医療系のコールセンターで任される仕事|ここでしか経験できないことは何か

長谷川 奈津
長谷川 奈津
医療系のコールセンターで任される仕事|ここでしか経験できないことは何か

この記事のポイント

  • 医療系のコールセンターの仕事内容は
  • 医薬品や医療機器の問い合わせ
  • 在宅医療のオンコール代行など窓口ごとに大きく違います

医療系のコールセンターの仕事内容を調べると、「電話で健康相談に答える仕事」「看護師の資格が活かせる事務職」といった説明がよく出てきます。 間違いではありません。 ただ、それだけでは、実際に席に座ったときに何を任されるのかは見えてこないと思います。

医療系のコールセンターの仕事は、窓口によってまったく中身が違います。 同じ看護師の資格を持っていても、健康相談の窓口では「今すぐ受診すべきか」を一緒に考える役割を担い、医療機器メーカーの窓口では「その機器の使い方と、不具合かどうか」を切り分ける役割を担います。 そして、どの窓口にも、法律やルールで決まっている線引きがあります。

これ、知らない人が本当に多いんです。 電話の仕事だから気軽、というイメージのまま入ると、判断の重さと記録の厳しさに驚くことになります。

この記事では、医療系のコールセンターで任される仕事を窓口ごとに分けて見たうえで、病院とは何が違うのか、ここでしか経験できないことは何かを整理します。

仕事内容は「誰から、何の電話を受けるか」で決まる

医療系のコールセンターの仕事内容を理解するには、まず窓口ごとに「電話の相手」と「相談の中身」を分けて見るのが近道です。 主な窓口を整理すると、次のようになります。

窓口の種類 主な電話の相手 主な相談の中身 求められやすい資格
健康相談(保険・会員サービス) 加入者や会員、その家族 体調の相談、受診先や受診の目安 看護師・保健師
自治体の救急・子どもの相談 住民 救急車を呼ぶべきか、すぐ受診すべきか 看護師(医師と連携)
医薬品の情報提供 医師・薬剤師などの医療者 用法・用量、副作用、添付文書の内容 薬剤師
医療機器のサポート 医療者、在宅で機器を使う患者 使い方、エラーや不具合の相談 看護師、臨床工学技士など
在宅医療のオンコール代行 訪問看護の利用者やその家族 夜間の体調変化、急変の連絡 看護師

表を見ると分かるとおり、相手が医療者なのか一般の人なのかで、仕事の性質が大きく変わります。 つまり、医療者が相手なら「専門的な情報を正確に伝える仕事」、一般の人が相手なら「不安の中から状況を聞き取る仕事」になるということです。

電話の方向も大切です。 多くの窓口は電話を受ける仕事が中心ですが、感染症の自宅療養者の健康観察や、治療を続けている患者さんへの定期的な確認のように、こちらから電話をかける仕事もあります。 受ける仕事は相手のペースで始まり、かける仕事は自分の側から相手の生活に入っていく仕事です。 同じ電話でも、気の遣い方が違います。

さらに、窓口によって、1件の電話にかけられる時間が違います。 医薬品の情報提供のように、調べて正確に答えることが優先される窓口では、いったん電話を切って調べてからかけ直すこともあります。 一方、救急の相談では、限られた時間の中で緊急度を見立てることが求められます。

もう1つ見落とされやすいのが、依頼元との関係です。 医療系のコールセンターは、製薬会社や保険会社、自治体から委託を受けて運営されていることが多く、答え方や記録の形式は依頼元との取り決めで決まっています。 つまり、電話を受ける人は、自分の勤める会社だけでなく、依頼元の名前を背負って話しているということです。 「〇〇保険の健康相談窓口です」と名乗って電話に出る以上、その会社の窓口としての言葉づかいが求められます。

求人票の「医療系コールセンター」という言葉だけでは、このどれに当たるのかが分かりません。 応募する前に、自分が受ける電話の相手と中身を必ず確かめてください。

健康相談の窓口で任されるのは、聞き取りと緊急度の見立て

看護師がコールセンターで働くと聞いて、多くの人が思い浮かべるのが健康相談の窓口です。 ここで任される仕事の中心は、電話の相手から症状や状況を聞き取り、緊急度を見立て、次にとるべき行動を一緒に考えることです。

時間帯によって、相談の中身が変わるのもこの窓口の特徴です。

看護師が働くコールセンターには日勤のほかに、24時間体制の職場もあります。24時間体制の場合、「日勤と夜勤の両方」または「夜勤のみ」の働き方も選択可能。日勤は、健康・介護・医療機器に関する相談が多いのが特徴です。 夜勤は、「発熱などの赤ちゃんの体調不良」「高齢者の転倒や急変」「医療機器の故障や使用トラブルへの相談」など緊急性の高い対応が多いのが特徴。迅速な判断をするために、夜勤勤務にはある程度の経験やスキルが求められます。 出典: kango-oshigoto.jp

電話では、相手の顔色も呼吸の様子も見えません。 だからこそ、「いつから」「どのくらい続いているか」「熱は何度か」「水分はとれているか」「意識ははっきりしているか」といった質問を、決まった順番で丁寧に重ねていきます。 多くの窓口では、症状ごとに聞き取る項目や判断の目安をまとめた手順が用意されていて、それに沿って進めます。

ここで大切な線引きがあります。 健康相談の窓口で看護師が行うのは、あくまで相談への助言であって、診断ではありません。

医師法第17条には、次のように定められています。 「医師でなければ、医業をなしてはならない。」 つまり、病名を告げたり、治療の方針を決めたりすることは、医師にしかできないということです。 電話の窓口で「それは〇〇という病気です」「この薬を飲めば大丈夫です」と言い切ることは、この線を越えてしまうおそれがあります。

そのため、健康相談の窓口の言葉づかいは、とても慎重です。 「その症状があるなら、今夜のうちに受診したほうがよいと思います」「救急車を呼んでください」「明日の朝、かかりつけの医療機関に相談してください」のように、行動の目安を伝える形をとります。 判断に迷うときは、窓口と連携している医師に相談できる体制をとっているところが多いです。

※個別のケースで、どこまでの助言が許されるのかは、窓口ごとに決められた手順と、連携する医師の判断に従ってください。 自分の経験だけで判断を広げないことが、相談者を守り、自分自身を守ることにもつながります。

医薬品・医療機器メーカーの窓口で任されるのは、正確な情報と安全情報の受け止め

製薬会社や医療機器メーカーの問い合わせ窓口で任される仕事は、健康相談とはかなり性質が違います。 中心になるのは、製品について正確な情報を伝えることと、電話の中に含まれる安全に関わる情報を見逃さないことです。

医薬品の窓口では、医師や薬剤師から、用法・用量、飲み合わせ、副作用、保管の方法などについて質問が寄せられます。 答えるときの土台になるのは、承認された内容や添付文書、会社として用意している資料です。 つまり、個人の経験や意見ではなく、会社として責任を持てる情報を、根拠を示しながら伝える仕事だということです。

医療機器の窓口では、病院の医療者だけでなく、自宅で機器を使っている患者さんや家族から電話が入ることもあります。 血糖を測る機器、自己注射に使う器具、在宅で使う呼吸を助ける機器などは、患者さん自身が日常の中で使うものです。 「エラーが出て動かない」「使い方がこれで合っているか分からない」といった相談に、画面の表示や操作の手順を一緒に確かめながら答えていきます。

そして、この窓口で最も大切なのが、副作用や不具合の情報の扱いです。 これ、知らない人が本当に多いんです。

医薬品医療機器等法(薬機法)第68条の10第1項では、医薬品や医療機器の製造販売業者が、その製品の副作用などによると疑われる病気や障害の発生などを知ったときは、厚生労働大臣に報告しなければならないと定めています。 つまり、会社の窓口で受けた電話の中に「この薬を飲んでから発疹が出た」「機器を使っていたらけがをした」という話が含まれていれば、それは会社としての報告につながる情報になるということです。

そのため、医薬品や医療機器の窓口では、電話の中から安全に関わる情報を拾い上げ、決められた形式で記録し、社内の安全管理を担当する部門へ速やかに回す手順が決められています。 相談者が「ついでに」話したひと言が、実は大事な情報だった、ということも珍しくありません。 たとえば、機器の使い方を聞く電話の最後に「そういえば、この前使ったときに少し皮膚が赤くなって」と付け加えられることがあります。 使い方の相談として電話を終えてしまえば、その情報は会社に届きません。 だからこそ、相談の本題が終わったあとにも、体調の変化や気になったことがなかったかを確かめる習慣が大切になります。 電話を受ける人は、製品の窓口であると同時に、安全情報の入口でもあるわけです。

※報告が必要な情報かどうかの判断や、報告の期限は、会社の手順書に従ってください。 自分だけで「これは関係ない」と判断して記録から外すことは避けましょう。

在宅医療を支える窓口で任されるのは、夜間の一次対応とつなぎ

医療系のコールセンターの中には、訪問看護ステーションや在宅医療を行う医療機関の代わりに、夜間や休日の電話を受ける窓口があります。 いわゆるオンコール代行と呼ばれる仕事で、在宅で療養する人が増える中で、存在感が大きくなっている働き方です。

訪問看護ステーションは、利用者やその家族からの連絡に24時間応じる体制をとっているところが多く、夜間は職員が交代で携帯電話を持って待機しています。 その負担を減らすために、夜間の最初の電話をコールセンターが受け、状況を聞き取ったうえで、必要な場合だけ担当の看護師に連絡する、という仕組みが使われています。

ここで任される仕事は、次のような流れになります。

・利用者や家族からの電話を受け、名前と状況を確認する ・事前に共有されている利用者の情報(病気、使っている医療機器、主治医の指示など)を画面で確かめる ・体調の変化や困りごとを聞き取り、緊急度を見立てる ・訪問が必要か、朝まで待ってよいか、救急車を呼ぶべきかを、決められた手順に沿って判断する ・必要に応じて担当の看護師へ連絡し、聞き取った内容を簡潔に伝える

健康相談の窓口と違うのは、電話の相手が「すでに医療や看護を受けている人」であることです。 つまり、相手の病気や、事業所としての対応方針が、ある程度前もって分かっている状態で電話を受けるということです。 その分、事前に共有された情報を正しく読み取り、主治医や事業所の方針に沿って動くことが求められます。

夜間の電話は、高齢の利用者の転倒、発熱、痛みの増強、医療機器のアラームなど、家族が慌てている場面が多くなります。 落ち着いた声で状況を一つずつ確かめ、担当の看護師にバトンを渡すまでが、この窓口の役割です。 自分が直接駆けつけるわけではありませんが、在宅医療を続けていくうえで欠かせない支えになっている仕事です。

この窓口ならではの難しさは、担当の看護師に連絡するかどうかの線引きにあります。 連絡しすぎれば、夜間の待機の負担を減らすという代行の目的が果たせません。 連絡しなさすぎれば、訪問が必要な場面を見逃すおそれがあります。 そのため、多くの事業所では「このような状態なら必ず連絡する」という基準を利用者ごとに決め、コールセンターと共有しています。 つまり、代行の窓口で求められるのは、自分の判断で動くことより、事業所が決めた基準を正確に当てはめることなのです。

※基準に当てはまらない、判断に迷う状況に出会ったときは、ためらわずに担当の看護師へ連絡するのが原則です。 迷ったまま朝を待つことが、一番避けたい対応です。

どの窓口でも重いのが、記録と個人情報の扱い

医療系のコールセンターの仕事を始めると、多くの人が最初に驚くのが、記録の量と細かさです。 電話で話した内容は、ほぼすべてが記録として残ります。

記録が重視される理由は3つあります。

1つ目は、次に同じ人から電話が来たときに、別の担当者が引き継げるようにするためです。 コールセンターでは、同じ相談者の電話を毎回同じ人が受けるとは限りません。 前回どんな相談があり、どう答えたのかが記録に残っていなければ、相談者は同じ説明を何度も繰り返すことになります。

2つ目は、判断の根拠を残すためです。 「受診を勧めた」「様子を見てよいと伝えた」という助言の結果、相談者の容体が変わることもあります。 そのとき、何を聞き取り、どの手順に沿って判断したのかが記録に残っていれば、窓口としての対応を説明できます。 つまり、記録は相談者を守るだけでなく、電話を受けた人自身を守るものでもあるということです。

3つ目は、先に触れた安全情報の報告のためです。 医薬品や医療機器の窓口では、記録がそのまま社内の報告の元になります。

そして、記録と切り離せないのが個人情報の扱いです。 医療の相談では、病気や服薬の状況、家族の事情など、とても踏み込んだ情報を扱います。

保健師助産師看護師法第42条の2には、次のように定められています。 「保健師、看護師又は准看護師は、正当な理由がなく、その業務上知り得た人の秘密を漏らしてはならない。保健師、看護師又は准看護師でなくなつた後においても、同様とする。」 つまり、病院を離れてコールセンターで働いていても、看護師としての守秘義務は続き、仕事を辞めた後もなくならないということです。

在宅勤務のコールセンターでは、この点がさらに厳しくなります。 家族のいる部屋で電話をしない、画面をのぞかれない場所で作業する、メモを残さない、といったルールが細かく決められています。 ※在宅勤務のルールは会社ごとに違うので、入社時に渡される規程を必ず確認してください。

記録を書くときに気をつけたいのは、事実と自分の見立てを分けて書くことです。 「相談者は『昨日の夜から38度の熱がある』と話した」は事実です。 「脱水の可能性があると考え、受診を勧めた」は見立てと助言です。 この2つが混ざった記録は、あとから読んだ人が判断の流れを追えなくなります。 病院で看護記録を書いていた人には、なじみのある書き方だと思います。 コールセンターでは、この書き分けを、電話をしながら短い時間で行うことが求められます。

病院と比べて、任される範囲はどう変わるか

病院からコールセンターに移ると、任される範囲は「減る部分」と「増える部分」の両方があります。 ここを先に理解しておくと、移ったあとの戸惑いが小さくなります。

減る部分は、はっきりしています。 採血や点滴、処置、身体のケアといった、手を使う看護の仕事はなくなります。 患者さんの回復を目の前で見届けることも、ほとんどありません。 電話を切ったあと、相談者がどうなったのかは分からないままのことが多いです。

また、先に触れたとおり、窓口ごとに答えてよい範囲が決まっています。 病院では医師の指示のもとで患者さんに具体的な説明をしていた人も、コールセンターでは「そこから先は主治医に相談してください」と伝える場面が増えます。 この線引きにもどかしさを感じる人は少なくありません。

一方で、増える部分もあります。

1つ目は、1日に接する相談の数と幅です。 病棟では担当する患者さんの数に限りがありますが、コールセンターでは、1日のうちに年齢も症状も生活の事情も異なる多くの人と話します。 子どもの発熱の次に高齢者の転倒、その次に服薬の相談、ということもあります。

2つ目は、言葉だけで伝える責任です。 病院では、実際にやって見せたり、紙に書いて渡したりできました。 電話では、言葉の選び方1つで相手の受け取り方が変わります。 専門用語を使わずに、でも正確さを損なわずに伝える工夫が、毎日求められます。

3つ目は、組織の中での役割です。 コールセンターでは、経験を積むと、新人の教育、対応の品質の確認、手順書の見直し、依頼元の企業や自治体との調整などを任されるようになります。 現場で電話を受ける人から、窓口全体を運営する側へと、任される範囲が広がっていくのもこの職場の特徴です。

もう1つ、病院と大きく違うのが、チームの形です。 病棟では、同じ時間帯に働く看護師が同じ患者さんを一緒に見ています。 コールセンターでは、隣の席の人とは別々の電話を受けていて、1本の電話の中では基本的に1人で対応します。 その分、困ったときにスーパーバイザーへ合図を送る方法や、電話を保留にして相談する手順が決められています。 1人で抱え込まないための仕組みを、自分から使えるかどうかが、この職場で長く働けるかの分かれ目になります。

ここでしか経験できないこと

では、医療系のコールセンターでしか経験できないことは何でしょうか。 病院やクリニックでは積みにくい経験を、4つにまとめます。

1つ目は、見えない相手の状況を、言葉だけで組み立てる経験です。 表情も顔色も分からない中で、質問を重ねて状況を絞り込み、緊急度を見立てる。 これは、対面の看護ではなかなか鍛えられない力です。 一度身につくと、対面の場面でも、限られた時間で要点をつかむ力として活きてきます。

2つ目は、医療と生活のすき間を見る経験です。 病院の中では、患者さんは「治療を受ける人」として見えます。 電話の向こうの相談者は、仕事や子育てや介護の最中にいる「生活する人」です。 「病院に行くべきと分かっていても、子どもを置いて行けない」「夜間に行ける病院がどこか分からない」といった、医療に届くまでの壁を、ここでは毎日のように耳にします。

3つ目は、製品の安全情報がどう集まり、どう流れていくのかを内側から見る経験です。 医薬品や医療機器の窓口では、1本の電話が社内の安全管理の仕組みにつながっていく様子を見ることができます。 製薬会社や医療機器メーカーで、別の職種に進みたい人にとっては、仕組みを知る入口になります。

4つ目は、同じ悩みがどれほど多くの人に共通しているかを知る経験です。 同じような相談が季節ごとに増えたり、同じ説明で安心する人が大勢いたりすることに気づくと、1人の相談の後ろにいる多くの人の姿が見えてきます。 その気づきは、相談の手順を見直したり、分かりやすい案内を作ったりする仕事にもつながります。

たとえば、ある健康相談の窓口で、「子どもが熱を出したが、夜間に開いている病院が分からない」という電話が毎晩のように続いているとします。 電話を受けている人たちがその傾向を記録から拾い上げ、地域の夜間診療の探し方を短くまとめた案内を用意すれば、同じ説明にかかる時間が減り、その分ほかの相談に丁寧に向き合えるようになります。 1本1本の電話を受けるだけでなく、電話の集まりから仕組みを良くしていく。 こうした経験は、病棟ではなかなか得られません。

私が以前、医療系のコールセンターで働く人から話を聞いたとき、「病院にいたころは、目の前の患者さんのことしか見えていなかった。電話を受けるようになって、病院に来られない人がこんなにいると知った」という言葉が心に残りました。 見える景色が変わる。 それが、この職場でしか得られない一番の経験なのかもしれません。

新人のうちに任されることと、経験を積んでから任されること

医療系のコールセンターでは、入社してすぐに難しい相談を1人で受けることはほとんどありません。 任される仕事は、段階を踏んで広がっていきます。

最初の数週間から数か月は、研修の期間です。 医療分野に特化したコンタクトセンターの中には、入社後1〜2か月ほどをかけて、電話応対の基礎、製品や相談の中身に関する専門の研修、ロールプレイングを段階的に行っているところがあります。 ロールプレイングでは、先輩が相談者の役になり、決められた手順に沿って聞き取りや案内ができるかを繰り返し練習します。

研修が終わると、先輩の電話を横で聞いたり、自分が受けた電話を先輩に聞いてもらったりしながら、少しずつ実際の電話を担当します。 この時期に任されるのは、比較的よくある相談や、手順がはっきりしている問い合わせが中心です。 判断が難しい相談は、先輩やスーパーバイザーに引き継ぐ形になります。

独り立ちしたあとも、対応の品質を確かめる仕組みは続きます。 多くのコールセンターでは通話が録音されていて、スーパーバイザーがいくつかの電話を聞き、聞き取りの抜けや言葉づかいについて助言します。 病院では、自分の説明を誰かに聞き返してもらう機会はあまりありません。 最初は緊張しますが、自分の話し方のくせに気づける貴重な機会でもあります。

経験を積むと、難しい相談や、長時間にわたる電話、強い不満を持った相談者への対応を任されるようになります。 さらに進むと、新人の教育、手順書の見直し、依頼元への報告のとりまとめなど、窓口全体を支える仕事が加わります。 医薬品や医療機器の窓口では、寄せられた問い合わせの傾向をまとめて、依頼元の会社に伝える役割を担うこともあります。 新人のうちに気をつけたいのは、分からないことを分からないまま答えないことです。 電話の相手を待たせるのが申し訳なくて、あいまいなまま答えてしまう。 新人がつまずきやすいのは、たいていこの場面です。 「確認して、折り返しお電話します」と伝えることは、窓口として正しい対応です。 つまり、その場で答え切ることより、正しい情報を確実に届けることのほうが大切だということです。

電話を受ける1人から、窓口の運営を担う1人へ。 この広がり方も、医療系のコールセンターならではの経験です。

在宅ワーク市場を長く見てきた立場から、この経験の活かし方を考える

在宅ワークや業務委託の市場を長く運営してきた立場から見ると、医療系のコールセンターで身につく力は、職場を離れたあとも使い道が広い力です。 電話だけで状況をつかみ、専門的なことを専門用語を使わずに伝え、決められた形式で正確に記録する。 この3つは、医療分野のさまざまな仕事で求められています。

運営者として見てきた限りでは、長く続く人ほど、単発の作業ではなく「この人に任せると安心」という関係づくりに時間を使っています。 医療分野の知識を持ち、一般の人に分かりやすく説明できる人は、健康に関する記事の確認や、患者さん向けの説明資料の作成などを、業務委託で頼まれることもあります。 こうした仕事を直接の取引で受けると、仲介の手数料が乗らない分、依頼する側は同じ予算でより多くを頼め、受ける側の手取りは厚くなります。 手数料0%の直接取引は、双方にとって無理のない形で仕事を続けるための仕組みです。

※業務委託で医療に関わる仕事を受ける場合も、先に触れた守秘義務はなくなりません。 契約の内容と、扱う情報の範囲を、受ける前に必ず確認してください。

医療の資格を持つ人が、自分の経験の市場での評価を知っておくと、コールセンターと他の働き方を比べやすくなります。 看護師の年収・単価相場では、働く場所や雇用形態ごとの水準がまとめられているので、病院勤務とコールセンター勤務を比べる材料になります。 コールセンター以外の在宅でできる仕事も含めて考えたい方は、看護師におすすめの在宅ワーク5選|臨床経験を活かす副業【2026年版】で、臨床経験を活かせる仕事の種類と始め方を確認できます。

電話で人の話を聞き、次の行動を一緒に考える力は、働く人の相談を受ける仕事にも通じています。 職場・転職・キャリア相談のお仕事では、そうした相談の仕事にどんな形があるかが紹介されています。

医療系のコールセンターで任される仕事は、手を使う看護から離れる代わりに、言葉と記録で人を支える仕事です。 その線引きとルールを知ったうえで選べば、ここでしか見えない景色がきっと見えてきます。 法律やルールは、相談者だけでなく、電話を受けるあなた自身の味方でもあります。

よくある質問

Q. 医療系のコールセンターでは、看護師はどんな仕事を任されますか?

窓口によって違います。健康相談や自治体の相談窓口では、症状を聞き取って緊急度を見立て、受診や救急車の要否を助言します。医療機器メーカーの窓口では使い方や不具合の相談に答え、在宅医療のオンコール代行では夜間の一次対応をして担当の看護師につなぎます。応募前に、電話の相手と相談の中身を確かめましょう。

Q. 電話の健康相談で、看護師が病名を伝えてもよいですか?

医師法第17条で、医業は医師でなければ行えないと定められているため、病名を告げたり治療方針を決めたりすることはできません。健康相談の窓口では「今夜のうちに受診したほうがよい」「救急車を呼んでください」など、行動の目安を伝える形をとります。判断に迷う場合は、窓口の手順と連携する医師の判断に従ってください。

Q. 医薬品や医療機器の窓口で、副作用や不具合の話を聞いたらどうしますか?

薬機法第68条の10では、製造販売業者が副作用などによると疑われる病気や障害の発生を知ったときに、厚生労働大臣へ報告することを定めています。窓口で受けた情報はその起点になり得るため、会社の手順書に沿って記録し、安全管理を担当する部門へ速やかに回します。自分だけで関係ないと判断しないことが大切です。

Q. 医療系のコールセンターで働くと、病院に戻るときに不利になりますか?

採血や処置などの手技から離れるため、病院によってはブランクと受け取られることがあります。一方で、電話だけで状況をつかむ力や、専門的な内容を分かりやすく伝える力は、外来や在宅看護、患者指導などで活きる経験です。戻る可能性がある人は、どの経験をどう伝えるかを意識して働くとよいでしょう。

この記事について

@SOHO
編集部

監修:@SOHO編集部

2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを20年運営。編集部が事実確認のうえ公開しています。

公開:2026年8月14日最終更新:2026年9月16日
長谷川 奈津

この記事を書いた人

長谷川 奈津@SOHO編集部

行政書士・元企業法務

企業法務で数多くのフリーランス契約を扱った経験を活かし、フリーランス向けの法律・契約・権利に関する記事を執筆。「法律はあなたの味方です」がモットー。

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