法もあります。

Q. 危機管理マニュアルはどのくらいの頻度で見直せばよいですか?

少なくとも年に1回、決まった時期に見直します。それに加えて、訓練で問題が見つかったとき、実際に危機が起きたとき、人の異動や組織の変更があったとき、事業所の移転や法律の変更があったときにも見直します。見直した日と変えた内容は、履歴としてマニュアルに残しておきます。

Q. 小さな事業所でも危機管理マニュアルは必要ですか?

人数が少ない事業所ほど、1人が不在になったときの影響が大きいので、備えておく意味があります。大きな会社と同じ分量は必要なく、A4の紙1枚に連絡先、判断する人の順番、起きた直後にやることを書くだけでも役立ちます。そのうえで、起こりやすい危機の対応を少しずつ書き足していきます。

この記事について

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監修:@SOHO編集部

2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを運営。生成AIで作成した下書きを、一次情報と照らし合わせて確認したうえで公開しています。

公開:2026年1月3日最終更新:2026年10月24日
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