簿記3級の勉強の進め方

前田 壮一
前田 壮一
簿記3級の勉強の進め方

この記事のポイント

  • 簿記3級の勉強を始める方へ
  • 試験時間60分・合格基準70%という公式ルール
  • 統一試験とネット試験の合格率の差

まず、安心してください。簿記3級は、正しい順番で進めれば独学で合格できる試験です。年齢も、文系か理系かも、数学が得意かどうかも、ほとんど関係ありません。必要なのは計算力ではなく、決まったルールを覚えて手を動かす習慣のほうです。

ただし、正直に書いておきます。最初の2週間がいちばん苦しい試験でもあります。借方と貸方という耳慣れない言葉が出てきて、なぜそちらに書くのかが腑に落ちないまま先へ進むことになるからです。ここを乗り越えられるかどうかで結果が決まります。この記事では、その乗り越え方まで含めて、勉強の順番を具体的に示します。

試験のルールを公式の資料で確認する

最初に、試験そのものの決まりを押さえます。日本商工会議所が公表している3級の試験科目は次のとおりです。

試験科目 商業簿記 3題以内 試験時間 60分 合格基準 70%以上 出典: kentei.ne.jp

押さえるべき点が3つあります。ひとつ、出題は商業簿記のみです。2級で加わる工業簿記は範囲に入りません。ふたつ、大問は3題以内です。細切れの小問が大量に出る形式ではありません。みっつ、試験時間は60分です。2021年度からこの構成になりました。

合格基準の70%は、相対評価ではなく絶対評価です。つまり、周りの出来に関係なく、自分が70点を超えれば合格します。受験者が少ない回でも多い回でも、基準は変わりません。

出題の前提にも決まりがあります。毎年度4月1日現在で施行されている法令等に準拠して出題される、と公式に明記されています。制度が変わった年に古い教材を使うと、実際には正解にならない処理を覚えてしまう危険があります。教材を買うときに改訂年を確認する理由はここにあります。

受験料は3級が3,300円(税込)です。この金額は、決まった日に一斉に行う統一試験、企業や学校単位で行う団体試験、会場のパソコンで受けるネット試験のいずれも同じです。

統一試験とネット試験、どちらを選ぶか

3級には2つの受け方があります。選び方で結果が変わるので、ここは丁寧に見ておきます。

統一試験は、年に決まった日に一斉に実施される方式です。直近の日程は、2026年11月15日が第174回(1級から3級)、2027年2月28日が第175回(2級と3級)です。申込の受付日時や方法は商工会議所によって異なり、試験日の約3か月前を目安に受験希望地の商工会議所へ問い合わせる形になっています。

ネット試験は、会場のパソコンで受ける方式です。試験日は各ネット試験会場が決めるため、自分の都合に合わせて選べます。ただし統一試験の前後には施行を休止する期間が設けられており、2026年11月9日から18日、2027年2月22日から3月3日などが休止期間として案内されています。この期間は受けられないので、計画に織り込んでください。

合格率には差があります。日本商工会議所が公表している受験者データから、直近の数字を並べます。

方式 期間または回 受験者 合格者 合格率
統一試験 第173回(2026年6月14日) 14,359名 4,854名 33.8%
統一試験 第172回(2026年2月22日) 17,140名 5,757名 33.6%
統一試験 第171回(2025年11月16日) 16,648名 5,743名 34.5%
ネット試験 2026年4月から6月 64,183名 28,546名 44.5%
ネット試験 2025年4月から2026年3月 276,477名 112,797名 40.8%

ネット試験のほうが合格率は高く出ています。ただし、これを「ネット試験は簡単だ」と読むのは早計です。ネット試験は自分の準備が整った日を選んで受けられるため、受験者の準備の度合いが揃いやすいという事情があります。統一試験は日程が先に決まっているので、仕上がっていない状態でも当日を迎える人が一定数含まれます。

回ごとの振れ幅にも注意が要ります。統一試験の3級は、2025年6月の第170回が42.4%だったのに対し、2025年2月の第169回は28.7%でした。同じ試験でも、回によって10ポイント以上動きます。運の要素がまったくないとは言えないということです。だからこそ、基準ぎりぎりの仕上がりで臨まず、余裕を持って70%を超える状態にしておく必要があります。過去の回ごとの数字は日本商工会議所の受験者データで確認できます。

受験者数の規模も見ておいてください。2025年度でみると、ネット試験が276,477名に対し、統一試験は3回合計でおよそ5万人台です。今や受験者の大半はネット試験で受けています。日程の自由度を考えても、社会人がこれから受けるならネット試験が現実的な選択になります。

3つ目の方式として、団体試験もあります。試験日は各地の商工会議所が企業や学校と調整して決める仕組みで、勤務先や通っている学校が実施する場合に利用できます。受験料は統一試験やネット試験と同じ3,300円です。勤務先に制度があるかどうかは、総務の担当者に確認してみる価値があります。日程や受験料の最新の一覧は商工会議所の試験日程カレンダーで確認できます。

級ごとの受験料も見ておくと、先の計画が立てやすくなります。3級が3,300円、2級が5,500円、1級が8,800円で、いずれも税込みです。簿記初級は2,200円です。3級から2級へ進む場合、受験料は2,200円上がり、学習量は数倍になります。この差を知ったうえで、どこまで進むかを先に決めておくと迷いません。

なお、この検定は1954年から実施されており、2026年6月14日の試験で173回目、これまでに2,900万人以上が受験しています。長く続いている分、教材も過去問も豊富に揃っている分野です。

勉強時間の目安と、その読み方

よく引用される目安を見ておきます。

簿記3級の合格に必要な勉強時間は100時間 簿記3級に合格するためには、100時間程度の勉強時間が必要です。ただし、簿記の予備知識があれば、100時間よりも短い勉強時間で合格できる可能性があります。たとえば、商業高校出身の人や経理業務経験者は、ある程度学習経験があるためスムーズに勉強を進められるでしょう。 出典: u-can.co.jp

100時間という数字は、1日1時間なら3か月半、1日2時間なら7週間ほどに相当します。皆さんの生活に合わせて、どちらの配分が現実的かを先に決めてください。

ただし、この100時間の中身は均等ではありません。経験上、最初の20時間から30時間がいちばん重く、そこを過ぎると急に進み方が変わります。理由は後述しますが、簿記は最初に覚えるルールが少なく、そのルールの組み合わせで全体ができているからです。基本の型が入った時点で、残りは応用として処理できるようになります。

逆に言えば、最初の重い時期に「自分には向いていない」と判断してやめてしまう人が多いということでもあります。ここは我慢のしどころです。

難易度についても、公的な数字と照らして見ておきましょう。合格率は方式によって33%台から44%台で推移しています。10人受けて3人から4人が受かる水準なので、決して誰でも受かる試験ではありません。一方で、上位数%しか受からない試験とも違います。準備をした人が受かる、という言い方が実態に近いと思います。

最初の2週間をどう乗り越えるか

簿記の学習で最初に出会う壁は、借方と貸方という概念です。左側を借方、右側を貸方と呼びます。ここでほとんどの人が「なぜ借りる、貸すという言葉なのか」と考えて止まります。

結論を書きます。語源は気にしないでください。借方と貸方は、今では単に左と右を指す呼び名であり、お金を借りたか貸したかとは関係がありません。「左が借方、右が貸方」とだけ覚えて先へ進むのが正解です。ここで納得しようとすると、何時間も失います。

次の壁は、どちらに何を書くかというルールです。ここには型があります。資産が増えたら左、減ったら右。負債と純資産が増えたら右、減ったら左。費用が発生したら左、収益が発生したら右。この6つの組み合わせが、簿記3級のほぼすべての土台になります。

覚え方のこつは、言葉で覚えずに手で覚えることです。同じ仕訳を何度も紙に書きます。30個ほどの基本的な取引を、考えずに書けるようになるまで繰り返してください。理屈の理解は、手が動くようになってから後から付いてきます。順番が逆だと苦しくなります。

実際に学び直しをした人の話を聞いていると、この段階で参考書を何冊も買い替えてしまう例が目立ちます。説明の仕方が違う本を読めば腑に落ちるのではないか、と期待するからです。しかし原因は本の説明ではなく、手を動かした量が足りないことにあります。本を変える前に、同じ仕訳を20回書いてみてください。

学習の順番を固定する

簿記3級の内容は、次の3つの段階に分かれます。この順番を崩すと理解が積み上がりません。

第1段階は仕訳です。1つの取引を、左と右に分けて記録する作業です。学習時間の半分以上をここに使ってかまいません。仕訳ができれば、後の工程は作業に近くなります。

第2段階は帳簿への転記です。仕訳した内容を、勘定科目ごとの帳簿に書き写します。ここで出てくるのが総勘定元帳や補助簿といった帳簿の種類です。何を書くかより、どの帳簿に書くかが問われます。

第3段階は決算です。1年分の記録を締めて、財産の状況と1年間の成績を表にまとめます。試算表、精算表、貸借対照表、損益計算書といった書類が登場します。決算特有の調整もここで学びます。

この3段階は、試験の大問の構成ともおおむね対応しています。第1問は仕訳、第2問は帳簿や勘定の記入、第3問は決算に関する総合的な問題という形が定番です。つまり、学習の順番がそのまま得点計画になります。

配点は回によって変わりますが、第1問と第3問の比重が大きい傾向があります。仕訳と決算を固めれば合格基準の70%に届きやすくなる、という設計です。第2問は形式の変化が大きく、対策の費用対効果が読みにくい部分なので、ここに時間をかけすぎないほうが無難です。

60分という時間をどう使うか

試験時間は60分です。3題を60分で処理するため、時間配分の練習は必須になります。

現実的な配分は、第1問に15分、第2問に15分、第3問に25分、見直しに5分という形です。第3問の決算問題は作業量が多く、途中で止まると後が続きません。ここに最も時間を残す必要があります。

解く順番も決めておきます。第1問の仕訳から始めるのが基本です。短時間で確実に点が取れるため、最初に得点を確保して気持ちを落ち着かせる効果があります。第2問で形式に戸惑ったら、飛ばして第3問へ進んでください。第2問に固執して第3問に手を付けられないのが、最も避けたい失敗です。

時間内に解き切る練習は、本番と同じ60分で通しでやらないと身につきません。問題集を1問ずつ解いているだけでは、時間感覚が育ちません。学習の後半では、週に2回は60分の通し演習を入れてください。

電卓の使い方も速度に直結します。数字を打ち間違えたときにどのキーを押せばよいか、メモリー機能をどう使うかを、練習の段階で体に入れておきます。本番で初めて使う電卓は避けてください。

持ち物のルールを先に確認する

ここは軽視されがちですが、当日に慌てないために確認しておきましょう。日本商工会議所が公表している注意事項から、重要な点を挙げます。

本人確認として、原則として氏名、生年月日、顔写真のいずれも確認できる身分証明書の持参が求められます。運転免許証、旅券、社員証、学生証などが例として挙げられています。持っていない場合は、受験地の商工会議所に相談するよう案内されています。

筆記用具は、HBまたはBの黒鉛筆、シャープペン、消しゴムに限られます。ラインマーカーや色鉛筆、定規の使用は認められていません。問題文に線を引いて整理する習慣がある方は、鉛筆で引く形に練習の段階から慣れておいてください。

計算器具は、そろばんか電卓のどちらか1つを使用できます。ただし電卓には条件があります。計算機能、つまり四則演算のみのものに限られ、印刷機能、音の出る機能、プログラム機能、辞書機能があるものは持ち込めません。関数電卓や、売価計算や原価計算の公式を記憶できる電卓は対象外です。

一方で、プログラム機能に該当しないものとして使用が認められている機能もあります。日数計算、時間計算、換算、税計算、検算です。ただし音の出ないものに限られます。手持ちの電卓が該当するか不安な場合は、購入前に公式の記載を確認してください。

なお、統一試験では問題用紙、答案用紙、計算用紙が一体となった冊子が配られ、試験終了後にすべて回収されます。自分の解答を持ち帰ることはできません。集合時刻や試験開始時刻は会場によって異なるため、受験票の記載を必ず確認してください。

8週間の学習計画

1日1時間半を確保できる場合の、8週間の割り振りを示します。

第1週と第2週は仕訳の基本です。資産、負債、純資産、費用、収益という5つの区分を覚え、基本的な取引の仕訳を手で書きます。ここでは問題集の正答率を気にしないでください。書いた回数だけが資産になります。

第3週は仕訳の範囲を広げます。現金と預金、商品売買、手形、貸付と借入、固定資産など、出題頻度の高い取引を順に押さえます。

第4週は帳簿です。転記の作業と、帳簿の種類を覚えます。ここは比較的短期間で終わります。

第5週と第6週は決算です。試算表の作成、決算整理、精算表、そして財務諸表の作成へと進みます。学習の山場ですが、仕訳が固まっていれば処理そのものは難しくありません。

第7週は過去問と予想問題を通しで解きます。60分を計って、3題を通す練習です。分野別の弱点がここで見えます。

第8週は弱点の補修だけに使います。新しい教材は足しません。間違えた問題を集めた一覧を作り、それだけを繰り返します。

この計画で大事なのは、第1週と第2週に時間をかけすぎないことです。理解しきれなくても第3週へ進んでください。仕訳の理解は、後の工程を進める中で深まります。完璧を目指して足踏みすると、決算にたどり着く前に期限が来ます。

教材の選び方と、揃えるもの

用意するものは多くありません。テキスト1冊、問題集1冊、電卓1台、そして書くための紙です。これだけで足ります。

テキストを選ぶときに見る点は3つあります。ひとつ、改訂の年が新しいこと。簿記は毎年度4月1日現在で施行されている法令等に準拠して出題されると公式に定められているため、制度の変更が反映されていない本は危険です。日本商工会議所は出題区分表も公表しており、2027年度に適用する区分表の確定版は2026年7月31日に案内が出ています。教材がどの年度の区分表に対応しているかを、奥付や紹介文で確認してください。

ふたつ、仕訳の例が多いこと。説明が丁寧でも、例が少ない本は手を動かす量が足りません。1つの論点に対して複数の取引例が載っている本を選びます。

みっつ、図が使われていること。帳簿の流れや決算の手順は、文章だけでは頭に残りません。1つの流れに1つの図がある本のほうが、復習の時間が短くて済みます。

問題集は、解説の厚さで選びます。答えだけが書かれているものは、なぜ間違えたのかが分からないので学習が進みません。不正解になる理由まで書かれているものを1冊選び、繰り返してください。

電卓は、簿記の学習用として売られているものを選ぶと間違いがありません。キーが大きく、表示の桁数が多いものが扱いやすくなります。持ち込みの条件に合うかどうかも、購入前に確認しておきます。

書く紙は、余っているコピー用紙で十分です。ノートにきれいにまとめる必要はありません。むしろ、まとめノートを作る時間があるなら、仕訳を書く回数に充てたほうが点が伸びます。

決算の考え方を押さえる

学習の山場である決算について、考え方だけ先に示しておきます。ここを最初に知っておくと、テキストが読みやすくなります。

決算とは、1年間の記録を締めて、2つの表を作る作業です。ひとつは、ある時点でどんな財産と借金があるかを示す表。もうひとつは、1年間でどれだけ儲かったかを示す表です。日々の仕訳は、この2つの表を作るための材料を集める作業だと考えてください。

決算で特有なのは、日々の取引では記録されない事柄を、期末にまとめて反映させる処理です。たとえば、使った分だけを費用にするために在庫を調整する、建物や機械の価値が目減りした分を費用にする、まだ受け取っていない収益や、まだ払っていない費用を計上する、といった調整です。

これらの調整は、種類としては多くありません。3級の範囲では、頻出のものを数えても10前後に収まります。ひとつずつ仕訳の形を覚えれば対応できます。難しく感じるのは、種類が多いからではなく、なぜその調整が必要なのかという理屈と、仕訳の形を同時に覚えようとするからです。

ここでも順番は同じです。まず仕訳の形を手で覚え、理屈は後から付ける。第3問の決算問題は作業量が多いので、手が自動で動く状態になっていないと60分では終わりません。

精算表という表の形式にも慣れておいてください。決算の途中経過を1枚にまとめた表で、試験でも出題されます。形式自体は決まっているので、白紙から3回書いてみれば頭に入ります。

独学で起きやすい失敗

正直に、うまくいかない型も書いておきます。

1つ目は、読むだけで手を動かさないことです。簿記は書いて覚える分野で、読んで理解した気になった内容は、試験で手が止まります。テキストを1ページ読んだら、そこに出てきた仕訳を必ず紙に書いてください。

2つ目は、電卓の練習を後回しにすることです。計算そのものは難しくありませんが、打つ速さと正確さが時間配分に効きます。学習の初日から、本番で使う電卓を手元に置いてください。

3つ目は、試験日を決めないことです。ネット試験は日程の自由度が高いぶん、いつまでも先延ばしできてしまいます。学習を始めた段階で受験日を仮決めし、第6週あたりで申し込むと決めておくと、計画が動きます。

4つ目は、2級の教材に手を出すことです。3級の学習中に2級の内容が気になることがありますが、範囲が広がるだけで3級の合格は近づきません。3級に受かってから進んでください。

5つ目は、独学の孤独に負けることです。特に働きながら学ぶ場合、誰にも進み具合を話さないまま数週間が過ぎると、続ける理由が薄れます。家族に受験予定を伝えておくだけでも、続けやすさが変わります。

申込から当日までの流れ

手続きの話をします。方式によって流れが違うので、分けて説明します。

統一試験の場合、申込の受付日時と受付方法は商工会議所ごとに異なります。試験日の約3か月前を目安に、受験を希望する地域の商工会議所へ問い合わせる形になっています。全国共通の窓口で一括して申し込む仕組みではないため、住んでいる地域の商工会議所を先に調べておいてください。日程が決まっている分、逆算して学習計画を立てやすいという利点があります。

ネット試験の場合、試験日は各ネット試験会場が決めます。会場ごとに実施できる日時が違うため、通える範囲の会場をいくつか調べ、空いている日を比べる形になります。統一試験の前後に設定されている施行休止期間には実施されないので、その期間を避けて予約します。

合格発表の期日や方法、証書の受け渡し方法も商工会議所によって異なります。申し込みの際に確認しておくと、後で問い合わせる手間が省けます。

当日の持ち物は前述のとおり、身分証明書、HBまたはBの黒鉛筆かシャープペン、消しゴム、そして電卓かそろばんです。集合時刻と試験開始時刻は会場ごとに違うため、受験票の記載を必ず確認してください。会場までの経路と所要時間も、前日までに調べておきます。

学習の後半、第6週あたりで申し込むのが目安です。早く申し込みすぎると仕上がりが読めず、遅すぎると希望の日程が埋まります。学習の進み具合を見ながら、余裕を持って押さえてください。

合格した後にやること

合格はゴールではなく、次の判断をする地点です。やっておくとよいことを3つ挙げます。

1つ目は、合格の記録を整えることです。合格証書や合格証明書の受け渡し方法は商工会議所によって異なります。受け取ったら、保管場所を決め、画像も残しておいてください。履歴書に書くときは、検定の正式な名称と合格年月を記載します。略称だけだと、読む側が同じ資格と認識できないことがあります。

2つ目は、学んだことを自分の数字で使ってみることです。試験のための知識のままにしておくと、半年で薄れます。副業や業務委託で収入がある方は、自分の帳簿を付けてみてください。教材の例題より、自分の取引のほうがはるかに記憶に残ります。

3つ目は、次に進むかどうかを決めることです。2級に進むと工業簿記が加わり、学習量は3級の数倍になります。経理の仕事に就きたいなら進む価値がありますが、自分の事業の数字を扱えれば十分という目的なら、3級で区切ってもかまいません。目的から逆算して決めてください。

なお、税金や申告の具体的な扱いについては、金額や事情によって結論が変わります。一般にはこう扱われるという説明にとどめ、実際の判断は税務署や税理士に確認してください。簿記の知識は、その相談をするときに話が早くなるための土台です。

独自データから見た、簿記3級と在宅の仕事

取得後の話をします。簿記3級は、それ単体で高い報酬に直結する資格ではありません。効いてくるのは、他の仕事と組み合わせたときです。

分かりやすいのは、自分の事業の数字を扱えるようになることです。業務委託で仕事を受ける立場になると、毎年の確定申告が必要になります。帳簿の付け方を知っているかどうかで、記帳にかかる時間も、経費の判断の確かさも変わります。ここは資格の有無というより、知識そのものが直接効く部分です。

仕事の幅という観点では、経理や事務の補助を受ける道があります。数字を扱う仕事は在宅と相性がよく、月次の記帳や請求書の作成といった業務は、場所を問わず進められます。実際の単価感を知りたい場合は、職種ごとの相場を確認しておくと判断しやすくなります。文章の仕事と組み合わせるなら著述家,記者,編集者の年収・単価相場が、技術寄りの仕事と組み合わせるならソフトウェア作成者の年収・単価相場が参考になります。

意外な組み合わせも成立します。AIコンサル・業務活用支援のお仕事では、経理の業務をどこまで自動化できるかという相談が増えています。会計の流れを理解している人が入ると、話が具体的になります。AI・マーケティング・セキュリティのお仕事でも、広告費の投下と回収を数字で語れる人は重宝されます。アプリケーション開発のお仕事で会計まわりの仕組みを作る場合も、簿記の知識があると要件の読み違いが減ります。

次の段階を考えるなら、試験の全体像を日商簿記3級日商簿記2級のページで比べておくと、どこまで進むかを決めやすくなります。副業として活かす道筋は簿記資格で始める副業5選|3級・2級それぞれの活かし方にまとまっています。

20年この市場を見てきた立場から言えば、簿記を取った人のうち仕事に繋げられているのは、記帳の代行そのものを売った人より、自分の専門分野に数字の言葉を足した人です。制作でも開発でも、見積もりの根拠を数字で説明できる人は、価格の交渉で不利になりません。簿記3級は、その説明の土台になります。

運営者として見てきた限りでは、仲介手数料が引かれない直接取引の形も、この積み上げと相性がよくなっています。同じ予算でも中間で引かれる分がなければ、依頼する側はより多く頼めて、受け取る側は手数料0%の分だけ手取りが厚くなります。帳簿を自分で付けられるようになると、この差が年単位でどれだけ効いているかも、自分の数字で見えるようになります。

最後に、今日やることを3つに絞ります。受験する方式をネット試験にするか統一試験にするか決めること。受験日の候補を決めること。そして、テキストの最初の章を開いて、出てきた仕訳を1つ紙に書くこと。この3つが済めば、100時間の学習はもう始まっています。

よくある質問

Q. 簿記3級は独学でも合格できますか?

合格できます。試験は商業簿記のみの出題で、大問は3題以内、試験時間は60分、合格基準は70%以上と公表されています。範囲が限定されており、市販の教材も過去問も豊富に揃っている分野です。ただし合格率は方式によって33%台から44%台なので、準備なしで受かる試験ではありません。学習時間は100時間程度を目安に計画してください。

Q. 統一試験とネット試験はどちらを選ぶべきですか?

社会人がこれから受けるなら、日程を自分で選べるネット試験が現実的です。受験料はどちらも3,300円(税込)で同じです。合格率はネット試験のほうが高く出ていますが、これは自分の準備が整った日を選べる分、受験者の仕上がりが揃いやすいためと考えられます。ただし統一試験の前後には施行の休止期間があるので、日程は事前に確認してください。

Q. 電卓はどんなものを持ち込めますか?

計算機能、つまり四則演算のみの電卓に限られます。印刷機能、音の出る機能、プログラム機能、辞書機能があるものは持ち込めません。関数電卓や、売価計算などの公式を記憶できる電卓も対象外です。一方で、日数計算、時間計算、換算、税計算、検算の機能は、音の出ないものであれば使用が認められています。不安な場合は公式の記載を確認してください。

Q. 最初につまずくのはどこですか?

借方と貸方の区別です。左側を借方、右側を貸方と呼びますが、お金を借りたか貸したかとは関係がありません。語源を理解しようとすると時間を失うので、左と右の呼び名だと割り切って先へ進んでください。そのうえで、資産が増えたら左、費用が発生したら左といった基本の型を、同じ仕訳を何度も紙に書いて手で覚えるのが最短です。

この記事について

@SOHO
編集部

監修:@SOHO編集部

2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを20年運営。編集部が事実確認のうえ公開しています。

公開:2026年8月10日最終更新:2026年9月23日
前田 壮一

この記事を書いた人

前田 壮一@SOHO編集部

元メーカー管理職・43歳でフリーランス転身

大手電機メーカーで品質管理を20年間担当した後、42歳でフリーランスに転身。中高年のキャリアチェンジや副業の始め方を、自身の経験をもとに発信しています。

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