クレーム対応マニュアルの作り方|項目の決め方と、担当が替わっても回る記録の残し方


この記事のポイント
- ✓クレーム対応マニュアルの作り方を
- ✓言い回しの例まで整理しました
- ✓2026年10月1日に義務化されたカスタマーハラスメント対策との関係や
クレーム対応マニュアルを作ろうとしている人の多くは、「担当者によって対応がばらばらになっている」「対応に慣れた人が休むと、誰も経緯が分からなくなる」という悩みを抱えています。クレーム対応マニュアルとは、苦情を受けたときに誰が、どの順番で、何をするかを決めておく社内の手引きです。手順と判断の基準を文書にしておくと、経験の浅い人でも落ち着いて初めの対応ができ、難しい案件を早めに上の人へ引き継げるようになります。この記事では、マニュアルに入れる項目の決め方、初期対応の手順、引き継ぎの基準、言い回しの例を整理したうえで、担当が替わっても対応が止まらない記録の残し方を説明します。2026年10月1日から事業主の義務になったカスタマーハラスメント対策との関係にも触れます。届いた苦情を担当と状況つきで記録し、返信まで同じ画面で進める道具の1つとして、Halictも紹介します。
クレーム対応マニュアルが必要な理由
クレームとは、商品やサービスに対する不満や、改善の求めを伝えられることです。多くのクレームは、商品の不具合、説明の不足、約束の行き違いなど、企業の側にも直すべき点がある正当な申し入れです。正当なクレームに丁寧に対応すれば、相手の信頼を取り戻せるだけでなく、商品やサービスの改善の手がかりも得られます。
一方で、対応の仕方が担当者ごとに違うと、同じ内容のクレームでも、ある人は謝罪と交換で済ませ、別の人は返金まで約束してしまう、といったことが起きます。対応のばらつきは、相手から見ると不公平に映り、「前の人はこう言った」と新たな不満を生みます。
クレーム対応の手引きを提供している会社は、マニュアルを整える意味を次のように説明しています。
クレーム対応の質を向上させるためには、クレーム対応マニュアルを整備することが重要です。 出典: tepss.com
マニュアルを作るメリットを整理すると、次の4つになります。
| メリット | 内容 |
|---|---|
| 対応がそろう | 誰が受けても、同じ手順と同じ基準で対応できる |
| 初めの対応が早くなる | 迷う時間が減り、相手を待たせずに済む |
| 担当者の負担が減る | 1人で抱え込まず、決められた基準で引き継げる |
| 改善につながる | 記録が残り、同じクレームの原因を直せる |
特に大事なのは、3つ目の担当者の負担です。クレームを受ける人は、強い言葉を向けられることもあり、心の負担が大きい仕事です。「ここまで来たら上の人に代わる」という基準がマニュアルにあるだけで、担当者は1人で背負い込まずに済みます。
カスタマーハラスメント対策の義務化との関係
クレーム対応マニュアルを作るうえで、2026年に押さえておきたいのが、カスタマーハラスメント対策の義務化です。2025年6月に労働施策総合推進法が改正され、カスタマーハラスメントについて、事業主が雇用管理上必要な措置を取ることが義務になりました。厚生労働省の案内では、この義務は2026年(令和8年)10月1日から施行されています。
カスタマーハラスメントとは、顧客や取引先などからの言動のうち、社会の常識に照らして許される範囲を超え、働く人の就業環境を害するものを指します。厚生労働省のカスタマーハラスメント対策企業マニュアル(令和8年度改訂版)では、次の3つの要素をすべて満たすものと説明されています。
職場において行われる①顧客等の言動であって、②その雇用する労働者が従事する業務の性質その他の事情に照らして社会通念上許容される範囲を超えたものにより、③労働者の就業環境が害されるものであり、①から③までの要素を全て満たすもの 出典: mhlw.go.jp
同じマニュアルでは、事業主が取るべき措置として、方針の明確化と周知、相談に応じる体制の整備、起きたあとの迅速で適切な対応、抑止のための措置、プライバシーの保護と不利益な取り扱いの禁止が挙げられています。また、対象となる「顧客等」は一般の消費者に限らず、取引の相手も含むとされていて、法人を相手にする会社も含めて、業種を問わずすべての事業主が取り組む必要があると説明されています。
ここで大事なのは、正当なクレームとカスタマーハラスメントを分けて考えることです。厚生労働省のマニュアルでも、正当な申し入れをすぐにカスタマーハラスメントと決めつけることは絶対に避けなければならないとしています。クレーム対応マニュアルは、正当なクレームには誠実に対応し、許される範囲を超えた言動からは働く人を守る、という2つの役割を持つ文書として作ります。具体的にどのような措置が自社に必要かは、事業の内容によって変わるので、厚生労働省の指針の本文と、都道府県の労働局の案内で確かめてください。
マニュアルに入れる項目
クレーム対応マニュアルに入れる項目は、会社の規模や業種で変わりますが、基本の骨組みは共通しています。次の項目を目次として用意し、自社に合わせて中身を書いていきます。
| 項目 | 書く内容 |
|---|---|
| 目的と基本方針 | クレームにどう向き合うか、働く人を守る方針 |
| 対象と範囲 | どの窓口(電話・メール・店頭・フォーム)の対応か |
| 用語の定義 | クレーム、問い合わせ、カスタマーハラスメントの区別 |
| 初期対応の手順 | 受けたときに最初にすること |
| 窓口ごとの手順 | 電話、メール、対面それぞれの進め方 |
| 引き継ぎの基準 | どんなときに上の人や別の部署へ代わるか |
| 判断の権限 | 交換・返金・値引きを誰が決められるか |
| 言い回しの例 | 謝罪、確認、断り方の文例 |
| 記録の残し方 | 何を、どこに、いつまでに記録するか |
| 社内の連絡先 | 上司、法務、警察への連絡の流れ |
| 担当者の心のケア | 相談の窓口、休憩の取り方 |
| 改訂の履歴 | いつ、何を直したか |
最初から全部の項目を細かく書く必要はありません。まずは「初期対応の手順」「引き継ぎの基準」「判断の権限」「記録の残し方」の4つを先に固めると、現場で使えるマニュアルの土台ができます。
用語の定義は、意外と見落とされがちですが大切です。「クレーム」と「問い合わせ」の線引きがあいまいだと、記録の分け方がばらばらになり、あとで件数を数えたり原因を探したりするときに困ります。たとえば「商品やサービスへの不満を伝えられ、何らかの対応を求められたもの」をクレームとし、「使い方や在庫の確認など、不満を含まないもの」を問い合わせとする、といった線引きを決めておきます。
初期対応の手順を決める
クレーム対応でいちばん大事なのは、最初の数分の対応です。初めの対応がこじれると、もともとは単純な苦情だったものが大きな問題に育ってしまいます。厚生労働省のマニュアルでも、もとは単なる苦情だったものが、初期対応の内容によってカスタマーハラスメントに発展することもあり得るとしています。
初期対応の基本の手順は、次の4つです。
ステップ1 不快な思いをさせたことに謝る
最初に、相手が不快な思いをしたことに対して謝ります。ここで大事なのは、謝る対象を限定することです。厚生労働省のマニュアルでは、「この度は不快な思いをさせてしまい、誠に申し訳ありません」のように不快感を抱かせたことに謝り、状況を正確につかめていない段階で、会社として非を認めたような発言をすることは望ましくないとしています。一度非を認めてしまうと、あとで調べて会社に非がないと分かっても、撤回が難しくなるためです。
ステップ2 話をさえぎらずに最後まで聞く
次に、相手の話をさえぎらず、反論もせずに、ひと通り聞きます。相手の話をじっくり聞くことは、事実をつかむためだけでなく、相手を落ち着かせることにもつながります。聞きながら、いつ、何が、どうなったのか、相手は何を求めているのかをメモします。
ステップ3 分からない点を確かめる
ひと通り聞いたあとで、はっきりしない点を確かめ、足りない情報を質問します。相手に勘違いがあれば、正しい情報を落ち着いて伝えます。あとで連絡を取れるよう、名前と連絡先も聞いておきます。
ステップ4 対応の方針を決め、相手に伝える
その場で答えられることは答え、調べる必要があることは、いつまでに誰から連絡するかを伝えます。自分の判断の範囲を超える内容は、上の人に情報を共有して方針の指示を受けます。その場で答えを出せないときに大切なのは、「確認して、明日の午後3時までにお電話します」のように、次の連絡の時期をはっきり約束することです。
窓口ごとの手順
クレームを受ける窓口によって、進め方の注意点が違います。マニュアルには、窓口ごとの手順も書いておきます。
電話で受けたとき
電話は、相手の表情が見えず、声だけで気持ちを読み取る必要があります。早口にならないよう、いつもより少しゆっくり話すことを意識します。相手の話を聞きながら、名前、連絡先、日時、商品名、内容をメモする用紙や画面を、すぐに開ける場所に用意しておきます。保留にするときは、「確認いたしますので、1分ほどお待ちいただけますか」のように、待つ時間の目安を伝えます。長く待たせそうなときは、いったん電話を切って折り返す形にします。
メールやフォームで受けたとき
文字で届くクレームは、記録がそのまま残るという利点があります。一方で、文字だけのやり取りは冷たい印象を与えやすく、言葉の選び方に気を配る必要があります。受け取ったことを早めに伝え、調べる必要があるなら回答の時期を書いて返します。返信の前には、別の人に文面を読んでもらうと、誤解を招く表現に気づけます。
店頭や訪問先で受けたとき
対面のクレームでは、他のお客様の目がある場所で長く話すことは避け、落ち着いて話せる場所に案内します。ただし、密室で1人で対応することは避け、必ず複数の人で対応します。
どの窓口でも、受けた内容は決められた記録の場所に残します。電話で受けたものはメモのまま机に置かず、その日のうちに記録の場所へ入力する、と決めておきます。
引き継ぎの基準を決める
担当者が1人で抱え込まないために、どんなときに上の人や別の部署へ引き継ぐかの基準を、具体的に決めておきます。
| 状況 | 引き継ぐ先 |
|---|---|
| 自分の権限を超える交換・返金・値引きを求められた | 責任者 |
| 同じ相手との対応が30分を超えた | 責任者 |
| 同じ内容で3回以上連絡が来ている | 責任者 |
| 大声、威圧的な言葉、人格を否定する発言があった | 責任者(複数で対応) |
| 謝罪の文書や訪問を求められた | 責任者と管理部門 |
| 法的な措置をにおわせる発言があった | 管理部門、必要に応じて弁護士 |
| 暴力、脅し、物を壊すなどの行為があった | 警察 |
この表の時間や回数は例で、業種や窓口によって変わります。大事なのは、担当者が「まだ自分で頑張らないといけないのか」と迷わずに済むように、数字や具体的な行動で基準を決めておくことです。
厚生労働省のマニュアルでも、威圧的な言動など明らかにカスタマーハラスメントと判断される行為を受けた場合は、すぐに管理職などに相談して引き継ぎ、1人で対応しないようにすること、暴行、傷害、脅迫など犯罪に当たる言動は警察に通報することが重要だとしています。また、カスタマーハラスメントが疑われる場合は、録音や対応記録、時間の計測など、第三者が確かめられる記録を残すよう案内しています。録音や録画をするときは、個人情報の扱いの決まりを守る必要があります。
判断の権限を決める
クレーム対応でもめやすいのが、交換や返金、値引きをどこまで認めるかです。担当者ごとに判断が違うと、対応のばらつきの原因になります。マニュアルには、誰がどこまで決められるかを書いておきます。
| 対応の内容 | 決められる人の例 |
|---|---|
| 謝罪と、正しい情報の案内 | 担当者 |
| 同じ商品との交換 | 担当者 |
| 決められた金額までの返金 | 担当者の上司 |
| 決められた金額を超える返金、値引き | 責任者 |
| 規定にない補償、謝罪の文書 | 責任者と管理部門 |
権限を決めておくと、担当者はその場で約束できることとできないことが分かり、「確認して折り返します」と自信を持って言えます。権限を超えることをその場で約束してしまうと、あとで取り消すときに、さらに大きなクレームになります。
言い回しの例
マニュアルには、場面ごとの言い回しの例を入れておくと、経験の浅い人の助けになります。ただし、文例を読み上げるだけの対応は、相手に気持ちが伝わりません。文例は考え方の手がかりとして使い、自分の言葉で話せるように練習します。
| 場面 | 言い回しの例 |
|---|---|
| 最初の謝罪 | この度はご不便をおかけし、申し訳ございません |
| 話を聞く | 詳しくお聞かせいただけますでしょうか |
| 確認する | 念のため確認させてください。届いたのは10月10日でよろしいでしょうか |
| 時間をもらう | 確認のうえ、明日の午後3時までにご連絡いたします |
| できないことを伝える | 申し訳ございませんが、その対応はいたしかねます。代わりに、このような対応ができます |
| 引き継ぐ | 責任者に代わりますので、少々お待ちいただけますか |
| 終える | ご指摘いただき、ありがとうございました。今後の改善に生かします |
できないことを伝えるときは、断るだけで終わらせず、代わりにできることを示すと、相手は話を前に進めやすくなります。「規則なので」とだけ伝えると、相手は突き放されたと感じます。
避けたい言い回しもマニュアルに書いておきます。「でも」「ですから」のように相手の話を打ち消す言葉、「普通は」「皆さん」のように相手を一般論で押さえ込む言葉、「担当ではないので分かりません」のように責任を避ける言葉は、相手の不満を大きくします。
担当が替わっても回る記録の残し方
クレーム対応で、マニュアルと同じくらい大事なのが記録です。記録が残っていないと、担当者が休んだり替わったりしたときに、経緯を知る人がいなくなります。相手に同じ説明を何度もさせることになり、それ自体が新たなクレームの原因になります。
記録する項目を決める
記録には、少なくとも次の項目を入れます。
- 受けた日時と窓口(電話、メール、店頭、フォーム)
- 相手の名前と連絡先
- 対象の商品やサービス、注文の番号
- クレームの内容(相手の言葉をできるだけそのまま)
- 相手が求めていること
- 自分が伝えたこと、約束したこと
- 担当者と、引き継いだ場合は引き継ぎ先
- 今の状況(受付、調査中、回答待ち、対応済みなど)
- 次の連絡の予定日と、その内容
特に大事なのは、「約束したこと」と「次の連絡の予定日」です。担当が替わったときに、前の担当が何を約束したのかが分からないと、約束を守れなくなります。
記録は1件ごとに1か所にまとめる
記録は、1件のクレームごとに1か所にまとめます。最初の電話のメモは紙に、メールのやり取りはメールソフトに、社内の相談はチャットに、と散らばっていると、経緯を追うのに時間がかかります。表計算のシートで管理する場合は、1件を1行にし、やり取りの経緯はメモの列に日付を付けて書き足していきます。
状況と担当をいつでも見られるようにする
記録を見れば、今どの案件が誰の担当で、どの状況にあるかが分かるようにしておきます。毎朝、「回答待ち」で次の連絡の予定日が今日の案件を確かめる、と決めておけば、連絡の約束を忘れることを防げます。
届いた苦情を担当と状況つきで管理したいときの候補
表計算とメールソフトを行き来しながら記録と返信を進めるのが負担になってきたときの選択肢の1つが、フォームで受け付けた内容を管理するHalictです。公式サイトによると、フォームで届いた1件ごとに担当者、ステージ、タグを付けて管理でき、ステージの変更、担当者の割り当て、メモ、メールの送信といった対応の履歴が、すべて時系列で残ります。ステージのひな形には「問い合わせ対応」があり、ステージは自由に増やしたり減らしたりできます。
1件を開くと、回答の内容、対応の履歴、メモ、メールの送信が1つの画面にまとまっていて、同じ画面から返信を送れます。送ったメールが読まれたかどうかも記録されます。新しい受け付けを Slack、Teams、Chatwork、Discord に通知することもでき、担当者が気づかないまま放置される事態を防ぎやすくなります。料金は使う人数で決まり、公式の料金ページでは、1人で使うフリープランが0円、メンバー3人までのスタータープランが月額2,980円(税抜)と案内されています。フォームの数と受け取る回答の数は、どのプランでも無制限です。
Halictは、@SOHOを運営する株式会社ライフスケープが開発・提供しています。
電話や店頭で受けたクレームも、受けた人が社内用のフォームから入力する決まりにすれば、窓口が違っても記録を1か所にまとめられます。
対応を終えるときの確かめ方
クレーム対応は、相手に回答を伝えたところで終わりにせず、きちんと閉じる手順も決めておきます。終わり方があいまいだと、相手は「まだ対応中なのか」と不安に思い、社内でも案件が開いたまま残ります。
対応を終えるときは、次の点を確かめます。
- 相手が求めていたことに対して、何をしたかを伝えたか
- 約束した交換、返金、修正がすべて終わっているか
- 相手に、ほかに困っていることがないかを確かめたか
- 記録の状況を「対応済み」に変え、終えた日付を残したか
- 原因が社内の手順にある場合、関係する部署に伝えたか
特に3つ目の確認は大切です。「ほかにお困りのことはございませんか」と一言添えるだけで、相手は最後まで話を聞いてもらえたと感じます。ここで新しい不満が出てくることもあり、その場で受け止めておけば、あとで改めて大きなクレームになるのを防げます。
対応を終えた数日後に、交換した商品が届いたか、修理のあと問題がないかを確かめる連絡を入れる会社もあります。手間はかかりますが、相手の不満を信頼に変える効果の大きい一手です。どの案件で確認の連絡を入れるかは、マニュアルに基準を書いておきます。
原因を分けて再発を防ぐ
記録がたまってきたら、クレームの原因を分けて数えます。同じ原因のクレームが繰り返されているなら、対応の手順より先に、原因そのものを直すほうが効果が大きくなります。
原因は、次のように分けると整理しやすくなります。
| 原因の分類 | 例 | 直す先の例 |
|---|---|---|
| 商品・サービスそのもの | 不具合、品質のばらつき | 製造、仕入れ、開発 |
| 説明・表示 | 説明書が分かりにくい、表示と中身の違い | 案内の文面、商品のページ |
| 手続き・配送 | 届くのが遅い、手続きが複雑 | 配送の手順、申込の流れ |
| 担当者の対応 | 言葉づかい、連絡の遅れ | 教育、マニュアル |
| 相手の勘違い | 使い方の誤解 | よくある質問の案内 |
「相手の勘違い」に分けたクレームも、そのまま放置しないことが大切です。同じ勘違いが何度も起きているなら、説明の仕方に改善の余地があります。よくある質問の案内に書き足す、商品のページの説明を直すなどの対応で、同じ問い合わせを減らせます。
原因の集計は、月に1回、件数の多い順に並べて関係する部署と共有します。担当者だけで抱えるのではなく、会社全体で原因を直していく流れを作ることが、クレーム対応マニュアルの最終的な目的です。
マニュアルの作り方の手順
ここまでの内容をもとに、クレーム対応マニュアルを作る手順を整理します。
- 過去のクレームを集めます。記録が残っていなければ、現場の担当者に、よくあるクレームと、困った対応を書き出してもらいます。
- クレームを種類ごとに分けます。商品の不具合、配送の遅れ、説明の不足、担当者の態度など、よくある種類ごとに件数を数えます。
- 種類ごとに、対応の手順と判断の基準を決めます。件数の多い種類から順に書きます。
- 引き継ぎの基準と判断の権限を決めます。責任者と管理部門も加わって決めます。
- 言い回しの例と、避けたい言い回しを書きます。
- 記録の項目と、記録する場所を決めます。
- 下書きを現場の担当者に読んでもらい、使いにくい点を直します。
- 完成したら全員に説明し、短い練習をします。
マニュアルは、作る人だけで書き上げると、現場では使えないものになりがちです。実際にクレームを受けている人に下書きを読んでもらい、「この手順だと、この場面で困る」という声を反映させることが大切です。
現場で使われるマニュアルにする工夫
マニュアルは、作っても現場で開かれなければ意味がありません。使われるマニュアルにするための工夫を整理します。
1つ目は、すぐに開ける場所に保存することです。紙なら窓口の手元に、電子なら共有の場所の分かりやすいところに保存し、場所を全員に伝えます。
2つ目は、目次から必要な場面にすぐたどり着けるようにすることです。クレームを受けている最中に、長い文章を最初から読むことはできません。場面ごとの見出しを付け、1つの場面を1ページ程度に収めます。
3つ目は、手順を短い文と表で書くことです。長い説明より、「1. 謝る」「2. 聞く」「3. 確かめる」のような番号付きの手順のほうが、緊張している場面でも頭に入ります。
4つ目は、練習の場を作ることです。新しく入った人には、先輩が相手役になって、よくあるクレームの対応を練習します。マニュアルを読んだだけの状態と、一度声に出して練習した状態とでは、本番の落ち着きがまったく違います。
新しく入った人に教える進め方
マニュアルを作っても、新しく入った人がいきなりクレームを受けるのは大きな負担です。段階を踏んで教える流れを決めておきます。
最初の段階では、マニュアルを一緒に読み、基本の手順と引き継ぎの基準を説明します。次に、先輩がクレームを受けている場面に同席し、実際のやり取りを横で聞きます。電話なら、先輩の通話を一緒に聞ける形にすると、言葉の選び方や間の取り方がよく分かります。
その次の段階では、先輩が相手役になって練習します。よくあるクレームを3〜4種類ほど用意し、謝罪、確認、回答の時期の約束、引き継ぎまでを声に出して練習します。練習のあとは、良かった点と直したい点を短く伝えます。
実際に受け始めてからは、最初の数件は先輩が近くにいる時間帯に受け持ち、対応のあとに一緒に記録を見返します。困ったときにすぐ代われる人がいるという安心感があると、新しい人も落ち着いて対応できます。
マニュアルの見直しの進め方
マニュアルは、一度作ったら終わりではありません。クレームの手引きを提供している会社も、定期的な見直しの必要性を次のように指摘しています。
現場で使いやすいマニュアルにするためには、実際のクレーム事例や従業員からのフィードバックを反映することが必要となります。 出典: tepss.com
見直しは、次の流れで進めます。
- 3か月に1回など、見直しの時期を決めます。
- その期間のクレームの記録を見て、種類ごとの件数と、マニュアルにない場面がなかったかを確かめます。
- 現場の担当者に、手順で困った点、言い回しで迷った点を聞きます。
- 必要な部分を直し、改訂の履歴に日付と内容を残します。
- 直した点を全員に伝えます。
見直しのときは、マニュアルを直すだけでなく、クレームの原因そのものを直せないかも考えます。同じ種類のクレームが何度も来ているなら、商品の説明、配送の手順、案内の文面など、原因になっている部分を改善すれば、クレームそのものを減らせます。記録を残しておくことは、この改善の材料を集めることでもあります。
社外の人に受け付けを任せるとき
小さな事業者では、問い合わせやクレームの最初の受け付けを、外部の協力者や代行の会社に任せることがあります。社外の人に任せる場合は、社内の担当者以上に、マニュアルの中身がはっきりしている必要があります。
任せる前に、次の点を文書で決めておきます。
- 協力者がその場で答えてよい範囲と、必ず社内に回す内容
- 社内へ回すときの連絡の方法と、急ぎのときの連絡先
- 記録を残す場所と、書く項目
- 相手の個人情報の扱い方と、保存してよい場所
- 強い言葉を受けたときに、協力者が対応を打ち切ってよい基準
最後の項目は、協力者を守るために欠かせません。社外の人は、社内の人より相談できる相手が少なく、1人で抱え込みやすい立場にあります。対応を打ち切る基準と、そのあとの引き継ぎ先をはっきり決めておくことで、協力者も安心して受け付けを担えます。
担当者を守る仕組みも一緒に作る
クレーム対応マニュアルは、相手への対応の手順だけでなく、対応する人を守る仕組みも含めて作ります。強い言葉を何度も受けると、担当者は心に負担を抱えます。
マニュアルには、つらい対応のあとに休憩を取ってよいこと、上の人や相談の窓口に気持ちを話してよいことを書いておきます。厚生労働省のマニュアルでも、相談に応じて適切に対応するための体制を整えることや、相談した人のプライバシーを守り、不利益な取り扱いをしないことが、事業主の取るべき措置として挙げられています。担当者が「相談したら評価が下がるのでは」と心配せずに済むよう、相談の窓口と方針を全員に伝えておきます。
小さな事業者と外部の協力者の立場から見てきたこと
在宅ワークとフリーランスの仲介を2004年から続けてきた運営者として見てきた限りでは、問い合わせや苦情の受け付けを外部の協力者に任せている小さな事業者ほど、手順と記録の決まりがあるかどうかで、仕事の続き方が大きく変わります。決まりがないまま任せると、協力者は判断に迷うたびに確認の連絡を送ることになり、双方の時間が削られます。逆に、引き継ぎの基準と判断の権限がはっきりしていれば、協力者は安心して初めの対応を担えます。
中間の手数料が乗らない直接の取引では、受け手の手取りが厚くなる分、依頼する側と受ける側が直接、手順の改善を話し合えることも利点です。クレーム対応のように人の気持ちに関わる仕事こそ、記録を共有し、困った場面を一緒に振り返れる関係が、長く続く仕事の土台になります。
問い合わせの受け付けや業務の手順を整える仕事は、外部の専門家に頼める仕事でもあります。業務の進め方に道具やAIを取り入れる支援はAIコンサル・業務活用支援のお仕事で、問い合わせを受ける仕組みを作る開発の仕事はアプリケーション開発のお仕事で紹介しています。経営の視点から業務の改善を支える専門家の資格には、中小企業診断士があります。
よくある質問
Q. クレーム対応マニュアルには最低限どんな項目が必要ですか?
まずは「初期対応の手順」「引き継ぎの基準」「判断の権限」「記録の残し方」の4つを固めると、現場で使えるマニュアルの土台ができます。そのうえで、窓口ごとの手順、言い回しの例、社内の連絡先、担当者の心のケア、改訂の履歴を加えていきます。最初から全部を細かく書く必要はありません。
Q. クレームとカスタマーハラスメントはどう区別すればよいですか?
商品やサービスへの不満や改善の求めは、正当なクレームです。一方、要求の内容や手段が社会の常識に照らして許される範囲を超え、働く人の就業環境を害するものは、カスタマーハラスメントに当たり得ます。正当な申し入れをすぐにハラスメントと決めつけないことが大切で、判断の基準は自社の業務に合わせて決めておきます。
Q. クレーム対応で最初に謝るとき、どこまで謝ってよいですか?
状況を正確につかめていない段階では、相手が不快な思いをしたことに対して謝り、会社として非を認めたような発言は避けます。最初に非を認めてしまうと、あとで調べて非がないと分かっても撤回が難しくなるためです。非を認めて謝るのは、事実を確かめて社内で判断したあとにします。
Q. 担当者が替わっても対応が止まらないようにするにはどうすればよいですか?
1件のクレームごとに記録を1か所にまとめ、相手の求め、こちらが約束したこと、今の状況、次の連絡の予定日を必ず残します。紙のメモやメール、チャットに経緯が散らばると、引き継いだ人が追えなくなります。毎朝、次の連絡の予定日が今日の案件を確かめる決まりにしておくと、約束の漏れを防げます。
この記事について
編集部
監修:@SOHO編集部
2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを運営。生成AIで作成した下書きを、一次情報と照らし合わせて確認したうえで公開しています。

この記事を書いた人
@SOHO編集部
フリーランス・在宅ワークの専門メディア
@SOHOは2004年から続く、日本のフリーランス・在宅ワーク向け案件サイトです。記事は生成AIで下書きを作り、数値・固有名・出典を一次情報と照らし合わせる確認の手順を経て公開しています。
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