個人クリニックへ転職するという選択|前の職場との落差と、決め手


この記事のポイント
- ✓病院から個人クリニックへの転職で起きる落差は
- ✓夜勤手当がなくなる影響
- ✓1人で判断する場面の多さ
「夜勤がつらい。でも、クリニックに移って本当にやっていけるのかな」
病院で働きながら、そんなふうに迷っていませんか。夜勤明けの帰り道、求人サイトを眺めては閉じる。その繰り返しに疲れている人もいると思います。
大丈夫です。迷うのは、あなたが真剣に考えている証拠です。
結論からお伝えすると、病院から個人クリニックへの転職で起きる落差は、大きく3つです。「お金」「任され方」「人の近さ」。そして、転職してよかったと感じる人と、こんなはずではなかったと感じる人を分けるのは、この3つの落差を知ったうえで、「自分は何を手放して、何を得たいのか」を言葉にできていたかどうかです。
この記事では、個人クリニックという職場の中で何が起きているのかを具体的にお話ししながら、転職の決め手の見つけ方、求人票で確かめること、辞め方と入ってからの3か月までを、順番にまとめていきます。
病院から個人クリニックへ移る人は、何を求めているのか
まず、個人クリニックへの転職を考える人が、どんな理由で動いているのかを見てみます。自分の気持ちを整理するきっかけにしてください。
よく聞く理由は、だいたい次のようなものです。
・夜勤で体調を崩した、生活のリズムを取り戻したい ・子どもが小さく、夜勤や土日の勤務が難しくなった ・親の介護が始まり、決まった時間に帰りたい ・病棟の忙しさと急変への緊張が続き、心が疲れてしまった ・同じ患者さんと、長く関わる看護がしたい
どれも、とても自然な理由です。
看護師として働く人のうち、診療所で働く人は決して少なくありません。日本看護協会がまとめている統計資料では、令和5年末時点で就業している看護師約137万人のうち、診療所で働く人は約24万人です。准看護師では、就業者の4割近くが診療所で働いています。クリニックは、看護職にとって病院に次ぐ大きな職場なのです。
働き方を変えたいという気持ちは、わがままではありません。日本看護協会も、看護職が仕事と生活を両立できることの大切さを示しています。
ワーク・ライフ・バランス(WLB)とは、仕事と生活の両立を無理なく実現できる状態のことです。仕事と生活を調和させることで、好ましい相乗効果を高めようという考え方とその取り組みを指します。 日本看護協会は、「看護職の健康と安全が、患者の健康と安全を守る」という考えに立ち、看護職のワーク・ライフ・バランスを推進しています。 出典: 日本看護協会 看護職のワーク・ライフ・バランスの推進
看護職の健康と安全が、患者の健康と安全を守る。この言葉のとおり、あなたが疲れ切ったまま働き続けることは、あなたにとっても、患者さんにとってもよいことではありません。
ただ、ここで1つだけ気をつけてほしいことがあります。「今の職場から離れたい」という気持ちだけで動くと、次の職場の良くない面が見えにくくなります。逃げたい気持ちがあるのは当然です。そのうえで、次の章からお話しする3つの落差を、落ち着いて見てみてください。
前の職場との落差1:お金
最初に向き合っておきたいのが、お金の落差です。ここを曖昧にしたまま転職すると、入ってから毎月の給与明細を見るたびに気持ちが揺れてしまいます。
夜勤手当がなくなる
病院からクリニックに移ると、多くの場合、年収は下がります。一番大きな理由は夜勤手当です。
二交代制の病棟で月に4回から5回夜勤に入り、1回あたりの手当が1万円前後だとすると、夜勤手当だけで月に4万円から5万円、年間で50万円から60万円ほどになります。この分が、そのままなくなると考えておく必要があります。
個人クリニックの常勤看護師の月給は、求人を見ると25万円から32万円前後に集まることが多く、地域や診療科で差があります。基本給だけを比べると病院と大きく変わらなくても、手取りの総額では差が出やすいのです。
賞与と退職金
もう1つ見落としやすいのが、賞与と退職金です。個人クリニックの賞与は、院の経営状況と院長の判断で決まります。「年2回、計2か月分」「業績による」と書かれている求人も多く、病院と比べると少なめになる傾向があります。
退職金の制度がない院もあります。個人開設のクリニックでは、院長が中小企業向けの退職金共済などに加入しているかどうかで扱いが変わります。長く働くつもりなら、ここは必ず確かめておきたい点です。
自分の数字で計算してみる
日本看護協会は、夜勤の回数や勤務時間を変えたときに処遇がどう変わるかを試算できる「わたしの働き方シミュレーター」を公開しています。今の働き方と、クリニックでの働き方を並べてみると、どれくらいの差になるのかが具体的な数字で見えてきます。
看護職全体の年収の水準や年齢による推移を知りたい場合は、看護師の年収・単価相場にまとまっています。提示された給与が相場のどのあたりにあるのかを見ておくと、「下がるのは仕方ない」と「下がりすぎている」の区別がつけやすくなります。
お金の落差は、数字にしてしまえば怖くありません。怖いのは、よく分からないまま決めてしまうことです。
前の職場との落差2:任され方
2つ目の落差は、仕事の任され方です。これは、実際に働き始めてから「思っていたのと違う」と感じる人が一番多い部分です。
1人で判断する場面が増える
病院では、困ったら先輩や主任、師長に相談できます。医師もすぐ近くにいて、検査部や薬剤部もあります。個人クリニックでは、看護師は2〜3人、医師は院長1人ということがほとんどです。
採血が難しい患者さんが来ても、代わってくれる人がいない。点滴中の患者さんの様子がおかしいと感じたら、診察中の院長に自分で声をかけて伝える。そういう場面が日常的にあります。
採血や点滴の手技に不安がある人は、ここが一番の壁になります。病棟では1日に何件か、外来では何十件と採血する院もあります。「1回で確実に」を求められる場面が増えることは、覚悟しておいてください。
看護以外の仕事も担う
少人数のクリニックでは、看護師も電話を取り、受付が混めば患者さんの案内をし、診療が終わったら片付けと掃除をします。器具の発注や在庫の管理を任されることもあります。
病院では看護助手や他部署が担っていた仕事が、自分のところに来る。これを「雑用をさせられる」と感じるか、「みんなで外来を回している」と感じるかで、居心地は大きく変わります。
マニュアルより、院長のやり方
個人クリニックでは、手順書やマニュアルが整っていないことが多く、院長のやり方がそのまま手順です。前の病院で正しいと教わったやり方でも、「うちではこうしている」と言われることがあります。
ここで大切なのは、前の職場のやり方を否定されたと受け取らないことです。やり方が違うだけで、あなたの経験が否定されたわけではありません。まずは院のやり方を覚え、信頼ができてから「こういう方法もあります」と伝えれば十分です。
教育の体制は、ほとんどない
病院のような新人研修や、段階を踏んだ教育の仕組みは、個人クリニックにはほとんどありません。先輩の看護師に隣で教わりながら、数日から数週間で一通りの業務を覚えるのが普通です。
私も、仕組みの整った大きな職場から、少人数の職場に移ったことがあります。初日に「じゃあ、今日から一緒にお願いね」と言われて、何を聞けばよいのかも分からずに立ち尽くしてしまいました。そのとき助けになったのは、分からないことをその日のうちにメモして、昼休みにまとめて聞くと決めたことです。忙しい時間に何度も呼び止めるより、ずっと気持ちよく教えてもらえました。
前の職場との落差3:人の近さと、逃げ場のなさ
3つ目の落差は、人間関係の距離です。これは良い面にも悪い面にもなります。
院長が経営者でもある
個人クリニックの院長は、診療の責任者であると同時に、給与や賞与、シフトを決める雇い主です。病院の医師のように「指示を出す人」であるだけではありません。院長の考え方や人柄が、そのまま職場の空気になります。
院長の配偶者が事務長として経理やスタッフの管理を担っている院も多くあります。院長と院長の家族、長く勤めている古株のスタッフ。この3者との関係が、働きやすさを大きく左右します。
異動がない
病院なら、合わない人がいても数年たてば配置換えがありますし、師長や人事に相談することもできます。個人クリニックには異動も人事部もありません。合わない人とも、毎日同じ部屋で朝から夕方まで過ごします。昼休みは同じ休憩室で食べる、という院も少なくありません。
人の近さは、良い面にもなる
一方で、少人数だからこそ、助け合いが自然に生まれる職場もあります。子どもの急な熱で休むときに「お互いさまだから」と言ってもらえる。院長にすぐ相談できて、話が早い。そうした温かさは、大きな組織ではなかなか得られないものです。
人の近さが良い方に出るか、つらい方に出るかは、職場によって本当に違います。だからこそ、次の章でお話しする「入る前に確かめること」がとても大切になります。
それでも、個人クリニックで得られるもの
ここまで落差ばかりをお話ししてきたので、少し不安になったかもしれません。でも、個人クリニックに移って「本当によかった」と感じている人がたくさんいるのも事実です。得られるものも、きちんと見ておきましょう。
生活のリズムが戻る
夜勤がなくなると、毎日同じ時間に寝て、同じ時間に起きられるようになります。これだけで、体と心の調子が大きく変わる人は多いです。夜勤明けの休みが「寝て終わる休み」ではなくなります。
休みが読みやすい
個人クリニックは、日曜と祝日が休診で、平日のどこか1日が午後休診、という形が多く見られます。休みの曜日が決まっているので、家族との予定や通院、子どもの行事の予定が立てやすくなります。
同じ患者さんと長く関われる
近所の人が何年も通ってくるのが、個人クリニックの外来です。名前と顔を覚え、「前回より数値が良くなりましたね」と一緒に喜べる。病棟の短い入院期間では味わえない、つながりのある看護ができます。
体の負担が軽くなる
移乗や体位変換、重症の患者さんの対応が減るため、腰や体の負担が軽くなります。急変への緊張が続く日々から離れられることで、気持ちが楽になったという声もよく聞きます。
落差と得られるもの。この両方を並べて、自分にとってどちらが大きいかを考えることが、転職の決め手につながります。
診療科によって、転職後の落差の大きさは変わる
同じ個人クリニックでも、診療科によって1日の中身が違い、病院からの落差の感じ方も変わります。前の職場の経験と照らし合わせながら見てみてください。
内科
生活習慣病の定期受診、風邪や発熱の患者さん、健診や予防接種と、幅広い患者さんが来ます。採血、点滴、心電図が看護師の中心の業務です。病棟の内科経験がある人は、疾患の知識をそのまま活かせます。一方で、インフルエンザの流行期には1日の患者数が一気に増え、午前だけで60人を超えるような日もあります。「クリニックならゆったり働ける」と思っていると、この時期に驚くかもしれません。
整形外科
リハビリ室を持つ院が多く、スタッフの人数は他の科より多めです。看護師の業務は、注射や関節の処置の介助、ギプスの処置、レントゲン撮影前の患者さんの誘導などです。高齢の患者さんが多く、移動の介助もあります。病棟の整形外科の経験があると、術後の患者さんのフォローにも入りやすい科です。
小児科
子どもと保護者への声かけが中心になる科です。予防接種の時期や感染症の流行期は、とても忙しくなります。子育ての経験がそのまま活きる一方、泣いている子どもの採血や点滴には独特の技術がいります。小児の経験がない人は、面接でどう教えてもらえるかを確かめておきましょう。
皮膚科・眼科・耳鼻科
処置や検査の流れが決まっていて、患者さんの回転がとても速い科です。1人あたりの診察時間が短いぶん、看護師には段取りの速さが求められます。病棟での看護とは求められる力が大きく違うので、最初の数週間は戸惑う人が多いです。そのかわり、流れを覚えてしまえば、残業が少なく帰りやすい科でもあります。
心療内科・精神科
外来のクリニックでは、患者さんとの会話や、状態の変化に気づく観察が大切になります。注射や点滴は少なく、手技に不安がある人には入りやすい面もあります。精神科の病棟経験がある人は、その経験が大きな強みになります。
在宅医療を行う院
訪問診療をしている院では、院長と一緒に患者さんの自宅や施設を回ることがあります。病棟で退院支援に関わってきた人には、やりがいを感じやすい働き方です。ただし、車の運転や、夜間のオンコールがある院もあるので、「夜勤なし」を条件にしている人は必ず確かめてください。
前の職場の経験に近い科を選ぶと、手技や知識の落差は小さくなります。反対に、まったく違う科を選ぶと、覚えることは増えますが、新しい専門性が身につきます。どちらが良いということではなく、今のあなたにとってどちらが無理がないかで選んでください。
よく聞く3つのケースから考える
ここで、病院から個人クリニックに移るときによく聞く話を、3つのケースに分けてご紹介します。どれも実際によくある状況をもとに、細部を変えてまとめたものです。
ケース1:夜勤で体調を崩し、急いで転職したケース
夜勤が続いて眠れなくなり、とにかく早く辞めたいと、最初に内定をもらったクリニックに決めた看護師さんの話です。夜勤がなくなって体調は戻りましたが、昼休みが3時間ある院で、朝8時半から夜7時過ぎまで家に帰れない毎日になりました。「夜勤がないこと」だけを見て、1日の拘束時間を確かめていなかったのです。
このケースから分かるのは、急いでいるときほど、求人票の診療時間と昼休みの長さを見ておく大切さです。体調が悪いときは判断力も落ちます。可能なら、転職活動の前に休む時間を取ることも考えてください。
ケース2:給与の差を計算してから決めたケース
子どもが保育園に入るタイミングで、病院からクリニックへの転職を考えた看護師さんの話です。夜勤手当がなくなると年収がどれくらい下がるかを先に計算し、その差を家族と話し合ってから転職活動を始めました。
給与が下がることは分かっていたので、入ってから明細を見て落ち込むことはありませんでした。むしろ、保育園のお迎えに毎日間に合うことの価値を実感しているそうです。お金の落差を「知って選んだ」ことが、納得につながった例です。
ケース3:見学で職場を見比べたケース
2つのクリニックから内定をもらい、どちらにするか迷った看護師さんの話です。条件は、ほとんど同じでした。そこで、両方の院に診療時間中の見学をお願いしたところ、一方の院では、忙しい時間に院長が大きな声でスタッフを叱っていて、スタッフの表情が硬いままでした。もう一方の院では、忙しくても声をかけ合う雰囲気がありました。
この看護師さんは後者を選び、今も同じ院で働いています。条件が同じなら、人の空気で選ぶ。見学はそのための一番確かな方法です。
3つのケースに共通しているのは、「知ってから選ぶ」ことの大切さです。落差があること自体は、転職の失敗ではありません。知らずに選んだとき、落差は後悔に変わります。
転職を決める前に確かめること:求人票・見学・面接
個人クリニックは、同じ診療科でも院によって職場の中身がまったく違います。入ってから後悔しないために、確かめておきたい点を整理します。
求人票で見る点
・診療時間と実際の勤務時間:「9時から18時半」でも、片付けで毎日30分ほど残る院があります ・昼休みの長さ:2時間以上ある院では、朝から夜までの拘束時間が長くなります ・社会保険と退職金の制度:個人開設で従業員が少ない院は、加入の形が違うことがあります ・賞与の実績:「年2回」だけでなく、昨年の実績が何か月分だったか ・募集の頻度:同じ院が何度も募集していないか
令和6年4月からは、募集の段階で、業務の内容や就業場所の変更の範囲も示すことが求められるようになりました。訪問診療への同行や分院への応援があるかどうかは、求人票に書かれていなければ、面接で聞いて構いません。
見学で見る点
見学ができるなら、診療時間中に行くのがおすすめです。見るのは、スタッフ同士の声のかけ方、院長がスタッフに指示を出すときの口調、新しい人が質問しやすそうか、という点です。忙しい時間に空気が張りつめるのは普通です。そのあと、空気がふっと戻るかどうかを見てください。
面接で聞き返す点
・「今回の募集は増員ですか、欠員の補充ですか」 ・「入職後はどなたに仕事を教えていただけますか」 ・「片付けで残る時間は、勤務時間として扱われていますか」 ・「今後、診療時間や診療内容を変える予定はありますか」
開院から年数がたっている院では、院長の年齢や、承継の予定が数年後の働き方に関わってきます。聞きにくければ、「長く働きたいので、今後の院の見通しを伺ってもよいですか」と前置きすると、自然に聞けます。
採用が決まったら、勤務時間や給与を書いた労働条件通知書や雇用契約書を、必ず書面で受け取ってください。個人クリニックでは電話1本で話が進むこともあるので、ここは遠慮しなくて大丈夫です。
決め手になるもの:譲れない条件を3つに絞る
ここまでの情報をもとに、いよいよ「本当に転職するか」「どの院にするか」を決めていきます。
こういう迷い方をする人がとても多いんです。「給与も下げたくない、夜勤はしたくない、人間関係も良いところがいい、家からも近いところがいい」。全部そろう職場を探して、なかなか決められない。
気持ちはよく分かります。でも、全部そろう職場は、まずありません。だから、次の順番で考えてみてください。
手順1:手放してもよいものを書き出す
紙に、今の職場で得ているものを書き出します。夜勤手当、充実した教育、相談できる先輩、最新の医療に触れる機会、福利厚生。そのうえで、「これは手放してもよい」と思えるものに印をつけます。
手順2:どうしても得たいものを3つ選ぶ
次に、転職で得たいものを書き出し、その中から3つだけ選びます。「夜勤なし」「週4日勤務」「通勤30分以内」のように、できるだけ具体的に書くのがコツです。
手順3:3つの条件で求人を比べる
選んだ3つの条件を満たしているかどうかで、求人を比べます。3つを満たしていれば、ほかの条件が少し劣っていても、それは「手放してよいもの」の範囲に入っているはずです。
たとえば、子どもが小さい看護師さんなら、「夜勤なし」「平日の午後休診がある」「急な休みに理解がある」の3つを選ぶかもしれません。そうすると、給与が月に2万円低くても、この3つがそろう院のほうが、長く穏やかに働けるという判断ができます。
決め手は、職場の良し悪しではなく、あなたの条件との相性です。自分で選んだ3つの条件で決めた転職は、入ってから少し大変なことがあっても、「自分で選んだ」という納得が支えになります。
辞め方と、入ってからの3か月
転職先が決まったら、今の職場の辞め方と、新しい職場での最初の3か月を考えておきましょう。
辞めるタイミングと伝え方
病院の場合、就業規則で「退職の1か月前まで」「2か月前まで」と決められていることが多いです。人員の調整が必要なので、できれば2か月から3か月前に師長に伝えると、引き継ぎに余裕が持てます。賞与の支給日の後に退職する形にするかどうかも、計算しておくとよいでしょう。
引き止められることもあると思います。そのときは、「働き方を変えたい」という理由を、落ち着いて繰り返し伝えれば大丈夫です。今の職場を悪く言う必要はありません。
入ってからの3か月
最初の3か月は、院のやり方を覚えることに集中します。前の職場との違いに戸惑うのは、あなただけではありません。
・分からないことはメモして、昼休みなど落ち着いた時間にまとめて聞く ・前の職場のやり方と比べる言葉は、しばらく口にしない ・古株のスタッフに、院のやり方の理由を教えてもらう ・私生活の話は、自分から深く出しすぎない
3か月たつと、1日の流れが体に入り、自分から動けることが増えてきます。それまでは「覚える時期」と割り切って、自分を責めすぎないでください。
合わなかったときは
どれだけ準備しても、合わない職場はあります。そのときに「また失敗した」と思わないでください。個人クリニックは数が多く、同じ診療科でも院が変われば空気はまったく違います。今回の経験で分かったことを、次の3つの条件に加えればよいのです。
1人で迷い続けないために
最後に、転職を考えているあなたに、いくつかの道しるべをお伝えします。
1人で考えていると、「自分が甘いのではないか」「今の職場で頑張るべきではないか」と、同じところをぐるぐる回ってしまうことがあります。そういうときは、話を聞いてくれる人の力を借りてください。職場・転職・キャリア相談のお仕事では、キャリア相談を担う人がどんな相談に乗っているのかが紹介されていて、自分の迷いを誰に話せばよいのかの見当をつけるのに役立ちます。相談を受ける側の資格について知りたい場合は、キャリアコンサルタントのページで概要を確認できます。
受付や医療事務など、看護師以外の立場でクリニックに関わりたいと考えている人もいるかもしれません。医療事務技能審査試験(メディカルクラーク)では、医療事務の試験の範囲や受験の流れが紹介されています。
個人クリニックに移ると、昼休みが長い、午前だけの勤務を組みやすいなど、時間の使い方が変わります。空いた時間に看護の経験を別の形で使う人もいて、その種類や始め方は看護師におすすめの在宅ワーク5選|臨床経験を活かす副業【2026年版】で紹介されています。副業を考える場合は、転職先の就業規則で認められているかを先に確かめてください。
働く人と職場の組み合わせを長く見てきた運営者の立場から言えば、転職してよかったと感じている人ほど、「何を手放したか」をはっきり自覚しています。給与が下がったことも、教育の仕組みがないことも、分かったうえで選んでいるので、入ってから揺れにくいのです。反対に、「今よりは良くなるはず」という期待だけで動いた人は、新しい職場の小さな不満に心を奪われやすくなります。落差を知ることは、転職をあきらめるためではなく、納得して選ぶためにあります。
あなたは一人ではありません。働き方を変えたいという気持ちを、どうか大切にしてください。
よくある質問
Q. 病院から個人クリニックに転職すると、年収はどれくらい下がりますか?
一番大きいのは夜勤手当で、月4回から5回の夜勤に入っていた人なら、年間50万円から60万円ほどの差が出ることがあります。賞与や退職金の制度も院によって違うため、提示額だけでなく、昨年の賞与の実績と退職金の有無を確かめ、年収の総額で比べることが大切です。
Q. 病棟の経験しかなくても、クリニックで働けますか?
働けます。ただし、外来では採血や点滴を1人で任される場面が多く、教育の仕組みもほとんどありません。手技に不安がある場合は、面接で正直に伝え、入職後にどう教えてもらえるかを確認しておきましょう。最初の3か月は院のやり方を覚える時期と割り切ると、気持ちが楽になります。
Q. 個人クリニックは人間関係が合わないと大変だと聞きますが、本当ですか?
異動も人事部もないため、合わない人がいても離れにくいのは確かです。一方で、少人数ならではの助け合いがある職場も多くあります。見学でスタッフ同士の声のかけ方や院長の口調を見る、面接で募集が増員か欠員補充かを聞くなど、入る前に確かめることで失敗を減らせます。
Q. 転職先を決めきれないときは、どう考えればよいですか?
全部の条件がそろう職場はまずないので、「どうしても得たいもの」を3つに絞ってみてください。夜勤なし、通勤30分以内、午後休診がある、のように具体的に書き、その3つを満たすかどうかで求人を比べます。自分で選んだ条件で決めると、入ってからも納得が支えになります。
この記事について
編集部
監修:@SOHO編集部
2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを20年運営。編集部が事実確認のうえ公開しています。

この記事を書いた人
中西 直美@SOHO編集部
産業カウンセラー・キャリアコンサルタント
大手人材会社でキャリアカウンセラーとして15年間従事した後、フリーランスの産業カウンセラーとして独立。在宅ワーカーのメンタルヘルスケアを専門に活動しています。
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