メール共有管理システムの選び方と、小さなチームで問い合わせ対応を分担する方法


この記事のポイント
- ✓メール共有管理システムの選び方を
- ✓小さなチームの目線で解説します
- ✓Gmailの共同トレイで足りる場面
info@やsupport@のような代表のメールアドレスを数人で見ていると、「誰がこのメールに返事をしたのか分からない」「同じお客さまに2人が別々に返信してしまった」「気づいたら3日前の問い合わせが放置されていた」といったことが起きます。そこで検討されるのが、メール共有管理システムです。
結論を先に書くと、小さなチームがメール共有管理システムを選ぶときは、「どこから問い合わせが届くか」「何人で分担するか」「1か月に何件届くか」の3つを先に数えると、選ぶべき道具が絞れます。問い合わせの多くがメールで直接届き、3人以上で分担するなら、専用のメール共有管理システムが候補になります。2〜3人で件数も少ないなら、Gmailのグループの共同トレイで足りることがあります。問い合わせの多くがサイトのフォームから届くなら、フォームの段階で担当と状況を管理する方法もあります。この記事では、選び方の順番と、分担の決まりの作り方を整理します。フォームから届く問い合わせを担当と状況つきで管理できるHalictのような道具も、選択肢の1つとして紹介します。
メール共有管理システムとは何か
メール共有管理システムとは、代表のメールアドレスに届いたメールを、複数の人で同じ画面から見て、担当者と対応の状況を付けて管理する道具のことです。メール共有システム、問い合わせ管理システムと呼ばれることもあります。
ふつうのメールソフトで代表のアドレスを共有すると、届いたメールは全員の受信箱に同じように並びます。誰かが返信しても、他の人の画面では「未返信」のままに見えます。メール共有管理システムでは、1通ごとに「未対応」「対応中」「完了」のような状況と、担当者が記録され、全員が同じ状況を見られます。
メール共有システムを提供している会社のコラムでは、選ぶときの視点を次のように書いています。
画面デザインは、何をすべきか迷わずわかるか、毎日利用するうえでストレスを感じないか確認しましょう。メール共有システムには、ステータス管理や担当者の設定など、通常のメールサービスにはない機能があります。 出典: yaritori.jp
ステータス管理とは、1通ごとの対応の状況を記録することです。毎日使う道具なので、機能の多さより、迷わず使えるかどうかが、チームに定着するかを左右します。
最初に数える3つのこと
製品を比べる前に、自分のチームの状況を数えます。数えずに製品の比較表を眺めると、機能の多い高価な製品に目が行きがちです。
1. 問い合わせがどこから届くか
1か月分の問い合わせを振り返り、届いた経路ごとに数えます。
・代表のメールアドレスに直接届いたメール
・サイトの問い合わせフォームから届いたもの
・電話
・LINEやSNSのメッセージ
メールで直接届くものが多いなら、メール共有管理システムが本命です。フォームから届くものが多いなら、フォームの段階で管理する方法も候補になります。電話やLINEも一緒に管理したいなら、複数の経路をまとめて扱える製品を選ぶ必要があります。
2. 何人で分担するか
問い合わせに返事をする人の数を数えます。メール共有管理システムの多くは、使う人の数で料金が決まります。今の人数に加えて、1年後に何人になりそうかも考えておきます。
3. 1か月に何件届くか
1か月に届く問い合わせの件数を数えます。件数が少ないうちは、無料や安価な方法で十分に回ることがあります。件数が多い場合や、繁忙期に急に増える場合は、返信のひな形や自動の振り分けの機能があると、手間が大きく減ります。
2〜3人ならGmailの共同トレイで足りることもある
Google Workspaceを使っている会社なら、Googleグループの「共同トレイ」という機能で、代表のアドレスの簡易な共有管理ができます。Google Workspaceのラーニングセンター「グループを共同トレイにする」によると、共同トレイのグループのメンバーは、権限に応じて次のことができます。
・会話への返信を引き受ける
・会話を別のグループのメンバーに割り当てる
・会話に完了、重複、対応不要のマークを付ける
・対応状況や担当者で会話を検索する
設定の流れは、共同トレイとして使うグループを作ってメンバーを加え、Googleグループのグループ設定で「追加の Google グループの機能を有効にする」から「共同トレイ」を選び、メンバーに必要な権限を割り当てる、という手順です。共同トレイを使うには、会話の履歴を有効にする必要があると書かれています。
追加の費用をかけずに、担当者と「完了」の状況を記録できるので、2〜3人で、1日に数件の問い合わせを受けるくらいなら、まずこれで始めてみる価値があります。
一方で、返信のひな形、対応の時間の集計、二重の返信を防ぐ仕組み、お客さまごとのやり取りの履歴の一覧といった機能が欲しくなったら、専用のメール共有管理システムを検討する時期です。
専用のメール共有管理システムが必要になる場面
次のような状況になったら、専用のメール共有管理システムの導入を考えます。
・返事をする人が3人以上いる
・1日に10件以上の問い合わせが届く
・同じお客さまに2人が返信してしまう事故が、月に1回以上起きている
・よく聞かれる質問への返事を、毎回一から書いている
・お客さまとの過去のやり取りを、メールソフトで検索して探している
・担当者が休むと、その人の担当の問い合わせが止まる
専用のシステムには、ふつうのメールソフトにない機能があります。主なものを整理します。
| 機能 | できること |
|---|---|
| 状況の管理 | 1通ごとに未対応・対応中・完了などを記録する |
| 担当者の設定 | 1通ごとに担当者を決め、誰が持っているかを全員が見られる |
| 二重返信の防止 | 誰かが返信を書いている間、他の人に知らせる |
| 返信のひな形 | よく使う返事を登録して、選ぶだけで本文に入れる |
| 社内のコメント | お客さまには見えない形で、対応の方針を相談する |
| 顧客ごとの履歴 | 同じお客さまとの過去のやり取りを一覧で見る |
| 承認 | 新人の返信を、送る前に先輩が確かめる |
| 集計 | 件数、返信までの時間、担当者ごとの件数を数える |
すべての機能が必要なチームは多くありません。今困っていることに対応する機能から、優先順位を付けます。
主な製品の料金の確かめ方
メール共有管理システムの料金は、使う人の数で決まる形が多く、製品によって最低の人数や、初期費用、契約の期間の決まりが違います。料金は改定されることがあるので、導入を決める前に、必ず各社の公式の料金ページで今日時点の記載を確かめてください。2026年10月時点で、公式サイトで確かめた主な製品の記載は次のとおりです。
| 製品 | 公式サイトの料金の記載 | 確かめておきたいこと |
|---|---|---|
| メールワイズ(サイボウズ) | クラウド版のスタンダードコースは1ユーザーあたり月額600円(税抜)、5ユーザーから。プレミアムコースは月額1,800円(税抜)。初期費用0円、30日間の無料試用あり | 登録できるメールアドレスの数がコースで違う |
| yaritori(Onebox) | 1ユーザーあたり月額1,980円から、最低利用人数は2人、初期費用0円、最低契約期間なし、7日間の無料試用あり | メールアドレスの数と基本機能の使用数で料金のプランが違う。詳しい料金表は資料で案内 |
| 楽楽自動応対(ラクス) | 月額料金は利用するユーザー数や保存するメールの通数に応じて変わり、料金表は資料で案内 | 公式サイトによると「メールディーラー」から名前が変わっている |
楽楽自動応対は、以前は「メールディーラー」という名前で知られていた製品です。公式サイトには「『メールディーラー』は『楽楽自動応対』に進化しました」と書かれています。古い比較記事では旧名のまま紹介されていることがあるので、検索するときは両方の名前で調べます。
料金を比べるときは、1ユーザーあたりの月額だけでなく、次の点も合わせて見ます。
・最低の契約人数(5人からの製品に、3人で入ると5人分の料金がかかる)
・初期費用の有無
・年払いの割引の有無
・保存できるメールの数や容量の上限
・登録できる代表のアドレスの数
選ぶときに確かめる5つのこと
料金に加えて、次の5つを確かめます。
1. 毎日使う画面が分かりやすいか
先に引用したとおり、毎日使う道具なので、画面の分かりやすさが定着を左右します。無料の試用の期間に、実際に返事をする人全員に触ってもらい、迷わず使えるかを確かめます。管理者だけで決めると、現場で使われないことがあります。
2. 今のメールの環境とつなげられるか
今使っているメールのサービス(Google Workspace、Microsoft 365、レンタルサーバーのメールなど)から、どうやってメールを取り込むかを確かめます。転送の設定で取り込む製品、メールサーバーに接続して取り込む製品などがあります。
3. 他の経路の問い合わせもまとめたいか
電話、LINE、フォームの問い合わせも同じ画面で管理したいかを決めます。まとめたい場合は、対応している経路と、その分の追加の料金を確かめます。
4. 情報の守り方
問い合わせのメールには、お客さまの名前や連絡先、ときには契約や支払いの情報も含まれます。ログインの二段階の確認、アクセスできる場所の制限、操作の記録など、情報を守る機能を確かめます。
5. 解約したときにデータを持ち出せるか
将来、別の製品に乗り換えることもあります。過去のメールや対応の履歴を、解約の前に書き出せるかを確かめておきます。
無料の試用の期間に確かめること
多くのメール共有管理システムには、無料で試せる期間があります。メールワイズは30日間、yaritoriは7日間の無料の試用を公式サイトで案内しています。期間は限られているので、何を確かめるかを先に決めてから申し込みます。
試用の期間に確かめたいことを、チェックリストにまとめます。
・代表のアドレスのメールが、取りこぼしなくシステムに届くか
・システムから送った返信が、お客さまの側で迷惑メールに入らずに届くか
・返信の差出人の名前とアドレスが、これまでと同じに見えるか
・担当者を決める、状況を変える、といった毎日の操作が、何回のクリックで済むか
・スマートフォンからも、問い合わせの確認と簡単な返事ができるか
・よく使う返事を、ひな形として登録して呼び出せるか
・過去のやり取りを、お客さまの名前やアドレスで検索できるか
・試用をやめるとき、取り込んだメールがどう扱われるか
2つめと3つめは、特に大切です。システムから送ったメールが迷惑メールに入るようでは、お客さまに返事が届きません。自分の個人のアドレスや、家族のアドレスに試しに送って、受け取る側からどう見えるかを確かめます。
試用の最後に、実際に使った人全員から「続けたいか、何が困ったか」を一言ずつ聞いて、導入するかどうかを決めます。
問い合わせの多くがフォームから届くなら
ここまではメールで直接届く問い合わせを前提に書いてきましたが、小さな事業者では、問い合わせの多くがサイトのフォームから届くことがよくあります。その場合、フォームから届いた問い合わせが一度メールに変換され、代表のアドレスに届き、それをメール共有管理システムで管理する、という流れになります。
この流れでは、フォームで聞いた項目(問い合わせの種類、予算、希望の時期など)が、メールの本文の中の文字になってしまい、種類ごとの絞り込みや集計がしにくくなります。
その場面で選択肢になるのがHalictです。Halictは、フォームを作り、届いた回答を1件ごとに担当・状況(ステージ)・タグ付きで管理し、同じ画面から返信まで送れるフォームのサービスです。メールに変換する前の、フォームの段階で担当と状況を管理するので、問い合わせの種類のような項目で絞り込んだり、件数を数えたりしやすくなります。返信したメールは開封まで記録されます。公式の料金ページによると、メンバー1人までのフリープランは0円、3人までのスタータープランは月額2,980円(税抜)、10人までのチームプランは月額7,800円(税抜)で、フォームの数と回答の数はどのプランでも無制限です。チームプランでは、メールのひな形、一斉メールと開封・クリックの計測、Teams・Slack・Chatworkへの通知が使えます。
Halictは、@SOHOを運営する株式会社ライフスケープが開発・提供しています。
ただし、Halictはフォームから届く問い合わせを管理する道具で、代表のメールアドレスに直接届くメールそのものを取り込んで管理する製品ではありません。直接届くメールが多いチームは、メール共有管理システムを選び、フォームの問い合わせが中心のチームはHalictのような道具を選ぶ、というように、問い合わせの届き方で使い分けます。両方が混ざる場合は、サイトの「お問い合わせ」をフォームに一本化し、メールで直接届く件数を減らしていく方法もあります。
小さなチームで分担を決めるときの決まり
道具を入れても、分担の決まりがなければ、対応の漏れはなくなりません。小さなチームで決めておきたい決まりを整理します。
担当の決め方
担当の決め方には、いくつかの型があります。
・種類で分ける:見積もりはAさん、不具合の報告はBさん、のように問い合わせの種類で分ける
・当番で分ける:曜日や時間帯ごとに、その時間に届いた問い合わせの担当を決める
・手の空いた人が取る:届いた順に、手の空いた人が「引き受ける」操作をして担当になる
小さなチームでは、「当番の人が、届いた問い合わせを種類に応じて振り分ける」という組み合わせが回しやすい形です。誰も担当になっていない問い合わせが残らないように、当番の人が1日の終わりに「未対応」を0にする責任を持ちます。
返事までの目安
「最初の返事は受付から1営業日以内」のように、返事までの目安を決めます。自動返信メールで目安を伝えている場合は、それと同じにします。目安を過ぎそうな問い合わせは、担当者が当番の人に知らせ、別の人に引き継ぎます。
状況の名前をそろえる
状況の名前は、チームで意味をそろえておきます。
| 状況 | 意味 |
|---|---|
| 未対応 | まだ誰も担当していない |
| 対応中 | 担当が決まり、返事を書いている、または調べている |
| お客さま待ち | 返事を送り、お客さまからの返事を待っている |
| 完了 | 対応が終わった |
「お客さま待ち」を分けておくと、自分たちが止めている問い合わせと、相手の返事を待っている問い合わせを区別できます。お客さま待ちのまま1週間たったものは、一度様子を聞く、と決めておくと、取りこぼしが減ります。
返信のひな形を作る
よく聞かれる質問への返事は、ひな形にします。ひな形があれば、担当者によって返事の質や言い回しがばらつきません。ひな形は、月に1回見直し、古くなった情報(料金、営業時間、手続きの方法)を直します。
休むときの引き継ぎ
担当者が休む前日には、自分が持っている「対応中」の問い合わせを、他の人に引き継ぎます。社内のコメントの機能があれば、「〇〇の件は、見積もりを送るところまで。金額は社内で確認済み」のように、どこまで進んでいるかを書いておきます。
返信のひな形の例
返信のひな形は、よく届く問い合わせから順に作ります。小さなチームで最初に作っておくと便利な3つの例を紹介します。〇〇の部分は、自分の会社に合わせて書き換えてください。
受付の一報
すぐに答えられない問い合わせに、まず受け取ったことを伝えるひな形です。
〇〇様
お問い合わせいただき、ありがとうございます。〇〇の〇〇です。 いただいた内容について、担当の者が確認しております。 〇月〇日までに、あらためてご連絡いたします。 今しばらくお待ちいただけますと幸いです。
情報が足りないときの確認
返事をするのに必要な情報が足りないときのひな形です。聞きたいことを箇条書きにすると、相手が答えやすくなります。
〇〇様
お問い合わせいただき、ありがとうございます。 ご案内にあたり、恐れ入りますが、次の点をお知らせいただけますでしょうか。
・ご利用中のプラン
・問題が起きた日時
・表示されたメッセージ(画面の写真でも構いません)
ご返信をいただき次第、確認してご連絡いたします。
対応が終わったとき
対応が終わったことを伝え、追加の質問の受け口を示すひな形です。
〇〇様
先日お問い合わせいただいた件について、対応が完了しましたのでお知らせいたします。 (対応の内容) ほかにご不明な点がございましたら、このメールにご返信ください。
ひな形は、そのまま送るのではなく、お客さまの名前や問い合わせの内容に合わせて一言書き添えてから送ります。ひな形そのままの返事は、受け取る側にも分かるものです。
対応の記録を振り返りに使う
メール共有管理システムを入れると、問い合わせの件数、種類、返事までの時間が記録として残ります。この記録を、月に1回振り返ると、問い合わせ対応そのものを減らすヒントが見つかります。
振り返りで見るのは次の3つです。
・件数の多い問い合わせの種類(上位3つ)
・返事までの時間が長かった問い合わせと、その理由
・お客さま待ちのまま止まっている問い合わせ
件数の多い問い合わせは、サイトの説明が足りていない部分を示しています。たとえば「料金の支払い方法」の問い合わせが毎月多いなら、料金のページに支払い方法を分かりやすく書き加えるだけで、問い合わせが減ることがあります。
返事までの時間が長かった問い合わせは、担当の決め方やひな形の不足が原因のことが多いものです。「誰が担当か決まらずに2日たった」なら、当番の決まりを見直します。「調べるのに時間がかかった」なら、調べた結果をひな形やチーム内の資料に残して、次回は早く答えられるようにします。
導入しても起きやすい失敗
メール共有管理システムを入れても、使い方の決まりが曖昧だと、思ったほど効果が出ないことがあります。よく起きる失敗と、その防ぎ方を整理します。
・一部の人が、これまでどおり自分のメールソフトから返信してしまう。システムに記録が残らず、二重の返信が起きる。代表のアドレスからの返信は、必ずシステムから送る決まりにする
・状況を「完了」にし忘れ、終わった問い合わせが「対応中」のまま溜まる。返信を送るときに状況も変える、と手順に組み込む
・ひな形が増えすぎて、どれを使えばよいか分からなくなる。ひな形は種類ごとに名前の付け方を決め、使われていないものは月に1回整理する
・管理者だけが設定を分かっていて、管理者が休むと誰も設定を変えられない。設定の手順を簡単な資料に残し、2人以上が扱えるようにする
道具を入れた直後の1か月は、週に1回、チームで5分だけ使い方を振り返る時間を作ると、こうした失敗に早く気づけます。
情報の守り方と、アカウントの管理
問い合わせのメールには、お客さまの個人情報が含まれます。メール共有管理システムを使うと、その情報をチームの全員が見られるようになるので、情報の守り方も決めておきます。
1つめは、アカウントの管理です。チームを離れた人や、業務委託の契約が終わった人のアカウントは、すぐに止めます。使う人の数で料金が決まる道具では、止め忘れたアカウントの分の料金もかかり続けます。
2つめは、見られる範囲です。採用の応募や、契約の相談のように、限られた人だけが見るべき問い合わせは、別の受け口(別のアドレスや別のフォーム)に分け、見られる人を絞ります。
3つめは、保存の期間です。対応が終わった問い合わせを、いつまで保存するかを決めます。お客さまとのやり取りの記録は、後から問い合わせの経緯を確かめるのに役立ちますが、必要以上に長く保存し続けるのは望ましくありません。会社の決まりや、取引の記録として保存が必要な期間を確かめたうえで、期間を決めます。
1人で問い合わせを受けている場合
ここまでは複数の人で分担する場合を中心に書いてきましたが、フリーランスや1人で事業をしている人も、問い合わせの管理に悩むことがあります。1人なら二重の返信は起きませんが、返事の漏れや、過去のやり取りを探す手間は同じように起きます。
1人の場合は、専用のメール共有管理システムを入れるより、次の工夫から始めるのが現実的です。
・代表のアドレスに届くメールに、メールソフトのフィルタでラベルを付け、問い合わせだけを1か所に集める
・返事が済んだメールはアーカイブし、受信箱には「まだ返事をしていないもの」だけが残るようにする
・返事に時間がかかるものには、メールソフトのスターやフラグを付け、毎朝確かめる
・よく使う返事は、メールソフトの定型文の機能に登録する
問い合わせがフォームから届くことが多いなら、フォームの段階で状況を記録できる道具を使えば、メールの受信箱を開かなくても、返事が済んでいない問い合わせを一覧で確かめられます。1人で始めて、手伝ってくれる人が加わったときに、そのまま複数人の管理に切り替えられる道具を選んでおくと、乗り換えの手間がかかりません。
問い合わせそのものを減らす工夫
問い合わせ対応の負担を減らすには、管理の道具を整えることに加えて、問い合わせそのものを減らす工夫も効きます。
1つめは、よく聞かれる質問への答えを、サイトに書いておくことです。料金、支払い方法、納期、対応できる地域、解約の方法など、同じ質問が繰り返し届いているものから書き加えます。問い合わせの記録を振り返ると、どの質問が多いかが分かります。
2つめは、問い合わせフォームに、問い合わせの種類を選ぶ項目を設け、種類ごとに答えのページへのリンクを示すことです。フォームを送る前に答えが見つかれば、問い合わせは届きません。
3つめは、自動返信メールに、よく聞かれる質問への答えのページへのリンクを書いておくことです。返事を待つ間に、お客さまが自分で答えを見つけることがあります。
問い合わせが減れば、残った問い合わせに丁寧に向き合う時間が生まれます。管理の道具は、件数を減らす工夫と組み合わせて、初めて効果を発揮します。
導入までの進め方
メール共有管理システムを導入するときは、次の順番で進めると、現場の混乱が少なく済みます。
- 今の問い合わせの届き方、人数、件数を数える
- 困っていることを3つまでに絞る
- 候補の製品を2〜3に絞り、無料の試用を申し込む
- 実際に返事をする人全員で、1〜2週間試す
- 状況の名前、担当の決め方、返事の目安を決める
- よく使う返事を、ひな形として登録する
- 本番の運用を始め、1か月後に振り返る
試用の期間は、実際の問い合わせで試すのが理想です。試用の画面に練習用のメールを流すだけでは、本番の件数や内容でうまく回るかが分かりません。
費用の考え方
メール共有管理システムの費用は、使う人の数に比例して増えます。費用に見合うかを考えるときは、今の問い合わせ対応にかかっている時間と、起きている事故の影響を比べます。
たとえば、3人のチームが、誰が返事をしたかを確かめるために毎日それぞれ15分を使っているなら、1か月(20営業日)で合計15時間になります。二重の返信や返事の漏れで、お客さまを失った経験があるなら、その影響も加えて考えます。
一方、費用は道具の料金だけではありません。導入の準備、設定、ひな形づくり、チームへの説明にかかる時間も費用です。小さなチームでは、この準備の時間が想像以上にかかることがあります。料金が安くても設定が難しい道具より、料金が少し高くても設定が簡単で、すぐに使い始められる道具のほうが、結果として安く済むこともあります。試用の期間に、準備にかかった時間も記録しておくと、比べる材料になります。
道具の費用の見直しについては、中小企業のSaaS費用管理術2026|サブスクコストを30%削減する方法で、月額で払う道具の費用を整理する方法を紹介しています。使う人の数で料金が決まる道具は、使っていないアカウントがないかを定期的に確かめるだけでも、費用を抑えられます。
問い合わせ対応の仕組みづくりは仕事になる
問い合わせ対応の仕組みは、多くの小さな会社で、担当者の工夫と根性で回っています。道具を選び、分担の決まりを作り、ひな形を整える仕事は、外部の人に頼みたいと考える会社も少なくありません。
フリーランス・在宅ワークの市場を20年運営してきた立場から見ると、問い合わせ対応やカスタマーサポートの仕事で長く頼まれる人は、目の前のメールに丁寧に返事をするだけでなく、「この質問が多いので、サイトの説明を直しましょう」「このひな形を作れば返事が早くなります」と、仕組みの改善を提案できる人です。直接取引の関係では、こうした提案が信頼になり、作業の依頼が運用の改善の相談へと広がっていきます。
問い合わせへの対応や事務を在宅で受ける仕事は、カスタマーサポート・事務全般のお仕事で、仕事の内容や必要なスキルを紹介しています。メール共有管理システムと社内の仕組みをつなぐ開発の仕事はWeb・業務システム開発のお仕事に、業務の仕組みを設計する立場の年収の水準はシステムコンサルタント・設計者の年収・単価相場にまとめています。
メール共有管理システムは、製品の比較から始めるのではなく、問い合わせの届き方、人数、件数を数えるところから始めると、自分のチームに合った道具が見つかります。道具を決めたら、状況の名前、担当の決め方、返事の目安の3つを決めてから使い始めてください。
よくある質問
Q. メール共有管理システムは何人から導入を考えればよいですか?
目安として、返事をする人が3人以上いる、1日に10件以上の問い合わせが届く、二重の返信や返事の漏れが月に1回以上起きている、といった状況になったら導入を考える時期です。2〜3人で件数も少ないなら、Google Workspaceを使っていればGoogleグループの共同トレイで、担当と完了の状況を記録する方法から始められます。
Q. メール共有管理システムの料金はどのくらいですか?
多くの製品は使う人の数で料金が決まります。2026年10月時点の公式サイトでは、メールワイズのクラウド版が1ユーザーあたり月額600円(税抜)で5ユーザーから、yaritoriが1ユーザーあたり月額1,980円からで最低2人と案内されています。最低の契約人数や初期費用、保存の上限も製品で違うので、導入前に公式の料金ページで確かめてください。
Q. メールディーラーと楽楽自動応対は同じ製品ですか?
公式サイトには「『メールディーラー』は『楽楽自動応対』に進化しました」と書かれており、提供元のラクスが製品の名前を変えています。古い比較記事では旧名のまま紹介されていることがあるので、調べるときは両方の名前で検索すると情報を見落としにくくなります。料金は利用人数や保存通数で変わり、公式サイトでは資料で案内しています。
Q. 問い合わせの多くがフォームから届く場合はどうすればよいですか?
フォームの問い合わせがメールに変換されてから管理すると、問い合わせの種類などの項目がメールの本文の文字になり、絞り込みや集計がしにくくなります。フォームの段階で担当と状況を管理できる道具を使う方法もあります。メールで直接届く問い合わせが多いか、フォームが中心かで、選ぶ道具を使い分けるのが現実的です。
この記事について
編集部
監修:@SOHO編集部
2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを運営。生成AIで作成した下書きを、一次情報と照らし合わせて確認したうえで公開しています。

この記事を書いた人
@SOHO編集部
フリーランス・在宅ワークの専門メディア
@SOHOは2004年から続く、日本のフリーランス・在宅ワーク向け案件サイトです。記事は生成AIで下書きを作り、数値・固有名・出典を一次情報と照らし合わせる確認の手順を経て公開しています。
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