下請法の支払期日と45日の関係|報酬が遅れたときに確かめること 2026


この記事のポイント
- ✓下請法の支払期日で「45日」と言われたときの意味を整理します
- ✓2026年1月に取適法へ名前が変わった後の60日ルール
- ✓起算日になる受領日の考え方
取引先から「うちは納品から45日で支払います」と言われた。あるいは契約書に「検収後45日以内に支払う」と書いてあった。下請法の支払期日について調べ始めた人の多くは、この45日という数字が法律で決まったものなのか、それとも取引先の都合で決めた数字なのかが分からず、報酬がまだ振り込まれていない状況で不安を抱えています。これ、知らない人が本当に多いんです。
結論から書くと、法律が決めているのは「受け取った日から数えて60日以内のできるだけ短い期間」という上限だけで、45日という日数そのものを定めた条文はありません。45日は60日の内側に収まっているので、それ自体は違法ではありません。ただし、どの日から数えるのか、45日を過ぎても払われないときに何が起きるのか、そもそも自分の取引がこの法律の対象なのかで、取れる手が大きく変わります。
この記事では、2026年1月1日に名前と中身が変わった下請法(現在の通称は取適法)の支払期日の決まりを、フリーランスや小さな会社が実際に確かめる順番に沿って整理します。条文は e-Gov の法令データ、運用の考え方は公正取引委員会のQ&Aで今日時点の記載を確かめたうえで書いています。
下請法は2026年1月から「取適法」になった
まず名前の話から整理します。古い記事や取引先の担当者が「下請法」と呼んでいる法律は、2026年1月1日から正式名称が「製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律」に変わりました。略称は中小受託取引適正化法、通称は取適法です。公正取引委員会のページには、改正法が令和7年5月16日に成立し、同月23日に公布されたこと、施行期日が令和8年1月1日であることが書かれています。
名前だけでなく、登場人物の呼び方も変わりました。
| 旧下請法での呼び方 | 取適法での呼び方 | つまり誰のこと |
|---|---|---|
| 親事業者 | 委託事業者 | 仕事を頼む側の会社 |
| 下請事業者 | 中小受託事業者 | 仕事を受ける側(個人を含む) |
| 下請代金 | 製造委託等代金 | 受け取る報酬 |
「下請」という言葉には上下関係の響きがあるため、対等な取引を前提にした呼び方へ改められたと説明されています。検索すると今も「下請法 支払期日」という言い方が圧倒的に多く出てきますが、調べ物をするときは「取適法」「中小受託事業者」という言葉でも探すと、最新の情報に当たりやすくなります。
支払期日に関する中心の決まり、つまり「受け取った日から60日以内」というルールは、名前が変わった後もそのまま残っています。条文(第3条)は次のとおりです。
製造委託等代金の支払期日は、委託事業者が中小受託事業者の給付の内容について検査をするかどうかを問わず、委託事業者が中小受託事業者の給付を受領した日(役務提供委託又は特定運送委託の場合にあつては、中小受託事業者からその委託に係る役務の提供を受けた日。以下同じ。)から起算して、六十日の期間内において、かつ、できる限り短い期間内において、定められなければならない。 出典: e-Gov法令検索(取適法)
つまり、取引先が「45日」と決めても「30日」と決めても、60日を超えていなければ条文の上限には触れません。逆に「90日後払い」「翌々月末払い」のように60日を超える定めは、この条文に反します。
改正で新しく加わった点も、支払いに関わるものがいくつかあります。条文で確かめた範囲では、代金を手形で払うことが支払遅延の禁止に含められたこと、受ける側から代金の協議を求められたのに応じずに一方的に金額を決めることが禁じられたこと、資本金だけでなく従業員の数でも対象を判定するようになったこと、運送の委託(特定運送委託)が対象に加わったことが挙げられます。
45日という数字はどこから来るのか
法律に45日という数字が無いのに、なぜ「45日」で検索する人がこれほど多いのでしょうか。理由はいくつか考えられます。
1つ目は、取引先の社内規程です。大きな会社ほど、経理の締め日と支払日を1年中同じ形にそろえています。「月末締め、翌月15日払い」という運用だと、月初に納品したものは受け取りから45日前後で支払われる計算になります。この会社にとっての45日は、法律ではなく経理の都合から出てきた数字です。
2つ目は、民間の請求書サービスや会計ソフトの解説記事です。「45日なら60日の上限内なので問題ない」という書き方が広まり、45日が何か特別な基準のように受け取られている面があります。
3つ目は、業界の慣行です。たとえば出版や放送、広告の制作では「納品から1か月半」程度で支払われる取引が多く、その感覚が45日という数字と結びついていることがあります。
ここで大事なのは、45日が「法律が保障している期日」ではない点です。法律が保障しているのは60日という上限と、「できる限り短い期間内で定める」という努力の向きです。取引先と相談して30日や20日にしてもらうことは、法律の上ではむしろ望ましい方向です。
もう1つ、45日という言葉の裏に「検収」が隠れていることがよくあります。契約書に「検収完了後45日以内に支払う」と書かれている場合、検収(取引先が中身を確かめて合格を出すこと)に何日かかるかで、実際の支払いはずっと後ろにずれます。この点は次の節で詳しく扱いますが、法律が数え始めの日として見るのは検収の日ではなく、受け取った日です。
起算日は「受領日」。検収の日ではない
支払期日のトラブルで一番多いのが、数え始めの日をめぐる食い違いです。条文には「検査をするかどうかを問わず」「給付を受領した日から起算して」とはっきり書かれています。つまり、取引先が中身を確かめ終わったかどうかに関係なく、成果物を受け取った日から60日を数えます。
公正取引委員会の取適法Q&Aでも、情報成果物(プログラム、デザイン、文章、映像などのデータ)の検査が60日を超える場合について、次のように説明しています。
本法上、委託事業者は、検査するかどうかにかかわらず、情報成果物の受領後60日以内に定めた支払期日までに代金を支払う必要がある。 出典: 公正取引委員会「よくある質問コーナー(取適法)」Q86
ここで「受け取った日」とは何を指すのかを、仕事の種類ごとに整理しておきます。
| 仕事の種類 | 数え始めの日 |
|---|---|
| 物を作る(製造委託) | 物品を納めて相手が受け取った日 |
| データを作る(情報成果物作成委託) | データを納めて相手の管理下に入った日 |
| サービスを提供する(役務提供委託) | サービスの提供が完了した日 |
| 運送する(特定運送委託) | 運送が完了した日 |
サービスの提供については、同じQ&Aで「役務の提供を受けた日とは、当該役務が完了した日であり、報告書の届いた日ではない」と説明されています。たとえば翻訳の仕上げを月末に終えたのに、取引先が報告書を確認したのが翌月10日だった場合、数え始めは報告書の確認日ではなく作業が終わった日です。
例外が1つあります。データの成果物については、納期より前に一時的に提出して中身を確かめ、一定の水準を満たしたと確認した時点で受け取ったことにする、と事前に合意している場合に限り、その確認の時点が数え始めになります。ただしQ&Aは、これを「検査が終わってから受け取ったことにしてよい」という意味ではないと念を押しています。納期にデータが取引先の手元に入っていれば、検査が終わっていなくてもその納期が数え始めの日になります。
以前、編集部に寄せられた相談にこういうものがありました。Webサイトの改修を請け負ったデザイナーさんが、3月10日に納品したのに、取引先から「社内確認が5月まで終わらないので、検収後45日で払う」と言われたというものです。この場合、受け取った日である3月10日から数えて60日を超える支払いになる取り決めは、取引先が取適法の対象であれば条文に反する可能性が高いケースです。契約書に検収後と書いてあっても、受け取った日から数える考え方が優先されます。
※取引先が対象になるか、納品が「受け取った」と言える状態だったかは事情で変わります。金額が大きい場合や争いになりそうな場合は、弁護士や下記の相談窓口で個別に確認してください。
自分の取引が対象かを確かめる方法
ここが一番の分かれ道です。取適法は、すべての取引に当てはまるわけではありません。仕事の種類と、頼む側と受ける側の規模の組み合わせで対象が決まります。
条文で確かめた判定の考え方を、フリーランスや小さな会社に関係が深いところに絞って整理します。
| 仕事の種類 | 頼む側(委託事業者) | 受ける側(中小受託事業者) |
|---|---|---|
| 製造、修理、運送、一部のプログラム作成など | 資本金3億円超 | 個人、または資本金3億円以下 |
| 同上 | 資本金1,000万円超3億円以下 | 個人、または資本金1,000万円以下 |
| デザイン、文章、映像などの作成、各種サービス | 資本金5,000万円超 | 個人、または資本金5,000万円以下 |
| 同上 | 資本金1,000万円超5,000万円以下 | 個人、または資本金1,000万円以下 |
| 製造など(従業員基準) | 従業員300人超 | 従業員300人以下 |
| 作成やサービス(従業員基準) | 従業員100人超 | 従業員100人以下 |
表の見方を一言でいうと、「頼む側が一定以上の規模の会社で、受ける側が個人か小さな会社なら、対象になる可能性が高い」ということです。個人のフリーランスは、資本金という考え方が無いので、受ける側の条件は満たしやすくなっています。
2026年1月の改正で加わった従業員の基準は大きな変化です。資本金は小さくても従業員を多く抱える会社から仕事を受けている場合、以前は対象外だった取引が対象になっていることがあります。取引先の資本金や従業員数は、会社のWebサイトの会社概要や、取引開始時の書類で確かめられます。
対象外だった場合でも、あきらめる必要はありません。受ける側が従業員を使っていない個人(または代表者1人だけの法人)であれば、2024年11月1日に施行されたフリーランス法(特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律)が使える場合があります。フリーランス法の支払期日の決まりは、従業員を使っている発注者に当てはまり、資本金の大きさは問いません。
フリーランス法の60日ルールとの違い
フリーランス法の第4条にも、ほぼ同じ形の決まりがあります。発注者が成果物を受け取った日から60日以内のできるだけ短い期間内で支払期日を定めなければならない、という内容です。
2つの法律を並べると、次のようになります。
| 項目 | 取適法 | フリーランス法 |
|---|---|---|
| 対象の決め方 | 頼む側と受ける側の資本金・従業員数 | 受ける側が従業員を使わない個人など、頼む側が従業員を使っている |
| 支払期日の上限 | 受け取った日から60日以内 | 受け取った日から60日以内 |
| 期日を決めなかったとき | 受け取った日が支払期日とみなされる | 受け取った日が支払期日とみなされる |
| 60日を超えて決めたとき | 60日を経過した日の前日が支払期日とみなされる | 60日を経過する日が支払期日とみなされる |
| 再委託の特例 | なし | 元の発注者からの支払期日から30日以内にできる |
| 遅延利息 | 年14.6% | 定めなし |
フリーランス法には、再委託の特例があります。取引先自身が別の会社から仕事を受けていて、その一部をフリーランスに回している場合、一定の事項(再委託であること、元の発注者の名前、元の発注者からの支払期日など)をあらかじめ示していれば、支払期日を「元の発注者からの支払期日から30日以内」に定めることができます。このとき、受け取った日からは60日を超えることがあり得ます。取引先から「元請けからの入金後30日で払う」と言われたら、この特例を使っているのかどうか、発注時に必要な事項が示されていたかを確かめてください。
両方の法律に当てはまる取引もあります。その場合にどちらの法律で扱われるかは、相談先の窓口で整理してもらうのが確実です。受ける側としては、「少なくともどちらかには当てはまりそうか」が分かっていれば、相談の入り口として十分です。
フリーランス法の詳しい解説は、厚生労働省のフリーランス法のページで確かめられます。発注書や契約書にどんな項目が書かれているべきかは、フリーランスを守る「下請法(取適法)」の知識|発注書・契約書の必須項目チェックリストで、項目ごとのチェックリストとしてまとめています。
支払期日の決め方で違反になる書き方
支払期日は「何日以内」という上限の話だけではありません。書き方そのものに決まりがあります。公正取引委員会のQ&Aには、支払期日の書き方として認められるものと認められないものが並んでいます。
「支払期日」は具体的な日が特定できるよう定める必要がある。①、②は、支払の期限を示しており、具体的な日が特定できないため認められない。 出典: 公正取引委員会「よくある質問コーナー(取適法)」Q67
このQ&Aの①は「○月○日まで」、②は「納品後○日以内」です。つまり「納品後45日以内に支払う」という書き方は、日付が特定できないため、支払期日を定めたことにならないと考えられています。認められるのは「○月○日」のように日付が決まっている書き方と、「毎月末日納品締切、翌月○日支払」のような月単位の締め日制度です。
これは受ける側にとって重要なポイントです。支払期日を定めなかった扱いになると、条文の第3条第2項により、受け取った日そのものが支払期日とみなされます。取引先が対象事業者であれば、「45日以内」とあいまいに書かれていた場合、法律上は受け取った日に支払う義務があったと評価される余地があるということです。
月末締めの制度を使う場合にも注意があります。「月末締め、翌々月10日払い」のような形にすると、月初に納品したものは受け取りから70日前後になり、60日を超えてしまいます。締め日の制度が認められるのは、あくまで60日の上限に収まる範囲です。
よく見る支払条件を、受け取りから支払いまでの日数で並べると次のようになります(月初1日に納品した場合のおおよその日数)。
| 支払条件 | 受け取りから支払いまで | 60日との関係 |
|---|---|---|
| 月末締め、翌月15日払い | 約45日 | 内側 |
| 月末締め、翌月末払い | 約60日 | 境目(月の日数で確認) |
| 月末締め、翌々月10日払い | 約70日 | 超える |
| 月末締め、翌々月末払い | 約90日 | 超える |
「月末締め、翌月末払い」は、31日の月をまたぐと60日をわずかに超える計算になることがあります。実務では締め日制度の扱いが整理されていますが、自分の取引で境目にあると感じたら、取引先の経理に「受け取りから何日で入金されるか」を具体的な日付で確かめてもらうのが一番確実です。
45日を過ぎても払われないときに起きること
約束の45日を過ぎても入金が無い。このとき、法律の上では何が起きるのかを整理します。
まず、取引先が取適法の対象であれば、決めた支払期日を過ぎても払わないことは、第5条第1項第2号の「支払期日の経過後なお支払わないこと」に当たります。つまり、45日と決めたなら、45日を過ぎた時点で支払遅延という禁止行為になります。60日以内だから大丈夫、ということにはなりません。
次に、遅延利息です。第6条は、支払期日までに払わなかったときは、受け取った日から60日を経過した日から実際に支払う日までの日数に応じて、公正取引委員会の規則で定める率の遅延利息を払わなければならないと定めています。その率は規則で年14.6%とされています。
製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律第六条第一項及び第二項の公正取引委員会規則で定める率は、年十四・六パーセントとする。 出典: e-Gov法令検索(遅延利息の率を定める規則)
ここに細かい点が1つあります。条文の書き方では、遅延利息が数え始められるのは「受け取った日から60日を経過した日」からです。45日と決めた取引で50日目に払われた場合、支払遅延という違反にはなりますが、条文上の遅延利息の計算期間にはまだ入っていないと読めます。遅延利息の額が大きくなるのは、支払いが60日を超えてずれ込んだ場合です。
計算の目安も示しておきます。報酬50万円が受け取りから60日を経過した日から30日遅れて支払われた場合、50万円×14.6%×30日÷365日でおよそ6,000円です。金額としては大きくありませんが、取引先にとっては「法律上払わなければならないお金」が発生しているという事実が交渉の材料になります。
手形で払われた場合の扱いも変わりました。取適法では、代金の支払いに手形を渡すこと自体が支払遅延の禁止に含められています。Q&Aでは、手形を渡した場合は支払遅延となり、受け取った側が割り引いたかどうかにかかわらず、手形の満期日を支払日として遅延利息を計算すると説明されています。
違反があった場合、公正取引委員会は取引先に対して、代金や遅延利息を支払うよう勧告することができます(第10条)。発注内容を書面などで示さなかった場合や、取引の記録を作らず保存しなかった場合には、50万円以下の罰金の定めもあります(第14条)。
振込手数料や「歩引き」で減らされたとき
支払期日と一緒によく起きるのが、入金額が約束より少ないという問題です。期日どおりに入金されても、金額が削られていれば別の違反になり得ます。
Q&Aでは、振込手数料を受ける側の負担として代金から差し引くことについて、受ける側が了解していたかどうかにかかわらず違反として問題になると説明しています。以前の下請法では「事前に書面で合意していれば差し引いてよい」という扱いが知られていましたが、取適法のQ&Aは合意の有無を問わない書き方になっています。古い情報を見て「合意したから仕方ない」と思い込まないことが大切です。
業界の慣行として「歩引き」や「手数料」の名目で一定割合を差し引く取引についても、Q&Aは、名目にかかわらず発注時に決めた金額を後から減らすことは違反になると書いています。
確かめる順番は次のとおりです。
- 発注時に示された金額(発注書、メール、チャットの記録)を確認する
- 実際の入金額との差を計算する
- 差し引かれた理由を取引先に文書で尋ねる
- 受ける側の責任(納品物の不具合など)による減額かどうかを整理する
受ける側に責任がある場合(たとえば納品物に明らかな欠陥があり、返品や修正が必要になった場合)は、減額が認められることがあります。逆に、取引先の都合による仕様変更、予算の見直し、社内の手続きの遅れなどは、受ける側の責任ではありません。
支払いが遅れたときに確かめる5つのこと
ここからは、実際に約束の日を過ぎても入金が無いときの手順です。感情的に催促する前に、次の5つを確かめておくと、その後の交渉や相談がずっと楽になります。
1つ目は、受け取った日の証拠です。納品のメール、ファイル共有サービスのアップロード記録、取引先からの「受け取りました」という返信を、日付が分かる形で保存しておきます。データの納品なら、送信履歴の画面を保存しておくと確実です。
2つ目は、支払期日がどう書かれていたかです。発注書、契約書、見積書、メールのどこに支払条件が書かれていたかを確認します。「45日以内」のように日付が特定できない書き方だったか、「○月○日」と日付で書かれていたかで、評価が変わり得ます。
3つ目は、取引先の規模です。資本金と従業員数を会社概要で確認し、前の節の表に当てはめます。取適法の対象外でも、自分が従業員を使っていない個人なら、フリーランス法の対象になる可能性があります。
4つ目は、請求書の送付状況です。法律上、支払期日は受け取った日から数えるので、請求書が無ければ払わなくてよいという理屈にはなりません。とはいえ、取引先の経理が請求書を前提に動いているのは事実なので、請求書を送ったか、届いているかは確かめておきます。
5つ目は、催促の記録です。電話で催促した場合も、その日のうちに「本日お電話でお伝えしたとおり」とメールで残しておきます。後から相談窓口に持ち込むとき、時系列が分かる記録があると話が早く進みます。
催促の文面は、法律の名前を最初から前面に出すより、事実を淡々と並べるほうが関係を壊しにくいものです。「○月○日に納品し、ご確認のご連絡をいただきました。お取り決めの支払日である○月○日を過ぎておりますので、お振込みの予定日をお知らせください」という書き方で十分です。社外向けの文面を整える力は、ビジネス文書検定のような資格で体系的に身につけることもできます。
相談先と、無料で使える窓口
取引先とのやり取りで解決しない場合に使える窓口を整理します。いずれも相談は無料です。
| 窓口 | 向いている場面 |
|---|---|
| 公正取引委員会(取適法の相談・申告) | 取引先が取適法の対象で、支払遅延や減額を申し出たい |
| 中小企業庁・各地の経済産業局 | 取適法の相談、取引上の悩みの相談 |
| フリーランス・トラブル110番 | 個人のフリーランスで、報酬の未払いを弁護士に無料で相談したい |
| 各地の弁護士会の法律相談 | 代理人を立てて回収を進めたい |
フリーランス・トラブル110番は、厚生労働省から委託を受けて第二東京弁護士会が運営している窓口です。サイトには、電話やメールでの相談が無料で匿名でもよいこと、個人での解決が難しい場合には和解あっせんという手続きを使えることが書かれています。一方で、相談担当の弁護士が代理人になったり相手と直接交渉したりはできないとも書かれているので、代理人が必要な段階になったら弁護士会の法律相談を使うことになります。
申告(公正取引委員会などに違反を知らせること)をしたことを理由に、取引を減らしたり止めたりする報復は、取適法の第5条第1項第7号で禁止されています。とはいえ、取引関係への影響が心配なのは自然なことです。まずは相談だけして、自分の状況が法律上どう評価されるかを聞いてから、申告するかどうかを決めても遅くありません。
それでも支払われない場合は、裁判所の手続きを使って回収する段階に進みます。費用の目安や支払督促の流れは、未払い報酬を回収する!弁護士の着手金・成功報酬と支払督促の流れ【2026年最新】で詳しく取り上げています。
※回収の方法は金額や証拠の残り方で変わります。数十万円を超える報酬の未払いや、取引先と連絡が取れなくなった場合は、早めに弁護士へ相談してください。
契約前に支払期日で決めておくこと
トラブルを防ぐ一番の方法は、取引を始める前に支払条件をはっきりさせておくことです。受ける側から確かめておきたい項目を挙げます。
- 支払日が「○月○日」または「毎月○日締め、翌月○日払い」のように日付で特定できるか
- 数え始めが「納品日」になっているか。「検収後」になっている場合、検収の期限が決まっているか
- 受け取りから支払いまでが60日以内に収まっているか
- 振込手数料を誰が負担するか
- 支払方法が銀行振込か。手形や、満期日のある支払手段になっていないか
- 再委託の場合、元の発注者からの支払期日が示されているか
特に2つ目は見落とされがちです。「検収後30日」と書かれていても、検収の期限が決まっていなければ、実際の支払いがいつになるか分かりません。取適法の対象取引なら受け取った日から60日の上限がかかりますが、対象外の取引ではこの上限が働かない場合もあります。契約書の段階で「納品後○日以内に検収を行い、期限内に連絡が無い場合は検収完了とみなす」という一文を入れてもらうだけで、支払いの見通しがずっと立てやすくなります。
長期の継続取引では、作業の単価や支払条件を年に1回見直すことも大切です。取適法では、受ける側から費用の変動などを理由に代金の協議を求めたのに、取引先が応じなかったり、必要な説明をしないまま一方的に金額を決めたりすることが禁止されました。支払期日の短縮も含めて、条件の相談を持ちかけやすくなったと受け止めてよい改正です。
職種ごとに見た支払期日の実情
支払期日の問題は、職種によって起きやすさが違います。受ける仕事の性質と、取引先の経理の仕組みが関わっているからです。
システム開発やアプリ制作では、納品後に動作確認の期間が長く取られる傾向があります。動作確認を検収として扱い、その後に支払いが始まる取り決めになっていると、受け取りから60日を超えやすくなります。アプリケーション開発のお仕事では、開発案件の進め方や契約の形を紹介しているので、受注前の確認の参考にしてください。ソフトウェア開発の報酬水準はソフトウェア作成者の年収・単価相場で確かめられます。単価が高い分、支払いが1か月遅れたときの資金繰りへの影響も大きくなるので、支払条件の確認は単価交渉と同じくらい重要です。
ライターや編集者の仕事では、原稿の納品後に掲載や発売を待ってから支払われる取引が残っています。Q&Aは、出版物の発売日を基準にして支払うことについて、受け取った日から60日以内に支払われていなければ支払遅延として違反になると説明しています。つまり「掲載後払い」「発売後払い」は、受け取りから60日を超えれば対象取引では違反になります。文章の仕事の報酬水準は著述家,記者,編集者の年収・単価相場にまとめています。
翻訳、デザイン、動画編集のような短期の単発案件では、支払期日をそもそも決めずに仕事が始まることがよくあります。チャットで「お願いします」「承知しました」だけで作業に入った場合でも、取適法やフリーランス法の対象であれば、発注側には支払期日などを示す義務があります。受ける側から「お支払日はいつになりますか」と最初に1行尋ねておくだけで、後のトラブルの多くは防げます。
現場を長く見てきて分かること
フリーランスや在宅ワークの市場を20年近く運営してきた立場から見ると、支払いのトラブルは「悪意のある取引先」よりも、「支払条件を誰も確かめていなかった取引」から生まれることのほうがずっと多いと感じます。担当者は経理の締め日を知らず、受ける側も聞かずに作業を始め、入金が無いことに気づいて初めて食い違いが表に出るという流れです。
もう1つの実感は、支払いが早くて確実な取引ほど長く続くということです。中間の業者を挟まずに発注者と受け手が直接やり取りする取引では、手数料0%で同じ予算から受け手の手取りが厚くなるだけでなく、支払日の確認も担当者と直接できるので、食い違いが起きにくくなります。報酬額だけで仕事を選ぶのではなく、「誰と、どんな条件で、いつ入金されるか」まで見て取引先を選ぶ人ほど、結果として安定した収入を築いています。
45日という数字に振り回される必要はありません。確かめるべきは、受け取った日がいつか、そこから60日以内に収まっているか、支払日が日付で特定されているか、自分の取引がどの法律の対象か、の4点です。この4点が分かっていれば、取引先との話し合いも、窓口への相談も、自信を持って進められます。法律はあなたの味方です。
よくある質問
Q. 支払期日を45日と決めることは下請法(取適法)違反になりますか?
45日という日数そのものは違反ではありません。取適法が定めているのは、成果物を受け取った日から数えて60日以内のできるだけ短い期間という上限です。ただし「納品後45日以内」のように具体的な日付が特定できない書き方は、公正取引委員会のQ&Aでは支払期日を定めたことにならないと説明されています。日付か締め日制度で決まっているかを確かめてください。
Q. 支払期日は検収日から数えるのですか?
検収日ではなく、成果物を受け取った日から数えます。条文には「検査をするかどうかを問わず」受け取った日から起算すると書かれています。サービスの提供なら作業が完了した日です。データの成果物では、納期前に一時提出して水準を確認した時点を受け取りとする合意がある場合に限り、その確認時点が数え始めになります。
Q. 支払いが遅れたら遅延利息を請求できますか?
取引先が取適法の対象であれば、受け取った日から60日を経過した日から実際に支払われる日までの日数に応じて、年14.6%の遅延利息を支払う義務が取引先に生じます。率は公正取引委員会の規則で定められています。実際に請求するか、相談窓口に申し出るかは、金額や取引関係を踏まえて判断し、迷う場合は弁護士などに確認してください。
Q. 取引先が小さな会社で取適法の対象外だった場合はどうなりますか?
受ける側が従業員を使っていない個人などであれば、フリーランス法が使える場合があります。フリーランス法でも、従業員を使っている発注者は受け取った日から60日以内に支払期日を定める必要があり、資本金の大きさは問いません。どちらにも当たらない場合でも、民法上の請求はできるので、フリーランス・トラブル110番などで状況を相談してください。
この記事について
編集部
監修:@SOHO編集部
2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを運営。生成AIで作成した下書きを、一次情報と照らし合わせて確認したうえで公開しています。

この記事を書いた人
@SOHO編集部
フリーランス・在宅ワークの専門メディア
@SOHOは2004年から続く、日本のフリーランス・在宅ワーク向け案件サイトです。記事は生成AIで下書きを作り、数値・固有名・出典を一次情報と照らし合わせる確認の手順を経て公開しています。
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SNS運用・経理・広告など、業務のアウトソーシング(外注)を検討する企業・個人向け。費用相場・依頼の流れ・失敗しない選び方







