特別養護老人ホームへ転職するという選択|前の職場との落差と、決め手

朝比奈 蒼
朝比奈 蒼
特別養護老人ホームへ転職するという選択|前の職場との落差と、決め手

この記事のポイント

  • ✓特別養護老人ホーム転職を検討している方へ
  • ✓ユニット型と従来型で変わる働き方
  • ✓求人票で必ず確認したい項目までを

特別養護老人ホームへの転職を考えているなら、結論から先に言います。判断すべきは「特養かどうか」ではなく「ユニット型か従来型か」「夜勤帯に何人いるか」の2点です。この2つで、同じ特養という名前の施設でも働き方がまったく別物になります。給与だけを並べて比べても意味がありません。この記事では、特養という職場の中で実際に何が起きているのかを、制度の数字と現場の動き方の両面から書いていきます。

特養がいま抱えている人員の事情

特別養護老人ホーム、制度上の名称は介護老人福祉施設です。介護保険法にもとづく指定を受けた施設で、原則として要介護3以上の方が入所します。入所者は基本的にそこで最期まで暮らします。つまり、在宅復帰を目標にしないという点で、老健とは目的から違います。

まず市場の状況を押さえます。厚生労働省の介護サービス施設・事業所調査によれば、介護老人福祉施設の定員は全国で60万人規模に達しています。一方で、入所を待っている方の数も依然として大きく、直近の集計でも20万人を超える水準で推移しています。需要は明確にあります。

にもかかわらず、定員を減らして運営している施設が出てきています。理由は職員が集まらないからです。介護分野の有効求人倍率は全職業平均の3倍を超える水準が続いており、施設の側が選ばれる立場にあります。

正直なところ、これは転職する側にとって有利な状況です。条件を比較して、納得できない施設は断ってよい。面接で聞きたいことを聞いても、それで落とされることはほぼありません。むしろ何も聞かずに入る人のほうが、後で辞めています。

ただし、有利であることと、どこでもいいことは別です。特養は施設ごとの構造の差が大きく、その差は求人票の給与欄には出てきません。次から具体的に見ていきます。

ユニット型と従来型。ここで働き方が完全に分かれる

特養は建物の作りによって、大きく2つに分かれます。この違いを理解していない人が多いのですが、日々の業務量に直結します。

従来型は、多床室と呼ばれる4人部屋などが並び、食堂や浴室を共用する作りです。フロア全体を職員がチームで見ます。動線が短く、複数の職員が同じ空間にいるので、何かあればすぐに応援を呼べます。

ユニット型は、おおむね10人を1つのユニットとし、全室個室で、ユニットごとに共同生活室を持ちます。職員はユニットに固定で配置され、日中はユニットごとに常時1人以上を置くことが求められます。

ここで何が変わるか。ユニット型は、日中の大半を1人で過ごします。10人の食事、排泄、入浴の準備、記録、来客対応を1人で回す時間帯が出てきます。声をかければ隣のユニットに人はいますが、目の前に同僚はいません。

ケアの質という面ではユニット型のほうが個別性を出しやすく、入居者の生活リズムに合わせやすい。一方で、職員の孤立感は強くなります。新人がいきなりユニットに単独配置されて潰れる、という話は珍しくありません。

夜勤帯はもっとはっきり分かれます。従来型では入所者おおむね25人につき1人以上の夜勤者を置くことが基準です。ユニット型では、2ユニットに1人以上、つまり20人に1人が基準になります。

数字だけ見るとユニット型のほうが手厚く見えます。しかし実際には、ユニットが物理的に分かれているため、1人で2つのフロアを行き来することになります。ナースコールが2か所同時に鳴ったとき、どちらを先に取るかを毎晩判断することになる。従来型の25人のほうが楽だ、という声が現場に根強いのはこのためです。

求人票に「ユニット型」とだけ書いてあったら、夜勤帯に施設全体で何人が勤務しているかを必ず聞いてください。定員100人のユニット型で夜勤が5人なら基準どおり。7人いるなら余裕のある施設です。この差は、給与の2万円や3万円の違いより、続けられるかどうかに効きます。

特養の1日は、どう動いているのか

シフトは2交代が主流です。早番、日勤、遅番、夜勤の4つで回す施設が多く、代表的な時間帯は次の通りです。

早番が7時から16時。起床介助、朝食の配膳と食事介助、口腔ケア、排泄介助、朝の記録。朝は1日でいちばん密度が高い時間帯です。

日勤が9時から18時。入浴介助が中心になります。特養は週2回の入浴が基本で、機械浴が必要な方も多いため、午前と午後で入浴担当が動き続けます。並行して、家族対応、受診の付き添い、カンファレンス、ケアプランに関する記録が入ります。

遅番が11時から20時。昼食、午後の排泄、おやつ、夕食、就寝介助。夕方から就寝までの時間帯は、帰宅願望や不穏が出やすく、認知症のある方の対応に時間が取られます。

夜勤は16時30分から翌朝9時30分といった16時間拘束の2交代が一般的です。夕食後の就寝介助から始まり、消灯後は2時間おきの巡視、体位変換、おむつ交換、ナースコール対応。明け方から起床介助と朝食準備に入ります。

夜勤で何が起きるか。いちばん重いのは、判断を1人でしなければならない場面です。特養に医師は常駐しません。嘱託医が定期的に訪問する形で、夜間は看護職員がオンコール対応をします。つまり、入所者の状態が変わったとき、まず見て、記録して、看護職員に電話するかどうかを決めるのは介護職員です。

呼吸が浅い、いつもと顔色が違う、吐いた、転倒した。この判断の重さが、他の介護現場との最大の違いだと思います。

そして、看取りがあります。特養は終の住処ですから、状態が悪化しても病院に移さず、施設で最期を迎える方針を家族と共有していることが多い。看取り介護加算という仕組みがあり、医師、看護職員、介護職員、生活相談員が合意のうえで計画を立てて対応します。

夜勤中に看取りの時間を迎える可能性がある。これは求人票には書かれませんが、特養で働くということの中身です。事前に自分がそれを引き受けられるかを考えておいたほうがいい。

前の職場ごとに、感じる落差が違う

特養への転職者は、どこから来るかで感じるギャップが違います。よくあるパターンを整理します。

デイサービスから移った場合。いちばん大きいのは、利用者が帰らないことです。デイは夕方に送り出して1日が終わりますが、特養は生活の場なので24時間が続きます。夜勤が入り、生活リズムが崩れます。身体介護の比率も跳ね上がります。デイでは自力歩行できる方が中心でも、特養は要介護3以上、つまり移乗に全介助が必要な方が多数派です。腰への負担が段違いになります。

訪問介護から移った場合。1対1から1対多への変化です。訪問では利用者のペースに合わせられますが、施設では時間内に全員を終わらせる必要があります。そして記録の量が増えます。訪問介護記録に加えて、施設では日誌、ケース記録、バイタル記録、事故報告、ヒヤリハットが日常的に発生します。逆に、移動時間がなくなり、悪天候でも収入が変わらない点は安定と感じる人が多い。

病院や老健から移った場合。医療的処置が減ります。老健は在宅復帰が目的でリハビリ職が常駐し、看護師の配置も手厚い。特養にはその手厚さがありません。その代わり、同じ方を何年も見続けます。「治す」ではなく「暮らしを支える」への転換に馴染めるかどうかが分かれ目になります。

有料老人ホームから移った場合。入居者層が変わります。有料は施設と入居者の直接契約で、比較的自立度の高い方が入っていることもありますが、近年は重度化が進んでいるという指摘もあります。

ただし、近年は住宅型有料老人ホームでも要介護度の高い入居者が増加しているとの報告もあります。 厚生労働省「有料老人ホームの現状と課題・論点について」(2024年)によると、住宅型有料老人ホームでは要介護3以上の入居者割合が約56%に達しており、10年前の約49%から増加傾向にあります。 転職を検討する際は、施設の入居者層や実際の業務内容を確認しておくことをおすすめします。 出典: crie-hukushi.com

つまり、有料と特養の入居者像は以前ほどかけ離れていません。それでも決定的に違うのは、特養は入所判定を施設が単独で決められないという点です。市町村や施設の入所検討委員会が、緊急性や介護度をもとに優先順位を決めます。施設側が「この方は対応が難しいので」と選ぶことができない。結果として、対応の難しいケースが集まります。

給与は介護施設の中で高い部類。ただし内訳を見ること

数字から入ります。厚生労働省の介護従事者処遇状況等調査を見ると、介護老人福祉施設に勤務する介護職員の平均給与額は、介護サービスの種別の中で上位に位置しています。常勤職員の平均月給は34万円前後という水準で、訪問介護やデイサービスより高く出ます。

高い理由は3つあります。

1つ目は夜勤手当です。1回あたり5,000円から8,000円が相場で、月4回から5回入れば月給に3万円前後が上乗せされます。逆に言えば、平均給与が高いのは夜勤を含んだ数字だということです。日勤のみの働き方を希望するなら、この分は乗りません。

2つ目は処遇改善の加算です。2024年6月から、介護職員処遇改善加算、特定処遇改善加算、ベースアップ等支援加算の3つが介護職員等処遇改善加算として一本化されました。施設が高い区分を取得しているほど、職員に配分される原資が大きくなります。面接で「処遇改善加算は何区分を取っていますか」と聞いてください。答えられない施設は、正直どうかと思います。

3つ目は経営主体です。特養を運営できるのは、原則として社会福祉法人と地方公共団体に限られます。株式会社は特養を単独で運営できません。社会福祉法人は独立行政法人福祉医療機構の退職手当共済に加入していることが多く、勤続年数に応じた退職金が積み上がります。長く働く前提なら、この差は無視できません。

一方で、注意点もあります。求人票の月給に処遇改善手当や夜勤手当が含まれている場合、基本給が低く設定されていることがあります。賞与や退職金は基本給を基準に計算されるので、同じ月給でも生涯の受取額が変わる。基本給がいくらかを必ず分解して確認してください。

求人票と面接で確認すべき7項目

ここまでの内容を、実際に使える形にまとめます。

1つ目、ユニット型か従来型か。併設している施設もあります。自分がどちらに配属されるかを確認してください。

2つ目、定員と介護職員の実配置数。基準は入所者3人に対して介護職員と看護職員の合計で1人以上ですが、これは最低ラインです。実際には2人に1人程度を配置している施設が多く、そこに届いていない施設は現場が厳しい。「定員100人に対して、介護職員は常勤換算で何名ですか」と聞くのが正確です。

3つ目、夜勤の体制。夜勤帯に施設全体で何人いるか、1人あたり何人を見るか、夜勤専従者がいるか、月の夜勤回数の上限は何回か。

4つ目、入浴の体制。週何回か、機械浴の台数、入浴専任の職員がいるか。入浴介助は身体負担がいちばん大きい業務なので、ここに専任を置いているかどうかで疲労がまるで違います。

5つ目、看取りの実績と方針。年間何件の看取りを行っているか、看取り介護加算を算定しているか、夜間のオンコール体制はどうなっているか。

6つ目、記録の方式。紙か、介護記録システムか、インカムを使っているか。記録の電子化が進んでいる施設は、残業時間が短い傾向にあります。

7つ目、処遇改善加算の区分と、基本給の金額。前述の通りです。

書類の話も付け加えます。転職活動では職務経歴書が必要になりますが、介護職の方は「何をどう書けばいいか分からない」と止まってしまうことが多い。

職務経歴書は、仕事の経験や身につけたスキルをアピールする重要な書類。介護業界で転職する方向けに、書き方・例文・フォーマットをまとめました! 出典: kaigo-kyuujin.com

書き方のコツを1つだけ挙げるなら、担当した人数と介護度を数字で書くことです。「入居者20名のユニットを担当」「平均要介護度4.1」「夜勤は月5回、1人で2ユニット40名を担当」。この形にすると、読む側は即座に力量を判断できます。書き上げた職務経歴書を第三者に見てもらいたい方は、働く人の相談に応じる国家資格であるキャリアコンサルタントの役割を知っておくと、相談先を選ぶ手がかりになります。

特養は介護職員だけで回っていない。多職種の顔ぶれ

特養に配置されている職種を整理しておきます。ここを知らずに入ると、誰に何を相談すればいいのかが分からず、余計な負荷を抱え込むことになります。

生活相談員。入所の相談、家族との窓口、行政とのやりとりを担当します。社会福祉士や社会福祉主事任用資格などを持つ人が就きます。入所判定の資料をまとめるのもこの職種です。家族から苦情が入ったとき、最初に受けるのは生活相談員であるべきで、介護職員が単独で抱える構造になっている施設は危険です。

介護支援専門員、いわゆる施設ケアマネです。入所者100人につき1人以上の配置が必要とされています。施設サービス計画を作り、モニタリングを行い、カンファレンスを回します。介護職員が日々の記録に書いた内容が、ここで計画に反映されます。つまり、記録を丁寧に書く人ほど、ケアプランに自分の見立てが乗ります。

看護職員。入所者30人以下なら1人以上、100人規模なら3人以上といった基準で配置されます。医療的な処置、服薬管理、受診の判断、夜間のオンコールを担います。特養の看護職員は日中のみの勤務が基本なので、夜間は電話でのやりとりになります。この関係が良好かどうかは、夜勤の心理的な負担を大きく左右します。

機能訓練指導員。理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、看護師、柔道整復師、あん摩マッサージ指圧師などが就ける職種で、1人以上の配置が必要です。老健と違ってリハビリ職が何人もいるわけではないので、日常生活の中での機能維持は介護職員の関わり方に委ねられる部分が大きくなります。

管理栄養士または栄養士。献立の作成、栄養ケア計画、嚥下状態に応じた食形態の調整を担います。食事介助中に「むせが増えた」と気づいたとき、報告先はここです。

嘱託医。常駐しません。週に1回か2回の訪問診療が一般的です。

この顔ぶれを見て分かる通り、特養は専門職が薄く広く配置された施設です。老健や病院に比べて医療職の密度が低い。その分、入所者の変化にいちばん早く気づく立場にいるのは介護職員です。気づいたことを言語化して伝える力が、そのまま施設の安全性になります。見学のときに、多職種が一緒に食事の様子を見ている施設は、連携が機能しています。

資格とキャリアは、特養の中でどう積み上がるか

特養は、資格を取りながら段を上がっていける職場としては分かりやすい構造を持っています。順に見ます。

入口は介護職員初任者研修です。130時間のカリキュラムで、通学と通信を組み合わせて1か月から4か月ほどで修了できます。無資格で入職し、働きながら取得させる施設が多くあります。

次が介護福祉士実務者研修です。450時間で、初任者研修修了者は一部が免除されます。喀痰吸引や経管栄養の基礎を学ぶ内容が含まれ、修了すると医療的ケアの一部に関われるようになります。

そして介護福祉士です。実務経験ルートの場合、従事期間3年以上かつ従事日数540日以上に加えて、実務者研修の修了が受験要件になります。国家試験は年に1回、合格すれば資格手当が付き、処遇改善加算の配分でも有利になります。特養は要介護度が高く医療的な対応も発生するため、実務経験を積む場としては密度が濃い職場です。

その先が分岐します。1つは介護支援専門員です。介護福祉士などの国家資格にもとづく実務経験が5年以上かつ900日以上で受験できます。合格後に実務研修を受けて登録します。現場から一歩引いて、計画を作る側に回る道です。

もう1つが現場の指導者ルートです。ユニットケアを行う施設ではユニットリーダー研修、認知症ケアでは認知症介護実践者研修、実践リーダー研修、そして認知症介護指導者養成研修という段があります。これらは都道府県などが実施するもので、受講には勤務先の推薦が必要な場合があります。

正直なところ、資格の並びだけ見ると道筋は整って見えます。しかし現実には、シフトの都合で研修に行かせてもらえないという壁があります。ここが施設選びの隠れた重要ポイントです。

面接では、直近1年間で何人が実務者研修や介護福祉士を取得したかを聞いてください。数字が出てくる施設は、勤務扱いで研修に行かせています。「本人のやる気次第です」という答えが返ってきたら、それは支援がないという意味だと受け取ったほうがいい。

費用の扱いも確認してください。実務者研修は自費だと10万円前後かかります。全額補助、一部補助、立て替えて一定年数勤務すれば返済免除、と施設によって扱いが分かれます。

入所が決まってから最初の1か月、特養の現場は何をしているか

特養は入所者が長く暮らす場所なので、入所の頻度は老健や有料老人ホームに比べて少なめです。その代わり、1人の入所にかける準備の重さが違います。そこで暮らし続けることが前提なので、最初の1か月でその人の生活の形を施設の中に作り直す必要があるからです。

入所の順番が回ってくると、生活相談員や施設ケアマネジャー、看護職員が、本人が今いる場所を訪ねて実態を確かめます。自宅にいる方なら自宅を、病院や老健にいる方ならその施設を訪問し、身体の状態、食事の形態、排泄の方法、夜間の様子、家族の意向を聞き取ります。ユニット型の特養では、この段階でユニットリーダーが同行することもあります。

入所の日からしばらくは、暫定のケアプランで介助を行いながら、その人の1日を細かく記録します。ユニット型の施設では、起床、食事、排泄、入浴、就寝といった生活の流れを時間ごとに書き出した記録シートを作り、本人のそれまでの暮らし方にできるだけ合わせる取り組みが広く行われています。朝はゆっくり起きる人なのか、夜は何時まで起きている人なのか。この記録を作る作業は、介護職員の日々の観察にかかっています。

最初の数週間は、環境の変化で状態が揺れやすい時期です。夜間に眠れない、食事が進まない、自宅に帰ると言って出口を探す。特に夜勤帯では、新しく入った方の居室を重点的に回ることになります。家族にとっても不安の大きい時期なので、面会や電話の対応が増えます。この時期の様子を記録し、看護職員やケアマネジャーと共有して、1か月ほどを目安に本来のケアプランに落とし込みます。

入所者が入院した場合の扱いも、特養ならではの話です。入院中も居室を一定期間確保し、退院後に戻れるようにする仕組みがあり、その間の空床を短期入所に使う施設もあります。入院が長引いて退所になると、次の方の入所準備が始まります。つまり、入院や看取りのあとに入所が続く時期があり、そのときは現場の負担が一時的に重なります。

転職を考えている人が面接で聞いておきたいのは、次の3点です。「年間の入所者数はどれくらいですか」「入所前の訪問に介護職員は同行しますか」「入所直後の夜勤で、体制を変えることはありますか」。年間の入所者数は、そのまま看取りや長期入院による退所の多さを映します。入所前の訪問に介護職員が関わる施設は、ユニットケアの考え方が現場まで浸透していることが多い。この3つを聞くと、その特養が入所者一人ひとりの生活にどこまで踏み込む施設なのかが見えてきます。

決め手はどこにあるか。長く続けている人の共通点

特養に移って続いている人と、1年以内に辞める人の差はどこにあるか。観察していると、はっきりした傾向があります。

続く人は、入る前に夜勤帯を見ています。見学を日中だけで済ませず、夕方から就寝介助の時間帯を見せてもらう。あるいは体験勤務を申し込む。ここで現実を見て納得した人は、入ってから落差に苦しみません。

続かない人は、給与と通勤時間だけで決めています。特養は平均給与が高く出るので、金額で選ぶと選ばれやすい。しかしその金額は夜勤込みの数字です。夜勤が体に合わなかった時点で、選んだ理由が消えます。

もう1つの分岐点が、看取りに対する構えです。特養では毎年、担当していた方を見送ります。悲しさをゼロにはできませんが、チームでカンファレンスを行い、振り返りの場を設けている施設では、職員が抱え込まずに済みます。「看取りのあとに振り返りの時間はありますか」という質問は、施設の成熟度を測る良い指標になります。

そして、体の管理です。腰痛は特養の職業病で、移乗介助の回数が桁違いに多い。スライディングボード、リフト、スタンディングマシンといった福祉用具を実際に使っているかどうかを見てください。導入していても、使う時間がないという理由で倉庫に眠っている施設があります。倉庫を見せてもらうのが確実です。

ここからは、フリーランスと在宅ワークの市場を20年見てきた運営者としての観察を書きます。介護の現場を辞める人が増えているのではなく、現場を続けるために収入の置き場所を分散させる人が増えている、というのが実感です。夜勤明けの日と公休を使って在宅の仕事を少し受ける。生活が職場1つに依存していない状態を作ると、職場に対する交渉の余地が生まれます。「この条件が変わらないなら辞める」と言える人と、言えない人では、同じ職場でも過ごし方が変わります。

もう1つ、運営者として見てきた限りでは、仲介の手数料が差し引かれない直接の取引に移った人ほど、同じ作業量でも手取りが厚くなります。依頼する側も同じ予算でより多く頼めるので、双方が得をする構造になっている。副収入を設計するなら、この点は知っておく価値があります。本業の給与がどの水準にあるかは、介護職員の年収・単価相場に統計にもとづく数字が整理されています。

転職そのものに迷いがあるときは、働く人の相談を受ける仕事の中身を整理した職場・転職・キャリア相談のお仕事を読むと、第三者にどんなことを相談できるのかの見当がつきます。

最後に、動く順番を示します。まず応募先の施設名で介護サービス情報公表システムを検索し、定員、職員数、加算の算定状況を確認する。次に見学を申し込み、夕方から就寝介助までを見せてもらう。そのうえで面接に臨み、上の7項目を聞く。ここまでやれば、入ってから「聞いていた話と違う」となる確率は大きく下がります。特養は施設ごとの差が極端に大きい職場です。だからこそ、調べた人が得をします。

よくある質問

Q. 特別養護老人ホームは未経験でも転職できますか?

可能です。介護職員初任者研修を修了していれば応募できる求人が多く、無資格可としている施設もあります。ただし特養は要介護3以上の方が中心で、移乗や入浴の全介助が日常業務になります。未経験で入るなら、夜勤の単独配置までにどれくらいの期間の同行研修があるかを面接で必ず確認してください。

Q. ユニット型と従来型では、どちらが働きやすいですか?

人によります。ユニット型は個別ケアがしやすい反面、日中も夜間も1人で過ごす時間が長く孤立しやすい構造です。従来型は同じフロアに複数の職員がいて応援を呼びやすい一方、集団的なケアになりがちです。夜勤帯に施設全体で何人勤務しているかを聞き、基準ぎりぎりでないかを確かめるのが判断の近道です。

Q. 特養の給与が高く見えるのはなぜですか?

夜勤手当が含まれているためです。夜勤1回あたり5,000円から8,000円が相場で、月4回から5回入れば3万円前後が上乗せされます。加えて2024年6月に一本化された介護職員等処遇改善加算の区分によっても原資が変わります。日勤のみを希望する場合は、この上乗せ分が付かない点に注意してください。

Q. 看取りに立ち会うのが不安です。避けられますか?

特養は終の住処であり、看取りは業務に含まれると考えてください。避けることは難しいですが、施設によって支え方が違います。看取り介護加算を算定しているか、夜間のオンコール体制が整っているか、看取り後に職員の振り返りの場があるかを確認すれば、抱え込まずに済む環境かどうかが判断できます。

この記事について

@SOHO
編集部

監修:@SOHO編集部

2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを20年運営。編集部が事実確認のうえ公開しています。

公開:2026年8月5日最終更新:2026年9月21日
朝比奈 蒼

この記事を書いた人

朝比奈 蒼@SOHO編集部

ITメディア編集者

IT系メディアで編集・ライティングを担当。クラウドソーシング業界の動向やサービス比較など、客観的な視点での記事を執筆しています。

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