フリーランスが知っておくべき契約書の基本|トラブルを防ぐ必須知識

藤本 拓也
藤本 拓也
フリーランスが知っておくべき契約書の基本|トラブルを防ぐ必須知識

この記事のポイント

  • フリーランスが知っておくべき契約書の基本を解説
  • 業務委託契約と準委任契約の違い
  • トラブルを防ぐポイント

独立して最初の案件で、僕は見事にやらかした。

スタートアップからWebサイト制作を受注して、口頭で「30万円、1ヶ月で」と握った。納品したら先方から電話が来て、「あ、LP3枚も含まれてますよね?最初にそう言いましたよね?」と。いやいや、言ってないですよ。でも証拠がない。書面が一枚もない。結局、タダ働き同然でLP3枚を追加で作った。あの3日間の徹夜は今でも夢に出てくる。

正直なところ、会計事務所に勤めていた頃は「契約書なんて企業間の話でしょ」くらいに思っていた自分が恥ずかしい。フリーランスこそ契約書が命綱だと、身をもって学んだ話をします。

契約トラブル、思ったより身近な話です

「自分は大丈夫」って思ってません? 僕もそう思ってました。

フリーランス協会の「フリーランス白書2024」を見ると、フリーランスの約4割が取引先とのトラブルを経験している。4割ですよ。クラスに40人いたら16人がトラブってる計算。一番多いのが「報酬の未払い・減額」で、次が「業務範囲の食い違い」。まさに僕がやられたパターン。

連合の調査でも、フリーランス1,000人のうちかなりの割合が「契約書を交わしていない」と回答しています。

「みんなやってないなら大丈夫」じゃなくて、「みんな揃ってリスクを抱えてる」だけ。宝くじとは訳が違う。

請負と準委任、どっちの契約?

ここ、ちゃんと理解してない人がめちゃくちゃ多い。僕もフリーランス1年目は「業務委託契約」としか書いてなくて、税務署の人に「これ、請負ですか?準委任ですか?」と聞かれて固まった。

項目 請負契約 準委任契約
報酬の対象 成果物の完成 業務の遂行
瑕疵担保責任(契約不適合責任) あり なし
中途解約 原則不可(発注者側は損害賠償義務あり) いつでも可能
支払いタイミング 納品・検収後 月末締め翌月払い等
向いている仕事 Webサイト制作、アプリ開発、記事執筆、デザイン コンサルティング、運用代行、保守、事務代行
収入印紙 必要(紙の契約の場合) 不要

ざっくり言うと、「完成品を納める仕事」は請負、「働くこと自体が仕事」なら準委任。Webサイト制作なら請負、月額の運用代行なら準委任。ここを間違えると、解約条件やら瑕疵担保やらで後から揉めるんですよね。

あと忘れちゃいけないのが秘密保持契約(NDA)。クライアントの社内情報に触れるなら、ほぼ確実に求められる。業務委託契約書の中にNDA条項をまとめて入れるケースが多いです。

「多段階契約」という裏ワザ

大型案件や継続取引では、基本契約+個別契約の2段階にしておくとラク。基本契約で秘密保持や損害賠償などの共通条件を決めて、個別契約で案件ごとの業務内容・報酬・納期を決める。2案件目以降は個別契約だけで済むから、お互いの手間が激減する。僕はリピーターのクライアントには全部このパターンにしてます。

契約書に入れるべき15項目。実務で「これ書いとけばよかった」リスト

ネットの記事を見ると「必須項目9つ!」とか「6つのポイント!」とかバラバラで、どれを信じていいかわからないですよね。僕が自分のトラブル経験と、会計事務所で見てきた事例を元に、本当に必要な項目を15に絞りました。

# 項目 内容 重要度
1 契約当事者 双方の正式名称・住所・代表者名 ★★★
2 業務内容 具体的な作業範囲(何をやるか・やらないか) ★★★
3 報酬金額 総額または単価、消費税の扱い ★★★
4 支払い条件 支払期日、支払方法(振込先)、源泉徴収の有無 ★★★
5 納期・契約期間 作業完了日または契約の始期・終期 ★★★
6 修正・追加作業の扱い 無料修正の回数上限、追加費用の基準 ★★★
7 著作権・知的財産権 納品物の権利の帰属先、利用範囲 ★★★
8 秘密保持 業務上知り得た情報の取り扱い ★★☆
9 再委託の可否 第三者への外注を認めるかどうか ★★☆
10 契約解除条件 どんな場合に解除できるか、違約金の有無 ★★☆
11 損害賠償 上限金額の設定(報酬総額を上限にするのが一般的) ★★☆
12 検収条件 納品物の確認期間、合否の基準 ★★☆
13 経費負担 交通費、サーバー費用などの負担者 ★☆☆
14 不可抗力条項 天災・パンデミック等の場合の免責 ★☆☆
15 反社会的勢力の排除 反社条項 ★☆☆

ぶっちゃけ、6番の修正回数と9番の再委託、ここを書いてない人が多すぎる。修正回数を決めてないと「イメージと違う」の一言で無限修正地獄に突入する。僕は実際に、あるロゴデザインの案件で修正11回を喰らったことがある。時給に換算したら380円くらいだった。泣ける。

今は「デザイン案の修正は3回まで。4回目以降は1回あたり○円」と具体的に書いてます。曖昧にすると100%揉める。これは断言できる。

フリーランス新法(2024年施行)。知らないと損する法律の話

2024年11月1日に「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律」、通称フリーランス新法が施行された。長い名前だけど、中身はフリーランスにとってかなりありがたい。

保護内容 詳細 違反時のリスク
書面等での条件明示義務 発注者は業務内容・報酬・支払期日等を書面またはメールで明示する義務 公正取引委員会による指導・勧告
60日以内の報酬支払い 納品日から起算して60日以内に支払う義務 同上
7つの禁止行為 報酬の減額、成果物の返品、買いたたき、不当なやり直し等 同上
ハラスメント防止 発注者はハラスメント相談体制を整備する義務 厚生労働省による指導
育児・介護への配慮 6ヶ月以上の業務委託では、育児・介護との両立に配慮する義務 厚生労働省による指導

何がうれしいって、フリーランス側が契約書を用意しなくても、発注者側に条件明示の義務があるということ。ただね、正直この法律を知らない発注者もまだまだ多い。だから「フリーランス新法で書面の明示が義務化されてるので、簡単な書面を作らせてもらえますか」って自分から言えるようにしておくのが大事。法律を盾にすれば、角が立ちにくいですよ。

契約書なしで仕事したら、こうなった。リアルなリスク集

「小さい案件だし」「信頼できる人だし」。わかる、その気持ち。僕も何回もそう思った。でも痛い目に遭うのは、だいたいそういう時なんですよ。

リスク 具体例 発生頻度
報酬の未払い・減額 「そんな金額で合意していない」「予算が減った」と一方的に減額される 非常に高い
際限のない修正要求 「イメージと違う」で5回、10回と修正。時給換算で500円以下になることも 高い
著作権の無断使用 Webサイト用に作ったイラストが名刺やチラシにも勝手に転用される 中程度
一方的なキャンセル 制作途中で「やっぱりいらない」。着手金なしだと丸損 中程度
偽装請負のリスク 勤務時間や場所を指定されているのに「業務委託」として処理される 意外と多い

意外だったのが「偽装請負」の多さ。毎朝9時に出社して18時まで常駐、指揮命令も受けてるのに契約上は「業務委託」。それ、実態は雇用ですからね。社会保険も労災も適用されない状態で、何かあったら完全に無防備。心当たりがある人は、労働基準監督署か弁護士に相談してほしい。

テンプレート、ゼロから作る必要ないです

ここ安心してください。契約書はゼロから書く必要がない。信頼できるテンプレートをダウンロードして、自分の案件に合わせて直すのが一番現実的。

入手先 料金 特徴
フリーランス協会 無料(会員向け) フリーランス新法対応済み。弁護士監修
中小企業庁のモデル契約書 無料 政府公式。業種別のひな形あり
デイトラ公式テンプレート 無料 フリーランス新法対応。見積書もセット
bizocean 無料 Word形式。種類が豊富
弁護士ドットコム 一部無料 弁護士への相談もセットで可能
弁護士に個別作成依頼 30,000〜100,000円 自分の業種・案件に完全カスタマイズ

僕のおすすめは無料テンプレートで叩き台を作って、それを弁護士にレビューだけしてもらう方法。レビューだけなら1〜3万円で済む。ゼロから依頼するより圧倒的に安いし、自分でも中身を理解できるようになるから一石二鳥。最初の1回だけお金を使えば、あとは使い回せます。

契約の流れ。「いつ何をするか」を時系列で

契約って一発で決まるものじゃない。僕が今やってる流れはこんな感じです。

ステップ 内容 注意点
1. ヒアリング 業務内容、納期、予算を確認 曖昧な部分はこの段階で潰す。「なんとなく」を残さない
2. 見積書の提出 作業内容と金額を明示 修正回数、経費の扱いも見積書に含める
3. 契約書の作成 テンプレートをベースにカスタマイズ 自分に不利な条項がないか精読する
4. 契約書の確認・交渉 双方で内容を確認し、必要に応じて修正 修正を依頼するのは失礼じゃない
5. 締結 電子契約(クラウドサイン、freeeサイン等)または紙 電子契約なら収入印紙が不要
6. 業務開始 契約内容に基づいて作業 スコープ外の依頼は追加見積もりを出す
7. 納品・検収 成果物を納品し、検収完了を確認 検収完了の連絡を書面でもらう
8. 請求・支払い 請求書を発行し、報酬を受領 入金を確認するまでが仕事

ステップ4の「交渉」、苦手な人めちゃくちゃ多いですよね。気持ちはわかる。僕も最初は「こんなこと言ったら嫌われるかな」とビクビクしてた。でもね、契約書の修正を依頼するのはビジネスでは完全に普通のこと。「この条項を○○に変更していただけますか」と冷静に言えばいい。それで関係が壊れるなら、そんな相手とは取引しないほうが身のためです。

@SOHOなら直接取引が可能なので、クライアントと対等な立場で契約条件を詰められる。プラットフォームが間に入らないぶん、双方が納得した契約書を作りやすいんですよね。

よくある質問

Q. クライアントと業務委託契約書を交わさずに口約束で仕事を進めても大丈夫ですか?

大変危険です。2024年秋施行のフリーランス新法により、発注元は業務委託の条件を書面等で明示することが義務付けられています。契約書を交わさないのは法律違反のリスクがあり、報酬の未払いや一方的な仕様変更などのトラブルを防ぐた めにも必ず締結すべきです。

Q. 契約書のテンプレートはどこで入手できますか?

中小企業庁、経済産業省、各種士業団体が無料ひな形を公開しています。ただし雛形はあくまで出発点であり、案件内容に合わせて調整が必要です。

Q. インターネット上にある業務委託契約書の無料の雛形をそのまま使っても大丈夫ですか?

そのまま使うのは避けるべきです。ネット上の雛形はあくまで一般的なケースを想定しており、発注者寄りに作られていたり、トラブルを防ぐための具体的な記述が抜けていたりすることが多いため、必ず自分の業務内容や条件に合わせてカス タマイズする必要があります。

Q. クライアントが契約書を嫌がる場合は?

「法律で義務付けられています」と毅然と伝えてください。それでも拒否するような企業は、後々トラブルになる確率が極めて高いです。関わらないほうが、あなたの身のためです。

Q. 毎回の案件ごとに契約書が必要?

はい、案件ごとに内容が異なるため、個別契約を交わすのが基本です。ただし、継続的な関係の場合は「基本契約書」+「個別注文書」の形式にすることで、事務作業を大幅に短縮できます。

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藤本 拓也

この記事を書いた人

藤本 拓也

フリーランスWebマーケター

大手広告代理店でWebマーケティングを10年間担当した後、フリーランスに転身。SEO・SNS・広告運用を得意とし、大阪から東京の案件もリモートで対応。マーケティング・営業系の記事を執筆しています。

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