フリーランスの契約で注意すべき10のポイント|トラブル防止の契約書チェックリスト


この記事のポイント
- ✓フリーランスの契約で注意すべき10のポイントを行政書士が解説
- ✓損害賠償条項のチェック方法を網羅しました
業務委託契約を交わすとき、注意点がいちばん多いのは実は発注する側です。「契約書はこちらで用意したものにサインしてもらえばいい」と考えていると、成果物を自由に使えない、支払い条件が法令違反になっている、実態が雇用と判断されて追徴課税を受ける、といった問題が後から表面化します。
先に結論をお伝えします。業務委託契約で押さえるべき注意点は、次の10項目です。発注者と受注者では見るべき角度が反対になるので、両方を並べて示します。
| 注意点 | 発注する側が確認すること | 受ける側が確認すること |
|---|---|---|
| 1 契約類型 | 完成責任を求めるなら請負、稼働を求めるなら準委任 | どちらの責任を負うのか |
| 2 業務範囲 | 含む業務と含まない業務を両方書く | 際限なく広がらないか |
| 3 著作権 | 譲渡か利用許諾か、二次利用の可否 | 実績公開ができるか |
| 4 検収 | 検収期間と合格基準を数字で決める | みなし検収の条項があるか |
| 5 支払条件 | 受領日から60日以内が法令上の上限 | 支払日と手数料の負担者 |
| 6 競業避止 | 過度な制限は無効になり得る | 期間と範囲が合理的か |
| 7 損害賠償 | 上限を設けると相手が受けやすい | 上限があるか |
| 8 解除 | 予告期間と、途中までの成果物の扱い | 突然の打ち切りに備えられるか |
| 9 秘密保持 | 何が秘密情報かを定義する | 範囲が広すぎないか |
| 10 指揮命令 | 時間拘束や細かい作業指示をしない | 実態が雇用になっていないか |
このうち発注者にとって特に重い意味を持つのが、5番の支払条件と10番の指揮命令です。順に説明します。
発注者に課される法律上の義務を先に押さえる
2024年11月に施行されたフリーランス保護新法(特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律)により、従業員を使わない個人へ業務委託する発注者には、次の義務が課されました。相手が法人であっても、代表者1人で従業員がいなければ対象になります。
取引条件の明示義務
業務を委託したら、直ちに取引条件を書面または電子データで明示しなければなりません。口頭やその場の会話だけで済ませることはできません。明示すべき項目は次の通りです。
・発注者と受注者の名称 ・業務を委託した日 ・業務の内容 ・納品の期日、または役務提供の期間 ・納品の場所(該当する場合) ・検査を行う場合はその期日 ・報酬の額 ・報酬の支払期日 ・支払方法(現金以外の場合は詳細)
メールやチャットの本文に書いて送るだけでも要件は満たせます。負担の大きい作業ではないので、テンプレートを作って毎回送る運用にしてしまうのが現実的です。
60日以内の支払義務
報酬は、納品物や役務の提供を受けた日から起算して60日以内の、できる限り短い期間内に支払期日を定め、その期日までに支払わなければなりません。「月末締め翌々月末払い」は、締め日によっては60日を超えるため、法令に抵触する可能性があります。自社の支払サイトが業務委託に対しても適用されている場合は、一度見直してください。
なお、他社から受けた業務をそのまま個人へ再委託する場合は、元の発注者から支払いを受ける期日から30日以内という別の基準が適用されます。
継続的な委託で禁止される行為
1ヶ月以上にわたる継続的な業務委託では、次の7つの行為が禁止されます。
| 禁止行為 | 具体例 |
|---|---|
| 受領拒否 | 相手に責任がないのに納品物を受け取らない |
| 報酬の減額 | 契約後に「予算が減ったので」と値引きさせる |
| 返品 | 検収後に理由なく差し戻す |
| 買いたたき | 相場から著しく低い額を一方的に決める |
| 購入・利用強制 | 自社サービスの購入を条件にする |
| 不当な経済上の利益の提供要請 | 無償での追加作業を求める |
| 不当な給付内容の変更・やり直し | 相手に責任がないのに作り直させる |
「予算が厳しいので今回は少し下げてほしい」という相談自体は禁止されていません。問題になるのは、一方的に決めて押し付けることです。事前に相談し、双方の合意として記録に残す。この手順を踏むかどうかが分かれ目になります。
育児介護への配慮と、ハラスメント対策
6ヶ月以上の継続的な委託では、受注者からの申し出に応じて、妊娠・出産・育児・介護と業務の両立に配慮する義務があります。また、契約期間の長短にかかわらず、ハラスメント対策として相談体制を整えることも求められます。従業員を対象にした社内の相談窓口を、業務委託先も使えるようにしておくのが簡単な対応です。
実態が雇用と判断されないための注意点
発注者側でもう1つ重いのが、この論点です。契約書に業務委託と書いてあっても、働き方の実態が雇用に近ければ、税務や労働法の場面で雇用として扱われます。そうなると、給与としての源泉徴収漏れ、消費税の仕入税額控除の否認、未払い残業代や社会保険料の遡及といった負担が発生します。
判断は契約書の名称ではなく、次のような実態で行われます。
| 見られる点 | 業務委託らしい状態 | 雇用と判断されやすい状態 |
|---|---|---|
| 仕事の依頼 | 断る自由がある | 断れない、拒否すると次がない |
| 業務の進め方 | 手順は相手の裁量 | 細かい手順を都度指示する |
| 勤務時間 | 相手が決める | 始業終業を指定し、遅刻を管理する |
| 勤務場所 | 相手が決める | 常に自社オフィスへの出社を求める |
| 代替性 | 他の人に任せてもよい | 本人以外は認めない |
| 報酬の性質 | 成果や案件単位 | 時間あたりで固定、残業割増がある |
| 道具・経費 | 相手が用意する | 自社の備品を貸与し、経費も負担する |
| 専属性 | 他社の仕事も受けられる | 他社の仕事を禁止している |
右側の項目に多く当てはまるほど、リスクが上がります。とくに「時間で管理する」「他社の仕事を禁じる」の2つは、雇用と判断される方向に強く働きます。稼働時間ベースで発注したい場合でも、時間管理ではなく、業務の遂行に対する準委任契約として組み立て、進め方は相手の裁量に委ねる形にしてください。
契約は、発注者と受注者の双方が同じ紙を見て合意するものです。ここからは、契約書の各条項を1つずつ見ていきます。受ける側がどこを気にするのかを知っておくと、こちらから条件を示すときにも、無理のない、そして相手が納得して受けてくれる契約を組み立てられるようになります。行政書士として数百件の契約書を見てきた経験から、実際にもめやすい順に並べました。
大前提:契約書がないことのリスク
口約束の危険性
「信頼関係があるから契約書は不要」という考え方は、最も危険な思い込みです。
| 状況 | 契約書あり | 契約書なし |
|---|---|---|
| 報酬の未払い | 法的に請求可能 | 金額の証明が困難 |
| 仕様変更の要求 | 追加費用を根拠付けて請求 | 「最初からこの仕様だった」と主張される |
| 著作権の帰属 | 契約に基づいて判断 | 「全て発注者のもの」と主張される |
| 途中解約 | 違約金条項で保護 | 突然の打ち切りに無防備 |
2024年11月施行のフリーランス新法(特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律)により、発注者には書面(電子含む)での条件明示が義務付けられました。契約書を出さない発注者は法律違反です。この法律を知っておくだけでも、自分を守る武器になります。
ポイント1:業務委託契約の種類を理解する
請負契約と準委任契約の違い
フリーランスの契約は大きく「請負契約」と「準委任契約」に分かれます。この違いを理解していないと、予想外の責任を負わされるリスクがあります。
| 項目 | 請負契約 | 準委任契約 |
|---|---|---|
| 定義 | 仕事の完成を約束 | 事務処理を委託 |
| 義務 | 成果物の納品義務あり | 善管注意義務(誠実に業務を遂行) |
| 報酬発生 | 成果物の完成・納品時 | 稼働時間に応じて |
| 瑕疵担保(契約不適合) | あり(修補義務) | 原則なし |
| 中途解約 | 発注者は可能(損害賠償義務あり) | どちらからでも可能 |
具体例
- 請負契約:Webサイト制作、アプリ開発、デザイン制作
- 準委任契約:コンサルティング、システム保守、事務代行
私がかつて企業法務で見た事例では、「コンサルティング」と称しながら請負契約になっていたため、成果物の定義が曖昧なまま「成果が出ていない」と報酬を支払ってもらえなかったケースがありました。自分の契約がどちらの類型なのかは必ず確認してください。
ポイント2:業務範囲を明確にする
「何をやらなくてよいか」を定義する
業務範囲(スコープ)の曖昧さは、トラブルの最大の温床です。
NGな契約書の例
受注者は、発注者の指示に従い、Webサイト制作に関する一切の業務を行う。
このような書き方では、デザイン修正の無限ループ、コンテンツ作成の追加依頼、SEO対策まで「一切の業務」に含まれてしまいます。
OKな契約書の例
受注者は、以下の業務を行う。 ① トップページ+下層5ページのデザイン制作(修正は3回まで) ② HTMLコーディング(レスポンシブ対応含む) ③ WordPressへの組み込み ※ コンテンツ(テキスト・画像)の作成は含まない
「含まない業務」を明記することが、スコープクリープ(業務範囲の際限ない拡大)を防ぐ最善策です。
ポイント3:著作権の取り扱い
著作権は「作った人」に帰属する
日本の著作権法では、著作権は原則として「著作物を創作した人」に帰属します。つまり、フリーランスが制作したデザインやプログラムの著作権は、何も取り決めがなければフリーランス側にあります。
しかし、多くの業務委託契約書には「著作権はすべて発注者に譲渡する」という条項が入っています。これ自体は違法ではありませんが、以下の点に注意が必要です。
著作権チェックポイント
| チェック項目 | 注意すべき内容 |
|---|---|
| 著作権の譲渡範囲 | 全ての著作権か、一部の利用権か |
| 著作者人格権 | 「行使しない」条項は許容範囲を確認 |
| ポートフォリオ使用 | 自分の実績として使用する権利を残す |
| 二次利用の権利 | 他のクライアントへの転用可否 |
| 著作権譲渡の対価 | 単価に著作権の譲渡費用が含まれているか |
交渉のポイント:著作権を全面譲渡する場合は、通常の制作費に著作権譲渡料として20〜30%の上乗せを交渉しましょう。また、「ポートフォリオとしての使用は認める」という一文を入れてもらうことも重要です。
ポイント4:検収条件を具体的にする
検収トラブルを防ぐ方法
「検収」とは、発注者が納品物を確認して「OK」を出すプロセスです。検収条件が曖昧だと、いつまでも修正を要求される「永遠の検収地獄」に陥ります。
| 項目 | 定めるべき内容 |
|---|---|
| 検収期間 | 納品後○営業日以内(5〜10日が一般的) |
| 検収基準 | 具体的な合格基準(仕様書との一致等) |
| みなし検収 | 期間内に連絡がない場合は検収完了とする |
| 修正回数 | 上限を設定(例:3回まで無料、以降は有料) |
| 追加要望の扱い | 仕様変更は別途見積もり |
「みなし検収」条項は必ず入れましょう。これがないと、クライアントが忙しくて確認できないという理由で、報酬の支払いが何ヶ月も遅延する事態が起こり得ます。
ポイント5:支払い条件を確認する
報酬の支払いに関するチェックリスト
| 項目 | 確認ポイント |
|---|---|
| 支払い金額 | 税込か税抜か、消費税の取り扱い |
| 支払い時期 | 月末締め翌月末払い等、具体的な日付 |
| 支払い方法 | 銀行振込の場合、振込手数料はどちらが負担か |
| 前払い・着手金 | 大型案件では着手時に30〜50%の前払いを求める |
| 経費の扱い | 交通費、ソフトウェア費用等の負担先 |
| 遅延利息 | 支払い遅延時の利息(年率○%) |
フリーランス新法のポイント:フリーランス新法では、発注者は成果物の受領日から60日以内に報酬を支払うことが義務付けられています。「翌々月末払い」のような長い支払いサイトは法律違反になる可能性があります。
ポイント6:競業避止義務の範囲を限定する
競業避止条項とは
「契約期間中および終了後○年間は、同業他社の仕事を受けてはならない」という条項です。
| 項目 | 許容範囲 | 注意が必要 |
|---|---|---|
| 期間 | 契約期間中のみ | 契約終了後1年以上 |
| 対象 | 直接の競合企業のみ | 「同業種すべて」 |
| 地域 | 限定的な地域 | 「日本全国」 |
フリーランスにとって、過度な競業避止義務は死活問題です。複数のクライアントから仕事を受けられなくなれば、生計が成り立ちません。
交渉のポイント
- 契約期間中であっても、直接の競合以外は受注可能とする
- 契約終了後の競業避止は最大6ヶ月に限定する
- 競業避止の対価(補償金)を求める
ポイント7:損害賠償条項の上限を設定する
損害賠償のリスク
最も怖いのが、損害賠償条項に上限がないケースです。
NGな条項
受注者の過失により発注者に損害が生じた場合、受注者は発注者の損害の一切を賠償する。
これでは、受注者が受け取る報酬が10万円でも、クライアントが「1,000万円の損害が出た」と主張すれば、1,000万円の賠償責任を負う可能性があります。
交渉すべきポイント
| 条件 | 推奨 |
|---|---|
| 賠償上限額 | 受領済み報酬の総額を上限 |
| 賠償範囲 | 直接損害のみ(間接損害・逸失利益は除外) |
| 請求期限 | 納品後○ヶ月以内 |
| 免責事由 | 不可抗力(天災、通信障害等) |
損害賠償の上限を「受領済み報酬の総額」とする条項は、フリーランスにとって最も重要な防御線です。この交渉だけは絶対に妥協しないでください。
ポイント8:契約の解除・途中終了の条件
中途解約条項のチェック
| 確認事項 | 推奨内容 |
|---|---|
| 解約の予告期間 | 30日前の書面通知 |
| 作業済み分の報酬 | 中途解約でも作業済み分は全額支払い |
| 違約金 | 発注者都合の解約は残報酬の○%を違約金として |
| 成果物の帰属 | 中途解約時の制作途中の成果物はどちらに帰属するか |
フリーランスにとって最悪のシナリオは「突然の契約打ち切り」です。1ヶ月分の予告期間があるかないかで、次の案件を準備する余裕が全く違います。
ポイント9:秘密保持義務の範囲
NDA(秘密保持契約)のポイント
| 項目 | 確認すべき内容 |
|---|---|
| 秘密情報の定義 | 何が「秘密情報」に該当するか |
| 情報の利用目的 | 本契約の業務遂行目的に限定されているか |
| 秘密保持期間 | 契約終了後○年(1〜3年が一般的) |
| 例外事項 | 公知の情報、独自に開発した情報は除外 |
| 返還義務 | 契約終了時のデータ返還・削除 |
秘密保持義務自体は問題ありませんが、範囲が広すぎると「この仕事で得たスキルや知見を他の案件で活用できない」事態になりかねません。
ポイント10:契約書を読むための基礎知識
契約書でよく出てくる法律用語
| 用語 | 意味 | フリーランスへの影響 |
|---|---|---|
| 善管注意義務 | 専門家として合理的な注意を払う義務 | 準委任契約で課される |
| 瑕疵担保責任(契約不適合責任) | 納品物に欠陥があった場合の修補義務 | 請負契約で課される |
| 不可抗力 | 天災、戦争、疫病等のコントロール不能な事態 | 免責事由として機能 |
| 連帯保証 | 主債務者と同じ責任を負うこと | 絶対に応じない |
| 遡及 | 過去に遡って効力を発生させること | 条件変更が過去に適用される |
契約書のセルフチェックリスト
契約書にサインする前に、以下を確認しましょう。
- □ 契約類型(請負か準委任か)が明確か
- □ 業務範囲が具体的に定義されているか
- □ 報酬額、支払い時期、支払い方法が明記されているか
- □ 著作権の帰属が明確か(ポートフォリオ使用は可能か)
- □ 検収条件と期間が定められているか
- □ 損害賠償の上限が設定されているか
- □ 競業避止義務の範囲が合理的か
- □ 契約解除の条件と予告期間が定められているか
- □ 秘密保持義務の範囲が適切か
- □ 準拠法と管轄裁判所が記載されているか
発注者が契約書に入れておくべき条項の文例
ここまでの注意点を、実際の条文の形にします。自社の契約書と読み比べて、抜けている条項があれば足してください。
業務範囲(含まない業務を書く)
第◯条(業務の内容)
乙は甲に対し、次の業務を行う。
(1) 甲が指定する仕様書に基づくWebサイトのデザイン制作
トップページ1点、下層ページ5点
(2) 上記デザインのHTMLコーディング(レスポンシブ対応を含む)
2 次の業務は本契約に含まない。必要が生じた場合は別途協議のうえ、
個別に発注する。
(1) 掲載する文章および写真の制作
(2) 公開後の保守および更新
(3) 検索エンジン最適化に関する施策
検収(期間と、みなし検収)
第◯条(検査)
甲は、納品を受けた日から10営業日以内に、仕様書との適合を検査し、
その結果を乙に通知する。
2 前項の期間内に甲が通知を行わない場合、当該納品物は
検査に合格したものとみなす。
3 検査に合格しない場合、甲は具体的な理由を示して修正を求める。
修正の回数は2回を上限とし、これを超える場合は別途協議する。
みなし検収の条項は受注者を守るものですが、発注者にとっても意味があります。社内で承認が滞ったまま何ヶ月も宙に浮く事態を防ぎ、支払期日の起算点をはっきりさせられるからです。
報酬と支払期日
第◯条(報酬および支払)
本業務の報酬は金◯◯円(消費税別)とする。
2 甲は、納品物を受領した日から起算して30日以内に、
乙の指定する銀行口座へ振り込む方法により支払う。
振込手数料は甲の負担とする。
3 本契約に基づく報酬について、消費税額を含む金額は
発注時に書面で明示する。
著作権(発注者側の視点)
第◯条(知的財産権)
本業務により生じた成果物の著作権(著作権法第27条および
第28条の権利を含む)は、甲が乙に報酬を全額支払った時点で
乙から甲に移転する。
2 乙は甲および甲の指定する第三者に対し、著作者人格権を
行使しない。
3 前2項にかかわらず、乙が本業務の以前から保有していた
著作物および汎用的な技術、ノウハウの権利は乙に留保される。
4 乙は、甲の事前の書面による承諾を得た場合に限り、
成果物を自らの実績として公開できる。
第27条と第28条の権利(翻案権と二次的著作物の利用権)は、条文に明記しないと譲渡されたとみなされません。ここを書き漏らすと、納品されたデザインを後から改変することができなくなります。実務で最も多い抜け漏れなので、必ず確認してください。
一方で、著作権の全部譲渡は相手にとって負担が大きく、その分だけ見積もりが上がります。自社での改変や二次利用の予定がないなら、譲渡ではなく「甲は成果物を無償かつ無期限に、あらゆる媒体で利用できる」という利用許諾で足りることも多いです。用途に対して過剰な権利を買う必要はありません。
秘密保持
第◯条(秘密保持)
乙は、本業務に関して甲から開示された技術上または営業上の
情報であって、開示の際に秘密である旨を明示されたものを
秘密として保持し、第三者に開示または漏えいしてはならない。
2 次の情報は前項の秘密情報に含まない。
(1) 開示の時点で既に公知であったもの
(2) 開示後、乙の責によらず公知となったもの
(3) 乙が開示以前から保有していたもの
(4) 乙が第三者から適法に取得したもの
(5) 乙が独自に開発したもの
3 本条の義務は、本契約終了後3年間存続する。
契約の解除と、途中までの成果物
第◯条(中途解約)
甲および乙は、30日前までに書面により通知することで、
本契約を解約できる。
2 前項により解約した場合、甲は解約の日までに乙が
実施した業務の対価を、出来高に応じて支払う。
3 解約時点における制作途中の成果物および関連データは、
前項の支払いをもって甲に引き渡す。
発注前の最終チェックリスト
契約書を交わす前に、次の項目を上から順に確認してください。全部にチェックが入れば、実務上のリスクはかなり小さくなります。
・□ 契約類型は請負か準委任か、目的に合っているか ・□ 業務範囲に、含む業務と含まない業務の両方が書かれているか ・□ 納期と、成果物の形式(ファイル形式、点数、仕様)が数字で書かれているか ・□ 修正回数の上限と、超過時の単価が決まっているか ・□ 検収期間と、みなし検収の条項があるか ・□ 報酬額に消費税の扱いが明記されているか ・□ 支払期日が受領日から60日以内になっているか ・□ 振込手数料の負担者が決まっているか ・□ 著作権の扱い(譲渡か許諾か、第27条と第28条を含むか)が書かれているか ・□ 相手の既存著作物やノウハウの扱いが整理されているか ・□ 秘密情報の定義と、除外事由が書かれているか ・□ 損害賠償の上限と範囲が定められているか ・□ 中途解約の予告期間と、出来高の精算方法が書かれているか ・□ 再委託の可否が決まっているか ・□ 反社会的勢力の排除条項があるか ・□ 準拠法と管轄裁判所が書かれているか ・□ 取引条件の明示(書面または電子データ)を発注時に行ったか ・□ 相手がインボイス発行事業者かどうかを確認したか ・□ 時間拘束や細かい作業指示など、雇用と判断されやすい運用になっていないか
インボイスと源泉徴収の確認
発注者としてもう2点、経理面の確認事項があります。1つは、相手がインボイス(適格請求書)を発行できる課税事業者かどうか。発行できない場合、支払った消費税相当額を仕入税額控除に使えず、実質的な負担が増えます。ただし、それを理由に一方的に報酬を減らすのは買いたたきに当たり得るため、事前に確認して条件を合意しておくのが正しい進め方です。
もう1つは源泉徴収です。発注者が個人事業主で従業員を雇っていない場合は原則として源泉徴収の義務がありませんが、法人が発注者の場合や、従業員を雇っている個人事業主の場合は、原稿料、デザイン料、講演料、翻訳料、士業への報酬などについて源泉徴収が必要になります。税率は支払額100万円以下の部分が10.21%です。契約書の報酬額が源泉徴収前か後かを明記しておかないと、振込額でもめます。
発注の目的から契約類型を選ぶ
契約類型を最初に間違えると、後のすべての条項が噛み合わなくなります。発注者としてどちらを選ぶべきかは、「何に対してお金を払うのか」で決まります。
| 発注の目的 | 選ぶべき類型 | 理由 |
|---|---|---|
| 完成した成果物が欲しい | 請負 | 完成しなければ報酬を払う必要がない |
| 専門家の稼働と助言が欲しい | 準委任 | 成果の保証は求めず、遂行の質を求める |
| 期間中の運用を任せたい | 準委任 | 日々の対応に完成の概念がなじまない |
| 調査して報告書が欲しい | 請負 | 報告書という成果物が定義できる |
| 継続的な保守を頼みたい | 準委任 | 障害の有無で工数が変動する |
| 成果連動で払いたい | 成果完成型の準委任 | 成果に報酬を紐づけつつ完成責任は負わせない |
請負にすれば発注者に有利、というわけではありません。完成責任を負う分だけ相手は見積もりにリスク分を上乗せしますし、仕様が固まっていない段階で請負にすると、仕様変更のたびに追加見積もりが発生して総額が膨らみます。仕様が固まっているなら請負、探りながら進めるなら準委任。この使い分けが実務的です。
修正回数と追加費用の決め方
もめごとの発生源として最も多いのが、修正の扱いです。次のように、回数と単価と定義をセットで決めておきます。
・修正の回数:初稿提出後に2回まで無料(工程ごとに設定するとより明確) ・修正の定義:合意した仕様の範囲内で、表現や細部を調整すること ・仕様変更の定義:合意した仕様そのものを変えること。回数に数えず別途見積もり ・超過時の単価:1回あたり◯円、または時間単価◯円で実費精算 ・修正依頼の方法:まとめて1回で伝える(小出しにしない)
「修正2回まで」とだけ書いて、何が修正で何が仕様変更かを決めていないと、必ずそこでもめます。定義まで書いておくことが、発注者にとっても防御になります。
トラブルが起きたときの対処法
相談先一覧
| 相談先 | 費用 | 対応範囲 |
|---|---|---|
| フリーランス・トラブル110番 | 無料 | 電話・メール相談 |
| 下請かけこみ寺 | 無料 | 下請取引に関する相談 |
| 法テラス | 無料(要件あり) | 法律相談全般 |
| 弁護士 | 30分5,000〜1万円 | 法律相談、訴訟 |
| 行政書士 | 契約書作成3〜5万円 | 契約書の作成・チェック |
トラブルが起きてからではなく、契約前に専門家に相談するのが最もコストパフォーマンスの良い方法です。行政書士に契約書のチェックを依頼する費用は1〜3万円程度。これで数百万円のリスクを回避できると考えれば、安い投資です。
契約書の基本的な書き方については「フリーランスの契約書」でもテンプレートを紹介しています。
発注者側の相談先
契約や取引でトラブルになったとき、発注者が使える窓口もあります。フリーランス・トラブル110番は受注者向けの窓口ですが、下請かけこみ寺は発注者からの相談も受け付けています。取引適正化に関する一般的な考え方は、公正取引委員会(公正取引委員会)の公表資料でも確認できます。契約書のひな型づくりや条項の見直しは、行政書士や弁護士に依頼すると3万円から10万円程度が目安です。継続的に外注するなら、自社の標準契約書を一度きちんと作っておくのが、結局いちばん安くつきます。
よくある質問
Q. クライアントと業務委託契約書を交わさずに口約束で仕事を進めても大丈夫ですか?
大変危険です。2024年秋施行のフリーランス新法により、発注元は業務委託の条件を書面等で明示することが義務付けられています。契約書を交わさないのは法律違反のリスクがあり、報酬の未払いや一方的な仕様変更などのトラブルを防ぐた めにも必ず締結すべきです。
Q. インターネット上にある業務委託契約書の無料の雛形をそのまま使っても大丈夫ですか?
そのまま使うのは避けるべきです。ネット上の雛形はあくまで一般的なケースを想定しており、発注者寄りに作られていたり、トラブルを防ぐための具体的な記述が抜けていたりすることが多いため、必ず自分の業務内容や条件に合わせてカス タマイズする必要があります。
Q. クライアントが契約書を嫌がる場合は?
「法律で義務付けられています」と毅然と伝えてください。それでも拒否するような企業は、後々トラブルになる確率が極めて高いです。関わらないほうが、あなたの身のためです。
Q. 毎回の案件ごとに契約書が必要?
はい、案件ごとに内容が異なるため、個別契約を交わすのが基本です。ただし、継続的な関係の場合は「基本契約書」+「個別注文書」の形式にすることで、事務作業を大幅に短縮できます。
Q. 業務委託契約書はメールでの合意でも有効ですか?
はい、メールやチャットツールでのテキストのやり取りも法的な効力を持ちます。ただし、後から見返しやすく改ざんを防ぐため、電子契約サービスを利用するか、PDF化して保管することをおすすめします。
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この記事について
編集部
監修:@SOHO編集部
2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを20年運営。編集部が事実確認のうえ公開しています。

この記事を書いた人
長谷川 奈津@SOHO編集部
行政書士・元企業法務
企業法務で数多くのフリーランス契約を扱った経験を活かし、フリーランス向けの法律・契約・権利に関する記事を執筆。「法律はあなたの味方です」がモットー。
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SNS運用・経理・広告など、業務のアウトソーシング(外注)を検討する企業・個人向け。費用相場・依頼の流れ・失敗しない選び方







