内容証明郵便の出し方


この記事のポイント
- ✓日本郵便が公表している現在の条件と料金だけを根拠に解説します
- ✓窓口とe内容証明の2つの手順
- ✓謄本の字数と行数のルール
まず、安心してください。内容証明の出し方は、思っているほど複雑ではありません。必要なものは、文書が1通と、その写しが2通と、封筒が1枚。これだけです。複雑に見えるのは、謄本の字数と行数に細かい決まりがあることと、どの郵便局でも出せるわけではないこと、そして料金の内訳が三段重ねになっていることが理由です。この記事では、日本郵便が公表している現在の条件と料金だけを使って、窓口で出す手順とインターネットから出す手順の両方を、最初から最後まで並べます。読み終えたときに、自分の場合はどちらで出せばいいかと、封筒を持って郵便局に行くまでに何を用意すればいいかが決まっている状態を目指します。
内容証明郵便でできること、できないこと
最初に性格をはっきりさせておきます。内容証明は、一般書留の郵便物について、その中身の文書を郵便局が証明するサービスです。日本郵便の説明はこうなっています。
いつ、いかなる内容の文書を誰から誰あてに差し出されたかということを、差出人が作成した謄本によって当社が証明する制度です。 当社が証明するものは内容文書の存在であり、文書の内容が真実であるかどうかを証明するものではありません。 出典: post.japanpost.jp
証明されるのは「いつ」「誰から誰に」「どういう文面を」送ったかの3点だけです。書いてある内容が正しいことも、相手にそれを守らせる力も、内容証明そのものには付いてきません。支払いを命じる効力もありません。ここを誤解したまま出すと、届いたのに何も起きないという結果に落胆することになります。
それでも内容証明を使う理由は、後から争いになったときに「送った事実」を証明できるからです。民法で意味を持つ意思表示の多くは、相手に届いて初めて効力が生じます。たとえば民法541条は、契約を解除するには相当の期間を定めて履行を催告し、その期間に履行がないことが要ると定めています。この催告をメールで出していても、相手が「見ていない」「そんな内容ではなかった」と言い出したときに反証しづらい。内容証明なら、差出人の手元と郵便局に同じ文面の謄本が残ります。
時効の場面でも効きます。民法150条1項は、催告があったときはその時から6か月を経過するまで時効は完成しないと定めています。報酬の請求権は権利を行使できると知った時から5年で時効にかかるので、期限が迫っているときに催告を1回入れて6か月の猶予を作り、そのあいだに支払督促や訴訟の準備をするという使い方ができます。ただし同条2項により、猶予されている間にもう一度催告しても効果は重ねられません。1回きりの札だと思って使う場面を選んでください。
出し方は2つ。窓口とインターネット
出し方は郵便局の窓口に持ち込む方法と、e内容証明(電子内容証明)というインターネットのサービスを使う方法の2つです。行政書士や弁護士に作成を頼む選択肢もありますが、その場合も最終的にはこのどちらかで発送されます。
窓口で出す場合の最大の注意点は、すべての郵便局で出せるわけではないことです。日本郵便の案内は、差し出せるのは集配郵便局および支社が指定した郵便局だと書いています。しかも一部の取扱局では特定の曜日だけの取扱いになっています。近所の小さな郵便局に持ち込んで断られる、というつまずき方が非常に多い。出かける前に、行こうとしている郵便局が内容証明を扱っているかどうかを電話で確認してください。この一本の電話で往復の移動がまるごと節約できます。
e内容証明は、Wordで作った文書をアップロードすると、日本郵便の設備が印刷と封入封かんまで自動で行い、内容証明郵便として発送するサービスです。受付は24時間。封筒も用紙も印刷も要りません。支払いはクレジットカードか料金後納です。受取人には正本が、差出人には謄本が、一般書留で届きます。
どちらを選ぶかは、文字数と通数と急ぎ具合で決まります。目安は後の節で表にしますが、先に結論を書いておくと、短い文面を1通だけ、しかも今日中に出したいなら窓口。文面が長い、あるいは複数の相手に同じ内容を送るならe内容証明です。在宅で働いていて日中に郵便局へ行きづらい人にとっては、後者の存在を知っているかどうかで負担がまったく変わります。
窓口で出す手順
窓口に持っていくものは4つです。順に見ていきます。
1つめは内容文書です。相手に届く本体の手紙で、これは1通だけ作ります。ここに字数や行数の制限はありません。
2つめは謄本2通です。謄本というのは内容文書を写した書面のことで、差出人用と郵便局保存用に1通ずつ要ります。この謄本には字数と行数の制限があります。ここが唯一の技術的な関門です。内容文書と謄本は同じ内容であれば、市販の内容証明用紙を使わなくてもかまいませんし、コピーで作ってもかまいません。つまりパソコンで打ったものを3部印刷すれば、内容文書1通と謄本2通が同時にそろいます。
3つめは封筒です。差出人と受取人の住所氏名を記載した封筒を、封をしない状態で持っていきます。窓口で中身を確認してから封をするためです。
4つめは料金です。内容証明の加算料金を含めた郵便料金を用意します。切手で払う場合は、封筒に貼らずに窓口へ持っていってくださいと案内されています。
念のため差出人の印鑑も持っていくことをおすすめします。謄本が2枚以上になるときは、つづり目に契印を押す必要があるからです。この契印に使う印章は、封筒に記載された差出人の印章に限られます。ただし差出人が1名だけなら、「契印」などつづり目を示せる印章で代えてもかまいません。文字を訂正したり挿入したり削除したりするときも、その字数と箇所を欄外か末尾の余白に書いて、差出人の印を押します。このとき、消した文字は読める形で残しておきます。
もうひとつ、同封できるものの制限があります。内容証明として扱えるのは文書1通だけで、図面や返信用封筒を一緒に入れることはできません。為替証書や小切手などの有価証券も同じです。請求書のコピーを添えたい気持ちになりますが、それはできないので、必要な情報は本文の中に書き込みます。
謄本の字数と行数のルール
謄本の制限は次のとおりです。縦書きと横書きで選べる形が違います。
| 書き方 | 制限 |
|---|---|
| 縦書き | 1行20字以内、1枚26行以内 |
| 横書き | 1行20字以内、1枚26行以内 |
| 横書き | 1行13字以内、1枚40行以内 |
| 横書き | 1行26字以内、1枚20行以内 |
横書きは3通りから選べます。1枚あたりに入る文字数は、20字×26行で520字、13字×40行で520字、26字×20行で520字。どれを選んでも上限は同じ520字です。書きたい分量から逆算して、レイアウトの見た目で選べばかまいません。
字数の数え方にも決まりがあります。記号は1個で1字。ただし括弧は上下(横書きなら左右)を全体で1字として数え、上の括弧がある行の字数に入れます。文字を丸や四角で囲んだものは、中の文字と枠を合わせて数えます。丸数字は、文中の序列を示す記号として使っているなら全体で1字として数えてよいことになっています。傍点や下線を付けた文字は、それらを含めた全体を1字と数えます。
ここは初めて書く人が必ず時間を取られる場所です。Wordで1行20字の設定にして、26行で改ページするように組んでおくと数える手間が消えます。文字数ぎりぎりまで詰めるより、余裕を持って2枚に分けたほうが、窓口で数え直しを求められたときの修正が楽になります。謄本には、郵便物の差出人と受取人の住所氏名を末尾余白に付記します。ただし内容文書に書いたものと同じなら、原則としてこの付記は省略できます。付記した文字は謄本の字数や枚数には入りません。
文字の種類にも制限があります。使えるのは仮名、漢字、数字、括弧、句読点、一般に記号として使われるもの、そして固有名詞に限った英字です。会社名や商品名以外で英語を使うことはできないと考えておくのが安全です。
料金の内訳
窓口で出す場合の料金は、内容証明の加算料金、郵便物の料金、一般書留の加算料金の3つを足した額になります。
| 費目 | 金額 |
|---|---|
| 内容証明の加算料金(謄本1枚) | 480円 |
| 内容証明の加算料金(謄本2枚) | 770円 |
| 内容証明の加算料金(謄本3枚) | 1,060円 |
| 定形郵便物(50gまで) | 110円 |
| 一般書留の加算料金(損害要償額10万円まで) | 480円 |
| 配達証明(差し出しの際) | 350円 |
| 速達(250gまで) | 300円 |
日本郵便が示している計算例は、謄本1枚の内容証明を定形郵便物で出す場合で、480円+110円+480円=1,070円です。これに配達証明を付ければ1,420円、速達も付ければ1,720円になります。内容証明は一般書留にしなければならない決まりなので、書留の480円は必ずかかります。簡易書留では出せません。
謄本が増えると内容証明の加算料金は1枚につき290円ずつ上がります。同じ内容の文書を同時に2通以上出す「同文内容証明」の場合は、1通目が上記の額で、2通目以降は1通ごとにその半額になります。共同で受注した案件の発注元と元請けの両方に同じ通知を出す、といった場面で使える仕組みです。
差し出したあとのことも押さえておきます。差出人は、差し出した日から5年以内に限って、差出郵便局に保存されている謄本の閲覧を請求できます。閲覧の料金は480円です。同じく5年以内なら、謄本を提出して再度証明を受けることもできます。手元の謄本を紛失しても5年間は取り返しがつく、という設計です。
e内容証明の手順と料金
e内容証明は、日本郵便が指定する雛形のWordファイルを使って文書を作り、専用のWebサイトにアップロードして差し出します。利用には無料の利用登録が要ります。
作成の決まりは次のとおりです。文書作成ソフトはMicrosoft Word 2016、2019、2021、またはMicrosoft 365のデスクトップ版。枚数は最大5枚まで。文字のポイントサイズは10.5ポイント以上145ポイント以下。用紙はA4縦置きの横書きか、A4横置きの縦書きで、縦置きと横置きの混在はエラーになります。余白は、A4縦置きなら上左右1.5cm以上と下7cm以上、A4横置きなら上下右1.5cm以上と左7cm以上。図や表は使えません。文字の装飾は太字と斜体だけで、それ以外はエラーになります。使える文字はJIS第1水準と第2水準の範囲で、外字は通りません。
窓口との最大の違いは1枚に入る文字数です。窓口の内容証明は1枚520字までですが、e内容証明はWordの標準的な設定(10.5ポイント明朝体、行間1行、文字間隔標準)で1枚あたり1,584字が目安とされています。つまり窓口なら3枚になる文面が、e内容証明なら1枚に収まります。
料金の内訳は次のようになっています。
| 費目 | 金額 |
|---|---|
| 郵便料金 | 110円 |
| 電子郵便料金(1枚目) | 19円 |
| 電子郵便料金(2枚目以降1枚ごと、5枚まで) | 6円 |
| 内容証明料金(1枚目) | 382円 |
| 内容証明料金(2枚目以降1枚ごと、5枚まで) | 360円 |
| 謄本送付料金(通常送付) | 304円 |
| 謄本送付料金(一括送付、受取人数100人まで) | 503円 |
| 一般書留料金 | 480円 |
1枚で謄本を通常送付にした場合は、110円+19円+382円+304円+480円=1,295円です。配達証明350円と速達300円も付けられます。
日本郵便が示している比較では、1,560字(窓口だと3枚)の文面を1通出す場合、窓口が1,650円に対してe内容証明は1,295円で、355円安くなります。10通出すなら窓口16,500円に対して謄本一括返送で10,413円となり、差は6,087円に広がります。文面が長いほど、通数が多いほど、e内容証明が有利になる料金設計です。
どちらで出すかの決め方
判断の軸は3つです。
1つめは急ぎ具合です。窓口なら、持ち込んだその場で日付が確定します。e内容証明は24時間受け付けていますが、差出ボタンを押した時点の日付が文書に印字される仕組みなので、深夜に作業しても当日付けで出せます。ただしWordの雛形をダウンロードして余白を整える初回の作業に時間がかかるので、今日中に出さないと期限を落とすという状況なら窓口のほうが確実です。
2つめは文字数です。伝えたいことが520字に収まるなら窓口で1枚、収まらないならe内容証明が候補に上がります。未払い報酬の催告だと、契約の経緯、納品の事実、請求額、支払期日、今後の対応まで書くと520字ではまず足りません。2枚3枚と増やせば窓口でも出せますが、そのぶん謄本の契印や字数の確認の手間が増えます。
3つめは同じ文面を何通出すかです。相手が1人なら差は小さく、複数なら差は大きい。e内容証明の差込差出し機能を使うと、受取人ごとに氏名や住所や金額が違う文書を100通までまとめて発送できます。
ひとつ注意があります。e内容証明では、アップロードした文書ファイルを一時保存できますが、保存日時の4日後(96時間後)にデータが削除されます。かんたん差出しの場合は一時保存そのものができません。書きかけで数日寝かせるつもりなら、原本は自分のパソコンに残しておいてください。
文面に何を書くか
未払い報酬を請求する場合を例に、組み立てを見ていきます。順序は、事実、請求、期限、次の手段の4段です。
事実の部分には、いつ、誰と、どういう内容の契約をして、いつ納品または業務を完了し、いつ請求書を送り、支払期日がいつだったかを書きます。ここは争いようのない事実だけを並べます。感情や評価を混ぜません。
請求の部分には、いくら払ってほしいのかを書きます。元本と、遅延損害金を請求するならその旨を書きます。振込先も記載します。相手が払おうとしたときに振込先がわからない、という間抜けな詰まり方を防ぐためです。
期限の部分には、いつまでに払ってほしいかを書きます。民法541条の催告として使うなら「相当の期間」を定める必要があるので、到達から1週間から2週間程度を目安にするのが一般的です。
次の手段の部分には、期限までに支払いがない場合にどうするかを書きます。法的手続きを検討する、という程度の書き方が無難です。回収の手段としては支払督促や少額訴訟があり、費用と流れは未払い報酬を回収する!弁護士の着手金・成功報酬と支払督促の流れ【2026年最新】で弁護士に頼む場合との比較とあわせて整理しています。
そして重要なのが、書かないことの判断です。実務では、書きすぎたことが後で自分の首を絞める場面があります。
内容証明郵便は、相手方の手元にも残りますから、記載内容に不備があると、あなたの会社が不利になりかねません。実際、ご自身で内容証明郵便を作成して送付し、その後裁判になってから弁護士にご依頼いただいたケースで、内容証明郵便に記載された一文が原因で敗訴に追い込まれる、という事案もあります。 出典: kotegawa-law.com
具体的には、「修正対応が遅れたのは事実ですが」のような譲歩、「本来なら30万円ですが20万円で構いません」のような一方的な減額の申し出、「訴えて社会的信用を失わせる」のような威圧的な表現。1つめと2つめは相手に有利な証拠になり、3つめは別の問題を招きます。事実と請求と期限だけを、淡々と。これが最も強い文面です。文書の型そのものに自信がないなら、ビジネス文書検定の出題範囲が、通知文や請求文の標準的な構成を確認する材料になります。
内容証明が効く場面と、効かない場面
同じ1,070円を払うなら、効く場面で使いたいところです。働く側の立場でよく出てくる場面を整理します。
効く場面の筆頭は、未払い報酬の請求です。請求書を出したのに支払期日を過ぎても入金がなく、メールに返事がない。この状態で内容証明を出すと、担当者の机の上ではなく、会社の受付を通って記録の残る形で届きます。社内で「放置していたら書留が来た」という扱いになり、決裁の階層が一段上がることがあります。回収の見込みそのものは相手の資金次第ですが、少なくとも担当者個人が握りつぶす経路は塞がります。
次が契約の解除です。相手が約束を守らないので契約を終わらせたい、という場面では、民法541条の催告をしたうえで解除の意思表示をします。この2つは書面で出しておかないと、後で「解除は成立していない」と争われたときに証明できません。継続案件の途中で降りる判断をするときは、感情的なやり取りをメールで重ねるより、1通の書面で区切ったほうが結果的に短く終わります。
著作物の無断使用への抗議も定番です。納品した記事や写真が、契約の範囲を超えて使われている。使用の停止と、必要なら追加の使用料を求める通知を出します。この場合は、いつどこで何が使われているかを特定して書くことが重要です。URLや掲載号数、確認した日付まで書いておくと、後から証拠と突き合わせやすくなります。
逆に効かない場面もはっきりしています。1つめは相手の所在がわからないとき。届かなければ何も起きません。2つめは相手に支払能力がまったくないとき。強い文面を送っても、無いものは出てきません。3つめは、こちらの主張に弱いところがあるとき。冒頭で触れたとおり、内容証明の文面は相手の手元にも残ります。争点が微妙な案件では、出す前に整理しておかないと、自分の言い分を固定してしまうことになります。
そして4つめが、まだ話し合いの余地があるときです。内容証明は、受け取った側に「もう交渉ではなく手続きに入った」という印象を与えます。今後も仕事を受けたい相手に対して、支払いが1週間遅れただけで出すような使い方をすると、関係のほうが先に切れます。使う順番としては、メールでの催促、電話での確認、書面での催告、そして内容証明。この階段を飛ばさないほうが、回収できる確率は上がります。
出す前に確認しておく4つのこと
準備の段階で決まってしまうことが多いので、封筒を作る前に次の4点を確かめてください。
1つめは宛先です。相手が法人なら、登記されている商号と本店所在地、代表者の氏名を確認します。請求書のやり取りで使っていた屋号や略称、あるいは支店の住所しか知らないという状態だと、届かないか、届いても「うちの会社宛ではない」と言われる余地を残します。登記事項証明書は法務局の窓口やオンラインの登記情報提供サービスで取れます。数百円で済む確認なので、ここは省略しないでください。
2つめは金額の根拠です。請求する額がいくらで、その内訳がどうなっているか。着手金を受け取っている場合は差し引いた残額を書きます。消費税の扱いも明確にします。源泉徴収がある取引なら、その分を引いた手取り額なのか、引く前の額なのかを書き分けます。ここが曖昧だと、相手が「金額に争いがある」という形で反論する入り口を作ってしまいます。
3つめは証拠の所在です。発注のやり取り、納品の記録、請求書、支払期日の記載。この4つが手元にそろっているかを確認します。チャットツールの無料プランは、一定期間より古い履歴が読めなくなることがあります。未払いが発生した時点で、必要な範囲をスクリーンショットかエクスポートで保存しておいてください。内容証明の段階では出番がなくても、その先の手続きに進んだときに必要になるのはここです。
4つめは、自分の側に落ち度がないかの点検です。納期を守れていたか、指示された修正に対応していたか、契約の範囲を超える要求を断った経緯が記録に残っているか。落ち度が全くない案件はそう多くありません。ゼロにする必要はなく、把握しておけばいいのです。把握していれば、文面で余計な譲歩を書かずに済みます。
この4点の確認に半日かけておくと、実際に書き始めてからは1時間もかかりません。逆に、確認を飛ばして文面から書き始めると、途中で事実が固まっていないことに気づいて何度も書き直すことになります。
自分で出すか、専門家に頼むか
内容証明は本人が出せます。資格も要りません。では、どこから専門家に頼むべきか。判断の材料を3つ挙げます。
1つめは金額です。請求額が数万円なら、行政書士や弁護士に作成を依頼する費用のほうが上回ることがあります。相場は事務所によって幅がありますが、作成だけでも数万円というのが一般的な水準です。回収できるかどうかも不確実な状況で、確実にかかる費用を先に積むかどうかは、金額との見合いで決めることになります。
2つめは、相手が反論してくる見込みです。相手が金額や品質そのものを争っていて、すでにメールで言い分をぶつけ合っている状態なら、文面の作り方が結果を左右します。この場合は早めに専門家に相談したほうが安全です。逆に、相手が単に無反応なだけで争点がない場合は、自分で出しても内容が変わりません。
3つめは、差出人の名義です。弁護士名で出すと、受け取る側の受け止め方が変わります。本人名義の書面は無視しても、弁護士名の書面は社内で報告が上がる。この差を狙うなら、費用を払う意味があります。ただし弁護士に頼む場合、内容証明の送付だけで終わることは少なく、その先の交渉や手続きまで含めた契約になるのが普通です。着手金と成功報酬の考え方を先に確認してから決めてください。
判断に迷ったら、まず自分で書いてみて、送る前に一度専門家に見てもらうという中間の使い方もあります。自治体や弁護士会の無料法律相談では、持ち込んだ文面について助言をもらえることがあります。全部を任せるか自分でやるかの二択ではない、ということは知っておいて損がありません。
配達証明を付ける理由と、相手が受け取らなかったとき
内容証明が証明するのは「送ったこと」であって「届いたこと」ではありません。届いたことを証明したいなら、配達証明を付けます。差し出しの際に申し込めば350円、差し出した後に申し込むと480円です。差し出す時点で付けておくほうが安く、確実です。
意思表示は相手に到達して効力が生じる、というのが民法の原則です。契約の解除通知や、期限を切った催告を送るときは、到達の日付が争点になります。ここを空けたまま出すと、内容証明を使った意味が半分になります。未払いの請求で出すなら、配達証明はほぼ必須のオプションだと考えてください。
相手が受け取らなかった場合はどうなるか。一般書留なので、不在なら不在通知が入り、保管期間が過ぎれば差出人に還付されます。受取拒絶をされることもあります。返ってきた封筒は、封を開けずに保管してください。郵便局のスタンプと日付が押されたその封筒自体が、「その住所に届けようとしたが受け取らなかった」という記録になります。
その後の打ち手は状況によります。相手の別の住所や勤務先がわかっているなら、そちらへ出し直す方法があります。法人なら登記事項証明書を取れば本店所在地と代表者の住所がわかるので、そちらへ送る手もあります。受け取らないまま連絡も途絶えているなら、内容証明で粘るより支払督促に進んだほうが早いことが多い。支払督促は相手の住所地を管轄する簡易裁判所に申し立てる手続きで、書類審査だけで進みます。ただし相手の所在がわからない場合は使えないので、住所の特定はどちらにしても必要です。
なお内容証明を出したあとに相手から「分割で払いたい」という連絡が来たら、それは時効の関係では意味のある出来事です。民法152条1項により、権利の承認があれば時効はその時から新たに進行を始めます。返事が来たら、その内容はメールでもチャットでも必ず保存してください。
現場から見た、内容証明を出さずに済む取引の作り方
20年この市場を見てきた立場から言うと、内容証明を出す事態になる取引には共通点があります。着手前に金額と納期と成果物の範囲を文章で確定させていない、という一点です。逆に、その3つを最初に文章で固めている取引では、支払いが止まること自体がほとんど起きません。内容証明の書き方を覚えることより、そもそも書かずに済む発注書の受け取り方を覚えるほうが、時間あたりの効果は大きいです。取引条件を書面で確定させる義務は発注側にあり、その最低限の項目はフリーランスを守る「下請法(取適法)」の知識|発注書・契約書の必須項目チェックリストに整理されています。
運営者として見てきた限りでは、支払いをめぐるもめごとは、中間に会社が何社も入る取引に偏ります。誰が支払義務を負っているのかが受け手から見えなくなるからです。元請けは支払済みだと言い、間の会社は連絡がつかない。この構図になると、内容証明の宛先を決める段階で止まってしまいます。仲介の層が薄く、依頼者と受け手が直接つながっている取引には、この迷いがありません。手数料0%の直接取引の良さは、同じ予算で依頼側はより多く頼め、受け手の手取りが厚くなるという金額面だけではありません。何かあったときに、誰に何を言えばいいかが最初からはっきりしている。この「わかりやすさ」のほうが、長く続ける人にとっては効いてきます。
在宅ワーク求人サイトに並ぶ案件を長く見ていると、支払いのトラブルが起きにくいのは、完了の定義がはっきりしている仕事です。納品物の形や検収の基準が業界の慣行として固まっている分野ほど、何をもって仕事が終わったかで揉める余地が小さくなります。たとえばAI・マーケティング・セキュリティのお仕事のように、報告書や設定内容という形で成果が残る仕事は、後から事実を並べやすい。自分の職種の単価水準を確かめたいなら著述家,記者,編集者の年収・単価相場やソフトウェア作成者の年収・単価相場が目安になります。回収にかける時間と、その時間で稼げる額を一度並べてみると、どこで手を引くかの線も引きやすくなります。
内容証明は、出せば解決する魔法の手紙ではありません。ただ、本気で請求していることを形にして相手に届け、その事実を5年間残せる道具です。1,070円から使えて、準備は半日で終わります。催促のメールに返事が来なくなった時点で、この道具があることを思い出せるかどうかで、その後の展開はずいぶん変わります。
よくある質問
Q. 内容証明郵便はどこの郵便局でも出せますか?
出せません。差し出せるのは集配郵便局と、支社が指定した郵便局に限られます。一部の取扱局では特定の曜日だけの取扱いになっているため、持ち込む前に電話で確認しておくと往復の無駄が防げます。インターネットから出すe内容証明なら郵便局の窓口を使わずに24時間受け付けているので、日中に動けない人はこちらが選択肢になります。
Q. 内容証明の料金はいくらですか?
窓口で謄本1枚を定形郵便物で出す場合、内容証明の加算料金480円、郵便料金110円、一般書留480円で合計1,070円です。謄本が2枚目以降は290円ずつ加算されます。e内容証明は1枚で謄本を通常送付にした場合が1,295円です。配達証明を差し出しの際に付けると350円、速達は300円が別途かかります。
Q. 謄本の字数と行数の決まりはどうなっていますか?
縦書きは1行20字以内かつ1枚26行以内です。横書きは1行20字で26行、1行13字で40行、1行26字で20行の3通りから選べます。どれでも1枚520字が上限です。記号は1個1字、括弧は上下を合わせて1字として数えます。この制限は謄本だけのもので、相手に届く内容文書そのものには字数の制限はありません。
Q. 相手が内容証明を受け取らなかったらどうなりますか?
一般書留なので、不在なら不在通知が入り、保管期間を過ぎれば差出人に返ってきます。受取拒絶をされることもあります。返送された封筒は封を開けずに保管してください。郵便局のスタンプと日付が、その住所に届けようとした記録になります。連絡も途絶えている相手なら、内容証明を重ねるより支払督促などの手続きに進むほうが早いことが多いです。
この記事について
編集部
監修:@SOHO編集部
2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを20年運営。編集部が事実確認のうえ公開しています。

この記事を書いた人
前田 壮一@SOHO編集部
元メーカー管理職・43歳でフリーランス転身
大手電機メーカーで品質管理を20年間担当した後、42歳でフリーランスに転身。中高年のキャリアチェンジや副業の始め方を、自身の経験をもとに発信しています。
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