テレワークで経理を担う働き方と任される範囲

朝比奈 蒼
朝比奈 蒼
テレワークで経理を担う働き方と任される範囲

この記事のポイント

  • ✓テレワークの経理はどこまで在宅で完結するのか
  • ✓フルリモート求人の3つの型
  • ✓任される範囲の決まり方

結論から書きます。経理のテレワークは「職種まるごと在宅になるか」ではなく「工程ごとにどこまで在宅にできるか」で決まります。だから求人票に「フルリモート」と書かれていても、任される範囲は会社によってまったく違います。

この差を生んでいるのは、担当者の腕ではありません。会社が帳簿と証憑をデータで扱える状態になっているかどうかです。そこが整っている会社では、月次の締めまで在宅で完結します。整っていない会社では、紙を触るために出社が残ります。

この記事では、工程ごとの切り分けを先に示し、そのうえで求人の型、任される範囲の決まり方、必要なスキル、費用負担と労働時間の取り決め、作業環境の確認項目までを整理します。制度の部分は厚生労働省と国税庁、総務省の公開資料で今日時点の記載を確かめたものだけを載せています。

結論。経理のテレワークは工程ごとに分かれます

経理の仕事を工程で並べると、だいたい次の順になります。証憑を受け取る、内容を確認する、仕訳を入力する、支払いの手続きをする、残高を照合する、月次で締める、決算の資料を作る、税務の申告に必要な資料を渡す。

このうち在宅と相性がよいのは、入力、照合、月次の締め、資料の作成です。データが手元の画面に来ていれば、場所は関係ありません。

在宅と相性が悪いのは、紙の証憑を受け取る工程、現金と小切手を扱う工程、金融機関の窓口に行く工程、そして社内の稟議で紙に押印する工程です。ここが残っている会社では、誰かが出社することになります。

正直なところ、ここを曖昧にしたまま「経理もテレワークできます」と書いている求人は、どうかと思います。応募する側から見れば、紙が残っているかどうかで働き方がまるごと変わるからです。

だから、求人票を読むときの視点は1つに絞れます。証憑がどう届くか。これを確かめれば、在宅の度合いが分かります。全部が電子データで届く会社なら在宅で完結します。郵送の請求書が月に何十通も届く会社なら、受け取る担当が必要です。

ちなみに、郵送の請求書を担当者が出社して開封し、スキャンしてデータにする役割を1人だけ置いて、残りの担当者は全員在宅という運用をしている会社もあります。この形なら、応募する側は「出社する役割か、在宅の役割か」を面接で確かめればよいことになります。

在宅でできる工程と、出社が残る工程を分ける

もう少し具体的に分けます。応募前の判断材料になるので、実務の順に並べます。

在宅で完結しやすいのは、次の工程です。会計ソフトへの入力。銀行のデータを取り込んで明細と突き合わせる作業。経費精算の申請内容を確認して承認する作業。請求書を作成して送付する作業。売掛金と買掛金の残高を確認する作業。月次の試算表を作る作業。予算と実績の差を分析する作業。この範囲は、クラウドの会計ソフトと電子承認の仕組みがあれば、場所を問いません。

出社が残りやすいのは、次の工程です。郵送で届く証憑の受け取りと開封。小口現金の管理。手形と小切手の扱い。金融機関の窓口での手続き。紙の帳票への押印。決算書の製本と原本の保管。税務調査の対応。この中でも、小口現金と手形は「そもそも廃止する」方向に動いている会社が増えています。

この切り分けから分かることが1つあります。会社の規模が小さいほど、在宅で完結しにくいという傾向が見られます。理由は単純で、担当者が1人か2人しかいないため、紙を触る役割を分担できないからです。逆に、経理の担当者が5人以上いる会社では、役割を分けて一部の人を完全在宅にする運用が成り立ちます。

もう1つの傾向として、経理の業務を請け負う専門の会社では、在宅の比率が高くなります。請け負う側は最初からデータで受け取る前提で仕組みを作るからです。求人サイトには、入社初日から100%フルリモートで経理代行の部署に配属される募集も出ています。未経験に近い状態から在宅で経理に入るなら、この方向の募集が現実的な入り口になります。

制度の側が在宅を可能にした土台

なぜ経理が在宅でできるようになったのか。根っこにあるのは法律の変化です。ここを知っておくと、会社ごとの差の理由が分かります。

電子帳簿保存法という法律があります。国税庁は電子帳簿等保存制度特設サイトで、この法律について税務関係の帳簿書類のデータ保存を可能とする法律で、同法に基づく各種制度を利用することで経理のデジタル化が図れる、と説明しています。つまり、帳簿や書類を紙で保管しなければならないという前提が外れました。

さらに重要なのが電子取引の扱いです。国税庁は、取引に関する書類に通常記載される情報を含む電子データをやり取りした場合の、そのデータに関する保存義務や保存方法についても同法で定められているため、所得税法と法人税法上の保存義務者となる方は特に電子取引について確認するよう案内しています。

言い換えると、メールやWebで受け取った請求書は、紙に印刷して保管するのではなく、データのまま決められた要件で保存する形になりました。この変化が、経理を在宅でできる仕事に変えた最大の要因です。データで保存する運用になれば、担当者がどこにいても同じ作業ができます。

もう1つの土台は、消費税の適格請求書等保存方式です。請求書に登録番号を記載し、受け取った側はその番号を確認する運用になりました。確認の作業そのものは画面上で完結するので、在宅と相性がよい工程です。

ここで応募する側が見るべき点は1つです。面接で「電子取引のデータはどう保存していますか」と聞いてみてください。答えが具体的に返ってくる会社は、在宅の運用が整っています。答えに詰まる会社は、まだ紙が残っている可能性が高い。この質問1つで、働き方の実態がかなり見えます。

「フルリモート経理」の求人は3つの型に分かれます

求人票の「フルリモート」を分解すると、3つの型になります。型が違うと、求められる経験も違います。

第1の型は、事業会社の経理部門で在宅を認めている募集です。月次の締めから決算の補助までを担当します。この型は、実務の経験を求められることが多いです。理由は、社内の事情を知らないと判断できない仕訳があるためです。ただ、入社してからは安定して在宅が続きます。

第2の型は、経理の業務を請け負う会社の募集です。複数のお客様の帳簿を担当します。最初から在宅で完結する仕組みが作られているので、フルリモートが本当に最後まで続きます。未経験や経験の浅い方の募集が出やすいのもこの型です。ただし、担当するお客様の数が多く、締めの時期が重なると忙しくなります。

第3の型は、業務委託で経理の作業を受ける形です。雇用ではないので、時間の自由が利きます。ただし報酬は作業量に比例し、繁忙期に偏ります。

正直なところ、求人サイトで「在宅あり」と「フルリモート」が同じ検索結果に並んでいるのは分かりにくいと感じます。「在宅あり」は週に何日か在宅という意味で使われることが多く、「フルリモート」「完全在宅」は原則出社なしを指します。検索するときは両方の語で回して、勤務地の欄で判断してください。

もう1つ、検索に使う語を増やすと出てくる数が変わります。「経理 フルリモート」だけでなく「経理事務 在宅」「会計 リモート」「経理代行 在宅」「記帳代行 在宅」の5通りで回してみてください。同じ仕事が違う職種名で募集されています。

任される範囲は、月次のどこを担当するかで決まる

「経理を任される」という言い方は曖昧です。実際は、月の流れの中でどこを担当するかで、任される範囲が決まります。

月初は、前月の締めの作業が中心になります。売上と仕入の計上、経費の計上、残高の照合。ここを担当するのが最も一般的な在宅の役割です。

月の中頃は、支払いの準備です。請求書の内容を確認し、支払いの一覧を作り、承認を受けて振込のデータを作ります。振込の実行そのものは権限の関係で別の人が行う会社が多いです。

月末は、請求書の発行と入金の確認です。売掛金の入金がない先を洗い出して、営業に連絡します。

これに加えて、四半期と年度末に決算の作業が入ります。決算は判断が多く含まれるため、在宅の担当者が全部を担うことは少なく、資料の作成までを担当して判断は上位の担当者が行う分担が一般的です。

年に1回の作業もあります。年末調整、法定調書の作成、給与支払報告書の提出。給与支払報告書は、翌年1月31日までに市区町村へ提出する必要があります。この時期は経理と人事の作業が重なって忙しくなるので、応募の面接で「繁忙期はいつですか」と聞いておくと、生活の計画が立てられます。

任される範囲を広げたいなら、順番があります。入力から始めて、照合、月次の締め、決算の補助、そして分析へ。この順番で任される会社が多いです。飛び級はほとんどありません。だから最初の募集で「入力だけ」と書かれていても、入り口として悪くありません。むしろ在宅で経理に入る現実的な道はここです。

必要なスキルは4層に分けられます

未経験から在宅の経理を目指す場合、何から手をつけるかを整理します。

第1層は、簿記の考え方です。借方と貸方の意味、勘定科目の選び方、発生主義(現金が動いた日ではなく取引が起きた日で計上する考え方)の理解。ここがないと、入力の仕事すら回りません。

第2層は、会計ソフトの操作です。クラウド型の会計ソフトが主流で、銀行やクレジットカードの明細を自動で取り込む機能があります。操作そのものは難しくありませんが、取り込まれた明細に正しい勘定科目を当てる判断が要ります。ここは簿記の知識と直結します。

第3層は、表計算です。実務ではここが一番効きます。関数で突き合わせる、ピボットで集計する、表の形を整える。この3つができるかどうかで、同じ作業の時間が大きく変わります。在宅だと隣の人に聞けないので、自分で調べて解決できる力も含まれます。

第4層は、文章で伝える力です。在宅の経理は、口頭で確認する場面がほとんどありません。差額の原因を文章で説明する、承認をもらうために経緯を書く、社内に依頼の連絡を出す。この比重が通勤の場合よりずいぶん重くなります。文書の作法を体系的に押さえておくと、そのまま実務に効きます。ビジネス文書検定のように社内外の文書の書式と敬語の使い分けを段階的に測る検定は、この層を埋める材料になります。

もう1つ、近年になって加わった層があります。定型の処理を自動化する力です。会計ソフトの機能や表計算の自動化、そしてAIを使った読み取り。この領域を担える人の需要が伸びています。業務にAIを組み込む側の案件がどう募集されているかを知りたい方は、AIコンサル・業務活用支援のお仕事で扱う領域を見ておくと、経理の経験を次へつなげる言葉が見つかります。

資格は要るか。簿記の位置を整理します

在宅の経理で必須の資格はありません。ただ、書類選考で読まれる材料としては、簿記の資格が最も分かりやすく機能します。傾向として、未経験に近い方の募集では簿記の級が応募条件に書かれていることが多く、経験者の募集では実務の年数が優先されます。

級ごとの扱いを整理します。3級は、簿記の考え方が分かるという証明になります。入力の仕事の応募では、これがあるかないかで書類の通過率が変わります。2級は、決算の作業を含む工程を理解している証明になります。在宅で月次の締めまで任される募集では、ここが目安になります。1級は、上位の役割や税理士試験への足がかりとして扱われます。

正直なところ、資格より先に手を動かしたほうがよいと考えています。理由は、簿記の試験に出る仕訳と、実務で毎日触る仕訳が違うからです。実務では同じ数種類の仕訳を繰り返し、迷う場面は限られています。だから、無料で使える会計ソフトの試用版で架空の取引を入力してみる。これを2週間続けるだけで、面接で話せる材料ができます。

資格を取る順番としては、簿記3級を先に取り、実務に入ってから2級を目指す形が無理がありません。働きながら学ぶほうが、内容が身につきます。

もう1つ加えておくと、経理の周辺の資格が効く場面もあります。給与計算の検定、電子帳簿の実務に関する検定、そして情報の扱いに関する資格。特に在宅で経理を担う場合、情報の扱いを分かっている人は安心されます。この観点では、セキュリティを含む領域の仕事内容を知っておくと話が通じます。AI・マーケティング・セキュリティのお仕事で扱われている領域を見ると、守る側が何を気にしているかが分かります。

テレワーク経理のデメリットを正直に書きます

良い面だけ並べるのは不誠実なので、難しい点を4つ挙げます。

1つ目は、質問しにくいことです。経理の仕事は判断の連続で、判断に迷ったときに隣の人に聞ければ30秒で終わる話が、チャットだと数時間止まります。在宅で経理に入った方から最も多く届く困りごとがこれです。対策は、迷った時点でまとめて聞く形に切り替えることです。1件ごとに聞くのではなく、迷ったものを一覧にして1日1回まとめて確認する。これで止まる時間が減ります。

2つ目は、教わる機会が減ることです。通勤していれば、他の人の作業を横で見て覚えられます。在宅ではこれが起きません。だから、自分から「この処理の理由を教えてください」と聞く姿勢が必要になります。受け身でいると、覚える速度が明確に落ちます。

3つ目は、締めの時期の負担が見えにくいことです。在宅では、誰がどれだけ抱えているかが分かりません。自分が遅れていることを言い出せずに抱え込むと、月次の締めが止まります。ここは仕組みで防ぐしかないので、進捗を共有する場があるかを面接で確かめてください。

4つ目は、評価が見えにくいことです。経理は「ミスがない」ことが成果なので、うまくやっても目立ちません。在宅だとさらに見えません。対策としては、月次の報告に「今月直した点」「気づいた点」を1行ずつ添える習慣が効きます。改善の提案は、在宅でも見える成果になります。

このほか、体の面の負担もあります。数字を見続ける作業なので、目と肩に来ます。通勤がないぶん動く機会が減るので、意識して立つ時間を作る必要があります。

費用負担と労働時間は、会社と決めておく項目です

ここは制度の話です。知らないまま働き始めると、自己負担が積み上がります。

厚生労働省はテレワークのガイドラインを公開しており、導入の前に労使で話し合う項目として、対象となる業務、対象者、実施する場所、実施可能日、申請の手続、費用負担、労働時間管理の方法や中抜け時間の取扱い、連絡方法を挙げています。

費用負担については、次のように書かれています。

テレワークを行うことによって労働者に過度の負担が生じることは望ましくない。個々の企業ごとの業務内容、物品の貸与状況等により、費用負担の取扱いは様々であるため、労使のどちらがどのように負担するか、また、使用者が負担する場合における限度額、労働者が使用者に費用を請求する場合の請求方法等については、あらかじめ労使で十分に話し合い、企業ごとの状況に応じたルールを定め、就業規則等において規定しておくことが望ましい。 出典: 厚生労働省

同じガイドラインは、労働者に情報通信機器や作業用品などの負担をさせる定めをする場合には、その事項を就業規則に規定しなければならないとされていることにも触れています。つまり、自己負担があるなら就業規則に書かれているはずです。入社前に、この部分を読ませてもらってください。

通信費と電気料金についても記載があります。自宅の回線を使って業務を行わせる場合、通話料やインターネットの利用料が増えるとき、あるいは電気料金が増えるときは、実際の費用のうち業務に要した実費の金額を勤務の実態を踏まえて合理的かつ客観的に計算して支給することも考えられる、という内容です。

労働時間については、中抜け時間の扱いが整理されています。ガイドラインでは、業務から離れる時間について、会社は把握してもよいし、把握せずに始業と終業の時刻のみを把握してもよいとされています。把握する場合は休憩時間として扱って終業時刻を繰り下げる、または時間単位の年次有給休暇として扱う。把握しない場合は、始業と終業の間の時間について休憩時間を除いて労働時間として扱う。こうした取り扱いをあらかじめ就業規則等で定めておくことが重要だと書かれています。

在宅の経理は、締めの時期に時間が伸びます。だから、この取り決めがどうなっているかは生活に直結します。面接で聞いて差し支えありません。

作業環境の確認項目は公開されています

自宅の環境をどう整えればよいか。これも公開された資料があります。厚生労働省のテレワークガイドラインには、自宅等でテレワークを行う際の作業環境を確認するためのチェックリストが労働者用として付いています。

作業場所については、作業を行うのに十分な空間が確保されているか、手足を伸ばせる空間があるか、体操やストレッチを適切に行うことができる空間があるかという観点が挙げられています。経理は座り続ける作業なので、この観点は現実的です。

机と椅子、ディスプレイ、キーボード、マウスについては、眼、肩、腕、腰に負担がかからない無理のない姿勢で作業できるように配置しているかを確認する項目があります。

明るさについては、室の照明で不十分な場合は卓上照明などを用いて適切な明るさにしているか、作業に使用する書類を支障なく読むことができるか、光源から受けるまぶしさを防ぐためにディスプレイの設置位置を工夫しているかという観点が並んでいます。経理は細かい数字を長時間見るので、ここは効きます。

安全の項目もあります。作業中に転倒しないよう整理整頓されているか、つまずく恐れのある障害物や電源コードがないか、床に書類が散らばっていないか。地震の際に物の落下や家具の転倒が起こらないよう必要な措置を講じているか。

騒音についても、テレビ会議などの音声が聞き取れるか、著しく集中力を欠くようなことがないかという観点が挙げられています。

このチェックリストは、会社に環境の改善を求めるときの根拠にもなります。ガイドラインは、不十分な点があれば事業者と話し合って改善を図るよう促しています。「ディスプレイをもう1枚貸してほしい」と言いにくいときに、公開された資料に沿って話すと通りやすくなります。

なお、テレワーク中の災害についても記載があります。労働契約に基づいて事業主の支配下にあることによって生じたテレワークにおける災害は、業務上の災害として労災保険給付の対象になるとされています。ただし、私的な行為が原因のものは業務上の災害とは認められません。

情報の扱い。経理は狙われる側です

在宅の経理で、会社が最も気にするのがここです。扱う情報が、取引先の口座番号、従業員の給与、マイナンバーだからです。

総務省は、企業などがテレワークを実施する際のセキュリティ上の考え方と対策例を示したテレワークセキュリティガイドラインを策定して公表しています。現在公開されているのは第5版で、令和3年5月のものです。あわせて、専任の担当者がいないような中小企業などのシステム管理担当者を対象とした「中小企業等担当者向けテレワークセキュリティの手引き(チェックリスト)」も公開されており、従業員向けのハンドブックもあります。

応募する側が押さえておくべき点を5つに絞ります。

1つ目は、端末を分けることです。業務のデータを私物のパソコンに保存しない。会社から貸与された端末を使うのが原則です。貸与がない募集では、どう扱うかを確かめてください。

2つ目は、回線です。自宅の無線の設定が古いままだと危険です。公衆の無線を使って経理のデータを扱うのは避けます。カフェで作業したい気持ちは分かりますが、経理の業務では画面をのぞかれる危険が現実的です。

3つ目は、画面です。家族と同じ部屋で作業する場合、給与のデータが映る時間帯は配慮が必要になります。

4つ目は、書類です。紙の証憑を自宅に持ち帰る運用は、多くの会社で禁止されています。持ち帰りが必要な場面があるかを面接で確かめてください。

5つ目は、連絡の経路です。請求先の口座変更を装った偽のメールは、経理を狙う典型的な手口です。在宅だと口頭での確認ができないので、口座の変更は必ず電話で確認するという手順が社内にあるかを確かめておくと安心です。

正直なところ、ここを軽く扱っている会社は避けたほうがよいと考えています。経理の担当者が事故の当事者になってしまう構造だからです。

年収と副業。在宅経理の収入の組み立て

お金の話をします。結論として、在宅かどうかで年収が決まるわけではありません。決まるのは、任される工程の範囲です。

入力と照合だけを担当する役割は、時給や月給が低めに設定されます。月次の締めまで担当する役割は上がります。決算と税務の資料作成まで担当し、判断を任される役割はさらに上がります。分析と改善の提案までできる役割が最も高くなります。

だから、収入を上げたいなら工程を上に伸ばす戦略になります。同じ会社の中で任される範囲を広げる道と、経験を積んでから条件のよい会社へ移る道の2つがあります。

副業として在宅の経理を受ける形もあります。記帳代行や月次の経理代行を業務委託で請ける形です。この場合の注意は3つあります。1つは、本業の勤め先の就業規則で副業の届出が必要かを確かめること。2つ目は、繁忙期が重なることです。多くの会社の締めが同じ時期に来るので、複数のお客様を抱えると同じ週に集中します。3つ目は、情報の扱いです。副業でも守秘の取り決めを結びます。

業務委託の報酬は、1か月あたりの固定で受ける形が多いです。判断の材料として、受け取る金額を実際にかかった時間で割って時間あたりに直してください。仕訳の件数が想定より多い先は、時間あたりが下がります。契約の前に、月に何件くらいの仕訳があるかを聞いておくと見積もりが立ちます。

在宅で働く形そのものの収入の組み立て方を知りたい方は、Webデザイナー 年収のリアル:30代フリーランスが語る稼ぎ方とキャリアパスのように、在宅で続けている人が単発の仕事から定期の仕事へどう移ったかを追った記事も参考になります。職種は違っても、収入を安定させる順番は共通しています。

在宅の経理の1日は、こう流れます

働き方の実感がないと応募の判断ができないので、1日を具体的に並べます。月初の締めの時期を想定します。

始業の時刻に、勤怠の記録をつけてから会計ソフトを開きます。最初にやるのは、前日までに溜まった経費精算の申請の確認です。金額と領収書の内容が合っているか、勘定科目が適切か、日付が対象の月に入っているかを見ます。差し戻す場合は、理由を1文添えます。「領収書の但し書きが空欄です」ではなく「但し書きが空欄のため、購入した品目を追記してください」と書く。ここを丁寧に書くと、同じ差し戻しが繰り返されなくなります。

次に、銀行の明細を取り込んで、入金と出金を帳簿に合わせます。自動で仕訳の候補が出るので、候補が正しいかを1件ずつ見ます。傾向として、初めて出てくる取引先の入金と、複数の請求をまとめて振り込まれた入金で手が止まります。止まったものは後回しにして、確認する一覧に積んでおきます。

午前の終わりに、確認が必要な項目をまとめて上位の担当者へ投げます。在宅では、1件ごとに聞くよりまとめて聞くほうが、双方の時間が減ります。

午後は、請求書の処理です。届いた請求書の内容と発注の記録を突き合わせ、支払いの一覧に載せます。ここで金額が合わないものが毎月いくつか出ます。発注した部署に確認の連絡を入れます。この連絡の文面が、在宅の経理の仕事の中でかなりの割合を占めます。

夕方は、その日の進捗を共有します。何件処理して、何件が確認待ちで、締めまでに間に合う見通しかを1行ずつ書きます。この報告があるかないかで、在宅の担当者への信頼が変わります。見えないからこそ、見せる工夫が要ります。

締めの時期を過ぎると、業務は落ち着きます。この期間に、翌月の準備や手順書の整備をします。手順書を整える作業は評価されにくいのですが、在宅の経理では最も効く投資です。自分が休んだときに誰かが代わりに回せる状態を作れる方は、長く任されます。

20年この市場を見てきた立場からの観察

最後に、フリーランスと在宅ワークの市場を長く運営してきた立場から見えていることを書きます。

在宅の経理で長く続いている方に共通しているのは、処理の速さではありません。差が出るのは、差額が出たときの報告の仕方です。続いている方は、差額を見つけた時点で「金額はこれだけ、原因の候補はこの2つ、確認したいのはこの点です」と書いて出します。受け取った側はそのまま判断できます。「差額が出ています」だけの報告は、相手に調べさせる報告です。同じ発見でも、次に任されるかどうかがここで分かれます。

20年この市場を見てきた限り、依頼が続く方は「この人に任せると自分の手が空く」という状態を作っています。経理という仕事は、任せる側から見れば、数字の正しさと同時に「心配しなくてよい時間」を買う行為です。買った時間が本当に空くかどうかは、処理の件数ではなく、確認のやりとりが減るかどうかで決まります。

もう1つ、額面と手取りの話をしておきます。仲介の手数料が乗る取引では、依頼した側が出した予算の一部が途中で抜けていきます。中間のマージンが乗らない直接取引なら、同じ予算で依頼者はより多く頼めて、受け手の手取りは厚くなります。手数料0%の意味は、金額の大小ではなく、双方が得をする構造にあります。月ごとに継続する経理の仕事では、この差が毎月そのまま積み上がります。

市場の方向としては、経理の在宅化は進むと見ています。理由は制度の側です。帳簿と証憑をデータで保存する運用が定着すれば、紙を触る工程が減り、場所の制約が消えていきます。同時に、定型の処理は自動化されていきます。だから伸びるのは、入力そのものではなく、自動化された処理の結果を点検して判断する役割です。

これから在宅で経理に入る方へ。学ぶ順番は、簿記の考え方、会計ソフトの操作、表計算、そして文章で伝える力です。この4つを順に埋めれば、募集の選択肢が確実に広がります。まずは会計ソフトの試用版で架空の取引を入力してみるところから始めてみてください。

よくある質問

Q. 経理はどこまで在宅で完結しますか?

入力、銀行明細との照合、経費精算の確認、請求書の作成と送付、残高の確認、月次の試算表の作成、予算と実績の分析は在宅で完結します。逆に、郵送で届く証憑の受け取り、小口現金や手形の扱い、金融機関の窓口手続き、紙への押印、原本の保管は出社が残ります。応募前に「証憑がどう届くか」を確かめれば在宅の度合いが分かります。

Q. 未経験から在宅の経理に入れますか?

経理の業務を請け負う会社(経理代行や記帳代行)の募集が現実的な入り口です。最初から在宅で完結する仕組みが作られているためです。任される範囲は入力から始まり、照合、月次の締め、決算の補助、分析の順に広がります。入力だけの募集でも入り口として悪くありません。簿記3級を先に取り、実務に入ってから2級を目指す順番が無理がありません。

Q. 通信費や電気代は自己負担ですか?

会社ごとに違います。厚生労働省のテレワークのガイドラインは、費用負担の取り扱いをあらかじめ労使で十分に話し合い、企業ごとのルールを定めて就業規則等に規定しておくことが望ましいとしています。労働者に情報通信機器や作業用品の負担をさせる定めをする場合は就業規則に規定しなければならないとされているので、入社前にその部分を読ませてもらってください。

Q. 在宅だと締めの時期に働く時間が伸びませんか?

伸びやすいので、労働時間の取り決めを先に確かめてください。ガイドラインでは、業務から離れる中抜け時間について、会社は把握してもよく、把握せずに始業と終業の時刻のみを把握してもよいとされています。把握する場合は休憩時間として扱って終業時刻を繰り下げる方法などがあり、こうした扱いを就業規則等で定めておくことが重要だと示されています。面接で繁忙期の時期も聞いておくと生活の計画が立てられます。

この記事について

@SOHO
編集部

監修:@SOHO編集部

2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを20年運営。編集部が事実確認のうえ公開しています。

公開:2026年9月9日最終更新:2026年9月25日
朝比奈 蒼

この記事を書いた人

朝比奈 蒼@SOHO編集部

ITメディア編集者

IT系メディアで編集・ライティングを担当。クラウドソーシング業界の動向やサービス比較など、客観的な視点での記事を執筆しています。

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