歯科医院の1日の流れ|朝から終業までの動き方を追う

朝比奈 蒼
朝比奈 蒼
歯科医院の1日の流れ|朝から終業までの動き方を追う

この記事のポイント

  • ✓歯科医院の1日の流れを
  • ✓診療後の片付けまで時間順に追います
  • ✓歯科医師・歯科衛生士・歯科助手・受付で1日がどう違うか

歯科医院で働くことを考え始めると、「実際の1日はどう動いているのか」が気になります。求人票には診療時間と休憩時間が書かれているだけで、朝の何時に何をして、昼休みに何が起きて、何時に帰れるのかまでは分かりません。

結論から言うと、歯科医院の1日は「アポイント帳」でほぼすべてが決まります。予約で埋まった枠を、限られた診療台(ユニット)と人数でどう回すか。その前後に、器具の滅菌と翌日の準備という、患者さんからは見えない仕事が挟まります。この記事では、開院前から終業までを時間順に追い、職種ごとの違い、医院のタイプによる違い、求人票のどこを見れば1日の実態が分かるのかまで整理します。

歯科医院の1日は、アポイント帳で動いている

まず、歯科医院が他の医療機関と大きく違う点から押さえておきます。内科や整形外科のクリニックは、多くの場合、来院した順に受付をして診察します。朝から患者さんが何人来るかは、その日になってみないと分かりません。これに対して歯科医院は、ほとんどの患者さんが予約制です。1人あたりの枠は30分が基本で、治療内容によって15分や60分の枠が使われます。

この予約の一覧が、アポイント帳です。紙の帳面を使う医院はかなり減り、今は予約システムの画面で管理しているところが大半ですが、呼び方は今もアポイント帳のままという医院が少なくありません。アポイント帳には、時間ごと、ユニットごとに患者さんの名前と治療内容が並びます。歯科医師が担当する治療の枠と、歯科衛生士が担当するクリーニングやメンテナンスの枠が、別々の列で並んでいることもあります。

つまり、歯科医院で働く人の1日は、朝の時点でおおよそ見えているということです。何時にどの患者さんが来て、どの処置があり、どの器具が何セット必要か。スタッフは朝のうちにそれを確認し、段取りを組みます。医科のクリニックのように「今日は午前だけで何十人来るかもしれない」という読めなさは比較的少なく、その代わりに予約がずれたときの影響が1日じゅう続きます。

医院の処理能力は、ユニットの台数と診療時間でほぼ決まります。ユニットが4台、1日の診療時間が8時間で、1枠30分なら、単純計算で最大64枠です。実際には準備や片付けの時間があり、すべてのユニットを歯科医師が同時に使えるわけではないので、1日の患者数はその半分前後に落ち着くことが多くなります。求人票に書かれた「1日の患者数」と「ユニット台数」を並べてみると、その医院がどれくらい詰めて予約を入れているのかを推測できます。

もう1つ、歯科医院の1日を形づくっているのが、滅菌です。歯を削るタービンやミラー、ピンセット、スケーラーといった器具は、患者さんごとに洗浄と滅菌をしてから次に使います。器具の数には限りがあるので、滅菌の段取りが遅れると、次の患者さんの治療に使う器具が足りなくなります。アポイント帳と滅菌の段取り。この2つがかみ合っているかどうかで、同じ診療時間でも、スタッフの忙しさはまったく違ってきます。

開院前:ユニットを立ち上げ、その日の段取りを組む

では、時間順に追っていきます。ここでは、午前が9時30分から13時、午後が14時30分から19時という、都市部でよく見られる診療時間の医院を例にします。

スタッフの出勤は、診療開始の30分前、9時ごろが一般的です。着替えを済ませると、まずユニットの立ち上げに取りかかります。院内のコンプレッサーとバキュームの電源を入れ、各ユニットの給水管に水を流して、夜のあいだに管の中にたまった水を出します。これは、器具から出る水をきれいに保つための作業です。続いて、ライトやタービン、エアーが正常に動くかを確かめ、ユニットの表面を拭き上げます。

同時進行で、前日の夕方に滅菌を終えた器具をトレーに並べます。午前中の予約を見ながら、根の治療、詰め物、型取り、クリーニングといった処置ごとに必要な器具をそろえておくのです。型取りの材料や仮の詰め物の材料が足りているかも、この時点で確認します。

受付では、予約システムを開いて当日の予約を確認し、初診の患者さんの問診票を用意します。電話の留守番メッセージを確認して、キャンセルや予約変更の連絡が入っていれば、アポイント帳を組み直します。技工所から届いた被せ物や入れ歯が、その日に装着する患者さんの分そろっているかを確かめるのも、朝の大事な仕事です。これが届いていないと、患者さんに来てもらっても治療が進められません。

多くの医院では、9時15分ごろに短い朝礼をします。院長から、その日の注意点が伝えられます。「10時の初診の方は歯の痛みが強いと電話で言っていた」「11時の患者さんは麻酔で気分が悪くなったことがある」「午後に急患の枠を1つ空けておく」。こうした情報を全員で共有しておくことで、診療中の声かけが減り、動きが速くなります。

正直なところ、この朝の30分の密度は、求人票からはまったく読み取れません。私が以前、知人の歯科医院で朝の準備を見せてもらったとき、出勤から診療開始までの30分で、4台のユニットの立ち上げ、午前分の器具のセット、予約の確認、朝礼がすべて終わっていて、立ち止まっている人が1人もいないことに驚きました。「朝の準備は何分前から始めていますか」「その時間は勤務時間に含まれていますか」。この2つは、応募の前に必ず確認しておきたい点です。

午前診:処置が並行して進み、枠のずれを吸収する

9時30分、最初の患者さんが来院します。受付で診察券と保険の確認をして、問診票や前回からの変化を聞き、待合室で少し待ってもらいます。歯科助手がユニットへ案内し、エプロンをかけ、うがいの準備をして、歯科医師を呼びます。

歯科医院の午前診の特徴は、複数のユニットで処置が並行して進むことです。歯科医師が1台目で麻酔をかけ、麻酔が効くまでの数分間に2台目で型取りの確認をし、3台目では歯科衛生士が歯石除去をしている。歯科医師は、ユニットのあいだを行き来しながら診療を進めます。歯科助手は、歯科医師の動きを先読みして、次に使う器具を手元に渡し、唾液や水を吸引し、治療が終わったユニットを片付けて次の患者さんを迎える準備をします。

歯科衛生士の仕事は、この並行する処置の中で独立した枠を持つことが多いのが特徴です。日本歯科衛生士会は、診療所で働く歯科衛生士の仕事を次のように紹介しています。

歯科診療補助としては修復補綴治療や矯正、口腔外科、インプラントの術前、術中、術後の補助や管理をそれぞれが担当を受け持っていきます。ホワイトニング、カウンセリングなど歯科衛生士単独の業務も多くなり、また近年オーラルスキャナーの普及で当院も歯科衛生士がパソコンと向き合いながらスキャニングに取り組みます。 出典: jdha.or.jp

つまり、午前診の中で歯科衛生士は、歯科医師の補助に入る時間と、自分の担当患者さんを受け持つ時間を行き来しています。予防やメンテナンスに力を入れている医院ほど、歯科衛生士の独立した枠が多くなります。

午前診で起きやすいのが、枠のずれです。根の治療が思ったより長引く、患者さんが15分遅れて来る、痛みを訴える急患から電話が入る。こうしたずれを、受付と歯科助手が中心になって吸収します。次の患者さんに少し待ってもらう間に声をかける、歯科医師に先にレントゲンの指示を出してもらう、急患を短い枠で差し込む。こうした調整がうまい医院ほど、午前の終わりが時間どおりになります。

午前の最終予約は12時30分ごろで、13時に最後の患者さんが帰るのが理想です。実際には、会計と次回予約の案内、器具の片付けがあるので、スタッフが昼休みに入れるのは13時15分から13時30分ごろになることが多くなります。

昼休み:滅菌と技工物の段取りが詰まっている

13時から14時30分までの90分。歯科医院の昼休みは、数字だけ見ると長く見えます。けれど、この時間には患者さんのいないあいだにしかできない仕事が集中しています。

最も大きいのが、午前中に使った器具の滅菌です。使い終わった器具は、まず汚れを落とします。超音波洗浄機や、器具を洗って乾かすまでを自動で行う洗浄器にかけ、その後、滅菌バッグに入れてオートクレーブ(高温高圧の蒸気で滅菌する機械)にかけます。1回の運転には、機種によって30分から1時間ほどかかります。午後の診療に器具が間に合うように、昼休みの前半でこの機械を回し始めておく必要があります。

誰が滅菌をするかは、医院によって違います。歯科助手が中心になる医院、昼休みの前半を交代で担当する医院、滅菌だけを担当するパートを置いている医院。滅菌の担当が決まっていない医院では、手の空いた人がその都度動くことになり、昼休みが削られやすくなります。

技工物の段取りも、昼休みに片付けることが多い仕事です。午前中に型を取った患者さんの分を技工所に送る準備をし、技工所の担当者が集配に来るのに合わせて渡します。午後に装着する予定の被せ物がそろっているか、色や形の指示書に抜けがないかも、このタイミングで確認します。

医院によっては、昼休みにミーティングや院内勉強会を入れています。週に1回、30分ほど、新しい材料の扱い方や、患者さんへの説明の仕方をそろえる時間です。自費診療の説明を担当するトリートメントコーディネーターがいる医院では、昼休みの一部を使って患者さんのカウンセリングの準備をすることもあります。

ここで大事なのは、こうした仕事が「休憩時間」の中で行われていないかどうかです。労働基準法では、休憩時間は労働から完全に離れられる時間でなければなりません。昼休み90分のうち30分が滅菌やミーティングに使われているなら、それは労働時間です。見学や面接では、「昼休みの滅菌は誰がやっていますか」「ミーティングは休憩時間に入っていますか」と具体的に聞いてください。この答えが曖昧な医院は、1日の労働時間の見積もりも曖昧なことが多いという傾向があります。

昼休みの取り方を工夫している医院もあります。スタッフを前半と後半の2組に分けて、片方が滅菌や段取りをしているあいだに、もう片方が休む交代制です。この形なら、全員が同じ時間に仕事を抱えることがなく、休憩を確実に取れます。スタッフルームが狭い医院では、交代制のほうが落ち着いて昼食をとれるという事情もあります。

午後診と夕方のピーク:学生と会社員が集まる時間

14時30分に午後診が始まります。午後の早い時間は、比較的落ち着いていることが多い時間帯です。高齢の患者さんや、平日の日中に時間が取れる方、主婦の方の予約が中心になります。入れ歯の調整や、時間のかかる根の治療を、この時間に入れる医院もあります。

この落ち着いた時間には、診療以外の仕事が入ります。材料や消耗品の在庫を確認して発注をかける、技工所から届いた物を患者さんごとに仕分ける、そして定期検診の時期が来た患者さんへ案内を送る作業です。歯科医院では、この定期検診の案内(リコール)が、数か月先のアポイント帳を埋める大事な仕事になっています。はがきを使う医院もあれば、予約システムからメッセージを送る医院もあります。

午後の診療が大きく動くのは、16時を過ぎてからです。学校が終わった子どもの治療や矯正のチェック、仕事帰りの会社員の予約が、17時から19時にかけて集中します。歯科医院の1日で最も予約が詰まるのは、この夕方の時間帯だと言ってよいでしょう。

子どもの患者さんが増えると、1枠あたりの手間が変わります。治療を怖がる子どもに声をかけ、保護者に説明し、次の予約を学校の行事と重ならないように組む。矯正を扱う医院では、装置の調整やワイヤーの交換が短い枠で次々に入ります。仕事帰りの会社員は時間どおりに来られないこともあり、最終枠に近づくほど予約のずれが大きくなります。

受付にとっても、夕方は最も忙しい時間です。会計と次回予約の案内が続き、電話も鳴ります。「今日の夜、歯が痛くなったのですが診てもらえますか」という急患の問い合わせが入るのも、この時間帯です。急患を受けるかどうか、どの枠に入れるかは院長の判断になるので、受付は院長に確認を取りながら、アポイント帳を組み直していきます。

最終受付は、診療終了の30分前、18時30分に設定している医院が多くなります。けれど、最終枠の治療が延びたり、急患を受けたりすると、最後の患者さんが帰るのは19時を回ることもあります。夕方の時間帯に土曜日の午後や日曜日の診療を加えている医院では、平日と土日で1日の山の位置が変わります。

求人票で「最終受付」と「診療終了時刻」が別に書かれているか、診療終了時刻と「勤務終了時刻」の間が何分空いているかは、夕方の実態を知る手がかりになります。診療終了19時、勤務終了19時という書き方になっている場合は、片付けの時間がどう扱われているのかを確認しましょう。

診療後:片付け、締め、翌日の準備

19時に最後の患者さんが帰ると、終業に向けた作業が始まります。ここも、患者さんからは見えない、けれど毎日欠かせない仕事です。

まず、ユニットの清掃です。各ユニットの表面を拭き上げ、うがいの受け皿を洗い、バキュームの管に専用の洗浄液を流して、1日分の汚れを落とします。コンプレッサーの水抜きや、ゴミの分別もこの時間に行います。歯科医院からは、血液が付いたガーゼや使用済みの針といった医療廃棄物が出るので、一般のゴミとは分けて専用の容器に入れます。

同時に、午後に使った器具の最終の滅菌を回します。この運転が終わるまで待ってから、翌朝すぐに使えるように器具を所定の場所に戻す医院もあれば、翌朝の出勤後に取り出す医院もあります。どちらの運用かによって、終業の時刻が15分から30分変わります。

受付では、1日の会計を締めます。現金とキャッシュレス決済の合計を確認し、日報をつけます。月の初めには、前の月の診療報酬の請求(レセプト)の作業があります。保険診療の請求は、翌月の10日までに提出する決まりになっているため、月初の数日は、受付や事務の担当者の終業が遅くなりやすい時期です。

最後に、翌日の予約を確認します。技工物が届く予定か、初診の患者さんの問診票が用意されているか、翌日の午前に器具が何セット必要か。これを終業前に確認しておくと、翌朝の30分に余裕が生まれます。翌日に届くはずの技工物が遅れそうなときは、この時点で患者さんに連絡して予約をずらすこともあります。

終業の時刻は、医院によって19時20分から19時45分ごろが多くなります。残業が生まれる原因は、ほとんどの場合、最終枠の延長と、滅菌の待ち時間です。予約の最終枠を診療終了の30分前で必ず締める医院、診療後の滅菌を当番制にして全員が待たなくてよい仕組みにしている医院は、残業が少ない傾向が見られます。「残業ほぼなし」と書かれた求人を見たときは、その理由がこうした仕組みにあるのかどうかを聞いてみると、言葉の信頼度が分かります。

もう1つ、歯科医院ならではの診療後の時間の使い方があります。新人の歯科衛生士や歯科助手が、診療が終わった後に先輩を相手に歯石除去や器具の受け渡しを練習する光景です。技術を早く身につけられる反面、その時間が勤務として扱われているか、自主的な練習とされているかは医院によって違います。入職後の教育の仕組みとあわせて、面接で確認しておくとよい点です。

職種によって、1日の中身はこれだけ違う

ここまで医院全体の1日を追ってきましたが、同じ時間の中でも、職種によって見えている景色はかなり違います。

歯科医師の1日は、ユニットのあいだを移動しながら診断と治療を続ける1日です。診療時間中はほとんど座る時間がなく、昼休みと診療後に、カルテの記載、技工物の指示書、患者さんへの説明資料の準備が残ります。院長であれば、ここに経営の判断やスタッフとの面談が加わります。勤務医の場合は、担当する患者さんの枠が決まっていて、朝の準備や片付けの多くはスタッフが担う形になります。

歯科衛生士の1日は、担当患者さんの枠と、歯科医師の補助に入る時間の組み合わせです。予防中心の医院では、1日に8人から10人ほどの患者さんを担当し、歯石除去やクリーニング、ブラッシングの指導を行います。担当制を取っている医院では、同じ患者さんと数か月ごとに顔を合わせるので、口の中の変化を記録しておくことが仕事の一部になります。

歯科助手の1日は、診療の流れを止めないことに集中する1日です。ユニットの準備と片付け、器具の受け渡し、吸引、滅菌、在庫の管理。資格が必要な処置には関われませんが、診療のテンポはほとんど歯科助手の段取りで決まります。医院によっては受付と兼務し、午前は受付、午後はアシスタントというようにシフトで担当が変わることもあります。

受付の1日は、アポイント帳を守る1日です。予約の管理、会計、電話対応、急患の受け入れの調整、月初のレセプト。患者さんと最初と最後に接する立場なので、医院の印象を大きく左右します。受付に医療事務の知識があると、保険の説明や請求の作業がスムーズになります。

院内に技工室を持つ医院では、歯科技工士がいることもあります。技工士の1日は、朝のうちに当日装着分の最終確認をし、午前と午後は被せ物や入れ歯の製作、昼休みや夕方に歯科医師と形や色の打ち合わせをする流れです。診療の時間割とは少し離れたリズムで動いているのが特徴です。

注意したいのは、職種の境目が1日の中で動くことです。午前は担当患者さんを受け持っていた歯科衛生士が、夕方の混み合う時間には歯科医師の補助に入る。受付が手の空いた時間に滅菌を手伝う。人数の少ない医院ほど、この動きが大きくなります。自分の職種の仕事だけをしたいのか、医院全体の流れを見ながら動きたいのか。どちらが合うかによって、選ぶべき医院の規模が変わってきます。

医院のタイプで、1日の山の位置が変わる

同じ歯科医院でも、どのような診療に力を入れているかによって、1日の流れは大きく変わります。

保険診療が中心の一般歯科では、1枠30分で次々に患者さんを診ていくため、1日の患者数が多くなりやすい傾向があります。虫歯の治療や根の治療、入れ歯の調整といった処置が中心で、午前も午後も予約が詰まりやすく、滅菌の回数も増えます。テンポの速さに慣れると達成感がある一方、枠のずれが1日じゅう尾を引きやすい職場です。

自費診療や予防を中心にした医院では、1枠が45分から60分と長めに取られることが多く、1日の患者数は少なめです。その代わり、カウンセリングや説明の時間が長く、患者さんとの会話が1日の中で大きな比重を占めます。歯科衛生士が担当制で患者さんを受け持つ医院が多いのも、このタイプです。

矯正歯科の専門医院では、装置の調整のために短い枠が多く並び、学校が終わった後の夕方と土日に予約が集中します。平日の午前は比較的静かで、夕方から一気に動く1日です。訪問歯科診療をしている医院では、午前や午後の一部を使って、歯科医師と歯科衛生士が施設や自宅を訪問します。院内の診療と訪問のチームが分かれている医院では、同じ医院の中でも1日の動き方がまったく違う2つのグループがあることになります。

歯科衛生士の働く場所を見ると、歯科医院という職場の大きさがよく分かります。日本歯科衛生士会は、厚生労働省の統計をもとに次のようにまとめています。

就業場所別にみると、「診療所」が135,499人(構成割合90.6%)と最も多く、「診療所以外」は14,080人(構成割合9.4%)でした。 出典: jdha.or.jp

歯科衛生士の約9割が診療所で働いているということは、どの診療所を選ぶかが、そのまま働き方を選ぶことになるということです。分院を持つ大きな医療法人では、土日も診療してシフト制で回すところが多く、平日休みの人と土日休みの人が混ざります。院長と数人のスタッフで回す個人の医院とは、同じ診療時間でも1日の中で任される範囲や、休みの取り方が違ってきます。

求人票のどこを見れば、1日の実態が分かるか

ここまでの1日の流れを踏まえると、求人票で確認すべき点がはっきりしてきます。見るべきは、次の5つです。

1つ目は、診療時間と勤務時間の差です。診療開始の30分前から勤務時間が始まり、診療終了の30分後に勤務時間が終わる書き方になっていれば、朝の準備と片付けが勤務時間として扱われていると読めます。診療時間と勤務時間が同じ時刻で書かれている場合は、準備と片付けの時間がどうなっているかを確認しましょう。

2つ目は、休憩時間です。「休憩90分」と書かれていても、その中で滅菌や技工物の段取りが行われていないかを確認します。休憩時間が長い医院ほど中抜けの時間が長くなるので、自宅との距離も合わせて考えておきましょう。

3つ目は、ユニットの台数、1日の患者数、スタッフの人数の3つを並べることです。ユニット4台、1日の患者数40人、歯科衛生士3人、歯科助手2人といった情報がそろっていれば、1人あたりの負担を推測できます。患者数が多いのにスタッフが少ない医院は、テンポが速く、昼休みや終業が延びやすいと考えられます。

4つ目は、最終受付の時刻と、急患の扱いです。最終受付を診療終了の30分前で締めている医院、急患の枠をあらかじめ空けている医院は、夕方のずれが小さくなりやすい傾向があります。

5つ目は、滅菌の担当と、使っている機器です。洗浄から乾燥までを自動で行う機器を入れている医院や、滅菌の担当者を置いている医院では、手作業の洗浄に取られる時間が少なくなります。求人票に書かれていない場合も多いので、見学のときに滅菌室を見せてもらうとよいでしょう。

見学は、できれば夕方の時間帯にお願いしてみてください。朝や昼の落ち着いた時間より、1日で最も予約が詰まる時間を見るほうが、その医院の段取りの力がはっきり分かります。スタッフが声を荒らげずに動けているか、受付がアポイント帳の調整にどう対応しているか。30分見ていれば、求人票の数字の意味が立体的に見えてきます。

受付や医療事務として歯科医院に入ることを考えているなら、会計や診療報酬の請求の基礎を先に押さえておくと、1日の後半の仕事に早く慣れます。医療事務の知識を証明する資格の中身や試験の範囲は、医療事務技能審査試験(メディカルクラーク)で確かめられます。歯科助手として週に数日だけ働く形を考えている人には、受け入れている職場の特徴と探し方をまとめた週に数日だけ働く歯科助手|受け入れている職場と、探し方が参考になります。

1日の流れを知ったうえで、次にすること

歯科医院の1日は、アポイント帳、滅菌、技工物という3つの段取りで回っています。どの医院も診療時間の枠は似ていますが、この3つの段取りがかみ合っているかどうかで、昼休みが取れるか、何時に帰れるか、1日の終わりにどれくらい疲れているかが変わります。

次にすることは、応募を考えている医院の1日を、この記事の時間割に当てはめてみることです。朝は何分前に出勤するのか。昼休みの滅菌は誰がするのか。夕方の最終受付は何時か。診療後の片付けは何分かかるのか。この4つの答えがそろえば、求人票の数字だけでは見えなかった1日の姿が見えてきます。応募する医院を2つ以上に絞っているなら、同じ4つの質問を並べて比べてみてください。診療時間が同じでも、答えの違いがそのまま1日の違いになります。

働く時間を短くしたい人は、1日の中のどの時間帯を担当するかで、負担が大きく変わります。午前だけ、あるいは夕方だけの勤務がどう組まれているかは、勤務時間の組み方と任される範囲を整理した歯科医院のパートという働き方|勤務時間の組み方と、任される範囲で詳しく解説されています。

職場選びや働き方の見直しに迷ったときは、ひとりで決めずに専門家と整理する方法もあります。働く人のキャリアの悩みに応じる国家資格として、キャリアコンサルタントがあり、どのような支援が受けられるのかはキャリアコンサルタントの解説にまとまっています。

仕事を頼みたい人と引き受けたい人が出会う場を長く運営してきた立場から見ると、長く同じ職場で働き続けている人ほど、自分の担当範囲だけでなく、前後の段取りを知っているという傾向があります。歯科医院で言えば、自分が滅菌を担当していなくても、滅菌が何分かかるかを知っている人は、予約のずれにも落ち着いて対応できます。1日の流れを知ることは、職場を選ぶための情報であると同時に、入ってから信頼される働き方の土台にもなります。

仕事を頼む人と受ける人が、あいだに手数料を挟まずに直接つながる形では、頼む側は同じ予算でより多くを頼め、受ける側は手元に残る額が厚くなります。手数料0%の直接取引は、自分の時間の使い方を自分で決めたい人ほど、その良さを感じやすい仕組みです。

よくある質問

Q. 歯科医院のスタッフは何時に出勤することが多いですか?

診療開始の30分前ごろに出勤する医院が多くなります。この時間で、ユニットの立ち上げ、滅菌済み器具のセット、当日の予約の確認、朝礼を済ませます。朝の準備の時間が勤務時間に含まれているかは医院によって違うので、応募前に確認しておくと安心です。

Q. 歯科医院の昼休みは本当に休めますか?

昼休みは90分前後と長めですが、午前中に使った器具の滅菌や技工物の受け渡し、ミーティングが入ることがあります。休憩時間中に業務をしている場合は労働時間になります。見学や面接で、昼休みの滅菌を誰が担当しているのかを具体的に聞いておきましょう。

Q. 歯科医院で1日のうち最も忙しいのはいつですか?

学生や会社員の予約が集中する16時から19時ごろの夕方が最も忙しくなりやすい時間帯です。子どもの治療や矯正のチェック、仕事帰りの患者さんが続き、急患の問い合わせも入ります。最終枠の治療が延びると、終業時刻も後ろにずれやすくなります。

Q. 歯科医院の残業はどんなときに発生しますか?

主な原因は、最終枠の治療の延長と、診療後の滅菌の待ち時間です。月初は受付や事務の担当者にレセプト作業が加わります。最終受付を診療終了の30分前で締めている医院や、滅菌を当番制にしている医院は残業が少ない傾向があります。

この記事について

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編集部

監修:@SOHO編集部

2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを20年運営。編集部が事実確認のうえ公開しています。

公開:2026年5月31日最終更新:2026年9月18日
朝比奈 蒼

この記事を書いた人

朝比奈 蒼@SOHO編集部

ITメディア編集者

IT系メディアで編集・ライティングを担当。クラウドソーシング業界の動向やサービス比較など、客観的な視点での記事を執筆しています。

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