菓子製造技能士になるには|受検の条件と自宅で教室や販売に生かす道


この記事のポイント
- ✓菓子製造技能士になるには
- ✓洋菓子か和菓子の技能検定に合格します
- ✓1級は実務7年が原則の受検資格で
菓子製造技能士になるには、国の技能検定である菓子製造の技能検定に合格する必要があります。洋菓子製造作業と和菓子製造作業の2つに分かれ、それぞれ1級と2級があります。
結論を先に書きます。まずは2級を取れ、が最初の目標です。受検には原則として2年以上の実務経験が必要で、試験は年1回、後期に行われます。令和8年度後期の受検申請の受付は2026年10月5日から16日までで、今まさに受付の期間中です。この記事では、受検の条件、試験の中身、合格までのロードマップを整理し、最後に資格を自宅での教室や販売に生かすときに必要な手続きまで見ていきます。
菓子製造技能士とはどんな資格か
菓子製造技能士は、職業能力開発促進法にもとづく技能検定に合格した人が名乗れる国家資格です。中央職業能力開発協会は、技能検定を次のように説明しています。
技能検定は、「働く人々の有する技能を一定の基準により検定し、国として証明する国家検定制度」です。技能検定は、技能に対する社会一般の評価を高め、働く人々の技能と地位の向上を図ることを目的として、職業能力開発促進法に基づき実施されています。 出典: javada.or.jp
技能検定は、令和8年3月3日現在、都道府県が実施する職種が111職種、指定試験機関が実施する職種が22職種あります。菓子製造は、都道府県が実施する職種の1つです。試験問題は中央職業能力開発協会が作り、受検の申請の受付や試験の実施は、各都道府県の職業能力開発協会が行います。
技能検定に合格すると、技能士と名乗れます。職業能力開発促進法では、技能士でない者は技能士という名称を用いてはならないと定めています。名乗るときは、合格した職種と等級を表示します。つまり「1級菓子製造技能士」「2級菓子製造技能士」のように名乗れるのは、実際にその級に合格した人だけです。
ここで、よく混同される資格との違いを整理しておきます。
| 資格 | 根拠の法律 | 何を証明するか |
|---|---|---|
| 菓子製造技能士 | 職業能力開発促進法 | 菓子を作る技能 |
| 製菓衛生師 | 製菓衛生師法 | 菓子製造に関わる衛生の知識 |
| 食品衛生責任者 | 食品衛生法の関係法令 | 営業施設の衛生管理を担う人 |
菓子製造技能士は「作る腕」の証明で、ほかの2つとは役割が違います。お店を開くときに必要になるのは、後で説明する食品衛生法の営業許可と食品衛生責任者です。菓子製造技能士は、お店を開くための必須の資格ではありません。
製菓衛生師との違いと、取る順番
菓子の仕事に関わる国家資格として、菓子製造技能士と並んでよく名前が挙がるのが製菓衛生師です。2つの違いと、どちらを先に取るかを整理しておきます。
製菓衛生師は、製菓衛生師法にもとづく資格で、菓子の製造に関わる衛生の知識を持つことを証明するものです。都道府県が行う試験に合格して免許を受けます。製菓の専門学校で学んで受験する人も多い資格です。
菓子製造技能士は、ここまで見てきたとおり、菓子を作る技能を証明する資格です。実務の経験を積んでから、実技試験で腕を見られます。
つまり、製菓衛生師は「衛生の知識」、菓子製造技能士は「作る腕」の証明です。どちらを先に取るかは、自分のいる段階で決まります。製菓の専門学校で学んでいる人や、これから現場に入る人は、まず製菓衛生師で衛生の基礎を固め、現場で2年の経験を積んだら菓子製造技能士の2級に挑戦する、という順番が自然です。すでに現場で長く働いている人は、腕を証明する菓子製造技能士から取る人もいます。
将来、自分の店や教室を開きたい人にとっては、製菓衛生師の資格があると、食品衛生責任者になるための講習が要らない場合があるという利点もあります。腕と衛生の両方の裏づけを持つことが、開業の準備としては理想的です。
洋菓子と和菓子、2つの作業と2つの等級
菓子製造の技能検定は、作業ごとに分かれています。
| 作業 | 等級 |
|---|---|
| 洋菓子製造作業 | 1級、2級 |
| 和菓子製造作業 | 1級、2級 |
自分が働いている店や、これから目指す道に合わせて、洋菓子か和菓子のどちらかを選びます。両方の作業に合格することもできます。3級はなく、2級が最初の等級です。
技能のレベルは、技能検定の等級区分で決まっています。1級は上級の技能者、2級は中級の技能者が通常持っているべき技能と知識が基準です。2級は一通りの菓子を一人で作れる段階、1級は難しい技法も含めて任せられる段階、と考えると分かりやすいでしょう。
受検の条件は実務経験が基本
技能検定の受検には、原則として検定職種に関する実務経験が必要です。中央職業能力開発協会の案内では、必要な実務経験の年数は次のとおりです。
| 等級 | 必要な実務経験(原則) |
|---|---|
| 1級 | 7年以上 |
| 2級 | 2年以上 |
ただし、職業訓練の経歴や学歴によって、必要な年数が短くなる場合があると案内されています。たとえば、製菓の専門学校などで関連する学科を修めた人は、実務経験の年数が短縮される場合があります。2級に合格したあとに1級を受ける場合も、必要な年数が変わります。自分がどの条件に当たるかは、厚生労働省のホームページか、住んでいる都道府県の職業能力開発協会で確かめてください。
実務経験とは、つまり菓子の製造の仕事に実際に従事した期間のことです。洋菓子店や和菓子店、製菓工場、ホテルの製菓部門などで、菓子を作る仕事をした年数が数えられます。
ここで、まずは2級を取れ、と書いた理由がはっきりします。2級は原則2年の実務で受けられ、1級は原則7年です。現場に入って2年たったら2級に挑戦し、合格したら1級までの道のりを計算し直す。この順番が、無駄のないロードマップです。
令和8年度後期の日程
菓子製造の技能検定は、令和8年度は後期に実施されます。中央職業能力開発協会が公表している日程のうち、後期の部分は次のとおりです。
| 項目 | 令和8年度後期 |
|---|---|
| 実施公示 | 2026年9月1日 |
| 受検申請の受付 | 2026年10月5日から10月16日まで |
| 実技試験の問題の公表 | 2026年11月27日 |
| 実技試験 | 2026年12月4日から2027年2月14日までの期間 |
| 学科試験 | 2027年1月から2月の統一実施日 |
| 合格発表 | 2027年3月12日 |
受検申請の受付は10月16日までです。受付は都道府県の職業能力開発協会が行っていて、申請書の取り寄せ方や提出の方法は都道府県ごとに違います。この時期に受けたい人は、すぐに住んでいる都道府県の協会に問い合わせてください。実技試験の具体的な日にちも、都道府県ごとに決まります。
受検手数料も都道府県ごとに定められています。申請書と一緒に案内されるので、受付の時点で確かめてください。
実技試験の課題と時間
菓子製造の技能検定でいちばん大きな山は、実技試験です。中央職業能力開発協会が公表している令和8年度後期の実技試験の概要は次のとおりです。
洋菓子製造作業は、次の課題です。
| 等級 | 課題 | 時間 |
|---|---|---|
| 1級 | 2種類のボンボンショコラ(トリュフ、モンブラン)の製造、デコレーションケーキの仕上げ | 標準3時間30分、打切り3時間45分 |
| 2級 | ビスキュイ ア ラ キュイエールを作って3つの形状に絞る、アングレーズ式バタークリームを作って5つの形状に絞る、デコレーションケーキの仕上げ | 標準2時間15分、打切り2時間30分 |
ビスキュイ ア ラ キュイエールとは、つまり卵の泡立てを生かした軽い生地を絞り袋で絞って焼く菓子のことです。アングレーズ式バタークリームとは、卵黄と牛乳で作るソースをもとにしたバタークリームのことです。2級は、生地とクリームという洋菓子の基本の部品を正確に作り、きれいに絞れるかを見る課題になっています。
和菓子製造作業は、次の課題です。
| 等級 | 課題 |
|---|---|
| 1級 | 織部模様の薯蕷饅頭5個の製造、練り切り製品(はさみ菊)1個の仕上げ、羊かんの紋様埋め込み加工・餡すり込み加工と扇形羊かんの包丁加工の仕上げ(標準3時間、打切り3時間30分) |
| 2級 | 小麦饅頭5個の製造、練り切り製品(斜めへら返し切り菊)4個の仕上げ、どら焼きの皮10枚の製造など |
薯蕷饅頭とは、つまり山芋をすりおろして生地に使う上品な饅頭のことです。練り切りとは、白あんなどを練って色を付け、花などの形に細工する上生菓子のことです。
実技試験の時間には「標準時間」と「打切り時間」があります。打切り時間まで作業できますが、標準時間を超えた時間に応じて減点されます。つまり、時間内に仕上げる段取りの力も採点の対象です。
これらの課題は、年度ごとに公表される概要で確かめられます。令和8年度後期の場合、実技試験の問題は2026年11月27日に公表される予定です。
受検申請の手順
受検申請は、住んでいる都道府県の職業能力開発協会に対して行います。一般的な流れは次のとおりです。
- 都道府県の職業能力開発協会の案内で、実施する職種と作業、受付の期間を確かめる
- 受検申請書を取り寄せる(協会の窓口、郵送、ホームページからのダウンロードなど、方法は都道府県で違う)
- 実務経験の年数など、自分の受検資格を確かめて申請書に記入する
- 受検手数料を納める
- 受付の期間内に、申請書を協会に提出する
- 受検票と、実技試験の日時・会場の案内を受け取る
申請書には、これまでの実務経験を書く欄があります。勤めた店や会社の名前と、菓子の製造に従事した期間を正確に書きましょう。勤め先によっては、証明が必要になる場合もあります。
受付の期間は約2週間と短めです。令和8年度後期なら10月5日から16日までなので、期間に気づいたら早めに動くことが大切です。来年度以降に受ける人は、令和8年度が9月1日に実施の公示、10月に受付という流れだったことを目安に、夏の終わりごろから都道府県の協会の案内を確かめておくと準備しやすくなります。
学科試験の形式
学科試験は、技能検定の等級ごとに形式が決まっています。
| 等級 | 形式 | 問題数 | 時間 |
|---|---|---|---|
| 1級 | 真偽法と四肢択一法 | 50題 | 1時間40分 |
| 2級 | 真偽法と四肢択一法 | 50題 | 1時間40分 |
真偽法とは、つまり文章が正しいか誤っているかを答える形式のことです。四肢択一法は、4つの選択肢から1つを選ぶ形式です。
学科試験では、菓子の製造に必要な知識が問われます。現場で毎日作っている人でも、材料の性質や衛生の決まりを理屈で説明できるかは別の話です。実技の練習と並行して、学科の知識も固めておく必要があります。
中央職業能力開発協会は、過去の技能検定の試験問題を公開するサイトも運営しています。学科試験の対策では、まず過去の問題に目を通し、出題の傾向をつかむのが近道です。
過去の問題と公表される概要の使い方
技能検定の準備で頼りになるのが、公表される資料です。上手に使うと、練習の効率が大きく変わります。
実技試験については、毎年度、課題の概要が公表されます。令和8年度後期の概要も、課題の内容と標準時間、打切り時間が示されています。課題は年度によって変わることがあるので、受ける年度の概要を必ず確かめ、前の年の課題だけで練習を進めないようにしましょう。
学科試験については、中央職業能力開発協会が過去の試験問題を公開するサイトを運営しています。真偽法と四肢択一法の問題に慣れるには、実際の問題を何回分か解いてみるのが一番です。間違えた問題は、なぜ間違えたのかをノートに書き、同じ分野の知識を教科書や職場の先輩の話で補っていきます。
実技と学科の両方に合格して、はじめて技能士になれます。実技の練習に時間を取られがちですが、学科の対策も早めに始めておくと、直前に慌てずに済みます。
合格までのロードマップ
菓子製造技能士になるまでの道筋を、段階ごとに整理します。
ステップ1は、菓子の製造の現場に入ることです。洋菓子店、和菓子店、製菓工場など、菓子を作る仕事に就き、実務経験を積み始めます。製菓の専門学校で学んでから現場に入る人は、学歴によって必要な実務経験の年数が短くなる場合があります。
ステップ2は、実務2年を目安に2級を受けることです。受検の前に、公表された実技の課題を、本番と同じ時間で繰り返し練習します。職場の先輩に見てもらい、仕上がりの基準を確かめておくと効果的です。
ステップ3は、2級に合格したあと、1級までの道のりを確かめることです。2級の合格者は、1級の受検に必要な実務経験の年数が変わる場合があります。都道府県の協会で、自分の場合の条件を確認しましょう。
ステップ4は、1級への挑戦です。1級の課題は、ボンボンショコラや薯蕷饅頭、羊かんの細工など、高度な技法を含みます。現場で任される仕事の幅を広げながら、課題の技法を自分のものにしていきます。
インフラの仕事で言えば、2級は「決められた手順で構築できる」段階、1級は「状況に合わせて設計から任せられる」段階です。いきなり1級を目指すより、2級で基礎を固めるほうが、結果的に早く1級にたどり着きます。
課題ごとの練習の進め方
実技試験の課題が公表されたら、本番に向けた練習を始めます。洋菓子2級を例に、練習の進め方を手順で整理します。
- 課題を部品に分ける(ビスキュイの生地、バタークリーム、デコレーションの仕上げ)
- 部品ごとに、時間を測りながら1つずつ作る
- うまくいかない部品だけを、日を変えて繰り返し練習する
- 部品をつなげて、標準時間内に通しで作る練習をする
- 仕上がりを写真に撮り、職場の先輩に評価してもらう
ポイントは、最初から通しで作らないことです。全部を通して作ると、どこで時間を失っているのかが分かりにくくなります。部品ごとに時間を測ると、弱いところがはっきりします。
和菓子2級も同じ考え方です。饅頭の包み、練り切りの細工、どら焼きの皮の焼きを、それぞれ部品として練習します。練り切りの菊の細工のように、数をそろえる課題は、1つ目と4つ目で形が変わらないかを確かめながら練習しましょう。
練習の記録を残すのも効果的です。日付、作った部品、かかった時間、うまくいかなかった点を書いておくと、試験の直前に見返して、注意点を確認できます。
実技試験で失敗しやすい点
実技試験で点を落としやすいポイントを、事前に知っておきましょう。
1つ目は、時間の配分です。標準時間を超えると減点されるので、課題の順番と、焼き時間や冷やす時間を見込んだ段取りを組んでおく必要があります。生地を焼いている間にクリームを作る、といった並行作業の組み立てが、合否を分けます。
2つ目は、形と大きさのそろい方です。2級の洋菓子なら決められた形状に絞る課題、和菓子なら饅頭を5個、練り切りを4個、どら焼きの皮を10枚と、同じものを複数作る課題が多くあります。1つだけ上手にできても、数がそろっていなければ評価は上がりません。
3つ目は、衛生の扱いです。作業台の清潔さ、手洗い、道具の扱いも、菓子を作る技能の一部です。急いでいると、手順が雑になりがちです。
4つ目は、本番の環境の違いです。試験会場の設備は、普段使っているオーブンや作業台と違うことがあります。火の通り方や生地の状態を見ながら調整する力も求められます。
失敗しやすい点への対策は、本番と同じ時間で通し練習を繰り返すことに尽きます。最初は時間内に終わらなくても、段取りを見直すたびに短くなっていきます。
受検を職場に相談するときのポイント
菓子製造の技能検定は、職場の協力があると準備がぐっと楽になります。相談するときのポイントを整理します。
1つ目は、実務経験の確認です。申請書に書く実務経験の期間や内容は、勤め先が把握しています。証明が必要な場合に備えて、早めに受検したいことを伝えておきましょう。
2つ目は、練習の場所と材料です。実技の課題は、家庭の設備では練習しにくいものもあります。営業時間外に店の厨房で練習させてもらえるか、材料をどう負担するかを相談できると、本番に近い環境で練習できます。
3つ目は、試験の日の休みです。実技試験と学科試験は、平日に行われることもあります。試験の日程が決まったら、すぐに休みの相談をしておきましょう。
4つ目は、受検の費用です。職場によっては、受検手数料を負担してくれたり、合格後に資格手当を出してくれたりする場合があります。会社の制度を確かめておくと、受検の後押しになります。
職場にとっても、技能士がいることは、店の技術の高さを示す材料になります。受検したいという気持ちを伝えることは、職場への前向きな提案でもあります。
菓子製造技能士に向いている人
菓子製造技能士を目指すのに向いているのは、同じ作業を同じ品質で繰り返すことに喜びを感じる人です。試験の課題も、店の仕事も、同じ形と味を何度も正確に作ることが基本です。
段取りを考えるのが好きな人にも向いています。焼く、冷やす、絞る、仕上げるという工程を、限られた時間の中でどう並べるか。この段取りの力は、試験でも現場でも評価されます。
そして、衛生に気を配れる人であることが欠かせません。お菓子は、人が口にする物です。手洗いや道具の清潔さといった基本を、忙しいときほど守れる人が、長く信頼される職人になります。
合格後に生かせる働き方
菓子製造技能士の資格を取ったあと、どんな働き方に生かせるのかを整理します。
1つ目は、今の職場での評価です。技能検定は国として技能を証明する制度で、職場によっては資格手当や昇格の判断材料になります。製菓の現場で責任者を任される場面でも、技能士の資格は分かりやすい裏づけになります。
2つ目は、転職での強みです。洋菓子店や和菓子店、ホテル、製菓工場への転職で、職種と等級が明確な国家資格は、経験の年数とあわせて技能を示す材料になります。
3つ目は、教える仕事です。製菓の教室の講師や、専門学校の実習の補助など、技能を人に伝える仕事でも、技能士の資格は信頼の裏づけになります。
4つ目は、自宅での教室や販売です。この道に進むときは、資格とは別に、食品衛生法の手続きが必要になります。このあとの「自宅で教室や販売に生かすときに必要な手続き」の節で詳しく見ていきます。
合格した後も技能を磨き続ける
技能検定に合格したら終わり、ではありません。菓子の世界は、新しい材料や技法、流行が次々に生まれます。合格したあとも技能を磨き続けることが、技能士としての価値を保つことにつながります。
1つ目は、上の等級への挑戦です。2級に合格した人は1級を、1級に合格した人は、洋菓子と和菓子のもう一方の作業に挑戦するという道もあります。
2つ目は、若い職人に教えることです。自分が試験で苦労した点を、後輩に伝えると、自分の技能の理解も深まります。職場で技能検定を目指す後輩の練習を見てあげることは、店全体の技術を高めることにもなります。
3つ目は、外の世界に触れることです。ほかの店の菓子を食べ歩く、講習会に参加する、といった経験が、自分の菓子づくりに新しい発想をもたらします。
自宅で教室や販売に生かすときに必要な手続き
菓子製造技能士の資格があれば、自宅で作ったお菓子をすぐに売れる、と考える人がいます。これは誤りです。お菓子を作って売るには、技能士の資格とは別に、食品衛生法の営業許可が必要です。
食品衛生法では、都道府県が施設の基準を定めるべき営業を政令で決めていて、その中に菓子製造業が入っています。菓子製造業とは、菓子(パンやあん類を含む)を製造する営業のことです。こうした営業を行おうとする人は、都道府県知事の許可を受けなければなりません。許可の窓口は、住んでいる地域を管轄する保健所です。
営業許可を受けるには、施設が都道府県の定める基準に合っている必要があります。家庭の台所をそのまま使うのは一般に難しく、住居部分と区切られた製造のための部屋や、専用の手洗いの設備などを求められることが多くあります。基準の細かな中身は都道府県によって違うので、設備を整える前に、必ず保健所に図面を持って相談してください。工事を終えてから基準に合わないと分かると、やり直しの費用がかかります。
また、営業の施設ごとに、衛生管理を担う食品衛生責任者を定めておく必要があります。食品衛生責任者は、一般に都道府県などが行う講習を受けて資格を得られます。製菓衛生師などの資格を持っている人は、講習を受けずに食品衛生責任者になれる場合があります。
販売するお菓子に、原材料やアレルギーの原因になる食品などを正しく表示することも求められます。表示の決まりは食品表示法で定められていて、包装して売る場合には特に注意が必要です。
販売を始める前に確かめること
自宅で作ったお菓子を売る前に、確かめておきたいことをチェックリストにまとめます。
- 保健所に事前に相談し、菓子製造業の許可が必要かどうかと、施設の基準を確かめたか
- 施設の工事を、保健所の確認を受けてから始めたか
- 食品衛生責任者の資格を取ったか、または資格を持つ人を責任者に決めたか
- 販売する商品の表示(名称、原材料、アレルギーの原因になる食品など)を正しく作ったか
- 売る場所(店頭、イベント、ネット販売など)ごとに必要な手続きを確かめたか
ネットで販売する場合は、通信販売の決まりとして、事業者の名前や連絡先などを表示する必要もあります。売り方によって必要な手続きが増えるので、1つずつ確かめながら進めましょう。
手続きは多く見えますが、保健所は相談に乗ってくれる窓口です。図面を描く前の段階で相談すると、基準に合った設計を最初から考えられます。
営業の許可には有効期間があることも覚えておきましょう。食品衛生法では、都道府県知事は許可に5年を下らない有効期間などの条件を付けることができると定めています。許可を受けたら、有効期間の満了日を記録しておき、更新の手続きを忘れないようにしてください。資格の期限と違い、許可の期限が切れると営業そのものができなくなります。
自宅の教室で気をつけたい点
自宅でお菓子の教室を開く場合も、注意点があります。
教室で生徒が自分で作ったお菓子を、その場で食べたり持ち帰ったりする形なら、営業許可の扱いはケースによって変わります。一方、講師が作ったお菓子を生徒に販売する、教室の料金に講師が作ったお菓子の代金が含まれている、といった形では、菓子製造業の許可が必要になる場合があります。教室の形を決めたら、開く前に保健所に相談して、許可が必要かどうかを確かめておきましょう。
アレルギーへの配慮も欠かせません。生徒に事前にアレルギーの有無を聞き、使う材料を伝えておくことは、教室を安全に運営するための基本です。
教室の案内では、技能士の資格を正しく表示しましょう。職業能力開発促進法では、技能士と名乗るときは合格した職種と等級を表示し、合格していない職種や等級を表示してはならないと定めています。「2級菓子製造技能士(和菓子製造作業)」のように、正確に書くのが信頼につながります。
技能を在宅の仕事に広げる道
菓子製造技能士の技能は、作って売る以外の形でも仕事につながります。在宅で取り組みやすい形を紹介します。
1つ目は、レシピの開発と監修です。食品メーカーや料理の情報サイトが、季節のお菓子のレシピを作れる人を探していることがあります。家庭の道具でも作りやすい分量や手順に直す力は、現場の経験がある人ならではの強みです。
2つ目は、オンラインの教室です。画面越しに手元を見せながら、お菓子作りを教える形です。生徒が自分の家で作るので、講師が作ったお菓子を販売するわけではありません。ただし、材料のセットを販売する場合などは、扱う物によって別の手続きが必要になることがあるので、事前に確かめましょう。
3つ目は、お菓子作りに関する記事や資料の作成です。材料の選び方、失敗しやすい点と対策、季節の和菓子の由来など、技能士の知識を文章で伝える仕事です。国家資格の裏づけがある書き手は、内容の信頼性を示しやすくなります。
運営者の視点:技能を言葉と写真で伝える
フリーランスと在宅ワークの市場を長く見てきた立場から言えば、菓子作りのように手を動かす技能を仕事につなげる人には共通点があります。自分の技能を、言葉と写真で伝える工夫に時間を使っていることです。作品の写真に、使った技法や材料のこだわりを一言添える。教室の案内に、生徒が何を持ち帰れるのかを具体的に書く。こうした伝え方の工夫が、「この人に頼みたい」という信頼を生みます。
もう1つ見えてくるのは、中間の手数料が乗らない直接の取引の強みです。仲介の手数料がかからない手数料0%の取引であれば、依頼する側は同じ予算で頼める量が増え、受ける側は手元に残る金額が厚くなります。教室の講師や、レシピの監修のように継続して頼まれる仕事ほど、この構造は双方の得になります。
作品の写真や実績を並べて見せる考え方は、文章の仕事のポートフォリオと共通しています。実績の選び方と並べ方の型は、Webライターのポートフォリオの作り方|案件獲得率が上がるテンプレート付き【2026年版】で解説しています。教室の案内文やレシピを分かりやすく書く力を示したい人は、ビジネス文書検定で試験の内容と仕事での生かし方を整理しています。お菓子の写真やパッケージ、教室の案内のデザインを外部に頼むときの費用の目安は、デザイナーの年収・単価相場が参考になります。
よくある質問
Q. 菓子製造技能士は実務経験がなくても受けられますか?
原則として実務経験が必要です。中央職業能力開発協会の案内では、2級は2年以上、1級は7年以上が原則で、職業訓練の経歴や学歴によって短くなる場合があります。製菓の専門学校で関連する学科を修めた人などは、必要な年数が変わることがあります。自分の条件は、住んでいる都道府県の職業能力開発協会で確かめてください。
Q. 試験はいつ、どこで受けられますか?
菓子製造の技能検定は、令和8年度は後期に実施されます。受検申請の受付は2026年10月5日から16日まで、実技試験は2026年12月4日から2027年2月14日までの期間、合格発表は2027年3月12日です。受付と試験の実施は各都道府県の職業能力開発協会が行うので、申請書の入手方法や試験の日にちは都道府県の協会に問い合わせてください。
Q. 実技試験ではどんな課題が出ますか?
令和8年度後期の概要では、洋菓子2級はビスキュイ ア ラ キュイエールとアングレーズ式バタークリームを作って絞り、デコレーションケーキを仕上げる課題で、標準2時間15分です。和菓子2級は小麦饅頭5個、練り切り4個、どら焼きの皮10枚などの製造です。標準時間を超えると減点されるので、段取りの練習が欠かせません。
Q. 菓子製造技能士の資格があれば自宅でお菓子を売れますか?
資格だけでは売れません。お菓子を作って売るには、食品衛生法にもとづく菓子製造業の営業許可を、保健所を通じて都道府県知事などから受ける必要があります。施設が基準に合っていることが条件で、家庭の台所をそのまま使うのは一般に難しく、食品衛生責任者を置く必要もあります。設備を整える前に保健所に相談してください。
この記事について
編集部
監修:@SOHO編集部
2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを20年運営。編集部が事実確認のうえ公開しています。

この記事を書いた人
岡田 隆志@SOHO編集部
PMO→フリーランスプロジェクトマネージャー
大手SIerでPMOとして15年間、数多くのプロジェクトを管理。PMP、G検定、応用情報技術者を保有。フリーランスPMとして活動しながら、IT資格のキャリア戦略を発信しています。
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