フリーランスの国民健康保険料を安くする5つの方法

高橋 莉奈
高橋 莉奈
フリーランスの国民健康保険料を安くする5つの方法

この記事のポイント

  • フリーランスの国保保険料を合法的に安くする5つの方法を解説
  • FPが具体的な節約術をまとめます

「国保ってこんなに高いの…」フリーランスになって最初の保険料通知を見たとき、多くの方がこう感じます。会社員時代は会社が半分負担してくれていましたが、フリーランスは全額自己負担。年収400万円だと国保保険料は年間約40万円になることも。

でも諦めないでください。合法的に保険料を下げる方法があります。

FPとして個人事業主の税務相談を多数経験してきた私から、「知っているかどうかで年間10〜20万円変わる」国保節約術を5つ紹介します。

フリーランスの国保保険料の仕組み

まず、なぜこんなに高いのかを理解しましょう。

国民健康保険料は大きく3つの部分から構成されています。

  1. 医療分:病院にかかる費用の財源(加入者全員が対象)
  2. 支援分:後期高齢者医療制度を支援する費用
  3. 介護分:40〜64歳の加入者のみ対象

保険料の計算方法は自治体によって異なりますが、多くの場合「所得割」(前年の所得に応じた部分)と「均等割」(加入者1人あたりの定額部分)の合計で決まります。

年収別の国保保険料の目安(独身・東京都の場合)

年収 国保保険料(年額) 月額換算
200万円 約16万円 約13,000円
300万円 約26万円 約22,000円
400万円 約38万円 約32,000円
500万円 約52万円 約43,000円
700万円 約72万円 約60,000円
1,000万円 約106万円(上限近く) 約88,000円

※上記は概算です。正確な金額はお住まいの自治体にご確認ください。

方法1: 青色申告特別控除を活用する

最も基本的かつ効果が大きい方法。青色申告なら所得から最大65万円を控除できます。国保の保険料は「所得」に連動するので、所得が下がれば保険料も下がる。

青色申告65万円控除による保険料の削減効果は、自治体や所得水準によりますが、年間約5〜10万円の節約になります。

白色申告から青色申告に切り替えるだけでこの効果。まだ白色の方は、来年から必ず青色にしてください。

青色申告に切り替える手続き

  1. 税務署に「青色申告承認申請書」を提出(翌年の3月15日まで)
  2. 複式簿記による記帳(freeeマネーフォワードなどのソフトで対応可能)
  3. 確定申告時に電子申告(e-Tax)または紙で申告

費用対効果でいうと、会計ソフトの年間費用は約1〜2万円で、節税効果は5〜10万円以上。やらない理由がないです。

方法2: 国民健康保険組合に加入する

一般的な国保(市区町村国保)より保険料が安い国保組合があります。

組合 対象者 月額保険料の目安
文芸美術国民健康保険組合 文芸・美術・著作活動者 約23,000円(所得関係なく定額)
東京都建築健康保険組合 建設業 所得連動だが一般国保より安い
全国土木建築国保 土木建築業 同上
医師国保組合 医師・医療関係者 定額制で一般国保より有利なケースあり
全国スーパー診療所国保組合 一部の職種 要問い合わせ

特に文芸美術国保はフリーランスのデザイナーやライター、イラストレーター、カメラマンなどが加入可能。所得に関係なく定額なので、収入が増えても保険料が上がりません。年収500万円以上のクリエイターなら、一般国保と比べて年間10〜20万円の差が出ることも。

文芸美術国保の加入要件

  • デザイン、イラスト、ライティング、写真、映像などの創作活動に従事していること
  • 関連団体(日本グラフィックデザイナー協会など)への加入が条件の場合あり
  • 世帯全員で加入する必要あり

年間15万円の節約。文芸美術国保は対象者なら使わない手はないです。

方法3: 任意継続被保険者制度を利用する

会社を辞めてフリーランスになる場合、退職後2年間は前の会社の健康保険を継続できます(任意継続)。

任意継続の保険料は退職時の標準報酬月額に基づいて計算され、上限があります。退職前の年収が高い場合、国保よりも任意継続の方が安いケースが多いです。

任意継続が有利なケース

  • 退職前の給料が低い(月収20〜30万円以下)→標準報酬月額が低くなるため任意継続が安い場合あり
  • フリーランス開業1年目で収入が不安定 → 任意継続は保険料が固定のため見通しが立てやすい

任意継続の注意点

  • 2年間限定(以前は解約不可だったが、2022年の法改正で解約可能に変更)
  • 保険証が変わるため、クライアントへの通知が必要な場合あり
  • 扶養家族がいる場合は扶養に入れたままにできる(国保は別途加入が必要)

退職から20日以内に手続きが必要なため、退職前に計算して判断しましょう。

方法4: 経費を正しく計上して所得を下げる

国保の保険料は「所得」に連動するので、正しく経費を計上して所得を適正化することが重要です。

フリーランスが見落としがちな経費の例:

経費の種類 計上できる割合 月額の目安
自宅の家賃(在宅ワーク) 仕事利用面積比(通常20〜50%) 2〜8万円
インターネット回線費 仕事利用比(通常50〜100%) 2,000〜5,000円
スマートフォン代 仕事利用比(通常30〜80%) 1,500〜6,000円
パソコン・周辺機器 購入費用を按分 変動あり
書籍・セミナー費 100% 5,000〜30,000円
交通費(取材・打ち合わせ) 100% 変動あり

5万円の経費を見落としていると、年間60万円の所得増。国保保険料への影響は年間約6〜8万円

「自宅家賃の按分」は特に見落とされがちです。仕事専用スペースがある場合は積極的に計上しましょう。

方法5: マイクロ法人を設立する

これは応用編。個人事業主としての事業に加えて、別の事業をマイクロ法人(1人社長の会社)として設立し、法人から役員報酬を低く設定して社会保険に加入する方法です。

役員報酬を月額63,000円(最低ライン)に設定すれば、社会保険料は月約18,000円程度。国保+国民年金の合計より安くなるケースがあります。

ただし法人設立・維持のコスト(設立費用約25万円、年間維持費約7万円、税理士費用)がかかるので、年収500万円以上でないとメリットが出にくいです。

マイクロ法人の社会保険料シミュレーション(役員報酬月6.3万円の場合)

保険の種類 月額 年額
健康保険(本人負担分) 約9,000円 約11万円
厚生年金(本人負担分) 約9,000円 約11万円
合計 約18,000円 約22万円

国保+国民年金の合計が年間60〜100万円になるような高収入フリーランスにとっては、マイクロ法人の社会保険は大きな節約になります。

NG例とOK例

NG: 白色申告のフリーランスWebデザイナー、小林さん(仮名・35歳・年収450万円)。経費計上も甘く、国保保険料は年間約48万円

OK: 同条件の吉田さん(仮名・35歳・年収450万円)。青色申告65万円控除+文芸美術国保に切り替え。年間保険料約27万円。差額年間21万円

この21万円の差は、10年で210万円になります。知っているか知らないかだけで、これだけ変わります。

@SOHOではWebデザインやライティングなど、クリエイター系のフリーランス案件を多数掲載しています。文芸美術国保に加入できる職種で活動している方は、保険料の節約チャンスです。

フリーランスの案件を探す

厚生労働省の発表によると、国民健康保険の1人あたり平均保険料は年間約97,000円(2024年度)。ただしこれは年金生活者なども含む平均で、現役フリーランスの保険料はこれよりかなり高くなります。

出典: 厚生労働省 国民健康保険事業の概況

保険料節約の優先順位

どの方法から取り組むべきか迷ったら、以下の順番で検討してください。

  1. 青色申告に切り替える(コスト最小・効果大)
  2. 経費を正しく計上する(コストゼロ・効果中〜大)
  3. 国保組合に入れるか確認する(クリエイター系は特に要確認)
  4. 任意継続と国保を比較する(退職前に計算)
  5. マイクロ法人の検討(年収500万円以上になったら)

まとめ

フリーランスの国保保険料は工夫次第で年間10〜20万円安くできます。まずは青色申告65万円控除、次に国保組合の検討を。

よくある質問

Q. 「マイクロ法人」を作って、社会保険料を最小にする方法は合法ですか?

個人事業主と法人(一人社長)を並行して運用し、法人側で社会保険に加入する手法は、現時点では合法的なスキームとして知られています。ただし、法人側での実態ある事業活動が必要であり、税務署や年金事務所からの指摘を受けないよう 、適切な運用が求められます。

Q. 文芸美術国民健康保険などの「職域国保」と普通の国保ではどちらがお得ですか?

特定の職種(クリエイター、建設業など)の組合が運営する「職域国保」は、所得に関わらず保険料が月額定額制であることが多いため、所得が高い人ほど普通の国保より安くなるメリットがあります。一方で所得が低い時期は普通の国保のほうが安いこともあるため、自身の所得水準と照らし合わせて比較検討が必要です。

Q. 国民健康保険料は「売上」と「所得」のどちらを基準に計算されますか?

保険料は、売上から経費や青色申告特別控除などを差し引いた「所得」を基準に算出されます。そのため、領収書の整理を行い適切に経費を計上することが、翌年の保険料を抑えることにもつながります。

Q. 個人事業主の国民健康保険料は所得がいくらくらいから高くなりますか?

お住まいの市区町村によって計算式が異なりますが、所得(売上から経費と青色申告特別控除を引いた金額)が300万円〜400万円を超えてくると、会社員時代の自己負担分よりも高くなるケースが一般的です。国保は会社負担がなく全額自己負担となるため、事前に自治体のシミュレーター等で試算しておくことをおすすめします。

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高橋 莉奈

この記事を書いた人

高橋 莉奈

独立系FP・保険ライター

大手生命保険会社で営業・商品企画を担当した後、独立系FPとして開業。年間200件以上の保険見直し相談を受け、保険・金融系の記事を執筆しています。

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