国民健康保険で出産育児一時金を受け取る手続き|直接支払制度と申請先 2026


この記事のポイント
- ✓国民健康保険に加入している人が出産育児一時金を受け取る手続きを解説します
- ✓直接支払制度・受取代理制度・償還払いの違い
- ✓退職後6か月以内の出産の選択
フリーランスや自営業で国民健康保険に入っている人が妊娠すると、「会社員と同じように出産の費用の補助は出るのか」「手続きはどこで、いつするのか」という疑問がまず浮かびます。会社員なら勤務先の担当者が教えてくれますが、国民健康保険の場合は自分で調べて動く必要があります。
結論から言うと、国民健康保険に加入している人も、会社員と同じく出産育児一時金を受け取れます。支給額は子ども1人につき原則50万円です。多くの場合は、出産する病院が手続きを代わりに行う「直接支払制度」を使うため、出産前に病院で書類にサインするだけで済みます。ただし、出産費用が50万円より安かったときの差額や、直接支払制度を使えない病院で出産したときは、自分で市区町村に申請しなければなりません。この記事では、出産育児一時金の受け取り方を、制度の選び方から申請の書類、期限まで順に整理します。
出産育児一時金とはどんな制度か
出産育児一時金とは、公的医療保険に加入している人が出産したときに、加入している保険から支給されるお金のことです。日本では、病気でない通常の出産(正常分娩)には健康保険が使えず、費用は全額自己負担になります。その負担を軽くするために設けられているのが、この一時金です。
厚生労働省は、制度の内容を次のように説明しています。
公的医療保険の加入者が出産したとき、お子さん1人につき原則50万円がご加入の保険者から支給される制度です。 出典: 厚生労働省 出産育児一時金等について
「保険者」とは、保険を運営している団体のことです。国民健康保険なら、住んでいる市区町村(市町村国保)か、建設国保などの国民健康保険組合が保険者になります。会社員なら協会けんぽや健康保険組合です。どの保険に入っていても、支給額の原則は同じ50万円です。
支給額は令和5年4月に、それまでの原則42万円から原則50万円に引き上げられました。古い情報には42万円と書かれていることがあるので注意してください。また、双子なら2人分、三つ子なら3人分というように、生まれた子どもの人数に応じて支給されます。
支給の対象になるのは、出産した時点で日本の公的医療保険に加入していて、妊娠4か月(85日)以上での出産であることです。この2つを満たせば、出産の方法や場所は問われません。妊娠85日以上であれば、残念ながら死産や流産になった場合も対象になります。帝王切開などで健康保険が使われた場合も、一時金は別に支給されます。
支給額が48万8千円になる場合
原則50万円とされているのは、この中に「産科医療補償制度」の掛金分が含まれているからです。産科医療補償制度とは、出産のときの事故で赤ちゃんに重い脳性まひが生じた場合に補償する仕組みで、多くの分娩施設が加入しています。
この制度に加入していない施設で出産した場合などは、支給額が少し下がります。たとえば栃木県壬生町は、国民健康保険の出産育児一時金について次のように案内しています。
「産科医療補償制度」に加入されない場合は、支給額「50万円」は「48万8千円」となります。 出典: 壬生町 国民健康保険の加入者が出産しましたが、どのような手続きが必要ですか
自分が出産する施設が産科医療補償制度に加入しているかどうかは、施設に聞けばすぐにわかります。国内のほとんどの分娩施設は加入していますが、海外で出産する場合などは48万8千円になるのが一般的です。具体的な支給額は、加入している市区町村や国保組合に確認してください。
なお、国民健康保険組合(建設国保など)によっては、法律で決まった一時金に上乗せして独自の給付(付加給付)を出しているところもあります。組合に加入している人は、組合の案内を確かめてみてください。
妊娠がわかってから出産後までの手続きの流れ
出産育児一時金の手続きは、出産の前と後に分かれます。いつ何をするかを時系列で並べると、次のようになります。直接支払制度を使う人を前提にしています。
| 時期 | やること | 相手 |
|---|---|---|
| 妊娠がわかったら | 出産する施設を決める。直接支払制度や受取代理制度を使えるか確認する | 出産施設 |
| 妊婦健診の期間中 | 自分の医療保険(国民健康保険か、家族の健康保険の扶養か)を確かめる。保険が変わる予定があれば窓口に相談する | 市区町村 |
| 出産予定月の前月より前 | 国民健康保険料の産前産後軽減と、国民年金保険料の産前産後免除の届出(出産予定日の6か月前から届出できる) | 市区町村 |
| 入院のとき | 直接支払制度の合意文書にサインし、医療保険の資格を確認してもらう | 出産施設 |
| 退院のとき | 明細書を受け取り、費用の総額と一時金の額を比べる。差額を窓口で支払う | 出産施設 |
| 出生から14日以内 | 出生届、子どもの国民健康保険の加入 | 市区町村 |
| 出産日の翌日から2年以内 | 差額がある場合や償還払いの場合は、一時金の支給を申請する | 市区町村 |
国民年金の産前産後免除は、日本年金機構の案内で出産予定日の6か月前から届出できるとされています。出産後でも届出はできますが、早めに済ませておけば、出産前後の慌ただしい時期に窓口へ行く手間が減ります。
表の中で一番忘れやすいのが、退院のときの明細書の確認です。直接支払制度を使うと、窓口で払う額が少なくなるため、総額がいくらだったかを意識しないまま帰宅してしまいがちです。明細書は差額の申請や、後で説明する医療費控除にも使うので、必ず保管してください。
3つの受け取り方の違い
出産育児一時金の受け取り方には、「直接支払制度」「受取代理制度」「償還払い制度」の3つがあります。どれを使うかによって、出産の前にすることと、病院の窓口で払う金額が変わります。
| 受け取り方 | 誰が申請するか | 一時金を受け取るのは | 病院の窓口で払う額 |
|---|---|---|---|
| 直接支払制度 | 病院が本人に代わって申請 | 病院 | 費用総額から一時金を引いた額 |
| 受取代理制度 | 本人が出産前に市区町村へ申請 | 病院 | 費用総額から一時金を引いた額 |
| 償還払い制度 | 本人が出産後に市区町村へ申請 | 本人 | いったん全額 |
直接支払制度
直接支払制度は、病院が本人の代わりに保険者へ一時金を請求し、保険者から病院に直接支払われる仕組みです。本人は退院のときに、出産費用から一時金を差し引いた残りの額だけを払えば済みます。多額の現金を用意しなくてよいため、現在はこの方法が最も多く使われています。
厚生労働省によると、手続きは次のように進みます。まず出産前に、病院との間で直接支払制度を使うかどうかを確認し、病院が「直接支払制度利用に係る合意文書」を作ります。入院するときには、公的医療保険の資格を確認します。出産後は、病院から出産費用の明細書が発行され、保険者から支給決定の通知が届きます。
直接支払制度を使えるかどうかは施設によって違います。妊婦健診の早い段階で、出産予定の病院に確認しておくと安心です。
受取代理制度
受取代理制度は、本人が出産前に保険者へ支給の申請をし、病院が本人の代わりに一時金を受け取る仕組みです。窓口での支払いは直接支払制度と同じく差額だけになります。
この制度は、年間の分娩件数が少ない診療所や助産所など、厚生労働省に届け出た施設で使われています。手続きは、市区町村から支給申請書をもらい、病院に受取代理の欄を記入してもらってから、市区町村に提出するという流れです。申請できる時期は自治体ごとに決まっているので、施設から受取代理制度を案内されたら、早めに市区町村の窓口に相談してください。
償還払い制度
償還払い制度は、本人が病院の窓口で出産費用をいったん全額払い、出産後に自分で保険者へ申請して一時金を受け取る仕組みです。直接支払制度や受取代理制度を使わない場合や、使えない施設で出産した場合はこの方法になります。一時的に大きな金額を用意する必要がありますが、クレジットカードで支払ってポイントを受け取りたいなどの理由で、あえてこの方法を選ぶ人もいます。
どの受け取り方を選べばよいか
選び方の基本はシンプルです。出産する施設が直接支払制度を使えるなら、直接支払制度を選ぶのが最も手間がかかりません。施設が受取代理制度を案内している場合は、出産前に市区町村へ申請する必要があるので、案内を受けたらすぐに動きます。どちらも使えない施設や海外で出産する場合は、償還払いになるので、出産費用を全額立て替えられるよう準備しておきます。
償還払いをあえて選ぶ場合は、一時金が振り込まれるまでの期間、出産費用を立て替えることになります。家計に余裕があるかどうかを考えたうえで選んでください。
直接支払制度を使うときに確かめたいこと
直接支払制度は便利な仕組みですが、いくつか事前に確かめておくと安心な点があります。
まず、合意文書の中身です。合意文書には、一時金を病院が受け取ることや、費用が一時金を下回った場合は差額を本人が保険者に請求できることなどが書かれています。厚生労働省は、マイナ保険証に対応した合意文書のひな型も公開しています。サインする前に、差額の扱いが書かれているかを確かめてください。
次に、分娩予約金や前払い金の扱いです。施設によっては、出産の予約の段階で予約金を求めるところがあります。予約金が退院時の精算でどう扱われるのか(費用に充てられるのか、返金されるのか)を聞いておくと、退院時の支払額を見誤りません。
そして、退院時の支払方法です。一時金を超えた分の支払いに、現金のほかクレジットカードが使えるかどうかは施設によって違います。出産は予定日どおりに進むとは限らないので、支払方法は早めに確認しておきましょう。
なお、厚生労働省の案内によると、直接支払制度を利用する施設のうち、一定以上の件数を扱う病院や診療所、助産所は、出産なびで出産費用などの情報を公表することとされています。施設を比べるときの手がかりとして使えます。
差額が出たときの申請の手順
直接支払制度や受取代理制度を使った場合でも、自分で申請が必要になるケースがあります。それが、出産費用の総額が一時金の額より少なかった場合です。
たとえば、出産費用の総額が46万円だった場合、病院には46万円が支払われ、50万円との差額の4万円は本人が受け取れます。この差額は自動では振り込まれないことが多く、本人が市区町村に申請して初めて支給されます。厚生労働省の案内でも、差額の請求手続きについては保険者に確認するよう書かれています。
市区町村によっては、出産から一定期間たつと差額の支給申請書を郵送してくれるところもありますが、すべての自治体がそうしているわけではありません。病院から受け取った明細書を見て、総額が一時金の額を下回っていたら、自分から市区町村の国民健康保険の窓口に問い合わせてください。
逆に、出産費用が一時金を上回った場合は、上回った分を病院の窓口で支払います。出産費用は地域や施設、個室の利用などによって大きく変わります。厚生労働省の「出産なび」では、全国の出産施設ごとのサービス内容と出産費用の情報を調べられるので、施設を選ぶ段階で費用の目安を確かめておくと、退院時の支払いに備えられます。
申請に必要な書類と申請先
自分で申請する場合(差額の申請、償還払い、受取代理制度の申請)の申請先は、国民健康保険に加入している人なら、住んでいる市区町村の国民健康保険の窓口です。国民健康保険組合に加入している人は、その組合が申請先になります。郵送で受け付けている自治体も多くあります。
必要な書類は市区町村によって違いますが、壬生町の例では、直接支払制度などを利用しなかった場合や差額の支給がある場合に、次のものを用意するよう案内されています。
- 出産の事実がわかる書類(母子健康手帳など。出生届や住民登録が済んでいれば不要な場合あり)
- 直接支払制度などを利用しないことの同意書(利用しなかった場合のみ)
- 本人確認のための身分証明書
- 国民健康保険の資格を確認できるもの
- 医療機関の領収書
- 世帯主名義の預金通帳など振込先がわかるもの
ここで注意したいのが、振込先の名義です。壬生町の例のように、振込先を世帯主名義の口座としている自治体があります。母親本人の口座に振り込んでほしい場合は、委任状などが必要になることがあるので、申請前に確認してください。
申請書の様式は、市区町村の窓口でもらえるほか、ホームページからダウンロードできる自治体もあります。郵送で申請する場合は、提出する書類の写しを手元に残し、いつ送ったかを記録しておきましょう。支給までにかかる期間は自治体によって違うので、申請のときに目安を聞いておき、その時期を過ぎても振り込みがなければ窓口に問い合わせてください。申請書に書く口座番号の誤りや、添付書類の不足があると、支給がさらに遅れます。提出前に、記入した内容と添付書類を一度見直しておくと安心です。
病院から受け取る書類のうち、出産費用の明細書と、直接支払制度の合意文書の写しは、申請のときに求められることがよくあります。退院の際に受け取った書類は、申請が終わるまで捨てずに保管しておきましょう。
申請の期限は出産日の翌日から2年
出産育児一時金には申請の期限があります。厚生労働省のよくある質問では、次のように案内されています。
申請期限は出産日の翌日から2年以内です。 出典: 厚生労働省 出産育児一時金等について
2年を過ぎると、時効で受け取る権利がなくなります。直接支払制度を使った人は「手続きは病院がやってくれたから終わり」と思いがちですが、差額の申請は自分でしなければなりません。出産直後は赤ちゃんのお世話で手いっぱいになるので、出生届や子どもの国民健康保険の加入手続きで市区町村の窓口に行くときに、差額の申請もまとめて済ませてしまうのがおすすめです。
これ、知らない人が本当に多いんです。差額が数万円出ていたのに、通知が来なかったので気づかず、2年が過ぎていたというのはよくある話です。明細書の総額は、退院したらその日のうちに確認しておいてください。
会社を辞めた人、保険が変わった人の扱い
フリーランスや自営業の人の中には、妊娠中に会社を辞めて国民健康保険に切り替えたという人もいます。この場合、どちらの保険から一時金を受け取るのかが問題になります。
原則は、出産した時点で加入している保険者に申請します。国民健康保険に切り替えたあとに出産したなら、国民健康保険から支給されます。ただし、例外があります。厚生労働省のよくある質問でも、退職後6か月以内に出産した人は、1年以上続けて加入していた以前の保険者から受け取ることを選べると案内されています。市区町村の案内では、たとえば次のように説明されています。
ただし、社会保険の本人としての加入期間が1年以上あった方が、国民健康保険に変わってから6か月以内に出産された場合は、先に加入していた社会保険と国民健康保険のどちらから出産育児一時金の支給を受けるか選択することができます。 出典: 壬生町 国民健康保険の加入者が出産したときの手続き
つまり、会社の健康保険に本人として1年以上続けて加入していた人が、退職後6か月以内に出産した場合は、前の健康保険から受け取ることも選べるということです。どちらからも二重に受け取ることはできません。会社の健康保険組合によっては、法律で決まった額に上乗せの給付がある場合があるため、前の保険から受け取るほうが有利なこともあります。退職した会社の健康保険組合に問い合わせて、比べてから決めてください。
なお、夫の会社の健康保険の扶養に入っている妻が出産した場合は、国民健康保険ではなく夫の健康保険から「家族出産育児一時金」が支給されます。自分がどの保険に入っているのかを、まず確かめておきましょう。
海外で出産する場合
海外で出産した場合でも、出産した時点で日本の公的医療保険の有効な資格を持っていれば、一時金を申請できます。国民健康保険は日本に住んでいる人が加入する制度なので、住民票を日本に残したまま一時的に海外で出産する場合などが該当します。
海外出産の場合は直接支払制度が使えないため、出産後に自分で市区町村に申請する償還払いになります。現地の病院が発行した出生証明書や、出産の事実がわかる書類に、日本語の翻訳を付けて提出するよう求められるのが一般的です。パスポートなど、出産した期間に海外にいたことがわかる書類を求める自治体もあります。厚生労働省は海外出産の一時金の支給を適正化する対策も進めていて、確認が丁寧に行われる傾向にあります。海外での出産を予定している人は、出国前に市区町村の窓口で必要書類を確かめておいてください。
死産や流産、早産のとき
出産育児一時金は、妊娠4か月(85日)以上の出産が対象で、この「出産」には死産や流産も含まれます。つらい出来事のあとで手続きのことを考えるのは大変ですが、条件を満たしていれば一時金は支給されます。
手続きは、通常の出産と同じく、直接支払制度を使っていれば病院が代わりに請求します。使っていない場合は、市区町村の窓口に申請します。妊娠週数や死産であったことがわかる書類(医師の証明書や死産証明書など)を求められることがあるので、窓口で確認してください。
国民年金の産前産後免除も、妊娠85日以上の死産や流産、早産の場合に対象になると日本年金機構は案内しています。死産の届出をする場合は、死産証明書や母子健康手帳などを添付します。心身の回復を優先しながら、家族に手続きを手伝ってもらうことも考えてください。
出産費用と医療費控除
出産にかかった費用は、確定申告の医療費控除の対象になるものがあります。医療費控除とは、1年間に支払った医療費が一定額を超えたときに、所得から差し引ける仕組みです。フリーランスや自営業の人はもともと確定申告をするので、忘れずに入れておきたい項目です。
国税庁は、出産費用と一時金の関係について次のように説明しています。
健康保険組合や共済組合などから出産育児一時金や家族出産育児一時金または、出産費や配偶者出産費などが支給されますので、その金額は医療費控除の額を計算する際に医療費から差し引かなければなりません。 出典: 国税庁 No.1124 医療費控除の対象となる出産費用の具体例
つまり、出産費用が55万円で一時金が50万円なら、医療費控除の計算に使えるのは差し引きの5万円だけということです。一方で、妊婦健診や検査の費用、通院の交通費、出産のための入院でタクシーを使うしかなかった場合のタクシー代などは、医療費控除の対象になると国税庁は説明しています。通院の交通費は領収書がないことが多いので、日付と金額を家計簿などに記録しておきましょう。
医療費控除は、生計を同じくする家族の医療費をまとめて申告できます。夫婦のどちらで申告するのが得かは、それぞれの所得によって変わります。迷ったら税務署の相談窓口で確認してください。
手続きでつまずきやすい場面
ここからは、国民健康保険の人が出産育児一時金の手続きでつまずきやすい場面を取り上げます。
里帰り出産をする場合
実家の近くの病院で出産する場合でも、一時金は住民票のある市区町村の国民健康保険から支給されます。直接支払制度は全国の施設で使える仕組みなので、里帰り先の病院が対応していれば、通常どおり合意文書にサインするだけです。差額の申請は、里帰り先ではなく、住民票のある市区町村に行います。郵送で受け付けている自治体も多いので、戻ってからでなくても手続きできるか確認しておくと安心です。
出産の前後に引っ越した場合
出産育児一時金は、出産した時点で加入している保険者が支給します。出産の直前に市区町村をまたいで引っ越した場合は、転入先の市区町村の国民健康保険に加入し直してから出産することになるので、申請先も転入先になります。転入の手続きが遅れると、資格の確認で病院とのやり取りが滞ることがあるため、引っ越しをしたら14日以内に国民健康保険の手続きを済ませてください。
双子や三つ子の場合
一時金は子ども1人につき支給されるので、双子なら原則100万円です。直接支払制度の合意文書や明細書も、人数分の扱いになっているかを確認してください。国民健康保険料の産前産後軽減や国民年金の産前産後免除も、多胎の場合は対象になる期間が長くなります。
国民健康保険組合に加入している場合
建設国保や、医師、薬剤師、美容業などの国民健康保険組合に加入している人は、申請先が市区町村ではなく組合になります。組合によっては、一時金の申請書の様式や必要書類、上乗せの給付の有無が市区町村と違います。組合の窓口やホームページで、早めに手続きの方法を確かめてください。
申請の名義が誰になるか
国民健康保険では、保険料を納める義務を負うのが世帯主であることもあり、給付の申請者や振込先を世帯主としている自治体があります。夫が世帯主で、妻が国民健康保険に加入して出産した場合などは、申請書の書き方を窓口で確認しておくと二度手間を防げます。
産休中の収入の減少にどう備えるか
会社員が出産する場合は、出産育児一時金とは別に、産前産後の休業中に給料の代わりとして出産手当金を受け取れます。ところが、国民健康保険には、こうした所得補償の仕組みが原則としてありません。国土交通省が建設業の一人親方向けに作ったリーフレットでも、国民健康保険の所得補償は「なし」、建設国保などの組合では「組合によって補償あり」と整理されています。また、会社員の育児休業給付は雇用保険の制度なので、雇用保険に入っていないフリーランスや自営業の人は対象になりません。
つまり、フリーランスや自営業の人にとって、出産の前後に仕事を休むことは、そのまま収入が減ることを意味します。だからこそ、受け取れる一時金の差額や、保険料の軽減と免除を確実に使うことが大切です。国民健康保険料の産前産後軽減と国民年金保険料の産前産後免除を両方使えば、出産前後の4か月間の保険料負担はかなり軽くなります。2026年10月からは、国民年金保険料の育児免除も加わりました。
あわせて、休む期間の生活費を事前に見積もっておくことをおすすめします。出産予定日の前後でどのくらい仕事を減らすのか、その間の固定費はいくらかを書き出しておくと、どの程度の蓄えが必要かが見えてきます。
出産費用の負担をめぐる2026年の動き
出産費用の負担については、制度を見直す動きも出ています。厚生労働省は令和8年3月13日に「健康保険法等の一部を改正する法律案」を国会に提出しました。その概要には、「出産に伴う妊婦の経済的負担を軽減するため、出産の標準的な費用に係る給付体系の見直し等を行う」ことが盛り込まれています。この部分の施行は、公布後2年以内に政令で定める日とされています。
同じ法案には、国民健康保険で子どもの均等割保険料の5割を軽減する措置の対象を、現在の未就学児から高校生年代まで広げる内容も含まれています。
ただし、こうした見直しが実際にいつから、どのような形で始まるかは、法案の審議と、その後に定められる政令や省令しだいです。2026年10月時点で出産する人が受け取れるのは、ここまで説明してきた原則50万円の出産育児一時金です。最新の情報は、厚生労働省の発表と、加入している市区町村や国保組合の案内で確認してください。
一時金とあわせて確かめたい国民健康保険と年金の手続き
出産育児一時金の申請と同じ時期に、国民健康保険と国民年金でもいくつか手続きがあります。まとめて済ませると、窓口に行く回数を減らせます。
1つ目は、生まれた子どもの国民健康保険の加入です。子どもが国民健康保険に入る場合は、生まれてから14日以内に市区町村で届け出ます。出生届と同時に手続きできる自治体が多くあります。
2つ目は、国民健康保険料の産前産後期間の軽減です。国民健康保険法施行令では、出産する予定の被保険者について、出産予定月の前月から翌々月までの4か月間(多胎の場合は3か月前から6か月間)の所得割と均等割を減額する仕組みが定められています。届出が必要なので、市区町村の国民健康保険の窓口で確認してください。
3つ目は、国民年金保険料の産前産後免除です。国民年金の第1号被保険者が出産する場合、出産予定月の前月から4か月間の保険料が免除されます。さらに、2026年10月からは、子が1歳になるまでの保険料が所得に関係なく免除される育児免除の制度も始まりました。どちらも届出が必要で、免除された期間は保険料を納めたものとして年金額に反映されます。
フリーランスとして出産を迎える人へ、運営者の視点から
フリーランスや在宅ワークの市場を20年運営してきた立場から見ると、出産をきっかけに働き方を見直す人は少なくありません。会社員と違い、国民健康保険には原則として出産手当金(産休中の所得補償)がないため、出産の前後に仕事を減らすと収入がそのまま減ります。だからこそ、出産育児一時金の差額や、保険料の軽減・免除といった制度を取りこぼさないことが、家計を守るうえで大きな意味を持ちます。
もう1つ感じるのは、出産前に取引先と仕事の量や納期を話し合っておく人ほど、復帰がスムーズだということです。休む期間を早めに伝え、引き継ぎの段取りを書面で残しておくと、取引先も安心して待ってくれます。直接やり取りできる取引先が多いほど、こうした調整はしやすくなります。
出産のあと、短い時間で取り組める仕事を探すなら、文章を書く仕事は選択肢の1つです。著述家,記者,編集者の年収・単価相場では、ライターや編集者の収入の相場を公的な統計をもとに紹介しています。取引先との契約内容に不安がある場合は、フリーランスを守る「下請法(取適法)」の知識|発注書・契約書の必須項目チェックリストで確認すべき項目を整理しています。
出産育児一時金は、知っていれば確実に受け取れるお金です。出産予定の病院が直接支払制度を使えるか、明細書の総額が50万円を下回っていないか、申請の期限はいつか。この3つを押さえておけば、受け取り忘れは防げます。わからないことは、遠慮なく市区町村の国民健康保険の窓口に聞いてください。制度は、使う人の味方です。
よくある質問
Q. 国民健康保険の出産育児一時金はいくらもらえますか?
子ども1人につき原則50万円です。双子なら2人分が支給されます。産科医療補償制度に加入していない施設で出産した場合などは48万8千円になります。国民健康保険組合(建設国保など)では、組合によって上乗せの給付がある場合があります。正確な支給額は、加入している市区町村や国保組合の窓口で確認してください。
Q. 直接支払制度を使えば自分で手続きをする必要はありませんか?
出産費用が一時金の額以上なら、病院との合意文書にサインするだけで済むことが多いです。ただし、出産費用の総額が一時金より少なかった場合は、差額を受け取るために自分で市区町村に申請する必要があります。差額は自動で振り込まれないことが多いので、退院時の明細書で総額を確認し、少なければ窓口に問い合わせてください。
Q. 出産育児一時金の申請期限はいつまでですか?
出産日の翌日から2年以内です。2年を過ぎると時効で受け取れなくなります。差額の申請や、償還払いでの申請が必要な人は、出生届や子どもの国民健康保険の加入手続きで市区町村の窓口に行くときに、あわせて申請すると忘れずに済みます。必要書類は自治体によって違うので、事前にホームページや電話で確認してください。
Q. 会社を辞めて国民健康保険に切り替えた後に出産した場合はどうなりますか?
原則として、出産した時点で加入している国民健康保険から支給されます。ただし、前の会社の健康保険に本人として1年以上続けて加入していて、退職後6か月以内に出産した場合は、前の健康保険から受け取ることも選べます。二重には受け取れません。前の保険に上乗せの給付がある場合もあるので、比べてから決めてください。
この記事について
編集部
監修:@SOHO編集部
2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを20年運営。編集部が事実確認のうえ公開しています。

この記事を書いた人
長谷川 奈津@SOHO編集部
行政書士・元企業法務
企業法務で数多くのフリーランス契約を扱った経験を活かし、フリーランス向けの法律・契約・権利に関する記事を執筆。「法律はあなたの味方です」がモットー。
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