ケーススタディとは|事例から学ぶ進め方と書き方


この記事のポイント
- ✓実際の事例をもとに問題の原因や解決の道筋を考え
- ✓学びや判断に生かす方法です
- ✓研究・研修・営業での使い分け
研修の案内に「ケーススタディ形式」と書かれていた、授業でケーススタディのレポートを出すことになった、あるいは営業の資料に「導入事例のケーススタディ」を載せたいと言われた。そんな場面で、ケーススタディという言葉の意味と、実際にどう進めればよいのかを調べている人は多いはずです。ケーススタディとは、実際に起きた事例を1つ取り上げ、何が起きたのか、なぜそうなったのか、自分ならどうするかを順に考えることで、知識を実際の判断に結びつける方法のことです。結論から言うと、ケーススタディは「事例を選ぶ」「事実を整理する」「問題と原因を見つける」「解決の案を考えて比べる」「学びを次に生かす」の5つの手順で進めれば、研究でも研修でも営業の資料でも形になります。この記事では、ケーススタディの意味と分野ごとの使われ方、メリットと注意点、研修での進め方、事例の選び方と作り方、レポートや導入事例の書き方までを順に説明します。研修の準備や事例集づくりの作業を、担当と期限を付けてチームで分担して進める道具として、プロジェクト管理ツールのPinatecaにも後半で触れます。
ケーススタディとは何か
ケーススタディ(case study)は、日本語では「事例研究」と訳されます。1つの事例、つまり実際に起きた出来事や、ある会社、ある人の取り組みを深く調べ、そこから学びを引き出す方法です。
研修の分野では、次のように説明されています。
ケーススタディとは、現実の事例を用いて問題解決のプロセスを模擬体験する手法です。 出典: service.alue.co.jp
研究の分野では、少し違う角度から説明されます。
ケーススタディとは、ある事例を使って理論(仮説)を実証、修正・構築をするための研究の1つです。現代では、主に医療分野やビジネス分野などをはじめ、教育分野でも広く用いられています。 出典: reitaku-u.ac.jp
2つの説明を比べると、ケーススタディには大きく2つの使い方があることが分かります。1つは、研修や授業で、実際の事例を題材にして「自分ならどうするか」を考え、判断の力を鍛える使い方です。もう1つは、研究で、事例を詳しく調べることで、ある考え方や仮説が正しいかを確かめたり、新しい考え方を生み出したりする使い方です。
どちらにも共通しているのは、教科書の一般論ではなく、具体的な1つの事例から出発するという点です。一般論は、多くの場面に当てはまる分、自分の目の前の問題にどう使えばよいかが分かりにくいものです。具体的な事例を深く考えることで、一般論を実際の判断に結びつける力がつきます。
ケーススタディと似た言葉に、ケースメソッドがあります。ケースメソッドは、主に経営大学院などで使われる授業の方法で、受講者が事前に事例を読み込み、授業では講師の問いかけをもとに受講者どうしで議論することを重んじます。ケーススタディが「事例を研究すること」全般を指すのに対し、ケースメソッドは「事例をもとに議論して学ぶ授業の形」を指す、と分けて考えると分かりやすいでしょう。
分野ごとのケーススタディの使われ方
ケーススタディは、分野によって目的や進め方が少しずつ違います。代表的な分野での使われ方を紹介します。
| 分野 | 主な目的 | 事例の例 |
|---|---|---|
| ビジネスの研修 | 判断の力、問題を解決する力を鍛える | 売上が落ちた店の立て直し、部下とのもめごとへの対応 |
| 経営の研究 | 経営の考え方を確かめる、新しく作る | ある会社が新しい市場に進出して成功した理由 |
| 医療・看護 | 患者への対応や看護の方法を振り返る | ある患者の看護の経過と、そこから得た学び |
| 教育 | 授業や生徒への接し方を振り返る | 不登校の生徒への支援の経過 |
| 営業・マーケティング | 自社の商品の効果を伝える | 商品を導入した会社の、導入前の課題と導入後の変化 |
| IT・システム | 障害や事故の原因を振り返る | システムが止まった出来事の経過と、再発を防ぐ対策 |
ビジネスの研修では、架空の会社や登場人物を使った事例を用いることもよくあります。実在の会社の事例だと、受講者が結果を知っていて考える前に答えが分かってしまう、社外に出せない情報が含まれる、といった問題があるからです。架空の事例でも、現実に起こりうる状況を細かく書いてあれば、十分に学びの題材になります。
医療や看護の分野では、ケーススタディは、実際に担当した患者の看護の経過を振り返り、学会や院内の発表で共有する形でよく行われます。この場合は、患者の名前や個人を特定できる情報を伏せることが欠かせません。
営業やマーケティングの分野でいう「ケーススタディ」は、導入事例とほぼ同じ意味で使われます。商品やサービスを使った会社の話を、導入前の課題、選んだ理由、導入後の変化の順にまとめ、これから導入を検討する会社の判断の材料にしてもらうものです。
ケーススタディのメリット
ケーススタディを研修や学びに取り入れると、次のようなメリットがあります。
1つ目は、知識を実際の判断に結びつけられることです。教科書や講義で学んだ考え方も、実際の場面でどう使えばよいかが分からなければ役に立ちません。具体的な事例を使って考えることで、「この場面では、あの考え方がこう使える」という結びつきが生まれます。
2つ目は、失敗しても困らない場で経験を積めることです。実際の仕事では、判断を誤れば、お客様や会社に損害が出ます。ケーススタディなら、事例の中で判断を誤っても、誰も困りません。むしろ、間違えた理由を考えることが、大きな学びになります。
3つ目は、さまざまな見方に触れられることです。グループでケーススタディを行うと、同じ事例を読んでも、人によって注目する点や考える解決の案が違うことに気づきます。自分にはなかった見方に触れることで、考えの幅が広がります。
4つ目は、記憶に残りやすいことです。一般論の説明は忘れやすいものですが、具体的な事例と一緒に覚えた考え方は、似た場面に出会ったときに思い出しやすくなります。「あの事例と同じだ」と気づけるだけで、判断の速さと確かさが変わります。
5つ目は、組織の経験を共有できることです。社内で実際に起きた事例をケーススタディにすれば、その経験をした人だけでなく、ほかの社員も学べます。ベテランの社員の判断のこつを、若手の社員に伝える方法としても役立ちます。
ケーススタディの注意点とデメリット
一方で、ケーススタディには次のような注意点もあります。
1つ目は、1つの事例から一般論を急がないことです。ある会社で成功したやり方が、ほかの会社でも成功するとは限りません。事例の会社の規模、業種、時期、取り巻く状況が違えば、同じやり方でも結果は変わります。事例から学ぶときは、「どんな条件のもとでうまくいったのか」まで考えることが大切です。
2つ目は、結果を知っていると判断が甘くなることです。成功した事例を読むと、成功した判断が当たり前に見えてしまいます。しかし、当時の担当者は、結果が分からない中で判断していたはずです。事例を考えるときは、結果を知らなかったとしたら、自分は同じ判断ができたかを問い直してみましょう。
3つ目は、準備に手間がかかることです。研修でケーススタディを使うには、事例の文章を作り、問いを用意し、議論の進め方を考える必要があります。社内の事例を使う場合は、関係者に話を聞き、外に出せない情報を伏せる作業も必要です。
4つ目は、進め方によっては議論が深まらないことです。グループの中で声の大きい人の意見に流されたり、正解を探すことに終始したりすると、ケーススタディの効果は薄れます。講師や進行役が、問いかけの工夫で議論を深める役割を担う必要があります。
5つ目は、個人情報や秘密の扱いです。実在の人や会社の事例を使う場合は、本人の同意を得る、名前や特定につながる情報を伏せる、社外秘の数字を使わないといった配慮が欠かせません。
ケーススタディの基本の5つの手順
研修でも、授業のレポートでも、ケーススタディは次の5つの手順で進めるのが基本です。
- 事例を読み、事実を整理する:誰が、いつ、どこで、何をして、どうなったのかを書き出す。自分の意見はまだ入れない
- 問題を見つける:事例の中で、何がうまくいっていないのか、何が課題なのかを見つける
- 原因を考える:その問題が起きた理由を、事例の中の事実をもとに考える。原因は1つとは限らない
- 解決の案を考えて比べる:問題を解決する案を複数考え、それぞれの良い点と悪い点を比べて、どの案を選ぶかを決める
- 学びを整理する:この事例から何を学んだか、自分の仕事にどう生かせるかを言葉にする
1の「事実を整理する」と、2以降の「考える」を分けることが、一番大事なこつです。事例を読みながら、すぐに「この担当者はだめだ」「こうすればよかった」と意見を持ってしまうと、事実を見落としたり、思い込みで原因を決めつけたりしがちです。まずは事実だけを時間の順に並べ、そのうえで問題と原因を考えます。
3の「原因を考える」では、表面の原因だけで止まらないようにします。たとえば「担当者が締切を守らなかった」という事実があったとき、それは原因ではなく、問題の表れかもしれません。なぜ締切を守れなかったのか、仕事の量が多すぎたのか、締切がはっきり伝わっていなかったのか、と問いを重ねると、仕組みの問題が見えてくることがあります。
4の「解決の案を比べる」では、案を1つに決めつけず、少なくとも2つか3つを考えます。案ごとに、費用、かかる時間、効果、実行のしやすさ、関係する人への影響を比べると、選んだ理由を説明できるようになります。
例題:問い合わせへの返信が遅れている事務所の事例
手順を具体的に確かめるために、短い架空の事例で考えてみます。
社員8人の設計事務所では、ホームページの問い合わせフォームから届く相談に、手の空いた社員が返信している。ここ3か月、問い合わせの件数は前の年の同じ時期の1.5倍に増えた。一方で、「返事が来ない」という苦情が月に数件届くようになった。所長は「みんな忙しいのは分かるが、返信はすぐにするように」と朝礼で伝えたが、状況は変わっていない。
手順1の事実の整理では、次のように書き出せます。社員は8人。問い合わせはフォームから届く。返信は手の空いた人がしている。件数は1.5倍に増えた。苦情が月に数件ある。所長は朝礼で注意したが、変化はない。
手順2の問題は、「問い合わせへの返信の漏れや遅れが起きている」ことです。
手順3の原因では、「社員の意識が低い」で止まらずに、仕組みに目を向けます。返信を「手の空いた人」がしているということは、誰の担当でもないということです。誰かが返信しただろうと全員が思えば、誰も返信しない問い合わせが出ます。件数が増えたことで、この仕組みの弱さが表に出たと考えられます。朝礼での注意で変わらなかったのは、意識ではなく仕組みの問題だったからかもしれません。
手順4の解決の案は、たとえば次の3つが考えられます。案1は、曜日ごとに返信の当番を決める。案2は、問い合わせの一覧を作り、届いたら担当者の名前と状況を書く決まりにする。案3は、返信の担当を1人に決め、その人の他の仕事を減らす。費用はどれも小さいものの、案3は担当者が休んだときに止まる弱さがあり、案1と案2を組み合わせる方が続けやすい、といった比べ方ができます。
手順5の学びは、「担当が決まっていない仕事は、件数が増えると漏れる」「注意で変わらないときは、仕組みを疑う」といった形で言葉にします。このように、短い事例でも手順に沿って考えると、自分の職場にも当てはまる学びが引き出せます。
1人でケーススタディを練習する方法
ケーススタディの力は、研修の場でなくても、1人で鍛えることができます。手軽にできる練習の方法を3つ紹介します。
1つ目は、ニュースを事例として読むことです。会社の新しい取り組みや、商品の不具合による回収といったニュースを1つ選び、手順1から5に沿って考えてみます。特に、「自分がその会社の担当者だったら、当時どう判断したか」を考えると、結果を知っているからこその甘さに気づけます。
2つ目は、自分の仕事を事例にすることです。最近の仕事で、うまくいったことと、うまくいかなかったことを1つずつ選び、事実、問題、原因、別の案、学びの順に、ノートに書き出してみます。1つの振り返りに15分ほどかければ十分です。続けていくと、自分の判断のくせが見えてきます。
3つ目は、公的な事例集を読むことです。中小企業白書のような事例集には、課題と取り組みと結果が整理された事例が多く載っています。1つの事例を読んだら、結果の部分を読む前に、自分ならどうするかを考えてから読み進めると、練習になります。
研修で使う問いの立て方
ケーススタディの議論が深まるかどうかは、事例に添える問いで大きく変わります。問いを立てるときは、次の3つの種類を組み合わせると、議論の流れが作りやすくなります。
- 事実を確かめる問い:「この事例で、売上が落ち始めたのはいつからですか」「担当者が使える予算はいくらでしたか」
- 原因を考える問い:「なぜ、新しい施策は効果が出なかったのでしょうか」「問題の根本にあるものは何ですか」
- 判断を迫る問い:「あなたが店長なら、来月から何を変えますか」「AとBのどちらの案を選び、その理由は何ですか」
最初に事実を確かめる問いを出すと、受講者全員が事例の中身を同じように理解したうえで議論に入れます。判断を迫る問いは、答えが1つに決まらないものにすると、グループの中で意見が分かれ、議論が深まります。
研修でケーススタディを進める方法
社内の研修でケーススタディを行う場合の、進め方の例を紹介します。受講者が10人から30人程度、時間が2時間から3時間の研修を想定しています。
- 事前の準備(受講者):研修の数日前に事例を配り、読んできてもらう。問いを2つか3つ添えておく
- 説明(10分程度):講師が研修の目的と、事例のあらましを説明する
- 個人で考える(15分程度):受講者が1人で、問いへの答えをメモにまとめる
- グループで話し合う(40分から60分程度):4人から6人のグループに分かれ、それぞれの考えを出し合い、グループとしての答えをまとめる
- 発表と全体での議論(30分から40分程度):グループごとに発表し、講師の問いかけで全体の議論を深める
- 振り返り(15分程度):講師が議論を整理し、受講者が学んだことと、仕事に生かしたいことを書く
3の「個人で考える」時間を飛ばさないことが大切です。いきなりグループで話し合うと、考えのまとまっている人や声の大きい人の意見に流されやすくなります。先に1人で考える時間があれば、全員が自分の意見を持って話し合いに臨めます。
講師や進行役は、正解を教える役ではなく、問いかけで議論を深める役です。「なぜそう考えたのですか」「ほかの案と比べて、何が良いですか」「その案を実行したら、誰が困りますか」と問いかけることで、受講者の考えが一段深まります。ケーススタディには、多くの場合、ただ1つの正解はありません。答えより、そこに至る考え方の筋道を大切にしましょう。
6の振り返りでは、「事例から学んだこと」と「自分の仕事で明日から変えること」を、それぞれ1つか2つ書いてもらいます。研修で考えたことを、実際の仕事の行動に結びつけるための大事な時間です。
研修に使う事例の選び方と作り方
ケーススタディの効果は、使う事例の質で大きく変わります。事例を選ぶ、あるいは作るときのこつを挙げます。
1つ目は、受講者の仕事に近い事例を選ぶことです。製造業の現場の社員に、金融の会社の事例を使っても、自分ごととして考えにくくなります。受講者の業種、職種、立場に近い事例ほど、学びを仕事に結びつけやすくなります。
2つ目は、判断に迷う場面を含めることです。正解がすぐに分かる事例では、議論が深まりません。「AとBのどちらを選ぶべきか、どちらにも理由がある」という場面を含む事例が、良い題材になります。
3つ目は、判断に必要な事実を書いておくことです。登場人物の立場、使える予算や時間、関係する人の意見、過去の経緯など、判断の材料になる事実を、事例の文章の中に盛り込みます。材料が足りないと、受講者は想像で補うしかなく、議論が空回りします。
4つ目は、結果を書かずに終えることです。研修で使う事例は、担当者が判断を迫られている場面で文章を終えます。結果が書いてあると、受講者は結果に合わせて考えてしまうからです。実際の結果は、議論が終わった後に講師が紹介します。
社内で実際に起きた出来事をもとに事例を作る場合は、関係者に話を聞き、時間の順に出来事を書き出し、名前や部署、数字などの特定につながる情報を変えて仕上げます。事例の長さは、事前に読む前提なら数ページ、研修の場で読むなら1ページから2ページが目安です。
実在の会社の取り組みを学びたい場合は、国や公的な機関がまとめた事例集を使う方法もあります。たとえば、中小企業庁が毎年まとめている中小企業白書には、中小企業の経営の課題と、さまざまな会社の取り組みの事例が多く載っています。公的な事例集は、出典がはっきりしていて、研修の題材としても使いやすい資料です。
ケーススタディのレポートの書き方
授業や研修の課題で、ケーススタディのレポートを書く場合の構成の例を紹介します。
- はじめに:取り上げた事例と、この事例を選んだ理由、レポートの目的を書く
- 事例の概要:事例の事実を、時間の順に整理して書く。自分の意見はまだ入れない
- 問題の分析:事例の中で何が問題だったのか、その原因は何かを、事実をもとに書く
- 解決の案の検討:考えられる解決の案を複数挙げ、それぞれの良い点と悪い点を比べる
- 考察:選んだ案とその理由、事例から得られた学びを書く。学んだ考え方や理論と結びつける
- おわりに:レポート全体を振り返り、残った課題や、今後考えたいことを書く
- 参考にした資料:使った資料や文献を書く
レポートで気をつけたいのは、事実と意見をはっきり分けることです。「売上が前の年より2割減った」は事実で、「担当者の判断が遅かった」は意見です。事実を書く部分では、出典や根拠を示し、意見を書く部分では、どの事実をもとにそう考えたのかを書きます。
医療や看護、教育の分野で、自分が担当した患者や生徒の事例をレポートにする場合は、名前や年齢、住所など、個人を特定できる情報を伏せます。所属する施設や学校に、事例の扱いの決まりがあれば、それに従いましょう。
営業の導入事例をケーススタディとして書く方法
営業やマーケティングの分野で、自社の商品やサービスの導入事例をケーススタディとしてまとめる場合は、次の構成がよく使われます。
- 導入した会社の紹介:業種、規模、事業の内容
- 導入前の課題:どんなことに困っていたのか。できるだけ具体的に
- 選んだ理由:ほかの方法と比べて、なぜこの商品やサービスを選んだのか
- 導入の進め方:どのように導入し、どんな工夫をしたのか
- 導入後の変化:課題がどう変わったか。数字で示せるものは数字で
- これからの展望:今後どのように使っていきたいか
聞き取りのときは、導入を決めた担当者だけでなく、実際に毎日使っている現場の人にも話を聞くと、導入後の変化を具体的な場面で書けるようになります。「以前は毎週金曜日に2時間かけていた集計が、30分で終わるようになった」のような、現場の言葉で語られた変化は、読者にとって何よりの判断の材料になります。聞き取りの前には、聞きたいことを10問ほどの一覧にして相手に送っておくと、相手も準備ができ、限られた時間で必要な話を聞き出せます。
導入事例を読む人が一番知りたいのは、「自分の会社と同じような課題が、本当に解決したのか」です。導入前の課題を具体的に書くほど、同じ悩みを持つ読者が、自分ごととして読んでくれます。
導入後の変化を数字で示すときは、何と比べた数字なのか、どの期間の数字なのかをはっきり書きます。また、導入した会社の担当者に、記事の内容と数字を必ず確かめてもらい、公開の許可を得てから載せましょう。効果を大げさに書くと、読者の信頼を失うだけでなく、広告の決まりに触れるおそれもあります。
研修の準備や事例集づくりをチームで進める方法
研修でケーススタディを使う準備や、営業の導入事例を集めて事例集を作る作業は、関わる人が多くなりがちです。事例のもとになる話を関係者から聞く、文章を書く、名前や数字を伏せる、内容を関係者に確かめてもらう、研修の日程を調整する、と作業が続きます。
作業の数が少ないうちは、表計算ソフトのシートに「作業」「担当」「期限」「状況」の列を作って管理すれば十分に回ります。事例の本文は文書作成ソフトで作り、作業の進み具合だけをシートで確かめる、という分担です。
関わる人が増え、複数の事例を同時に進めるようになると、誰がどの事例のどの作業を受け持ち、どこで止まっているのかが分かりにくくなります。担当と期限と進み具合を複数人で共有したい場面では、プロジェクト管理ツールを使う方法があります。その選択肢の1つが、国産のプロジェクト管理ツールのPinateca(ピナテカ)です。公式サイトによると、カンバン、ガントチャート、カレンダー、リストなど8種類のボードとチャットが無料プランから使えます。事例ごとにカードを作り、カードの中のチェックリストに「関係者への聞き取り」「原稿の作成」「名前と数字を伏せる」「関係者の確認」と並べれば、どの事例がどこまで進んだかが一覧で見えます。ディスカッションのボードでは、確認事項をスレッドで進められ、決まったことが記録として残ると案内されているので、事例の問いの案を研修の担当者どうしで出し合う使い方もできます。カードにはファイルを添付できるので、事例の原稿のPDFを一緒に保存しておくこともできます。
公式の料金ページでは、5人までのチームなら期限なしで無料、ボードは10個まで、クレジットカードの登録は不要とされています。6人目、または11個目のボードからはスタンダードプランになり、料金は1人あたり月額500円(税抜、年払いなら1人あたり月額400円)です。Pinatecaは、@SOHOを運営する株式会社ライフスケープが開発・提供しています。
なお、Pinatecaは事例の文章を作ったり、研修の資料を作ったりする道具ではありません。事例の本文はこの記事で説明した手順で作り、作成と確認の作業を追いかける部分に使う、という分担で考えると無理がありません。
事例から考える力が生きる仕事
ケーススタディで身につく「事実を整理し、問題と原因を見つけ、解決の案を比べる」力は、多くの仕事で求められます。
会社の課題を聞き取り、ほかの会社の事例を参考にしながら改善の案を提案する仕事は、ケーススタディの考え方そのものです。最近は、業務にAIの道具を取り入れた他社の事例を知りたい、自社でも同じようにできるかを考えてほしい、という相談も増えています。こうした支援の仕事の中身はAIコンサル・業務活用支援のお仕事で紹介しています。導入事例の記事を書く、事例をもとにした広告の文章を考えるといった仕事は、AI・マーケティング・セキュリティのお仕事にまとめています。
事例を集めて分析し、そこから新しい知見を引き出すのは、研究の仕事の中心でもあります。調査や分析を専門にする仕事の収入の相場は、研究者の年収・単価相場で調べられます。企業の経営の事例を分析して助言する力を体系的に身につけたい人には、国家資格の中小企業診断士があり、2次試験では事例をもとに経営の課題を分析して答える問題が出されます。
運営者として見てきた「事例から学ぶ人」
在宅ワークとフリーランスの仲介を20年あまり続けてきた運営者として見てきた限りでは、長く仕事が続く人は、自分の仕事をケーススタディのように振り返る習慣を持っています。
続く人は、1つの仕事が終わるたびに、「何がうまくいったか」「どこで手間取ったか」「次に同じような依頼が来たらどうするか」を短く書き残しています。うまくいかなかった仕事も、誰かのせいにせず、事実を並べて原因を考えます。この振り返りを重ねることで、似た依頼が来たときに、前回の経験を生かした提案ができるようになり、依頼する側からの信頼が厚くなっていきます。
もう1つ見えてくるのは、間に入る手数料が小さい直接の取引ほど、こうした振り返りの積み重ねが報われやすいという点です。手数料が小さければ、同じ予算でも依頼する側はより多くの仕事を頼め、受ける側の手取りは厚くなります。手数料0%で直接取引している相手どうしは、前の仕事の振り返りを率直に共有でき、次の仕事の進め方をよりよい形に変えていけます。
ケーススタディは、研修や授業のための特別な方法ではありません。目の前の1つの出来事を、事実、問題、原因、解決の案、学びの順に考えてみる。その習慣が、どんな仕事にも通じる判断の力を育てていきます。事例の分析や資料づくりを形にする仕事に関心がある人は、デザイナーの年収・単価相場のような相場の情報も参考に、自分の得意分野でどう関われるかを考えてみてください。
よくある質問
Q. ケーススタディとは簡単に言うと何ですか?
実際に起きた事例を1つ取り上げ、何が起きたのか、なぜそうなったのか、自分ならどうするかを順に考えることで、知識を実際の判断に結びつける方法です。日本語では事例研究と訳され、ビジネスの研修、経営や医療の研究、教育、営業の導入事例など、さまざまな分野で使われています。
Q. ケーススタディとケースメソッドの違いは何ですか?
ケーススタディは、事例を研究すること全般を指す広い言葉です。ケースメソッドは、主に経営大学院などで使われる授業の形で、受講者が事前に事例を読み込み、授業では講師の問いかけをもとに受講者どうしで議論することを重んじます。議論を通じて学ぶ形かどうかで分けると分かりやすくなります。
Q. ケーススタディはどんな手順で進めればよいですか?
事例を読んで事実を整理する、問題を見つける、原因を考える、解決の案を複数考えて比べる、学びを整理する、の5つの手順が基本です。最初に事実だけを時間の順に並べ、自分の意見と分けておくと、思い込みで原因を決めつけることを防げます。
Q. ケーススタディのレポートはどう書けばよいですか?
はじめに、事例の概要、問題の分析、解決の案の検討、考察、おわりに、参考にした資料の順に書くのが一般的です。事実を書く部分と意見を書く部分をはっきり分け、意見にはどの事実をもとにそう考えたのかを添えます。個人が特定できる情報は伏せて書きましょう。
この記事について
編集部
監修:@SOHO編集部
2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを運営。生成AIで作成した下書きを、一次情報と照らし合わせて確認したうえで公開しています。

この記事を書いた人
@SOHO編集部
フリーランス・在宅ワークの専門メディア
@SOHOは2004年から続く、日本のフリーランス・在宅ワーク向け案件サイトです。記事は生成AIで下書きを作り、数値・固有名・出典を一次情報と照らし合わせる確認の手順を経て公開しています。
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