日本語教師の国家資格でなくなるものは何か|登録日本語教員の制度 2026


この記事のポイント
- ✓日本語教師の国家資格がなくなると検索する人が本当に気にしているのは
- ✓これまでのルートが使えなくなる期限です
- ✓登録日本語教員の2ルート
「日本語教師の国家資格がなくなる」という検索が続いています。結論から言うと、国家資格そのものがなくなるわけではありません。なくなるのは、これまで日本語教師になる道として使われてきた3つの旧ルートの効力と、現職者向けの経過措置です。そして期限は決まっています。多くの経過措置は令和11年3月31日まで、ひとつだけ令和15年3月31日までです。この記事では、何が残り、何が使えなくなり、いつまでに何をすればいいのかを、文部科学省が公表している資料で確かめて日付つきで並べます。
結論。なくなるのは「3つの旧ルート」と経過措置の期限
まず整理します。かつて日本語教師になる条件として挙げられていたのは、次の3つのいずれかでした。大学または大学院で日本語教育に関する教育課程を修了する。日本語教育能力検定試験に合格する。420時間の日本語教師養成講座を修了する。この3つが、業界の共通認識でした。
いま起きているのは、この3つが「認定日本語教育機関」では通用しなくなる、という変化です。認定日本語教育機関で日本語教育課程を担当するには、国家資格である登録日本語教員が必要になりました。だから「検定に合格したから日本語教師になれる」という筋道が消えます。これが「なくなる」と言われている中身です。
もう1つの「なくなる」は、経過措置です。すでに日本語教師として働いている人が、試験や研修の一部を免除されて登録日本語教員になれる仕組みが用意されています。ただし期間限定です。C、D-1、D-2、E-1、E-2、Fの6つのルートがあり、Cルートは令和15年3月31日まで、残りの5つは令和11年3月31日までです。この日を過ぎると、免除なしで試験を受けることになります。
そして誤解が多いのが3つ目です。日本語教育能力検定試験そのものは、なくなっていません。令和8年度からCBT方式に移行し、通年実施になりました。ただし主催者が「国家資格としての登録日本語教員のための試験ではありません」と明記しています。つまり、試験は残ったが役割が変わった、というのが正確な状況です。
正直なところ、この3つが混ざって語られているせいで、現場の人が何をすべきか分からなくなっているのだと思います。1つずつ分けていきます。
登録日本語教員とは何か。根拠と登録者数
制度の土台を確認します。
日本語教員試験は、「日本語教育の適正かつ確実な実施を図るための日本語教育機関の認定等に関する法律」(令和5年法律第41号)に基づき、同法に定める「認定日本語教育機関」で日本語教育課程を担当する「登録日本語教員」になるために必要な資格試験です。 出典: 文部科学省
法律の名前が長いので、通称の日本語教育機関認定法で呼ばれます。令和5年に成立し、令和6年4月に動き始めました。所管は文部科学省の総合教育政策局日本語教育課です。
登録の状況も公表されています。登録日本語教員の登録者数は20,075名(令和8年8月21日時点)です。2年ほどで2万人を超えたということになります。数字だけ見ると順調に見えますが、この中には経過措置で免除を受けて登録した現職者が相当数含まれていると考えるのが自然です。新規に試験を通って入ってきた人の数とは別物です。
登録の申請は、日本語教育機関認定法ポータルの「申請・届出」メニューから行います。試験に合格しただけでは登録日本語教員にはなりません。合格証書を取得したうえで、登録の申請という別の手続きが要ります。ここは忘れやすいところです。
制度の目的も押さえておくと、方向が読めます。日本語教育の質を国が保証する形にして、学習者が安心して学校を選べるようにする、という設計です。だから機関の側にも認定という枠がかかり、その認定を受けた機関では資格を持つ教員が必要になる、という二重構造になっています。教員だけに資格が課されたのではなく、学校の側にも条件がついた、という理解が正しい。
資格の取り方は2ルートだけ
新しく登録日本語教員になる道は、2つです。
1つ目は試験ルートです。日本語教員試験の基礎試験と応用試験の両方に合格し、登録実践研修機関で実践研修を修了します。
2つ目は養成機関ルートです。登録日本語教員養成機関の養成課程を修了し、応用試験に合格します。基礎試験は免除されます。そして登録実践研修機関で実践研修を修了します。なお、養成課程と実践研修が一体的に実施されている課程を修了した場合は、実践研修が免除されます。
養成課程の分量も公表されています。登録実践研修機関と登録日本語教員養成機関の両方の登録を受けた機関で課程を修了する場合は、大学等で26単位以上、専門学校等で420単位時間以上です。登録日本語教員養成機関の登録だけを受けた機関の場合は、大学等で25単位以上、専門学校等で375単位時間以上です。
ここで気づくことがあります。「420時間」という数字が、専門学校等の単位時間として制度の中に残っています。従来の420時間養成講座という枠組みが、認定の仕組みの中に組み込まれたという形です。だから既存の養成講座がすべて無価値になったわけではありません。ただし、その講座が登録日本語教員養成機関として登録を受けているかどうかで扱いが変わります。
確認の方法も決まっています。日本語教育機関認定法ポータルの登録実践研修機関・登録日本語教員養成機関案内で、学校名と課程名を確認します。さらに、養成課程の修了証書が法令に基づく様式であることも確認する必要があります。修了見込みの段階なら、規定の様式で修了証書が発行される課程かどうかを学校に問い合わせてください。
これは受講前に必ず確かめるべき点です。登録を受けていない講座を修了しても、養成機関ルートには乗れません。数十万円の費用がかかる話なので、パンフレットの文言ではなく公式のポータルで確認してください。
令和8年度の試験。日程、受験料、会場
日程は決まっています。
試験日は令和8年11月8日の日曜日です。出願期間は令和8年7月13日の月曜日から8月21日の金曜日まで。結果通知は令和8年12月18日の予定です。
受験料は3種類に分かれます。基礎試験と応用試験を通常どおり受ける場合は18,900円。基礎試験の免除を受ける場合は、免除資格の確認と応用試験の受験料で17,300円。基礎試験と応用試験の双方の免除を受ける場合は、免除資格の確認手数料が5,900円です。いずれの金額にも合格証書の発行手数料が含まれています。
会場は全国に分散しています。北海道は北海道教育大学の札幌校。東北は東北工業大学の八木山キャンパス。関東は大妻女子大学の千代田キャンパス、日本大学の文理学部、電気通信大学、一橋大学の国立キャンパス、東京海洋大学の品川キャンパス、横浜国立大学、そして成蹊大学が追加されています。中部は愛知学院大学の日進キャンパス。近畿は桃山学院大学と、追加された大和大学。中四国は岡山大学の津島キャンパス。九州は九州産業大学と、追加された福岡女学院大学。沖縄は沖縄キリスト教学院大学・短期大学です。
会場が追加されていることに注目してください。関東、近畿、九州でそれぞれ1校が追加されています。受験者が想定より多いことの表れだと読めます。
令和8年度の変更点もあります。旧姓による出願を受け付ける予定になりました。また、経過措置のD-1、D-2、E-1、E-2ルートで出願する人は、出願の時点で経過措置のための講習をあらかじめ修了し、他の出願書類とともに修了証を提出する必要があります。出願してから講習を受ける、という順番は認められません。ここを取り違えると1年待つことになります。
試験の申込受付などの詳細は、日本語教員試験システムに掲載される試験案内で確認してください。令和8年6月頃の掲載予定とされています。
令和7年度の合格率67.5%をどう読むか
数字が公表されているので、そのまま見ます。
令和7年度の日本語教員試験は、令和7年11月2日の日曜日に8地域で実施されました。受験者は17,597人、合格者は11,876人、合格率は67.5%です。前年度は受験者17,655人、合格者11,051人、合格率62.6%でした。
一見すると「7割近く通る試験」に見えます。ただし読み方に注意が必要です。文部科学省は、合格者には経過措置による全試験免除者を含むと注記しています。つまり、この11,876人の中には、試験を解いて合格した人と、免除資格が確認されて合格証書を得た人の両方が入っています。
だから、この67.5%を「試験の難易度」として読むのは誤りです。経過措置の免除者が多く含まれているぶん、数字が押し上げられています。新規に試験を解いて挑む人にとっての実質的な通過率は、これより低いと見ておくべきでしょう。
もう1つ注記があります。経過措置による試験免除者のうち、出願時点で課程修了等が「見込」だった人については、免除要件を満たすことを証する書類が令和8年4月30日までに提出された場合に合格証書が交付されます。期日までに提出がなかった場合、合格は無効になります。つまり、合格発表を受けても書類を出さないと消える、という設計です。
受験者数が2年続けて17,600人前後で横ばいだという点も見逃せません。増えていません。経過措置で駆け込む人が一定数いる一方、新規参入が伸びていないことの表れと読めます。この構造は、経過措置が終わる令和11年3月末以降の受験者数に影響します。
経過措置の6ルート。誰がいつまでに動くべきか
ここが現職者にとって最も大事な部分です。6つのルートを、要件と期限で整理します。
まず全ルートに共通する現職経験の要件を押さえます。平成31年4月1日から令和11年3月31日までの間に、次のいずれかの機関で1年以上、日本語教育課程を担当している必要があります。法務省告示機関の告示を受けた課程。日本国内の大学および短期大学。認定日本語教育機関の認定を受けた課程。文部科学大臣が指定した日本語教育機関。この経験が、出願時点で1年以上あることが求められます。
Cルート。期限は令和15年3月31日まで。現職経験は不要です。必須の教育内容50項目に対応した日本語教員養成課程等を修了していて、学士以上の学位を持っていることが条件です。基礎試験が免除され、応用試験を受験し、実践研修が免除されます。期限が他より長く設定されている唯一のルートです。
D-1ルート。期限は令和11年3月31日まで。現職経験1年以上が必要で、平成12年報告に対応した日本語教員養成課程等の修了と学士以上の学位が要ります。加えて経験者講習の講習Ⅱの修了が必要です。基礎試験が免除され、応用試験を受験し、実践研修が免除されます。
D-2ルート。期限は同じ。現職経験1年以上、上記のCにもD-1にも当たらない養成課程等の修了、学士以上の学位が必要で、講習Ⅰと講習Ⅱの両方の修了が要ります。扱いはD-1と同じです。
E-1ルート。期限は同じ。現職経験1年以上と、公益財団法人日本国際教育支援協会が昭和62年4月1日から平成15年3月31日の間に実施した日本語教育能力検定試験の合格が必要です。講習Ⅰと講習Ⅱの両方を修了すると、基礎試験と応用試験の双方が免除されます。
E-2ルート。期限は同じ。現職経験1年以上と、同協会が平成15年4月1日から令和6年3月31日の間に実施した日本語教育能力検定試験の合格が必要です。講習Ⅱの修了で、基礎試験と応用試験の双方が免除されます。
Fルート。期限は同じ。現職経験1年以上だけが要件です。養成課程も学位も検定合格も要りませんが、基礎試験と応用試験の両方を受験します。実践研修は免除されます。
学位の扱いにも注意点があります。C、D-1、D-2は学士以上(学士、修士、博士)が必要で、短期大学士、準学士、専門士、高度専門士は不可です。海外で取得した学位は認められます。
つまり、専門学校の養成講座だけで働いてきた人は、学位の壁でC、D-1、D-2に乗れません。その場合はFルートで両方の試験を受けるか、E-1やE-2の検定合格があればそちらを使う、という判断になります。自分がどのルートに当たるかは、文部科学省の資料と登録申請の手引きにある経過措置ルート判定ガイドで確認してください。複数のルートに該当する人は、どのルートを使うかを自分で選ぶことになります。
検定試験はなくなっていない。ただし別物になった
ここが最も誤解されている点です。日本語教育能力検定試験は、続いています。
主催者の公益財団法人日本国際教育支援協会は、令和8年度以降の試験要項を公表しています。試験は通年実施になり、CBT方式、つまりテストセンターのコンピューターで受ける形に移行しました。初回の試験日は令和8年12月1日の火曜日です。出願は原則として試験日の60日前から受付が始まり、初回は令和8年10月5日の月曜日からです。
受験料は13,000円(税込)。試験会場は全国47都道府県に設置されているテストセンターです。合否結果通知書は受験後1か月以内に発送される予定で、複数回受験する場合、次の受験は受験日の翌日から起算して150日目以降に可能になります。
通年実施と47都道府県の会場という組み合わせは、受けやすさの面では大きな改善です。従来は年1回、限られた会場でした。
ただし、位置づけがはっきり変わりました。主催者自身が、この試験は国家資格としての登録日本語教員のための試験ではないと明記しています。日本語教育の実践につながる体系的な知識が基礎的な水準に達しているかを検定する試験、という説明です。
そして経過措置のE-1、E-2で使えるのは、令和6年3月31日までの合格に限られます。つまり、これから検定に合格しても、登録日本語教員の免除ルートには使えません。
では何のために受けるのか。答えは、認定日本語教育機関以外の場でも日本語を教える仕事があるからです。企業の社内研修、地域の日本語教室、オンラインの個人指導、海外の教育機関。これらは認定日本語教育機関ではないので、登録日本語教員が必須とは限りません。そこで知識の水準を示す材料として、検定は意味を持ちます。累計の合格者は昭和62年度から令和7年度までで約5万人です。
免除対象でも出願が必要。見落としやすい落とし穴
文部科学省の記述の中に、見落とすと致命的な注意点が3つあります。
1つ目。試験の免除対象者であっても、試験に出願し、免除資格の確認を経た上で合格証書を入手しなければ、登録日本語教員になることはできません。免除だから何もしなくていい、ではありません。出願という手続きが必ず必要です。
2つ目。基礎試験の合格または免除を得なければ、応用試験に合格することはできません。順序が固定されています。応用試験だけを先に通して逃げる、という道はありません。
3つ目。D-1、D-2、E-1、E-2で出願する人は、出願の時点で経験者講習を修了し、修了証を提出する必要があります。講習は講習Ⅰと講習Ⅱで構成されます。出願期間が令和8年7月13日から8月21日なので、講習はそれより前に終わっている必要があります。講習の申込時期を逆算しておかないと、1年先に飛びます。
あと2つ、細かいが実害の出る点を加えます。
中国の教育機関で学位を取得した人は、C、D-1、D-2の学位要件について、中国高等教育学生信息網が発行する証明書を別途提出する必要があります。取り寄せに時間がかかる書類なので、早めに動く必要があります。
そして、D-2ルートに該当するかどうかの判定です。CルートにもD-1ルートにも当たらない養成課程等については、文部科学省でD-2ルートに該当するかを確認する必要があります。修了証等を添えて日本語教育課に問い合わせる形です。自分で判断せず、確認を取ってから出願してください。
制度が動いている時期なので、細かい取り扱いは変わることがあります。最終的な確認は文部科学省の該当ページと登録申請の手引きで行ってください。
実践研修と経験者講習。2つの「研修」を混同しない
制度の中に「研修」という言葉が2か所出てきます。名前が似ているので混ざりますが、まったく別のものです。
1つ目が実践研修です。これは新しく資格を取る人が受けるもので、登録実践研修機関で修了します。試験ルートでも養成機関ルートでも必要です。ただし養成課程と実践研修が一体的に実施されている課程を修了した場合は免除されます。受け皿になる機関は、日本語教育機関認定法ポータルの一覧で、実践研修機関登録番号の欄に番号が記載されている機関です。番号がない機関では実践研修を受けられません。
実践研修は、応用試験に合格してからでなくても受けられます。文部科学省は、応用試験の受験や実践研修の受講に当たっては修了見込みでも可能だと注記しています。つまり、試験と研修を並行して進められます。時間を節約したいなら、この並行が効きます。
2つ目が経験者講習です。これは経過措置のための講習で、すでに働いている人が試験の免除を受けるために修了するものです。講習Ⅰと講習Ⅱの2つで構成されます。D-1は講習Ⅱ、D-2は講習Ⅰと講習Ⅱの両方、E-1は両方、E-2は講習Ⅱが必要です。Cルートと Fルートでは講習は要りません。
順序の違いも押さえてください。実践研修は試験と並行できますが、経験者講習は出願より前に修了している必要があります。ここが最大の違いです。
もう1つ、経過措置ルートの判定に使う養成課程の確認結果も公表されています。自分が修了した課程が、Cルートに該当する「必須の教育内容50項目に対応した養成課程」なのか、D-1ルートに該当する「平成12年報告に対応した養成課程」なのか、それとも登録実践研修機関や登録日本語教員養成機関としての登録を受けた課程なのか。都道府県、申請機関名、養成課程等の名称、実施期間の一覧で確認できます。同じ大学の中でも、課程名と実施期間によって扱いが変わります。自分が受講した時期まで含めて照合してください。
費用の総額を見積もる
受験料だけ見ると安く見えますが、総額はもっと大きくなります。項目に分けて並べます。
新規に養成機関ルートで取る場合。養成課程の受講料が最も大きい支出です。大学等で26単位、専門学校等で420単位時間という分量なので、数十万円の規模になります。これに応用試験の受験料17,300円が乗ります。実践研修が養成課程と一体で実施されていない場合は、実践研修の費用も別に発生します。
新規に試験ルートで取る場合。基礎試験と応用試験の受験料18,900円に、実践研修の費用が乗ります。養成課程を通らないぶん学費は抑えられますが、独学で基礎試験を通す必要があります。
現職者が経過措置を使う場合。経験者講習の受講料と、試験の受験料が必要です。E-1やE-2なら双方免除の確認手数料5,900円で済むので、金額としては最も軽くなります。D-1やD-2は応用試験を受けるので17,300円です。
そして見落としやすいのが移動費です。試験会場は全国に16会場ありますが、都道府県単位ではありません。たとえば中四国は岡山大学の1会場だけです。四国や山陰から受ける人は移動と宿泊の費用がかかります。試験日は日曜日なので、前泊が要る地域もあります。
書類の取り寄せ費用も計上してください。学位の証明書、在職証明書、養成課程の修了証。中国の教育機関で学位を取得した人は、中国高等教育学生信息網が発行する証明書が別途必要です。これらは発行手数料と郵送の時間がかかります。
つまり、受験料だけを見て「2万円弱で取れる資格」と考えると、実際の負担とずれます。現職者で経過措置に乗れる人は比較的軽く、新規で養成課程から入る人は重い。この差が、制度が現職者に有利で新規参入者に不利だという構造の、金額面での表れです。
「今は目指さないほうがいい」という声を検証する
検索すると「今は日本語教師を目指さないほうがよい」という主張も出てきます。挙げられている理由を並べると、制度の過渡期による混乱、資格の内容が知られていないこと、円安、特定の国からの留学生の動向といったものです。
フェアに見ると、当たっている部分と外している部分があります。
当たっているのは、過渡期の混乱です。ルートが6つに分かれ、期限が2つあり、講習の順序が固定されている。この複雑さは、これから入る人にとって明確な参入障壁です。情報を追う手間そのものがコストになっています。
もう1つ当たっているのは、待遇の話です。国家資格化が報じられたときも、薄給と激務、非正規雇用という論点が同時に指摘されていました。資格が国家資格になったことと、給与が上がることは別の話です。制度が変わっても、雇う側の予算が自動で増えるわけではありません。
一方で外していると思うのが、「資格化で教師が減る」という見立てです。登録者数は令和8年8月時点で20,075名まで積み上がっています。試験の受験者も2年続けて17,600人前後を維持しています。急減しているという証拠は、公表されている数字からは読み取れません。
正確に言うなら、こうです。参入の手間は増えた。ただし、いったん資格を取った人の側から見れば、無資格の競合が認定機関から排除されるぶん、立場は安定します。つまり、これから入る人には不利で、すでに中にいる人には有利な変化です。だから現職者は経過措置の期限内に動いたほうがいい、という判断になります。
これから目指す人に対して言えるのは、日本語を教える仕事だけに収入を寄せない設計にしておく、ということです。制度が動いている時期は、1本の収入源に依存するのが最も危ない。次の節でその話をします。
資格の外に、収入の柱をもう1本作る
日本語教育に関わる人が持っている技能は、実は他の仕事に転用しやすいものです。言葉を分解して説明する力、学習者のつまずきを見つける力、教材を作る力。この3つは、そのまま別の市場で値段がつきます。
教材を作る力は、文書作成の仕事に直結します。社内文書や取引文書の作法を体系で押さえるビジネス文書検定は、企業向けのマニュアル作成や研修資料の制作を請けるときの説明材料になります。日本語を教えてきた人は、読み手の水準に合わせて言葉を選ぶ訓練を積んでいるので、この領域では有利です。
説明する力を文章に振り向けるなら、書く仕事が近い。相場は著述家,記者,編集者の年収・単価相場で確認できます。時間で払われる仕事と成果で払われる仕事の金額の付き方が違うことが読み取れます。単価を上げる考え方はWebライターが文字単価を上げる方法|1円→5円にステップアップする戦略【2026年版】にまとめてあり、値段が上がる理由が作業の速さではなく引き受ける範囲の広さにあることが分かります。
実績の見せ方も設計が要ります。授業は形に残らないので、教案や教材、学習者の到達度の記録を整理しておく必要があります。見せる順番と分量の型はWebライターのポートフォリオの作り方|案件獲得率が上がるテンプレート付き【2026年版】が参考になります。書き手向けの内容ですが、構成の考え方はそのまま使えます。
需要が伸びている領域にも触れておきます。機械に日本語を扱わせる仕事です。学習者の誤りの型を知っている人は、機械が出力した日本語の不自然さを説明できます。この技能を業務の仕組みに組み込む仕事はAI・マーケティング・セキュリティのお仕事の領域に近づいています。教える人から、言葉の品質を設計する人へ、という移り方です。
市場データから見た日本語教育の仕事の考察
最後に、市場の構造から考えます。
公表されている数字を並べると、この市場の性格が見えてきます。登録日本語教員は20,075名。試験の受験者は年17,600人前後。検定試験の累計合格者は約5万人。一方で、認定日本語教育機関の数は限られています。つまり、資格を持つ人の数に対して、認定機関の常勤の枠はそれほど多くありません。
この構造が意味するのは、資格を取った人の多くが、常勤以外の形で働くことになるということです。非常勤、業務委託、オンラインの個人指導、企業研修。だから制度の話と同じくらい、契約の形と単価の話が重要になります。
この市場を20年運営してきた立場から言えることがあります。教える仕事で長く続く人は、授業のコマ数を増やす方向ではなく、「この人に頼むと自分が考えなくて済む」という関係を作る方向に時間を使っています。カリキュラムの設計、教材の整備、学習者の進捗の見える化。コマを売る人は時間の上限で止まりますが、設計を売る人は上限が外れます。登録日本語教員という資格は、その設計を任せてもらうための入場券として効きます。
もう1つ、運営者として見てきた限りでは、教える仕事は仲介の取り分が手取りに与える影響が大きい分野です。1コマや1件あたりの金額が数千円から数万円の範囲に収まりやすいので、そこから15%や20%が引かれると、準備の時間を含めた実質の時間単価が目に見えて薄くなります。手数料0%の直接取引が効くのは、金額の大小というより、同じ予算で依頼者がより多くのコマを頼めて、受ける側の手取りが厚くなるという構造のほうです。授業の準備に時間がかかる仕事ほど、この差が効いてきます。
制度の話に戻ります。押さえるべき日付は2つだけです。経過措置の多くが終わる令和11年3月31日と、Cルートが終わる令和15年3月31日。現職者なら、この日付から逆算して、講習の申込と出願の時期を決めてください。出願期間は令和8年度で7月13日から8月21日でした。講習はそれより前に修了している必要があります。逆算すると、動き出す時期は思っているより早い。
よくある質問
Q. 日本語教師の国家資格は本当になくなるのですか?
なくなりません。なくなるのは、これまで日本語教師になる道とされてきた3つの旧ルートの効力と、現職者向けの経過措置です。認定日本語教育機関で日本語教育課程を担当するには、国家資格である登録日本語教員が必要になりました。経過措置の多くは令和11年3月31日まで、Cルートだけ令和15年3月31日までです。
Q. 日本語教育能力検定試験は廃止されましたか?
廃止されていません。令和8年度からCBT方式の通年実施に移行し、受験料は13,000円(税込)、会場は全国47都道府県のテストセンターです。初回の試験日は令和8年12月1日です。ただし主催者は、国家資格としての登録日本語教員のための試験ではないと明記しています。経過措置で使えるのは令和6年3月31日までの合格に限られます。
Q. 令和8年度の日本語教員試験はいつで、受験料はいくらですか?
試験日は令和8年11月8日の日曜日、出願期間は令和8年7月13日から8月21日、結果通知は令和8年12月18日の予定です。受験料は、基礎試験と応用試験を受ける場合が18,900円、基礎試験の免除を受ける場合が17,300円、双方の免除を受ける場合が5,900円です。いずれも合格証書の発行手数料を含みます。
Q. 試験が免除される人は、何もしなくていいのですか?
出願は必要です。文部科学省は、試験の免除対象者であっても試験に出願し、免除資格の確認を経た上で合格証書を入手しなければ登録日本語教員になることはできないと明記しています。またD-1、D-2、E-1、E-2で出願する人は、出願の時点で経験者講習を修了し、修了証を提出する必要があります。順序を取り違えると1年待つことになります。
この記事について
編集部
監修:@SOHO編集部
2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを20年運営。編集部が事実確認のうえ公開しています。

この記事を書いた人
朝比奈 蒼@SOHO編集部
ITメディア編集者
IT系メディアで編集・ライティングを担当。クラウドソーシング業界の動向やサービス比較など、客観的な視点での記事を執筆しています。
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