業務委託の再委託とは|外注先がさらに外注する際の可否と契約での定め方 2026


この記事のポイント
- ✓業務委託の再委託とは何かを発注者目線で解説
- ✓外注先がさらに別の業者へ再委託する行為の可否
- ✓情報漏えいリスクや品質低下を防ぐチェック方法
結論から言います。業務委託の再委託とは、あなたが依頼した外注先が、その業務の一部または全部を「さらに別の第三者」へ委託することです。そして発注者であるあなたが真っ先に確認すべきは、「その再委託を契約で禁止するのか、許可するのか、許可するなら条件をどう縛るのか」の一点に尽きます。ここを曖昧にしたまま契約すると、あなたの顧客情報が見知らぬ第三者に渡っていた、想定と違う人が実作業をしていて品質がバラついた、といったトラブルに直結します。
この記事は「仕事を外注したい発注者」に向けて書いています。SNS運用や経理事務、Web制作、広告運用などを外部に頼みたい個人事業主や中小企業の担当者、店舗オーナー、EC事業者の方が対象です。再委託という言葉の定義から、禁止すべきケースと許可してよいケースの見極め、契約書での具体的な定め方、そして再委託の連鎖でコストが膨らむ構造とその回避策まで、意思決定できる粒度で解説します。読み終えるころには、次に外注する際の契約書のどこを見ればいいかがはっきりしているはずです。
業務委託の再委託とは何か|まず定義を正確に押さえる
再委託を理解するには、まず「業務委託」という言葉の輪郭から確認しておく必要があります。業務委託は法律上の正式な契約類型ではなく、実務上の総称です。中身は民法上の「請負契約」か「委任・準委任契約」のいずれかに分類されます。請負は「成果物の完成」に対して報酬を払う契約、委任・準委任は「業務の遂行そのもの」に対して報酬を払う契約です。Web制作で完成したサイトに対価を払うなら請負寄り、月次で経理処理を継続的に任せるなら準委任寄り、というイメージです。
その業務委託において、委託を受けた側(受託者)が、引き受けた業務を第三者にさらに委託することを「再委託」と呼びます。発注者Aが受託者Bに仕事を頼み、BがそれをさらにCへ流す。このBからCへの委託が再委託です。さらにCがDへ流せば「再々委託」となり、この連鎖は理論上いくらでも続きます。
引用元の解説でも、再委託は次のように定義されています。
再委託とは、業務委託契約において発注者から委託された業務を、第三者に再度委託することです。
再委託は委託元にも委託先にもメリットがある一方で、デメリットもあります。場合によっては委託元と委託先でトラブルが起こってしまう可能性もあるため、再委託については慎重に検討する必要があるでしょう。 出典: freee.co.jp
ここで発注者が誤解しやすいのは、「再委託は違法・悪いことだ」という思い込みです。再委託そのものは合法であり、実務では日常的に行われています。大手制作会社に頼めば、ディレクションだけ社内で行い、デザインやコーディングは外部のフリーランスに再委託しているケースがほとんどです。問題は再委託の有無ではなく、「発注者がそれを把握・コントロールできているか」なのです。正直なところ、再委託を全面的に敵視する必要はありません。ただし野放しにするのも危険、というのが実務の落としどころです。
委任契約と請負契約で再委託の扱いが違う理由
再委託が原則できるかどうかは、契約の性質によって初期設定が異なります。民法の建付けを知っておくと、契約書に何も書かれていないときにどう解釈されるかが分かります。
請負契約の場合、原則として再委託(下請け)は自由とされています。請負は「成果物を完成させること」が目的なので、誰が作業しても完成品さえ約束どおりなら問題ない、という考え方が根底にあるためです。建設業で元請けが下請けに出すのが典型で、これは請負の性質上、当然に想定されている構造です。
一方、委任・準委任契約は、原則として受託者本人が自ら業務を行うべきとされ、再委託には委任者(発注者)の承諾が必要とされています。委任は「この人だからこそ任せる」という信頼関係を前提とした契約だからです。税理士に顧問を頼んだのに、実は面識のない別の人が処理していた、では困るわけです。民法644条の2は、委任者の許諾を得たときや、やむを得ない事由があるときに限って復受任者(再委託先)を選任できると定めています。
ただし、これはあくまで「契約書に何も書いていない場合の初期値」です。実務では契約書に再委託条項を明記することで、この初期値を上書きします。つまり、請負であっても契約書で再委託を禁止できますし、準委任であっても契約書で再委託を包括的に許可できます。だからこそ、発注者は契約書の再委託条項を自分の意図どおりに設計することが重要になります。
「外注先がさらに外注する」ことで発注者に何が起きるのか
再委託が発生すると、発注者から見た構図はどう変わるのか。ここを具体的にイメージしておくと、なぜ管理が必要かが腑に落ちます。
第一に、契約関係は原則として直接の相手(受託者B)としか結ばれません。あなたはCと契約していないので、Cに対して直接指示や請求ができないのが原則です。何か問題が起きても、あなたが責任を問える相手はBだけ。Bが「Cがミスしたので」と言ってきても、あなたにとってはBの責任です。この「一枚壁がある」状態が再委託の本質的なリスクです。
第二に、情報の到達範囲が広がります。あなたがBに渡した顧客リストや売上データ、SNSアカウントのログイン情報が、あなたの知らないCの手に渡る可能性がある。関わる人数が増えれば、それだけ漏えいや誤用の確率は上がります。
第三に、品質のブレです。あなたはBのポートフォリオを見て発注したのに、実際に手を動かすのが未知のCなら、期待した品質が担保される保証はありません。「安く請けて、さらに安い外注に丸投げして差額で儲ける」だけの中抜き業者に当たると、コストの割に品質が伴わない、という事態も起こり得ます。この構造こそ、後述する「直接依頼」の価値につながる論点です。
再委託が禁止されるケースと許可してよいケース
発注者として最初に判断すべきは、「この業務は再委託を禁止すべきか、許可してよいか」です。一律に禁止すればいいというものでもありません。判断軸を整理します。
再委託を禁止・制限すべきケース
まず、以下に当てはまる業務は再委託を原則禁止、または事前承諾を必須にすることを強く勧めます。
機密性の高い情報を扱う業務は最優先で制限すべきです。顧客の個人情報、未公開の経営データ、開発中の製品情報などを渡す場合、関与者が増えるほど漏えいリスクは跳ね上がります。再委託を認めるとしても、再委託先にも同等の秘密保持義務(NDA)を課すことを条件にすべきです。
「その人だから頼んだ」という属人性の高い業務も制限対象です。特定のデザイナーの作風、特定のライターの文体、特定のコンサルタントの知見を期待して発注した場合、再委託で別人が作業したら発注の意味が失われます。準委任的な性質が強い業務ほど、再委託は本人の価値を毀損します。
再委託リスクの重大性については、実際の事故が参考になります。
再委託により、機密情報や顧客情報を握る企業が増えることで、情報漏えいのリスクが高まります。兵庫県尼崎市で2022年6月に起きた、46万人の市民情報の入ったUSBメモリー紛失事件も再委託(再々委託)が要因です。関わる人数が増えることで、必然的に業務に必要な情報を知る人数も増え、トラブルに発展する可能性があることを十分認識しておく必要があります。 出典: bod-grp.com
46万人分の市民情報が流出した尼崎市の事件は、再委託・再々委託の連鎖の末端で発生しました。委託元の自治体からは、末端で誰がどう情報を扱っているか見えていなかったわけです。個人情報を扱う外注では、再委託を無条件に許すことがいかに危険かを物語る事例です。
再委託を許可してよいケース
一方で、再委託を柔軟に認めたほうが発注者にとって得なケースもあります。
成果物さえ約束どおりなら誰が作っても構わない、定型的で機密性の低い業務は、再委託を許容してよい代表例です。たとえば公開情報の入力作業、汎用的なバナー量産、定型フォーマットの記事作成などです。受託者が繁忙期に外注を使って納期を守ってくれるなら、むしろ発注者の利益になります。
専門分野が複数にまたがるプロジェクトも、再委託が合理的です。Webサイト制作でデザイン・コーディング・ライティングを一括発注する場合、受託者が各専門家に再委託して束ねてくれるほうが、発注者が個別に手配するより楽で早いことがあります。この場合の受託者は「ディレクター兼取りまとめ役」として機能します。
許可する場合の要点は、「無制限に許可しない」ことです。承諾制にする、再委託先の情報を開示させる、再委託先にも守秘義務を課す、そして最終的な責任は受託者が負う。この4点を契約に盛り込めば、柔軟性と管理を両立できます。契約書での具体的な文言は、次の章で扱います。
契約書における再委託条項の作り方については、次のように整理されています。
前述のとおり、業務委託契約においては、請負契約・委任契約を問わず、当事者の実情に応じて再委託が認められる場合や禁じられる場合があります。
実際に契約書において再委託を認める場合あるいは禁止する場合に、どのような文言で条項を作成すればよいのか、以下で解説します。 出典: freee.co.jp
契約書での再委託の定め方|発注者が入れるべき条項
再委託のコントロールは、口約束ではなく契約書の条項で行います。ここが発注者にとって最も実務的な話です。パターン別に、どう書けばよいかを解説します。
パターン1:再委託を全面禁止する条項
機密性が高く、再委託されると困る業務では、はっきり禁止条項を入れます。文言のイメージはこうです。「乙は、本件業務の全部または一部を第三者に再委託してはならない」。シンプルですが、これで受託者は勝手に外注できなくなります。
ただし全面禁止には副作用もあります。受託者が繁忙期に一時的な補助を使うことすらできず、結果として納期遅延や受注辞退につながることがある。個人フリーランスに頼む場合、そもそも本人1人で完結する仕事が多いので全面禁止でも支障は少ないですが、法人に発注する場合は全面禁止だと現実的でないこともあります。禁止の必要性と、業務の実態を照らし合わせて選ぶべきです。
パターン2:事前承諾を条件に許可する条項
実務で最も多く、バランスがよいのがこのパターンです。「乙は、事前に甲の書面による承諾を得た場合に限り、本件業務の全部または一部を第三者に再委託することができる」という形です。原則は自由に外注させないが、発注者が個別に判断して許可を出せる、という設計です。
この条項に加えて、承諾の判断材料として「再委託先の名称・所在地・担当者を開示すること」を義務づけると、発注者は誰に業務が渡るかを把握できます。見えない相手に情報が渡る事態を防げるわけです。書面による承諾としておくと、後から「言った言わない」の争いも避けられます。
パターン3:包括承諾しつつ責任と義務を縛る条項
法人への発注や、再委託が前提の大型案件では、いちいち個別承諾を取るのが煩雑なため、包括的に許可したうえで条件を縛る方法を取ります。ポイントは次の3つを必ず盛り込むことです。
1つ目は、再委託先にも本契約と同等の義務を課すこと。「乙は、再委託先に対し、本契約に基づき乙が負う義務と同等の義務を遵守させるものとする」と定めます。特に秘密保持義務を再委託先まで及ばせるのが肝心です。
2つ目は、受託者の責任を明確にすること。「再委託先の行為については、乙の行為とみなし、乙が一切の責任を負う」と定めます。これがないと、受託者が「再委託先がやったこと」と責任逃れをする余地が生まれます。発注者は直接の相手である受託者に責任を集約させるべきです。
3つ目は、秘密保持と個人情報保護の連鎖です。NDAを再委託先にも締結させ、その写しを提出させるなど、機密管理を末端まで貫く仕組みを入れます。尼崎市の事例のような「末端の把握不能」を防ぐための条項です。
再委託条項でよく抜け落ちる論点
契約書のテンプレートを使うと、細部が甘くなりがちです。発注者として追加で確認したい論点を挙げます。
再委託先が違反した場合の解除権を、発注者側に確保しておくこと。承諾なしに再委託されたときや、再委託先が秘密を漏らしたときに、発注者が契約を解除できるようにしておきます。損害賠償の範囲も、受託者が再委託先の損害までカバーする建付けにしておくと安心です。
こうしたひな型と実務のすり合わせは、発注者向けのチェックリストを一度作っておくと毎回の外注で使い回せます。契約書のどこを見るべきかを整理した業務委託契約書テンプレート|発注者向けチェックリスト付き【2026年版】では、再委託条項を含めた必須チェック項目をまとめています。契約書に不慣れな発注者は、まずこうしたチェックリストで抜け漏れを潰すのが現実的です。
発注者から見た再委託のメリットとデメリット
再委託を許可するか禁止するかを決めるには、発注者にとっての損得を整理しておく必要があります。ここでは受託者側の都合ではなく、あくまで「あなた(発注者)が受ける影響」で見ていきます。
再委託を許可するメリット
第一のメリットは、専門性とキャパシティの確保です。受託者1社では手が回らない、あるいは専門外の領域を、再委託によってカバーしてもらえます。Web制作で「デザインは得意だがサーバー構築は外注する」という受託者に頼めば、あなたは1社と契約するだけで幅広い業務が完結します。個別に複数の業者を探して契約・進行管理する手間が省けるのは、実務上かなり大きな利点です。
第二に、納期の安定です。受託者が繁忙期でも、再委託で人手を補って納期を守れるなら、発注者にとっては安定供給というメリットになります。繁忙期に「今は受けられません」と断られるより、外注で回してでも納期を守ってくれるほうが助かる場面は多いはずです。
第三に、ワンストップの利便性です。窓口が受託者1社に集約されるため、発注者は個々の作業者とやり取りする必要がなく、進行管理の負荷が下がります。取りまとめ役として機能する受託者は、それ自体に価値があります。
再委託のデメリットとリスク
一方、デメリットは冒頭から述べてきたとおりです。改めて発注者視点で整理します。
情報漏えいリスクの増大が最大の懸念です。関与者が増えるほど、機密情報の到達範囲が広がり、管理は難しくなります。尼崎市の事例のように、末端の再委託先での事故は、委託元からは見えにくく、防ぎにくいのが実情です。
品質のコントロールが効きにくくなる点も見過ごせません。あなたが評価したのは受託者Bの実績であって、実作業者Cの腕前ではありません。再委託が多段になるほど、期待した品質との乖離が生じやすくなります。
そしてコスト構造の不透明化です。再委託が挟まるほど各段で手数料・マージンが上乗せされ、あなたが払った金額のうち実作業者に届く割合は下がります。この点は次の章で詳しく扱いますが、「同じ予算でより多くを頼みたい」発注者にとっては重要な論点です。
メリットとデメリットをどう天秤にかけるか
結局のところ、再委託を認めるかどうかは「業務の性質」で決めるのが合理的です。機密性が高く属人性の強い業務はデメリットが勝つので制限する。定型的でキャパシティ確保が価値になる業務はメリットが勝つので条件付きで許可する。この線引きを、契約前に自分の中で決めておくことが大切です。何となく契約書のひな型どおりに進めるのではなく、「この仕事は再委託されて困るか?」を一度自問する。それだけで多くのトラブルは未然に防げます。
再委託でコストが膨らむ構造と、直接依頼という選択肢
ここは発注者にとって、費用面で最も実利のある話です。再委託の連鎖は、あなたが払うお金の流れに直結します。
中間マージンが積み上がる仕組み
仮に、あなたが制作会社に30万円でWebサイト制作を発注したとします。その制作会社が実作業を外部のフリーランスに再委託する場合、自社のディレクション費用やマージンを差し引いた金額でフリーランスに発注します。業界の実感値として、間に1社入るとおおむね20〜40%程度が中間マージンとして抜かれると言われています。仮に30%なら、実作業者に届くのは21万円ほど。ここからさらに再々委託があれば、末端に届く金額はもっと目減りします。
これは発注者にとって二重の不利益になり得ます。1つは、同じ品質を得るのに余分なコストを払っている可能性。もう1つは、末端の作業者の手取りが薄くなることで、モチベーションや品質の維持が難しくなる可能性です。中抜き構造が厚いほど、「払った額に対して届く価値」は薄まります。
直接依頼でマージンを圧縮する
この構造を回避する最もシンプルな方法が、間に入る仲介や再委託を減らし、実際に作業する個人へ直接依頼することです。代理店や仲介会社を通すと手数料が上乗せされますが、フリーランスへ直接依頼すれば中間マージンがなく、その分だけ費用を抑えられます。同じ30万円の予算でも、直接依頼なら実作業者にほぼ全額が届くため、発注者はより多くの作業量を頼めるか、同じ作業量をより安く頼めることになります。
近年は、発注者とフリーランスを直接つなぐ在宅ワーク求人サイトや業務委託マッチングサービスが充実してきました。中には仲介手数料そのものをゼロにし、当事者同士が直接契約する仕組みを取るサービスもあります。仲介マージンが乗らない分、手数料0%の直接取引は、発注者と受け手の双方にメリットが生まれる構造です。
もちろん、直接依頼にも手間はあります。自分で適切な人を探し、契約や進行管理を自分で行う必要がある。取りまとめてくれる受託者に丸投げする楽さは失われます。ですから「機密性が高く、コストを抑えたい業務は直接依頼」「幅広い専門性をワンストップで頼みたい業務は再委託前提の法人へ」といった使い分けが現実的です。すべてを直接依頼にする必要はありません。判断軸は、コスト圧縮の価値と、管理の手間のバランスです。
運営者の視点|長く続く外注関係に共通すること
ここで、フリーランス・在宅ワーク市場を20年運営してきた立場から、現場で見てきた一次的な観察を共有します。他のデータには表れにくい、関係性の話です。
20年この市場を見てきた立場から言えば、発注者と受け手が長く良好に続くケースには、ある共通点があります。それは、発注者が「作業を切り売りで買う」のではなく、「この人に任せると楽だ」という関係を育てていることです。毎回、最安値の相手を探して単発で発注し直す発注者は、都度の契約や品質のブレに疲弊しがちです。一方、信頼できる相手を見つけて継続的に頼む発注者は、コミュニケーションコストが下がり、相手も業務背景を理解してくれるため、結果的に高い品質を安定して得ています。再委託を挟まず直接その人とつながっていることが、この関係の前提になっています。
もう1つ、額面より手取りの物語として見てきたことがあります。中間マージンが乗らない直接取引では、発注者は同じ予算でより多くを頼め、受け手は手取りが厚くなります。この「双方が得をする」構造は、単なる価格の話にとどまりません。手取りが厚い受け手は、その仕事に十分な時間をかけられ、無理な掛け持ちをせずに済み、結果として品質が安定します。逆に、多段の再委託で手取りを削られた末端の作業者は、数をこなさないと成り立たず、1件あたりの丁寧さを失いがちです。手数料0%の直接取引の強みは、単に安いという金額の話ではなく、受け手の手取りが厚くなることで品質と継続性が保たれるという、質の話なのです。この構造を運営を通して繰り返し見てきました。
発注者としての失敗談と、そこから学んだこと
私自身も、外注する側として痛い失敗をしています。発注者の目線で率直に共有します。
初めて外注をまとめて発注したとき、私は見積もりの比較で失敗しました。複数社に相見積もりを取り、最も安い1社に決めたのですが、そこは受注した業務をほぼそのまま別の業者へ再委託する、いわゆる中抜き型の会社でした。契約書に再委託に関する条項がなかったため、私はそのことに気づかないまま進めてしまった。窓口の担当者は感じがよかったのに、実際に上がってくる成果物は明らかに別人の手によるもので、品質にバラつきがあり、修正のたびに窓口を経由するので伝言ゲームのように時間がかかりました。安さだけで選んで、品質と進行の遅さで苦労した典型例です。
この失敗以降、私は外注の際に必ず2つを確認するようになりました。1つは、契約書に再委託条項があるか、あるなら事前承諾制になっているか。もう1つは、実際に手を動かすのは誰なのかを最初に聞くことです。この2点を確認するだけで、「窓口と実作業者が違う」ことによるトラブルの大半は避けられます。正直なところ、契約前のこの一手間を惜しんだせいで余計な時間とコストを払ったわけで、今思えばもったいない話でした。
外注する業務の種類によって、どんなスキルの人に頼むべきかも見えてきます。たとえば定型業務を効率化したいならRPA・業務自動化ツールのお仕事に精通した人材が適していますし、AI活用で業務を見直したいならAIコンサル・業務活用支援のお仕事の知見を持つ人が力になります。自社の業務システムを作り込みたいならWeb・業務システム開発のお仕事を担える技術者が必要です。頼む相手の専門性を見極めることが、再委託に頼らず直接依頼で完結させる第一歩になります。
費用相場と、依頼先の選び方の実務
再委託の可否を踏まえたうえで、実際にいくらで・どこに頼めばよいか。発注者が意思決定するための実務的な情報を整理します。
業務別の費用相場の目安
外注費用は業務内容で大きく変わりますが、直接依頼を前提としたおおまかな相場感を示します。SNS運用代行は月額3万円〜15万円程度、投稿本数や戦略設計の有無で幅があります。経理・記帳代行は月額1万円〜5万円程度、仕訳数に応じた従量制が一般的です。Webサイト制作は規模により10万円〜100万円以上と幅広く、ランディングページ単体なら5万円〜20万円が一つの目安です。記事作成・ライティングは1文字あたり1円〜5円程度が相場で、専門性の高い分野ほど単価は上がります。
これらはあくまで直接依頼の相場です。代理店や制作会社を通す場合、前述の中間マージンが上乗せされるため、同じ業務でも1.3〜1.5倍程度の金額になることがあります。相場観を持っておくと、見積もりが妥当か、中抜きが厚すぎないかを判断できます。個別職種の単価をより詳しく知りたい場合は、ソフトウェア作成者の年収・単価相場や著述家,記者,編集者の年収・単価相場といった職種別のデータが、発注価格の妥当性を測る参考になります。
依頼先を選ぶときのチェックポイント
失敗しない依頼先選びの要点を挙げます。まず、実作業者が誰かを明確にすること。窓口と実作業者が同一なら、再委託による品質のブレは起きません。個人フリーランスへの直接依頼は、この点で最もシンプルです。
次に、契約書で再委託と秘密保持を確認すること。機密情報を渡す業務なら、NDAの締結は必須です。ビジネス文書の作成や事務を任せるならビジネス文書検定のような資格を持つ人だと安心材料になりますし、ネットワーク構築を伴う業務ならCCNA(シスコ技術者認定)などの技術資格が実力の目安になります。資格が全てではありませんが、初対面の相手を評価する材料の一つにはなります。
そして、実績とコミュニケーションの相性です。ポートフォリオや過去実績を確認し、初回のやり取りで意思疎通がスムーズかを見る。長く付き合える相手かどうかは、最初のメッセージのやり取りに意外と表れます。
マーケティング業務など、専門領域を外注する場合
専門性の高い業務ほど、再委託の有無と依頼先の見極めが効いてきます。たとえばマーケティングを外注する場合、代理店に頼むのか個人のフリーランスに頼むのかで、費用も関与の深さも変わります。この論点はマーケティング業務委託の費用相場|代理店vs個人フリーランス比較で費用と特徴を比較していますし、経営レベルの戦略まで任せたい場合はマーケティング責任者を外注するメリット|業務委託CMOの戦略立案と実行力が、どこまでを外注で担えるかの参考になります。専門領域ほど「誰が実際にやるのか」が成果を左右するため、再委託で見知らぬ第三者に渡る構造は避け、実務を担う本人と直接つながることをお勧めします。
独自データからの考察|発注者が主導権を握るために
最後に、これまでの内容を発注者の意思決定という観点で総括します。再委託というテーマは、突き詰めると「発注したお金と情報の主導権を、誰が握っているか」という問題に行き着きます。
再委託が多段に連なるほど、発注者から見た業務は不透明になります。誰が作業しているか分からない、情報がどこまで広がっているか把握できない、払った金額のどれだけが実作業に届いているか見えない。この不透明さこそが、品質トラブルと情報事故とコスト膨張の共通の温床です。逆に言えば、発注者がこの3つの見えなさを潰せば、外注は格段に安全でコスト効率のよいものになります。
具体的な行動指針はシンプルです。契約前に再委託条項を確認し、機密業務は禁止または事前承諾制にする。実作業者が誰かを最初に確認する。そして、コストを抑えたい業務や品質を安定させたい業務は、仲介や再委託を挟まず実作業者へ直接依頼する。この3点を徹底するだけで、外注の失敗はかなりの確率で防げます。
直接依頼を後押しする環境は年々整っています。発注者とフリーランスが直接つながる業務委託マッチングサービスの中には、仲介手数料をゼロにして当事者同士の直接契約を実現するものもあり、中間マージンが乗らない分、発注者は予算を有効に使えます。運営を通して見てきた実感として、こうした直接取引は発注者と受け手の双方に利益をもたらします。同じ予算でより多くを頼め、受け手の手取りが厚くなることで品質と継続性が保たれる。再委託の連鎖に払っていた見えないコストを、発注者と作業者の双方の価値に振り向けられるわけです。
再委託は敵ではありません。しかし、コントロールを手放した再委託は、発注者にとってリスクでしかない。この記事で示した「禁止すべきケースと許可してよいケースの見極め」「契約書での定め方」「直接依頼という選択肢」を手元に置いて、次の外注では発注者としての主導権をしっかり握ってください。それが、払ったお金を最大限の価値に変える、最も確実な方法です。
なお、関連テーマを扱ったWebデザインの外注先がさらに外注していた|再委託の可否と発注者の対処 2026もあわせて参考にしてください。
よくある質問
Q. 業務委託契約で再委託を禁止したい場合、どう書けばよいですか?
契約書に「乙は、本件業務の全部または一部を第三者に再委託してはならない」と明記します。機密性が高い業務ではこの全面禁止が有効です。柔軟性を残したい場合は「事前に甲の書面による承諾を得た場合に限り再委託できる」とする事前承諾制がおすすめです。承諾制なら発注者が個別に判断でき、実作業者を把握できます。
Q. 再委託されると発注者にはどんなリスクがありますか?
主に3つです。1つ目は情報漏えいリスクで、関与者が増えるほど機密情報の到達範囲が広がります。2つ目は品質のブレで、評価した受託者とは別人が作業するため期待した品質が保証されません。3つ目はコスト膨張で、各段で中間マージンが上乗せされ実作業者に届く金額が目減りします。契約書での管理が必須です。
Q. 再委託を挟むと費用はどれくらい変わりますか?
間に1社入るごとに、おおむね20〜40%程度が中間マージンとして上乗せされるのが実感値です。代理店や制作会社を通すと、直接依頼に比べ同じ業務で1.3〜1.5倍程度の金額になることもあります。実作業するフリーランスへ直接依頼すれば中間マージンがなく、同じ予算でより多くの作業を頼めます。
Q. 再委託を避けて直接フリーランスに頼むデメリットはありますか?
自分で適切な人を探し、契約や進行管理を自分で行う手間が発生します。取りまとめ役の受託者に丸投げする楽さは失われるため、複数の専門領域をワンストップで頼みたい場合は法人への一括発注が向くこともあります。機密性が高くコストを抑えたい業務は直接依頼、幅広い専門性が必要な業務は法人、と使い分けるのが現実的です。
この記事について
編集部
監修:@SOHO編集部
2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを20年運営。編集部が事実確認のうえ公開しています。

この記事を書いた人
朝比奈 蒼@SOHO編集部
ITメディア編集者
IT系メディアで編集・ライティングを担当。クラウドソーシング業界の動向やサービス比較など、客観的な視点での記事を執筆しています。
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