フリーランスの源泉徴収|引かれる場合と確定申告での還付方法

長谷川 奈津
長谷川 奈津
フリーランスの源泉徴収|引かれる場合と確定申告での還付方法

この記事のポイント

  • フリーランスの源泉徴収を解説
  • 確定申告で還付を受ける手順まで具体例付きで紹介します

「請求書に源泉徴収って書いてあるけど、結局いくら引かれるの?」「確定申告すれば戻ってくるって本当?」。フリーランスになって最初に混乱するのが、この源泉徴収の仕組みではないでしょうか。

これ、知らない人が本当に多いんです。私が会計事務所で働いていた頃、フリーランスの方から「報酬が満額振り込まれないんですが、何かの手数料ですか?」と聞かれたことが何度もあります。

源泉徴収の仕組みは、理解してしまえばシンプルです。そして確定申告をすれば、払いすぎた税金が還付される可能性が高い。この記事では、源泉徴収の基本から確定申告での還付方法まで、具体的な計算例とともに解説します。

源泉徴収とは?フリーランス向けにわかりやすく解説

一言で言うと「所得税の前払い」

源泉徴収とは、報酬を支払う側(クライアント)が、あなたの代わりに所得税を差し引いて国に納める制度です。

通常の流れ 源泉徴収の流れ
報酬を受取る → 自分で確定申告 → 所得税を払う 報酬から所得税が引かれる → 残額を受取る → 確定申告で精算

つまり、あなたがもらう報酬からあらかじめ「仮の所得税」が引かれているのです。

源泉徴収される報酬とされない報酬

すべてのフリーランス報酬が源泉徴収の対象ではありません。対象となるのは、所得税法第204条で定められた特定の報酬です。

報酬の種類 源泉徴収 具体例
原稿料・執筆料 対象 Webライティング、コラム執筆
デザイン料 対象 ロゴデザイン、Webデザイン
講演料 対象 セミナー講師、研修講師
コンサルティング料 対象 経営相談、技術顧問
翻訳料 対象 英日翻訳、技術翻訳
プログラミング報酬 対象外 システム開発、Web制作(※)
事務代行 対象外 データ入力、経理代行

※プログラミング報酬は原則として源泉徴収の対象外ですが、「デザインを含むWeb制作」の場合は対象になることがあります。

源泉徴収税額の計算方法

基本の税率

報酬金額 税率
100万円以下の部分 10.21%
100万円を超える部分 20.42%

※10.21%のうち、0.21%は復興特別所得税です。

計算例

例1:報酬5万円の場合

源泉徴収税額 = 50,000円 × 10.21% = 5,105円
手取り額 = 50,000円 - 5,105円 = 44,895円

例2:報酬120万円の場合

100万円までの部分 = 1,000,000円 × 10.21% = 102,100円
100万円を超える部分 = 200,000円 × 20.42% = 40,840円
源泉徴収税額 = 102,100円 + 40,840円 = 142,940円
手取り額 = 1,200,000円 - 142,940円 = 1,057,060円

私が担当したフリーランスのデザイナーさんで、「毎月5万円引かれているのがよくわからない」という方がいました。月額50万円のデザイン報酬から源泉徴収として51,050円が差し引かれていたのです。年間で612,600円。確定申告をしたら、約18万円が還付されました。

請求書への記載方法

源泉徴収の対象となる報酬を請求する場合、請求書に源泉徴収税額を記載するのが一般的です。

請求書の記載例

項目 金額
原稿執筆料(3本) 150,000円
小計 150,000円
消費税(10%) 15,000円
源泉徴収税額 -15,315円
ご請求金額 149,685円

消費税と源泉徴収の関係

源泉徴収税額は、報酬と消費税を分けて記載している場合は「報酬部分のみ」に対して計算します。

記載方法 源泉徴収の計算対象
「報酬150,000円+消費税15,000円」と分けて記載 150,000円に対して計算
「合計165,000円(税込)」とまとめて記載 165,000円に対して計算

つまり、消費税を分けて記載したほうが、源泉徴収税額が少なくなります。必ず分けて記載しましょう。

フリーランスの請求書の書き方

確定申告で還付を受ける方法

なぜ還付されるのか

源泉徴収は「報酬金額」に対して計算されますが、実際の所得税は「報酬 - 経費 - 所得控除」で計算されます。経費や控除を差し引くと、源泉徴収された金額のほうが多くなるケースがほとんどです。

還付が発生する典型的なケース

項目 金額
年間の報酬合計 4,000,000円
源泉徴収税額の合計 408,400円
経費(通信費、交通費、書籍代等) -800,000円
青色申告特別控除 -650,000円
基礎控除 -480,000円
課税所得 2,070,000円
所得税+復興特別所得税 約107,500円
還付金額 約300,900円

この例では、約30万円が還付される計算です。確定申告をしないと、この30万円はそのまま国に取られてしまいます。

確定申告の手順

準備するもの

  • 支払調書(クライアントから届く場合)
  • 請求書・領収書の控え
  • 経費の記録(会計ソフトの出力)
  • 銀行口座の通帳(入金記録)
  • マイナンバーカード

申告の流れ

  1. 1年間の売上(報酬)を集計する
  2. 経費を集計する
  3. 源泉徴収税額を集計する
  4. 確定申告書等作成コーナー(e-Tax)で申告書を作成
  5. e-Taxで送信(または税務署に提出)

還付金はいつ届く?

e-Taxで申告した場合、通常2〜3週間で指定口座に振り込まれます。紙の申告書の場合は1〜2ヶ月かかることがあります。

源泉徴収されなかった場合の対応

クライアントによっては、源泉徴収をせずに報酬を全額振り込んでくるケースがあります。

この場合、どうする?

源泉徴収義務は発注者側にあります。 フリーランス側に義務はありません。ただし、確定申告では「源泉徴収されていない」ことを前提に正しい所得税を計算・納付する必要があります。

ケース 確定申告で
源泉徴収された 払いすぎた分が還付される
源泉徴収されなかった 所得税を自分で納付する

支払調書をもらえない場合

支払調書は、クライアントが税務署に提出する書類です。フリーランスに交付する義務はありません。

もらえなくても確定申告はできます。 自分で入金記録と請求書から源泉徴収税額を計算すればOKです。

意外と見落としがちなんですが、支払調書の交付はクライアントの「任意」です。「支払調書が届かないから確定申告できない」と思っている方がいますが、それは誤解です。自分の帳簿と通帳があれば申告できます。

フリーランスが経費にできるもの

確定申告で還付を最大化するには、経費を漏れなく計上することが重要です。

経費の種類 具体例 注意点
通信費 インターネット回線、スマホ代 私用との按分が必要
家賃(家事按分) 自宅の仕事部屋分 面積割合で按分
消耗品費 パソコン周辺機器、文具 10万円未満は全額経費
書籍・資料費 業務に関連する書籍 業務との関連性が必要
交通費 打ち合わせの電車代等 領収書を保存
ソフトウェア クラウド会計、デザインツール 月額サブスクも可
減価償却費 パソコン(10万円以上) 耐用年数4年で按分

私が会計事務所で見てきた中で、多くのフリーランスの方が見落としていたのが家賃の按分です。月8万円の家賃で仕事部屋が全体の20%なら、月1万6,000円が経費になります。年間で19万2,000円。これだけで所得が減り、還付額が増えます。

よくある質問

Q. クラウドソーシング経由の報酬も源泉徴収されている?

プラットフォームによって異なります。クラウドソーシングの場合、プラットフォームが源泉徴収しているケースと、していないケースがあります。

パターン 確認方法
プラットフォームが源泉徴収 報酬明細に「源泉徴収税額」の記載あり
クライアントが源泉徴収 直接取引の場合、クライアントに確認
源泉徴収なし 報酬=振込額。確定申告で全額を所得として申告

@SOHOのように直接取引ができるプラットフォームでは、源泉徴収の有無はクライアントとの契約次第です。支払い時に源泉徴収があるかどうか、事前に確認しておきましょう。

Q. 源泉徴収されていないけど大丈夫?

問題ありません。源泉徴収されていない場合は、確定申告で正しく所得税を計算・納付すれば良いだけです。逆に、源泉徴収がない分、手元の資金が多くなるので資金繰りには有利です。

Q. 消費税のインボイスと源泉徴収の関係は?

源泉徴収税額の計算は、消費税を含む報酬総額で計算する方法と、消費税を除いた金額で計算する方法があります。請求書に消費税額が明記されていれば、消費税を除いた金額をベースに源泉徴収税額を計算できます

Q. 源泉徴収を忘れていたクライアントに、あとから請求すべきですか?

いいえ、フリーランス側から「源泉徴収分を請求する」必要はありません。源泉所得税を納めるのは、あくまで「支払う側(クライアント)」の義務です。確定申告の際に、実際に引かれた金額を申告するだけです。もしクライアントが引き忘 れていたとしても、あなたの確定申告で正しい所得税を計算して納めれば、税務上の問題はありません。

Q. 還付金が多すぎて税務調査に来られることはありますか?

還付金が多いこと自体が税務調査の直接的な原因になることは稀です。還付は「払いすぎた分を戻してもらう」正当な権利です。ただし、還付を増やすために架空の経費を計上したり、極端な赤字を毎年繰り返していたりすると、目をつけられ るリスクは高まります。正しい帳簿付けを行っていれば、何も恐れることはありません。

正しく税金を納め、制度を使いこなす。その一歩として、こうした給付金制度の活用も、フリーランスとしての「金融リテラシー」を試される場面です。

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長谷川 奈津

この記事を書いた人

長谷川 奈津

行政書士・元企業法務

企業法務で年間200件以上のフリーランス契約を処理した経験を活かし、フリーランス向けの法律・契約・権利に関する記事を執筆。「法律はあなたの味方です」がモットー。

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