認可保育園へ転職するという選択|前の職場との落差と、決め手


この記事のポイント
- ✓前の職場と何がどう変わるのかを人員体制・書類・給与の決まり方・雇用の安定性の4点から整理しました
- ✓求人票と労働条件通知書の突き合わせ方
- ✓退職から入職までの手続きまで具体的に解説します
認可保育園への転職を考えている方から、よく同じ質問を受けます。「認可に移れば楽になりますか」。結論から言うと、楽にはなりません。ただし、しんどさの種類が確実に変わります。
前の職場が認可外だった方、小規模保育だった方、企業主導型だった方、幼稚園だった方。どこから来るかによって、感じる落差の中身がまったく違います。そして転職で失敗する人のほとんどは、落差そのものではなく、落差を事前に知らなかったことでつまずいています。これ、知らない人が本当に多いんです。
この記事では、認可保育園という職場に入ったときに前職と何が変わるのかを、人員体制、書類、給与の決まり方、雇用の安定性という4つの軸で整理します。そのうえで、求人票と労働条件通知書をどう突き合わせれば入職後のギャップを潰せるかまで書きます。労働条件の明示は法律で発注者側、つまり雇う側に義務づけられているものです。あなたが遠慮する話ではありません。
認可保育園に転職してくる人は、どこから来ているのか
まず前提を揃えます。保育の職場は施設形態が細かく分かれていて、同じ保育士資格でも働き方がかなり違います。
保育士の転職先を選ぶ際、施設形態によって給与水準・業務内容・働く環境・安定性がかなり異なります。「とりあえず条件の良さそうなところに応募する」という選び方では、入職後に思わぬギャップを感じる可能性もあります。たとえば「企業主導型保育園を選んだら、数年後に閉園になってしまった」「認可保育園に入ったが書類業務の多さが想像以上だった」というような声は、保育士の転職相談でもよく耳にします。 出典: hoikunosekai.com
この引用は転職相談の現場をよく言い当てています。つまり、認可保育園への転職には2つの顔があります。1つは安定を求めて移ってくる顔、もう1つは想定外の業務量に直面する顔です。この両方が同じ転職の中で起きます。
実際に認可保育園へ移ってくる人の出発点は、おおむね次のように分かれます。認可外保育施設から来る人は、人員の薄さと雇用の不安定さから抜け出したいという動機が中心です。小規模保育事業から来る人は、0歳から2歳児だけを見ていた経験しかないため、3歳以上の保育や行事の運営を経験したいという動機が加わります。企業主導型保育園から来る人は、後述する閉園のリスクを実感した人が多いです。幼稚園から来る人は、預かり時間の長さと、乳児の保育という未経験領域に向き合うことになります。他業種やブランクから来る人は、そもそも組織としての手順の多さに驚きます。
認可保育園にも種類があることも押さえておいてください。公立、私立の社会福祉法人立、私立の株式会社立で、組織の文化がかなり違います。公立は自治体の規則に沿って運営され、異動があり、記録の様式も自治体で統一されています。社会福祉法人立は法人ごとの保育理念が色濃く出て、勤続年数の長い職員が多い傾向があります。株式会社立は複数園を展開していることが多く、系列園間の異動や本部主導の研修があり、ICT化が進んでいる園の割合が高めです。どれが良いという話ではなく、自分がどの環境で力を出せるかの問題です。
自分がどこから来ているかを自覚しておくと、落差のどこに備えればよいかが決まります。認可外から来る人が最も戸惑うのは書類、幼稚園から来る人が最も戸惑うのはシフト勤務、ブランク明けの人が最も戸惑うのは記録の様式です。それぞれ対策が違います。
落差1:職員の人数が制度で決まっているという安心感
認可保育園で最初に感じる違いは、人が足りているという感覚です。
認可保育所は児童福祉施設の設備及び運営に関する基準という省令に従って運営されます。保育士1人が受け持つ子どもの人数は年齢別に決まっていて、0歳児はおおむね3人につき1人、1歳児と2歳児はおおむね6人につき1人、3歳児はおおむね15人につき1人、4歳児以上はおおむね25人につき1人です。さらに、職員は常時2人以上を配置しなければなりません。
つまり、園の都合で人を減らせない仕組みになっています。減らせば運営費が減額され、指導監査で指摘を受けます。認可外保育施設にも指導監督基準はありますが、認可のように公定価格と直結しているわけではないので、経営が苦しくなったときの調整弁になりやすい。ここが構造的な違いです。
この違いは日々の実感としてどう出るか。休憩が取れます。有給が申請できます。研修に出る日が勤務表に組まれます。急に休んだ人の穴を、残った人の気合いで埋めなくてよくなります。認可外から移ってきた方が最初に口にするのは、たいていこの3つです。
ただし注意書きを入れます。基準はあくまで最低ラインです。基準ぎりぎりで回している認可保育園も存在します。その場合、名目上は基準を満たしていても、休憩時間に子どもから離れられないという事態が起こります。労働基準法第34条は、労働時間が6時間を超える場合に45分以上、8時間を超える場合に1時間以上の休憩を、労働時間の途中に与えることを使用者に義務づけています。そしてこの休憩は、労働から完全に解放されている必要があります。午睡中の見守りをしながらの休憩は、法律上の休憩として認められません。これは認可か認可外かに関係なく適用される話です。転職先を選ぶときは、基準を満たしているかではなく、基準をどれだけ超えているかを見てください。
落差2:書類の量が一段、はっきり上がる
認可保育園に移った人が最もよくつまずくのが書類です。
認可保育園は公費で運営されているため、記録が監査の対象になります。全体的な計画があり、その下に年間指導計画、月案、週案、日案が階層構造で並びます。これとは別に、子ども一人ひとりの発達記録と児童票、保育日誌、給食の検食簿、午睡中の呼吸チェック表、避難訓練の記録、ヒヤリハット報告、感染症の発生記録。担任を持てば、これらの相当部分が自分の担当になります。
認可外や小規模から来た方が驚くのは量そのものより、様式が決まっていることです。自由に書けばよいのではなく、園の様式と自治体の指導に沿って書かなければなりません。「この表現は主観が入りすぎているので直してください」と主任から戻される経験を、最初の数か月はほぼ全員がします。
ここで役に立つ考え方を1つ。保育の記録は、事実と評価を分けて書くのが原則です。「Aちゃんは楽しそうだった」は評価であって事実ではありません。「Aちゃんは積み木を3回積み直し、崩れるたびに笑った」が事実で、そこから「達成感を味わっていた様子」という評価につながります。この順序を守るだけで、戻される回数が激減します。私が契約書や陳述書の作成で最初に叩き込まれたのも同じ原則でした。事実と評価を混ぜて書いた文書は、後で誰かが読み返したときに争いの種になります。保育記録も、何かが起きたときに園を守る文書になるという点では同じです。
書類の負担を減らす取り組みも進んでいます。登降園の記録や指導計画をシステムで管理するICT化が広がり、子どもから離れて書類に向かう時間を勤務表に組み込むノンコンタクトタイムという考え方も浸透してきました。求人票にこの言葉が入っている園は、書類の扱いに一定の姿勢がある園だと読めます。
落差3:給与の決まり方が「園の裁量」から「公定価格と加算」に変わる
給与について、認可と認可外では決まり方の構造が違います。
認可保育園の収入は、子ども・子育て支援制度の公定価格が土台です。その上に処遇改善等加算が乗ります。加算Iは職員の平均経験年数などに応じて賃金改善に充てられるもの、加算IIはキャリアアップ研修を修了した副主任保育士や職務分野別リーダーなどの役職に対して上乗せされるもの、そして加算IIIは全職員を対象に一定額の改善を行うものです。
ここが重要です。加算は園に入りますが、それを職員にどう配分するかは園の裁量が残ります。
認可保育園(私立)は、処遇改善等加算により国からの補助が上乗せされる仕組みがあります。ただし、この加算が実際に職員の給与に適切に反映されているかどうかは園によって異なります。求人票だけでなく、給与明細の内訳(基本給と手当の比率)まで確認することをおすすめします。 出典: hoikunosekai.com
つまり、月給総額が同じでも、基本給が高い園と手当が厚い園では将来の手取りが変わります。賞与は基本給に月数を掛けて算出する園が多いので、基本給が低いと賞与が薄くなります。退職金も基本給を基準にする制度が一般的です。さらに、健康保険と厚生年金の標準報酬月額は手当を含めて算定されるため、社会保険料は総額に応じて引かれます。基本給が低く手当が厚い設計は、社会保険料は総額基準で引かれるのに、賞与と退職金は基本給基準で計算されるという、働く側に不利な組み合わせになりやすい。
保育士全体の給与水準がどのあたりにあるかを知らないと、提示された金額が高いのか低いのか判断できません。職種別の統計をまとめた保育士の年収・単価相場を先に見ておくと、求人票の数字を相場と照らして読めます。これは交渉の材料ではなく、判断の物差しとして持っておくものです。
面接で給与の内訳を聞くのは失礼ではありません。労働条件は雇用契約の中身そのものです。むしろ、聞かれて説明できない園のほうに問題があります。
落差4:雇用の安定性という点で、認可には明確な強みがある
転職の動機として最も切実なのがここです。企業主導型保育については、こども家庭庁の点検・評価委員会で、制度の側から撤退をしやすくする方向性が示されています。
利用児童数の減少は避けられないため、「施設や利用児童の減少を見込んだ制度設計」に現段階から取り組んでいく方向を打ち出しています。 具体的には、他の児童福祉事業への施設転用や、施設を取壊し・廃棄する際に整備費の返還を求めないことなど、企業主導型保育事業からの撤退を容易にすることが検討されそうです。 出典: 保育システム研究所「企業主導型保育施設も撤退の可能性を模索」
企業主導型保育事業は、事業主が設置し、国から整備費と運営費の助成を受ける仕組みです。認可外保育施設に分類されますが、助成の水準は認可に近い設計になっています。問題は、設置企業の業績や方針転換が園の存続に直結する点です。従業員枠の利用が想定を下回れば運営が苦しくなり、地域枠で埋められなければ閉園という判断に至ります。
認可保育園は市町村の保育計画に組み込まれ、利用調整も市町村が行います。園が独自に閉じると判断できる余地は小さく、閉じる場合も転園先の確保など行政との調整を伴います。だから雇用の安定性という点では、認可のほうが構造的に強い。
ただし、ここにも注意書きが必要です。認可保育園なら絶対に安全ということではありません。就学前人口の減少で定員割れを起こす園が地域によって出ています。定員に対する入所率が下がれば運営費が減り、統廃合や法人の合併という話になります。転職先を検討するときは、その市区町村の待機児童数と、直近数年の保育所定員の増減を見ておくとよいです。市区町村のサイトに毎年の保育所入所状況が公表されています。入所率が慢性的に低い地域の園は、将来の統廃合の可能性を織り込んでおくべきです。
もう1つ。認可保育園でも、あなた自身の雇用契約が有期なら安定とは別の話になります。正規職員としての採用なのか、契約職員や会計年度任用職員なのか。ここは必ず書面で確認してください。
落差5:保護者との関わり方も、制度に沿って変わる
見落とされがちですが、認可保育園に移ると保護者対応の性格も変わります。
認可保育園は入園の申込みも利用調整も市町村が行います。保護者は園に直接申し込むのではなく、市区町村の窓口に申請し、就労状況などを点数化した基準で選考されます。つまり、園と保護者の関係は「園が選ばれた」のではなく「行政が割り当てた」という形で始まります。認可外では園と保護者が直接契約を結び、園の方針に共感した人が集まるので、入口の空気が違うのです。
これがどう効いてくるか。認可保育園には、園の保育方針とは違う考えを持つ保護者も当然入ってきます。行事の在り方、食事の進め方、おむつの持ち帰りの有無。認可外なら「うちはこういう園です」で通っていたことが、認可では説明の丁寧さを求められます。転職してきた職員が最初に戸惑うのはここです。
もう1つ、認可保育園には苦情解決の仕組みを設けることが運営上求められています。苦情解決責任者と苦情受付担当者を園内に置き、さらに外部の第三者委員を委嘱するのが標準的な形です。つまり、保護者からの申し出は担任個人の問題として処理されず、園の仕組みに乗って処理されます。これは職員を守る仕組みでもあります。認可外で「担任がなんとかする」文化に慣れていた人にとっては、最初は手続きが煩雑に感じますが、一人で抱え込まなくてよいという意味では確実に楽になります。
日々の連絡帳も、認可では記録としての性格が強まります。書いた内容が後で振り返られる可能性を前提に、事実を残す書き方が求められます。ここでも、事実と評価を分けて書く原則が効いてきます。
決め手を確かめるのは、求人票ではなく労働条件通知書
ここからは手続きの話です。私の本業に近い領域なので、少し丁寧に書きます。
まず原則を1つ。求人票は募集の広告であって、契約の中身ではありません。契約の中身を確定させるのが労働条件通知書です。労働基準法第15条は、使用者が労働契約を結ぶ際に労働条件を明示することを義務づけており、そのうち一定の事項は書面の交付が必要とされています。書面で明示すべき主な事項は、契約期間、有期の場合は更新の基準、就業の場所と従事すべき業務、始業終業の時刻と所定時間外労働の有無、休憩、休日、休暇、交替制の場合の就業時転換に関する事項、賃金の決定と計算と支払の方法、締切日と支払日、そして退職に関する事項です。2024年4月からは、就業場所と業務の変更の範囲も明示事項に加わりました。
つまり、あなたには「どこで何をするのか、それが将来どこまで変わりうるのか」を書面で受け取る権利があります。保育業界では系列園への異動が当たり前に行われることがあるので、この変更の範囲の記載は特に確認してください。自宅から通える園だと思って入ったら、翌年度に片道1時間の系列園へ異動を命じられたという相談は実際にあります。
次に、求人票と労働条件通知書の内容が食い違っていた場合です。職業安定法は、求人者が労働条件を的確に表示する義務と、募集時に示した条件を変更する場合に速やかに求職者へ明示する義務を定めています。内定後に条件が下がっていたら、その場でサインせず、変更の理由と根拠を書面で求めてください。これは常識的な確認であって、揉めごとではありません。
固定残業代にも触れておきます。月給の中に一定時間分の時間外手当をあらかじめ含める設計は違法ではありませんが、有効であるためには、基本給部分と固定残業代部分が判別できること、固定残業代が何時間分に相当するかが明示されていること、そして実際の残業がその時間を超えた場合に差額が支払われることが必要です。「月給24万円(みなし残業代含む)」としか書かれていない求人票は、この要件を満たしていません。内訳を確認してください。
試用期間についても1つ。試用期間中であっても労働契約は成立しています。試用期間だから解雇が自由になるわけではありません。ただし試用期間中の賃金を本採用後より低く設定すること自体は、あらかじめ明示されていれば認められます。「試用期間3か月、期間中は時給制」のような条件は、事前に書面で確認しておく項目です。なお、個別の事案で会社側の対応に疑問がある場合は、労働基準監督署の総合労働相談コーナーか、労働問題を扱う弁護士に相談してください。
面接と見学で、何を聞けば実態が分かるか
書面で確認できることと、聞かないと分からないことがあります。後者を整理します。
人員について聞くべきなのは、クラスごとの配置です。「4歳児クラスは何人の子どもに保育士何人ですか」と聞けば具体的な数字が返ってきます。保護者もよくする質問なので不自然ではありません。あわせて、フリーの職員が何人いるかを聞いてください。担任以外に動ける職員がいるかどうかで、休憩の取りやすさが決まります。
書類について聞くべきなのは、書く時間がどこにあるかです。「指導計画や記録は、勤務時間内のどのタイミングで書いていますか」と聞きます。「みんな工夫して時間を作っています」という答えが返ってきたら、それは勤務時間内に時間が無いという意味です。
行事について聞くべきなのは、準備の分担です。運動会と発表会の準備が、勤務時間内なのか持ち帰りなのか。制作物を家で作る慣行が残っている園はまだあります。
退職の状況も確認したい項目です。直接「離職率は」と聞きにくければ、「いま担任を持っている先生方の勤続年数はどのくらいの幅がありますか」と聞くと、実質的に同じ情報が得られます。勤続2年以下ばかりなら理由があります。
シフトの組み方も具体的に聞いてください。開所時間が11時間の園なら、早番、中番、遅番の3交替が基本です。早番が何時始まりで、月に何回回ってくるのか。土曜保育の出勤が月に何回あり、その振替休日がいつ取れるのか。ここを曖昧にしたまま入職すると、生活のリズムが想定と違って続かなくなります。特に幼稚園から移ってくる方は、朝7時台の出勤と夜7時台の退勤が交互に来る生活を一度シミュレーションしておくべきです。
持ち物と自己負担についても確認しておくとよいです。制作物の材料費、行事の衣装、園で使うエプロンや靴。これらを園が負担するのか個人負担なのかは園によって差があります。金額としては大きくありませんが、毎月積み重なると無視できません。求人票にはまず書かれない項目なので、見学のときに現場の職員に聞くのが確実です。
見学では、職員同士の会話の量を見てください。申し送りが自然に行われている園と、誰も口をきかない園では、子どもの安全に関わる情報の流れがまったく違います。私の経験では、書面が整っている組織より、口頭のやり取りが多い組織のほうが事故が少ないです。文書は後から検証するためのもので、事故を防ぐのはその場の一言だからです。
退職から入職までの手続きで、落としやすいもの
転職の実務面を押さえておきます。
保育業界の転職は年度単位で動くのが基本です。3月末に退職して4月から新しい園、という流れが最も一般的で、求人も1月から3月に集中します。年度途中の転職ももちろん可能ですが、担任を持っている場合は引き継ぎの負担が大きくなります。
退職の申し出について。民法第627条第1項は、期間の定めのない雇用契約について、解約の申入れから2週間を経過すれば契約が終了すると定めています。就業規則に「退職は3か月前までに申し出ること」と書かれていても、法律上は2週間で退職できます。ただし、円満に辞めるという実務上の判断は別問題です。保育は子どもと保護者との関係の上に成り立つ仕事なので、引き継ぎの時間を確保したほうが結果的に自分の評判を守ります。※明らかな引き止めハラスメントや退職を認めない対応がある場合は、労働基準監督署に相談してください。
有給休暇の残日数は必ず確認してください。年次有給休暇は労働基準法第39条に基づく権利で、退職時に消化する申請を会社が拒むことは原則できません。退職日を有給消化分だけ後ろにずらす形にすれば、次の園の入職日との調整もしやすくなります。
健康診断の扱いも確認しておくとよいです。保育所で働く職員には、採用時の健康診断と、その後の定期的な健康診断が求められます。検便の頻度は自治体の指導によって差があり、給食に関わる職員は月に複数回というところもあります。費用を園が負担するのか自己負担なのかは園によって異なるので、入職前に聞いておくと余計な出費を避けられます。
保育士登録の確認も忘れずに。保育士として働くには都道府県への登録が必要で、登録証が手元にあるはずです。氏名が変わっている場合は書換交付の手続きが要ります。手続きには時間がかかるので、内定が出た時点で確認してください。
そして離職票と雇用保険被保険者証、源泉徴収票。次の園の入職が決まっていても、年末調整で前職の源泉徴収票が必要になります。退職時にまとめて依頼しておくと後が楽です。
転職を1回の選択ではなく、積み上げとして考える
20年この市場を見てきた立場から言えば、転職で条件が上がる人には共通点があります。前の職場で何を任されていたかを、具体的に説明できることです。「3歳児クラスの担任を2年」ではなく、「3歳児クラスの担任として、アレルギー対応が必要な子どもを含む15人を、加配の職員1人と組んで見ていた」まで言える人は、面接での評価が変わります。
運営者として見てきた限りでは、長く働き続ける人ほど、単発の実績を並べるのではなく「この人に任せると安心だ」という関係を作ることに時間を使っています。これは園の中でも、園を移ったあとでも同じです。前の職場の主任が、あなたの転職先に推薦の一言を入れてくれることが実際にあります。辞め方は次の職場への入り方でもあります。
保育の現場で身につけた力は、保育の外にも通じます。保護者面談で相手の状況を聞き取り、一緒に次の一手を考える技術は、人の相談に乗る仕事にそのまま使えます。どういう相談が実際に発生していて、どんな役割が求められるのかは職場・転職・キャリア相談のお仕事に整理してあります。同じ業界を知っている人が相談を受ける価値は、思っているより大きいです。
その領域を国家資格として体系化したものがキャリアコンサルタントです。養成講習から試験までの流れと、実務での使われ方をまとめてあります。保育士として現場を知っている人が、保育業界に特化した相談の担い手になる道は、実際に人が足りていません。
隣接する福祉の領域も視野に入れておくと判断に幅が出ます。保育と介護は対象年齢が違うだけで、身体介助と記録と家族対応という構造がよく似ています。収入水準の違いを知るために、介護職員の年収・単価相場を保育士の相場と並べて見てみてください。
最後に。転職の決め手は、給与でも通勤時間でもなく、あなたがその園で何年か先の自分を想像できるかどうかです。そのために必要なのは、労働条件通知書を読む力と、面接で数字を聞く勇気の2つだけです。労働条件の明示は雇う側の義務であり、あなたが確認するのは正当な権利です。法律はあなたの味方です。
よくある質問
Q. 認可外から認可保育園に転職すると、何が一番変わりますか?
書類の量と様式です。認可は公費運営で監査の対象になるため、年間指導計画から月案、週案、個別の発達記録、児童票までが決まった様式で求められます。一方で職員数が制度で縛られているぶん、休憩や有給、研修の時間は確保されやすくなります。しんどさが減るというより、しんどさの種類が変わると考えてください。
Q. 求人票と労働条件通知書で条件が違ったらどうすればいいですか?
その場でサインせず、変更の理由と根拠を書面で求めてください。職業安定法は、求人者に労働条件を的確に表示する義務と、募集時の条件を変更する場合に求職者へ明示する義務を課しています。確認は正当な権利であり、揉めごとではありません。対応に納得できない場合は労働基準監督署の総合労働相談コーナーに相談してください。
Q. 認可保育園なら閉園の心配はありませんか?
企業主導型保育園と比べれば構造的に安定していますが、絶対ではありません。市町村の保育計画に組み込まれ利用調整も行政が行うため、園単独の判断で閉じにくい仕組みです。ただし就学前人口の減少で定員割れが続く地域では統廃合が起きています。応募前にその市区町村の保育所入所状況を確認してください。
Q. 転職するならいつ動くのがよいですか?
求人が最も多いのは1月から3月で、4月入職を前提とした募集が中心です。年度途中の転職も可能ですが、担任を持っていると引き継ぎの負担が大きくなります。退職の申し出は法律上は2週間前で足りますが、実務上は就業規則の定めに沿って早めに伝え、有給の残日数を確認したうえで退職日を調整するのが現実的です。
この記事について
編集部
監修:@SOHO編集部
2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを20年運営。編集部が事実確認のうえ公開しています。

この記事を書いた人
長谷川 奈津@SOHO編集部
行政書士・元企業法務
企業法務で数多くのフリーランス契約を扱った経験を活かし、フリーランス向けの法律・契約・権利に関する記事を執筆。「法律はあなたの味方です」がモットー。
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