フリーランスに必要な傷害保険・所得補償保険|働けなくなったときの備え

織田 莉子
織田 莉子
フリーランスに必要な傷害保険・所得補償保険|働けなくなったときの備え

この記事のポイント

  • フリーランスが働けなくなったときの収入をカバーする傷害保険・所得補償保険を解説
  • 経費計上の可否まで詳しく紹介します

フリーランスにとって一番怖いのは、案件が途切れることでも単価が下がることでもない。「体を壊して働けなくなること」だと思っています。

会社員時代の私の同僚は、骨折で入院しても傷病手当金で給与の約3分の2が最長1年6ヶ月支給されていました。でもフリーランスが加入する国民健康保険には、そんな制度がそもそもない。ケガや病気で1日でも働けなくなった瞬間、収入はゼロです。

会計事務所時代に担当していたフリーランスのソウタさん(30代・Webエンジニア)の話をします。突然の入院で2ヶ月間収入が止まり、生活費をカードローンで賄うことになった。カードローンの金利は年15%。退院しても体力が戻らず、フルに働けるまで半年かかりました。入院前に月額3,000円の所得補償保険に入っていれば、月15万円の給付金で乗り切れたはず。あの3,000円をケチった代償が、カードローンの利息と半年の苦しみだったんです。

会社員とフリーランス、保障の差がひどい

項目 会社員 フリーランス
傷病手当金 あり(給与の2/3) なし
労災保険 あり(業務上の事故) 原則なし
有給休暇 あり なし
障害年金 障害厚生年金+障害基礎年金 障害基礎年金のみ

テーブルにすると残酷なくらい差がある。この差を自分で埋めるしかないのがフリーランスです。

フリーランスが入れる保険は3種類ある

所得補償保険(就業不能保険)が最優先

病気やケガで働けなくなった期間の収入を補填してくれる保険。フリーランスならまずこれです。

項目 内容
補償内容 就業不能時に月額の保険金を支給
支払い開始 免責期間あり(7日〜60日)
支払い期間 1年〜5年が一般的
保険料の目安 月額3,000〜8,000円
経費計上 事業用であれば可能

保険金額は月収の50〜70%程度に設定するのが普通です。月収30万円のフリーランスなら、月額15〜21万円の保険金が設定可能。

Xでもこんな比較が話題になっていました。 損保ジャパンがフリーランス協会(一般社団法人プロフェッショナル&パラレルキャリア・フリーランス協会、会員数約8万人)と組んで提供している所得補償保険で、免責期間がたった7日。これは大きい。多くの保険が免責60日なので、2ヶ月は自力で耐えないといけない。でも7日なら、貯金が薄い人でもなんとかなる。

保険料の安さだけで選ぶと「対象外」が多くて使えないパターンもあるから、ここは慎重に。

FREENANCE(フリーナンス)はGMOクリエイターズネットワークが運営するフリーランス向け金融サービス。所得補償プランもあるんですが、この方が指摘しているように「補償してほしい項目がほぼ対象外」というケースが実際にある。見かけの保険料が安くても、いざというときに支払われなかったら意味がありません。

傷害保険は審査が楽

ケガによる入院・通院・手術・後遺障害・死亡を補償する保険。病気は対象外で、あくまで「不慮の事故」によるケガだけ。

特徴は健康告知が不要なものが多く、持病がある方でも入りやすいこと。保険料の目安は月額1,000〜3,000円と手軽です。

賠償責任保険は業種による

クライアントに損害を与えてしまったときの賠償金をカバーする保険。「納品物のバグでクライアントのシステムが停止した」「情報漏洩が起きた」みたいなケースに備えます。IT系で仕事をしているフリーランスは検討する価値あり。

保険を選ぶとき、ここだけは見てほしい

免責期間が最重要

所得補償保険には「免責期間」がある。就業不能になってから保険金が出るまでの待機期間のことです。

免責期間 保険料 こんな人向き
7日 高い 貯蓄が少ない人
30日 中程度 1ヶ月分の生活費は貯蓄でカバーできる人
60日 安い 2ヶ月分以上の貯蓄がある人

生活費の3〜6ヶ月分の緊急資金があるなら、免責期間60日にして保険料を抑えるのも合理的な判断です。

失敗パターンと成功パターン

NG例: 「保険料がもったいない」と所得補償保険に加入せず、緊急資金も10万円しかない状態で続行。骨折で1ヶ月働けなくなり、カードローン(金利15%)に手を出すことに。

OK例: 月額3,000円の所得補償保険に加入。並行して生活費3ヶ月分の緊急資金を貯蓄。免責期間は30日に設定し、最初の1ヶ月は貯蓄で乗り切り、2ヶ月目以降は保険金でカバーする設計。

「自宅療養も対象か」を確認する

「入院のみ」なのか「自宅療養も含む」のかで保障の厚さが全然違います。フリーランスは自宅療養でも仕事ができない状態が続くことは普通にある。「在宅療養も対象」の保険を選んでください。

精神疾患への対応

うつ病や適応障害は、フリーランスにも増えています。所得補償保険の中には精神疾患を対象外にしているものがあるので、ここは必ずチェック。知り合いのミユ(29歳・Webデザイナー)は適応障害で4ヶ月働けなくなったのに、加入していた保険が精神疾患を対象外にしていて1円も受け取れなかった。

経費に計上できる

所得補償保険や傷害保険の保険料は、事業用であれば経費として計上可能です。確定申告のとき忘れないでくださいね。

フリーランス協会の所得補償制度

フリーランス協会では会員向けに所得補償制度を提供しています。年会費1万円で加入でき、任意の所得補償保険に団体割引が適用される。

フリーナンスやフリーランス協会など、フリーランス向けの所得補償保険は複数あるが、補償内容の「対象外」項目を細かく確認することが重要。保険料の安さだけで選ぶと、いざという時に補償されないケースもある。 — 出典: FREENANCEの所得補償保険レビュー(toshi-traveler.com)

個人で加入するよりも20〜30%程度保険料が安くなるケースがあるので、年会費1万円でも十分に元が取れます。

2024年11月施行のフリーランス保護新法との関係

フリーランス保護新法(特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律)が施行されて、発注者に対してフリーランスの就業環境整備が求められるようになりました。ただ、傷病時の所得補償はこの法律ではカバーされていません。結局、自分で備えるしかない。

@SOHOでは新着案件メール通知機能があるので、復職後にすぐ案件探しを再開できます。お仕事ガイドでは職種別のリスク管理ポイントも解説しているので、自分の職種のリスクを事前に把握しておくと安心です。

職種別のお仕事ガイドを見る

まとめ

フリーランスの「働けなくなるリスク」は、会社員時代とは別次元の大きさです。最低限、所得補償保険だけは入ってください。

月額3,000〜5,000円で、万が一のときに月額15〜20万円の保障が得られる。保険料は経費にもなるから、実質的なコストはもっと低い。

保険は「使わないのが一番」。使わずに済んだなら、それは健康に働けたということ。それだけでありがたいですよね。

※この記事は一般的な情報提供を目的としています。保険の詳細は各保険会社にご確認ください。

加入前に必ず読みたい「告知義務」の落とし穴

所得補償保険や傷害保険を申し込むときに必ず聞かれるのが「告知事項」です。ここを甘く見ると、いざ請求するときに告知義務違反で全額不支給という最悪の事故が起きます。私の知り合いのフリーランス(30代女性)が経験した話を共有します。

彼女は所得補償保険に加入する3年前、軽度の腰痛で3回整形外科に通院していました。「もう治ってるし関係ない」と思って告知をスキップ。その後、椎間板ヘルニアで2ヶ月就業不能になり、保険金請求をしたところ、保険会社が病歴を調査して告知義務違反と判断。120万円の保険金が一切支払われませんでした。

告知でチェックされる主な項目は以下です。

告知項目 チェック対象期間
入院・手術歴 過去5年間
通院歴(同一傷病で7日以上) 過去5年間
服薬中の薬 現在
健康診断での要再検査・要精密検査 過去2年間
妊娠中・出産後の状況 現在

ここでの鉄則は「迷ったら書く」です。書いて引き受け拒否される方が、書かずに無効になるよりはるかに被害が小さい。引き受け拒否なら別の保険会社に申し込めばいいだけですが、給付段階での告知義務違反は契約解除+保険料返戻なしという最悪のパターンになります。

健康診断で「要再検査」となっている項目があるなら、必ず再検査を受けて結果を確定させてから申し込んでください。「再検査の予定はあるが受けていない」状態で申し込むと、後日の調査で「健康診断結果を隠して加入した」と判定されるリスクがあります。

健康状態に不安がある人向けには、引受基準緩和型無告知型の所得補償保険もあります。保険料は通常型の1.5〜2倍程度になりますが、過去の病歴を理由に通常型に入れない人にとっては唯一の選択肢です。アクサダイレクト・チューリッヒ・楽天損保などが取り扱っているので、複数社で見積もりを取るのが定石です。

告知義務違反による契約解除がなされた場合、それまでに払い込んだ保険料は返還されないことがあり、すでに発生していた保険事故についても保険金が支払われません。 出典: 金融庁

障害年金は知らないと一生損する「最後の砦」

民間の所得補償保険ばかりに目が行きがちですが、フリーランスにも公的な「障害年金」があります。これを知らずに諦めて生活保護に流れる人が本当に多い。私が会計事務所時代に出会ったフリーランスの7割以上が「障害年金は重度の障害者だけがもらえるもの」という誤解をしていました。

障害基礎年金には1級と2級があり、フリーランス(国民年金加入者)でも受給可能です。

等級 年金額(2026年度) 認定の目安
1級 年額 約1,020,000円 日常生活に常時介助が必要
2級 年額 約816,000円 日常生活に著しい制限がある

意外と認定対象になっている疾患を挙げておきます。

疾患 受給可能性
うつ病・双極性障害(重度) 2級認定例多数
糖尿病合併症(網膜症・腎症) 2級可
がん(治療継続・労働不能) 2級可
慢性腎不全(人工透析) 2級該当
線維筋痛症 認定例あり
統合失調症 1級・2級認定例多数

障害年金の請求で最も難しいのが「初診日の証明」です。「いつ・どの病院に最初にかかったか」を証明できないと請求自体ができません。フリーランスは健康保険の履歴が会社員ほど詳細に残らないため、この証明で詰まるケースが多い。通院した病院のカルテ保存期間は5年間なので、過去にかかった病院があれば早めに「受診状況等証明書」を取得しておくのが安全策です。

請求の難易度は決して低くないので、自分でやるなら社会保険労務士への相談がおすすめ。成功報酬型で年金額の2ヶ月分前後が相場ですが、認定されれば一生涯(または症状軽快まで)受給できるため、コスト対効果は圧倒的に高い。

障害年金と所得補償保険は併給可能です。両方受け取れる契約設計にしておくことで、長期就業不能時の生活水準を維持できます。所得補償保険は通常最長5年で給付終了しますが、その後を支えるのは障害年金になります。両方を組み合わせて初めて、フリーランスの長期リスクヘッジが完成します。

法人化したフリーランスが使える「労災特別加入」という選択肢

「フリーランスは労災に入れない」というのは過去の話です。2021年9月からITフリーランス・芸能関係者・アニメーション制作従事者など、対象職種が大幅に拡大されました。さらに2024年11月のフリーランス保護新法施行に合わせて、対象職種はさらに広がっています。

労災特別加入のメリットは大きく3つです。

1つ目が業務上の傷病なら治療費が全額カバーされる点。健康保険のように3割負担すらありません。腱鞘炎・腰痛・頸椎症など、デスクワーク由来の職業病も「業務上疾病」として認定された事例があります。

2つ目が休業補償給付。働けない期間の給付基礎日額の60%+特別支給金20%=合計80%が支給されます。これは民間の所得補償保険を上回る補償率です。

3つ目が障害補償・遺族補償。後遺障害が残った場合や、業務中の事故で死亡した場合、家族に手厚い補償が行われます。

加入手続きは、対象職種の特別加入団体(IT系ならフリーランス協会のITフリーランス特別加入など)を通じて行います。給付基礎日額は3,500円〜25,000円の範囲で自分で選べます。日額10,000円を選んだ場合、年間保険料は約30,000円。月換算で2,500円程度。

注意点としては、業務上の傷病に限定される点。プライベートでの事故や私生活上の病気はカバーされません。そのため、所得補償保険(業務外もカバー)と労災特別加入(業務上をカバー)を併用するのが理想形です。月額合計5,500円〜8,000円程度で、フリーランスの就業不能リスクをほぼ完全にカバーできる設計になります。

労災特別加入は税務上、社会保険料控除の対象です。所得控除を取れるため、実質負担額はさらに下がります。所得税率20%+住民税10%の人なら、年間30,000円の保険料に対して9,000円の節税効果。実質負担額は21,000円です。

よくある質問

Q. 所得補償保険と就業不能保険の違いは何ですか?

名称は異なりますが、どちらも「病気やケガで働けなくなったときの収入減少をカバーする」という目的は同じです。保険会社によって商品名が異なる場合や、補償される期間(短期か長期か)に違いがあるため、加入前に必ず約款を確認しましょう。

Q. フリーランスになりたてでも所得補償保険に加入できますか?

はい、加入可能です。ただし、前年の所得をベースに補償額を決定する商品もあるため、独立直後で実績がない場合は、加入できる補償額に上限が設けられることがあります。初心者向けの少額プランからスタートするのがおすすめです。

Q. うつ病などの精神疾患でも保険金は支払われますか?

保険商品によって大きく異なります。最近ではメンタルヘルス不調による休業をカバーする特約が付いた商品も増えていますが、免責期間が長く設定されていたり、支払期間に上限があったりすることが多いため、事前の確認が必須です。

Q. 所得補償保険の保険料は確定申告で経費にできますか?

個人の生活費を補填する目的で加入する所得補償保険の保険料は、原則として事業の必要経費として計上することはできません。また、生命保険料控除の対象にもならない点に注意してください。

Q. 会社員時代の傷病手当金は、フリーランスになった後も継続できますか?

会社員を辞めた後に任意継続被保険者になっている場合であっても、任意継続中には傷病手当金は支給されません。ただし、会社員時代にすでに受給を開始しており、受給要件を満たし続けている場合に限り、例外的に継続受給できるケースが あります。健康保険組合に確認しましょう。

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織田 莉子

この記事を書いた人

織田 莉子

FP2級・フリーランス経理サポーター

会計事務所で10年間の実務経験を経て独立。フリーランスの確定申告・節税・資金管理を専門に、お金にまつわる記事を執筆しています。

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