フリーランスが病気で働けなくなった時の収入保障

長谷川 奈津
長谷川 奈津
フリーランスが病気で働けなくなった時の収入保障

この記事のポイント

  • フリーランスとして独立し
  • 自分の腕一本で生きていく自由を手に入れた代償として
  • 常に付きまとうのが「健康リスク」です

フリーランスとして独立し、自分の腕一本で生きていく自由を手に入れた代償として、常に付きまとうのが「健康リスク」です。会社員であれば、病気や怪我で長期間仕事を休んでも、健康保険から「傷病手当金」として標準報酬日額の3分の2が支給されます。しかし、私たち個人事業主が加入する国民健康保険には、原則としてこの制度がありません。つまり、働けなくなった瞬間に収入が0円になるという、非常にシビアな現実に直面します。

私はWebエンジニアとして独立して5年になりますが、実は3年前に突然の急性盲腸炎で緊急手術を行い、約2週間の戦線離脱を余儀なくされたことがあります。当時は「健康だけが取り柄」と過信し、何の備えもしていませんでした。入院中、天井を見上げながら「今月の家賃はどうしよう」「進行中のプロジェクトの違約金は発生す るのか」と、病気の痛み以上に経済的な不安で震えたことを今でも鮮明に覚えています。

本記事では、そんな私の手痛い失敗談を踏まえ、フリーランスが病気で働けなくなった時の収入保障として活用すべき代替手段を徹底的に解説します。公的支援の限界を知り、民間保険や共済、さらには日々の業務委託契約の工夫によって、い かにして「働けないリスク」を最小化するか。その具体的な道筋を提示します。

フリーランスを待ち受ける「傷病手当金なし」という過酷な現実

まず前提として、日本の社会保障制度の歪みを理解しておく必要があります。会社員が加入する「健康保険(協会けんぽ等)」と、フリーランスが加入する「国民健康保険」の最大の違いは、所得補償の有無にあります。

国民健康保険には所得補償がない

国民健康保険(国保)は、医療費の7割を負担してくれる素晴らしい制度ですが、生活費まで面倒は見てくれません。会社員の健康保険には「傷病手当金」が付帯しており、連続する3日間の待機期間を経て、4日目から最長1年6ヶ月の間、給付金が支払われます。

これに対し、国保にはこの法定給付がありません。一部の自治体ではコロナ禍において臨時的に支給されたケースもありましたが、あくまで例外です。私たちは病床に伏している間も、国民年金や国民健康保険料、住民税、さらには仕事で使う サーバー代やツール代を払い続けなければなりません。まさに「出るものはあっても、入るものがない」状態です。

治療費よりも恐ろしい「固定費の支払い」

入院すると治療費がかかるのはもちろんですが、フリーランスにとって本当にダメージが大きいのは「固定費」です。例えば、単身で生活している場合、家賃が8万円、食費や光熱費が5万円、社会保険料や税金が7万円かかるとすると、毎月最低でも20万円のキャッシュアウトが発生します。

これに加え、エンジニアであれば開発環境の維持費やAdobe、GitHubAWSなどのサブスクリプション費用が加算されます。仮に3ヶ月療養することになれば、支出だけで60万円以上。これに治療費が上乗せされるわけですから、貯金がみるみるうちに底をつくのは目に見えています。

この引用にあるように、まずは自分の「最低生存コスト」を把握することが、リスク対策の第一歩となります。

所得補償保険と就業不能保険:2つの柱をどう選ぶか

フリーランスが自力で「傷病手当金」のような仕組みを作るには、民間の保険を活用するのが最も現実的です。大きく分けて「所得補償保険」と「就業不能保険」の2種類がありますが、それぞれの特性を理解して使い分ける必要があります。

短期的な欠勤をカバーする「所得補償保険」

所得補償保険は、主に損害保険会社が取り扱っている商品です。病気や怪我で医師の指示により全く仕事ができない状態(就業不能状態)になった際、月々の平均所得に応じた金額が支払われます。

特徴的なのは、支払期間が1年から2年程度と比較的短いことです。その分、免責期間(給付が始まらない期間)が4日7日程度と短く設定されているものが多く、盲腸での入院や骨折での短期離脱など「数週間のダウン」にも対応しやすいというメリットがあります。

また、フリーランスエンジニアのように年収が高い職種の場合、月額30万円50万円といった高額な保障を設定することも可能です。ただし、保険料は年齢や職種によって細かく決まり、更新ごとに上がっていくタイプが一般的です。

長期的なリスクに備える「就業不能保険」

一方、就業不能保険は主に生命保険会社が扱っています。こちらは、ガンや脳卒中、あるいは精神疾患などで数年にわたり働けなくなるような「長期的なリスク」に特化した保険です。

支払期間は「60歳まで」や「65歳まで」と長く設定できるのが特徴です。その代わり、免責期間が60日180日と長く、ちょっとした入院程度では給付金がもらえません。いわば、人生を左右するような大病に対する「最後の砦」と言えるでしょう。

最近では、ネット生命保険などを中心に、フリーランスでも加入しやすい安価な商品が増えています。

この記事でも触れられていますが、ネット系は店舗を持たない分、保険料が抑えられており、固定費を削りたいフリーランスにとって非常に相性が良い選択肢です。

フリーランス特有の「就業不能」の定義に注意

保険に加入する際、必ず確認しなければならないのが「何をもって就業不能とみなすか」という定義です。会社員であれば「会社を休んでいること」が客観的な証明になりますが、自宅で仕事ができるフリーランスの場合、ここが曖昧になりが ちです。

「自宅療養」が含まれるかどうかが分かれ道

古いタイプの保険や一部の商品では、「入院していること」を給付の条件としている場合があります。しかし、現代の医療ではガンの治療であっても通院がメインになることが多く、入院期間は短縮傾向にあります。

フリーランスにとって重要なのは、「医師の指示による自宅療養」も保障対象に含まれるかどうかです。「体は動くけれど、安静にしていなければならないため開発業務ができない」という状態を保障してくれない保険は、フリーランスにとっ ては無意味に近いと言っても過言ではありません。

精神疾患(メンタルヘルス)の保障

もう一つの注意点は、うつ病や適応障害などの精神疾患への対応です。フリーランスは孤独な作業が多く、納期プレッシャーも強いため、メンタルを崩すリスクが会社員以上に高いと言われています。

多くの就業不能保険では、精神疾患を保障対象外としているか、あるいは「生涯で通算540日まで」といった制限を設けています。加入前に、自分が最も不安に感じているリスクがカバーされているかを約款レベルで確認する「方法」が重要です。

共済制度を活用した「公的な」上乗せ

民間保険以外にも、フリーランスが検討すべき共済制度があります。これらは掛け金が全額所得控除になるなど、税制面でのメリットが非常に大きいのが特徴です。

小規模企業共済の貸付制度

「フリーランスの退職金」として有名な小規模企業共済ですが、実は「傷病災害時貸付」という制度があります。病気や怪我で1ヶ月以上入院や療養が必要になった場合、自分が積み立てた掛け金の範囲内で、無利子(または低利)で資金を借りることができます。

給付金ではなく「借り入れ」ではありますが、審査が非常に早く、緊急時のキャッシュフローを支える強力な武器になります。

あんしん財団などの職能共済

月額2,000円程度の少額な掛け金で、怪我による通院や入院を保障してくれる共済もあります。例えば「あんしん財団」などは、業務上・業務外を問わず怪我をサポートしてくれるため、アクティブな趣味を持つフリーランスエンジ ニアに人気があります。

こうした共済は、民間保険に比べて加入のハードルが低く、健康状態の告知も緩やかな場合が多いため、持病がある方でも検討の余地があります。

確定申告と税金の知識が「手残り」を増やす

万が一病気になってしまった後、経済的なダメージを最小限に抑えるには、税務知識も欠かせません。

医療費控除をフル活用する

年間の医療費が10万円(または所得の5%)を超えた場合、確定申告で医療費控除を受けることができます。これは入院費や手術代だけでなく、通院のための電車賃やバス代、ドラッグストアで購入した治療目的の医薬品代も含まれます。

フリーランスは日頃から領収書を管理しているはずですが、医療関係のレシートも「事業経費」とは別に、大切に保管しておきましょう。

欠損金の繰り越し(青色申告のメリット)

病気で長期間休んだ結果、年間の収支が赤字になってしまった場合、青色申告をしていればその赤字を翌年以降3年間にわたって繰り越すことができます。これにより、翌年仕事に復帰して大きな利益が出たとしても、前年の赤字と相殺して所得税を大幅に抑えることが可能です。

このツイートのように、税理士の先生方も効率的な会計処理には頭を悩ませていますが、フリーランス本人が「赤字の繰り越し」などの制度を知っているかどうかで、数年後の手残り額が数十万円単位で変わってきます。

こうした無料の学習リソースを活用し、療養中であっても将来の減税のために情報を収集しておくことは非常に有意義です。

フリーランスエンジニアが備えるべき「契約のリスク」

病気で働けなくなった時、直接的な収入減以外に恐ろしいのが「クライアントとのトラブル」です。特に納期が決まっている受託案件の場合、自分が倒れることでプロジェクト全体をストップさせてしまうリスクがあります。

業務委託契約書の「免責事項」を確認する

多くの業務委託契約書には「不可抗力(フォース・マジュール)」という条項があります。天災地変や戦争などが一般的ですが、ここに「不慮の事故や病気」が含まれているか、あるいは損害賠償義務が発生しないような表現になっているかを 確認しましょう。

もちろん、病気になったからといって無責任に放置するのは厳禁ですが、事前に「もしもの時の代理人」を立てておく、あるいはクライアントに対して早急に状況を説明する体制を整えておくことが、プロとしてのリスク管理です。

よくある質問(Q&A)

Q1. 会社員時代の傷病手当金は、フリーランスになった後も継続できますか?

A. 会社員を辞めた後に任意継続被保険者になっている場合であっても、任意継続中には傷病手当金は支給されません。ただし、会社員時代にすでに受給を開始しており、受給要件を満たし続けている場合に限り、例外的に継続受給できるケースが あります。健康保険組合に確認しましょう。

Q2. 精神疾患でも給付金はもらえますか?

A. 所得補償保険や就業不能保険の商品によりますが、近年は「精神疾患保障特約」などでカバーされるものが増えています。ただし、原因が業務外であることや、特定の入院日数を条件としている場合が多いので注意が必要です。

Q3. 審査で落ちてしまった場合はどうすればいいですか?

A. 既往症などにより保険加入が難しい場合は、加入条件が緩やかな「団体加入」を検討してください。フリーランス協会や、特定のクレジットカード会員向けの所得補償プランなどは、個人で申し込むよりも審査が通りやすい傾向があります。

Q4. 給付金には税金がかかりますか?

A. 基本的に、病気や怪我による給付金は「非課税」です。確定申告の際に収入として計上する必要はありません。ただし、法人の役員として受け取る場合など、例外もあります。

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長谷川 奈津

この記事を書いた人

長谷川 奈津

行政書士・元企業法務

企業法務で年間200件以上のフリーランス契約を処理した経験を活かし、フリーランス向けの法律・契約・権利に関する記事を執筆。「法律はあなたの味方です」がモットー。

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