TiDB Cloud(PingCAP)の情報漏洩|最大約5万件の項目とAPIキーの見直し方 2026

@SOHO編集部
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TiDB Cloud(PingCAP)の情報漏洩|最大約5万件の項目とAPIキーの見直し方 2026

この記事のポイント

  • ✓TiDB Cloud(PingCAP)の情報漏洩について
  • ✓2026年10月21日のPingCAP株式会社の発表をもとに
  • ✓日本国内で最大約5万件の漏えいした項目

分散データベース「TiDB Cloud」を提供するPingCAP株式会社は、2026年10月21日、第三者が不正に手に入れたアカウントの認証情報で同社の社内システムに入り込み、データを複製して持ち出したことで、日本国内で最大約5万件の個人情報が漏洩したと発表しました。漏洩したのは、TiDB Cloudのユーザー名とメールアドレス、SQLエディタの実行履歴、取引先の氏名・企業名・電話番号・注文内容、暗号化されたAPIキーのPublic Key部分などです。 TiDB Cloudへの不正アクセスと、クレジットカード情報の流出は確認されていないとされています。 TiDB Cloudを使っている人がまずすることは、APIキーの作り直し、アクセスログと組織のメンバーの確認、そしてPingCAPを名乗る偽のメールへの注意の4つです。

この記事では、PingCAP株式会社の日本語のお知らせと、同社の英語版のお知らせ、TiDB Cloudの公式ドキュメントをもとに、2026年10月21日時点で分かっていることと、利用者が画面のどこで何をすればよいかを順に説明します。開発を受けている在宅のエンジニアやフリーランスが、取引先にどう伝えるかも扱います。

TiDB Cloudの情報漏洩の概要(2026年10月21日時点)

TiDB Cloudは、PingCAPが提供するクラウド型のデータベースです。データベースとは、アプリやWebサービスのデータを整理して保存しておく仕組みのことです。TiDB Cloudでは、データベースのサーバーを自分で用意しなくても、管理画面からデータベースを作り、アプリから使えます。

今回の件で大事なのは、攻撃を受けたのが「利用者がデータを入れているデータベース」ではなく、「PingCAPの社内システム」だという点です。PingCAP株式会社の日本語のお知らせによると、同社と外部の調査機関がTiDB Cloudを調べた結果、TiDB Cloudへの不正アクセスは確認されていません。英語版のお知らせでも、TiDBに保存されたデータが影響を受けた証拠はないとしています。

一方で、PingCAPの社内システムには、TiDB Cloudを使う人のアカウント情報や、取引の情報、APIキーの一部が保存されていました。そのため、利用者のデータベースの中身は無事でも、利用者が誰で、どの会社に属し、どんな契約をしているかといった情報は外に出ています。

件数は「日本国内で最大約5万件」と発表されています。「最大」なので、実際の件数はこれより少ない可能性があります。お知らせでは、影響を受けたデータの種類はお客様によって異なり、すべての人に全部の項目が当てはまるわけではないとも書かれています。

PingCAP株式会社は、この件を「漏洩したことが判明しました」と書いています。「可能性がある」ではなく、データの複製が持ち出されたことを確認したうえでの発表です。外部の調査機関と一緒に、持ち出された記録も含めて調べたとしています。

公表の経緯:不正アクセスの期間と発表の日付

発表から分かる流れを、日付順に並べます。日本語のお知らせは期間を米国時間で書いています。

日付 出来事・発表 その時点で分かったこと
2026年9月9日〜10月7日(米国時間) 第三者が不正取得した認証情報で社内システムにアクセス データの複製が取得された
2026年10月7日 PingCAPが不正アクセスを認識 同日中に影響を受けた認証情報の無効化を開始
2026年10月10日 追加の認証情報の削除と、権限の見直し 英語版で説明。ストレージへのアクセスの記録も強化
2026年10月12日・13日 外部の調査会社が脆弱性4件を報告 英語版で説明
2026年10月14日 不正取得が確認された認証情報をすべて無効化 特定された不正アクセスの経路を遮断。脆弱性4件も修正
2026年10月20日 英語版のお知らせを公開(日本時間) 状況は10月19日時点のもの
2026年10月21日 日本語のお知らせを公開(日本時間0時8分) 日本国内で最大約5万件の個人情報の漏洩

日本語のお知らせは、発表の冒頭で次のように説明しています。

2026年9月9日から10月7日(米国時間、以下同じ)にかけて、第三者が不正取得したアカウントの認証情報を使用し、PingCAPの社内システムへのアクセス、データの複製を取得し、日本国内で最大約5万件の個人情報が漏洩したことが判明しました。 出典: pingcap.co.jp

PingCAPの英語版のお知らせは、2026年10月21日(日本時間)にも更新されています。日本語版と英語版で、書かれている内容の細かさが少し違います。英語版では、攻撃者がソースコードも取得したこと、外部の調査会社が本番のシステムを調べ、攻撃者がコマンドを実行したり、入り込んだ状態を続けたりした証拠は見つからなかったことが書かれています。

PingCAP株式会社は調査を続けており、新たな事実が分かり次第、順次更新するとしています。英語版では、どの利用者にどの情報が影響したかが確定したら、対象の利用者に直接知らせるとしています。2026年10月21日時点で、日本の利用者への個別の通知が始まったかどうかは、お知らせに書かれていません。

漏洩した項目と、流出していないとされるもの

日本語のお知らせの表を、漏洩した項目と、流出していないと明記されたものに分けて整理します。

区分 情報のまとまり 項目
漏洩した TiDB Cloudアカウント情報 ユーザー名、メールアドレス、組織・プロジェクトの関連付け、SQLエディタの実行履歴およびエラー情報(組織、プロジェクト、クラスタIDを含む)
漏洩した 取引関連情報(連絡先) 氏名、メールアドレス、企業名、電話番号
漏洩した 取引関連情報(契約条件) 注文内容、支払い条件、請求設定
漏洩した 認証情報 TiDB Cloud APIキーのPublic Key部分(暗号化されている)
流出していないと明記 認証情報 TiDB Cloud APIキーのPrivate Key部分
確認されていないと明記 クレジットカード情報 流出は確認されていない
確認されていないと明記 TiDB Cloud 不正アクセスは確認されていない

項目の中で、ほかの漏えいと比べて目を引くのが「SQLエディタの実行履歴およびエラー情報」です。SQLエディタとは、TiDB Cloudの管理画面の中で、データベースに命令を打ち込んで実行できる機能のことです。SQLは、データベースに「このデータを取り出す」「この表を作る」と指示するための言葉です。

実行履歴には、打ち込んだ命令の文がそのまま残ります。表の名前や列の名前から、どんなサービスを作っているかが分かることがあります。命令の中に、検索の条件として実在の人の名前やメールアドレスを書いていた場合や、データベースのユーザーを作るときにパスワードを書いていた場合は、その文字も履歴に含まれていた可能性があります。自分がSQLエディタで何を実行したかを思い出しておくことが、次の対策につながります。

もう1つ注意したいのが、取引関連情報の組み合わせです。氏名、企業名、電話番号に加えて、注文内容、支払い条件、請求設定まで含まれています。誰が、どのプランを、どんな条件で契約しているかが分かるため、請求書や支払いの連絡を装った偽のメールに使われやすい組み合わせです。英語版では、この区分に価格も含まれていたと書かれています。

APIキーのPublic Key部分が漏洩したことの意味

TiDB CloudのAPIキーは、プログラムからTiDB Cloudを操作するための鍵です。APIとは、プログラムどうしがやり取りするための窓口のことで、TiDB Cloudでは、データベースの作成やバックアップなどを管理画面を使わずに自動で行えます。

公式ドキュメントによると、APIキーはPublic Key(公開鍵)とPrivate Key(秘密鍵)の2つで1組になっており、APIを呼び出すときには両方が必要です。Private Keyは、作ったときに一度だけ表示され、その画面を離れると二度と全体を見ることはできません。

PingCAP株式会社の日本語のお知らせは、Public Key部分は暗号化されたうえで漏洩したものの、Private Key部分は流出していないとしています。

Private Key部分は流出していないため、流出したPublic KeyのみでTiDB Cloud操作はできません。 出典: pingcap.co.jp

英語版では、書き出された表に暗号化されたAPIキーの値が含まれていたこと、外部の調査会社が試した1件はそのままではAPIキーとして使えなかったことが説明されています。そのうえで、ほかに使える認証情報が出ていないかは、まだ調べている途中だとしています。攻撃者が出している主張についても、確かめられていないと書かれています。

つまり、2026年10月21日時点の発表では「Public Keyだけでは操作できない」が、「ほかの認証情報がすべて無事だった」とまでは確定していません。PingCAP株式会社が利用者に、APIキーを発行している場合はローテーションをお願いしているのはこのためです。ローテーションとは、古い鍵をやめて新しい鍵に取り替えることです。どちらに転んでも備えになるので、APIキーを発行している人は作り直しておくのが確実です。

PingCAP株式会社の対応

日本語のお知らせに書かれた、これまでの対応は次のとおりです。

  • 外部のセキュリティ専門会社と連携し、影響の範囲の検証、残っている危険の評価、侵入の経路の特定を行った
  • 流出が確認されたキーと、同社が管理する重要なキーを取り替えた
  • アカウントの権限を厳しくし、ネットワークの管理を見直した
  • クラウドのサービスに、新たな脅威を見つける仕組みを入れた
  • 法執行機関に届け出て、関係各国の監督当局に報告した

英語版では、さらに次の点が説明されています。2026年10月7日から影響を受けたアカウントと認証情報の多くを無効にし、10月10日までに残りの認証情報を削除して、クラウドのプロジェクトの間にあった広すぎる権限を取り除いたこと。外部の調査会社が10月12日から13日に報告した脆弱性4件を10月14日までにすべて直し、調査会社が修正を確かめたこと。今後は、認証情報の取り替えの範囲を広げ、コードの中に鍵が書かれていないかの点検や、大量のデータの書き出しを検知する仕組みを強めるとしています。

パスワードの初期化や、利用者のアカウントの一斉ログアウトといった対応は、2026年10月21日時点のお知らせには書かれていません。金銭的な補償についての記載もありません。原因となった認証情報が、どのようにして第三者の手に渡ったのかも、公表されていません。

自分が対象かを確かめる方法

日本語のお知らせは、影響を受けたデータの種類は人によって違うとしています。英語版では、利用者ごとの影響の範囲を調べている途中で、確定したら対象の利用者に直接知らせるとしています。

そのため、2026年10月21日時点で自分が対象かを確実に知る方法は、PingCAPからの個別の連絡を待つか、窓口に問い合わせるかのどちらかです。次のどれかに当てはまる人は、対象の可能性があるものとして動くのが安全です。

  • TiDB Cloudのアカウントを持っている
  • TiDB Cloudを有料で契約していて、契約や請求の担当者として名前や電話番号を登録している
  • 取引先の代わりに、TiDB Cloudの組織のメンバーとして招待されている
  • TiDB Cloudで、SQLエディタを使ったことがある
  • TiDB CloudでAPIキーを発行したことがある

PingCAPからの連絡が届いていないかを、TiDB Cloudに登録しているメールアドレスの受信箱で確かめます。会社のアドレスで登録した人は、会社の受信箱を見ます。PingCAPを名乗るメールが届いたら、後で説明する見分け方で本物かを確かめてから開きます。

TiDB Cloudの利用者がすること

PingCAP株式会社がお願いしている4つの対応を、TiDB Cloudの公式ドキュメントの手順と合わせて説明します。画面の名前は、2026年10月21日時点の公式ドキュメントの表記です。

APIキーを作り直す

APIキーを発行している人は、新しいキーを作り、プログラムの設定を新しいキーに切り替えてから、古いキーを削除します。公式ドキュメントによると、APIキーを作ったり削除したりできるのは、組織のOrganization Ownerの役割を持つ人だけです。

  1. TiDB Cloudの管理画面で、左上の切り替えから対象の組織を選ぶ
  2. 左のメニューで「Organization Settings」から「API Keys」を開く
  3. 「Create API Key」で新しいキーを作り、役割と範囲を設定する
  4. 表示されたPublic KeyとPrivate Keyを、安全な場所に保存する。Private Keyはこの画面でしか表示されない
  5. プログラムやCIの設定を新しいキーに書き換え、動くことを確かめる
  6. 「API Keys」の一覧で古いキーの行の「...」から「Delete」を選び、削除する

古いキーを先に消すと、そのキーを使っている自動の処理が止まります。切り替えを確かめてから消す順番にしておくと、サービスを止めずに済みます。この機会に、使っていないキーや、役割が必要以上に広いキーも整理しておきます。手順の詳細はTiDB CloudのAPIのドキュメントにあります。

アクセスの記録を確かめる

PingCAP株式会社は、TiDB Cloudと関連するクラウドのアカウントについて、不審なIPアドレスからのアクセスや、身に覚えのない操作がないかを確かめるよう求めています。

TiDB Cloudには、管理画面での操作を記録する「コンソール監査ログ」という機能があります。公式ドキュメントによると、この機能は初めは無効になっており、有効にした後の操作しか記録されません。記録が保存される期間は90日間です。見られるのはOrganization Ownerなど決まった役割の人だけです。

  1. 管理画面で対象の組織を選ぶ
  2. 左のメニューで「Console Audit Logging」を開く
  3. イベントの種類、操作の結果、期間で絞り込み、見覚えのない操作がないかを見る
  4. 必要なら「Download logs」でJSONかCSVの形で書き出し、記録として保存する

この機能を有効にしていなかった場合、過去の操作の記録は残っていません。その場合は、今から有効にしておくと、これから先の不審な操作に気づきやすくなります。手順はTiDB Cloudのコンソール監査ログのドキュメントに載っています。AWSやGoogle Cloudなど、TiDB Cloudとつないでいるクラウドのアカウントがある場合は、そちらのアクセスの記録もあわせて確かめます。

組織のメンバーと権限を見直す

TiDB Cloudでは、組織、プロジェクト、インスタンスの段階ごとに、メンバーに役割を割り当てます。組織の最も強い役割はOrganization Ownerで、メンバーの招待や削除、APIキーの管理、支払い情報の編集までできます。

PingCAP株式会社は、組織のメンバーと役割を確かめ、必要に応じて不要なアカウントの削除や権限の見直しを考えるよう求めています。退職した人や、契約が終わった外部の協力者のアカウントが残っていないか、Organization Ownerの役割を持つ人が必要以上に多くないかを確かめます。役割の考え方はTiDB Cloudのユーザーアクセスの管理のドキュメントで説明されています。

パスワードと多要素認証

今回のお知らせは、TiDB Cloudのパスワードが漏洩したとは書いていません。それでも、メールアドレスとユーザー名が知られた以上、ログインを試されるおそれはあります。メールアドレスとパスワードでTiDB Cloudに登録している人は、多要素認証を有効にしておくと安心です。多要素認証とは、パスワードに加えて、スマートフォンの認証アプリが出す使い捨てのコードでも本人であることを確かめる仕組みのことです。

公式ドキュメントによると、管理画面の左下から「Account Settings」を開き、「Multi-Factor Authentication」の「Enable」から設定できます。設定の途中で表示される使い捨ての復旧用のコードは、スマートフォンをなくしたときに必要になるので、安全な場所に保存します。GoogleやGitHub、Microsoftのアカウントでログインしている人は、そちらのアカウントで多要素認証を設定します。導入の考え方は、MFA(多要素認証)導入のメリットと製品比較|2026年の認証セキュリティ決定版で詳しく扱っています。

SQLエディタで実行した内容を思い出す

SQLエディタの実行履歴が漏洩した項目に入っているため、そこにパスワードや実在の人の情報を書いていなかったかを思い出します。データベースのユーザーのパスワードを命令の中に書いて実行したことがある場合は、そのパスワードを変えておきます。お客様の名前やメールアドレスを検索の条件に書いていた場合は、その情報を預かっている事業者として、どう扱うかを考える必要があります。

偽のメールと請求の連絡への備え

PingCAP株式会社は日本語のお知らせで、同社を装ったメールや、この件に関係する不審なメールが届く可能性があるとして注意を呼びかけています。あわせて、同社がメールでパスワードやアクセスキーを尋ねることはないと明言しています。

今回は、氏名、企業名、電話番号に加えて、注文内容や支払い条件、請求設定まで漏洩しているため、次のような偽の連絡に特に気をつけます。

  • 「請求先の口座が変わりました」として、別の口座に利用料を振り込ませる
  • 「契約の更新のため、カード情報を入力し直してください」として、偽の画面に誘う
  • 「漏洩の対応として、APIキーを確認させてください」として、Private Keyを送らせる
  • 「セキュリティの確認」として、ログイン画面に似た偽のページでパスワードを入力させる

本当の契約の内容や金額が書かれていると、信じてしまいやすくなります。振込先の変更の依頼が来たら、メールに書かれた連絡先ではなく、契約書や公式のサイトに載っている連絡先で確かめてから応じます。PingCAPがメールでパスワードやアクセスキーを尋ねることはないと明言しているので、求められたらその時点で偽物と判断できます。

不審なメールを受け取ったときは、返信やリンクのクリックを避けて、PingCAP株式会社のインシデント対応窓口に知らせるよう案内されています。社内で偽のメールを見分ける力を育てたいときは、社員のセキュリティ意識を向上させるフィッシングメール模擬訓練の効果|2026年最新の従業員教育ガイドが参考になります。

自分のメールアドレスが、今回以外の漏えいにも含まれていないかを調べる方法は、Have I Been Pwnedの使い方|メールアドレスとパスワードの漏洩を確認する方法と、大手クラウドの過去の漏洩で説明しています。開発の仕事で使うアドレスは多くのサービスに登録していることが多いので、一度調べておくと、どこから注意すべきかが見えてきます。

問い合わせ窓口

PingCAP株式会社は、この件の問い合わせ窓口を次のとおり案内しています。

項目 内容
窓口の名称 PingCAP株式会社 インシデント対応窓口
連絡方法 メール([email protected])
英語版のお知らせの窓口 メール([email protected])

電話番号と受付時間は、2026年10月21日時点のお知らせに載っていません。問い合わせるときは、TiDB Cloudに登録しているメールアドレス、組織の名前、契約しているかどうか、APIキーを発行しているかどうかを書いておくと、確認が進めやすくなります。

届いたメールに書かれた問い合わせ先が、お知らせに載っているアドレスと違う場合は、偽のメールを疑います。問い合わせ先は、メールの本文からではなく、お知らせのページを自分で開いて確かめます。

開発を受ける在宅エンジニアやフリーランスが気をつけること

TiDB Cloudは、受託の開発でも使われることがあります。取引先のサービスのデータベースをTiDB Cloudで作り、在宅のエンジニアやフリーランスが組織のメンバーとして招待されて運用している、という形です。この場合、自分のアカウントの対策だけでなく、取引先の情報を預かる立場として動く必要があります。

まず取引先に伝えること

取引先がTiDB Cloudを使っていることを、取引先の担当者が把握していないこともあります。開発や運用を任されている側から、先に連絡を入れます。伝えておきたいのは次の点です。

  • PingCAP株式会社の発表の内容(漏洩した項目、最大約5万件、TiDB Cloudへの不正アクセスは確認されていないこと)
  • 取引先のプロジェクトで、APIキーを発行しているかどうかと、作り直しの予定
  • SQLエディタを使っていたかどうかと、そこにお客様の情報やパスワードを書いていた可能性があるか
  • 組織のメンバーと役割の確認の結果
  • 請求や支払いの連絡を装った偽のメールへの注意

APIキーの作り直しや監査ログの確認は、Organization Ownerの役割がないとできません。取引先がOwnerを持っている場合は、作業の手順を伝えて、取引先の側で進めてもらう必要があります。

取引先への連絡の文面の例

連絡は、事実と、これからすることと、取引先にお願いしたいことを分けて書くと、相手が社内で報告しやすくなります。たとえば次のような形です。

〇〇株式会社 〇〇様

TiDB Cloudを提供するPingCAP株式会社が、2026年10月21日に、同社の社内システムへの不正アクセスにより、日本国内で最大約5万件の個人情報が漏洩したと発表しました。漏洩したのは、TiDB Cloudのアカウント情報、契約と請求の情報、SQLエディタの実行履歴、APIキーの一部です。TiDB Cloudのデータベースへの不正アクセスは確認されていないとされています。

御社のプロジェクトでは、APIキーを1つ発行しています。〇月〇日までに新しいキーに切り替え、古いキーを削除する予定です。あわせて、組織のメンバーと権限を確認し、結果をご報告します。

PingCAPを名乗る請求や振込先の変更の連絡が届いた場合は、メールの連絡先ではなく、契約書の連絡先でご確認ください。

このように、分かっていることと、まだ公表されていないことを分けて書いておけば、続報が出たときに差分だけを伝えれば済みます。取引先の担当者は、この文面をそのまま社内の報告に使えます。

個人情報保護委員会への報告をどう考えるか

個人情報保護委員会は、漏えいの報告が義務になる場合として、不正の目的をもって行われたおそれがある行為による漏えいを挙げ、その例の1つに不正アクセスを示しています。本人の数が1,000人を超える漏えいも、報告が義務になる場合の1つです。不正な目的で行われたおそれがある場合の報告の期限は、発覚した日から60日以内とされています。詳しくは個人情報保護委員会の「漏えい等の対応とお役立ち資料」に載っています。

今回、PingCAPの社内システムから漏洩した情報は、PingCAPが取り扱っていたものです。PingCAP株式会社は、関係各国の監督当局に報告したとしています。一方、SQLエディタの履歴に取引先のお客様の情報を書いていた場合、その情報をもともと扱っていたのは取引先です。取引先が自社として報告や本人への通知を考える必要があるかどうかは、書いていた情報の中身や人数で変わります。開発を受けている側が一人で決めず、事実を整理して取引先に渡し、取引先が判断できるようにします。法的に何をすべきかは事情で変わるため、必要に応じて取引先が専門家に確かめます。

契約と記録を見直す

業務委託の契約書や秘密保持の取り決めに、事故が起きたときの連絡の期限や方法が書かれていることがあります。まず手元の契約を見て、決まりがあればそれに従います。あわせて、どのサービスにどの取引先のアカウントがあり、誰がOwnerなのかを一覧にしておくと、次に同じようなことが起きたときにすぐ動けます。

預けている鍵と情報を棚卸しする

今回の件は、データベースの中身が無事でも、サービスの提供者の側に預けている情報や鍵から影響が出ることを示しました。クラウドのサービスを仕事で使う人は、提供者の側に何を預けているかを定期的に見直しておくと、事故が起きたときの影響を小さくできます。

棚卸しの手順の例を挙げます。

  1. 仕事で使っているクラウドのサービスを書き出す(データベース、サーバー、ファイルの共有、フォームなど)
  2. サービスごとに、登録しているメールアドレス、発行しているAPIキー、つないでいる外部のサービスを書き出す
  3. 使っていないAPIキーや、契約が終わった取引先のアカウントを削除する
  4. 管理画面での操作の記録が初めは無効になっているサービスでは、有効にしておく
  5. APIキーやパスワードを、コードや共有のドキュメントに直接書いていないかを確かめる

中小企業がこうした対策を進めるときの費用の考え方は、中小企業のサイバーセキュリティ対策2026|IT導入補助金で防御力を強化する方法で扱っています。取引先が対策の予算を組むときの材料にもなります。

フリーランスと在宅ワークの仲介を2004年から続けてきた@SOHOの運営の中で見てきた限りでは、開発の仕事で長く指名される人ほど、納品した後の鍵とアカウントの管理まで取引先と一緒に考えています。どのサービスにどの鍵があり、何かあったときに誰が何をするかを決めておく。こうした地道な準備が、手数料や単価の差よりも、次の仕事につながる信頼を生みます。データベースやクラウドを扱う開発の仕事に関心がある人は、アプリケーション開発のお仕事で仕事の内容と求められる技術を紹介しています。

情報セキュリティの対策そのものを仕事にしたい人には、AI・マーケティング・セキュリティのお仕事が参考になります。APIキーの取り替えや権限の見直しのような作業は、クラウドを使う会社であれば、どこでも起こりうる仕事です。

よくある質問

Q. TiDB Cloudに保存していたデータベースの中身も漏れたのですか?

PingCAP株式会社の2026年10月21日の発表では、同社と外部の調査機関がTiDB Cloudを調べた結果、TiDB Cloudへの不正アクセスは確認されていないとしています。漏洩したのは同社の社内システムにあったアカウント情報、取引関連情報、APIキーのPublic Key部分などです。ただし、SQLエディタの実行履歴は漏洩した項目に含まれているため、そこに書いた命令の文は外に出た可能性があります。

Q. APIキーのPublic Keyだけが漏れた場合も、作り直す必要がありますか?

発表では、Private Key部分は流出しておらず、Public Keyだけでは操作できないとしています。一方、英語版のお知らせでは、ほかに使える認証情報が出ていないかは調査中とされています。PingCAP株式会社はAPIキーを発行している利用者にローテーションをお願いしているので、新しいキーに切り替えてから古いキーを削除しておくのが確実です。

Q. 無料で試しただけのアカウントも対象になりますか?

発表では、影響を受けたデータの種類は利用者によって異なるとしており、無料か有料かでの区別は書かれていません。TiDB Cloudのアカウント情報が漏洩した項目に含まれているため、無料で試しただけの人も対象の可能性があると考えて、PingCAPを名乗る偽のメールに注意し、使っていないアカウントやAPIキーは整理しておくと安心です。

Q. PingCAPを名乗るメールが本物かどうか、どう見分ければよいですか?

PingCAP株式会社は、メールでパスワードやアクセスキーを尋ねることはないとしています。これらを求めるメールは、その時点で偽物と判断できます。振込先の変更やカード情報の再入力を求める連絡も、メールの連絡先ではなく契約書や公式のサイトの連絡先で確かめます。不審なメールは、返信やリンクのクリックを避けて、インシデント対応窓口の[email protected]に知らせます。

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監修:@SOHO編集部

2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを運営。生成AIで作成した下書きを、一次情報と照らし合わせて確認したうえで公開しています。

公開:2026年10月21日
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