任意継続と国民健康保険はどちらが得か|退職後に比べる点と切り替えの期限 2026


この記事のポイント
- ✓任意継続と国民健康保険のどっちが得かは
- ✓離職の理由で変わります
- ✓協会けんぽと自治体の公式情報をもとに
会社を辞めると、それまで会社の健康保険に入っていた人は、次の健康保険を自分で選ぶことになります。選択肢として多くの人が迷うのが、会社の健康保険を続ける「任意継続」と、住んでいる市区町村の「国民健康保険」です。任意継続と国民健康保険はどっちが得なのか。結論から言うと、どちらが安いかは人によって違い、退職時の給与、前年の所得、扶養する家族の人数、そして辞めた理由の4つで決まります。
これ、知らない人が本当に多いんです。「任意継続は保険料が2倍になるから損」「国保は高い」と、どちらか一方の話だけを聞いて決めてしまう。でも、扶養家族がいる人や、会社都合で辞めた人は、その一般論がそのまま当てはまりません。この記事では、協会けんぽ(全国健康保険協会)と自治体の公式ページの記載(2026年10月3日に確認)をもとに、2つの保険料の決まり方、比べる手順、手続きの期限、見落としやすい点を順番に整理します。
退職後の健康保険は3つの選択肢から選ぶ
最初に、退職後に入れる健康保険の全体像を確認しておきます。協会けんぽの任意継続のページでは、退職後の健康保険について次のように案内されています。
退職後の健康保険には、「健康保険任意継続」、「国民健康保険」、「ご家族の健康保険(被扶養者)」の3つの選択があります。毎月納める保険料などを比較の上、選択された健康保険にお手続ください。 出典: 協会けんぽ
1つ目の任意継続とは、退職したあとも、最長2年間、それまで入っていた会社の健康保険に個人で入り続けられる制度です。つまり、会社員だったときの健康保険を、会社を通さずに自分で続ける形です。
2つ目の国民健康保険は、自営業の人やフリーランス、会社の健康保険に入っていない人が入る、市区町村が運営する健康保険です。会社を辞めて次の勤め先が決まっていない人は、任意継続か家族の扶養を選ばない限り、ここに入ることになります。
3つ目は、家族が会社の健康保険に入っている場合に、その扶養に入る方法です。扶養に入れれば、本人の保険料はかかりません。ただし、収入の条件があり、たとえば失業給付を受けている間は、その日額によって扶養に入れないことがあります。条件は家族の勤め先の健康保険によって細かい扱いが違うので、家族の勤務先に確認します。
この記事で比べるのは、1つ目と2つ目です。家族の扶養に入れる人は、まずその可能性を確かめ、入れない場合に任意継続と国保を比べる、という順番で考えると迷いません。
任意継続の保険料はどう決まるか
任意継続の保険料は、退職したときの標準報酬月額に、住んでいる都道府県の保険料率をかけて決まります。標準報酬月額とは、給与の額を一定の幅ごとに区切った等級に当てはめた金額で、在職中の保険料の計算にも使われていたものです。
在職中は、保険料を会社と本人で半分ずつ負担していました。任意継続になると会社の負担がなくなるので、本人が全額を払います。そのため、保険料は在職中の約2倍になります。ここまでは多くの人が知っている話です。
見落とされやすいのが、保険料の計算に使う標準報酬月額に上限があることです。協会けんぽのページでは、退職時の標準報酬月額が32万円を超えていた場合は、32万円として計算すると案内されています。つまり、在職中の給与が高かった人ほど、任意継続の保険料は「2倍」より低く抑えられます。
保険料率は都道府県ごとに違います。協会けんぽの令和8年度の健康保険料率は、たとえば東京都で9.85%、神奈川県や埼玉県なども9%台後半です。令和8年4月分からは、これに全国一律の子ども・子育て支援金(0.23%)が加わります。40歳から64歳までの人は、さらに介護保険料率(1.62%)が加わります。
具体的に計算してみます。東京都に住む39歳の人で、退職時の標準報酬月額が30万円なら、30万円に9.85%と0.23%を合わせた10.08%をかけて、1か月あたり30,240円です。同じ条件で40歳なら、介護保険料率の1.62%も加わって11.70%になり、1か月あたり35,100円です。標準報酬月額が50万円の人でも、上限の32万円で計算するので、39歳なら1か月あたり32,256円で済みます。
任意継続の保険料は、原則として2年間変わりません。ただし、保険料率が変わったとき、40歳になって介護保険料が加わったとき、標準報酬月額の上限が変わったとき、保険料率の違う都道府県に引っ越したときは変わります。
会社の健康保険組合に入っていた人は、協会けんぽとは別の計算になります。組合ごとに保険料率も上限も違うので、組合のホームページか担当窓口で確かめます。
国民健康保険の保険料はどう決まるか
国民健康保険の保険料は、市区町村ごとに計算の方法が違います。厚生労働省の「国民健康保険料・保険税について」のページでは、保険料は世帯ごとに計算し、加入者ごとに「応益分」と「応能分」を計算して合計すると説明されています。
応益分とは、所得に関係なく加入者1人ごと、または1世帯ごとにかかる定額の部分です。応能分とは、前年の所得に応じてかかる部分です。つまり、国保の保険料は「人数が多いほど」「前年の所得が多いほど」高くなる仕組みです。
ここで大事なのは、国保の保険料は前年の所得で決まるという点です。会社を辞めた年やその翌年の保険料は、会社員として給与を受け取っていた年の所得をもとに計算されます。収入がなくなっていても、保険料は在職中の所得の水準で決まるので、思ったより高く感じる人が多いんです。
自治体の試算例を1つ見ておきます。東京都足立区のホームページでは、単身世帯の年間保険料の目安として、30歳で令和7年の収入が200万円の人は約234,000円、300万円の人は約339,000円と示されています。40歳になると介護分が加わり、収入200万円で約290,000円、300万円で約420,000円です。月にならすと、30歳で収入300万円の人なら1か月あたり2万8千円ほどになります。
この金額は足立区の例で、ほかの市区町村では違います。正確な金額を知るには、住んでいる市区町村の国民健康保険の担当課に、前年の収入を伝えて試算してもらうのが確実です。多くの自治体は、ホームページに試算の表や計算のツールを用意しています。
扶養する家族がいると比べ方が変わる
任意継続と国保の比較で、結果を大きく左右するのが家族の存在です。ここが一般論の通じない一番の理由です。
任意継続には、在職中と同じく「被扶養者」の仕組みがあります。被扶養者とは、本人の収入で生活している家族のことで、条件を満たせば、配偶者や子どもを何人扶養に入れても、保険料は増えません。協会けんぽの比較表でも、被扶養者の保険料負担はないと書かれています。
一方、国保には扶養という考え方がありません。世帯の加入者1人ごとに応益分の保険料がかかるので、家族が多いほど保険料は増えます。子どもがいる世帯については、未就学児の均等割(1人ごとにかかる定額部分)の保険料を5割軽減する仕組みがありますが、それでもゼロにはなりません。
つまり、収入のない配偶者や子どもを扶養している人は、任意継続の方が有利になりやすいということです。逆に、単身で前年の所得がそれほど高くない人は、国保の方が安くなることがあります。
相談の現場でよくあるのが、「国保の方が安いと聞いたので国保にしたら、妻と子ども2人の分の保険料もかかって、任意継続よりずっと高くなった」という例です。国保の試算をするときは、必ず世帯全員の分で計算してもらうことが大切です。
会社都合で辞めた人は国保の保険料が軽減されることがある
会社の倒産や解雇、雇い止めなどで仕事を失った人は、国保の保険料が大きく下がる制度があります。比較の結果がひっくり返ることもあるので、当てはまる人は必ず確かめます。
この制度は「非自発的失業者の軽減」と呼ばれ、国保の保険料を計算するときに、前年の給与所得を100分の30とみなして計算するものです。つまり、給与所得を3割の金額として扱うので、所得に応じてかかる部分がかなり小さくなります。足立区のホームページでは、制度の目的が次のように説明されています。
解雇や倒産などで職を失った方が、在職中と同じ程度の保険料の負担で、国民健康保険に加入できるようにする制度です。 出典: 足立区
対象になるのは、離職した日に65歳未満で、雇用保険の「特定受給資格者」(倒産や解雇などで離職した人)か「特定理由離職者」(雇い止めなどで離職した人)に当たる人です。ハローワークで受け取る雇用保険受給資格者証などの「離職理由」の欄のコードで判断されます。自己都合で辞めた人は、原則として対象になりません。
軽減を受けられる期間は、離職した日の翌日から、その翌年度の末までです。足立区の例では、令和8年6月30日に離職した人は、令和8年7月から令和10年3月までの保険料が軽減されます。この期間は、雇用保険の失業給付を受ける期間とは別のものです。
この軽減は自動的には適用されません。雇用保険受給資格者証などを持って、市区町村の窓口で届け出る必要があります。会社都合で辞めた人は、ハローワークで手続きをしたあと、その書類を持って国保の窓口に行き、軽減を前提にした保険料を試算してもらってから比べるのが確実です。
手続きの期限は20日以内と14日以内
どちらを選ぶにしても、期限を過ぎると困ったことになります。特に任意継続は、期限を1日でも過ぎると入れなくなるので注意が必要です。
任意継続に入るには、退職日までに健康保険に続けて2か月以上加入していたことが条件です。そのうえで、退職日の翌日から20日以内に、住んでいる都道府県の協会けんぽ支部に「健康保険任意継続被保険者資格取得申出書」を出します。20日目が土日や祝日の場合は翌営業日までです。郵送の場合は20日以内に届く必要があります。
国保の届け出は、国民健康保険法施行規則で、資格を取得した日から14日以内に、世帯主が市区町村に届け出ると定められています(e-Govの国民健康保険法施行規則第3条)。ただし、国保の資格そのものは、会社の健康保険をやめた日(退職日の翌日)から自動的に始まります。届け出が遅れても、保険料は資格を取得した月の分までさかのぼってかかります。届け出が遅れて得をすることはありません。
もう1つの注意点は、届け出が遅れている間に病院にかかった場合です。その間の医療費は、いったん全額を自分で払い、あとから払い戻しの手続きをすることになる場合があります。退職後は、できるだけ早くどちらかの手続きを済ませておきます。
比べる時間を確保するには、退職前に準備を始めるのが一番です。任意継続の保険料は、退職時の標準報酬月額が分かれば計算できます。国保の保険料は、市区町村に前年の収入を伝えれば試算してもらえます。退職日が決まった段階で、両方の金額を手元にそろえておくと、20日の期限に追われずに済みます。
保険料以外に比べておきたい点
任意継続と国保の比較は、保険料の金額だけでは決まりません。給付や途中でやめる自由にも違いがあります。
1つ目は、傷病手当金と出産手当金です。傷病手当金とは、病気やけがで働けない間に健康保険から出るお金のことです。任意継続では、在職中から続けて受けている場合に限って引き続き受け取れますが、任意継続に入ってから新たに病気になった場合は支給されません。国保には、原則としてこの給付がありません。どちらを選んでも新たな病気で受け取れない点は同じなので、在職中から受けている人だけが気にすればよい点です。
2つ目は、途中でやめられるかどうかです。任意継続は、以前は原則として2年間やめられませんでしたが、現在は本人が希望すれば、申し出によってやめることができます。協会けんぽのページでも、資格を失う理由の1つとして、任意継続をやめたいと申し出たときが挙げられています。翌年度に国保の保険料が下がる見込みのときは、1年目は任意継続、2年目は国保に切り替える、という選び方もできます。
3つ目は、保険料の払い方です。任意継続の保険料は、毎月10日までに納付書か口座振替で払います。期限までに払わないと、その時点で任意継続の資格を失います。国保のように、滞納しても督促が続くのとは違い、1回の払い忘れで資格がなくなるので注意が必要です。一方で、半年分や1年分をまとめて払う前納の制度があり、まとめて払うと年4%の割引(複利現価法による)が受けられます。
4つ目は、病院での窓口負担です。これはどちらも原則3割で変わりません。
任意継続を申し出るときの流れと必要なもの
任意継続を選ぶと決めたら、期限内に確実に手続きを終えることが何より大切です。ここでは、協会けんぽに加入していた人を例に、手続きの流れを整理します。
最初に、協会けんぽのホームページの「任意継続の申請書」のページから、「健康保険任意継続被保険者資格取得申出書」を入手します。記入するのは、氏名や住所、退職前の勤め先の情報、扶養に入れる家族の情報などです。退職前の健康保険の記号と番号が必要になるので、退職前に「資格情報のお知らせ」や資格確認書の内容を控えておきます。
家族を被扶養者として一緒に手続きする場合は、生計を維持していることを証明する書類の添付が必要になることがあります。協会けんぽのページには、被扶養者の収入の有無にかかわらず、証明の書類が必要な場合があると書かれています。どの書類が要るかは家族の状況で違うので、申出書と一緒に案内を確認します。
申出書は、住んでいる都道府県の協会けんぽ支部に、窓口に持参するか郵送で出します。退職前の勤め先がある都道府県ではなく、自分が住んでいる都道府県の支部です。郵送の場合は、20日以内に届くよう、余裕を持って送ります。
申出が受け付けられると、保険料の納付書などが届きます。最初の保険料は、納付書に書かれた期限までに必ず払います。最初の納付が遅れると、任意継続そのものが始まらないことがあります。口座振替を希望する場合は、別に申出書を出します。前納を希望する場合も、早めに支部に申し出ておきます。
会社の健康保険組合に入っていた人は、手続きの窓口がその健康保険組合になります。様式も期限の扱いも組合によって違うことがあるので、退職前に組合のホームページで確かめておきます。
健康保険と一緒に国民年金の切り替えも必要
健康保険の選び方に気を取られて、見落としやすいのが年金の手続きです。会社員の間は厚生年金に入っていましたが、退職して次の勤め先が決まっていない人は、国民年金の「第1号被保険者」に切り替わります。第1号被保険者とは、自営業やフリーランス、学生、無職の人など、自分で国民年金の保険料を払う人のことです。
この切り替えは、任意継続を選んだ人も国保を選んだ人も同じように必要です。任意継続で続けられるのは健康保険だけで、厚生年金は続けられないからです。国民年金法施行規則では、種別が変わった日から14日以内に、市区町村に届け出ることになっています。
国民年金の保険料は、令和8年度で1か月あたり17,920円です。日本年金機構の国民年金保険料のページで確かめられます。健康保険の保険料と合わせると、退職後に毎月払うお金はかなりの額になります。任意継続と国保を比べるときは、この国民年金の保険料も合わせて、1か月あたりの負担を見積もっておくと現実的です。
収入が減って国民年金の保険料を払うのが難しいときは、免除や納付猶予の制度があります。失業した人は、前年の所得にかかわらず免除を受けられる「失業等による特例免除」も使えます。申請には、離職票や雇用保険受給資格者証のコピーが必要です。払えないからといって何もしないで未納にすると、将来の年金だけでなく、病気やけがで障害が残ったときの障害基礎年金も受け取れなくなることがあります。払えないときは、未納のまま放っておかず、市区町村の国民年金の窓口か年金事務所で申請することが大切です。
なお、配偶者が会社員で、その扶養に入る人は、国民年金の第3号被保険者になれることがあります。この場合は自分で保険料を払う必要はなく、手続きは配偶者の勤め先を通じて行います。
どちらが得かを比べる手順
ここまでの内容を、実際に比べるときの手順として整理します。順番に進めれば、迷わずに判断できます。
最初に、家族の健康保険の扶養に入れるかどうかを確かめます。入れるなら、保険料がかからないので、多くの場合それが一番負担の少ない選択肢です。
次に、任意継続の保険料を計算します。給与明細か「資格情報のお知らせ」で退職時の標準報酬月額を確かめ、32万円を超えていれば32万円に置き換えます。協会けんぽの都道府県ごとの保険料率に、子ども・子育て支援金率と、40歳から64歳なら介護保険料率を合わせてかけます。
3番目に、国保の保険料を試算します。住んでいる市区町村の担当課に、前年の収入と世帯の人数を伝えて計算してもらいます。会社都合で辞めた人は、非自発的失業者の軽減を前提にした金額も出してもらいます。
4番目に、1年目と2年目に分けて比べます。任意継続の保険料は原則2年間同じですが、国保の保険料は前年の所得で毎年決まり直します。退職した翌年は所得が下がるので、2年目の国保の保険料は1年目より下がることが多いんです。1年目は任意継続の方が安く、2年目は国保の方が安くなるなら、途中で切り替える選択肢を考えます。
最後に、給付の違いと払い忘れのリスクを確かめて決めます。たとえば任意継続を選ぶ人が、払い忘れが心配なら口座振替か前納を選ぶ、という形です。
退職前にそろえておくと比較が早く終わるもの
任意継続の期限は退職日の翌日から20日しかありません。退職してから情報を集め始めると、比べる時間がほとんど残らないことがあります。退職前の在職中にそろえておくと、比較が短い時間で終わります。
1つ目は、退職時の標準報酬月額です。給与明細の健康保険料の欄から逆算するか、会社の担当者に聞けば分かります。毎年9月に見直されるので、直近の金額を確かめます。
2つ目は、前年の収入が分かる書類です。前年の源泉徴収票があれば、国保の試算に使えます。副業の収入や不動産の収入があった人は、確定申告書の控えも用意します。
3つ目は、扶養している家族の情報です。家族の人数と年齢、それぞれの収入の有無をまとめておきます。国保の試算は世帯全員の分で行うので、この情報が欠かせません。
4つ目は、離職の理由です。会社都合か自己都合か、雇い止めかによって、国保の軽減を受けられるかどうかが変わります。離職票に書かれる理由が自分の認識と違うときは、ハローワークで異議を申し立てることもできます。
この4つがそろえば、協会けんぽの都道府県ごとの保険料率から任意継続の保険料を計算し、市区町村の担当課に国保の保険料を試算してもらうことができます。電話で問い合わせるときも、数字が手元にあれば話が早く進みます。
任意継続をやめるときの手続き
任意継続を選んだあとで、再就職したり、国保に切り替えたりするときは、やめる手続きが必要です。この手続きを忘れると、保険料の請求が続いたり、使えなくなった資格確認書で病院にかかってしまったりします。
再就職して新しい会社の健康保険に入った場合や、国保に切り替えたい場合は、協会けんぽの支部に「資格喪失申出書」を出します。協会けんぽのページでも、就職して他の健康保険に入ったときや、任意継続をやめたいときは、この申出書の提出が必要だと案内されています。
資格を失ったあとは、資格確認書などを速やかに返します。資格を失った日以降に使って病院にかかると、医療費を全額返すことになります。国保に切り替える場合は、任意継続の資格を失ったことが分かる書類を持って、市区町村で国保の加入手続きをします。
また、任意継続の保険料を払ったときの領収証書は、確定申告で社会保険料控除を受けるときに必要になります。協会けんぽのページには、領収証書は再発行できないと書かれているので、なくさずに保管しておきます。
3つのケースで考え方を確かめる
ここまでの考え方を、典型的な3つのケースに当てはめてみます。金額は傾向をつかむための目安で、実際の判断は必ず自分の数字で試算してください。
1つ目は、単身で、退職前の年収が300万円ほどだった30代の人です。任意継続の保険料は、標準報酬月額によりますが、東京都なら1か月あたり2万円台半ばから後半になることが多い水準です。国保は前年の収入で決まるので、足立区の試算例に当てはめると1か月あたり2万8千円ほどです。この場合は大差がなく、1年目はどちらでも大きく変わらない一方、2年目は所得が下がる分だけ国保が有利になりやすい、という見立てになります。
2つ目は、年収600万円ほどで、収入のない配偶者と子ども2人を扶養していた40代の人です。任意継続は上限の32万円で計算されるうえ、家族が何人いても保険料は増えません。国保は前年の所得が高いうえに、家族4人分の応益分がかかります。このケースでは、任意継続の方が安くなることが多いと考えられます。
3つ目は、会社の倒産で離職した、単身の30代の人です。非自発的失業者の軽減を受けると、国保の保険料は前年の給与所得を3割として計算されます。前年の給与が高かった人ほど軽減の効果は大きく、任意継続より国保の方が安くなることが多いケースです。ただし、軽減は届け出て初めて適用されるので、ハローワークの手続きのあとに国保の窓口に行くことを忘れないようにします。
任意継続の2年が終わったあとの選択
任意継続は最長2年間です。2年が終わる時点で再就職していなければ、国保に入るか、家族の扶養に入るかを選ぶことになります。2年が満了したときは任意継続の資格が自動的になくなるので、その翌日から国保の資格が始まります。
ここでも、国保の届け出は14日以内です。満了の時期は最初から分かっているので、満了の1か月ほど前には市区町村の担当課で国保の保険料を試算してもらい、届け出の準備をしておきます。満了のときの国保の保険料は、その前の年の所得で決まります。退職から2年がたっていれば、在職中の給与は計算に入らないことが多いので、1年目より保険料が下がっていることがよくあります。
独立して事業を始めていた人は、事業の所得が保険料の計算の元になります。確定申告を済ませていないと、所得が分からないために保険料が正しく計算されないことがあるので、申告は期限内に済ませておきます。
よくある思い違いを整理する
最後に、任意継続と国保の比較でよく見かける思い違いを3つ挙げておきます。
1つ目は「任意継続は保険料が2倍になるので必ず損」という思い違いです。2倍になるのは事実ですが、上限の32万円があるので、給与が高かった人は2倍より低くなります。扶養家族がいれば、家族の分の保険料もかかりません。2倍という言葉だけで判断すると、損をする人がいます。
2つ目は「国保は所得がなければ安い」という思い違いです。国保の保険料は前年の所得で決まるので、退職した年に収入がなくても、前年に給与があれば、その水準で保険料がかかります。所得が低い世帯には応益分を7割、5割、2割減らす軽減もありますが、これも前年の所得で判定されます。
3つ目は「再就職が決まれば何もしなくてよい」という思い違いです。再就職して新しい会社の健康保険に入ったら、任意継続をやめる申し出か、国保をやめる届け出が必要です。届け出をしないと、保険料の請求が続いたり、二重に払ったりすることがあります。新しい会社の健康保険の情報が届いたら、すぐに手続きします。
退職のあとに働き方を変える人が知っておきたいこと
最後に、退職のあとにフリーランスとして独立する人や、在宅で業務委託の仕事を始める人に向けて、健康保険の選び方で押さえておきたい点を整理します。
業務委託の仕事を始めると、会社の健康保険には入りません。任意継続の2年間が終わったあとは、国保に入るのが基本です。2年後の国保の保険料は、その前の年の事業の所得で決まります。事業の所得とは、売上から経費を差し引いた金額のことです。つまり、独立した人の国保の保険料は、確定申告の内容で決まるということです。経費をきちんと記録して申告することが、保険料の面でも大切になります。
独立後の収入の見通しを立てるには、職種ごとの相場を知っておくと役に立ちます。ソフトウェア作成者の年収・単価相場では、システムやアプリを作る仕事の年収と業務委託の単価の目安を、公的な統計をもとに整理しています。文章の仕事なら、著述家,記者,編集者の年収・単価相場で、記者や編集者、ライターの年収と単価の水準を確かめられます。
業務の進め方を知るには、職種ごとの解説も参考になります。AIコンサル・業務活用支援のお仕事では、生成AIの導入や業務での活用を支援する仕事の内容と、求められる知識を紹介しています。独立したあとに報酬の支払いが遅れるといったトラブルに備えるなら、未払い報酬を回収する!弁護士の着手金・成功報酬と支払督促の流れ【2026年最新】で、支払督促などの回収の手順を確かめておくと安心です。
フリーランスや在宅ワークの市場を長く見てきた立場から言えば、独立して長く続く人ほど、保険料や税金のような「毎月必ず出ていくお金」を最初に把握しています。売上の額ばかり気にして、保険料と税金を後回しにすると、翌年の請求で慌てることになります。仲介の手数料が乗らない直接の取引ができれば、同じ予算でも受け手の手取りは厚くなりますが、その手取りから保険料が引かれることも含めて計算しておくことが大切です。
任意継続と国保のどちらが得かは、計算すれば答えが出ます。退職時の標準報酬月額、前年の所得、家族の人数、辞めた理由。この4つを手元にそろえて、両方の窓口で金額を確かめてから選んでください。分からないことは、協会けんぽの支部や市区町村の担当課に相談できます。制度は、きちんと調べた人の味方です。
よくある質問
Q. 任意継続と国民健康保険はどちらが安くなりますか?
人によって違います。任意継続は退職時の標準報酬月額(協会けんぽでは上限32万円)に保険料率をかけて決まり、扶養家族が何人いても保険料は増えません。国民健康保険は前年の所得と世帯の人数で決まります。扶養家族がいる人は任意継続、単身で前年の所得が低い人は国保が安くなりやすい傾向があります。
Q. 任意継続の手続きの期限はいつまでですか?
退職日の翌日から20日以内に、住んでいる都道府県の協会けんぽ支部へ資格取得申出書を提出します。20日目が土日や祝日の場合は翌営業日までで、郵送の場合は期限内に届く必要があります。退職日までに健康保険に続けて2か月以上加入していたことが条件です。期限を過ぎると任意継続には入れません。
Q. 会社都合で退職した場合、国民健康保険料は安くなりますか?
倒産や解雇などで離職した特定受給資格者や、雇い止めなどで離職した特定理由離職者で、離職日に65歳未満の人は、前年の給与所得を100分の30とみなして保険料を計算する軽減を受けられます。雇用保険受給資格者証などを持って市区町村の窓口で届け出る必要があります。
Q. 任意継続から国民健康保険に途中で切り替えられますか?
切り替えられます。現在の任意継続は、本人が希望すれば資格喪失の申し出によってやめられます。退職した翌年は前年の所得が下がるため、2年目は国民健康保険の方が安くなることがあります。切り替えるときは、市区町村で国民健康保険の加入手続きも忘れずに行います。
この記事について
編集部
監修:@SOHO編集部
2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを運営。生成AIで作成した下書きを、一次情報と照らし合わせて確認したうえで公開しています。

この記事を書いた人
@SOHO編集部
フリーランス・在宅ワークの専門メディア
@SOHOは2004年から続く、日本のフリーランス・在宅ワーク向け案件サイトです。記事は生成AIで下書きを作り、数値・固有名・出典を一次情報と照らし合わせる確認の手順を経て公開しています。
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