minneで販売するのに開業届は必要か|個人事業主になる判断の目安 2026

長谷川 奈津
長谷川 奈津
minneで販売するのに開業届は必要か|個人事業主になる判断の目安 2026

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この記事のポイント

  • minneの販売者登録で「個人事業主」と「どちらでもない」のどちらを選ぶべきか
  • 開業届は必要かを条文と国税庁の基準から解説
  • 事業所得と雑所得の分かれ目

先日、趣味でレジンアクセサリーを作っている方から相談を受けました。「minneに登録しようとしたら、販売者情報の入力画面で『個人事業主』『法人』『どちらでもない』を選べと出てきた。会社員なので『どちらでもない』を選んだけど、これって開業届を出していないと違法になるんですか」と。結論から言うと、違法にはなりません。この選択欄は税務署への届出とは別物で、後から変更もできます。ただし「開業届を出さなくていい」ことと「確定申告をしなくていい」ことは全く別の話で、ここを混同して数年後に慌てる方が本当に多いんです。

この記事では、minneの販売者登録で個人事業主を選ぶべきか、開業届は必要かという疑問に、所得税法の条文と国税庁の基準に沿って答えます。あわせて、事業所得と雑所得の分かれ目、確定申告が必要になる売上ライン、副業として続ける場合の注意点、経費として認められる範囲まで、実務で聞かれることを網羅しました。法律はあなたの味方です。知っていれば怖がる必要はまったくありません。

minneの販売者登録で「個人事業主」を選ぶべきかの結論

先に結論をまとめます。minneの販売者情報で選ぶ区分は、税務上の身分を確定させるものではありません。したがって開業届を出していない会社員や主婦の方が「どちらでもない」を選んでも、法的に何の問題も生じません。

そのうえで判断の目安を示すと、次のようになります。開業届を税務署に提出済みなら「個人事業主」を選びます。法人を設立して法人名義で販売するなら「法人」です。開業届を出しておらず、趣味の延長として少額を販売するだけなら「どちらでもない」で問題ありません。そして、この選択は後からマイページで変更できます。売上が伸びて開業届を出した時点で、個人事業主に切り替えれば済む話です。

実際、同じ疑問を持つ方はかなりの数にのぼります。Q&Aサイトには次のような質問が繰り返し投稿されています。

ミンネで趣味としてアクセサリーを販売したいと思い登録したら個人事業主の設定が出てきたのですが、どういう意味でしょうか? どちらでもないにした方がいいですか? これは後からでも変更出来るものなのでしょうか? 出典: detail.chiebukuro.yahoo.co.jp

これ、知らない人が本当に多いんです。プラットフォーム側がこの区分を聞いてくる理由は、税務署への通報のためではありません。主に3つあります。1つ目は特定商取引法に基づく販売者表示の要否を判定するため。2つ目はインボイス制度における適格請求書発行事業者の登録番号を保持しているかを管理するため。3つ目は事業者向けの決済処理や源泉徴収の要否を判別するためです。つまり、プラットフォームが自分の法的義務を果たすために聞いているのであって、あなたの税務判断を代行しているわけではありません。

ここを取り違えると、逆方向の誤解も生まれます。「どちらでもないを選んだから、自分は事業をしていない扱いになる。だから確定申告は不要だ」という誤解です。これは完全に間違いです。税務上の申告義務は、あなたが画面上でどの区分を選んだかではなく、実際にいくらの所得を得たかで決まります。プラットフォームの選択欄は、税務署の判断に一切影響しません。

「どちらでもない」を選んでも後から困らないのか

困りません。minneの販売者情報は、マイページの設定画面からいつでも編集できます。年の途中で開業届を提出した場合も、提出後に個人事業主へ変更すればよく、遡って修正する必要もありません。

ただし1点だけ注意があります。インボイス制度の適格請求書発行事業者になった場合です。この場合は登録番号の登録が必要になり、区分も個人事業主(または法人)にする必要があります。ハンドメイド作家の販売先は基本的に一般消費者なので、インボイス登録が必要になるケースは限定的です。ただし、法人向けにノベルティを納品する、企業のポップアップに卸すといった取引が出てきたときは、相手方から登録番号を求められることがあります。そのタイミングで検討すれば十分です。

開業届と販売者登録は完全に別の手続き

改めて整理します。開業届の正式名称は「個人事業の開業・廃業等届出書」で、提出先は納税地を所轄する税務署です。minneはハンドメイド作品のマーケットプレイスを運営する民間企業であり、税務署とは何の関係もありません。片方に出した情報がもう片方に自動連携されることはありません。

つまり、次の4パターンがすべて成立します。開業届を出していて個人事業主を選択している人。開業届を出していないのに個人事業主を選択している人(問題は生じませんが実態と合わないので変更を推奨します)。開業届を出しているのに「どちらでもない」のままの人(こちらも法的問題はありませんが、実態に合わせておくのが無難です)。開業届を出しておらず「どちらでもない」の人。実務で最も多いのは4番目です。

そもそも開業届は「必要」なのか、条文で確認する

ここが本題です。開業届の提出義務は、所得税法第229条に規定されています。条文の趣旨を噛み砕くと、居住者が新たに事業所得、不動産所得、山林所得を生ずべき事業を開始した場合、その事実があった日から1か月以内に、納税地の所轄税務署長に届出書を提出しなければならない、という内容です。

つまり、条文上は「しなければならない」と書かれています。義務です。ここだけ読むと、minneで少しでも売ったら1か月以内に開業届を出さないと違法、と読めてしまいます。

しかし実務は違います。理由は2つあります。

第一に、この義務が発生するのは「事業所得を生ずべき事業を開始した場合」に限られます。趣味の延長で年に数点売る程度なら、それは税務上の「事業」に該当せず、雑所得に区分されます。雑所得は第229条の対象外なので、開業届の提出義務そのものが発生しません。

第二に、所得税法には開業届の未提出に対する罰則規定が存在しません。加算税も、過料も、罰金もありません。これは青色申告承認申請書や、消費税関係の届出とは性質が異なります。実務上、開業届を出さなかったことだけを理由に税務署から指導を受けたという事例は、私の相談実務でも聞いたことがありません。

まとめると、「事業として営むなら義務。ただし罰則はない。趣味レベルなら義務すら発生しない」というのが正確な理解です。国税庁が公表している届出書の様式や手引きは、国税庁のサイトで確認できます。

罰則がないのに出したほうがよい理由

では出さなくていいのかというと、私は「売上が立ち始めたら出したほうがよい」と考えています。理由は義務だからではなく、出すことで得られるメリットが実利として大きいからです。具体的には次の5つです。

1つ目は青色申告特別控除です。開業届と青色申告承認申請書をセットで提出し、複式簿記で記帳して電子申告を行うと、所得から最大65万円を控除できます。仮に所得税と住民税の合計税率が20%の方なら、それだけで年間13万円ほどの税負担が変わる計算です。単式簿記でも10万円の控除が使えます。

2つ目は赤字の繰越です。青色申告なら、事業所得の赤字を翌年以降3年にわたって繰り越し、将来の黒字と相殺できます。ハンドメイドは初年度に材料費や機材、撮影機材への投資がかさんで赤字になりやすいので、この制度が効いてきます。

3つ目は損益通算です。事業所得の赤字は、給与所得など他の所得と相殺できます。雑所得の赤字にはこの扱いが認められていないため、ここは決定的な差になります。

4つ目は専従者給与です。生計を一にする配偶者や親族に働いてもらっている場合、青色事業専従者給与として支払額を経費にできます。梱包や発送を家族に手伝ってもらっている作家さんは意外と多いので、規模が大きくなったら検討する価値があります。

5つ目は対外的な信用です。屋号付きの事業用口座を開設する、小規模企業共済に加入する、事業用のクレジットカードを作るといった場面で、開業届の控えが求められることがあります。

逆に、開業届を出すデメリット

公平のためにデメリットも書きます。最大の論点は失業保険です。雇用保険の基本手当は「失業の状態にあること」が受給要件なので、開業届を出して事業を営んでいる状態だと、受給資格を失う、あるいは支給が止まる可能性があります。会社を辞めた直後にハンドメイド販売を本格化させようとしている方は、開業のタイミングを慎重に考える必要があります。雇用保険の詳細は厚生労働省の案内を確認し、判断に迷う場合はハローワークの窓口に事前相談してください。

もう1つは健康保険の扶養です。配偶者の社会保険の被扶養者になっている方は、開業届の提出そのものを理由に扶養から外す運用をしている健康保険組合が存在します。全国健康保険協会(協会けんぽ)は原則として収入基準で判断しますが、組合健保の場合は独自基準を設けていることがあります。※このケースでは、必ず加入している健康保険組合に事前確認してください。組合ごとに扱いが違うため、一般論では答えが出ません。

3つ目は記帳の手間です。青色申告の65万円控除を取るには複式簿記が要求されます。とはいえ、いまはクラウド会計ソフトが自動仕訳をしてくれるので、実務上のハードルは以前よりかなり下がりました。freeeマネーフォワードといったサービスは、銀行口座やクレジットカードの明細を取り込んで仕訳の候補まで出してくれます。

事業所得か雑所得か、ハンドメイド販売の判定基準

開業届の要否を左右する最大の論点が、あなたのminne販売が「事業所得」なのか「雑所得」なのかという区分です。ここは2022年の所得税基本通達の改正で基準が明確化されました。

改正後の考え方はシンプルです。その所得に係る取引を記帳し、帳簿書類を保存している場合は、原則として事業所得として取り扱う。ただし、収入金額が300万円以下で、かつ主たる収入(給与など)に対する割合が10%未満といった場合には、事業と認められるかどうかを個別に判定する、という枠組みです。

つまり、帳簿をつけているかどうかが第一の分岐点になりました。これは実務上とても大きな変化です。以前は「継続性」「営利性」「反復性」といった抽象的な判断要素を並べるしかなく、税理士でも見解が割れる領域でした。いまは「きちんと記帳しているか」という客観的な事実が起点になります。

事業と認められやすい要素

記帳以外にも、事業性を補強する要素があります。実務でチェックされるのは次のような点です。

継続性と反復性があること。年に2回だけ販売するのと、毎月新作を出して年間100件以上出荷するのとでは、当然評価が変わります。

営利目的の明確さ。原価を計算して利益が出る価格を設定しているか、それとも材料費すら回収できていない趣味の頒布なのか。

相当程度の時間と労力の投下。制作、撮影、商品ページ作成、梱包、発送、問い合わせ対応に、週に相当の時間を割いているか。

事業としての外形。屋号を使っている、事業用の口座を分けている、名刺やショップカードを用意している、イベント出店をしている、といった外形的事実。

安定した収入が見込めること。単発ではなく、継続的にリピーターがついているか。

これらは総合判断です。1つ欠けたら即アウトという性質のものではありません。

雑所得のままだと何が不利か

雑所得に区分されると、先ほど挙げた青色申告のメリットがすべて使えません。青色申告特別控除もなし、赤字の繰越もなし、給与所得との損益通算もなし、専従者給与もなしです。

特に痛いのが損益通算です。会社員としての給与がある方が、ハンドメイドの初期投資で年間30万円の赤字を出したとします。事業所得ならこの30万円を給与所得から差し引けるので、源泉徴収されていた所得税の一部が還付されます。雑所得ならこの赤字は切り捨てで、1円も戻りません。

ただし、赤字を作るためだけに事業所得を装うのは租税回避と見なされます。あくまで実態が伴っていることが前提です。

確定申告が必要になる売上と所得のライン

ここは数字を正確に押さえてください。多くの方が「売上」と「所得」を混同して間違えます。

まず用語を整理します。売上(収入金額)は、minneの販売代金の総額です。所得は、そこから必要経費を差し引いた残りです。税務上の判定はすべて所得ベースで行われます。

会社員などの給与所得者がminneで販売している場合、給与以外の所得の合計が年間20万円を超えると、所得税の確定申告が必要になります。逆に言えば、経費を引いた後の利益が20万円以下なら、所得税の確定申告は不要です。

たとえば年間の売上が60万円、材料費とminneの手数料と送料と梱包資材で45万円かかったなら、所得は15万円です。この場合、所得税の確定申告義務はありません。

専業主婦や学生など、給与所得がない方の場合は基準が変わります。基礎控除の額を超える所得があれば確定申告が必要になります。2026年時点では、合計所得金額に応じた基礎控除の見直しが行われているため、最新の控除額は国税庁の確定申告特集で確認してください。

住民税は20万円ルールの対象外

ここが最大の落とし穴です。20万円以下なら申告不要というルールは、所得税に限った特例です。住民税にはこの特例がありません。

つまり、所得が20万円以下で所得税の確定申告をしなかった場合でも、お住まいの市区町村に住民税の申告書を提出する必要があります。この手続きを知らずに何年も放置している方が本当に多いんです。市区町村の税務担当課で「給与以外の所得の申告」として受け付けてもらえます。

なお、確定申告をした場合は、その情報が市区町村に連携されるので、住民税の申告を別途行う必要はありません。

消費税の課税事業者になるライン

売上が伸びてきたら消費税も視野に入ります。基準期間(個人事業主の場合は前々年)の課税売上高が1,000万円を超えると、消費税の課税事業者になります。ハンドメイド販売でこの水準に達するのは相当な規模ですが、教室運営や卸売を組み合わせている方だと到達することがあります。

開業届の書き方と提出の実務手順

いざ出すとなったときの手順です。難しくありません。私が初めて自分の事務所の開業届を出したときは、書式を前にして2時間ほど固まっていましたが、実際に窓口に持っていったら受付は5分で終わりました。あれほど身構える必要はなかったな、というのが正直な感想です。

用意するものは、開業届の用紙(国税庁サイトからダウンロード可)、マイナンバーカードまたは番号確認書類と本人確認書類、印鑑(押印は原則不要になりましたが念のため)です。

記入項目のポイントを押さえます。納税地は原則として住所地です。自宅で制作している方はそのまま自宅住所を書きます。屋号は空欄でも構いませんが、ショップ名を書いておくと屋号付き口座を開設しやすくなります。職業欄には「ハンドメイド作品製造販売」「アクセサリー製造販売」など、実態が伝わる表現を書きます。事業の概要には「ハンドメイドアクセサリーの製作およびインターネットを通じた販売」といった具合に、もう少し具体的に書きます。開業日は自分で決めて構いません。最初に売上が立った日、ショップを開設した日、いずれでも合理的な説明がつけば問題ありません。

提出方法は3つあります。税務署の窓口に持参する、郵送する(控えを返送してもらうため返信用封筒と切手を同封します)、e-Taxで電子申請する、のいずれかです。控えは事業用口座の開設などで求められるので、必ず受け取って保管してください。

そして最重要ポイントです。青色申告をするなら「所得税の青色申告承認申請書」を必ず同時に提出してください。この申請書には期限があり、原則としてその年の3月15日まで、その年の1月16日以降に開業した場合は開業日から2か月以内です。この期限を1日でも過ぎると、その年は白色申告しか選べません。開業届には罰則がありませんが、青色申告承認申請書の期限は完全に効いてきます。これ、順番を逆に覚えている方が驚くほど多いです。

開業届そのものの書き方や必要書類をもう少し詳しく確認したい方は、提出手順を段階的に整理した開業届 やり方完全ガイド!初めてでも失敗しない提出手順と節税の秘訣が参考になります。開業前の準備段階から通しで把握したい場合は、事業開始までの流れを網羅した開業届 準備の完全ガイド!個人事業主として成功する設立手順を先に読んでおくと、書類を前にして固まる時間を減らせます。

副業でminne販売、会社に知られない運用の考え方

会社員の方から最も多く受ける質問がこれです。まず前提として、副業が就業規則で禁止されている会社で隠して行うことのリスクは、税務ではなく労務の問題です。ここでは税務上、住民税を経由して勤務先に伝わる仕組みと、その回避手段だけを説明します。

会社に伝わる典型的な経路は住民税です。市区町村は、あなたの所得情報をもとに住民税額を計算し、勤務先に「特別徴収税額の決定通知書」を送ります。給与の額に比して住民税が明らかに多いと、経理担当者が給与以外の所得の存在に気づくことがあります。

対策はシンプルです。確定申告書の第二表にある「住民税・事業税に関する事項」欄で、給与所得以外の所得に係る住民税の徴収方法として「自分で納付(普通徴収)」を選択します。これにより、副業分の住民税は自宅に納付書が届き、給与から天引きされる分とは切り離されます。

ただし注意点が2つあります。1つは、自治体によって普通徴収への切り替えの取り扱いが異なることです。原則として特別徴収を徹底している自治体では、事業所得や雑所得であっても普通徴収を認めないケースがあります。事前に市区町村の課税課へ確認するのが確実です。もう1つは、所得が20万円以下で所得税の確定申告をしない場合です。この場合は市区町村に住民税の申告書を出すことになりますが、その申告書にも同様の徴収方法を選ぶ欄があるので、そこで普通徴収を選択します。

なお、開業届を出したこと自体が会社に通知されることはありません。税務署が勤務先に連絡する仕組みは存在しません。

minneの手数料と経費として計上できるもの

所得を正しく計算するには、経費を漏れなく拾うことが不可欠です。売上から引けるものを引いていないと、本来払わなくてよい税金を払うことになります。

まず販売手数料です。minneは販売手数料として販売価格に対する一定率を差し引く仕組みで、2026年時点の料率は公式のヘルプページで確認してください。この手数料は全額が経費になります。売上として計上すべき金額は「手数料が引かれた後の入金額」ではなく「販売価格の総額」で、そこから手数料を経費として差し引くのが正しい処理です。ここを入金額だけで記帳していると、経費計上が漏れて所得が実態より多く見えることは基本的にありませんが、消費税や規模判定の場面で数字が合わなくなります。

経費に計上できる主なものを挙げます。作品の材料費(パーツ、レジン液、糸、布、金具など)。制作道具や機材(工具、UVライト、ミシン、撮影用ライト、背景紙など。取得価額が10万円以上のものは原則として減価償却の対象です)。梱包資材(箱、緩衝材、OPP袋、サンキューカード、シール)。送料。プラットフォームの販売手数料と振込手数料。撮影用の小道具。ショップカードや名刺の印刷費。イベント出店料と交通費。関連する書籍や講座の受講料。作品制作や商品ページ作成に使うソフトの利用料。

家事按分も重要です。自宅の一室を作業場にしている場合、家賃、電気代、通信費のうち事業に使っている割合分を経費にできます。按分の根拠は「使用面積の割合」や「使用時間の割合」など、合理的な基準を自分で決めて、その計算過程を記録に残しておきます。たとえば50平米の住居のうち10平米を制作専用スペースにしているなら、家賃の20%を経費として計上する、といった具合です。

逆に経費にならないものもあります。自分用に作った作品の材料費。事業と無関係な私的支出。制作に使わない普段着の衣類。同居家族への給与(青色事業専従者給与の届出をしている場合を除く)。

領収書とレシートは保管が必要です。青色申告なら原則7年、白色申告でも5年の保存義務があります。電子取引でやり取りした請求書や領収書は、電子帳簿保存法の要件に従って電子データのまま保存する必要があるので、ダウンロードしたPDFを日付と取引先が分かる形でフォルダ管理しておいてください。

確定申告の実務、初年度につまずかないための順序

初めての確定申告で迷わないための順序を示します。

第一に、事業用の口座とクレジットカードを分けます。これをやるかやらないかで、記帳の負担が体感で数倍変わります。屋号付き口座でなくても構いません。個人名義の別口座で十分です。

第二に、会計ソフトを導入して口座とカードを連携します。日々の作業は「取り込まれた明細に勘定科目を割り当てる」だけになります。材料を買った、送料を払った、といった仕訳をその都度手入力する必要はありません。

第三に、月に一度、minneの売上データをダウンロードして記帳します。販売価格の総額を売上として計上し、手数料を支払手数料として計上します。まとめて年末にやろうとすると必ず破綻するので、月次で処理する習慣をつけてください。

第四に、翌年の確定申告期間(原則2月16日から3月15日)に申告します。e-Taxで申告すれば、青色申告特別控除の65万円枠が使えます(複式簿記が前提です)。書面提出だと55万円までになるので、この10万円の差は無視できません。

私自身、独立した最初の年に領収書を封筒に放り込んだまま年末を迎え、正月休みをすべて仕訳作業に費やしたことがあります。あのときの反省から、いまは月末に必ず30分だけ会計処理の時間を取るようにしています。年末にまとめてやる作業は、量が多いだけでなく、記憶が薄れていて「この支出は何だったか」を思い出す時間が余計にかかります。

確定申告の全体像や、会社員時代との違いを整理しておきたい方は、年末調整と確定申告の関係を解説したフリーランスに年末調整は必要?確定申告との違い【2026年版】を読むと、給与所得と事業所得の扱いの違いが把握しやすくなります。

ハンドメイド販売を「事業」として安定させる販路の考え方

ここからは税務を離れて、販路の話をします。開業届を出すかどうかで悩む方の本音は、多くの場合「これを事業と呼べるほど続けられるのか自信がない」というところにあります。その不安に対しては、税務ではなく事業構造の話で答えるべきだと考えています。

ハンドメイドマーケットの構造的な特徴は3つあります。1つ目は、集客をプラットフォームに依存すること。検索アルゴリズムや特集の掲載可否で売上が大きく振れます。2つ目は、単価が上げにくいこと。同カテゴリの類似商品と並んで表示されるため、価格比較の圧力が常にかかります。3つ目は、労働集約であること。売上を2倍にするには、原則として制作時間も2倍必要になります。

この3つを踏まえると、ハンドメイド一本で収入を安定させるのは構造的に難しい面があります。だからこそ、実際に長く続けている作家さんの多くは、収入源を複数持っています。

パターンとしては、作品販売に加えてワークショップや教室を運営する、制作過程の写真や動画をストックとして販売する、企業向けにノベルティやディスプレイを受注する、といった展開があります。そしてもう1つ、見落とされがちなのが、制作以外のスキルを在宅ワークとして収益化する道です。

ハンドメイド作家は、商品撮影、画像加工、商品説明文のライティング、SNS運用といったスキルを、日々の運営を通じて自然に身につけています。これらはそのまま在宅の受注業務になります。たとえば文章を書く仕事の相場感を知りたいなら、著述家,記者,編集者の年収・単価相場で職種別の報酬水準を確認できます。制作物の管理や案件対応の基礎を体系的に固めたい方には、ビジネス文書の型を学べるビジネス文書検定のような資格が、取引先とのやり取りの質を底上げしてくれます。

また、近年は生成AIを使った画像制作や文章作成の需要が急速に伸びています。ハンドメイドの商品ページ制作で培った視覚的な感覚は、この領域と相性がよい部分があります。関連する業務の全体像はAI・マーケティング・セキュリティのお仕事や、事業者のAI活用を支援するAIコンサル・業務活用支援のお仕事で確認できます。制作系のスキルをさらに広げたい方には、開発案件の内容を紹介したアプリケーション開発のお仕事や、技術職の報酬水準をまとめたソフトウェア作成者の年収・単価相場も参考になります。ネットワーク系の基礎資格に興味があればCCNA(シスコ技術者認定)も選択肢に入ります。

独自データから見る個人事業主化と在宅ワーク市場の考察

在宅ワーク市場を20年運営してきた立場から見ると、開業届を出すかどうかで長く悩む方と、あっさり出して先に進む方には、はっきりした傾向差があります。悩み続ける方は「事業として認められるレベルに達してから出す」と考えます。先に出す方は「出したうえで積み上げる」と考えます。そして、後者のほうが結果的に長く続いている割合が高い、という観察があります。

理由は精神論ではありません。制度の設計上、先に出したほうが有利になる構造があるからです。青色申告承認申請書の期限は開業日から2か月と短く、赤字が出やすい初期段階こそ損益通算と繰越控除の恩恵が大きい。つまり「軌道に乗ってから出そう」という判断は、最も制度メリットが大きい時期を自ら手放していることになります。運営者として見てきた限りでは、この順序の取り違えは非常によくあります。

もう1つ、長く見てきて感じることを書きます。継続的に収入を得ている方に共通しているのは、単発の販売を積み上げるのではなく、「この人に頼むと楽だ」と思ってもらえる関係を作ることに時間を使っている点です。ハンドメイドで言えばリピーターの育成、受注業務で言えば発注者との継続契約です。新規顧客を1件獲得するコストは、既存顧客に再購入してもらうコストより一般に高くつきます。この構造は、業種を問わず変わりません。

そして、手取りの話をします。同じ10万円の仕事でも、間に何社挟まっているかで受け手に残る金額はまったく変わります。中間マージンが乗らない直接取引の構造では、発注する側は同じ予算でより多くを依頼でき、受け手は同じ労力でより厚い手取りを得られます。手数料0%という条件が意味を持つのは、金額の大小そのものではなく、この「双方が得をする」構造が成立する点にあります。運営者として長く見てきて確信しているのは、手取りが厚い環境にいる人ほど、価格ではなく品質で勝負する余裕を持てるということです。値下げ圧力に晒され続けている人は、どうしても短期的な受注量に判断が引きずられます。

ハンドメイド作家の方に伝えたいのは、minneでの販売を「事業」に育てる道と、身につけたスキルを在宅の受注業務に横展開する道は、両立するということです。どちらか一方を選ぶ必要はありません。むしろ収入源が複数あることで、プラットフォームのアルゴリズム変更や季節変動に対する耐性が生まれます。開業届を出して事業所得として申告していれば、この複数の収入をまとめて1つの事業として処理でき、経費も按分ではなく一体で管理できます。

最後に法律の話に戻ります。開業届に罰則はありません。しかし、罰則がないから出さなくていい、という発想は損をします。制度は、届出を出した人に対して具体的な優遇を用意しています。青色申告特別控除も、損益通算も、赤字の繰越も、すべて「届出を出した人だけが使える権利」です。法律はあなたを縛るためだけにあるのではなく、条件を満たした人を守り、支えるためにも設計されています。minneの販売者登録画面で「どちらでもない」を選んだままでも構いません。ただ、売上が積み上がってきたと感じたら、そのタイミングで開業届と青色申告承認申請書をセットで出す。それだけで、手元に残るお金は確実に変わります。法律はあなたの味方です。

よくある質問

Q. minneの販売者登録で「どちらでもない」を選んだら、後で個人事業主に変更できますか?

できます。販売者情報はマイページの設定画面からいつでも編集でき、変更に制限はありません。開業届を出す前は「どちらでもない」で問題なく、税務署に開業届を提出したタイミングで個人事業主に切り替えれば十分です。この選択欄は税務上の身分を確定させるものではなく、後から変更しても遡って修正が必要になることはありません。

Q. minneで売上が出たら必ず開業届を出さないといけませんか?

必須ではありません。所得税法上、事業所得を生ずべき事業を開始した場合は1か月以内の提出義務がありますが、罰則規定はなく、趣味の延長で年に数点売る程度なら雑所得となり義務自体が発生しません。ただし青色申告特別控除や赤字の繰越、給与所得との損益通算は開業届を出した人だけの権利なので、売上が積み上がったら提出をおすすめします。

Q. 会社員がminneで販売した場合、いくらから確定申告が必要ですか?

売上ではなく、経費を引いた後の所得が年間20万円を超えたら所得税の確定申告が必要です。売上60万円で材料費や手数料が45万円なら所得は15万円なので申告義務はありません。ただし住民税にこの20万円ルールはないため、所得税の申告をしない場合でも市区町村への住民税申告は別途必要になります。

Q. 副業でminne販売していることを会社に知られないようにできますか?

確定申告書の第二表で、給与所得以外の所得に係る住民税の徴収方法を「自分で納付(普通徴収)」に選択すれば、副業分の住民税は自宅に納付書が届き給与天引きと分離されます。ただし特別徴収を徹底している自治体では認められない場合があるため、事前に市区町村の課税課へ確認してください。開業届の提出自体が会社へ通知されることはありません。

この記事について

@SOHO
編集部

監修:@SOHO編集部

2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを20年運営。編集部が事実確認のうえ公開しています。

公開:2026年2月13日最終更新:2026年9月6日
長谷川 奈津

この記事を書いた人

長谷川 奈津@SOHO編集部

行政書士・元企業法務

企業法務で数多くのフリーランス契約を扱った経験を活かし、フリーランス向けの法律・契約・権利に関する記事を執筆。「法律はあなたの味方です」がモットー。

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