60代で保育士を続ける|働ける場所と、勤務の組み立て方


この記事のポイント
- ✓60代の保育士が働ける場所
- ✓短時間勤務の組み立て方
- ✓ブランクからの復帰手順をまとめました
「保育士 60代」と検索するとき、その指先には少し不安が乗っていると思います。この年齢で採用してもらえるのか。体がついていくのか。若い先生たちの中に入って、浮いてしまわないか。
大丈夫です。まず結論からお伝えします。60代の保育士に求人はあります。ただし、探す場所と働き方の形を、これまでと同じにしていると見つかりにくい。ここが一番のポイントです。
この記事では、60代の保育士が働ける場所の種類、勤務時間の組み立て方、体の負担の減らし方、そしてブランクからの復帰の手順を、順番に整理していきます。ひとつずつ、一緒に見ていきましょう。
「60代の保育士に求人はあるのか」という不安を、まずほどきます
こういうご相談が本当によくあります。「求人サイトを見ても、若い人向けばかりに見えて」という声です。
でも、これは見え方の問題であることが多いんです。求人票には年齢の上限が書かれていないケースが大半で、その代わりに「40代活躍」「50代活躍」「60代活躍」といった条件タグで示されています。実際の募集の書かれ方を見てみます。
40代活躍50代活躍60代活躍WEB面接可主夫・主婦OK保育士未経験可ブランク可年齢不問固定残業代 29,000円~(20時間分、超過分は法定通り支給)… 出典: 求人ボックス
ここに並んでいるのは、年齢不問、ブランク可、主婦の方も歓迎、オンラインでの面接も可能、という条件です。つまり、探す側が使うべき検索の言葉は「60代」ではなく、こうした条件タグのほうなんです。年齢で絞ると求人は減って見えます。条件で絞ると、まったく違う景色が出てきます。
背景の事情もお話ししておきます。保育の現場は、資格を持っている人が足りていない状態が長く続いています。資格を持っているのに保育の仕事に就いていない人、いわゆる潜在保育士の存在は、国も自治体も課題として扱ってきました。この状況で、資格を持ち、子どもと関わってきた経験もある人を、年齢だけで断る余裕は現場にありません。
もうひとつ、園の側の事情として、フルタイムで働ける若い保育士だけではシフトが埋まらないという現実があります。早朝の受け入れ、夕方の延長保育、行事の準備日、職員の研修日。こうした「一部の時間帯だけ人が欲しい」という穴は、常にあります。ここに入れる人は、園にとってありがたい存在なんです。
だから、不安のかたちを少し変えてみてください。「60代の私を雇ってくれる園があるだろうか」ではなく、「私はどの時間帯なら入れるだろうか」。この問いに変えた瞬間に、話は前に進み始めます。
60代の保育士が働ける場所は、認可保育園だけではありません
保育士の資格が活きる場所は、思っているよりずっと広いです。ここを知らないまま、認可保育園の正規職員の求人だけを見て「無理そうだ」と感じてしまう方が多い。順番に見ていきます。
小規模保育事業は、0歳から2歳児を少人数で預かる形態です。定員が小さいため、園全体の人数が少なく、行事も大がかりになりません。走り回る年齢の子が少ない分、体力面での負担は比較的軽くなります。落ち着いた環境で、一人ひとりとゆっくり関わりたい方に向いています。
認定こども園は、幼稚園と保育所の機能を併せ持つ施設です。規模も運営方針も園ごとに違うため、一括りにはできません。ただ、教育的な活動の比重が高い園では、これまでの経験が活きる場面が多くなります。
学童保育(放課後児童クラブ)は、小学生を対象とした場です。保育士資格が放課後児童支援員の資格要件に関わる位置づけになっており、資格を持っていることが強みになります。勤務時間が平日の午後からになるため、午前中に自分の時間を持ちたい方には合います。ただし、小学生の相手は乳幼児とは別の体力を使います。外遊びに付き合う場面もあるので、そこは見学時に確認してください。
児童館や子育て支援センターは、親子が一緒に来る場です。子どもだけを預かるのではなく、保護者の相談にのる場面が多くなります。子育てを経験してきた年代の職員は、保護者から見て話しやすい存在になります。ここは、60代であることがそのまま強みになる領域です。
一時預かりや病児保育は、日によって預かる子が変わります。継続的な関係づくりより、その日その時間を安全に過ごしてもらうことに集中する形です。担任としての責任やクラス運営の負担がないため、精神的な重さが違います。
企業内保育所や院内保育所は、その企業や病院で働く人の子どもを預かる形です。定員が小さく、保護者との関係も落ち着いていることが多い。夜勤帯の保育を含む施設もあるので、募集内容はよく確認してください。
そして、ベビーシッターや訪問型の保育です。1対1で子どもと向き合う形になります。集団を統率する必要がないので、大きな声を出し続ける場面がありません。声を張ることがつらくなってきた方が、こちらに移るケースがあります。
この中に、必ずどれかは合う場所があります。「保育士の仕事」という言葉を、認可保育園のクラス担任だけに固定しないでください。ここをほどくだけで、選択肢が何倍にもなります。
「1日何時間、週何日」から決める。ここが一番大事です
60代の働き方を考えるとき、順番があります。園を探してから勤務時間を相談するのではなく、勤務時間を先に決めてから園を探す。この順番にすると、うまくいく確率がぐっと上がります。
なぜかというと、園が求人を出す理由の多くが「特定の時間帯の穴を埋めたい」だからです。ここに、こちらの「この時間なら入れます」がぴたりと合うと、話が一気に進みます。逆に、こちらの条件が曖昧なままだと、園も配置を組めません。
具体的に、園が人を求めやすい時間帯は3つあります。
早朝の時間帯です。開園直後の受け入れの時間で、朝の早い時間だけの募集が出ます。実際に、こんなご相談も寄せられています。
保育園での、早朝の保育補助の仕事ですが、60代主婦には無理でしょうか? 朝7時から9時までの2時間の仕事です。 子どもの相手は好きですし、割と健康なほうです。 それでも、年齢的にはきびしいでしょうか? 出典: detail.chiebukuro.yahoo.co.jp
この方が心配されている朝7時から9時までの2時間という枠は、実は60代の方が入りやすい時間帯のひとつです。人数の少ない時間帯なので、走り回る場面より、登園してきた子を受け止めて落ち着かせる場面が中心になります。保護者と短く言葉を交わす時間でもあります。ここに、人生の経験がそのまま出ます。
早起きが苦にならないかどうかが、唯一にして最大の条件です。逆に言えば、それさえ合えば、体力面の心配はクラス担任ほどではありません。
2つ目は、夕方から夜にかけての延長保育の時間帯です。子どもの人数が減っていく時間で、一人ひとりとゆっくり関われます。保護者のお迎えを一緒に待つ時間は、子どもにとって不安になりやすい時間でもあります。ここに落ち着いた大人がいることの価値は、とても大きい。
3つ目は、週2日から3日の固定シフトです。フルタイムではなく、決まった曜日だけ入る形です。園の側も、担任の休みや研修に合わせて人を配置したいので、曜日が固定されているほうが組みやすい。
この3つのどれかに、自分の生活を合わせられるかを考えてみてください。そして応募のときには、「週何日でも大丈夫です」ではなく「火曜と木曜の朝、7時から10時まで入れます」と具体的に伝える。この一言の違いで、採用の可否が変わることがあります。
体の負担を、あらかじめ減らしておく
保育の仕事は、思っている以上に体を使います。ここを精神論で乗り切ろうとすると、続きません。具体的に、どこに負担がかかるかを分けて考えます。
抱っこと抱き上げです。0歳から2歳児のクラスでは、抱き上げる回数が非常に多くなります。腰への負担が最も大きいのがここです。3歳以上児のクラスに配属されると、この負担は明確に減ります。応募のときに、希望するクラスの年齢を伝えてよいんです。「何歳児でも」と言う必要はありません。
しゃがむ、床に座るという姿勢です。保育の現場では、子どもの目線に合わせるために、しゃがむ姿勢と床に座る姿勢が繰り返されます。膝に不安がある方には、これが積み重なります。低い椅子を使わせてもらえるか、床座りの場面がどのくらいあるかは、見学時に見ておくと安心です。
声を出し続けることです。これは見落とされがちですが、喉への負担は年齢とともに効いてきます。大人数のクラスで一日中声を張る形と、少人数で近くから話しかける形では、まったく違います。ここも、小規模保育や一時預かりを選ぶ理由になります。
行事の準備です。運動会、発表会、作品展。これらの準備は、通常業務の上に乗ってきます。園によって行事の規模はまったく違い、「行事少なめ」を打ち出している園もあります。求人票にその記載があるかどうかは、実は勤務のきつさを測る重要な手がかりです。
そして、書類仕事です。連絡帳、日誌、指導計画、個別記録。これらが手書きの園と、パソコンやタブレットで入力する園があります。デジタル化されている園のほうが、持ち帰りの負担は減る傾向があります。入力操作に抵抗がないことは、60代の応募者にとって明確な強みになります。文書作成の基礎を客観的に示したい場合は、ビジネス文書検定のように、社会人としての書類作成能力を証明できる資格を確認してみるのも一案です。保護者向けのお便りや報告文書の作成にも、そのまま活きます。
負担を減らすというのは、我慢を減らすことではありません。最初から、自分の体に合う配置を選ぶということです。ここは遠慮する場面ではありません。
資格のこと。登録は、今も生きていますか
保育士の資格について、確認しておきたいことがあります。
保育士資格は、都道府県への登録を経て保育士として名乗れる仕組みになっています。更新制ではないため、取得して登録した資格が年齢によって失効することはありません。何十年も前に取った資格でも、登録が済んでいれば有効です。ここは安心してください。
ただし、確認が必要な場合があります。結婚などで姓が変わっている場合の記載事項の変更、登録証を紛失している場合の再交付です。これらの手続きは所定の窓口で行う必要があります。手続きの方法や必要書類は制度の運用によって変わることがあるので、お住まいの都道府県の担当窓口、または厚生労働省の案内で最新の情報を確認してください。応募の直前になって登録証が見つからず慌てる方が、実は少なくありません。動き出す前に、手元を確認しておくと安心です。
もうひとつ、資格を取ったけれど登録をしていない、という方もいます。養成校を卒業した年に登録手続きを済ませていないケースです。この場合は、登録の手続きから始めることになります。時間がかかる場合があるので、早めに窓口へ問い合わせてください。
ブランクがある方が気にされるのが、「今の保育は昔と違うのでは」という点です。ここは正直に言うと、変わっている部分があります。子どもへの関わり方の考え方、保護者対応の丁寧さ、記録の残し方、安全管理の基準。この4つは、以前より明確になっています。
ただ、これは学び直せる範囲のことです。自治体によっては、保育の仕事に戻りたい人向けの研修や相談の窓口が用意されています。名称や実施の有無は自治体ごとに異なるので、お住まいの市区町村の保育担当課に問い合わせてみてください。無料で受けられる研修が用意されている地域もあります。
そして、変わっていない部分のほうが、実は本質です。子どもの様子を見て変化に気づくこと、泣いている子のそばにいること、保護者の不安を受け止めること。ここは何十年経っても変わりません。あなたが持っているのは、この部分です。
資格を持たない状態から保育に関わりたい場合
この記事を読んでいる方の中には、保育士の資格はないけれど子どもに関わる仕事をしたい、という方もいると思います。
保育補助という形での募集があります。保育士の指示のもとで、遊びの見守り、食事の準備、清掃、環境整備などを担う仕事です。この立場では、資格を必須としない募集が出ています。求人票で「無資格可」「保育補助」と書かれているものがそれにあたります。
ただし、注意していただきたい点があります。保育士としての配置基準に数えられる立場と、補助として関わる立場は、制度上まったく別のものです。求人票の職種名と業務内容を混同しないでください。配置基準や資格要件の詳細は制度で定められているので、疑問があれば自治体の保育担当窓口で確認してください。
保育補助から入って、働きながら保育士試験の受験を目指す方もいます。試験の実施回数や受験資格には要件があるため、こちらも公式の案内で確認してください。年齢による受験の制限は設けられていません。
いずれにしても、「子どもの近くにいる仕事」への入り口は、ひとつではありません。資格の有無で最初から諦める必要はない、ということはお伝えしておきます。
賃金と年金、働く時間の設計をどう合わせるか
働き方を決めるとき、収入の話は避けて通れません。ここも一緒に整理しておきます。
まず、保育士の給与がどう組み立てられているかを見ておきましょう。求人票には、こんな内訳が書かれることがあります。
【経験・資格】未経験可ブランク可年齢不問新卒可学歴不問40代活躍50代活躍60代活躍・保育士資格…<給与内訳>基本給150,000円資格手当10,000円処遇改善40,000円固定残業代40… 出典: 求人ボックス
これはひとつの園の例であり、地域や運営主体によって金額はまったく違います。ただ、構造として見ておきたいのは、基本給のほかに資格手当や処遇改善に関する手当が積み上がっているという点です。保育士資格を持っていることが、金額として反映される仕組みになっています。
そして、固定残業代という項目がある点にも注目してください。この記載がある場合、その金額に何時間分の残業が含まれているのかを必ず確認します。表示されている総額が大きく見えても、そこに残業代が含まれているなら、実際の時給換算は変わってきます。60代で働く時間を絞りたい方にとっては、ここは特に重要です。
年金を受け取りながら働く場合の話もしておきます。賃金の額によって年金額が調整される仕組みがあり、基準や計算方法は改定されることがあります。受給を開始する年齢の選び方によっても影響が変わるため、一般論では判断できません。日本年金機構の案内を見たうえで、ねんきん定期便を持って年金事務所に相談し、自分のケースで試算してもらうのが確実です。
「働きすぎると損をする」という言い方を耳にすることがありますが、正確ではありません。損得は、賃金、年金、社会保険料、税を合わせて見ないと判断できません。そして、働くことで得られるものは金額だけではないという点も、忘れないでいてください。
社会保険についても触れておきます。労働時間や勤務日数によって加入の要否が変わります。加入しない選択をすれば手取りは増えますが、将来の年金額や、病気で働けなくなったときの保障に影響します。目先の手取りだけで決めない。ここは、一度立ち止まって考える価値があります。
保育の経験を、現場の外でも使うという考え方
現場に立ち続けることだけが、保育士の資格の使い道ではありません。体力の変化に備えて、選択肢を知っておくと気持ちが軽くなります。
ひとつは、書く仕事です。保育の現場を長く見てきた人が書いた文章には、実感の重みがあります。子育て中の保護者向けの記事、保育者向けの実務的な読み物、研修用の教材。こうした文章の書き手は、実は不足しています。文章に関わる仕事の水準を知っておきたい方は、著述家,記者,編集者の年収・単価相場で、文章を職業とする人たちの収入の目安を確認してみてください。
もうひとつは、相談を受ける仕事です。子育て支援の窓口、保護者向けの講座、地域の見守り活動。ここは、保育の知識と人生経験の両方が要る領域です。60代であることが、そのまま信頼につながります。
在宅で完結する仕事に関心が向く方もいます。保育の現場でも記録や連絡のデジタル化が進んでおり、システムの導入を現場に定着させる役割にニーズが生まれています。AIコンサル・業務活用支援のお仕事では、ツールを業務に取り入れて定着させる支援の仕事がどう成り立っているかが整理されています。現場を知っている人がこの役割を担うと、机上の説明にならずに済みます。
保育とは離れますが、世の中の仕事の広がりを知っておくことも、視野を保つうえで役に立ちます。AI・マーケティング・セキュリティのお仕事やアプリケーション開発のお仕事では、システムを作る側や守る側の仕事の中身がまとめられています。ソフトウェア作成者の年収・単価相場を見れば、技術職の報酬がどう形成されているかも分かります。技術の基礎を証明するCCNA(シスコ技術者認定)のような資格もあり、園のIT環境に詳しい職員が一人いるだけで、現場の困りごとは減ります。
オンラインでの面接や保護者面談も、今では珍しくありません。Zoom・Teams・Google Meetを比較|フリーランスの打ち合わせに最適なのは?【2026年版】では、主要な会議ツールの違いと使い分けが整理されています。先ほどの求人票にも「WEB面接可」とありました。この操作に慣れておくことは、応募の段階から効いてきます。
これらは、今すぐ転向しましょうという話ではありません。「現場が難しくなったら終わり」ではない、と知っておくだけで、目の前の一日の重さが変わるんです。
応募から採用までの進め方を、ステップで整理します
「動いたほうがいいのは分かるけれど、何から始めればいいのか」。ここで止まってしまう方が多いので、順番を書いておきます。
最初のステップは、書類の確認です。保育士登録証が手元にあるか、姓の変更が反映されているか。これを最初にやってください。応募の直前に見つからないと、その園の募集が締め切られてしまうことがあります。履歴書に貼る写真も、古いものを使わずに撮り直しておきましょう。
2つ目のステップは、勤務条件を紙に書き出すことです。入れる曜日、入れる時間帯、通勤にかけられる時間、担当できるクラスの年齢、対応が難しい業務。この5つを、箇条書きで自分用に書きます。頭の中だけで考えていると、面接の場で言葉になりません。書いておけば、そのまま伝えられます。
3つ目のステップは、探し方を変えることです。年齢で検索するのをやめて、「週3日」「短時間」「小規模保育」「一時預かり」「保育補助」といった条件の言葉で探します。自治体が運営する保育人材の紹介窓口を利用する方法もあります。地域によって名称が異なるので、市区町村の保育担当課に問い合わせてみてください。無料で相談に応じてもらえる窓口が用意されている地域があります。
4つ目のステップは、見学です。応募の前でも、多くの園は見学を受け入れています。見るべきなのは、設備の新しさではありません。職員同士が業務中に声を掛け合っているか、子どもが職員に自分から近づいていくか、この2つです。この2つが揃っている園は、入ってからも大きく外しません。逆に、見学を断る園は、その時点で候補から外して構いません。
5つ目のステップは、面接です。ここで大事なのは、年齢についての言い訳をしないことです。「この歳でお恥ずかしいのですが」という前置きは、必要ありません。伝えるべきなのは、入れる時間帯と、任せてもらえる業務です。園が知りたいのはそこだけなんです。
6つ目のステップは、条件の確認です。採用が決まったら、労働条件を書いた書面を必ず受け取ってください。勤務時間、賃金、契約の期間、更新の有無。この4点が書かれているかを確かめます。口頭の説明だけで働き始めると、後から食い違いが出たときに拠りどころがなくなります。
このステップを踏むと、だいたいの方が想像より早く決まります。止まっている理由の多くは、能力ではなく、順番が分からないことにあります。
職場に入ってからの人間関係。ここが実は一番の心配ごと
こういうご相談も、とても多いんです。「若い先生たちの中に、自分が入っていいのだろうか」。
正直にお伝えすると、ここでつまずくケースはあります。ただ、つまずく理由は年齢そのものではありません。入ったばかりの時期に、前の職場のやり方を持ち込んでしまうこと。これが原因のほとんどです。
長く保育をしてきた方ほど、自分の中に確立したやり方があります。それは財産です。ただ、園にはその園の手順があって、それは今いる職員たちが積み上げてきたものです。入って最初の数か月は、その手順に一度乗ってみる。理由が分からない手順があれば、批判ではなく質問として聞いてみる。この順番を守るだけで、周囲の受け止めはまったく変わります。
年下の先輩に教わることに、抵抗を感じる方もいます。この感情は自然なものです。無理に消そうとしなくていい。ただ、口に出さないことだけは意識してください。「教わる姿勢がある人」というのは、どの年代でも歓迎されます。そして、教える側の若い職員は、実は緊張しています。こちらから「教えてくださってありがとう」と言えると、その緊張がほどけます。
もうひとつ、伝え方の話をします。気づいたことがあったとき、「これは違うと思う」と言うのと、「こういう場合はどうしているんですか」と聞くのでは、受け取られ方が正反対になります。同じ内容でも、問いの形にすると相手は防御しません。これは心理学の難しい話ではなく、日常の会話のコツです。
そして、あなたにしかできない役割もあります。若い職員が保護者対応で困っているとき、そばで聞いていて後から一言かけられる人。子どもが泣き止まないときに、代わって抱っこできる人。行事の前で職員全体がぴりぴりしているときに、場の空気を緩められる人。こうした役割は、経験を積んだ人にしか担えません。年齢は、そこで初めて意味を持ちます。
焦らなくて大丈夫です。最初の3か月は覚えることに集中して、そのあとから少しずつ、自分の持ち場を作っていけばいいんです。
求人票のどこを見れば、入ってからの後悔が減るか
求人票は情報が詰まっていますが、見る順番があります。ここを押さえておくと、応募先の絞り込みがずっと楽になります。
最初に見るのは、職種名ではなく業務内容の欄です。「保育士」と書かれていても、担任として持つのか、フリーの立場で複数のクラスに入るのか、補助として入るのかで、負担はまったく違います。担任を持たない「フリー保育士」の枠は、クラス運営の責任や書類の負担が軽く、60代の方が入りやすい配置です。この言葉が業務内容に書かれていたら、注目してください。
次に見るのは、勤務時間の書き方です。「7:30から18:00のうち実働5時間、シフト制」と書かれている場合、その中のどの時間帯に入るかは面接で決まります。自分の希望と合うかどうかは、この欄だけでは分かりません。応募の前に問い合わせて構いません。むしろ、そこを確認してくる応募者は、園から見て話が早い相手です。
3つ目に見るのが、園の規模と定員です。定員が小さい園ほど、職員一人あたりが関わる子どもの数は少なくなります。ただし職員の総数も少ないため、誰かが休んだときの負担は大きくなります。ここは一長一短です。大規模園は分担が細かい代わりに、会議や連絡事項が増えます。どちらが自分に向くかは、これまでの経験で判断できるはずです。
4つ目が、行事に関する記載です。「行事少なめ」「持ち帰り仕事なし」「残業ほぼなし」といった言葉が書かれている園は、その点を売りにしています。裏を返せば、書かれていない園では確認が必要だということです。面接の場で「行事の準備は勤務時間内に収まりますか」と聞いてください。この質問を嫌がる園なら、行かないほうがいい。
5つ目が、休みの取り方です。有給休暇の取得実績、シフトの希望をいつまでに出すのか、急な休みにどう対応しているのか。60代で働くなら、通院や家族の用事で休む場面は必ず出てきます。休みにくい職場を選んでしまうと、そこが続かない理由になります。
そして最後に、これは求人票には書かれていないことですが、園長や主任がどんな人かを見てください。見学のときに少しでも話せたら、その人の話し方を見ます。職員の話をするときに、名前で呼んでいるか。子どもの話をするときに、具体的なエピソードが出てくるか。ここに、その園の文化が出ます。
条件のよさより、続けられるかどうかで選ぶ。これは60代に限った話ではありませんが、60代ではとくに効いてきます。
20年この市場を見てきた立場からの観察
ここからは、フリーランスや在宅で働く人の市場を20年運営してきた立場から見えていることを、少しだけお話しします。
運営者として見てきた限りでは、長く働き続けている人には共通点があります。作業をたくさんこなす人ではなく、「この人がいると場が落ち着く」と思われている人です。保育の現場に置き換えるなら、子どもが泣き止む先生、保護者が安心して話しかけられる先生、新人が質問しやすい先生。こうした人は、動く速さが以前ほどではなくなっても、園の側が配置を工夫して残そうとします。
逆に、動ける量だけで評価されてきた人は、動ける量が落ちた時点で居場所を失いやすい。60代で働き方を組み替えるときに効いてくるのは、それまでに積み重ねた信頼のほうです。そして、それはもう十分に積んでこられたはずです。
もうひとつ、お金の流れの話をします。この市場を見ていて何度も確認できたのは、あいだに入る事業者が増えるほど、働く側の手取りは薄くなるという構造です。依頼する側は同じ金額を出しているのに、受け取る側に届く金額は目減りする。中間の手数料が乗らない直接の取引では、これが起きません。依頼する側は同じ予算でより多くを頼めて、受け取る側は同じ働きでも手取りが厚くなる。手数料0%という条件が意味を持つのは、金額の大小の話ではなく、働いたぶんがそのまま残るという質の話です。
保育は園に雇われて働く形が中心なので、この構造がそのまま当てはまる場面は多くありません。ただ、講座の講師を個人で引き受ける、子育て支援の相談を業務委託で受ける、教材の作成に関わるといった形は、少しずつ広がっています。現場の勤務時間を絞ったぶんを、こうした形で補うという設計は、これからの60代の保育士にとって現実的な選択肢になっていきます。
最後に、いちばんお伝えしたいことを書きます。60代で保育士を続けるというのは、若い頃と同じ働き方を守ることではありません。働く場所を選び直して、勤務時間を組み替えて、体に合う配置に移る。この組み替えは、退くことではなく、続けるための工夫です。
資格は失効しません。経験も消えません。変えるのは、働き方の形だけです。そこだけを、ご自身の手で選び直してください。
よくある質問
Q. 60代でも保育士として採用されますか?
採用されています。求人票では年齢の上限が書かれず、「60代活躍」「年齢不問」「ブランク可」といった条件タグで示されることが多いため、年齢で検索すると求人が少なく見えてしまいます。条件で絞って探すと候補が増えます。応募時は勤務できる曜日と時間帯を具体的に伝えると話が進みやすくなります。
Q. 何十年も前に取った保育士資格は今も使えますか?
保育士資格は更新制ではないため、都道府県への登録が済んでいれば年齢による失効はありません。ただし姓が変わっている場合の記載事項の変更や、登録証を紛失している場合の再交付の手続きが必要です。手続き方法は運用が変わることがあるので、お住まいの都道府県の担当窓口で確認してください。
Q. 体力に不安があります。負担の軽い働き方はありますか?
早朝の受け入れ時間帯、夕方の延長保育、週2日から3日の固定シフトは、60代の方が入りやすい枠です。また0歳から2歳児は抱き上げの回数が多いため、3歳以上児のクラスや、小規模保育、一時預かり、児童館などを選ぶと身体的な負担は軽くなります。希望するクラスの年齢は応募時に伝えて構いません。
Q. 保育士の資格がなくても保育の仕事に就けますか?
保育補助という立場であれば、資格を必須としない募集があります。保育士の指示のもとで遊びの見守りや食事の準備、環境整備などを担う仕事です。ただし保育士として配置基準に数えられる立場とは制度上まったく別のものなので、求人票の職種名と業務内容をよく確認し、疑問は自治体の保育担当窓口で確かめてください。
この記事について
編集部
監修:@SOHO編集部
2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを20年運営。編集部が事実確認のうえ公開しています。

この記事を書いた人
中西 直美@SOHO編集部
産業カウンセラー・キャリアコンサルタント
大手人材会社でキャリアカウンセラーとして15年間従事した後、フリーランスの産業カウンセラーとして独立。在宅ワーカーのメンタルヘルスケアを専門に活動しています。
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