病院の薬剤部の夜勤という時間|人員体制と、体を慣らしていく順番


この記事のポイント
- ✓病院の薬剤部の夜勤について
- ✓夜勤・当直・オンコールという3つの体制の違い
- ✓夜に何人で何を回しているか
「来月から夜勤に入ることになったんですが、1人で大丈夫なのか不安で眠れません」。
病院で働く薬剤師の方から、こういうご相談をいただくことがあります。日中はたくさんの先輩がいる薬剤部も、夜になると人がぐっと減ります。その変化を想像するだけで、胸がざわざわするのは自然なことです。
大丈夫ですよ。病院の薬剤部の夜勤は、どの病院でも手探りで回しているわけではありません。夜の体制には決まった形があり、夜に起きることもある程度は予測できます。そして、体を慣らしていく順番もあります。
この記事では、病院の薬剤部の夜がどう動いているのかを、人員体制と時間の流れから説明します。そのうえで、夜勤に入る前にしておきたい準備と、体を少しずつ夜に慣らしていく方法を、順番にお話しします。
病院の薬剤部の夜は、3つの体制に分かれる
まず知っておいてほしいのは、「病院の薬剤部の夜勤」と言っても、病院によって中身がかなり違うということです。夜の体制は、大きく3つに分かれます。
| 体制 | 働き方 | 翌日の扱いの例 |
|---|---|---|
| 夜勤(交代制) | 夕方から翌朝まで、夜専門の勤務として働く | 明けはそのまま帰宅し、翌日は休みになることが多い |
| 当直 | 日勤を終えた後、院内に泊まって呼ばれたときに対応する | 翌日も通常勤務、または午前で帰れるなど病院による |
| オンコール | 自宅で待機し、呼び出しがあれば病院へ向かう | 呼び出しの有無で変わる |
夜勤の交代制は、救急患者を多く受け入れる大きな病院で多く見られます。夜の間も処方や注射の依頼が途切れないため、仮眠を前提にせず、夜の勤務として時間を区切っています。
当直は、中規模の病院でよく見られる形です。本来の当直は、夜間に通常の業務がほとんど発生しないことを前提にした勤務です。労働基準監督署から宿日直の許可を受けている場合、呼ばれたときだけ対応し、それ以外は休息できる時間として扱われます。ただ、実際には救急の件数が多く、夜通し呼ばれる病院もあります。
オンコールは、薬剤師の人数が少ない病院や、夜間の救急が少ない病院で使われます。自宅にいられる分、体は休まりそうに思えますが、「いつ電話が鳴るか分からない」という緊張が続くのがつらいところです。遠出ができない、お酒が飲めないといった生活の制約もあります。
夜の体制と一緒に確かめておきたいのが、土日祝日の日中の体制です。休日の薬剤部も、平日より少ない人数で回しています。平日なら数十人で分担している調剤と注射を、休日は数人、小さな病院では1人で担当することもあります。休日の日勤は、夜ほど体のリズムには響きませんが、1人で判断する時間が長いという点では夜勤とよく似ています。「夜勤はないけれど、休日は1人勤務がある」という病院も多いので、求人票の「休日当番」や「日直」の記載も見落とさないようにしてください。休日の日勤を担当した分は、平日に代わりの休みを取るのが一般的です。平日に休めるので、役所や銀行の用事を済ませやすいという声もあります。
どの体制でも、心の負担として共通しているのは、夜は基本的に1人か、ごく少人数で判断するということです。
これから夜勤に入る方も、転職先を探している方も、最初に「その病院はどの体制なのか」を確かめてください。同じ「夜勤あり」という言葉でも、中身が違えば、体と心にかかる負担の種類もまったく変わります。
夜は何人で、何を回しているのか
では、夜の薬剤部には何人くらいの薬剤師がいるのでしょうか。大きな病院の例として、ある市民病院の薬剤部は、体制を次のように紹介しています。
休日および夜間も薬剤師1名以上を配置し日勤・夜勤業務を行っており、入院患者さんの調剤、注射剤の供給、救急外来患者の調剤・処方薬の交付を365日24時間体制で行っています。 出典: yokohama-shiminhosp.jp
この病院は常勤の薬剤師が数十人いる規模ですが、それでも夜間は「1名以上」です。日中に数十人で分担していた仕事を、夜は1人から2人で引き受けることになります。
夜に薬剤部が担う主な仕事は、次のようなものです。
・夜間や休日に救急外来を受診した患者の薬の調剤と、薬の受け渡し ・入院患者に夜間に出た臨時の内服薬の調剤 ・病棟から依頼される臨時の注射薬の払い出し ・医療用麻薬の払い出しと、使用後の管理 ・医師や看護師からの薬に関する問い合わせへの回答 ・翌朝に使う注射薬の準備や、機械の点検
日中に行っている抗がん剤の調製や、病棟での服薬説明は、夜には原則として行いません。夜の仕事は「今すぐ必要な薬を、安全に届ける」ことに絞られていると考えると、少し気持ちが楽になるかもしれません。
一方で、救急の件数は病院によって大きく違います。救命救急センターを持つ病院では、夜も途切れずに患者が運ばれてきます。二次救急を輪番で担当している病院では、当番の日だけ忙しくなります。救急の受け入れがほとんどない療養型の病院では、夜間の依頼はごくわずかです。
夜の忙しさを知りたいときは、「夜間の救急外来の受診は1日平均何人くらいですか」「当直中に呼ばれるのは1晩で何回くらいですか」と聞いてみてください。この数字が、夜の実態をいちばん正直に表します。
夕方から朝までの、時間の流れ
夜勤の不安の多くは、「何が起きるか分からない」ことから来ています。そこで、中規模の急性期病院を例に、夜の時間の流れを追ってみます。病院によって時刻は違いますが、大まかな形は似ています。
夕方5時ごろは、日勤から夜勤への申し送りの時間です。その日に入院した患者の中で注意が必要な薬、まだ届いていない薬、医師から確認待ちになっている処方などを引き継ぎます。ここで引き継ぎのメモをきちんと受け取っておくと、夜の判断がずっと楽になります。
夜の7時から10時ごろは、比較的依頼が多い時間帯です。日中に受診した患者の追加の処方、夕方に入院した患者の臨時の注射、救急外来の処方が重なります。最初の山場と考えておくとよいでしょう。
夜中の0時を過ぎると、依頼の数は落ち着くことが多いです。ただ、救急外来からの呼び出しや、病棟での急変に伴う注射の依頼は、時間を選ばずに来ます。この時間帯に、麻薬の払い出しや、看護師からの「この点滴、同じルートで入れて大丈夫ですか」という問い合わせに1人で対応することになります。
明け方の4時から6時ごろは、体がいちばんつらい時間帯です。そのうえ、朝の定時の注射薬の最終確認や、翌日の準備が入る病院もあります。眠気で集中力が落ちる時間に確認作業が重なるので、ここは意識してダブルチェックの手順を守るようにします。
朝8時半ごろ、日勤の薬剤師に申し送りをして、夜勤は終わります。夜の間に出た処方、判断に迷って保留にしたこと、医師に確認した内容を、漏れなく伝えます。
| 時間帯 | 主な仕事 | 気をつけたいこと |
|---|---|---|
| 17時ごろ | 日勤からの申し送り | 確認待ちの処方を必ずメモに残す |
| 19時から22時 | 追加処方、臨時注射、救急外来 | 最初の山場。焦って確認を省かない |
| 0時から4時 | 呼び出し対応、麻薬、問い合わせ | 1人で判断する場面が多い |
| 4時から6時 | 翌朝の準備、確認作業 | 眠気が強い。ダブルチェックを守る |
| 8時半ごろ | 日勤への申し送り | 保留にしたことを漏れなく伝える |
夜に1人で判断する場面と、日中との違い
日中の病院の薬剤部では、薬剤師が病棟に上がり、患者のそばで薬の説明や副作用の確認をしています。ある病院の薬剤部は、日中の病棟の仕事を次のように説明しています。
各病棟の担当薬剤師が入院患者さんのベッドサイドに伺い、過去に経験した副作用やアレルギーなどを確認します。お薬の薬効や副作用の説明を行うとともに、治療に使用されているお薬の効果や副作用を確認し、医師・看護師などほかの医療スタッフと常に連携を取りながら安全で適正な医療が提供できるよう努めています。 出典: kani.jcho.go.jp
日中は、このように担当の病棟薬剤師が患者の情報を持っていて、医師や看護師とすぐに相談できます。夜はこの前提が変わります。担当の病棟薬剤師はいませんし、医師も当直の医師が限られた人数で院内を回っています。
夜に1人で判断することが多いのは、次のような場面です。
1つ目は、処方に疑問があるときです。投与量が多すぎないか、以前に副作用が出た薬ではないかを確認し、必要があれば当直の医師に連絡します。夜の医師は忙しく、担当外の患者を診ていることも多いので、要点を短く伝える力が求められます。
2つ目は、看護師からの問い合わせです。薬を粉砕してよいか、点滴を混ぜてよいか、飲み忘れた薬をどうするか。その場で答えが必要で、調べる時間も限られます。
3つ目は、救急外来の薬の受け渡しです。夜間に受診した患者に、その場で薬を渡し、飲み方を説明します。痛みや不安を抱えた患者やご家族に、落ち着いて説明することも大事な仕事です。
こういう相談がよくあります。「分からないことがあっても、夜に先輩へ電話するのは迷惑だと思ってしまう」。お気持ちはとてもよく分かります。でも、多くの病院では、夜に迷ったときの連絡先として、上席の薬剤師や薬剤部長の連絡網を用意しています。迷ったまま進めるより、確認するほうが患者にとっても自分にとっても安全です。遠慮しないでくださいね。
夜の負担を軽くしている、病院側の仕組み
夜の薬剤部が少人数で回っているのは、1人の頑張りだけで支えているからではありません。多くの病院では、夜の負担を減らすための仕組みを、日中のうちに整えています。どんな仕組みがあるかを知っておくと、応募先を選ぶときにも、今の職場の改善を考えるときにも役立ちます。
1つ目は、機械の力です。注射薬を患者ごとに自動で取りそろえる払出装置や、錠剤を自動で分包する機械、バーコードで薬を照合するシステムを導入している病院では、夜の取りそろえの作業がかなり軽くなります。人の目で確認するのは最後の鑑査に絞られるので、眠気が強い時間帯でも間違いを防ぎやすくなります。24時間動く払出装置を置いて、臨時の注射も機械で払い出している病院もあります。
2つ目は、病棟の配置薬です。救急でよく使う薬や、夜に急に必要になる薬を、あらかじめ病棟や救急外来に一定数置いておく方法です。すべてを薬剤部から払い出す必要がなくなるので、夜の呼び出しが減ります。ただし、配置薬を増やしすぎると管理が行き届かなくなるため、どの薬を置くかは薬剤部が慎重に決め、日中に使用期限や数を点検しています。
3つ目は、日中の準備です。翌朝に使う注射薬を、日勤の時間内にできるだけ準備しておく。入院予定の患者の持参薬を、夕方までに確認しておく。こうした段取りが整っている病院ほど、夜に持ち越される仕事が少なくなります。
4つ目は、夜間用の手順書と連絡網です。夜に起きやすい出来事ごとに、誰に連絡し、何を確認するのかが決まっていると、1人でも迷わずに動けます。夜勤のたびに困った事例を書き留め、日中の会議で手順書に反映している病院もあります。
| 仕組み | 夜の負担にどう効くか |
|---|---|
| 注射薬の自動払出装置 | 取りそろえの手作業が減り、確認に集中できる |
| 病棟・救急外来の配置薬 | 急ぎの呼び出しが減る |
| 日中の準備の段取り | 夜に持ち越す仕事が減る |
| 夜間用の手順書と連絡網 | 1人で判断するときの迷いが減る |
見学のときは、「夜に1人で困らないように、どんな工夫をしていますか」と聞いてみてください。この質問にすらすら答えられる薬剤部は、夜勤をする人のことをきちんと考えている職場です。
夜勤に入り始める前に、準備しておくこと
夜勤は、入職してすぐに始まるものではありません。多くの病院では、日勤の調剤と注射の払い出しを1人で回せるようになってから、半年から1年前後で夜勤や当直に入り始めます。
その前に、先輩と一緒に夜の勤務を経験する期間を設けている病院が多くあります。この期間に、夜の時間の流れ、よく来る問い合わせ、連絡網の使い方を実際に体験しておきます。まだこの期間がない病院で夜勤を始めることになったら、上司に「最初の数回は、誰かと一緒に入らせてもらえませんか」と相談してみてください。無理なお願いではありません。
準備として役立つのは、次のようなものです。
・夜間によく問い合わせがある薬の一覧(粉砕できない薬、配合変化の起きやすい点滴など) ・救急外来でよく出る薬と、その説明の要点 ・医療用麻薬の払い出しと記録の手順 ・当直の医師と、上席の薬剤師への連絡方法 ・機械が止まったときの対応手順
これらを、自分用の小さなノートやメモにまとめておくと、夜の心強い味方になります。院内のマニュアルがあっても、夜の忙しい時間に分厚い資料をめくるのは大変です。自分の言葉で書いた短いメモのほうが、焦っているときには役に立ちます。
もう1つ、気持ちの準備として大切なのは、「完璧にこなさなくていい」と自分に許すことです。最初の夜勤で、すべての問い合わせにすぐ答えられる人はいません。分からないことは確認する、保留にしたことは朝に申し送る。それができれば、最初の夜勤は十分に合格です。
体を夜に慣らしていく順番
夜勤でいちばん悩む方が多いのは、体のリズムです。人の体は、朝に明るい光を浴びて目覚め、夜に暗くなると眠くなるようにできています。その流れに逆らって夜に働くので、疲れやすいのは当然のことなんです。あなたの体力が足りないわけではありません。
体を慣らしていくときは、いきなり全部を変えようとせず、次の順番で整えていくのがおすすめです。
最初は、夜勤の前の過ごし方です。夜勤が夕方から始まる場合、昼過ぎに1時間から2時間ほど横になっておくと、明け方の眠気がかなり違います。眠れなくても、目を閉じて体を休めるだけで意味があります。
次は、夜勤明けの帰り道と睡眠です。朝の強い光を浴びると、体が「朝だ」と判断して目が覚めてしまいます。帰り道はサングラスをかける、帰宅したら遮光カーテンで部屋を暗くするなど、光を避ける工夫をしてみてください。明けの睡眠は長くとりすぎず、昼過ぎには起きて、夜にもう一度眠るほうが、翌日以降のリズムが戻りやすいと言われています。
3つ目は、食事です。夜中に重い食事をとると、胃がもたれて眠気が強くなります。夜勤中は消化のよいものを少しずつとり、明け方に甘いものを一気にとるのは控えめにしましょう。
4つ目は、カフェインのとり方です。コーヒーやお茶は夜勤の前半には助けになりますが、明け方以降にとると、帰宅後に眠れなくなります。とるなら夜中の早い時間までにしておくと、明けの睡眠を守れます。
最後は、夜勤の間隔です。当直や夜勤が短い間隔で続くと、体のリズムは戻りきらないまま次の夜を迎えます。シフトを希望できる職場なら、夜勤を連続させず、間に休みを挟めるように相談してみてください。
慣れるまでの目安は、人によって違いますが、数か月かかるのが普通です。3回目、5回目と回数を重ねるうちに、自分に合う過ごし方が見えてきます。焦らなくて大丈夫ですよ。
夜勤手当と当直手当、給与への影響
夜の勤務は、体への負担が大きい分、手当がつきます。ただ、その仕組みは体制によって違います。
夜勤として働く場合、労働基準法により、夜10時から朝5時までの勤務には25%以上の深夜割増賃金が支払われます。これに加えて、病院独自の夜勤手当がつくことが一般的です。
当直の場合は、1回ごとの当直手当として支払われることが多く、金額は病院によって幅があります。1回あたり数千円から1万円台の範囲で設定されていることが多い印象です。宿日直の許可を受けた当直では、呼ばれて実際に働いた時間は、別に時間外労働として扱われます。
オンコールでは、待機そのものに手当を出す病院と、呼び出されて出勤したときだけ手当を出す病院があります。
注意したいのは、年収の見え方です。病院の求人で示される「年収例」は、月に何回かの当直や夜勤を前提にしていることがあります。体調や家庭の事情で夜勤を減らしたとき、年収がどのくらい下がるのかは、あらかじめ計算しておくと安心です。
薬剤師全体の年収が年代や地域でどう分布しているかは、薬剤師の年収・単価相場で統計をもとにまとめています。夜勤の手当を含めた提示額が相場のどのあたりにあるのかを確かめるときの目安にしてください。
「手当があるから頑張れる」という方もいれば、「手当より夜はしっかり眠りたい」という方もいます。どちらが正しいということはありません。ご自身の体と生活にとって、どちらが続けやすいかで考えてみてください。
子育てや介護と、夜勤をどう両立するか
夜勤のご相談で、体のリズムと同じくらい多いのが、家庭との両立についてです。「子どもが小さいので、夜に家を空けるのが心配です」「親の介護が始まって、当直を続けられるか分かりません」。そういう声を、本当によく聞きます。
まず知っておいてほしいのは、法律で守られている部分があるということです。育児・介護休業法では、小学校に入る前の子どもを育てている人や、家族を介護している人が請求した場合、事業主は原則として深夜(夜10時から朝5時まで)の勤務をさせてはならないとされています。一定の条件がありますが、夜勤の免除を申し出ることは、決してわがままではありません。
実際の職場では、次のような形で両立を支えている病院があります。
・子どもが小さいうちは夜勤や当直を免除し、休日の日勤で協力してもらう ・当直の回数を減らし、その分を他の薬剤師と調整する ・オンコールの当番を、家族の協力が得られる日にまとめて担当する ・短時間勤務と夜勤の免除を組み合わせる
一方で、薬剤師の人数が少ない病院では、1人が夜勤から外れると、残りの人の回数が増えます。そのため、制度として免除が認められていても、周りに気を遣って言い出しにくい雰囲気が生まれることもあります。
大切なのは、家庭の事情が変わりそうだと分かった時点で、早めに上司に相談することです。急に「来月から夜勤ができません」と伝えるより、半年前から相談しておくほうが、職場も人員の調整がしやすくなり、あなた自身も気持ちよく働き続けられます。
転職を考えている方は、面接で「育児や介護で夜勤を免除されている方は、今何人いますか」と聞いてみてください。実際に免除を受けながら働いている人がいる病院は、制度が使える状態で運用されていると読めます。
家庭の事情で夜勤から外れる期間は、キャリアの遠回りではありません。日中の業務で専門性を深めたり、担当病棟の経験を積んだりする時間に使うこともできます。子どもが大きくなったり、介護が落ち着いたりしたら、また夜勤に戻る人もたくさんいます。
夜勤がつらくなったときに、切り分けておくこと
夜勤を続けていると、どこかで「もう限界かもしれない」と感じる時期が来ることがあります。そんなとき、すぐに「辞めるしかない」と決めてしまう前に、何がつらいのかを少し分けて考えてみてください。
1つ目は、体のリズムがつらいのか、という点です。眠れない、食欲がない、休みの日も疲れが抜けないといった状態が続くなら、夜勤の回数や間隔を見直す必要があります。上司に相談して回数を減らせる職場もありますし、体調の不調が長く続くときは、産業医や医療機関に相談することも考えてください。
2つ目は、夜の業務量がつらいのか、という点です。夜に1人で回しきれない量の依頼が来ているなら、それは個人の力の問題ではなく、体制の問題です。夜の人数を増やす、日中にできる準備を夕方までに済ませるなど、組織として改善できることがあります。
3つ目は、1人で判断する重さがつらいのか、という点です。これは経験を重ねると少しずつ軽くなることが多い負担です。連絡網をきちんと使えているか、夜に困った事例を日中に振り返る場があるかを見直すと、ずいぶん楽になることがあります。
それでもつらいときは、夜の負担が小さい職場に移るという選択肢もあります。当直やオンコールのない療養型の病院、夜勤専任の薬剤師がいる大きな病院、夜勤のない薬局や企業など、同じ資格で選べる職場はたくさんあります。病院間の転職の進め方は、病院薬剤師の転職ガイド|年収アップとスキルアップを両立させる方法【2026年版】で整理しています。
夜勤がつらいと感じることは、弱さではありません。あなたの体と心が、ちゃんと自分を守ろうとしているサインです。
求人票と見学で、夜の実態を読む
これから病院の薬剤部に応募する方のために、夜の実態を確かめるポイントをまとめておきます。
| 確認する項目 | どこで確かめるか | 読み取れること |
|---|---|---|
| 夜間の体制(夜勤・当直・オンコール) | 求人票、面接 | 夜の負担の種類 |
| 月あたりの回数 | 求人票、面接 | 生活リズムへの影響 |
| 夜間の薬剤師の人数 | ホームページ、見学 | 1人で判断する時間の長さ |
| 救急の受け入れ状況 | 病院のホームページ | 夜の忙しさの目安 |
| 明けの扱い | 面接 | 体を休める時間があるか |
| 夜勤に入り始める時期と同伴期間 | 面接、見学 | 未経験者への配慮 |
| 手当の内訳 | 求人票、面接 | 夜勤を減らしたときの年収 |
病院のホームページでは、救命救急センターの有無や、二次救急の輪番に参加しているかどうかが分かります。夜の忙しさを想像する手がかりになります。
見学では、夜勤を経験している薬剤師に「最初の夜勤のとき、どうでしたか」と聞いてみるのもおすすめです。実際の声を聞くと、求人票の数字だけでは分からない、夜の空気が伝わってきます。
転職サイトや紹介会社を使う場合は、担当者に夜の体制と明けの扱いを確認してもらうのも1つの方法です。担当者によって病院の内部事情への詳しさはかなり違うので、サービスの比べ方は薬剤師転職エージェントの裏事情|担当者ガチャ回避術と初面談の模範回答&厳選5社を参考にしてみてください。
運営者として見てきた、夜の働き方と長く続く人
フリーランスや在宅ワークの市場を20年運営してきた立場から見ても、時間帯が不規則な働き方を長く続けている人には、共通していることがあります。それは、1人で抱え込まず、困ったときに頼れる人を先に決めていることです。
病院の薬剤部の夜勤も同じです。夜に迷ったとき誰に連絡するか、つらくなったとき誰に話すかを、日中のうちに決めておく。それだけで、夜の孤独はずいぶん小さくなります。長く続く人ほど、単発の作業をこなすことより、「この人に任せると安心」と思ってもらえる関係づくりに時間を使っています。
また、夜勤を離れた後の働き方として、在宅での仕事を選ぶ薬剤師も増えています。医薬品情報の執筆や、オンラインでの相談など、自分の生活リズムに合わせて働ける仕事です。そうした仕事では、中間の手数料が差し引かれない直接のやり取りのほうが、依頼する側は同じ予算で多く頼め、受ける側の手取りも厚くなります。夜勤のない働き方の具体的な中身は、在宅薬剤師への転職ガイド|仕事内容・年収・求められるスキルの実態【2026年版】にまとめています。
病院の薬剤部の夜は、決して手探りの時間ではありません。体制を知り、時間の流れを知り、体を少しずつ慣らしていけば、夜勤はきちんと続けられる仕事です。あなたは一人じゃありませんよ。
よくある質問
Q. 病院の薬剤部の夜勤は、何人くらいで担当しますか?
病院の規模によって違いますが、数十人の薬剤師がいる大きな病院でも、夜間は1人から2人で担当することが多いです。中規模の病院では当直として1人、小規模な病院ではオンコールで自宅待機という形もあります。夜に担当する仕事は救急外来の調剤、臨時の注射薬、麻薬の払い出し、問い合わせ対応などに絞られます。
Q. 夜勤や当直には、入職してどのくらいで入りますか?
日勤の調剤と注射の払い出しを1人で回せるようになってから、半年から1年前後で入り始める病院が多いです。多くの病院では、先輩と一緒に夜の勤務を経験する期間を設けてから1人で担当します。同伴の期間がない場合は、最初の数回だけでも誰かと一緒に入れないか上司に相談してみてください。
Q. 夜勤明けにうまく眠れないときは、どうすればよいですか?
帰り道にサングラスをかける、遮光カーテンで部屋を暗くするなど、朝の光を避ける工夫が役立ちます。明けの睡眠は長くとりすぎず、昼過ぎに起きて夜にもう一度眠るとリズムが戻りやすいと言われています。カフェインは夜中の早い時間までにし、不調が長く続くときは産業医や医療機関に相談してください。
Q. 夜勤のない病院の薬剤部はありますか?
あります。救急の受け入れが少ない療養型の病院や、夜間はオンコールだけで対応している病院では、夜勤や当直がない、または非常に少ない場合があります。大きな病院でも、夜勤専任の薬剤師がいれば日勤だけで働ける場合があります。求人票の勤務形態と、面接での確認で見分けることができます。
この記事について
編集部
監修:@SOHO編集部
2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを20年運営。編集部が事実確認のうえ公開しています。

この記事を書いた人
中西 直美@SOHO編集部
産業カウンセラー・キャリアコンサルタント
大手人材会社でキャリアカウンセラーとして15年間従事した後、フリーランスの産業カウンセラーとして独立。在宅ワーカーのメンタルヘルスケアを専門に活動しています。
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