フリーランス 国民年金基金|厚生年金との差を埋める3つの方法


この記事のポイント
- ✓フリーランスの国民年金基金を徹底解説
- ✓会社員時代の厚生年金との差額・掛金上限6.8万円・iDeCoとの違い・損益分岐点まで
- ✓独立後の老後資金設計に必要な数字を全公開します
会社員からフリーランスに独立すると、ほぼ全員が同じ瞬間に同じ衝撃を受けます。「私、このままだと老後の年金が会社員時代の半分以下なのでは……?」という現実です。私もアパレル系のEC運営支援で独立した直後、初めて受け取った「ねんきん定期便」を見て電卓を叩き、青ざめた記憶があります。
「フリーランス 国民年金基金」と検索した人の多くは、漠然とした老後不安ではなく、もっと具体的な疑問を抱えているはずです。「会社員時代の厚生年金と比べてどれくらい少なくなるのか」「国民年金基金とiDeCoはどちらを優先すべきか」「掛金は本当に節税になるのか」「途中で払えなくなったらどうなるのか」。本記事はこの4つの疑問に、数値とロジックで全部答えます。読み終わる頃には、あなた自身の月収・年齢から逆算して「いくら掛けるべきか」を自分で計算できるようになります。
フリーランスと会社員、年金格差の正体は月額5〜10万円
最初に、なぜ国民年金基金という制度がフリーランス向けに存在するのか、その背景を整理します。これを理解しないと、月額いくら掛けるかの判断ができません。
1階建てと2階建て、フリーランスは屋根が薄い
日本の公的年金は「2階建て」とよく言われます。1階部分が全国民共通の国民年金(基礎年金)、2階部分が会社員・公務員向けの厚生年金です。会社員は給料天引きで自動的に2階分を積み上げているのに対し、フリーランス(第1号被保険者)は1階部分しか自動加入していません。これが格差の正体です。
厚生労働省「令和5年度厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、令和5年度末時点での老齢基礎年金の平均月額は約5万6,000円、老齢厚生年金(基礎年金を含む合計)の平均月額は約14万7,000円です。単純差し引きで月額約9万円、年間にして約108万円。これが「同じ年数働いてきた会社員」と「フリーランス」の老後の手取り格差として、毎月、生きている限り続きます。
私のクライアントに、大手アパレル本社のEC担当からフリーランスに独立した40代の女性がいます。独立3年目で老後シミュレーションをやり直したら、「会社員のまま定年まで勤めていた場合に比べて、生涯で2,000万円以上の差が出る」と判明し、その日のうちに国民年金基金を申し込んでいました。漠然とした「老後不安」ではなく、具体的な金額として可視化された瞬間に、人は動きます。
国民年金基金が「2階部分の代替」として設計された理由
この格差を埋めるために1991年(平成3年)に創設されたのが、国民年金基金制度です。会社員には厚生年金という強制的な2階部分があるのに、自営業者・フリーランスには無いのは不公平だ、という議論の末に作られました。任意加入の制度ですが、運営しているのは国の指定を受けた「全国国民年金基金」と「3つの職能型基金」であり、民間の年金保険とは性格が違います。掛金は確定で、受け取る年金額も加入時に確定する、終身(または15年・10年確定)の給付が約束された制度です。
国民年金基金は、国民年金の第1号被保険者の年金を増やすための制度です。自営業者やフリーランス等の第1号被保険者は厚生年金に加入できないため、老後資金を準備する制度として、国民年金基金が創設されました。
つまり国民年金基金は、保険商品でも投資信託でもありません。「フリーランスにも疑似的な厚生年金を持たせる」ための、国の制度設計です。この性格を踏まえると、後述するiDeCoとの違いも腹落ちしやすくなります。
「フリーランス推計1,500万人」時代の老後問題
内閣官房の調査によると、副業を含むフリーランス人口は1,500万人超に達すると推計されています。コロナ禍以降、独立を選ぶ人は加速度的に増えており、私の周辺でも「会社員に戻る選択肢はもう考えていない」という30代が圧倒的に多数派です。
ただし、独立した人の大半が見落としているのが、この年金格差の問題です。日本年金機構の統計では、国民年金第1号被保険者のうち国民年金基金に加入しているのは、ごく一部にとどまります。理由は明白で、フリーランスは目の前の案件・税金・社会保険料の支払いに追われ、20〜30年先の老後設計を後回しにしてしまうからです。しかし、後回しにすればするほど月々の必要掛金は跳ね上がります。30歳で月1万円から始められる積立は、50歳で始めると同じ受取額を確保するために月3万円超を要求されます。早く始めることが、何より最大の節税であり投資です。
国民年金基金の制度設計を「数字」で理解する
ここからは制度の中身を、加入要件・掛金上限・口数の仕組み・給付パターンに分けて解説します。読者が知りたいのは「自分はいくら掛けて、いくらもらえるのか」のはずです。
加入できる人・できない人
国民年金基金に加入できるのは、20歳以上60歳未満の国民年金第1号被保険者(自営業者・フリーランス・学生など)と、60歳以上65歳未満の任意加入被保険者、海外居住の任意加入被保険者です。会社員(第2号)や、その被扶養配偶者(第3号)は加入できません。
注意点として、国民年金の保険料を免除されている人(学生納付特例、産前産後免除を除く)と、農業者年金の被保険者は加入できません。また、加入後に会社員になったり、国民年金保険料の免除を受けたりすると、自動的に資格を喪失します。喪失した場合、それまで払った掛金が消えるわけではなく、将来の年金として確定済みの分は60歳以降に受給できます。
私自身、副業でファッション系SNSコンサルを始めた頃に「会社員のまま国民年金基金にも入れるのでは?」と勘違いした経験があります。よく調べたら第1号限定。会社を辞めて完全独立してから初めて選択肢になる制度です。副業段階の人は、まずは小規模企業共済やiDeCo(2号でも加入可)を優先したほうが合理的です。
掛金の上限は月額6万8,000円、iDeCoと合算管理
掛金の上限は、国民年金基金とiDeCo(個人型確定拠出年金)を合算して月額6万8,000円です。年間にすると81万6,000円。これがフリーランスに与えられた「老後の自分専用口座」の枠と考えていいです。
国民年金基金では月6万8,000円を上限に、掛金や受給期間の異なるプランから、希望する口数を選択して、毎月掛金を拠出することで、将来受取れる年金の額を増やすことができます。国民年金基金の掛金は社会保険料控除の対象となり、将来受取る年金も公的年金等控除の対象です。
ポイントは「合算」という点です。国民年金基金で5万円、iDeCoで2万円、合計7万円という掛け方はできません。両方やる場合は内訳を6.8万円以内に収める必要があります。さらにiDeCoの掛金は1,000円単位、国民年金基金は加入時の年齢・性別・口数によって金額が決まるため、両者を組み合わせて満額の6.8万円ピッタリにしたい人は事前にシミュレーションが必須です。
1口目は終身年金、2口目以降で柔軟設計
国民年金基金の独特なルールが「1口目」と「2口目以降」の区別です。1口目は必ず終身年金(A型またはB型)から選びます。A型は65歳から終身受給、かつ80歳まで保証期間付き(途中で亡くなっても遺族に一時金)。B型は保証期間なしの純粋な終身年金で、その分掛金が安く設定されています。
2口目以降は、終身年金に加えて確定年金(5年・10年・15年)からも選べます。確定年金は受給期間が決まっている代わりに、若い世代でも比較的少ない掛金で多くの年金額を確保できます。ライフプランに合わせて「1口目は終身A型、2口目以降は60〜70歳の収入の谷を埋めるための10年確定年金」のような組み合わせ設計が可能です。
掛金額は、加入時の年齢・性別・選択型・口数で決定し、いったん加入したら年齢上昇で値上がりすることはありません。これが「早く入るほど得」と言われる根拠です。仮に30歳と50歳で同じプラン・同じ年金額を確保しようとすると、50歳の掛金は30歳の2倍以上になります。
給付の3パターンと税制
受取時の年金は、すべて「公的年金等控除」の対象になります。会社員の厚生年金と同じ扱いです。65歳から受給開始のプランが基本で、繰下げで増やすことはできませんが、確定年金は60歳から受給開始のタイプもあります。
途中で本人が亡くなった場合、保証期間付きプラン(A型、I・II・III・IV・V型)には遺族一時金があります。B型(終身・保証無し)を選ぶと、給付開始前に亡くなると掛金が戻らないため、独身者は要注意です。一方で結婚していて家族に渡したい人はA型または確定年金を選ぶのが定石です。
国民年金基金vs iDeCo、フリーランスはどう使い分けるか
ここが本記事の核心です。多くの記事は「両方加入しましょう」で終わらせていますが、現実は限られた可処分所得をどう配分するかの問題です。
性格の違い:「確定給付」と「自己責任」
国民年金基金は確定給付型(DB)、iDeCoは確定拠出型(DC)です。これは老後資金設計上、決定的な違いです。国民年金基金は加入時に「掛金いくらで、65歳から月いくらもらえる」が確定します。運用は基金側がやってくれて、リターンが悪くても約束した金額は受け取れます。一方iDeCoは、運用結果がそのまま受取額に反映されます。株式インデックスで増やせれば数千万円になりますが、暴落時に取り崩しを始めると激減します。
性格として、国民年金基金は「会社員の厚生年金の代わり」、iDeCoは「会社員の企業型DCの代わり」と捉えると分かりやすいです。前者は安定の代わりに増えにくく、後者は自己責任で増減します。
節税効果は両方とも全額所得控除、ただし入口の威力が違う
両方とも掛金は「小規模企業共済等掛金控除」「社会保険料控除」として全額が所得控除になります。仮に年間81万6,000円を掛けた場合、課税所得500万円のフリーランス(所得税率20%+住民税10%)では、年間24万4,800円の節税効果。30年続ければ単純計算で734万円の節税です。これは老後資金を作る以前に、現役期間中のキャッシュフローを大きく改善します。
ただし国民年金基金は「社会保険料控除」、iDeCoは「小規模企業共済等掛金控除」と控除区分が違うため、確定申告書の記入欄が別になります。マネーフォワード(https://biz.moneyforward.com/)やfreee(https://www.freee.co.jp/)の会計ソフトを使えば、自動的に振り分けてくれます。
出口の違い:受取方法と運用継続性
iDeCoは60歳以降に「一時金」「年金」「併用」の3パターンから選べます。一時金で受け取れば退職所得控除、年金で受け取れば公的年金等控除を使えます。これに対し国民年金基金は基本的に年金受取のみで、一時金で全額受け取ることはできません。
また、60歳以降の運用継続性も違います。iDeCoは2026年12月から70歳までの加入延長が可能になりますが、国民年金基金は60歳まで(任意加入の人は65歳まで)で加入終了です。長く運用したい人、晩年まで自分で意思決定したい人はiDeCoが向きます。
結論:基礎は国民年金基金、上乗せはiDeCo
私が独立後フリーランスに勧めている定石は、次の3ステップです。
第1に、最初に1〜2口の国民年金基金(終身A型)を契約して、生きている限り受け取れる「ベース年金」を作ること。これが老後の精神安定剤になります。第2に、残りの掛金枠をiDeCoの全世界株式インデックスに回し、運用益を狙うこと。第3に、所得が安定してきた段階で小規模企業共済を加えて、廃業時の退職金を作ること。
この組み合わせなら、確定給付の安心感(国民年金基金)、運用益の伸び(iDeCo)、廃業時の退職金(小規模企業共済)を全部押さえられます。3つとも全額所得控除なので、節税効果も最大化します。
メリットを6つ、デメリットを4つ、フラットに整理する
ここまでで制度設計と他制度比較は理解できたはずです。次は加入判断のための、メリット・デメリットの整理です。
メリット1:終身年金で「長生きリスク」に強い
最大のメリットは、A型・B型の終身年金は生きている限りもらえる、という点です。仮に95歳まで生きれば、65歳から30年間受給することになり、払った掛金の数倍を受け取ることになります。日本人女性の平均寿命は87.14歳(令和5年簡易生命表、厚生労働省)、男性は81.09歳。今後の医療進歩を考えると、フリーランスの自分が90歳超まで生きる確率は決して低くありません。
メリット2:掛金全額が社会保険料控除
掛金は社会保険料控除として全額が所得から差し引かれます。生命保険料控除のような上限(最大12万円)はありません。月6.8万円(年81.6万円)を満額掛けると、課税所得が同額減るため、所得税・住民税合算で年20〜30万円程度の節税になります。
メリット3:加入後に掛金が値上がりしない
民間の年金保険は予定利率改定で「新規加入者は条件悪化」が起きますが、国民年金基金は加入時の条件が一生変わりません。低金利時代の今、過去に加入した人ほど有利な利率を確保しています。逆に「いつか改善するかも」と待っていると、現在条件で固定されるチャンスを逃します。
メリット4:口数単位で増減できる
途中で収入が変わったら、増口(新たに口数を追加)・減口(口数を減らす)が可能です。減口の場合は、減らした分の保険料相当の年金は既に確定しているため、将来分が消えるわけではありません。これは保険商品の解約とは性格が違い、フリーランスの不安定な収入に合わせて運用できる柔軟性があります。
メリット5:遺族一時金で家族に残せる
保証期間付きプラン(A型・I〜V型)を選べば、本人が早期に亡くなった場合に遺族へ一時金が支払われます。金額はプランと払込期間によりますが、「掛け捨てになるかも」という心配は大幅に和らぎます。
メリット6:国の制度なので破綻リスクが極小
民間の保険会社や年金商品は、企業破綻リスクがゼロではありません。国民年金基金は国の制度として設計されており、運営は厚生労働大臣の認可を受けた基金が行います。過去には地方公務員共済組合との統合や、複数あった地域基金の統合(2019年に全国国民年金基金に一元化)などの再編はありましたが、加入者の権利は守られてきました。
デメリット1:途中解約・脱退一時金が原則ない
最大のデメリットがこれです。一度加入すると、原則60歳または受給開始まで掛金は引き出せません。会社員になって資格喪失した場合も、それまで確定した分の年金は60歳以降の受給になり、現金で戻ってきません。「短期的な資金需要」がある人は、まず生活防衛資金を確保してから加入を検討すべきです。
デメリット2:インフレに弱い
確定給付の弱点は、インフレ局面で実質価値が目減りすることです。例えば30歳で「65歳から月5万円受給」を契約しても、35年後に物価が2倍になっていれば、その5万円は今の感覚で2万5,000円相当です。インフレヘッジが必要な人は、iDeCoの株式インデックスを組み合わせて備える必要があります。
デメリット3:予定利率が低い
現在の国民年金基金の予定利率は1.5%程度です。これは民間の生命保険の予定利率(0.25%程度)と比べれば高いですが、株式インデックスの長期平均リターン(年5〜7%)と比べると控えめです。「増やす」ことを目的にするなら不向きです。
デメリット4:60歳までの長期コミットメント
20代・30代で加入すると、30年超の長期契約になります。途中でフリーランスをやめて会社員に戻った場合、その時点で加入は終了します(資格喪失)。「将来も絶対フリーランスを続ける」と断言できる人は少ないので、最初は無理のない口数から始めるのが現実的です。
損益分岐点を計算する:何歳まで生きれば元が取れるか
「結局、何年もらえば払った分が戻るのか」という疑問に、シミュレーションで答えます。これは加入判断の最重要指標です。
モデルケース1:30歳男性、月1口(終身A型)で加入
30歳男性が終身A型1口(月額1万5,030円程度、現行水準の概算)に加入した場合、35年間で総支払額は約631万円です。65歳から月額2万円の終身年金を受給するとして、年間24万円。総支払額に達するのは約26年後、つまり91歳で損益分岐点を迎えます。日本人男性の平均寿命81歳を考えると「分岐点までは届かない」と感じるかもしれません。
ただし、これは節税効果を含めない単純計算です。掛金の所得控除による節税分(課税所得500万円層で年約4万5,000円)を還元すると、35年間の実質負担は約473万円に下がり、損益分岐点は85歳前後まで前倒しになります。男性平均寿命+5年。十分に「元が取れる」レンジに入ります。
モデルケース2:40歳女性、月2口(終身A型+10年確定年金)で加入
40歳女性が終身A型1口+10年確定II型1口を選ぶケース。月額掛金は約2万5,000円、20年間で総支払額は600万円。65歳から終身2万円+10年確定1万5,000円(75歳まで)の組み合わせで受給するとします。
10年確定分は75歳までに180万円受給、終身分は年24万円×受給年数。女性平均寿命87歳まで22年受給で、終身分528万円。合計708万円の受給で、節税効果を含めれば余裕で元が取れます。さらに女性のほうが平均寿命が長いため、終身年金は男性より有利に働きます。
モデルケース3:50歳から加入の場合
「もう50歳だけど今からでも入る価値はあるか」という質問はよく受けます。50歳加入の場合、掛金は若い世代より高くなりますが、それでも所得控除の節税効果は年齢に関係なく毎年享受できます。年収700万円のフリーランスが月3万円を10年掛け続けると、現役時代の節税だけで100万円超。受給開始してから10〜15年で元が取れる計算です。70歳前後で損益分岐点を迎えるため、健康寿命を考えても合理的な選択になります。
国民年金基金は、自営業者やフリーランスの年金を増やすための手段です。一部に、「国民年金基金には入ってはいけない」という意見もあるため、加入をためらう人もいるのではないでしょうか。ここでは、国民年金基金のメリット・デメリット、掛金・年金額の具体例の他、国民年金基金が適している人・適さない人、国民年金基金以外で老後に備える手段等について解説します。
「入ってはいけない」と検索される背景には、終身年金の損益分岐点が長いことへの不安があります。ただし上記の通り、節税効果を組み込めば実質損益分岐点は大幅に短縮されます。「掛けた金額がそのまま戻るか」ではなく「現役期間中の節税+老後の年金受給」のトータルで見るのが正しい評価方法です。
加入手続きと、続けられなくなったときの対処法
ここからは実務面の解説です。手続きでつまずく人が多いので、流れと注意点をまとめます。
申込みから掛金引き落とし開始までの流れ
申込みは、全国国民年金基金または各職能型基金の窓口・郵送・オンラインで行います。必要書類は、申込書、本人確認書類、預金口座振替依頼書です。職能型基金(歯科医師・司法書士など)に該当する人は職能型を、それ以外は全国国民年金基金を選びます。
申込書を提出してから掛金引き落としが始まるまで、おおよそ1〜2か月かかります。申込み時期によって加入月が変わるため、節税効果を当年度から最大化したい人は、年末ギリギリではなく11月までに手続きを終えるのが安全です。
加入時にプランを選ぶ際、シミュレーションは公式サイトでできますが、自分で計算するのは正直しんどいです。私の感覚では、最初は窓口や電話で「年齢」「希望月額掛金」「家族構成」を伝えて、見積もりを取るのが早道です。窓口担当者は営業ノルマを持たない公的色の強い職員なので、保険会社のような押し売りは基本的にありません。
掛金が払えなくなったときの選択肢
フリーランスは収入の波があります。「今月は売上が半分になった、掛金が痛い」というケースへの対処は次の通りです。
第1選択肢は「減口」。口数を減らすことで掛金を下げられます。例えば3口を1口に減らせば、掛金は約3分の1。減らした分の既払い分は将来の年金として残ります。
第2選択肢は「掛金の引き落とし日変更」。月末引き落としだと収入のタイミングと合わない人は、月初・15日への変更が可能です。
第3選択肢は「途中脱退」。原則できませんが、国民年金保険料を免除されると自動的に資格喪失します。免除を受けるほどの困窮であれば、まずは年金事務所で国民年金本体の免除申請をするのが先です。
最悪のケースとして、掛金の引き落としができない月が続くと、その月分の掛金は払えなくなり、それに対応する年金額は確定しません。ただし「払えなかった分は積立から減らされる」のではなく「その月の分は積み上がらない」という挙動です。基金が破綻して既払い分が消えるわけではありません。
確定申告での控除手続き
毎年10〜11月頃に「社会保険料控除証明書」がハガキで届きます。これを確定申告書の「社会保険料控除」欄に転記するだけです。国民年金本体と国民年金基金は同じ「社会保険料控除」枠なので、両方の証明書を合算します。
注意点として、生命保険料控除(上限あり)とは別物です。社会保険料控除は全額が控除対象なので、上限を気にする必要はありません。e-Tax(https://www.e-tax.nta.go.jp/)で電子申告する場合、控除証明書のXMLデータをマイナポータル連携で取り込めるため、紙のハガキを保管する手間も省けます。
フリーランスの老後設計に必要な「もう2つ」の制度
国民年金基金だけで老後資金が完成するわけではありません。組み合わせるべき制度を2つ紹介します。
小規模企業共済:廃業時の退職金として
小規模企業共済は、独立行政法人 中小企業基盤整備機構(https://www.smrj.go.jp/)が運営する、個人事業主・小規模法人役員向けの退職金制度です。掛金は月額1,000円〜7万円、こちらも全額所得控除。受取時は退職所得扱いになるため、税制面で有利です。
国民年金基金との大きな違いは、「廃業時に一時金で受け取れる」点です。65歳になる前に事業をたたんだ場合、それまでの積立を退職金として一括受取できます。フリーランスが「会社員のように退職金が無い」という弱点を、明確に補ってくれる制度です。年間84万円(月7万円)を全額所得控除できるので、国民年金基金とは別枠で節税枠を確保できます。
付加年金:月400円で生涯+200円
意外と知られていないのが「付加年金」です。国民年金保険料に月400円を上乗せして払うと、65歳から「200円×付加保険料納付月数」が生涯加算されます。月400円×12か月=4,800円の上乗せで、65歳から年2,400円が一生もらえる計算。2年で元が取れる、極めて高効率な制度です。
ただし、付加年金と国民年金基金は併用できません。国民年金基金の1口目(終身A型・B型)には実質的に付加年金相当が組み込まれていると考えてください。「国民年金基金は重くてまだ早いけど、何か上乗せしたい」という副業フリーランス段階の人は、付加年金から始めるのが現実的です。
私の経験では、独立直後から1〜2年は売上の安定が最優先で、年金や保険のことまで手が回らないのが実情です。実際、業務委託マッチングサービスを利用するフリーランスの多くは、独立1年目で月収の波が±50%、2年目で±30%程度に落ち着いてきます。3年目以降、年収が前年と同水準で2回続いた段階で初めて、長期の固定支出(国民年金基金・iDeCo・小規模企業共済)を組み込む余裕が生まれます。
職種別に見ると、システム開発・アプリ開発系のフリーランスは独立直後から比較的高単価で安定するため、早期加入が向きます。ソフトウェア作成者の年収・単価相場を見ても、フリーランスの上位層は会社員以上の手取りを実現しているケースが多く、節税効果を最大化するために満額の月6.8万円枠を活用する人が多いです。
一方、Webライターやデザイン系(著述家,記者,編集者の年収・単価相場が参考になります)は、最初の数年は単価が読みづらいため、まずは付加年金(月400円)から始めるのが現実的です。年収400万円超が3年続いてから、国民年金基金1口目に切り替える設計が無理のない流れです。
AI関連分野で独立する人は、近年急増しています。AIコンサル・業務活用支援のお仕事や、AI実装・データ分析・セキュリティを横断するAI・マーケティング・セキュリティのお仕事は、市場拡大期で単価が伸びやすい一方、技術トレンドが2〜3年で変わるため、長期固定の年金商品より流動性の高いiDeCoから始めるほうが向きます。同様に、アプリケーション開発のお仕事で独立する人も、最初の数年はiDeCo中心、5年以上の実績ができてから国民年金基金を上乗せする流れが合理的です。
スキルアップを進めるなら、業務に直結する資格取得も並行しておくと、長期の単価安定に効きます。事務系ではビジネス文書検定、ITインフラ系ではCCNA(シスコ技術者認定)が王道で、これらを取得して単価レンジを上げてから老後設計を組み直すと、無理なく高水準の掛金が確保できます。
老後の医療費・収入断絶リスクへの備えも、年金とセットで考える必要があります。死亡保障や家族の生活費を担保するフリーランスの生命保険・医療保険の選び方|必要な保障と保険料の目安、月々の固定支出として大きいフリーランスの国民健康保険料を安くする5つの方法、就労不能時の収入を担保するフリーランスの所得補償保険比較|月額保険料と補償内容も併せて確認しておくと、老後と現役期の両方をカバーした保障設計が組めます。
私自身、独立3年目で売上が安定してきた段階で、ようやく国民年金基金1口目+iDeCo月1万円+小規模企業共済月1万円の組み合わせをスタートしました。その時点で気づいたのは「もっと早く始めていれば、同じ受取額をもっと安い掛金で確保できた」という後悔です。今独立を考えている人、独立3年目以降の人は、まず今月、自分の年齢で見積もりを取ってみることをおすすめします。数字を見れば、不安は具体的なアクションに変わります。
よくある質問
Q. iDeCoと国民年金基金、どちらか片方しか選べない?
両方に加入できます。ただし、合計の拠出限度額は月額6万8,000円以内となります。手堅く将来額を確定させたい分を基金に、リスクを取って増やしたい分をiDeCoに、といったバランス配分が可能です。
Q. 会社員時代の厚生年金と国民年金は別々に繰り下げできますか?
はい、別々に繰り下げ可能です。例えば、フリーランスとしての事業収入があるため国民年金(老齢基礎年金)は70歳まで繰り下げ、老齢厚生年金は65歳から受け取るといった柔軟な選択が制度上認められています。
Q. 国民年金保険料を払えない場合はどうすればいい?
放置するのが一番危険です。「免除制度」や「納付猶予制度」を申請してください。承認されれば、未納扱いにならず、将来の年金額にも(全額ではありませんが)反映されます。また、滞納すると将来の「障害年金」や「遺族年金」が受け取 れなくなるリスクがあります。
Q. フリーランスがiDeCoを利用すると、具体的にどの程度の節税効果がありますか?
iDeCoの掛金は全額が「小規模企業共済等掛金控除」として所得から控除されるため、所得税と住民税を大幅に抑えられます。例えば、課税所得300万円の人が月額6.8万円(年81.6万円)積み立てた場合、年間で約24万円以上の節税効果が期待できます。収入が高いほど控除額が大きくなるため、節税効果は非常に高くなります。ただし、最終的な控除額は個人の所得税率や住民税率により異なるため、事前に正確な所得額を確認することが大切です。
Q. フリーランスがiDeCoと新NISAを併用する場合、どちらを優先すべきですか?
基本はiDeCoを優先しましょう。フリーランスは国民年金のみで老後資金が不足しがちです。iDeCoは掛金が全額所得控除され、所得税・住民税が大きく節税できるため、所得が高いほどメリットが強まります。節税効果を確保した上で、それでも余剰資金があれば、資金の流動性が高く非課税で運用できる新NISAを併用するのが鉄則です。両制度は「節税」と「流動性」という異なる強みがあるため、自身の収支に合わせてバランスを調整しましょう。
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この記事を書いた人
丸山 桃子
アパレルEC運営支援・SNSコンサル
アパレル企業でMD・ECバイヤーとして勤務後、フリーランスに独立。アパレルブランドのEC運営支援・SNS運用を手がけ、ファッション・EC系の記事を執筆しています。
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